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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072211
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】空中ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20220510BHJP
   H04N 13/302 20180101ALI20220510BHJP
【FI】
G02B30/56
H04N13/302
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181539
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB09
2H199BB15
2H199BB19
2H199BB51
2H199BB58
2H199BB59
5C061AA06
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】 新規な空中ディスプレイの提供を課題とする。
【解決手段】 直線偏光を出射する画像表示装置、λ/4板と、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層、凹面鏡を、この順番で有し、コレステリック液晶層と凹面鏡とは凹面を対向して配置され、凹面鏡は、コレステリック液晶層の凹面鏡形状の光軸が通る貫通孔を有し、λ/4板は、画像表示装置が出射する直線偏光を、コレステリック液晶層を透過する円偏光に変換することにより、課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光を出射する画像表示装置と、
λ/4板と、
凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層と、
凹面鏡とを、この順番で有し、
前記コレステリック液晶層と前記凹面鏡とは、凹面を対向して配置され、
前記凹面鏡は、前記コレステリック液晶層の凹面鏡形状の光軸が通る貫通孔を有し、
前記λ/4板は、前記画像表示装置が出射する直線偏光を、前記コレステリック液晶層を透過する円偏光に変換する、空中ディスプレイ。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層の凹面と、前記凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、請求項1に記載の空中ディスプレイ。
【請求項3】
前記コレステリック液晶層の凹面、および、前記凹面鏡の凹面が、放物面状である、請求項2に記載の空中ディスプレイ。
【請求項4】
前記λ/4板が凹面形状を有し、前記λ/4板の凹面と、前記コレステリック液晶層の凹面とが、向きを一致して配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項5】
前記λ/4板の凹面と、前記コレステリック液晶層の凹面とが、同じ形状である、請求項4に記載の空中ディスプレイ。
【請求項6】
前記画像表示装置の画像表示面が凹面形状を有し、前記画像表示装置の画像表示面の凹面と前記コレステリック液晶層の凹面とが、向きを一致して配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項7】
前記画像表示装置がフレキシブル画像表示装置であり、前記画像表示装置は、前記コレステリック液晶層と凹面と向きが一致するように、凹面状に湾曲される、請求項1~6のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項8】
直線偏光を出射する画像表示装置と、
凹面鏡形状を有し、一方向の直線偏光を選択的に反射する反射型偏光子と、
λ/4板と、
凹面鏡とを、この順番で有し、
前記反射型偏光子と前記凹面鏡とは、互いの凹面を対向して配置され、
前記凹面鏡は、前記反射型偏光子の凹面鏡形状の光軸が通る貫通孔を有し、
前記反射型偏光子は、前記画像表示装置が出射する直線偏光を透過する、空中ディスプレイ。
【請求項9】
前記反射型偏光子の凹面と、前記凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、請求項8に記載の空中ディスプレイ。
【請求項10】
前記反射型偏光子の凹面、および、前記凹面鏡の凹面が、放物面状である、請求項9に記載の空中ディスプレイ。
【請求項11】
前記λ/4板が凹面形状を有し、前記λ/4板の凹面と、前記凹面鏡の凹面とが、向きを一致して配置される、請求項8~10のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項12】
前記λ/4板の凹面と、前記凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、請求項11に記載の空中ディスプレイ。
【請求項13】
前記λ/4板が凹面形状を有し、前記λ/4板の凹面と、前記反射型偏光子の凹面とが、向きを一致して配置される、請求項8~10のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項14】
