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特開2022-71052コレステリック液晶層の製造方法、コレステリック液晶層、液晶組成物、硬化物、光学異方体、反射層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071052
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】コレステリック液晶層の製造方法、コレステリック液晶層、液晶組成物、硬化物、光学異方体、反射層
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220506BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029634
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2020507891の分割
【原出願日】2019-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2018057238
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小玉 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
(72)【発明者】
【氏名】市橋 光芳
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の第1の課題は、反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層を簡便な方法で製造し得る、コレステリック液晶層の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のコレステリック液晶層の製造方法は、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程1と、上記組成物層に対して、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理を施して、コレステリック液晶層を形成する工程2と、を有する。
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物少なくとも一部が、上記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
条件3:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、垂直配向している
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程1と、
前記組成物層に対して、前記組成物層中の前記液晶化合物をコレステリック配向させる処理を施して、コレステリック液晶層を形成する工程2と、を有するコレステリック液晶層の製造方法。
条件1:前記組成物層中の前記液晶化合物の少なくとも一部が、前記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:前記組成物層中の前記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、前記液晶化合物が配向している
条件3:前記組成物層中の前記液晶化合物の少なくとも一部が、前記基板面に対して、垂直配向している
【請求項2】
前記工程1が、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に前記条件1又は前記条件2を満たす組成物層を形成する工程である、請求項1に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項3】
前記組成物層の前記基板側表面、及び、前記基板側とは反対側の表面の少なくとも一方において、前記液晶化合物の分子軸が前記基板面に対して非平行である、請求項1又は2に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項4】
前記液晶組成物は、キラル剤を2種以上含み、
前記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、及び、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yからなる群より選ばれるいずれかのキラル剤であり、
前記液晶組成物が前記キラル剤Xを含む場合は、前記工程2における前記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が光照射処理であり、
前記液晶組成物が前記キラル剤Yを含む場合は、前記工程2における前記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が冷却処理又は加熱処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項5】
前記液晶組成物は、キラル剤を1種含み、
前記キラル剤は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、又は、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yであり、
前記液晶組成物が前記キラル剤Xを含む場合は、前記工程2における前記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が光照射処理であり、
前記液晶組成物が前記キラル剤Yを含む場合は、前記工程2における前記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が冷却処理又は加熱処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項6】
前記工程1の前記組成物層において、前記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm-1である、請求項4に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項7】
前記加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~0.5μm-1である、請求項6に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項8】
前記液晶組成物が、更に、フッ素系界面活性剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項9】
前記液晶組成物は、重合性液晶化合物を含み、
前記工程2の際に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成するか、又は、
前記工程2の後に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する工程3を更に有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項10】
前記硬化処理が、光照射処理である、請求項9に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項11】
前記液晶組成物が、更に、イオン系界面活性剤を含み、
前記イオン系界面活性剤の含有量が、前記液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上である、請求項2~10のいずれか1項に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【請求項12】
前記イオン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるピリジニウム化合物である、請求項11に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
【化1】
上記式中、Rは、アミノ基、又は炭素数が1~20の置換アミノ基を表す。Xは、アニオンを表す。L1は、2価の連結基を表す。Y1は、5又は6員環を含む2価の連結基を表す。Zは、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が2~12のアルコキシ基、又は炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基を表す。nは、0又は1を表す。
【請求項13】
液晶化合物を用いて形成された、一対の主面を有するコレステリック液晶層であり、
前記主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、前記主面に対して傾斜しており、
前記主面に対して光を入射させた際、位相差が最も小さくなる入射方向が、前記主面に対して非垂直であり、且つ、前記配列方向に対して非平行である、コレステリック液晶層。
【請求項14】
前記位相差が最小となる入射方向と前記配列方向とのなす角度が3°以上である、請求項13に記載のコレステリック液晶層。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のコレステリック液晶層を含む光学異方体。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のコレステリック液晶層を含む反射層。
【請求項17】
液晶化合物と、
2種以上のキラル剤と、を含み、
前記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤、及び温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤からなる群より選ばれるいずれかのキラル剤である、液晶組成物であって、
前記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm-1であり、
前記液晶組成物から形成される組成物層に対して光照射処理、又は冷却処理若しくは加熱処理を施した際、前記加重平均螺旋誘起力の絶対値が10.0μm-1以上となる、液晶組成物。
【請求項18】
更に、イオン系界面活性剤を含み、
前記イオン系界面活性剤の含有量が、前記液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上である、請求項17に記載の液晶組成物。
【請求項19】
前記イオン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるピリニジウム化合物である、請求項18に記載の液晶組成物。
【化2】
上記式中、Rは、アミノ基、又は炭素数が1~20の置換アミノ基を表す。Xは、アニオンを表す。L1は、2価の連結基を表す。Y1は、5又は6員環を含む2価の連結基を表す。Zは、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が2~12のアルコキシ基、又は炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基を表す。nは、0又は1を表す。
【請求項20】
更に、フッ素系界面活性剤を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
前記液晶化合物が、重合性液晶化合物である、請求項17~20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の液晶組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項23】
請求項21に記載の液晶組成物を硬化してなる光学異方体。
【請求項24】
請求項21に記載の液晶組成物を硬化してなる反射層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶層の製造方法、コレステリック液晶層、液晶組成物、硬化物、光学異方体、及び反射層に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶相を固定してなる層は、特定の波長域において右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させる性質を有する層として知られている。そのため、種々の用途へ展開されており、例えば、投影スクリーン等の投映像表示用部材(例えば、反射素子)として用いられている(特許文献1)。
上記特許文献1においては、「素子平面の法線方向に対して異方的な光学特性を持つ異方性光学素子において、コレステリック規則性を示す重合性の液晶からなる分子配向されたコレステリック液晶層であって、平坦な層平面を持つように形成されたコレステリック液晶層を備え、上記コレステリック液晶層内の液晶ドメインの螺旋軸方向の平均として規定される螺旋軸主方向が、上記層平面の法線方向に対して所定の角度だけ傾けられていることを特徴とする異方性光学素子。」が開示されている。
【0003】
上記特許文献1では、上記異方性光学素子の製造方法として、液晶化合物を含み、且つ第1相転移温度以上の温度(つまり上記液晶化合物が等方相を示す温度)に加熱された塗布膜に対して所定方向からガスを吹き付けた状態で上記塗布膜を第1相転移温度以下の温度に降温させる手順を開示している。上記手順により、塗布膜中の液晶化合物が等方相からコレステリック液晶相へ遷移されるとともに、塗布膜中の液晶ドメインの螺旋軸主方向が膜平面の法線方向に対して所定の角度だけ傾けられた状態になるように配向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-317656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載の製造方法を参考にして、基板と、基板上に配置されたコレステリック液晶層(反射膜)とを有する素子を製造して検討したところ、塗布膜中の液晶ドメインの螺旋軸主方向の膜平面の法線方向に対する角度の調整が極めて困難であることを知見した。言い換えると、特許文献1の製造方法により得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相に由来する反射面の基板面に対する角度の調整が困難であり、異方的な反射特性(反射異方性)が得られないことを知見した。
そのため、反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層(特に、反射異方性に優れるコレステリック液晶層)を簡便に製造できる方法が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層を簡便な方法で製造し得る、コレステリック液晶層の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、コレステリック液晶層、並びに、上記コレステリック液晶層を含む光学異方体及び反射層を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記コレステリック液晶層の形成を可能とする液晶組成物、並びに、上記液晶組成物を用いて形成される硬化物、光学異方体、及び反射層を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定組成の液晶組成物を用いて、後述する条件1を満たす組成物層(傾斜配向された液晶化合物を含む組成物層)、後述する条件2を満たす組成物層(ハイブリッド配向された液晶化合物を含む組成物層)、又は後述する条件3を満たす組成物層(垂直配向された液晶化合物を含む組成物層)を形成する工程を経た後に、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0008】
〔1〕 液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程1と、
上記組成物層に対して、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理を施して、コレステリック液晶層を形成する工程2と、を有するコレステリック液晶層の製造方法。
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
条件3:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、垂直配向している
〔2〕 上記工程1が、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層を形成する工程である、〔1〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔3〕 上記組成物層の上記基板側表面、及び、上記基板側とは反対側の表面の少なくとも一方において、上記液晶化合物の分子軸が上記基板面に対して非平行である、〔1〕又は〔2〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔4〕 上記液晶組成物は、キラル剤を2種以上含み、
上記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、及び、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yからなる群より選ばれるいずれかのキラル剤であり、
上記液晶組成物が上記キラル剤Xを含む場合は、上記工程2における上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が光照射処理であり、
上記液晶組成物が上記キラル剤Yを含む場合は、上記工程2における上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が冷却処理又は加熱処理である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔5〕 上記液晶組成物は、キラル剤を1種含み、
上記キラル剤は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、又は、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yであり、
上記液晶組成物が上記キラル剤Xを含む場合は、上記工程2における上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が光照射処理であり、
上記液晶組成物が上記キラル剤Yを含む場合は、上記工程2における上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理が冷却処理又は加熱処理である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔6〕 上記工程1の上記組成物層において、上記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm-1である、〔4〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔7〕 上記加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~0.5μm-1である、〔6〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔8〕 上記液晶組成物が、更に、フッ素系界面活性剤を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔9〕 上記液晶組成物は、重合性液晶化合物を含み、
上記工程2の際に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成するか、又は、
上記工程2の後に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する工程3を更に有する、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔10〕 上記硬化処理が、光照射処理である、〔9〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔11〕 上記液晶組成物が、更に、イオン系界面活性剤を含み、
上記イオン系界面活性剤の含有量が、上記液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上である、〔2〕~〔10〕のいずれかに記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔12〕 上記イオン系界面活性剤が、後述する一般式(1)で表されるピリジニウム化合物である、〔11〕に記載のコレステリック液晶層の製造方法。
〔13〕 液晶化合物を用いて形成された、一対の主面を有するコレステリック液晶層であり、
上記主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、上記主面に対して傾斜しており、
上記主面に対して光を入射させた際、位相差が最も小さくなる入射方向が、上記主面に対して非垂直であり、且つ、上記配列方向に対して非平行である、コレステリック液晶層。
