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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071654
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】めっき給電治具
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20220509BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C25D17/08 J
H05K3/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180723
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】依田 康昭
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 直輝
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343BB71
5E343DD32
5E343FF20
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】安定した給電が可能なめっき給電治具を提供する。
【解決手段】本めっき給電治具は、一方及び他方の主面を備えた連結部と、前記連結部の一方の主面に固定され、めっき膜を形成するめっき対象物を保持する第1保持部、及び前記めっき対象物に給電する第1給電部、を備えた第1接続部と、前記連結部の他方の主面に、前記連結部を挟んで前記第1接続部と対向するように固定され、前記めっき対象物を保持する第2保持部、及び前記めっき対象物に給電する第2給電部、を備えた第2接続部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方及び他方の主面を備えた連結部と、
前記連結部の一方の主面に固定され、めっき膜を形成するめっき対象物を保持する第1保持部、及び前記めっき対象物に給電する第1給電部、を備えた第1接続部と、
前記連結部の他方の主面に、前記連結部を挟んで前記第1接続部と対向するように固定され、前記めっき対象物を保持する第2保持部、及び前記めっき対象物に給電する第2給電部、を備えた第2接続部と、
を有する、めっき給電治具。
【請求項2】
前記第1保持部の先端側には、第1切り欠き部が設けられ、
前記第1給電部は、平面視において、両側面が前記第1切り欠き部の内側面に接しないように、前記第1切り欠き部に配置され、
前記第2保持部の先端側には、第2切り欠き部が設けられ、
前記第2給電部は、平面視において、両側面が前記第2切り欠き部の内側面に接しないように、前記第2切り欠き部に配置されている、請求項1に記載のめっき給電治具。
【請求項3】
前記第1保持部の先端側には、複数の前記第1切り欠き部が所定方向に所定間隔で離散的に設けられ、
前記第1給電部は、平面視において、両側面が前記第1切り欠き部の内側面に接しないように、各々の前記第1切り欠き部に配置され、
前記第2保持部の先端側には、複数の前記第2切り欠き部が所定方向に所定間隔で離散的に設けられ、
前記第2給電部は、平面視において、両側面が前記第2切り欠き部の内側面に接しないように、各々の前記第2切り欠き部に配置されている、請求項2に記載のめっき給電治具。
【請求項4】
前記第1給電部は、前記第1保持部よりも剛性が低く、
前記第2給電部は、前記第2保持部よりも剛性が低い、請求項1乃至3の何れか一項に記載のめっき給電治具。
【請求項5】
前記第1給電部の厚さは、前記第1保持部の厚さよりも薄く、
前記第2給電部の厚さは、前記第2保持部の厚さよりも薄い、請求項4に記載のめっき給電治具。
【請求項6】
前記第1給電部は、前記第1保持部とは異なる材料から形成され、
前記第2給電部は、前記第2保持部とは異なる材料から形成されている、請求項4又は5に記載のめっき給電治具。
【請求項7】
前記第1保持部及び前記第2保持部の表面は、絶縁膜で被覆されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載のめっき給電治具。
【請求項8】
前記第1給電部と前記第2給電部は対向するように配置され、
前記第1給電部は、前記第2給電部側に突起する第1接点を有し、
前記第2給電部は、前記第1給電部側に突起する第2接点を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のめっき給電治具。
【請求項9】
前記第1接点及び前記第2接点は、湾曲形状である、請求項8に記載のめっき給電治具。
【請求項10】
前記第1接点及び前記第2接点は、半球状である、請求項9に記載のめっき給電治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき給電治具に関する。
【背景技術】
【0002】