前記λ/4板の凹面と、前記反射型偏光子の凹面とが、同じ形状である、請求項13に記載の空中ディスプレイ。
【請求項15】
前記画像表示装置の画像表示面が凹面形状を有し、前記画像表示装置の画像表示面の凹面と、前記反射型偏光子の凹面とが、向きを一致して配置される、請求項8~14のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【請求項16】
前記画像表示装置がフレキシブル画像表示装置であり、前記画像表示装置は、前記反射型偏光子と凹面の向きが一致するように湾曲される、請求項8~15のいずれか1項に記載の空中ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に浮いたような画像を表示する空中ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の凹面鏡を、凹面を対向して縁同士を合わせるように配置し、一方の凹面鏡の中央に貫通孔(開口)を設けることで、他方の凹面鏡の底部に配置した物品の実像を、貫通孔の位置に浮いているように観察させる空中ディスプレイ(ミラースコープ)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このように凹面を対向して配置される2枚の凹面鏡を用いる空中ディスプレイにおいて、一方の凹面鏡の底部に配置した物品(表示対象物)から他方の凹面鏡の貫通孔に向かう光路上に、光を遮るようにして配設される、入射光の透過率を調節可能な遮光部材と、遮光部材の透過率を制御して遮光部材を透過する光を透過、遮断することにより、貫通孔の位置に浮上して観察される物品の像を出現、消滅させる制御部と、を有する空中ディスプレイ(表示装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される空中ディスプレイによれば、機械的な構成を用いることなく、貫通孔の近傍に浮いているように観察される物品の像を、任意のタイミングで出現させ、また、消滅できる。
その反面、特許文献1に記載される空中ディスプレイでは、観察される物品の像を動かすことができない。
【0006】
本発明の目的は、空中に浮いた画像を表示できる、新規な空中ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 直線偏光を出射する画像表示装置と、
λ/4板と、
凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層と、
凹面鏡とを、この順番で有し、
コレステリック液晶層と凹面鏡とは、凹面を対向して配置され、
凹面鏡は、コレステリック液晶層の凹面鏡形状の光軸が通る貫通孔を有し、
λ/4板は、画像表示装置が出射する直線偏光を、コレステリック液晶層を透過する円偏光に変換する、空中ディスプレイ。
[2] コレステリック液晶層の凹面と、凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、[1]に記載の空中ディスプレイ。
[3] コレステリック液晶層の凹面、および、凹面鏡の凹面が、放物面状である、[2]に記載の空中ディスプレイ。
[4] λ/4板が凹面形状を有し、λ/4板の凹面と、コレステリック液晶層の凹面とが、向きを一致して配置される、[1]~[3]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
[5] λ/4板の凹面と、コレステリック液晶層の凹面とが、同じ形状である、[4]に記載の空中ディスプレイ。
[6] 画像表示装置の画像表示面が凹面形状を有し、画像表示装置の画像表示面の凹面とコレステリック液晶層の凹面とが、向きを一致して配置される、[1]~[5]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
[7] 画像表示装置がフレキシブル画像表示装置であり、画像表示装置は、コレステリック液晶層と凹面と向きが一致するように、凹面状に湾曲される、[1]~[6]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
[8] 直線偏光を出射する画像表示装置と、
凹面鏡形状を有し、一方向の直線偏光を選択的に反射する反射型偏光子と、
λ/4板と、
凹面鏡とを、この順番で有し、
反射型偏光子と凹面鏡とは、互いの凹面を対向して配置され、
凹面鏡は、反射型偏光子の凹面鏡形状の光軸が通る貫通孔を有し、
反射型偏光子は、画像表示装置が出射する直線偏光を透過する、空中ディスプレイ。
[9] 反射型偏光子の凹面と、凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、[8]に記載の空中ディスプレイ。
[10] 反射型偏光子の凹面、および、凹面鏡の凹面が、放物面状である、[9]に記載の空中ディスプレイ。
[11] λ/4板が凹面形状を有し、λ/4板の凹面と、凹面鏡の凹面とが、向きを一致して配置される、[8]~[10]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
[12] λ/4板の凹面と、凹面鏡の凹面とが、同じ形状である、[11]に記載の空中ディスプレイ。
[13] λ/4板が凹面形状を有し、λ/4板の凹面と、反射型偏光子の凹面とが、向きを一致して配置される、[8]~[10]のいずれか記載の空中ディスプレイ。