〔14〕 上記位相差が最小となる入射方向と上記配列方向とのなす角度が3°以上である、〔13〕に記載のコレステリック液晶層。
〔15〕 〔13〕又は〔14〕に記載のコレステリック液晶層を含む光学異方体。
〔16〕 〔13〕又は〔14〕に記載のコレステリック液晶層を含む反射層。
〔17〕 液晶化合物と、
2種以上のキラル剤と、を含み、
上記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤、及び温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤からなる群より選ばれるいずれかのキラル剤である、液晶組成物であって、
上記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm-1であり、
上記液晶組成物から形成される組成物層に対して光照射処理、又は冷却処理若しくは加熱処理を施した際、上記加重平均螺旋誘起力の絶対値が10.0μm-1以上となる、液晶組成物。
〔18〕 更に、イオン系界面活性剤を含み、
上記イオン系界面活性剤の含有量が、上記液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上である、〔17〕に記載の液晶組成物。
〔19〕 上記イオン系界面活性剤が、後述する一般式(1)で表されるピリニジウム化合物である、〔18〕に記載の液晶組成物。
〔20〕 更に、フッ素系界面活性剤を含む、〔17〕~〔19〕のいずれかに記載の液晶組成物。
〔21〕 上記液晶化合物が、重合性液晶化合物である、〔17〕~〔20〕のいずれかに記載の液晶組成物。
〔22〕 〔21〕に記載の液晶組成物を硬化してなる硬化物。
〔23〕 〔21〕に記載の液晶組成物を硬化してなる光学異方体。
〔24〕 〔21〕に記載の液晶組成物を硬化してなる反射層。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層を簡便な方法で製造し得る、コレステリック液晶層の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、コレステリック液晶層、並びに、上記コレステリック液晶層を含む光学異方体及び反射層を提供できる。
また、本発明によれば、上記コレステリック液晶層の形成を可能とする液晶組成物、並びに、上記液晶組成物を用いて形成される硬化物、光学異方体、及び反射層を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】工程1において、条件1を満たす組成物層の実施形態の一例を説明するための断面模式図である。
図2】工程2において形成されるコレステリック液晶相の断面模式図である。
図3】工程1を経ないで作製されたコレステリック液晶層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した際の模式図である。
図4図3に示すコレステリック液晶層を投影スクリーンに適用した際の作用を説明する模式図である。
図5】本発明の製造方法で製造したコレステリック液晶層の断面をSEMで観察した際の模式図である。
図6図5に示すコレステリック液晶層を投影スクリーンに適用した際の作用を説明する模式図である。
図7】キラル剤A及びキラル剤Bの各々について、螺旋誘起力(HTP: Helical Twisting Power)(μm-1)×濃度(質量%)と光照射量(mJ/cm2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
図8】キラル剤A及びキラル剤Bを併用した系において、加重平均螺旋誘起力(μm-1)と光照射量(mJ/cm2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
図9】キラル剤A及びキラル剤Bの各々について、HTP(μm-1)×濃度(質量%)と温度(℃)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
図10】キラル剤A及びキラル剤Bを併用した系において、加重平均螺旋誘起力(μm-1)と温度(℃)との関係をプロットしたグラフの模式図である。
図11】本発明の製造方法で製造したコレステリック液晶層の断面をSEMで観察した際の模式図である。
図12】本発明の製造方法で製造したコレステリック液晶層の反射率測定を実施した際の模式図である。
図13】コレステリック液晶層102のコレステリック液晶相の断面模式図である。
図14】コレステリック液晶層202のコレステリック液晶相の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を表す表記であり、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を表す表記である。
【0012】
[コレステリック液晶層の製造方法]
本発明のコレステリック液晶層の製造方法は、
液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程1と、
上記組成物層に対して、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理を施して、コレステリック液晶層を形成する工程2と、を有する。
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
条件3:組成物層中の液晶化合物の少なくとも一部が、基板面に対して、垂直配向している
本発明のコレステリック液晶層の製造方法によれば、反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層が簡便に得られる。特に、工程1により得られる組成物層が上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層である場合、反射異方性に優れたコレステリック液晶層を形成することができる。なお、ここでいう「非平行」とは、反射面と基板面のなす角度が0°ではないことを意図する。反射面と基板面のなす角度は、1°以上であることが好ましく、3°以上がより好ましく、5°以上が更に好ましい。また、その上限は特に制限されないが、例えば、90°以下であり、80°以下が好ましく、70°以下がより好ましい。
また、本発明者らは、上記コレステリック液晶層の製造方法を達成する方法の一つとして、後述する実施例欄に示されるように、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、又は温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yを含む液晶組成物を使用する方法を見いだしている。
【0013】
以下に、本発明のコレステリック液晶層の製造方法の工程1及び工程2の作用機序について具体例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、液晶化合物と、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X、又は温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yとを少なくとも含む液晶組成物を用いたコレステリック液晶層の製造方法を一例として説明する。
【0014】
〔工程1の作用機序〕
まず、図1に、工程1により得られる組成物層の断面模式図を示す。図1に示される組成物層は、上記条件1を満たす組成物層の実施形態の一例である。なお、以下においては、液晶化合物が棒状液晶化合物である場合の態様を一例として説明する。つまり、図1中の液晶化合物14は、棒状液晶化合物である。
【0015】
図1に示すように、基板10上に配置される組成物層12中、液晶化合物14は、基板面10aに対して傾斜配向している。言い換えると、組成物層12中において、液晶化合物14は、液晶化合物14に由来する分子軸16が基板面10aに対して所定の角度θ1となるように一定の方向(一軸方向)に配向している。
なお、本明細書において、液晶化合物14が棒状液晶化合物である場合、液晶化合物14の分子軸16は、棒状液晶化合物の分子長軸を意図する。一方、液晶化合物14が円盤状液晶化合物である場合、液晶化合物14の分子軸16は、円盤状液晶化合物の円盤面に対する法線方向に平行な軸を意図する。
【0016】
なお、図1では、組成物層12の厚み方向R1の全域に渡って、液晶化合物14が、基板面10aに対して液晶化合物14に由来する分子軸16が所定の角度θ1となるように配向している実施形態を示したが、工程1により得られる条件1を満たす組成物層としては、液晶化合物の一部が傾斜配向していればよく、組成物層12の基板10側表面(図1中の領域Aに該当)、及び、組成物層12の基板10側とは反対側の表面(図1中の領域Bに該当)の少なくとも一方において、液晶化合物14が基板面10aに対して液晶化合物14に由来する分子軸16が所定の角度θ1となるように配向していることが好ましく、基板10側表面において液晶化合物14が基板面10aに対して液晶化合物14に由来する分子軸16が所定の角度θ1となるように傾斜配向していることがより好ましい。なお、領域A及び領域Bのいずれか少なくとも一方において、液晶化合物14が基板面10aに対して液晶化合物14に由来する分子軸16が所定の角度θ1となるように配向していれば、続く工程2において液晶化合物14をコレステリック液晶相の状態とした際に、領域A及び/又は領域B中の配向された液晶化合物14に基づく配向規制力により、他の領域の液晶化合物14の分子軸16の傾斜とコレステリック配向とを誘起させることができる。
【0017】
また、図示はしないが、上述した条件2を満たす組成物層は、上記図1に示す組成物層12において、液晶化合物14が、基板面10aに対してハイブリッド配向したものに相当する。つまり、上述した条件2を満たす組成物層は、上記図1に示す組成物層12において、液晶化合物14の分子軸と基板面10aとのなす角度θ2(チルト角θ2)が、厚さ方向で連続的に変化する態様に相当する。
【0018】
角度θ及びθ2は、組成物層全体において0°でなければ特に制限されない。言い換えると、組成物層の一部の領域において角度θ及びθ2が0°であることを妨げるものではない。角度θ及びθ2としては、例えば0~90°である。角度θ及びθ2は、なかでも、基板側表面において、10~90°であることが好ましく、20~80°であることがより好ましい。また、基板側とは反対側の表面において、0~50°であることが好ましく、0~30°であることがより好ましい。
【0019】
また、図示はしないが、上述した条件3を満たす組成物層は、上記図1に示す組成物層12において、液晶化合物14の分子軸が、基板面10aに対して垂直配向したものに相当する。言い換えると、液晶化合物14が棒状液晶化合物である場合、上述の図1の説明において、角度θ1が90°である態様に相当する。また、液晶化合物14が円盤状液晶化合物である場合、液晶化合物14の円盤面が基板面10aに対して平行に配向したものに相当する。
【0020】
なお、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、工程1により得られる組成物層は、条件1又は条件2を満たす組成物層が好ましく、条件2を満たす組成物層がより好ましい。
【0021】
〔工程2の作用機序〕
上記工程1により条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を得た後、工程2において上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させて(言い換えると、上記液晶化合物をコレステリック液晶相として)、コレステリック液晶層を形成する。図2に、工程1及び工程2を経て得られたコレステリック液晶層の断面模式図を示す。なお、図2においては、工程1において条件1及び条件2を経て得られたコレステリック液晶層を一例として挙げる。
図2に示すように、コレステリック液晶層32において、液晶化合物14は、基板面10aに対して、その分子軸16が傾斜して配向している。分子軸16が上述した配向をとることで、図2に示すように、コレステリック液晶層32において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C1は、基板面10aに対して所定角度で傾斜している。また、コレステリック液晶層32の反射面(方位角が等しい液晶化合物が存在する平面)T1は、基板面10aに対して略一定の方向に傾斜している。なお、「方位角が等しい液晶化合物」とは、基板面10aに投影したときに、分子軸の配向方向が略同一にある液晶化合物をいう。分子軸の定義は上述した通りである。
上記コレステリック液晶層32の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察すると、図5に示すような明部64と暗部66とが交互に配列された配列方向Pが基板面10aに対して所定角度に傾斜している縞模様が観察される。反射面T1は、配列方向Pに略直交する。なお、図5中の明部64と暗部66の繰り返し2回分(明部2つおよび暗部3つ分)が螺旋1ピッチ分(螺旋の巻き数1回分)に相当する。
【0022】
ここで、図3に、プラナー配向(図1中の角度θ1が組成物層全体において0°の配向状態に該当する)された液晶化合物をコレステリック配向させる処理を施して得られたコレステリック液晶層を基板上に配置した際の断面模式図を示す。図3に示すように、基板10上に配置されたコレステリック液晶層42の断面をSEMにて観察すると、通常、明部44と暗部46との縞模様が観察される。すなわち、コレステリック液晶層42の断面では、明部44と暗部46とが、基板面10aに平行に交互に積層した層状構造が観察される。
一般的に、図3に示すように、工程1を経ずに形成されたコレステリック液晶層42は、明部44及び暗部46の縞模様(層状構造)は基板面10aに対して平行となるように形成される。コレステリック液晶相は鏡面反射性であるため、例えば、コレステリック液晶層42に法線方向から光が入射される場合、法線方向に光が反射される(図3中の矢印参照)。このため、図4に示すように、コレステリック液晶層42を投影スクリーン等に適用した場合、投影スクリーン52の正面にいる観察者が、光源(投影機)50から投影スクリーン52へ投射された映像光のコレステリック反射光L1を良好な視認性で観察するためには、光源50を観察者の近傍に設置する必要がある。
【0023】
これに対して、工程1及び工程2を経て得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相の反射面が基板面に対して非平行となる。
特に、工程1において得られる組成物層が条件1又は条件2を満たす組成物層であり、且つ、続く工程2を経て得られるコレステリック液晶層である場合、コレステリック液晶相の反射面は、基板面に対して傾斜する(図5参照。なお、図示しないが、工程1において得られる組成物層が条件3を満たす組成物層である場合、反射面は、基板面の法線方向に平行となる。)。図5に示すように、基板10上に配置されたコレステリック液晶層62の断面をSEMにて観察すると、明部64と暗部66とが交互に配列された配列方向Pが基板面10aに対して所定角度に傾斜している縞模様が観察される。つまり、コレステリック液晶層62は、反射光異方性を有しており、例えば、コレステリック液晶層62に法線方向から光が入射される場合、法線方向とは異なる方向に光が反射される(図5中の矢印参照)。
この結果として、コレステリック液晶層62を投影スクリーンに適用した場合、光源50の設置位置は特定の位置に制限されない。例えば、図6に示すように、投影スクリーン72の下方に光源50を設置しても、投影スクリーン72を、コレステリック液晶層62中の明部64と暗部66の配列方向Pが下向きとなるように配置すれば、投影スクリーン72の正面にいる観察者は、コレステリック反射光L3を観察できる。
【0024】
〔液晶組成物の作用機序〕
上述したとおり、本発明者らは、上記コレステリック液晶層の製造方法を達成する方法の一つとして、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤X、又は温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yを含む液晶組成物を使用する方法を見いだしている。
【0025】
なお、キラル剤の螺旋誘起力(HTP)は、下記式(1A)で表される螺旋配向能力を示すファクターである。
式(1A) HTP=1/(螺旋ピッチの長さ(単位:μm)×液晶組成物中におけるキラル剤濃度(質量%))[μm-1
螺旋ピッチの長さとは、コレステリック液晶相の螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)の長さをいい、液晶便覧(丸善株式会社出版)の196ページに記載の方法で測定できる。
なお、上記HTPの値は、キラル剤の種類のみならず、組成物中に含まれる液晶化合物の種類によっても影響を受ける。よって、例えば、所定のキラル剤X及び液晶化合物Aを含む組成物と、所定のキラル剤X及び液晶化合物Aとは異なる液晶化合物Bを含む組成物とを用意し、同一温度で両者のHTPを測定した場合、その値が異なる場合もある。
なお、キラル剤の螺旋誘起力(HTP)は、下記式(1B)としても表される。
式(1B):HTP=(液晶化合物の平均屈折率)/{(液晶組成物中におけるキラル剤濃度(質量%))×(中心反射波長(nm))}[μm-1
なお、液相組成物が、2種以上のキラル剤を含む場合、上記式(1A)及び(1B)における「液晶組成物中におけるキラル剤濃度」は全キラル剤の濃度の総和に相当する。
【0026】
<キラル剤Xを含む液晶組成物の作用機序>
以下に、まず、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する方法を説明する。
キラル剤Xを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する場合、工程1において条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を形成した後、工程2において、上記組成物層に光照射処理を施すことにより、上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる。つまり、上記工程2では、光照射処理によって、組成物層中のキラル剤Xの螺旋誘起力を変化させることにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させている。
【0027】
ここで、組成物層中の液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする上で、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、組成物層中に含まれているキラル剤の加重平均螺旋誘起力に概ね該当すると考えられる。ここでいう加重平均螺旋誘起力とは、例えば、2種類のキラル剤(キラル剤A及びキラル剤B)を併用した場合、下記式(1C)により表される。
式(1C) 加重平均螺旋誘起力(μm-1)=(キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×液晶組成物中におけるキラル剤Aの濃度(質量%)+キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×液晶組成物中におけるキラル剤Bの濃度(質量%))/(液晶組成物中におけるキラル剤Aの濃度(質量%)+液晶組成物中におけるキラル剤Bの濃度(質量%))
ただし、上記式(1C)において、キラル剤の螺旋方向が右巻きの場合、その螺旋誘起力は正の値とする。また、キラル剤の螺旋方向が左巻きの場合、その螺旋誘起力は負の値とする。つまり、例えば、例えば、螺旋誘起力が10μm-1のキラル剤の場合、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が右であるときは、螺旋誘起力を10μm-1として表す。一方、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が左であるときは、螺旋誘起力を-10μm-1として表す。
なお、上記式(1C)により得られる加重平均螺旋誘起力(μm-1)は、上記式(1A)及び上記式(1B)からも算出できる。
【0028】
以下に、例えば、組成物層中に下記特性を有するキラル剤A及びキラル剤Bが含まれている場合の加重平均螺旋誘起力について述べる。
図7に示すように、上記キラル剤Aは、キラル剤Xに該当し、左方向(-)の螺旋誘起力を有し、光照射により螺旋誘起力を低減させるキラル剤である。
また、図7に示すように、上記キラル剤Bは、キラル剤Aとは逆方向である右方向(+)の螺旋誘起力を有し、光照射により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。ここで、未光照射時の「キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Aの濃度(質量%)」と「キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Bの濃度(質量%)」は等しいものとする。なお、図7において、縦軸の「キラル剤の螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤の濃度(質量%)」は、その値がゼロから離れるほど、螺旋誘起力が大きくなる。