基板等のめっき対象物にめっきを行う際には、めっき槽内において、めっき対象物に電流を供給するめっき給電治具を用いる。従来のめっき給電治具は、めっき対象物の対向する辺を接続部でクランプすることにより、めっき対象物の保持とめっき対象物への給電を同じ部材により同時に行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-527473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
めっき対象物の保持及び給電は、めっき対象物のシワやヨレを伸ばした状態で行う必要があるため、従来のめっき給電治具では、めっき対象物の保持及び給電を行う接続部の厚さを厚くしている。しかしながら、接続部の厚さを厚くすると、接続部の柔軟性が損なわれてしまう。そのため、めっき対象物の細かい凹凸やうねり、厚さの変動がある場合、接続部とめっき対象物との接触が不十分となり、めっき対象物に給電できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、安定した給電が可能なめっき給電治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本めっき給電治具は、一方及び他方の主面を備えた連結部と、前記連結部の一方の主面に固定され、めっき膜を形成するめっき対象物を保持する第1保持部、及び前記めっき対象物に給電する第1給電部、を備えた第1接続部と、前記連結部の他方の主面に、前記連結部を挟んで前記第1接続部と対向するように固定され、前記めっき対象物を保持する第2保持部、及び前記めっき対象物に給電する第2給電部、を備えた第2接続部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、安定した給電が可能なめっき給電治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るめっき給電治具が支持部材に取り付けられた状態を例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るめっき給電治具を例示する断面図である。
図3】第1実施形態に係るめっき給電治具の接続部を例示する部分斜視図である。
図4】給電部の接点近傍の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るめっき給電治具が支持部材に取り付けられた状態を例示する斜視図である。図1(a)は一対のめっき給電治具10がめっき対象物Wを保持していない状態を、図1(b)は一対のめっき給電治具10がめっき対象物Wを保持している状態を示している。図1では、支持部材300の長手方向をX方向、めっき給電治具10の長手方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向としている。
【0011】
図2は、第1実施形態に係るめっき給電治具を例示する断面図である。図2(a)は、図1のA-A線におけるXZ平面に水平な断面を示しており、図2(b)は、図1のB-B線におけるXZ平面に水平な断面を示している。図3は、第1実施形態に係るめっき給電治具の接続部を例示する部分斜視図であり、接続部の一部を接点側から視た図である。なお、図3において、絶縁膜の図示は省略されている。
【0012】
図1図3を参照すると、第1実施形態に係るめっき給電治具10は、板状又はシート状のめっき対象物Wをめっき液に浸漬してめっき処理を施す際に、めっき対象物Wを両側から保持すると共に、めっき対象物Wに給電するものである。めっき給電治具10は、連結部20と、接続部30及び40とを有している。
【0013】
めっき給電治具10は、略水平方向に延伸する細長状の支持部材300の両端に1つずつ支持されている。めっき給電治具10及び支持部材300は、主に導電性の材料から形成されている。一方のめっき給電治具10の連結部20は、支持部材300の一端に揺動自在に支持され、支持部材300に対して略垂直な方向に延伸している。他方のめっき給電治具10の連結部20は、支持部材300の他端に揺動自在に支持され、支持部材300に対して略垂直な方向に延伸している。
【0014】
一方のめっき給電治具10は、めっき対象物Wの左右方向(X方向)の一端側を挟み込んで保持する。他方のめっき給電治具10は、めっき対象物Wの左右方向(X方向)の他端側を挟み込んで保持する。めっき対象物W、及びめっき対象物Wを両側から挟んだ一対のめっき給電治具10がめっき液に浸漬され、支持部材300を経由して一対のめっき給電治具10に給電されると、めっき対象物Wの両面に電流が流れ、めっき対象物Wの両面にめっき層が形成される。一対のめっき給電治具10をめっき対象物Wの片面のみに電流が流れる構造にしておけば、めっき対象物Wの片面のみにめっき層を形成することも可能である。
【0015】