[14] λ/4板の凹面と、反射型偏光子の凹面とが、同じ形状である、[13]に記載の空中ディスプレイ。
[15] 画像表示装置の画像表示面が凹面形状を有し、画像表示装置の画像表示面の凹面と、反射型偏光子の凹面とが、向きを一致して配置される、[8]~[14]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
[16] 画像表示装置がフレキシブル画像表示装置であり、画像表示装置は、反射型偏光子と凹面の向きが一致するように湾曲される、[8]~[14]のいずれかに記載の空中ディスプレイ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空中に浮いたような画像を表示できる、新規な空中ディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の態様の空中ディスプレイの一例を概念的に示す図である。
図2】本発明の第2の態様の空中ディスプレイの一例を概念的に示す図である。
図3】本発明の第2の態様の空中ディスプレイの別の例を概念的に示す図である。
図4】本発明の第2の態様の空中ディスプレイの例の例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の空中ディスプレイについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
また、以下に示す図は、いずれも、本発明を説明するための概念的な図である。従って、各図において、各部材の形状、大きさ、厚さ、および、間隔などの位置関係等は、必ずしも現実の物とは一致しない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、可視光とは、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。
【0011】
図1に、本発明の空中ディスプレイの第1の態様の一例を概念的に示す。
図1に示す空中ディスプレイ10は、画像表示装置12と、λ/4板14と、コレステリック液晶層16と、凹面鏡18とを、この順番で有する。
コレステリック液晶層16は、凹面鏡形状を有する。また、凹面鏡18は、中心すなわち凹の底部に、貫通孔18aを有する。コレステリック液晶層16と凹面鏡18とは、互いの凹面を対向して、貫通孔18aが、コレステリック液晶層16の凹面鏡形状の光軸が通るように配置される。
【0012】
後述するが、本発明の空中ディスプレイは、2枚の凹面鏡を凹面を対向して縁同士を合わせるように配置し、一方の凹面鏡の中央に貫通孔を設けることで、他方の凹面鏡の底部に配置した物品の実像を、貫通孔の位置に浮いているように観察させる、上述した特許文献1に記載されるような空中ディスプレイ(ミラースコープ、ボルマトリクス、(3D)ミラージュ)と同様の原理で、貫通孔18aの位置に浮いたように画像を表示する。
【0013】
本発明の空中ディスプレイ10において、画像表示装置12は、直線偏光(直線偏光の画像)を出射できるものであれば、公知の画像表示装置(ディスプレイ)が、各種、利用可能である。
直線偏光を出射する画像表示装置としては、一例として、液晶表示装置、および、λ/4板と偏光子とを組み合わせた反射防止フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置等が例示される。なお、以下の説明では、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を『OLED』ともいう。OLEDとは、『Organic Light Emitting Diode』の略である。
また、画像表示装置12は、これ以外にも、CRT(cathode-ray tube)、ブラズマディスプレイ、電子ペーパー、および、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の無偏光を出射する画像表示装置に、直線偏光子を組み合わせることで、直線偏光を出射するようにしたものも利用可能である。
【0014】
図示例の空中ディスプレイ10において、画像表示装置12は、好ましい態様として、画像表示面が凹面形状を有する。画像表示装置12の画像表示面の形状は、コレステリック液晶層16の凹面と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
あるいは、好ましい態様として、画像表示装置12として、可撓性を有するOLED等のフレキシブル画像表示装置を用いて、画像表示面を凹面形状にしてもよく、より好ましくはコレステリック液晶層16の凹面と同じ凹面形状にしてもよく、さらに好ましくは放物面状にしてもよい。
【0015】
この際において、画像表示装置12とコレステリック液晶層16とは、図1に示すように、凹面の向きを一致して配置される。
好ましくは、画像表示装置12とコレステリック液晶層16とは、凹面形状と凹面鏡形状との光軸を一致して配置される。
【0016】
画像表示装置12の画像表示面を凹面形状とし、凹面の向きをコレステリック液晶層と一致して配置することにより、凹面鏡18の貫通孔18aの付近に浮いたように表示する画像(実像)の明るさを明るくできる点で好ましい。
【0017】