組成物層が上記キラル剤A及び上記キラル剤Bを含む場合、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、キラル剤A及びキラル剤Bの加重平均螺旋誘起力に一致する。この結果として、上記キラル剤Aと上記キラル剤Bとを併用した系においては、図8に示すように、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、照射光量が大きいほど、キラル剤B(キラル剤Yに該当)が誘起する螺旋の方向(+)に螺旋誘起力が大きくなると考えられる。
【0029】
本実施形態のコレステリック液晶層の製造方法においては、工程1により形成される組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は特に制限されないが、組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~1.0μm-1が更に好ましく、0.0~0.5μm-1が特に好ましく、ゼロが最も好ましい(図8参照)。一方で、工程2の光照射処理の際においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、液晶化合物をコレステリック配向させることが可能であれば特に制限されないが、例えば、10.0μm-1以上が好ましく、10.0~200.0μm-1がより好ましく、20.0~200.0μm-1が更に好ましい。
つまり、工程1の際には組成物層中のキラル剤Xはその螺旋誘起力が略ゼロに相殺されることによって、組成物層中の液晶化合物を配向させて、傾斜配向(図1参照)、ハイブリッド配向、又は垂直配向とすることができる。次いで、工程2の光照射処理を契機として、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させて、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を右方向(+)又は左方向(-)のいずれかの方向に増大させることで、コレステリック液晶相の反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層が得られる。特に、工程1により得られる組成物層が条件1又は条件2を満たす組成物層である場合、図5に示すような、コレステリック液晶相の反射面が基板面に対して傾斜したコレステリック液晶層が得られる。
【0030】
<キラル剤Yを含む液晶組成物の作用機序>
次に、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する方法を説明する。
キラル剤Yを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する場合、工程1において条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を形成した後、工程2において、上記組成物層に冷却処理又は加熱処理を施すことにより、上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる。つまり、上記工程2では、冷却処理又は加熱処理によって、組成物層中のキラル剤Yの螺旋誘起力を変化させることにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させている。
【0031】
上述のとおり、組成物層中の液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする上で、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、組成物層中に含まれているキラル剤の加重平均螺旋誘起力に概ね相当すると考えられる。ここでいう加重平均螺旋誘起力とは、上述した通りである。
以下に、工程2において冷却処理を施すことによって上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる実施形態を一例として、キラル剤Yの作用機序を説明する。
まず、以下において、例えば、組成物層中に下記特性を有するキラル剤A及びキラル剤Bが含まれている場合の加重平均螺旋誘起力について述べる。
図9に示すように、上記キラル剤Aは、キラル剤Yに該当し、工程1において条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11、及び工程2の冷却処理が実施される温度T12において左方向(-)の螺旋誘起力を有し、より低温領域であるほど左方向(-)への螺旋誘起力を増大させるキラル剤である。また、図9に示すように、上記キラル剤Bは、キラル剤Aとは逆方向である右方向(+)の螺旋誘起力を有し、温度変化により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。ここで、温度T11時の「キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Aの濃度(質量%)」と「キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Bの濃度(質量%)」は等しいものとする。
組成物層が上記キラル剤A及びキラル剤Bを含む場合、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、キラル剤A及びキラル剤Bの加重平均螺旋誘起力に一致する。この結果として、上記キラル剤Aと上記キラル剤Bとを併用した系においては、図10に示すように、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、より低温領域であるほど、キラル剤A(キラル剤Yに該当)が誘起する螺旋の方向(-)に螺旋誘起力が大きくなると考えられる。
【0032】
本実施形態のコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は特に制限されないが、工程1の条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を形成する際においては(つまり、本実施形態の場合、条件1、条件2、又は条件3を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11においては)組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~1.0μm-1が更に好ましく、0.0~0.5μm-1が特に好ましく、ゼロが最も好ましい。
一方で、工程2の冷却処理が実施される温度T12においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、液晶化合物をコレステリック配向させることが可能であれば特に制限されないが、例えば、10.0μm-1以上が好ましく、10.0~200.0μm-1がより好ましく、20.0~200.0μm-1が更に好ましい(図10参照)。
つまり、温度T11においてキラル剤Yはその螺旋誘起力が略ゼロに相殺されているため、液晶化合物を傾斜配向(図1参照)、ハイブリッド配向、又は垂直配向とすることができる。次いで、工程2の冷却処理又は加熱処理(温度T12への温度変化)を契機として、キラル剤Yの螺旋誘起力を増大させて、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を右方向(+)又は左方向(-)のいずれかの方向に増大させることで、コレステリック液晶相の反射面が基板面に対して非平行なコレステリック液晶層が得られる。特に、工程1により得られる組成物層が条件1又は条件2を満たす組成物層である場合、図5に示すような、コレステリック液晶相の反射面が基板面に対して傾斜したコレステリック液晶層が得られる。
【0033】
なお、上記キラル剤Xを含む液晶組成物、又はキラル剤Yを含む液晶組成物を用いて、本発明のコレステリック液晶層の製造方法により形成されるコレステリック液晶層は、図11に示すように、明部84及び暗部86との配列方向Pが基板面10aに対して非平行であると共に、明部84及び暗部86が波状構造(アンジュレーション構造)をとっている場合もある。つまり、明部84及び暗部86が波状構造をとることにより、反射面の法線が若干傾いている。このような波状構造(凹凸構造)を有するコレステリック液晶層82に対して光が入射されると、入射光の一部が斜め方向に反射されるため、拡散反射性(特に、広角反射性)にも優れる。
【0034】
以下に、本発明のコレステリック液晶層の製造方法の各工程について詳述する。なお、以下においては、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法と、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法とに分けて詳述する。
【0035】
〔キラル剤Xを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法〕
以下、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法(以下、「製造方法X」ともいう。)について説明する。
製造方法Xは、下記工程1A及び工程2Aを少なくとも有する。
工程1A:キラル剤X及び液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程
工程2A:上記組成物層に対して光照射処理を施すことにより、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物少なくとも一部が、上記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
条件3:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、垂直配向している
また、液晶化合物が重合性基を有する場合、製造方法Xは、後述するように、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
【0036】
以下、各工程で使用される材料、及び、各工程の手順について詳述する。
【0037】
<工程1A>
工程1Aは、キラル剤X及び液晶化合物を含む液晶組成物(以下、「組成物X」ともいう)。を用いて、基板上に上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層を形成する工程である。
以下では、まず、本工程で使用される基板、並びに、組成物Xについて詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0038】
(基板)
基板は、後述する組成物の層を支持する板である。なかでも、透明基板であることが好ましい。なお、透明基板とは、可視光の透過率が60%以上である基板を意図し、その透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
基板を構成する材料は特に制限されず、例えば、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、及び、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー等が挙げられる。
基板には、UV(紫外線)吸収剤、マット剤微粒子、可塑剤、劣化防止剤、及び、剥離剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
なお、基板は、可視光領域で低複屈折性であることが好ましい。例えば、基板の波長550nmにおける位相差は50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
【0039】
基板の厚さは特に制限されないが、薄型化、及び、取り扱い性の点から、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
上記厚さは平均厚さを意図し、基板の任意の5点の厚さを測定し、それらを算術平均したものである。この厚さの測定方法に関しては、後述するコレステリック液晶層の厚さも同様である。
【0040】
また、上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層を得る上では、上記基板は、基板表面にプレチルト角を有するラビング配向膜、又は、一軸配向若しくはハイブリッド配向された液晶化合物を含む配向膜を有することが好ましい。
【0041】
(組成物X)
組成物Xは、液晶化合物と、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤Xと、を含む。以下に、各成分について説明する。
上述したとおり、工程1Aにより得られる組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~1.0μm-1が更に好ましく、0.0~0.5μm-1が特に好ましく、ゼロが最も好ましい。したがって、キラル剤Xが未光照射処理の状態で上記所定範囲を超える螺旋誘起力を有する場合、組成物Xは、キラル剤Xとは逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤(以下、「キラル剤XA」ともいう。)を含み、工程1Aの際にはキラル剤Xの螺旋誘起力を略ゼロに相殺させておく(つまり、工程1Aにより得られる組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を上記所定範囲としておく)ことが好ましい。なお、キラル剤XAは、光照射処理により螺旋誘起力を変化させない化合物であることがより好ましい。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Xを複数種含むときであって、未光照射処理の状態で複数種のキラル剤Xの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲外の螺旋誘起力である場合、「キラル剤Xとは逆方向の螺旋を誘起させる他のキラル剤XA」とは、上記複数種のキラル剤Xの加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤を意図する。
キラル剤Xが一種単独で、未光照射処理の状態で螺旋誘起力を有さず、光照射によって螺旋誘起力を増大させる特性を有する場合、キラル剤XAを併用しなくてもよい。
【0042】
≪液晶化合物≫
液晶化合物の種類は、特に制限されない。
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物、円盤状液晶化合物)とに分類できる。更に、棒状タイプ及び円盤状タイプには、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。また、2種以上の液晶化合物を併用してもよい。
【0043】
液晶化合物は、重合性基を有していてもよい。重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましい。より具体的には、重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基、又は、オキセタン基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0044】
液晶化合物としては、以下の式(I)で表される液晶化合物が、好適に利用される。
【0045】
【化1】
【0046】
式中、
Aは、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基を示し、Aのうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基を示し、
Lは、単結合、又は、-CH2O-、-OCH2-、-(CH22OC(=O)-、-C(=O)O(CH22-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-NHC(=O)-、-C(=O)NH-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=CH-C(=O)O-、及び、-OC(=O)-CH=CH-からなる群から選択される連結基を示し、
mは3~12の整数を示し、
Sp1及びSp2は、それぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
1及びQ2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、以下の式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、ただしQ1及びQ2のいずれか一方は重合性基を示す;
【0047】
【化2】
【0048】
Aは、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は、置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基である。本明細書において、フェニレン基というとき、1,4-フェニレン基であるのが好ましい。
なお、Aのうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基である。
m個のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0049】
mは3~12の整数を示し、3~9の整数であるのが好ましく、3~7の整数であるのがより好ましく、3~5の整数であるのが更に好ましい。
【0050】
式(I)中の、フェニレン基及びトランス-1,4-シクロヘキシレン基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アミド基、アミノ基、及びハロゲン原子、並びに、上記の置換基を2つ以上組み合わせて構成される基からなる群から選択される置換基が挙げられる。また、置換基の例としては、後述の-C(=O)-X3-Sp3-Q3で表される置換基が挙げられる。フェニレン基及びトランス-1,4-シクロヘキシレン基は、置換基を1~4個有していてもよい。2個以上の置換基を有するとき、2個以上の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
本明細書において、アルキル基は直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は1~30が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及び、ドデシル基等が挙げられる。アルコキシ基中のアルキル基の説明も、上記アルキル基に関する説明と同じである。また、本明細書において、アルキレン基というときのアルキレン基の具体例としては、上記のアルキル基の例それぞれにおいて、任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
本明細書において、シクロアルキル基の炭素数は、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましく、6以下が特に好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0053】
フェニレン基及びトランス-1,4-シクロヘキシレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、及び、-C(=O)-X3-Sp3-Q3からなる群から選択される置換基が好ましい。ここで、X3は単結合、-O-、-S-、もしくは-N(Sp4-Q4)-を示すか、又は、Q3及びSp3と共に環構造を形成している窒素原子を示す。Sp3及びSp4は、それぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。
3及びQ4はそれぞれ独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、もしくは-C(=O)O-で置換された基、又は式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す。
【0054】
シクロアルキル基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基として、具体的には、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、及び、モルホルニル基等が挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラニル基が好ましく、2-テトラヒドロフラニル基がより好ましい。
【0055】
式(I)において、Lは、単結合、又は、-CH2O-、-OCH2-、-(CH22OC(=O)-、-C(=O)O(CH22-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-CH=CH-C(=O)O-、及び、-OC(=O)-CH=CH-からなる群から選択される連結基を示す。Lは、-C(=O)O-又はOC(=O)-であるのが好ましい。m個のLは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0056】