以降、めっき給電治具10の各構成要素について詳説する。連結部20は、本体21と、絶縁膜24とを有している。本体21は、Y方向に延伸する細長い板状の部材である。本体21は、一方の主面と他方の主面を備えており、本体21の一方の主面と他方の主面とは略平行である。本体21は、導電性の材料から形成されている。本体21の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。本体31及び41(後述)と接する部分を除き、本体21の表面全体は、絶縁膜24で被覆されている。絶縁膜24の材料は、例えば、フッ素系樹脂である。絶縁膜24の厚さは、例えば、300μm程度である。絶縁膜24は、不要な部分にめっきが析出することを防止するために設けられる。
【0016】
接続部30は、めっき対象物Wと接続され、めっき対象物の保持及びめっき対象物への給電を行う部分である。接続部30は、本体31と、保持部32と、給電部33と、絶縁膜34とを有している。本体31及び保持部32は、例えば、導電性の材料から一体に形成されている。本体31及び保持部32の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。
【0017】
本体31は、Y方向に延伸する細長い板状の部材であり、本体21の一方の主面に接触して固定されている。本体31は、例えば、ボルト等により本体21に固定される。本体21の一方の主面と接している部分を除き、本体31の表面全体は、絶縁膜34に被覆されている。絶縁膜34の材料は、例えば、フッ素系樹脂である。絶縁膜34の厚さは、例えば、300μm程度である。絶縁膜34は、不要な部分にめっきが析出することを防止するために設けられる。絶縁膜34は、絶縁膜24と同一材料から形成されてもよい。
【0018】
保持部32は、本体31の端面のZ+側からX+方向に延伸する、本体31よりも薄板に形成された部材である。保持部32の厚さは、本体31と同じであってもよい。保持部32は、めっき膜を形成するめっき対象物Wを保持する。保持部32は、本体31よりもX+方向に位置する第1屈曲点32aで鈍角をなすようにZ-方向に屈曲し、第1屈曲点32aよりも更にX+方向に位置する第2屈曲点32bで鈍角をなすようにZ+方向に屈折し、先端部に略V字型の接点35を形成している。
【0019】
保持部32において、接点35近傍は弾性変形及び弾性復帰する。保持部32の厚さは、例えば、0.5mm~1mm程度である。接点35も含め、保持部32の表面全体は、絶縁膜34で被覆されている。つまり、保持部32の接点35は、めっき対象物Wに接するが、めっき対象物Wの導電体とは導通しない。すなわち、保持部32は、めっき対象物Wへの給電には寄与しない。
【0020】
保持部32の先端側(本体31とは反対側)には、先端側から本体31側に向かう複数の切り欠き部32xがY方向に所定間隔で離散的に設けられている。切り欠き部32xの平面形状は、例えば、矩形状である。切り欠き部32xの最深部(最も本体31に近い部分)は、第1屈曲点32aと第2屈曲点32bとの間に位置する。切り欠き部32xの最深部は、例えば、第1屈曲点32aと第2屈曲点32bとの中間点よりも第1屈曲点32a側に位置する。
【0021】
なお、平面形状とは、対象物をZ方向から視た形状を指す。また、平面視とは、対象物を図1等のZ方向から視ることを指す。
【0022】
給電部33は、めっき対象物Wに給電する部分であり、給電部43と対向するように配置されている。給電部33は、めっき対象物Wを保持する機能を備えていてもよいが、めっき対象物Wの保持は主に保持部32により行われる。給電部33は、平面視において、両側面が切り欠き部32xの内側面に接しないように、各々の切り欠き部32xに1つずつ配置されている。給電部33は、例えば、切り欠き部32xの本体31側に溶接等により固定されている。なお、切り欠き部32xと給電部33は、最低1つずつ設けられていればよいが、より安定した給電を可能とするには、各々を複数個設けることが好ましい。
【0023】
給電部33は、断面視において、保持部32に設けられた凹部32y内に部分的に配置され、切り欠き部32xの最深部近傍でめっき対象物Wの一方及び他方の面と略平行な方向に屈曲する。給電部33は、先端部に接点36を有している。接点36は、例えば、大径の円柱部と小径の円柱部が同心的に設けられた構造である。接点36の小径の円柱部は、例えば、給電部33の先端側に設けられた貫通孔33xに挿入され、溶接部39で固定されている。接点36の大径の円柱部は、給電部43側に突起している。
【0024】
給電部33において、接点36近傍は弾性変形及び弾性復帰する。給電部33及び接点36は、導電性の材料から形成されている。給電部33及び接点36の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。接点36の端面36aを除き、給電部33の表面全体は、絶縁膜34に被覆されている。つまり、接点36の端面36aから、めっき対象物Wへ給電される。
【0025】
給電部33は、保持部32よりも剛性が低いことが好ましい。保持部32の剛性を高くすることで、めっき対象物Wを安定して保持できる。また、給電部33の剛性を低くすることで、給電部33の柔軟性が向上する。それにより、めっき対象物Wに細かい凹凸やうねり、厚さの変動がある場合でも、給電部33が柔軟に変形することで、給電部33の接点36がめっき対象物Wに安定して接触可能となり、めっき対象物Wに安定して給電できる。