本発明の空中ディスプレイ10において、画像表示装置12として、フレキシブル画像表示装置を用いる場合には、画像表示装置12を凹面鏡のように二次元方向に湾曲させるのに制限はされない。
すなわち、本発明において、画像表示装置12としてフレキシブル画像表示装置を用いる場合には、画像表示装置12を、一方向にのみ湾曲させて用いてもよく、好ましくは、放物線状に湾曲させて用いてもよい。
この構成でも、同様に、貫通孔18aの付近に浮いたように表示する画像の明るさを明るくできる。
【0018】
なお、本発明の空中ディスプレイ10において、画像表示装置12の画像表示面は、凹面形状に制限はされず、平面状でもよい。
【0019】
図1に示す空中ディスプレイ10において、画像表示装置12は、コレステリック液晶層16のほぼ全面に対応する領域にわたって設けられている。
【0020】
ここで、本発明の空中ディスプレイ10において、凹面鏡18の貫通孔18aの付近に画像として表示されるのは、画像表示装置12による表示画像のうち、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16の中央近傍すなわち凹面の底に対応する領域Sの画像のみである。
【0021】
従って、本発明の空中ディスプレイ10では、画像表示装置12を、浮いたように表示される画像に供される領域Sのみに配置して、それ以外のコレステリック液晶層16に対面する領域は、遮光板としてもよい。遮光板は、公知のものが、各種、利用可能であるが、黒色の遮光板等、光吸収性の遮光板であるのが好ましい。
【0022】
空中ディスプレイ10において、画像表示装置12の凹面鏡18側には、λ/4板14が配置される。以下の説明では、便宜的に、空中ディスプレイ10における凹面鏡18側を『上』、逆の画像表示装置12側を『下』ともいう。
λ/4板14は、画像表示装置12が出射した直線偏光の画像を、後述するコレステリック液晶層16が透過する旋回方向の円偏光に変換するものである。従って、λ/4板14は、画像表示装置12が出射した直線偏光の画像を、コレステリック液晶層16が透過する旋回方向の円偏光に変換するように、遅相軸の方向が設定される。
【0023】
λ/4板14は、可視光のいずれかの波長において約1/4波長となる位相差を有する、公知のλ/4板(λ/4波長板、λ/4位相差板)が、各種、利用可能である。
λ/4板14としては、例えば、波長550nmにおいて、100~180nmの位相差を有するλ/4板が好ましく例示され、120~160nmの位相差を有するλ/4板がより好ましく例示される。
【0024】
図示例の空中ディスプレイ10において、λ/4板14は、好ましい態様として凹面形状を有する。λ/4板14は、コレステリック液晶層16と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
この際において、λ/4板14とコレステリック液晶層16とは、凹面の向きを一致して配置される。好ましくは、画像表示装置12とコレステリック液晶層16とは、凹面の光軸を一致して配置される。
【0025】
λ/4板14を凹面形状とし、凹面の向きをコレステリック液晶層と一致して配置することにより、凹面鏡18の貫通孔18aの付近に表示する画像(実像)の明るさを明るくできる点で好ましい。
【0026】
なお、本発明の空中ディスプレイにおいて、λ/4板14は、凹面形状に制限はされず、平面状でもよい。
この際には、λ/4板14は、厚さ方向のレタデーションであるRthが小さいのが好ましく、ゼロであるのがより好ましい。
【0027】
空中ディスプレイ10において、λ/4板14の上には、コレステリック液晶層16が配置される。本発明の第1の態様の空中ディスプレイ10において、コレステリック液晶層16は、凹面鏡形状を有し、後述する凹面鏡18と凹面を対向して配置される。
本発明の空中ディスプレイの第1の態様においては、この凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16と、貫通孔18aを有する凹面鏡18とが、上述した従来の空中ディスプレイにおける2枚の凹面鏡に対応する。
【0028】
コレステリック液晶層16とは、コレステリック配向された液晶化合物からなる液晶相(コレステリック液晶相)を固定してなる液晶層である。
周知のように、コレステリック液晶層は、液晶化合物が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチ(螺旋ピッチ)として、螺旋状に旋回する液晶化合物が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
【0029】
また、周知のように、コレステリック液晶層16は、液晶化合物による螺旋の旋回方向(センス)に応じて、特定の波長域の右円偏光または左円偏光を反射して、それ以外の光を透過する。
具体的には、コレステリック液晶層16は、螺旋1ピッチの長さに応じて、特定の波長域の光を選択的に反射して、それ以外の波長域の光を透過する。コレステリック液晶層16の選択反射の中心波長λ(選択反射中心波長λ)は、コレステリック液晶相における螺旋構造の螺旋1ピッチPに依存し、コレステリック液晶構造の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。螺旋構造の螺旋1ピッチPとは、螺旋の周期であり、液晶化合物が360°回転する厚さ方向の長さである。