Sp1及びSp2は、それぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又は、-C(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。Sp1及びSp2はそれぞれ独立に、両末端にそれぞれ-O-、-OC(=O)-、及び、-C(=O)O-からなる群から選択される連結基が結合した炭素数1から10の直鎖のアルキレン基、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-O-、及び、炭素数1から10の直鎖のアルキレン基からなる群から選択される基を1又は2以上組み合わせて構成される連結基であるのが好ましく、両末端に-O-がそれぞれ結合した炭素数1から10の直鎖のアルキレン基であるのがより好ましい。
【0057】
1及びQ2はそれぞれ独立に、水素原子、又は、以下の式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示す。ただし、Q1及びQ2のいずれか一方は重合性基を示す。
【0058】
【化3】
【0059】
重合性基としては、アクリロイル基(式(Q-1))又はメタクリロイル基(式(Q-2))が好ましい。
【0060】
上記液晶化合物の具体例としては、以下の式(I-11)で表される液晶化合物、式(I-21)で表される液晶化合物、式(I-31)で表される液晶化合物が挙げられる。上記以外にも、特開2013-112631号公報の式(I)で表される化合物、特開2010-70543号公報の式(I)で表される化合物、特開2008-291218号公報の式(I)で表される化合物、特許第4725516号の式(I)で表される化合物、特開2013-087109号公報の一般式(II)で表される化合物、特開2007-176927号公報の段落[0043]記載の化合物、特開2009-286885号公報の式(1-1)で表される化合物、WO2014/10325号の一般式(I)で表される化合物、特開2016-81035号公報の式(1)で表される化合物、並びに、特開2016-121339号公報の式(2-1)及び式(2-2)で表される化合物、等に記載の公知の化合物が挙げられる。
【0061】
式(I-11)で表される液晶化合物
【化4】
【0062】
式中、R11は水素原子、炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキル基、又は、-Z12-Sp12-Q12を示し、
11は単結合、-C(=O)O-、又は、-O(C=O)-を示し、
12は-C(=O)O-、-OC(=O)-、又は、-CONR2-を示し、
2は、水素原子、又は、炭素数1から3のアルキル基を示し、
11及びZ12はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-NH-、-N(CH3)-、-S-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、又は、-C(=O)NR12-を示し、
12は水素原子又はSp12-Q12を示し、
Sp11及びSp12はそれぞれ独立に、単結合、Q11で置換されていてもよい炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、又は、Q11で置換されていてもよい炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において、いずれか1つ以上の-CH2-を-O-、-S-、-NH-、-N(Q11)-、又は、-C(=O)-に置き換えて得られる連結基を示し、
11は水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、もしくは-C(=O)O-で置換された基、又は、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、
12は水素原子又は式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基を示し、
11は0~2の整数を示し、
11は1又は2の整数を示し、
11は1~3の整数を示し、
複数のR11、複数のL11、複数のL12、複数のl11、複数のZ11、複数のSp11、及び、複数のQ11はそれぞれ互いに同じでも異なっていてもよい。
また、式(I-11)で表される液晶化合物は、R11として、Q12が式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基である-Z12-Sp12-Q12を少なくとも1つ含む。
また、式(I-11)で表される液晶化合物は、Z11が-C(=O)O-又はC(=O)NR12-、及び、Q11が式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基である-Z11-Sp11-Q11であるのが好ましい。また、式(I-11)で表される液晶化合物は、R11として、Z12が-C(=O)O-又はC(=O)NR12-、及び、Q12が式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基である-Z12-Sp12-Q12であるのが好ましい。
【0063】
式(I-11)で表される液晶化合物に含まれる1,4-シクロヘキシレン基はいずれもトランス-1,4-シクロヘキレン基である。
式(I-11)で表される液晶化合物の好適態様としては、L11が単結合、l11が1(ジシクロヘキシル基)、かつ、Q11が式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基である化合物が挙げられる。
式(I-11)で表される液晶化合物の他の好適態様としては、m11が2、l11が0、かつ、2つのR11がいずれも-Z12-Sp12-Q12を表し、Q12が式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択される重合性基である化合物が挙げられる。
【0064】
式(I-21)で表される液晶化合物
【化5】
【0065】
式中、Z21及びZ22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
上記置換基はいずれもそれぞれ独立に、-CO-X21-Sp23-Q23、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
m21は1又は2の整数を示し、n21は0又は1の整数を示し、
m21が2を示すときn21は0を示し、
m21が2を示すとき2つのZ21は同一であっても異なっていてもよく、
21及びZ22の少なくともいずれか一つは置換基を有していてもよいフェニレン基であり、
21、L22、L23及びL24はそれぞれ独立に、単結合、又は、-CH2O-、-OCH2-、-(CH22OC(=O)-、-C(=O)O(CH22-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-CH=CH-C(=O)O-、及びOC(=O)-CH=CH-からなる群から選択される連結基を示し、
21は-O-、-S-、もしくは-N(Sp25-Q25)-を示すか、又は、Q23及びSp23と共に環構造を形成する窒素原子を示し、
21は1から4の整数を示し、
Sp21、Sp22、Sp23、及びSp25はそれぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
21及びQ22はそれぞれ独立に、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、
23は水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、もしくは-C(=O)O-で置換された基、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基、又は、X21がQ23及びSp23と共に環構造を形成する窒素原子である場合において単結合を示し、
25は、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、もしくは-C(=O)O-で置換された基、又は、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、Sp25が単結合のとき、Q25は水素原子ではない。
【0066】
式(I-21)で表される液晶化合物は、1,4-フェニレン基及びトランス-1,4-シクロヘキシレン基が交互に存在する構造であることも好ましく、例えば、m21が2であり、n21が0であり、かつ、Z21がQ21側からそれぞれ置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基であるか、又は、m21が1であり、n21が1であり、Z21が置換基を有していてもよいアリーレン基であり、かつ、Z22が置換基を有していてもよいアリーレン基である構造が好ましい。
【0067】
式(I-31)で表される液晶化合物;
【0068】
【化6】
【0069】
式中、R31及びR32はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、-C(=O)-X31-Sp33-Q33からなる群から選択される基であり、
n31及びn32はそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、
31は単結合、-O-、-S-、もしくは-N(Sp34-Q34)-を示すか、又は、Q33及びSp33と共に環構造を形成している窒素原子を示し、
31は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
32は、置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキシレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を示し、
上記置換基はいずれもそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、-C(=O)-X31-Sp33-Q33からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
m31は1又は2の整数を示し、m32は0~2の整数を示し、
m31及びm32が2を示すとき2つのZ31、Z32は同一であっても異なっていてもよく、
31及びL32はそれぞれ独立に、単結合、又は、-CH2O-、-OCH2-、-(CH22OC(=O)-、-C(=O)O(CH22-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-CH=CH-C(=O)O-、及びOC(=O)-CH=CH-からなる群から選択される連結基を示し、
Sp31、Sp32、Sp33及びSp34はそれぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、
31及びQ32はそれぞれ独立に、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、
33及びQ34はそれぞれ独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、もしくは-C(=O)O-で置換された基、又は、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し、Q33はX31及びSp33と共に環構造を形成している場合において、単結合を示してもよく、Sp34が単結合のとき、Q34は水素原子ではない。
式(I-31)で表される液晶化合物として、特に好ましい化合物としては、Z32がフェニレン基である化合物及びm32が0である化合物が挙げられる。
【0070】
式(I)で表される化合物は、以下の式(II)で表される部分構造を有することも好ましい。
【化7】
式(II)において、黒丸は、式(I)の他の部分との結合位置を示す。式(II)で表される部分構造は式(I)中の下記式(III)で表される部分構造の一部として含まれていればよい。
【0071】
【化8】
【0072】
式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及び、-C(=O)-X3-Sp3-Q3で表される基からなる群から選択される基である。ここで、X3は単結合、-O-、-S-、もしくは-N(Sp4-Q4)-を示すか、又は、Q3及びSp3と共に環構造を形成している窒素原子を示す。X3は単結合又はO-であることが好ましい。R1及びR2は、-C(=O)-X3-Sp3-Q3であることが好ましい。また、R1及びR2は、互いに同一であることが好ましい。R1及びR2のそれぞれのフェニレン基への結合位置は特に制限されない。
【0073】
Sp3及びSp4はそれぞれ独立に、単結合、又は、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又はC(=O)O-で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。Sp3及びSp4としては、それぞれ独立に、炭素数1から10の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数1から5の直鎖のアルキレン基がより好ましく、炭素数1から3の直鎖のアルキレン基が更に好ましい。
3及びQ4はそれぞれ独立に、水素原子、シクロアルキル基、シクロアルキル基において1つもしくは2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-もしくは-C(=O)O-で置換された基、又は、式(Q-1)~式(Q-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す。
【0074】
式(I)で表される化合物は、例えば、以下式(II-2)で表される構造を有することも好ましい。
【0075】
【化9】
【0076】
式中、A1及びA2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいトランス-1,4-シクロヘキレン基を示し、上記置換基はいずれもそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、及び、-C(=O)-X3-Sp3-Q3からなる群から選択される1から4個の置換基であり、
1、L2及びL3は単結合、又は、-CH2O-、-OCH2-、-(CH22OC(=O)-、-C(=O)O(CH22-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-CH=CH-C(=O)O-、及び、-OC(=O)-CH=CH-からなる群から選択される連結基を示し、
n1及びn2はそれぞれ独立に、0から9の整数を示し、かつn1+n2は9以下である。
1、Q2、Sp1、及び、Sp2の定義は、上記式(I)中の各基の定義と同義である。X3、Sp3、Q3、R1、及び、R2の定義は、上記式(II)中の各基の定義と同義である。
【0077】
本発明に用いる液晶化合物としては、特開2014-198814号公報に記載される、以下の式(IV)で表される化合物、特に、式(IV)で表される1つの(メタ)アクリレート基を有する重合性液晶化合物も、好適に利用される。
【0078】
式(IV)
【化10】
【0079】
式(IV)中、A1は、炭素数2~18のアルキレン基を表し、アルキレン基中の1つのCH2又は隣接していない2つ以上のCH2は、-O-で置換されていてもよい;
1は、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は単結合を表し;
2は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し;
1は、水素原子又はメチル基を表し;
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、ビニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、アセトキシ基、N-アセチルアミド基、アクリロイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アリルオキシカルバモイル基、アルキル基の炭素数が1~4であるN-アルキルオキシカルバモイル基、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N-(2-アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、又は、以下の式(IV-2)で表される構造を表し;
1、L2、L3及びL4は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアシル基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、L1、L2、L3及びL4のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。
【0080】
-Z5-T-Sp-P 式(IV-2)
式(IV-2)中、Pはアクリル基、メタクリル基又は水素原子を表し、Z5は単結合、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR1-(R1は水素原子又はメチル基を表す)、-NR1C(=O)-、-C(=O)S-、又は、-SC(=O)-を表し、Tは1,4-フェニレンを表し、Spは置換基を有していてもよい炭素数1~12の2価の脂肪族基を表し、脂肪族基中の1つのCH2又は隣接していない2以上のCH2は、-O-、-S-、-OC(=O)-、-C(=O)O-又はOC(=O)O-で置換されていてもよい。
【0081】
上記式(IV)で表される化合物は、以下の式(V)で表される化合物であることが好ましい。
式(V)
【化11】
式(V)中、n1は3~6の整数を表し;
11は水素原子又はメチル基を表し;
12は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し;
12は、水素原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、又は、以下の式(IV-3)で表される構造を表す。
-Z51-T-Sp-P 式(IV-3)
式(IV-3)中、Pはアクリル基又はメタクリル基を表し;
51は、-C(=O)O-、又は、-OC(=O)-を表し;Tは1,4-フェニレンを表し;
Spは置換基を有していてもよい炭素数2~6の2価の脂肪族基を表す。この脂肪族基中の1つのCH2又は隣接していない2以上のCH2は、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-又はOC(=O)O-で置換されていてもよい。
【0082】
上記n1は3~6の整数を表し、3又は4であることが好ましい。
上記Z12は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し、-C(=O)-を表すことが好ましい。
上記R12は、水素原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、又は、上記式(IV-3)で表される基を表し、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、又は、上記式(IV-3)で表される基を表すことが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、又は、上記式(IV-3)で表される構造を表すことがより好ましい。
【0083】
本発明に用いる液晶化合物としては、特開2014-198814号公報に記載される、以下の式(VI)で表される化合物、特に、以下の式(VI)で表される(メタ)アクリレート基を有さない液晶化合物も好適に利用される。
【0084】
式(VI)
【化12】
式(VI)中、Z3は、-C(=O)-又はCH=CH-C(=O)-を表し;
4は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し;
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、置換基を有していてもよい芳香環、シクロヘキシル基、ビニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基、アセトキシ基、アクリロイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、マレイミド基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、アリルオキシカルバモイル基、アルキル基の炭素数が1~4であるN-アルキルオキシカルバモイル基、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、N-(2-アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ基、又は、以下の式(VI-2)で表される構造を表し;