【0026】
給電部33の剛性を保持部32の剛性より低くするには、例えば、給電部33の厚さを保持部32の厚さよりも薄くすればよい。給電部33の厚さは、例えば、保持部32の厚さの1/2~1/3程度とすることができる。給電部33の剛性を保持部32の剛性より低くするために、給電部33を保持部32よりも剛性の低い材料から形成してもよい。例えば、保持部32の材料をステンレスとし、給電部33の材料をステンレスのバネ材とすることができる。なお、給電部33の剛性を保持部32の剛性より低くするために、給電部33の厚さを保持部32の厚さよりも薄くし、かつ、給電部33の材料として、保持部32よりも剛性の低い材料を用いてもよい。
【0027】
接続部40は、めっき対象物Wと接続され、めっき対象物の保持及びめっき対象物への給電を行う部分である。接続部40は、本体21の他方の主面に、本体21を挟んで接続部30と対向するように固定されている。接続部40は、本体41と、保持部42と、給電部43と、絶縁膜44とを有している。本体41及び保持部42は、例えば、導電性の材料から一体に形成されている。本体41及び保持部42の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。接続部40は、例えば、接続部30と同一構造である。
【0028】
本体41は、Y方向に延伸する細長い板状の部材であり、本体21の他方の主面に接触して固定されている。本体41は、例えば、ボルト等により本体21に固定される。本体21の他方の主面と接している部分を除き、本体41の表面全体は、絶縁膜44に被覆されている。絶縁膜44の材料は、例えば、フッ素系樹脂である。絶縁膜44の厚さは、例えば、300μm程度である。絶縁膜44は、不要な部分にめっきが析出することを防止するために設けられる。絶縁膜44は、絶縁膜24及び絶縁膜34と同一材料から形成されてもよい。
【0029】
保持部42は、本体41の端面のZ-側からX+方向に延伸する、本体41よりも薄板に形成された部材である。保持部42は、めっき膜を形成するめっき対象物Wを保持する。保持部42は、本体41よりもX+方向に位置する第1屈曲点42aで鈍角をなすようにZ+方向に屈曲し、第1屈曲点42aよりも更にX+方向に位置する第2屈曲点42bで鈍角をなすようにZ-方向に屈折し、先端部に略V字型の接点45を形成している。
【0030】
保持部42において、接点45近傍は弾性変形及び弾性復帰する。保持部42の厚さは、例えば、0.5mm~1mm程度である。接点45も含め、保持部42の表面全体は、絶縁膜44で被覆されている。つまり、保持部42の接点45は、めっき対象物Wに接するが、めっき対象物Wの導電体とは導通しない。すなわち、保持部42は、めっき対象物Wへの給電には寄与しない。
【0031】
保持部42の先端側(本体41とは反対側)には、先端側から本体41側に向かう複数の切り欠き部がY方向に所定間隔で離散的に設けられている。切り欠き部の平面形状は、例えば、矩形状である。切り欠き部の最深部(最も本体41に近い部分)は、第1屈曲点42aと第2屈曲点42bとの間に位置する。切り欠き部の最深部は、例えば、第1屈曲点42aと第2屈曲点42bとの中間点よりも第1屈曲点42a側に位置する。保持部42の切り欠き部は、例えば、保持部32の切り欠き部32xと対向するように配置される。
【0032】
給電部43は、めっき対象物Wに給電する部分であり、給電部33と対向するように配置されている。給電部43は、めっき対象物Wを保持する機能を備えていてもよいが、めっき対象物Wの保持は主に保持部42により行われる。給電部43は、平面視において、両側面が切り欠き部の内壁面に接しないように、各々の切り欠き部に1つずつ配置されている。給電部43は、例えば、切り欠き部の本体41側に溶接等により固定されている。なお、切り欠き部と給電部43は、最低1つずつ設けられていればよいが、より安定した給電を可能とするには、各々を複数個設けることが好ましい。
【0033】
給電部43は、断面視において、保持部42に設けられた凹部42y内に部分的に配置され、切り欠き部の最深部近傍でめっき対象物Wの一方及び他方の面と略平行な方向に屈曲する。給電部43は、先端部に接点46を有している。接点46は、例えば、大径の円柱部と小径の円柱部が同心的に設けられた構造である。接点46の小径の円柱部は、例えば、給電部43の先端側に設けられた貫通孔43xに挿入され、溶接部49で固定されている。接点46の大径の円柱部は、給電部33側に突起している。
【0034】
給電部43において、接点46近傍は弾性変形及び弾性復帰する。給電部43及び接点46は、導電性の材料から形成されている。給電部43及び接点46の材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。接点46の端面46aを除き、給電部43の表面全体は、絶縁膜44に被覆されている。つまり、接点46の端面46aから、めっき対象物Wへ給電される。