また、コレステリック液晶層16は、螺旋の旋回方向(センス)に応じて、右円偏光を反射して左円偏光を透過し、あるいは、左円偏光を反射して右円偏光を透過する。コレステリック液晶層16が反射する円偏光の旋回方向は、コレステリック液晶相の螺旋のセンスに一致する。
【0030】
コレステリック液晶層16は、コレステリック液晶相を固定してなる公知のコレステリック液晶層が、各種、利用可能である。
また、コレステリック液晶層16の螺旋1ピッチの長さには、制限はなく、選択的に反射する光の波長域に応じて、適宜、設定すれば良い。なお、コレステリック液晶層16は、可視光の波長域の光を選択的に反射するように、螺旋1ピッチの長さが設定される。
さらに、コレステリック液晶層16の厚さにも、制限はなく、螺旋1ピッチの長さ、および、必要な反射率に応じて、適宜、設定すれば良い。
【0031】
コレステリック液晶層16は、必要に応じて、支持体に積層されてもよく、あるいは、液晶化合物を配向するための配向膜に積層されてもよく、あるいは、支持体および配向膜に積層されてもよい。コレステリック液晶層16が支持体に積層される場合には、支持体がラビング処理等を施されて、配向膜として作用するものでもよい。
【0032】
また、本発明の空中ディスプレイ10は、表示する画像に応じて、複数層のコレステリック液晶層16を有してもよい。
例えば、空中ディスプレイ10すなわち画像表示装置12が、赤色画像、緑色画像および青色画像からなるフルカラー画像を表示する場合には、例えば、赤色光に選択反射中心波長を有するコレステリック液晶層、緑色光に選択反射中心波長を有するコレステリック液晶層、および、青色光に選択反射中心波長を有するコレステリック液晶層の、3層のコレステリック液晶層16を有するものであってもよい。
【0033】
本発明の空中ディスプレイ10において、画像表示装置12、λ/4板14およびコレステリック液晶層16(コレステリック液晶層を含む積層体)は、離間して配置されても、積層されてもよい。
しかしながら、光の利用効率を高くできる、迷光および多重像を抑制できる等の点で、画像表示装置12、λ/4板14およびコレステリック液晶層16は、積層されるのが好ましい。また、これらの部材が離間する場合でも、上述と同様の理由で、部材間の空気層は薄い方が好ましく、これらの部材は、できだけ近接して配置するのが好ましい。
【0034】
コレステリック液晶層16の上には、凹面鏡18が配置される。
凹面鏡18は、中心すなわち凹の底部に、貫通孔18aを有する。コレステリック液晶層16と凹面鏡18とは、互いの凹面を対向して、コレステリック液晶層16の凹面鏡形状の光軸が、貫通孔18aを通るように配置される。好ましくは、コレステリック液晶層16と凹面鏡18とは、貫通孔18aの有無以外は全く同じ形状を有し、縁を合わせて配置される。
凹面鏡18には、制限はなく、特許文献1などの、2枚の凹面鏡を凹面を対向して配置した公知の空中ディスプレイを構成する凹面鏡が、各種、利用可能である。
【0035】
本発明の空中ディスプレイ10において、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16と、凹面鏡18とは、凹面(曲面)の形状が同じ形状であるのが好ましい。また、コレステリック液晶層16および凹面鏡18は、凹面(曲面)の形状が、パラボラアンテナのような放物面であるのがより好ましい。
【0036】
なお、図示例の空中ディスプレイ10においては、画像表示装置12の画像表示面およびλ/4板14も、コレステリック液晶層16と同じ凹面形状、特に放物面であるのが好ましく、凹面形状の光軸をコレステリック液晶層16の凹面鏡形状と一致するのが好ましいのは、上述のとおりである。
【0037】
以下、図1に示す空中ディスプレイ10の作用を説明することにより、本発明の第1の態様の空中ディスプレイについて、より詳細に説明する。
本例では、一例として、コレステリック液晶層16は、左円偏光を透過して、右円偏光を反射するものとする。従って、λ/4板14は、画像表示装置12が出射した直線偏光を、左円偏光に変換するように、遅相軸の方向が設定される。
なお、本発明は、これに制限はされず、コレステリック液晶層16は、右円偏光を透過して、左円偏光を反射するものであってもよい。
【0038】
図1に示す空中ディスプレイ10において、画像表示装置12が出射(表示)した直線偏光の画像は、上述のように、λ/4板14によって左円偏光Lに変換される。本例においては、コレステリック液晶層は、右円偏光を反射するものであるので、左円偏光Lはコレステリック液晶層16を透過して、凹面鏡18に入射し、反射される。
左円偏光Lは、凹面鏡18によって反射されることで、旋回方向が逆転して、右円偏光Rになる。
凹面鏡18によって反射された右円偏光Rは、コレステリック液晶層16に入射する。コレステリック液晶層16は、右円偏光を反射するので、コレステリック液晶層16に入射した右円偏光Rは、コレステリック液晶層16によって反射され、上方の凹面鏡18に向かう。
【0039】