5、L6、L7及びL8は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアシル基、ハロゲン原子、又は、水素原子を表し、L5、L6、L7及びL8のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。
【0085】
-Z5-T-Sp-P 式(VI-2)
式(VI-2)中、Pはアクリル基、メタクリル基又は水素原子を表し、Z5は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR1-(R1は水素原子又はメチル基を表す)、-NR1C(=O)-、-C(=O)S-、又はSC(=O)-を表し、Tは1,4-フェニレンを表し、Spは置換基を有していてもよい炭素数1~12の2価の脂肪族基を表す。ただし、この脂肪族基中の1つのCH2又は隣接していない2以上のCH2は、-O-、-S-、-OC(=O)-、-C(=O)O-又はOC(=O)O-で置換されていてもよい。
【0086】
上記式(VI)で表される化合物は、以下の式(VII)で表される化合物であることが好ましい。
式(VII)
【化13】
【0087】
式(VII)中、Z13は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し;
14は、-C(=O)-又はCH=CH-C(=O)-を表し;
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、又は上記式(IV-3)で表される構造を表す。
【0088】
上記Z13は、-C(=O)-又はC(=O)-CH=CH-を表し、-C(=O)-が好ましい。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4の直鎖アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アリルオキシ基、又は、上記式(IV-3)で表される構造を表し、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、又は、上記式(IV-3)で表される構造を表すことが好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、又は、上記式(IV-3)で表される構造を表すことがより好ましい。
【0089】
本発明に用いる液晶化合物としては、特開2014-198814号公報に記載される、以下の式(VIII)で表される化合物、特に、以下の式(VIII)で表される2つの(メタ)アクリレート基を有する重合性液晶化合物も好適に利用される。
【0090】
式(VIII)
【化14】
【0091】
式(VIII)中、A2及びA3は、それぞれ独立して、炭素数2~18のアルキレン基を表し、アルキレン基中の1つのCH2又は隣接していない2つ以上のCH2は、-O-で置換されていてもよい;
5は、-C(=O)-、-OC(=O)-又は単結合を表し;
6は、-C(=O)-、-C(=O)O-又は単結合を表し;
5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し;
9、L10、L11及びL12は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数2~5のアルコキシカルボニル基、炭素数2~4のアシル基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、L9、L10、L11及びL12のうち少なくとも1つは水素原子以外の基を表す。
【0092】
上記式(VIII)で表される化合物は、下記式(IX)で表される化合物であることが好ましい。
式(IX)
【化15】
【0093】
式(IX)中、n2及びn3は、それぞれ独立して、3~6の整数を表し;
15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。
【0094】
式(IX)中、n2及びn3は、それぞれ独立して、3~6の整数を表し、上記n2及びn3が4であることが好ましい。
式(IX)中、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、上記R15及びR16が水素原子を表すことが好ましい。
【0095】
このような液晶化合物は、公知の方法により製造できる。
なお、上記条件1及び上記条件2を満たす組成物層を得る上では、界面におけるプレチルト角が大きい液晶化合物を使用することが好ましい。
【0096】
≪光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X≫
キラル剤Xは、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤であれば特に制限されない。
また、キラル剤Xは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤Xは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤Xとして用いることもできる。キラル剤Xは、重合性基を有していてもよい。
【0097】
キラル剤Xとしては、いわゆる光反応型キラル剤が挙げられる。光反応型キラル剤とは、キラル部位と光照射によって構造変化する光反応部位を有し、例えば、照射光量に応じて液晶化合物の捩れ力を大きく変化させる化合物である。
光照射によって構造変化する光反応部位の例としては、フォトクロミック化合物(内田欣吾、入江正浩、化学工業、vol.64、640p,1999、内田欣吾、入江正浩、ファインケミカル、vol.28(9)、15p,1999)等が挙げられる。また、上記構造変化とは、光反応部位への光照射により生ずる、分解、付加反応、異性化、及び2量化反応等を意味し、上記構造変化は不可逆的であってもよい。また、キラル部位としては、例えば、野平博之、化学総説、No.22液晶の化学、73p:1994に記載の不斉炭素等が相当する。
【0098】
上記光反応型キラル剤としては、例えば、特開2001-159709号公報の段落0044~0047に記載の光反応型キラル剤、特開2002-179669号公報の段落0019~0043に記載の光学活性化合物、特開2002-179633号公報の段落0020~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-179670号公報の段落0016~0040に記載の光学活性化合物、特開2002-179668号公報の段落0017~0050に記載の光学活性化合物、特開2002-180051号公報の段落0018~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-338575号公報の段落0016~0055に記載の光学活性化合物、及び特開2002-179682号公報の段落0020~0049に記載の光学活性化合物等が挙げられる。
【0099】
キラル剤Xとしては、なかでも、光異性化部位を少なくとも一つ有する化合物が好ましい。上記光異性化部位としては、可視光の吸収が小さく、光異性化が起こりやすく、且つ、光照射前後の螺旋誘起力差が大きいという点で、シンナモイル部位、カルコン部位、アゾベンゼン部位、スチルベン部位又はクマリン部位が好ましく、シンナモイル部位又はカルコン部位がより好ましい。なお、光異性化部位は、上述した光照射によって構造変化する光反応部位に該当する。
また、キラル剤Xは、光照射前後の螺旋誘起力差が大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物、イソマンニド系光学化合物、又はビナフトール系光学活性化合物が好ましい。つまり、キラル剤Xは、上述したキラル部位として、イソソルビド骨格、イソマンニド骨格、又はビナフトール骨格を有していることが好ましい。キラル剤Xとしては、なかでも、光照射前後の螺旋誘起力差がより大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物又はビナフトール系光学活性化合物がより好ましく、イソソルビド系光学活性化合物が更に好ましい。
【0100】
コレステリック液晶相の螺旋ピッチはキラル剤Xの種類及びその添加濃度に大きく依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。
【0101】
キラル剤Xは、1種単独で使用しても、複数種を併用してもよい。
【0102】
組成物X中におけるキラル剤の総含有量(組成物X中の全てのキラル剤の総含有量)は、液晶化合物の全質量に対して、2.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましい。また、組成物X中におけるキラル剤の総含有量の上限は、コレステリック液晶層のヘイズ抑制の点で、液晶化合物の全質量に対して、15.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以下がより好ましい。
【0103】
≪任意の成分≫
組成物Xには、液晶化合物、キラル剤X以外の他の成分が含まれていてもよい。
【0104】
≪キラル剤XA≫
キラル剤XAとしては、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化しないキラル剤が好ましい。
また、キラル剤XAは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤XAは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤XAとして用いることもできる。キラル剤XAは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤XAとしては、公知のキラル剤を使用できる。
液晶組成物が、キラル剤Xを1種単独で含み、キラル剤Xが未光照射処理の状態で所定範囲(例えば、0.0~1.9μm-1)を超える螺旋誘起力を有する場合、キラル剤XAは、上述したキラル剤Xと逆向きの螺旋を誘起するキラル剤であることが好ましい。つまり、例えば、キラル剤Xにより誘起する螺旋が右方向の場合には、キラル剤XAにより誘起する螺旋は左方向となる。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Xを複数種含むときであって、未光照射処理の状態でその加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲を超える場合、キラル剤XAは、上記加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤であることが好ましい。
【0105】
≪重合開始剤≫
組成物Xは、重合開始剤を含んでいてもよい。特に、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物Xが重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
組成物X中での重合開始剤の含有量(重合開始剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1.0~8.0質量%がより好ましい。
【0106】
≪界面活性剤≫
組成物Xは、組成物層の基板側表面及び/又は基板とは反対側の表面に偏在し得る界面活性剤を含んでいることが好ましい。組成物Xが界面活性剤を含む場合、上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層が得られやすくなり、また、安定的又は迅速なコレステリック液晶相の形成が可能となる。また、後述する図13及び図14に示す、斜め方向からの入射光に対して、高い反射率及び広い反射帯域を有し、且つ円偏光度の高い透過光を与え得るコレステリック液晶層が得られやすい。
界面活性剤としては特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、ボロン酸化合物、及びイオン系界面活性剤等が挙げられる。
上記フッ素系界面剤としては特に制限されないが、パーフルオロアルキル化合物(例えば、特許4592225号明細書、及び特許第5774518号明細書に記載されたパーフルオロアルキレン化合物、並びに商品名「フタージェント」(ネオス社製)等)、及びパーフルオロアルキル基(炭素数1~10が好ましい)を側鎖に有する高分子(例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマーとする高分子)等が挙げられる。
上記ボロン酸化合物としては特に制限されないが、例えば、特開2013-54201公報に記載されたボロン酸化合物等が挙げられる。
上記イオン系界面活性剤としては特に制限されないが、カチオン系界面活性剤が好ましく、ピリジニウム化合物がより好ましい。ピリジニウム化合物としては、例えば、特開2006-113500号公報、及び特開2012-208397号公報等に記載の化合物を使用できる。
ピリジニウム化合物としては、なかでも、下記一般式(1)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
【0107】
【化16】
【0108】
上記式中、Rは、アミノ基、又は炭素数が1~20の置換アミノ基を表す。Xは、アニオンを表す。L1は、2価の連結基を表す。Y1は、5又は6員環を含む2価の連結基を表す。Zは、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が2~12のアルコキシ基、又は炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基を表す。nは、0又は1を表す。
【0109】
上記Rで表される置換アミノ基は、下記一般式(2)で表される。
一般式(2): *-N(R11)(R12
一般式(2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表す。但し、R11及びR12のうち少なくとも1つは置換基であり、且つ、一般式(2)で表される置換アミノ基の総炭素数は1~20である。*は、結合位置を表す。
【0110】
11及びR12で表される置換基としては、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましい。なお、R11及びR12は、互いに結合して環を形成してもよい。上記環としては、式中に明示される窒素原子を含み、且つ、5員環又は6員環であることが好ましい。
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0111】
上記Xで表されるアニオンとしては特に制限されないが、例えば、ハロゲンイオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、及びヨウ素イオン等)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、ビニルスルホン酸イオン、アリルスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、p-クロロベンゼンスルホン酸イオン、p-ビニルベンゼンスルホン酸イオン、1,3-ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5-ナフタレンジスルホン酸イオン、及び2,6-ナフタレンジスルホン酸イオン等)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、p-ビニル安息香酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、及び水酸化物イオン等が挙げられる。なかでも、ハロゲンイオン、スルホネートイオン、又は水酸化物イオンが好ましい。
【0112】
1で表される2価の連結基としては特に制限されないが、アルキレン基、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NRa-(但し、Raは、水素原子、又は炭素数が1~5のアルキル基を表す。)、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基からなる群より選ばれる1種以上からなる炭素数が1~20の2価の連結基が挙げられる。
1で表される2価の連結基としては、-AL-又は-O-AL-が好ましい。なお、ALはアルキレン基を表す。L1で表される2価の連結基としては、なかでも、炭素数が1~10の-AL-、又は炭素数が1~10の-O-AL-がより好ましく、炭素数が1~5の-AL-、又は炭素数が1~5の-O-AL-が更に好ましい。
【0113】
1で表される5又は6員環を含む2価の連結基としては特に制限されない。上記5又は6員環としては、脂肪族環、芳香族環、又は複素環が好ましい。なお、上記5員環又は6員環は、更に他の5員環又は5員環が縮合していてもよい。
上記脂肪族環としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、及びシクロヘキサジエン環が挙げられる。
上記芳香族環としては、ベンゼン環が好ましい。
複素環中に含まれるヘテロ原子としては特に制限されないが、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が好ましい。
複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、及びトリアジン環等が挙げられ、6員環の複素環が好ましい。
また、Y1中の上記5又は6員環は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ、炭素数1~12のアルキル基、及び炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられる。
【0114】
また、Y1で表される5又は6員環を含む2価の連結基は、例えば、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NRa-(但し、Raは、水素原子、又は炭素数が1~5のアルキル基を表す。)、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、及び-N=N-からなる群より選ばれる1種又は2種以上を組み合わせた基を含んでいてもよい。
【0115】
Zで表される炭素数が1~12のアルキル基としては特に制限されないが、炭素数6~12のアルキル基が好ましい。
Zで表される炭素数が2~12のアルコキシ基としては特に制限されないが、炭素数6~12のアルコキシ基が好ましい。
Zで表される炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基としては、特に制限されないが、炭素数6~12のアルコキシカルボニル基が好ましい。
なお、Zで表される炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が2~12のアルコキシ基、及び炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。
【0116】
一般式(1)で表されるピリジニウム化合物としては、下記一般式(3)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
【0117】
【化17】
【0118】
上記一般式(3)中、R、Z、X、及びnは、上記一般式(1)中のR、Z、X、及びnと同義であり、好適態様も同じである。
【0119】
pは、1~10の整数を表し、1又は2が好ましい。なお、一般式(3)中の-C2p-は、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。-C2p-は、直鎖状であることが好ましい。
mは、1又は2を表す。mが2の場合、複数存在するL12及び複数存在するY13は、同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
11は、単結合、-O-、-O-AL-O-、-O-AL-O-CO-、-O-AL-CO-O-、-CO-O-AL-O-、-CO-O-AL-O-CO-、-CO-O-AL-CO-O-、-O-CO-AL-O-、-O-CO-AL-O-CO-、又は-O-CO-AL-CO-O-が好ましく、単結合または-O-が更に好ましく、-O-が最も好ましい。なお、ALは、炭素数1~10のアルキレン基を表す。
【0121】
12は、単結合、-O-、-O-CO-、-CO-O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、又は-N=N-を表す。
【0122】
11及びY13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を表し、上記Y1で表される置換基を有していてもよい6員環と同様のものが挙げられる。
【0123】
界面活性剤としてイオン系界面活性剤(好ましくは、カチオン系界面活性剤)を含むことが好ましい。
組成物X中、上記イオン系界面活性剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。なお、その上限値は、例えば、8.0質量部以下である。