【0035】
給電部43は、保持部42よりも剛性が低いことが好ましい。保持部42の剛性を高くすることで、めっき対象物Wを安定して保持できる。また、給電部43の剛性を低くすることで、給電部43の柔軟性が向上する。それにより、めっき対象物Wに細かい凹凸やうねり、厚さの変動がある場合でも、給電部43が柔軟に変形することで、給電部43の接点46がめっき対象物Wに安定して接触可能となり、めっき対象物Wに安定して給電できる。
【0036】
給電部43の剛性を保持部42の剛性より低くするには、例えば、給電部43の厚さを保持部42の厚さよりも薄くすればよい。給電部43の厚さは、例えば、保持部42の厚さの1/2~1/3程度とすることができる。給電部43の剛性を保持部42の剛性より低くするために、給電部43を保持部42よりも剛性の低い材料から形成してもよい。例えば、保持部42の材料をステンレスとし、給電部43の材料をステンレスのバネ材とすることができる。なお、給電部43の剛性を保持部42の剛性より低くするために、給電部43の厚さを保持部42の厚さよりも薄くし、かつ、給電部43の材料として、保持部42よりも剛性の低い材料を用いてもよい。
【0037】
一対のめっき給電治具10がめっき対象物Wを両側から保持すると、一方のめっき給電治具10の接続部30の接点36から、他方のめっき給電治具10の接続部30の接点36に電流が流れ、めっき対象物Wの一方の面にめっき層が形成される。また、一方のめっき給電治具10の接続部40の接点46から、他方のめっき給電治具10の接続部40の接点46に電流が流れ、めっき対象物Wの他方の面にめっき層が形成される。
【0038】
このように、めっき給電治具10では、接続部において、保持部と給電部とを別々に設けている。すなわち、接続部において、保持部と給電部とを別々の仕様で設計できるため、保持部はめっき対象物の保持に好適な仕様で設計し、給電部はめっき対象物への給電に好適な仕様で設計することが可能となる。これにより、めっき対象物が薄型になっても、シワやヨレを伸ばせるだけの保持力を確保すると共に、めっき対象物に細かな凹凸やうねりがあったり、めっき対象物に厚さの変動が生じたりしても、安定した給電が可能となる。
【0039】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、給電部の接点の形状が異なるめっき給電治具の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0040】
図4は、給電部の接点近傍の部分断面図である。給電部33及び43は、図4に示す接点37および47のように、角のない湾曲形状の接点を備えてもかまわない。
【0041】
接点37は、例えば、半球部と、半球部よりも小径の円柱部が同心的に設けられた構造である。接点37の円柱部は、例えば、給電部33の先端側に設けられた貫通孔33xに挿入され、溶接部39で固定されている。接点37の半球部は、給電部43側に突起している。めっき対象物Wに接する半球部の先端近傍を除き、接点37は絶縁膜34で被覆されている。接点37は、半球部に代えて、断面形状が半円状のかまぼこ型の部分を備えてもかまわない。
【0042】
同様に、接点47は、例えば、半球部と、半球部よりも小径の円柱部が同心的に設けられた構造である。接点47の円柱部は、例えば、給電部43の先端側に設けられた貫通孔43xに挿入され、溶接部49で固定されている。接点47の半球部は、給電部33側に突起している。めっき対象物Wに接する半球部の先端近傍を除き、接点47は絶縁膜44で被覆されている。接点47は、半球部に代えて、断面形状が半円状のかまぼこ型の部分を備えてもかまわない。
【0043】
このように、接点の形状は、必要に応じ適宜決定できる。特に図4に示す接点37及び47は、めっき対象物Wの有する段差や厚さの違い等に対して高い追従性を有する点で好ましい。すなわち、給電部の接点が角を有する構造の場合、めっき対象物Wの有する段差や厚さの違い等により、めっき対象物Wとの接触面積が大きく変動してしまう。給電部の接点とめっき対象物Wとの接触面積が小さくなった場合、面積が小さい領域に電流が集中するとスパークが発生するおそれがある。図4に示すように、給電部が、めっき対象物Wと接する、角のない湾曲形状(例えば、半球状)の接点を備えていることで、めっき対象物Wの有する段差や厚さの違い等が生じた場合でも、給電部の接点とめっき対象物Wとの接触面積が略一定となる。そのため、接点におけるスパークの発生を抑制できる。
【0044】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 めっき給電治具
20 連結部
24、34、44 絶縁膜
30、40 接続部
31、41 本体
32、42 保持部
32a、42a 第1屈曲点
32b、42b 第2屈曲点
32x 切り欠き部
32y、42y 凹部
33、43 給電部
33x、43x 貫通孔
35、36、37、45、46、47 接点
36a、46a 端面
39、49 溶接部
図1
図2
図3
図4