ここで、画像表示装置12において、領域S、すなわち、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16の中央近傍、すなわち、凹面の底部(凹面鏡18の焦点近傍)に表示されて出射した光は、図1に概念的に示すように、凹面鏡18によって反射されて、凹面鏡18(コレステリック液晶層16)の光軸と平行(略平行)な右円偏光Rとされ、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16に入射し、反射される。
従って、領域Sから出射された光は、凹面鏡18と、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16との反射によって、コレステリック液晶層16の焦点(焦点近傍)に集光して、結像する。その結果、領域Sに表示された画像は、凹面鏡18の貫通孔18aの近傍に浮いているように画像I(実像)として表示される。
【0040】
すなわち、本発明の第1の態様の空中ディスプレイ10は、反射型の円偏光子であるコレステリック液晶層16を用い、鏡面での反射による円偏光の旋回方向の逆転を利用することで、画像表示装置12による表示画像を凹面鏡18と凹面鏡形状のコレステリック液晶層16との間で光を反射して、凹面鏡18の貫通孔18a付近に結像し、浮いた状態の画像Iを表示することを実現している。
しかも、この画像Iは、OLED等の画像表示装置12による表示画像である。従って、動画の表示が可能であり、例えば、画像Iを動かし、また、画像Iを変更することも可能である。
【0041】
なお、上述のように、本発明の空中ディスプレイ10においては、凹面鏡18の貫通孔18aの近傍に浮いているように表示される画像は、凹面鏡形状を有するコレステリック液晶層16の中央部(底部)の近傍、すなわち、領域Sから出射された光のみである。
従って、空中ディスプレイ10の画像表示装置12は、領域S以外の領域、すなわち、貫通孔18aの近傍に画像が表示されない領域は、黒表示にするのが好ましい。
この点に関しては、後述する図2等に示す本発明の第2の態様も同様である。
【0042】
図2に、本発明の第2の態様の一例を概念的に示す。
なお、図2に示す空中ディスプレイ30は、上述した図1に示す空中ディスプレイ10と同じ部材を有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行う。
【0043】
図2に示す空中ディスプレイ30は、画像表示装置12と、反射型偏光子32と、λ/4板34と、凹面鏡18とを、この順番で有する。
反射型偏光子32は、凹面鏡形状を有する。
反射型偏光子32と凹面鏡18とは、互いの凹面を対向して、凹面鏡18の上述した貫通孔18aが、反射型偏光子32の凹面鏡形状の光軸が通るように配置される。
【0044】
本発明の第2の態様の空中ディスプレイ30において、画像表示装置12の上には、反射型偏光子32が配置される。
上述のように、反射型偏光子32は、凹面鏡形状を有し、凹面鏡18と凹面を対向して配置される。
本発明の空中ディスプレイの第2の態様においては、この凹面鏡形状を有する反射型偏光子32と、貫通孔18aを有する凹面鏡18とが、上述した従来の空中ディスプレイにおける2枚の凹面鏡に対応する。
【0045】
なお、図2に示す空中ディスプレイ30においても、画像表示装置12は、画像表示面が凹面形状を有するのが好ましい。
ここで、本発明の第2の態様の空中ディスプレイ30においては、画像表示装置12の画像表示面の形状は、反射型偏光子32の凹面と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
また、この際において、画像表示装置12と反射型偏光子32とは、凹面の向きを一致して配置される。好ましくは、画像表示装置12と反射型偏光子32とは、凹面形状と凹面鏡形状との光軸を一致して配置される。
【0046】
また、図2に示す空中ディスプレイ30においても、画像表示装置12がフレキシブル画像表示装置であるのも好ましい。
この際には、画像表示装置12は、凹面の方向が反射型偏光子32と一致するように、上述のような凹面形状(放物面)、または、放物線状に湾曲される。
【0047】
反射型偏光子32は、ある方向の直線偏光を透過して、この直線偏光と直交する方向の直線偏光を反射する直線偏光子である。
本発明の空中ディスプレイ30において、反射型偏光子32は、画像表示装置12が出射(表示)する直線偏光を透過し、直交する方向の直線偏光を反射する。
【0048】
反射型偏光子32は、可視光の波長域において、ある方向の直線 偏光を選択的に透過するものであれば、公知の反射型偏光子(反射型直線偏光子)が利用可能である。
反射型偏光子32としては、一例として、特開2011-053705号公報等に記載されるような誘電体多層膜を延伸したフィルム、および、ワイヤグリッド型偏光子等が例示される。
また、反射型偏光子32は、市販品も好適に利用可能である。市販品の反射型偏光子としては、3M社製の反射型偏光子(商品名APF)、および、AGC社製のワイヤグリッド偏光子(商品名WGF)等が例示される。
【0049】
図2に示す空中ディスプレイ30において、反射型偏光子32の上には、λ/4板34が配置される。
λ/4板34は、配置位置が異なり、また、凹面形状を有する場合には凹面の向きが異なる以外は、基本的に、上述した図1に示す空中ディスプレイ10のλ/4板14と同様のものである。
なお、本発明の第2の態様の空中ディスプレイ30において、λ/4板34は、凹面鏡18の貫通孔18aに対応する位置に、貫通孔を有してもよく、あるいは、有さなくてもよい。しかしながら、表示画像の画質を向上できる点で、λ/4板34は、凹面鏡18の貫通孔18aに対応(対面)する位置に、貫通孔を有するのが好ましい。