上記イオン系界面活性剤は、工程1Aにおいて形成される組成物層中、基板側界面における液晶化合物のチルト角を制御し得る。
組成物Xが、界面活性剤として、液晶化合物の含有量に対して所定含有量以上のイオン系界面活性剤を含む場合(より好ましくは、更に界面活性剤として後述するフッ素系界面活性剤を含む場合)、後述する図13及び図14に示す、斜め方向からの入射光に対して、高い反射率及び広い反射帯域を有し、且つ円偏光度の高い透過光を与え得るコレステリック液晶層が得られやすい。
【0124】
また、組成物Xは、フッ素系界面活性剤を含むことが好ましい。
組成物X中、上記フッ素系界面活性剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましい。なお、その上限値は、例えば、2.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましい。上記フッ素系界面活性剤は、工程1Aにおいて形成される組成物層中、基板側とは反対側表面における液晶化合物のチルト角を制御し得る。
【0125】
なお、組成物Xが上述したイオン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含む場合、得られるコレステリック液晶層はヘイズが小さいという利点も有する。
【0126】
組成物X中での界面活性剤の含有量(界面活性剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5.0質量%がより好ましく、0.01~2.0質量%が更に好ましい。
【0127】
≪溶媒≫
組成物Xは、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、水又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ピリジン等のヘテロ環化合物;ベンゼン、及びヘキサン等の炭化水素;クロロホルム、及びジクロロメタン等のアルキルハライド類;酢酸メチル、酢酸ブチル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びシクロペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、及び1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類;1,4-ブタンジオールジアセテート;等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0128】
≪その他の添加剤≫
組成物Xは、1種又は2種類以上の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、並びに、染料及び顔料等の色材、等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0129】
組成物Xを構成する化合物の1以上が、複数の重合性基を有する化合物(多官能性化合物)であるのが好ましい。更に、組成物Xにおいては、複数の重合性基を有する化合物の総含有量が、組成物X中の全固形分に対して、80質量%以上であるのが好ましい。なお、この上記固形分とは、コレステリック液晶層を形成する成分であり、溶媒は含まれない。
組成物X中の全固形分の80質量%以上を、複数の重合性基を有する化合物とすることにより、コレステリック液晶相の構造を強固に固定して耐久性を付与できる等の点で好ましい。
なお、複数の重合性基を有する化合物とは、1分子内に2つ以上の固定化可能な基を有する化合物である。本発明において、組成物Xが含む多官能性化合物は、液晶性を有するものでも、液晶性を有さないものでもよい。
【0130】
(工程1Aの手順)
工程1Aは、下記工程1A-1と、下記工程1A-2と、を有することが好ましい。
工程1A-1:組成物Xと上記基板とを接触させて、上記基板上に塗膜を形成する工程
工程1A-2:上記塗膜を加熱することによって、上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層を形成する工程
【0131】
≪工程1A-1:塗膜形成工程≫
工程1A-1では、まず、上述した組成物Xを基板上に塗布する。塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及び、ダイコーティング法等が挙げられる。なお、組成物Xの塗布に先立ち、基板に公知のラビング処理を施してもよい。
なお、必要に応じて、組成物Xの塗布後に、基板上に塗布された塗膜を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、塗膜から溶媒を除去できる。
【0132】
塗膜の膜厚は特に制限されないが、コレステリック液晶層の反射異方性及びヘイズがより優れる点で、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましく、0.5~10μmが更に好ましい。
【0133】
≪工程1A-2:組成物層形成工程≫
組成物Xの液晶相転移温度は、製造適性の面から10~250℃の範囲内が好ましく、10~150℃の範囲内がより好ましい。
好ましい加熱条件としては、40~100℃(好ましくは、60~100℃)で0.5~5分間(好ましくは、0.5~2分間)にわたって組成物層を加熱することが好ましい。
組成物層を加熱する際には、液晶化合物が等方相(Iso)となる温度まで加熱しないことが好ましい。液晶化合物が等方相となる温度以上に組成物層を加熱してしまうと、傾斜配向した液晶相又はハイブリッド配向した液晶相の欠陥が増加してしまい、好ましくない。
【0134】
上記工程1A-2により、上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層が得られる。
なお、液晶化合物を傾斜配向(図1参照)、ハイブリッド配向、又は垂直配向させるためには、界面にプレチルト角度を与えることが有効であり、具体的には、下記の方法が挙げられる。
(1)プレチルト角を有するラビング配向膜、又は、一軸配向若しくはハイブリッド配向された液晶化合物を含む配向膜を表面に配置した基板を使用する。
(2)組成物X中に、空気界面及び/又は基板界面に偏在して、液晶化合物の配向を制御し得る界面活性剤(例えば、上述したイオン系界面活性剤、及び上述したフッ素系界面活性剤)を添加する。
(3)組成物X中に、液晶化合物として、界面におけるプレチルト角が大きい液晶性化合物を添加する。
【0135】
<工程2A>
工程2Aは、工程1により得られた組成物層に対して光照射処理を施すことにより、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させ、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程である。
なお、光照射領域を複数のドメインに分割し、各ドメイン毎に照射光量を調整することにより、更に螺旋ピッチが異なる領域(選択反射波長が異なる領域)を形成できる。
【0136】
工程2Aにおける光照射の照射強度は特に制限されず、キラル剤Xの螺旋誘起力に基づいて適宜決定することができる。工程2Aにおける光照射の照射強度は、一般的には、0.1~200mW/cm2程度が好ましい。また、光を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
また、光照射時における組成物層の温度は、例えば、0~100℃であり、10~60℃が好ましい。
【0137】
光照射に使用される光は、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させる活性光線又は放射線であれば特に制限されず、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、紫外線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。なかでも、紫外線が好ましい。
【0138】
ここで、本発明のコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層が風に晒されると、形成されるコレステリック液晶層の表面の面状にムラが生じてしまう可能性がある。この点を考慮すると、本発明のコレステリック液晶層の製造方法では、工程1A及び工程2Aの全工程において、組成物層が晒される環境の風速が低い方が好ましい。具体的には、本発明のコレステリック液晶層の製造方法では、工程1A及び工程2Aの全工程において、組成物層が晒される環境の風速は、1m/s以下が好ましい。
【0139】
<硬化処理>
なお、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。組成物層に対して硬化処理を実施する手順としては、以下に示す(1)及び(2)が挙げられる。
【0140】
(1)工程2の際に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する(つまり、工程2と同時に硬化処理を実施する)か、又は、
(2)工程2の後に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する工程3を更に有する。
【0141】
つまり、硬化処理を実施して得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定してなる層に該当する。
なお、ここで、コレステリック液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ、好ましい態様である。それだけには制限されず、具体的には、通常0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性が無く、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、後述するように、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定することが好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定してなる層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。
【0142】
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。なかでも、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。また、前述のように、液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物であるのが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合には、硬化処理は、光照射(特に紫外線照射)による重合反応であるのが好ましく、光照射(特に紫外線照射)によるラジカル重合反応であるのがより好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。
紫外線の照射エネルギー量は特に制限されないが、一般的には、100~800mJ/cm2程度が好ましい。なお、紫外線を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
【0143】
〔キラル剤Yを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法〕
以下、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法(以下、「製造方法Y」ともいう。)について説明する。
製造方法Yは、下記工程1B及び工程2Bを少なくとも有する。
工程1B:キラル剤Y及び液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、基板上に下記条件1、下記条件2、又は下記条件3を満たす組成物層を形成する工程
工程2B:上記組成物層に対して冷却処理又は加熱処理を施すことにより、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物少なくとも一部が、上記基板面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
条件3:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記基板面に対して、垂直配向している
また、液晶化合物が重合性基を有する場合、製造方法Yは、後述するように、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
【0144】
以下、各工程で使用される材料、及び、各工程の手順について詳述する。
<工程1B>
工程1Bは、キラル剤Y及び液晶化合物を含む液晶組成物(以下、「組成物Y」ともいう)。を用いて、基板上に上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層を形成する工程である。
工程1Bは、組成物Xの代わりに組成物Yを使用する点以外は、工程手順はいずれも上述した工程1Aと同様であり、説明を省略する。
【0145】
(組成物Y)
組成物Yは、液晶化合物と、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yと、を含む。以下に、各成分について説明する。
なお、上述したとおり、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、工程1Bにおける上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11においては、組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~1.0μm-1が更に好ましく、0.0~0.5μm-1が特に好ましく、ゼロが最も好ましい。したがって、キラル剤Yが上記温度T11において上記所定範囲を超える螺旋誘起力を有する場合、組成物Yは、上記温度T11においてキラル剤Yとは逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤(以下、「キラル剤YA」ともいう。)を含み、工程1Bの際においてキラル剤Yの螺旋誘起力を略ゼロに相殺させておく(つまり、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を上記所定範囲としておく)ことが好ましい。なお、キラル剤YAは温度変化により螺旋誘起力を変化させないことが好ましい。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Yを複数種含むときであって、上記温度T11において複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲外の螺旋誘起力である場合、「キラル剤Yとは逆方向の螺旋を誘起させる他のキラル剤YA」とは、上記複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤を意図する。
キラル剤Yが一種単独で、上記温度T11において螺旋誘起力を有さず、温度変化により螺旋誘起力を増大させる特性を有する場合、キラル剤YAを併用しなくてもよい。
【0146】
以下、組成物Yが含む各種材料について説明する。なお、組成物Y中に含まれる材料のうちキラル剤以外の成分については、組成物Xに含まれる材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0147】
≪冷却又は加熱により螺旋誘起力が変化するキラル剤Y≫
キラル剤Yは、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、冷却又は加熱により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤であれば特に制限されない。なお、ここでいう「冷却又は加熱」とは、工程2Bにおいて実施される冷却処理又は加熱処理を意味する。また、冷却又は加熱の温度の上限は、通常±150℃程度である(言い換えると、±150℃以内の冷却又は加熱により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤が好ましい)。なかでも、冷却により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤が好ましい。
【0148】
キラル剤Yは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択できる。キラル剤Yは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤Yとして用いることもできる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が含まれる。キラル剤Yは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤Yは、なかでも、温度変化後の螺旋誘起力差が大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物、イソマンニド系光学活性化合物又はビナフトール系光学活性化合物が好ましく、ビナフトール系光学活性化合物がより好ましい。
【0149】
組成物Y中におけるキラル剤の総含有量(組成物Y中の全てのキラル剤の総含有量)は、液晶化合物の全質量に対して、2.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましい。また、組成物Y中におけるキラル剤の総含有量の上限は、コレステリック液晶層のヘイズ抑制の点で、液晶化合物の全質量に対して、15.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以下がより好ましい。
なお、上記キラル剤Yの使用量は、より少ないことが液晶性に影響を及ぼさない傾向があるため好まれる。従って、上記キラル剤Yとしては、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。
【0150】
≪キラル剤YA≫
キラル剤YAとしては、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、温度変化により螺旋誘起力(HTP)が変化しないことが好ましい。
また、キラル剤YAは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤XAは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤YAとして用いることもできる。キラル剤XBは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤YAとしては、公知のキラル剤を使用できる。
液晶組成物が、キラル剤Yを1種単独で含み、キラル剤Yが上記温度T11において所定範囲(例えば、0.0~1.9μm-1)を超える螺旋誘起力を有する場合、キラル剤YAは、上述したキラル剤Yと逆向きの螺旋を誘起するキラル剤であることが好ましい。つまり、例えば、キラル剤Yにより誘起する螺旋が右方向の場合には、キラル剤YAにより誘起する螺旋は左方向となる。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Yを複数種含むときであって、上記温度T11において複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲を超える場合、キラル剤YAは、上記加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤であることが好ましい。
【0151】
<工程2B>
工程2Bは、工程1により得られた組成物層に対して冷却処理又は加熱処理を施すことにより、キラル剤Yの螺旋誘起力を変化させ、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程である。本工程では、なかでも、組成物層を冷却するのが好ましい。
【0152】
組成物層を冷却する際には、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、組成物層の温度が30℃以上下がるように、組成物層を冷却することが好ましい。なかでも、上記効果がより優れる点で、40℃以上下がるように組成物層を冷却することが好ましく、50℃以上下がるように組成物層を冷却することがより好ましい。上記冷却処理の低減温度幅の上限値は特に制限されないが、通常、150℃程度である。
なお、上記冷却処理は、言い換えると、冷却前の工程1に得られた上記条件1、上記条件2、又は上記条件3を満たす組成物層の温度をT℃とする場合、T-30℃以下となるように、組成物層を冷却することを意図する(つまり、図10に示す態様の場合、T12≦T11-30℃となる)。
上記冷却の方法は特に制限されず、組成物層が配置された基板を所定の温度の雰囲気中に静置する方法が挙げられる。
【0153】
冷却処理における冷却速度には制限はないが、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、冷却速度を、ある程度の速さにするのが好ましい。