また、本発明の第2の態様の空中ディスプレイ30においては、λ/4板34は、平板でも凹面形状でも、必ず、凹面鏡18の全面に対応して設けられる必要がある。
【0050】
図示例の空中ディスプレイ30においても、先と同様の理由で、λ/4板34は、好ましい態様として凹面形状を有する。λ/4板34は、凹面鏡18の凹面と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
この際において、λ/4板34と凹面鏡18とは、凹面の向きを一致して配置される。好ましくは、λ/4板34と凹面鏡18とは、凹面の光軸を一致して配置される。
λ/4板34を凹面形状とし、凹面の向きを凹面鏡18と一致して配置することにより、凹面鏡18の貫通孔18aの付近に表示する画像(実像)の明るさを明るくできる点で好ましい。
【0051】
図2に示す空中ディスプレイ30は、凹面形状を有するλ/4板34を、凹面鏡18の下に、反射型偏光子32よりも凹面鏡18に近接して配置している。また。λ/4板34の凹面の向きは、凹面鏡18の凹面の向きに一致している。
しかしながら、本発明の第2の態様の空中ディスプレイは、これに制限はされず、凹面形状を有するλ/4板を、反射型偏光子32の上に、凹面鏡18よりも反射型偏光子32に近接して配置してもよい。
この場合には、λ/4板の凹面形状は、反射型偏光子32と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
この際において、λ/4板と反射型偏光子32とは、凹面の向きを一致して配置される。好ましくは、λ/4板と反射型偏光子32とは、凹面の光軸を一致して配置される。
この構成に関しては、後に詳述する。
【0052】
また、空中ディスプレイ30においても、λ/4板34は、凹面形状に制限はされず、平面状でもよい。
この際には、λ/4板34は、厚さ方向のレタデーションであるRthが小さいのが好ましく、ゼロであるのがより好ましい。
【0053】
λ/4板34の上には、凹面鏡18が配置される。
上述のように、凹面鏡18は、中心すなわち凹の底部に、貫通孔18aを有する。反射型偏光子32と凹面鏡18とは、互いの凹面を対向して、貫通孔18aが、反射型偏光子32の凹面鏡形状の光軸が通るように配置される。好ましくは、反射型偏光子32と凹面鏡18とは、貫通孔18aの有無以外は全く同じ凹面鏡形状を有し、縁を合わせて配置される。
【0054】
本発明の空中ディスプレイ30において、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32と、凹面鏡18とは、凹面(曲面)の形状が同じ形状であるのが好ましい。また、反射型偏光子32および凹面鏡18は、凹面(曲面)の形状が、パラボラアンテナのような放物面であるのがより好ましい。
【0055】
なお、図示例の空中ディスプレイ30においては、画像表示装置12は、反射型偏光子32と同じ凹面形状(放物面)であるのが好ましく、凹面の光軸を反射型偏光子32の凹面鏡形状と一致するのが好ましく、また、λ/4板34は、凹面鏡18と同じ凹面形状(放物面)であるのが好ましく、凹面の光軸を凹面鏡18と一致するのが好ましいのは、上述のとおりである。
【0056】
空中ディスプレイ30において、画像表示装置12と反射型偏光子32、および/または、凹面鏡18とλ/4板34とは、離間して配置されても、積層されてもよい。
しかしながら、光の利用効率を高くできる、迷光および多重像を抑制できる等の点で、画像表示装置12と反射型偏光子32、および、凹面鏡18とλ/4板34とは、少なくとも一方、好ましくは両方とも、積層されるのが好ましい。また、画像表示装置12と反射型偏光子32、および/または、凹面鏡18とλ/4板34とが離間する場合でも、上記と同様の理由で、部材間の空気層は薄い方が好ましく、これらの部材は、できるだけ近接して配置するのが好ましい。
この点に関しては後述する図3および図4に示す例も、同様である。
【0057】
以下、図2に示す空中ディスプレイ30の作用を説明することにより、本発明の第2の態様の空中ディスプレイについて、より詳細に説明する。
本例では、一例として、画像表示装置12は、紙面に平行方向の直線偏光Pを出射するものとする。従って、反射型偏光子32は、紙面に平行方向の直線偏光Pを透過し、紙面に垂直方向の直線偏光Vを反射する。
また、λ/4板34は、紙面に平行方向の直線偏光Pを左円偏光Lに変換し、紙面に垂直方向の直線偏光Vを右円偏光に変換するように、遅相軸の方向が設定される。
以下の説明では、便宜的に、紙面に平行方向の直線偏光Pを『平行直線偏光P』、紙面に垂直方向の直線偏光Vを『垂直直線偏光V』ともいう。
【0058】
なお、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、画像表示装置12が、垂直直線偏光Vを出射し、反射型偏光子32が、垂直直線偏光Vを透過し、平行直線偏光Pを反射するものでもよい。
また、λ/4板34は、垂直直線偏光Vを左円偏光Lに変換し、平行直線偏光Pを右円偏光Rに変換するものでもよい。
【0059】
図2に示す空中ディスプレイ30において、画像表示装置12が出射(表示)した平行直線偏光Pの画像は、反射型偏光子32に入射する。