具体的には、冷却処理における冷却速度は、その最大値が毎秒1℃以上であるのが好ましく、毎秒2℃以上であるのがより好ましく、毎秒3℃以上であるのが更に好ましい。なお、冷却速度の上限は、特に制限されないが、毎秒10℃以下の場合が多い。
【0154】
ここで、本発明のコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層が風に晒されると、形成されるコレステリック液晶層の表面の面状にムラが生じてしまう可能性がある。この点を考慮すると、本発明のコレステリック液晶層の製造方法では、工程1B及び工程2Bの全工程において、組成物層が晒される環境の風速が低い方が好ましい。具体的には、本発明のコレステリック液晶層の製造方法では、工程1B及び工程2Bの全工程において、組成物層が晒される環境の風速は、1m/s以下が好ましい。
【0155】
なお、組成物層を加熱する場合、加熱処理の増加温度幅の上限値は特に制限されないが、通常、150℃程度である。
【0156】
<硬化処理>
なお、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。組成物層に対して硬化処理を実施する手順としては、製造方法Xにて述べた方法と同様であり、好適態様も同じである。
【0157】
[コレステリック液晶層]
以下に、本発明の製造方法により得られるコレステリック液晶層について述べる。本発明の製造方法により得られるコレステリック液晶層は、反射層として使用されることが好ましい。
【0158】
本発明の製造方法により得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相(コレステリック液晶構造)の反射面が基板面に対して非平行である層である。このようなコレステリック液晶層の断面をSEMで観察すると、明部と暗部とが交互に配列された配列方向が基板面に対して非平行である縞模様が観察される。
また、コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定してなる層であることが好ましい。
【0159】
また、本発明の製造方法により得られるコレステリック液晶層は、基板側表面に存在する液晶化合物のチルト角が大きくなるように調整されることで、斜め方向からの入射光に対して、高い反射率及び広い反射帯域を有し、且つ円偏光度の高い透過光を与え得る。
基板側表面に存在する液晶化合物のチルト角を大きくする方法としては、本発明の製造方法において、液晶組成物中にイオン系界面活性剤を所定量添加する方法が挙げられ、なかでも、液晶組成物中に、所定量のイオン系界面活性剤と、フッ素系界面活性剤とを添加する方法が好ましい。なお、イオン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤については上述したとおりである。
また、基板側表面に存在する液晶化合物のチルト角を大きくする方法としては、上述の方法以外に、基板界面側において高いプレチルト角を発現する液晶化合物を使用する方法、及び、プレチルト角を有するラビング配向膜、又は、一軸配向若しくはハイブリッド配向された液晶化合物を含む配向膜を表面に配置した基板を使用する方法等が挙げられる。
つまり、本発明の製造方法の一態様によれば、斜め方向からの入射光に対して、高い反射率及び広い反射帯域を有し、且つ円偏光度の高い透過光を与え得るコレステリック液晶層を形成し得る。上記構成によれば、例えば、コレステリック液晶層を、円偏光を投影するスクリーンに適用した場合、スクリーン背面への映像漏れがより低減でき、且つ、映像の輝度をより向上させることが可能となる。
【0160】
以下に、図13及び図14を参照して、斜め方向からの入射光に対して、高い反射率及び広い反射帯域を有し、且つ円偏光度の高い透過光を与え得るコレステリック液晶層の実施形態について説明する。
図13に、コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向状態を概念的に示す断面模式図を示す。
なお、図13に示すコレステリック液晶層102において、コレステリック液晶層102の基板10に平行な一対の面(103、104)を主面という場合がある。
図13に示す、コレステリック液晶層102の主面の垂直断面において、液晶化合物14は、基板面10aに対して、その分子軸16が傾斜して配向している。
液晶化合物14が上述した配向をとることで、図13に示すように、コレステリック液晶層102において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C2は、基板面10aに対して傾斜している。また、コレステリック液晶層102の反射面T2は、基板面10aに対して傾斜しており、図13に示すコレステリック液晶層102の断面をSEMで観察すると、明部と暗部とが交互に配列された配列方向が基板面10aに対して傾斜した縞模様が観察される。上記配列方向と基板面10aとのなす角度は、例えば、86°以下であり、80°以下がより好ましい。下限値は特に制限されず、例えば、1°以上である。
【0161】
コレステリック液晶層102において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸方向C2は、上述のSEMにより観察される明部と暗部とが交互に配列された配列方向に対して非平行であり、反射面T2に対して非垂直である。
なお、ここでいう「非平行」とは、螺旋軸方向C2と上記配列方向とのなす角度が0°ではないことを意図する。コレステリック液晶相由来の螺旋軸方向C2と、上記配列方向とのなす角度は、3°以上が好ましく、18°以上がより好ましい。また、ここでいう「非垂直」とは、螺旋軸方向C2と反射面T2とのなす角度が、90°ではないことを意図し、87°以下が好ましく、80°以下がより好ましく、72°以下がより好ましい。
一般的に、コレステリック液晶相由来の螺旋軸方向C2は、コレステリック液晶層102の主面103から光を当てた際に、観測される位相差が最小となるときの光の入射方向と平行となる。
つまり、コレステリック液晶層102は、主面103から光を当てた際に、観測される位相差が最小となるときの光の入射方向が、上記配列方向に対して非平行となる。また、観測される位相差が最小となるときの光の入射方向は、主面103に対して非垂直である。なお、ここでいう「非垂直」とは、上記入射方向と主面103とのなす角度が、90°ではないことを意図する。上記入射方向と主面103とのなす角度は、83°以下が好ましく、60°以下がより好ましい。
コレステリック液晶層102において、液晶化合物14に由来する分子軸16は、反射面T2に対して非平行(分子軸16と反射面T2とのなす角度が0°ではない)となる。
この結果として、図13に示すコレステリック液晶層102の主面103に対して法線方向に反射光が反射するように、主面103に対して斜め方向から光を入射した場合(図13参照)、反射面T2にて反射された反射光は、反射率が高く、且つ反射帯域が広い。また、主面103に透過する透過光は、円偏光度がより高くなる。つまり、斜め方向から入射する光と螺旋軸C2とがより平行となりやすく、この結果として上述の効果が得られる。特に、上述の効果がより優れる点で、コレステリック液晶層102の主面103に光を入射させた際に位相差が最も小さくなる入射方向と、SEMにより観察される明部と暗部とが交互に配列された配列方向とのなす角度は、3°以上が好ましく、18°以上が好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、例えば90°である。
【0162】
螺旋軸C2の反射面T2とのなす角度は、液晶化合物14のチルト角によって制御できる。図13に示すコレステリック液晶層102は、液晶化合物14に由来する分子軸16を反射面T2よりも傾斜させた場合の実施形態であり、図14に示すコレステリック液晶層202は、反射面T2を液晶化合物14に由来する分子軸16よりも傾斜させた場合の実施形態である。
正面に反射させる場合、又は、入射光よりも狭角方向へ反射させる場合、図13のように、液晶化合物14に由来する分子軸16を反射面T2よりも傾斜させることが好ましい。一方、入射光よりも広角方向へ反射させる場合においては、図14のように、反射面T2を液晶化合物14に由来する分子軸16よりも傾斜させることが好ましい。なお、入射光よりも狭角方向へ反射させる場合とは、コレステリック液晶層の主面の法線方向と光の入射方向とのなす角度をθとしたとき、θよりも小さい角度で反射させる場合を意図する。つまり、光の反射方向が、光の入射方向よりもコレステリック液晶層の主面の法線方向により近づく場合を意図する。また、入射光よりも広角方向へ反射させる場合とは、θよりも大きい角度で反射させる場合を意図する。つまり、光の反射方向が、光の入射方向よりもコレステリック液晶層の主面の法線方向により離れる場合を意図する。
【0163】
つまり、本発明の製造方法の一態様によれば、例えば、コレステリック液晶層の主面に対して法線方向に反射光が反射するように、主面に対して斜め方向から入射する光の入射角度に応じて、コレステリック液晶層の螺旋軸を任意に設定することが可能となる(図13参照)。なお、上記光の入射角度と螺旋軸とのなす角度は、0~33°が好ましく、0~10°がより好ましい。
【0164】
一方、図2に示すコレステリック液晶層32の場合、液晶化合物14に由来する分子軸16は、反射面T1に対して平行である。また、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C1は、反射面T1に対して垂直方向である。このため、図2に示すコレステリック液晶層32の主面に対して法線方向に反射光が反射するように、主面33に対して斜め方向から光を入射した場合(図2参照)、コレステリック液晶層102と比べると、斜め方向から入射する光の入射方向と螺旋軸C1とのなす角度が大きいため、反射面T1にて反射された反射光及び主面33に透過する透過光は、コレステリック液晶層32中の液晶化合物14に起因した位相差の影響をより受ける。
【0165】
コレステリック液晶層は、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示す層である。コレステリック液晶層は選択反射波長域において、右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させ、他方のセンスの円偏光を透過させる円偏光選択反射層として機能する。コレステリック液晶層を1層又は2層以上含むフィルムは、様々な用途に用いることができる。コレステリック液晶層を2層以上含むフィルムにおいて、各コレステリック液晶層が反射する円偏光のセンスは用途に応じて同じでも逆であってもよい。また、各コレステリック液晶層の後述の選択反射の中心波長も用途に応じて同じでも異なっていてもよい。
【0166】
なお、本明細書において、円偏光につき「センス」というときは、右円偏光であるか、又は左円偏光であるかを意味する。円偏光のセンスは、光が手前に向かって進んでくるように眺めた場合に電場ベクトルの先端が時間の増加に従って時計回りに回る場合が右円偏光であり、反時計回りに回る場合が左円偏光であるとして定義される。本明細書においては、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向について「センス」との用語を用いることもある。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向(センス)が右の場合は右円偏光を反射し、左円偏光を透過し、センスが左の場合は左円偏光を反射し、右円偏光を透過する。
【0167】
例えば、可視光波長域(波長400~750nm)に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含むフィルムは、投映像表示用のスクリーン及びハーフミラーとして利用できる。また、反射波長帯域を制御することで、カラーフィルター又はディスプレイの表示光の色純度を向上させるフィルタ(例えば特開2003-294948号公報参照)として利用できる。
また、上記コレステリック液晶層は、光学素子の構成要素である、偏光素子、反射膜、反射防止膜、視野角補償膜、ホログラフィー、及び、配向膜等、種々の用途に利用できる。
以下特に好ましい用途である投映像表示用部材としての用途について説明する。
【0168】
コレステリック液晶層の上記の機能により、投射光のうち選択反射を示す波長において、いずれか一方のセンスの円偏光を反射させて、投映像を形成できる。投映像は投映像表示用部材表面で表示され、そのように視認されるものであってもよく、観察者から見て投映像表示用部材の先に浮かび上がって見える虚像であってもよい。
【0169】
上記選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、ここで、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長を意味する。上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調節できる。コレステリック液晶相のピッチはキラル剤の種類、又はその添加濃度に依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンス及びピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、及び、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
【0170】
また、赤色光波長域、緑色光波長域、及び青色光波長域にそれぞれ見かけ上の選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層をそれぞれ作製し、それらを積層することによりフルカラーの投映像の表示が可能である投映像表示用部材を作製できる。
【0171】
各コレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、投映に用いられる光源の発光波長域、及び投映像表示用部材の使用態様に応じて調節することにより、光利用効率良く鮮明な投映像を表示できる。特にコレステリック液晶層の選択反射の中心波長をそれぞれ投映に用いられる光源の発光波長域等に応じてそれぞれ調節することにより、光利用効率良く鮮明なカラー投映像を表示できる。
【0172】
また、例えば、上記投映像表示用部材を可視光領域の光に対して透過性を有する構成とすることによりヘッドアップディスプレイのコンバイナとして使用可能なハーフミラーとすることができる。投映像表示用ハーフミラーは、プロジェクターから投映された画像を視認可能に表示できるとともに、画像が表示されている同じ面側から投映像表示用ハーフミラーを観察したときに、反対の面側にある情報又は風景を同時に観察できる。
【0173】
[液晶組成物]
本発明は、液晶組成物にも関する。
本発明の液晶組成物は、
液晶化合物と、
2種以上のキラル剤と、を含み、
上記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤、及び温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤からなる群より選ばれるいずれかのキラル剤である、液晶組成物であって、
上記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm-1であり、
上記液晶組成物から形成される組成物層に対して光照射処理、又は冷却処理若しくは加熱処理を施した際、上記加重平均螺旋誘起力の絶対値が10.0μm-1以上となる。
【0174】
上記液晶組成物としては、上述した組成物X及び組成物Yが挙げられる。
上記液晶組成物において「光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤」とは、上述したキラル剤Xが該当する。
また、上記液晶組成物において「温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤」とは、上述したキラル剤Yが該当する。
また、上記液晶組成物は、上述したとおり、液晶化合物の含有量に対して所定含有量以上のイオン系界面活性剤(好ましくは、カチオン系界面活性剤)を含むことが好ましく、液晶化合物の含有量に対して所定含有量以上のイオン系界面活性剤(好ましくは、カチオン系界面活性剤)と、フッ素系界面活性剤とを含むことがより好ましい。
【0175】
<用途>
上記液晶組成物は、種々の用途に適用できる。例えば、上記液晶組成物を用いて、光学異方体又は反射層を形成できる。なお、例えば、上記液晶組成物中が、重合性基を有する液晶化合物を含む場合、上記コレステリック配向された液晶化合物を含む組成物層に対して硬化処理(光照射処理又は加熱処理など)を施すことにより、硬化物が得られ、硬化物は光学異方体又は反射層に好適に適用できる。
なお、光学異方体とは、光学異方性を有する物質を意図する。
また、反射層については上述のとおりである。
【実施例0176】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0177】
〔各種成分〕
以下において、まず、実施例及び比較例において使用する各種成分について説明する。
<界面活性剤(イオン系界面活性剤)>
(化合物AA-1)
化合物AA-1は、特開2012-208397号公報に記載の化合物AA-1を用いた。
【0178】
【化18】
【0179】
<界面活性剤(フッ素系系界面活性剤)>
下記化合物B-1~化合物B-3をフッ素系界面活性剤として使用した。
なお、化合物B-1及び化合物B-2については、以下の合成手順に従って合成したものを使用した。
(化合物B-1の合成)
FAAC-6(ユニマテック社製)2.5g、及びブチルアクリレート(和光純薬製)2.5gを通常のラジカル重合手法にて重合し、化合物B-1を得た。
【0180】
(化合物B-2の合成)
FAAC-6(ユニマテック社製)2.5g、及びアクリル酸(和光純薬製)2.5gを通常のラジカル重合手法にて重合し、化合物B-2を得た。
【0181】
(化合物B-3)
界面活性剤B-3は、特許第5774518号公報に記載された化合物であり、下記構造を有する。
【0182】
【化19】
【0183】
<キラル剤>
(化合物CD-1の合成)
以下の合成手順に従い、一般的な手法にて化合物CD-1を合成した。
なお、化合物CD-1は、螺旋方向は左であり、温度変化又は光照射により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。
【0184】
【化20】
【0185】
(化合物CD-2の合成)
特開2002-338575号公報に準じて、下記化合物CD-2を合成して使用した。
なお、化合物CD-2は、螺旋方向は右であり、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤である(キラル剤Xに該当する)。
【0186】
【化21】
【0187】
(化合物CD-3の合成)
以下の合成手順に従い、化合物CD-3を合成した。
なお、化合物CD-3は、螺旋方向は右であり、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤である(キラル剤Yに該当する)。
【0188】
【化22】
【0189】
≪中間体2の合成≫
パラヒドロキシベンズアルデヒド(和光純薬製)53.31g、NMP(N-メチル-2-ピロリドン、和光純薬製)153mL、及び、炭酸カリウム(和光純薬製)72.40gを2Lの三口フラスコに入れた後、更に三口フラスコにシンナモイルクロリド(東京化成製)80.00gを添加し、反応液を40℃で2時間反応させた。続いて酢酸エチル(和光純薬製)500mL、及び水300mLを反応液に加えて、得られた反応液を40℃で15分撹拌した後、水相を除去し、中間体1の酢酸エチル溶液を得た。
続いて、中間体1の酢酸エチル溶液に、マロン酸(和光純薬製)68.1g、及びピリジン(和光純薬製)17.6mLを加え、窒素気流下、100℃で酢酸エチルを留去しながら3時間反応させた。次に、得られた生成物にメタノール(和光純薬製)60mL、及び水400mLを加えて、生じた固体をろ取し、40℃で12時間送風乾燥し、中間体2を得た(123g、収率96%)。
【0190】
≪化合物CD-3の合成≫
中間体2を100g、アセトニトリル(和光純薬製)600mL、及びジメチルアセトアミド(和光純薬製)400mLを2Lの三口フラスコに入れた後、更に三口フラスコに塩化チオニル(和光純薬製)42.23gを加え、反応液を60℃で1時間反応させた。続いて、反応液を5℃に冷却し、(R)-ビナフトール(関東化学製)47.7g、及びピリジン(和光純薬製)134.1gを反応液に加え、反応液を40℃で5時間反応させた。次に、メタノール(和光純薬製)600mL、及び水1000mLを反応液に加えて、生じた固体をろ取し、40℃で12時間送風乾燥し、化合物CD-3を得た(100g、収率72%)。
【0191】
(化合物CD-4の合成)
特開2002-338575号公報に準じて、下記化合物CD-4を合成して使用した。
なお、化合物CD-4は、螺旋方向は右であり、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤である(キラル剤Xに該当する)。
【0192】
【化23】
【0193】
〔実施例1〕
<条件2を満たす組成物層の作製(工程1Aに該当)>
(試料溶液の調製)
下記組成の試料溶液を調製した。
・下記構造で表される液晶化合物LC-1 100質量部
・化合物AA-1 1.0質量部
・化合物B-1 0.1質量部
・化合物CD-1 5.0質量部
・化合物CD-2 5.0質量部
・開始剤PM-758(日本化薬製) 0.20質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
【0194】
【化24】
【0195】
(加重平均螺旋誘起力測定)
上記試料溶液の溶剤を留去した後、螺旋ピッチをくさび法(液晶便覧、丸善、p196~197)にて測定し、上記式(1A)より螺旋誘起力を算出した。
なお、上述の方法により算出された螺旋誘起力は、上述した式(1C)より得られる加重平均螺旋誘起力とも一致する。
【0196】
(条件2を満たす組成物層の作製)
次に、ポリビニルアルコール(「PVA203」、クラレ社製)を塗布したガラス基板にラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、30μLの上記試料溶液を回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートし、90℃で1分間熟成することにより組成物層を形成した。
【0197】
≪配向状態の確認≫
得られた組成物層について、クロスニコル条件で偏光顕微鏡観察を行い、消光位がラビング方向と一致しており、ラビング方向と平行に液晶化合物が配向していることを確認した。
更に、Axo scan(Axo Metrics社製)を用いて組成物層の両表面における液晶化合物に由来する分子軸の基板面に対する傾斜角を測定した。
【0198】
<コレステリック液晶層の作製>
上記工程1Aにより得られた、基板面に対してハイブリッド配向している液晶化合物を含む組成物層に対して、光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より302nm光を3mW/cm2の照射強度で180秒間紫外線を照射し、組成物層中の液晶化合物をコレステリック液晶相の状態とした(工程2Aに該当)。
続いて、上記紫外線照射後の組成物層に対して、25℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量で紫外線(365nm光)を照射することにより硬化処理を実施し、コレステリック液晶相を固定化してなるコレステリック液晶層(コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層)を得た(硬化処理工程(工程3に該当))。
【0199】
(透過率測定)
透過率測定の結果、得られたコレステリック液晶層は、波長620nmの光を選択反射することが分かった。
【0200】
(反射異方性の評価)
上記コレステリック液晶層に対し、波長450~850nm、入射角0°、検出角10~80°の範囲で10°刻みの条件にて絶対反射率測定を実施した(具体的には、図12に示すように、基板10上に形成されたコレステリック液晶層92の測定面92Aに対し、波長450~850nm、入射角0°、検出角10~80°の範囲で10°刻みの条件にて絶対反射率測定を実施した。)。このとき、図12のように、上述した“(条件2を満たす組成物層の作製)”におけるラビングの始点方向(図12の始点b)に検出角を傾けた場合(B)と、終点方向(図12の終点a)に検出角を傾けた場合(A)についてそれぞれ絶対反射率の最大値を求め、大きい方をY0、小さい方をY180とした。次いで、下記式(1)より反射比を求め、反射異方性を評価した。結果を表1に示す。
式(1):反射比=(Y0)/(Y180)
≪評価基準≫
「A」:反射比が5以上である。
「B」:反射比が3以上5未満である。
「C」:反射比が2以上3未満である。
「D」:反射比が2未満である。
【0201】
(ヘイズの評価)
ヘイズメーター(NDH4000、東京電色工業製)にてヘイズ値を測定し、下記評価基準にて評価した。
≪評価基準≫
「A」:ヘイズ値が3.0未満である。
「B」:ヘイズ値が3.0以上4.0未満である。
「C」:ヘイズ値が4.0以上5.0未満である。
「D」:ヘイズ値が5.0以上である。
【0202】
(断面SEM評価)
得られた実施例1のコレステリック液晶層の断面SEM観察を行った結果、コレステリック液晶のコレステリック液晶相に由来する明線と暗線とが交互に配列した縞模様が観察され、更にその配列方向が、基板面に対して一方向に約70°程度傾斜している様子が観察された。つまり、反射面が基板面に対して非平行であることが確認された。なお、反射面は、基板面に対して、約20°程度傾斜していると考えられる。
【0203】
〔実施例2~14、16~18〕
界面活性剤の添加量、並びにキラル剤の種類及び添加量をそれぞれ表1に示す添加量及び種類に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりコレステリック液晶層を形成し、その反射異方性、ヘイズ、及び断面SEMを評価した。結果を表1に示す。
【0204】
〔実施例15〕
界面活性剤の添加量、並びにキラル剤の種類及び添加量をそれぞれ表1に示す添加量及び種類に変更し、作製手法を下記条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりコレステリック液晶層を形成し、その反射異方性、ヘイズ、及び断面SEMを評価した。結果を表1に示す。
【0205】
<条件2を満たす組成物層の作製(工程1Bに該当)>
ポリビニルアルコール(「PVA203」、クラレ社製)を塗布したガラス基板にラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、30μLの上記試料溶液を回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートし、130℃で1分間熟成することにより組成物層を形成した。
【0206】
≪配向状態の確認≫
得られた組成物層について、クロスニコル条件で偏光顕微鏡観察を行い、消光位がラビング方向と一致しており、ラビングと平行に液晶分子が配向していることを確認した。
更に、Axo scan(Axo Metrics社製)を用いて組成物層の両表面における液晶化合物に由来する分子軸の基板面に対する傾斜角を測定した。
【0207】
<コレステリック液晶層の作製>
上記工程1Bにより得られた、基板面に対してハイブリッド配向している液晶化合物を含む組成物層を30℃に冷却し、組成物層中の液晶化合物をコレステリック液晶相の状態とした(工程2Bに該当)。
続いて、上記冷却後の組成物層に対して、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量で紫外線(365nm光)を照射することにより硬化処理を実施し、コレステリック液晶相を固定化してなる層を得た(硬化処理工程(工程3に該当))。
【0208】
(断面SEM評価)
得られた実施例15のコレステリック液晶層の断面SEM観察を行った結果、コレステリック液晶のコレステリック液晶相に由来する明線と暗線とが交互に配列した縞模様が観察され、更にその配列方向が、基板面に対して70°程度傾斜している様子が観察された。言い換えると、コレステリック液晶の明線と暗線とが基板面に対して一方向に20°傾斜している様子が観察された。更に、その角度は反射異方性測定から算出される反射面の傾斜角度と一致した。つまり、反射面が基板面に対して非平行であることが確認された。
【0209】
〔比較例1、比較例2〕
界面活性剤の含有量、並びにキラル剤の種類及び含有量を表1に示す含有量及び種類に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりコレステリック液晶層を形成し、その反射異方性、ヘイズ、及び断面SEMを評価した。結果を表1に示す。
【0210】
下記表1において、基板側表面における傾斜角と空気側表面における傾斜角が等しい場合、液晶層は一軸配向しており条件1に相当し、傾斜角が異なる場合、液晶層はハイブリッド配向しており、条件2に相当する。
また、下記表1中、実施例16の反射異方性評価欄の「-」は、コレステリック液晶層の反射面(図12の測定面92Aに該当)では反射異方性が観測できなかったことを意図する。実施例16により得られるコレステリック液晶層の断面SEM観察を行った結果、コレステリック液晶のコレステリック液晶相に由来する明線と暗線とが交互に配列した縞模様が観察され、更にその配列方向が、基板面に対して0°である様子が観察された。つまり、実施例16により得られるコレステリック液晶層の反射面は基板面に対して垂直である。
【0211】
【表1】
【0212】
表1の実施例と比較例の対比から、工程1を経ることにより、得られるコレステリック液晶層は、反射面が基板面に対して非平行となることが分かる。
また、特に、工程1により得られる組成物層が条件1又は条件2を満たす組成物層である場合、得られるコレステリック液晶層は、反射異方性に優れることが分かる(条件3を満たす組成物層(実施例16)の場合、実施例16により得られるコレステリック液晶層の反射面は基板面に対して垂直となるため、測定面での反射異方性においては、条件1及び条件2の方が優れている)。なお、比較例1及び比較例2では、工程1により得られる組成物層は、液晶化合物の螺旋が誘起されており、液晶化合物に由来する分子軸の基板面に対する傾斜角度の測定ができなかった。
また、実施例1、実施例4、実施例5、実施例17、及び実施例18の比較より、工程1においては条件1を満たす組成物層よりも条件2を満たす組成物層の方が反射異方性に優れることが分かる。
また、実施例1~6の比較より、条件1又は条件2を満たす組成物層の基板側及び基板とは反対側の表面において、液晶化合物に由来する分子軸の基板面に対する角度がそれぞれ適点を有することが分かる。なお、液晶組成物が、更に、イオン系界面活性剤、及び、フッ素系界面活性剤を含む場合、液晶化合物に由来する分子軸の基板面に対する角度を所定値に調整しやすく、また、実施例1、実施例2及び実施例4の対比から、工程1においてより方位角の揃った配向が得られることによって、ヘイズにも優れることが明らかである。
また、実施例1に対してキラル剤の量比を変化させた実施例7~14では、工程1により得られる条件1又は条件2を満たす組成物層における加重平均螺旋誘起力の絶対値がより小さい場合(好ましくは加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5であり、より好ましくは加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~0.5である場合)、得られるコレステリック液晶層の反射異方性が優れることが分かる。
更に、実施例15より、温度変化によってキラル剤の螺旋誘起力を変化させた場合にも、同様に反射異方性を示すコレステリック液晶層が得られることが分かる。
【0213】
〔実施例19〕
<条件2を満たす組成物層の作製(工程1Aに該当)>
(試料溶液の調製)
下記組成の試料溶液を調製した。
・下記構造で表される液晶性化合物LC-1 100質量部
・界面活性剤AA-1 0.5質量部
・界面活性剤B-3 0.2質量部
・化合物CD-1 5.0質量部
・化合物CD-4 5.6質量部
・開始剤IRG-907(BASF製) 1.5質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
【0214】
【化25】
【0215】
(加重平均螺旋誘起力測定)
実施例1と同様の方法により、加重平均螺旋誘起力を求めた。
【0216】
(条件2を満たす組成物層の作製)
次に、ポリビニルアルコール(「PVA108」、クラレ社製)を塗布したTAC(Triacetylcellulose)基板にラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、30μLの上記試料溶液をバーコート(バー番手#6)し、90℃で1分熟成することにより組成物層を形成した。
【0217】
≪配向状態の確認≫
実施例1と同様の方法により、配向状態を確認した。
【0218】
<コレステリック液晶層の作製>
上記工程1Aにより得られた、基板面に対してハイブリッド配向している液晶化合物を含む組成物層に対して、30℃にて光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より365nm光を3mW/cm2の照射強度で180秒間紫外線を照射し、組成物層中の液晶化合物をコレステリック液晶相の状態とした(工程2Aに該当)。
続いて、上記紫外線照射後の組成物層に対して、30℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量でUV(紫外線)を照射することにより硬化処理を実施し、コレステリック液晶相を固定化してなるコレステリック液晶層(コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層)を得た(硬化処理工程(工程3に該当))。
【0219】
(透過率測定)
透過率測定の結果、得られたコレステリック液晶層は、波長620nmの光を選択反射することが分かった。
【0220】
(反射異方性の評価)
上記コレステリック液晶層に対し、波長450~850nm、入射角0°、検出角10~80°の範囲で10°刻みの条件にて絶対反射率測定を実施した(具体的には、図12に示すように、基板10上に形成されたコレステリック液晶層92の測定面92Aに対し、波長450~850nm、入射角0°、検出角10~80°の範囲で10°刻みの条件にて絶対反射率測定を実施した。)。このとき、図12のように、上述した“(条件2を満たす組成物層の作製)”におけるラビングの始点方向(図12の始点b)に検出角を傾けた場合(B)と、終点方向(図12の終点a)に検出角を傾けた場合(A)についてそれぞれ絶対反射率の最大値を求め、大きい方をY0、小さい方をY180とした。
次いで、下記式(2)より反射比を求め、反射比が2以上の場合を反射率異方性「有」、反射比が2未満の場合を反射率異方性「無」として評価した。
式(2):反射比=(Y0)/(Y180)
【0221】
(位相差、及び位相差が極小となる入射角度の測定)
Axo metricsを用い、λ=800nmにおいて、コレステリック液晶層の主面を傾けたときの、コレステリック液晶層の位相差を測定した。位相差が最小となる傾斜角度は、主面に対して30°であった。
【0222】
(断面SEM評価)
実施例19により得られるコレステリック液晶層の断面SEM観察を行った結果、コレステリック液晶のコレステリック液晶相に由来する明線と暗線とが交互に配列した縞模様が観察され、更にその配列方向が、基板面に対して78°傾斜している様子が観察された。言い換えると、コレステリック液晶の明線と暗線とが基板面に対して一方向に12°傾斜している様子が観察された。更に、その角度は反射異方性測定から算出される反射面の傾斜角度と一致した。
つまり、反射面が基板面に対して非平行であることが確認された。
【0223】
(円偏光度、反射率の評価)
上記コレステリック液晶層に対し、入射角40°から400~800nm光を入射し、コレステリック液晶層が最大の反射率を示す波長における透過光の円偏光度と、反射光の反射半値幅を測定、評価した。
(1)円偏光度
「A」:円偏光度が98%以上である。
「B」:円偏光度が95%以上98%未満である。
「C」:円偏光度が95%未満である。
(2)反射光の反射半値幅
「A」:反射半値幅が50nm以上である。
「B」:反射半値幅が40nm以上50nm未満である。
「C」:反射半値幅が40nm未満である。
【0224】
〔実施例20~24〕
表2に従いイオン系界面活性剤の量を変更した以外は、実施例1と同様に製膜、評価を行った。結果を表2に示す。
【0225】
〔比較例3〕
特開2006-317656号公報の「実施例1」に記載の手法で製膜を行い、実施例19と同様に評価を行った。
【0226】
以下に表2を示す。
なお、実施例19~24は、界面活性剤(イオン系界面活性剤)の含有量及びキラル剤の種類が異なる以外は、実施例1と同様の組成である。
また、実施例19~24の工程1において、「組成物層中の加重平均螺旋誘起力の絶対値(μm-1)」は0.0であり、「組成物層の基板とは反対側表面における、液晶化合物由来の分子軸の基板面に対する傾斜角度(°)」は0°であり、「配向方法」は、条件2である。
また、実施例19~24の工程2における「組成物層中の加重平均螺旋誘起力の絶対値(μm-1)」は、は26である。
【0227】
【表2】
【0228】
実施例19~23と実施例24との対比から、コレステリック液晶層が、基板に対して傾斜した反射面を有し、且つ、コレステリック液晶層の主面に光を入射させた際に位相差が最も小さくなる入射方向が、断面SEMにおける明暗線の配列方向と非平行である場合、反射率が高く、且つ、反射帯域が広いことが確認された。また、上記コレステリック液晶層の主面から透過する透過光の円偏光度がより高いことが確認された。なお、実施例24のコレステリック液晶層は、基板に対して傾斜した反射面を有し、且つ、コレステリック液晶層の主面に光を入射させた際に位相差が最も小さくなる入射方向が、断面SEMにおける明暗線の配列方向と平行である場合に該当する。
また、実施例19~23の対比から、特に、コレステリック液晶層の主面に光を入射させた際に位相差が最も小さくなる入射方向と配列方向とのなす角度が18°以上の場合、効果がより優れることが確認された。
また、実施例19~23の対比から、液晶組成物中、イオン系界面活性剤の含有量が、液晶化合物100質量部に対して0.3質量部以上である場合、得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層の主面に光を入射させた際に位相差が最も小さくなる入射方向と、断面SEMにおける明暗線の配列方向とがより非平行となり、反射率がより高く、且つ、反射帯域がより広いことが確認された。また、上記コレステリック液晶層の主面から透過する透過光の円偏光度がより高いことが確認された。
【符号の説明】
【0229】
10 基板
10a 基板面
12 組成物層
14液晶化合物
16 分子軸
θ1 角度
1、C2 螺旋軸
1、T2 反射面
1 厚み方向
11 工程1において液晶化合物の配向処理が実施される温度
12 工程2の冷却処理が実施される温度
A、B、C 領域
32、42、62、82、92、102、202 コレステリック液晶層
44、64、84 明部
46、66、86 暗部
50 光源(投影機)
52、72 投影スクリーン
1、L3 コレステリック反射光
P 配列方向
92A 測定面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物と、
2種以上のキラル剤と、を含み、
前記キラル剤のうち少なくとも1種は、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤、及び温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤からなる群より選ばれるいずれかのキラル剤である、液晶組成物であって、
前記キラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値が0.0~1.5μm -1 であり、
前記液晶組成物から形成される組成物層に対して光照射処理、又は冷却処理若しくは加熱処理を施した際、前記加重平均螺旋誘起力の絶対値が10.0μm -1 以上となる、液晶組成物。
【請求項2】
更に、イオン系界面活性剤を含み、
前記イオン系界面活性剤の含有量が、前記液晶化合物100質量部に対して、0.3質量部以上である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記イオン系界面活性剤が、下記一般式(1)で表されるピリジニウム化合物である、請求項2に記載の液晶組成物。
【化1】
上記式中、R は、アミノ基、又は炭素数が1~20の置換アミノ基を表す。Xは、アニオンを表す。L 1 は、2価の連結基を表す。Y 1 は、5又は6員環を含む2価の連結基を表す。Zは、炭素数が1~12のアルキル基、炭素数が2~12のアルコキシ基、又は炭素数が2~12のアルコキシカルボニル基を表す。nは、0又は1を表す。
【請求項4】
更に、フッ素系界面活性剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記液晶化合物が、重合性液晶化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載の液晶組成物を硬化してなる光学異方体。
【請求項8】
請求項5に記載の液晶組成物を硬化してなる反射層。
【請求項9】
液晶化合物を用いて形成された、一対の主面を有するコレステリック液晶層であり、
前記主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、前記主面に対して傾斜しており、
前記主面に対して光を入射させた際、位相差が最も小さくなる入射方向が、前記主面に対して非垂直であり、且つ、前記配列方向に対して非平行である、コレステリック液晶層。
【請求項10】
前記位相差が最小となる入射方向と前記配列方向とのなす角度が3°以上である、請求項9に記載のコレステリック液晶層。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のコレステリック液晶層を含む光学異方体。
【請求項12】
請求項9又は10に記載のコレステリック液晶層を含む反射層。