上述のように、反射型偏光子32は、画像表示装置12が出射した直線偏光すなわち平行直線偏光Pを透過するので、平行直線偏光Pは反射型偏光子32を透過して、上方のλ/4板34に入射する。
λ/4板34は、平行直線偏光Pを左円偏光に変換する。従って、平行直線偏光Pは、λ/4板34を透過して左円偏光Lとなり、直上の凹面鏡18に入射し、反射される。
左円偏光Lは、凹面鏡18によって反射されることで、旋回方向が逆転して右円偏光Rになる。
凹面鏡18によって反射された右円偏光Rは、再度、直下のλ/4板34に入射、透過して、垂直直線偏光Vとなる。
垂直直線偏光Vは、次いで、下方の反射型偏光子32に入射する。上述のように、反射型偏光子32は平行直線偏光Pを透過する直線偏光子である。従って、垂直直線偏光Vは、反射型偏光子32によって反射され、上方の凹面鏡18(λ/4板34)に向かう。
【0060】
ここで、画像表示装置12において、領域S、すなわち、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32の中央部、すなわち、凹面の底の近傍(凹面鏡18の焦点近傍)に表示されて出射した光は、図2に概念的に示すように、凹面鏡18によって反射されて、凹面鏡18(反射型偏光子32)の光軸と平行(略平行)な垂直直線偏光Vとされ、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32に入射し、反射される。
従って、領域Sから出射された光は、凹面鏡18と、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32との反射によって、反射型偏光子32の焦点(焦点近傍)に集光して、結像する。その結果、領域Sから出射された光、すなわち、領域Sに表示された画像は、凹面鏡18の貫通孔18aの近傍に浮いているように実像として表示される。
【0061】
すなわち、本発明の第2の態様の空中ディスプレイ30は、反射型の直線偏光子である反射型偏光子32を用い、鏡面での反射による円偏光の旋回方向の逆転を利用することで、画像表示装置12による表示画像を、凹面鏡18と凹面鏡形状の反射型偏光子32との間で反射して、凹面鏡18の貫通孔18a付近に結像し、浮いた状態の画像Iを表示することを実現している。
しかも、この画像Iは、OLED等の画像表示装置12による表示画像である。従って、動画の表示が可能であり、例えば、画像Iを動かし、また、画像Iを変更することも可能である。
【0062】
上述のように、本発明の空中ディスプレイの第2の態様では、凹面形状を有するλ/4板を、反射型偏光子32上に、凹面鏡18よりも反射型偏光子32に近接して配置してもよい。
図3に、その一例を概念的に示す。なお、図3に示す空中ディスプレイ30Aは、上述した空中ディスプレイ30と同じ部材を有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部材を主に行う。
【0063】
図3に示す空中ディスプレイ30において、λ/4板34aは、凹面形状を有し、反射型偏光子32の上(直上)に配置される。
この構成では、λ/4板34aと反射型偏光子32とが、凹面の向きを一致して配置される。好ましくは、λ/4板34aと反射型偏光子32とは、凹面形状と凹面鏡形状との光軸を一致して配置される。
また、λ/4板34aの凹面形状は、反射型偏光子32と同じ凹面形状であるのがより好ましく、放物面状であるのがさらに好ましい。
図3に示す空中ディスプレイ30において、反射型偏光子32とλ/4板34a、さらには、画像表示装置12は、近接して配置されるのが好ましく、積層されるのがより好ましいのは、上述のとおりである。
【0064】
以下、図3に示す空中ディスプレイ30Aの作用を説明する。
なお、図3に示す例では、一例として、上述した図2に示す空中ディスプレイ30とは逆に、λ/4板34aは、平行直線偏光Pを右円偏光Rに変換し、垂直直線偏光Vを左円偏光Lに変換するように、遅相軸の方向が設定される。本発明の空中ディスプレイは、この構成でも良いのは、上述のとおりである。
上述のように、平行直線偏光Pとは、紙面に平行方向の直線偏光であり、垂直直線偏光Vとは、紙面に垂直方向の直線偏光である。
【0065】
図3に示す空中ディスプレイ30Aにおいて、画像表示装置12が出射(表示)した平行直線偏光Pの画像は、反射型偏光子32に入射する。
上述のように、反射型偏光子32は、画像表示装置12が出射した直線偏光すなわち平行直線偏光Pを透過するので、平行直線偏光Pは反射型偏光子32を透過して、直上のλ/4板34aに入射する。
λ/4板34aは、平行直線偏光Pを右円偏光に変換する。従って、平行直線偏光Pは、λ/4板34aを透過して右円偏光Rとなり、上方の凹面鏡18に向かう。
右円偏光Rは、次いで、凹面鏡18に入射し、反射される。右円偏光Rは、凹面鏡18によって反射されることで、旋回方向が逆転して左円偏光Lになる。
凹面鏡18によって反射された左円偏光Lは、下方のλ/4板34aに向かう。
次いで、左円偏光Lは、λ/4板34aに入射、透過して、垂直直線偏光Vとなる。
垂直直線偏光Vは、次いで、直下の反射型偏光子32に入射する。上述のように、反射型偏光子32は、平行直線偏光Pを透過する直線偏光子である。従って、垂直直線偏光Vは、反射型偏光子32によって反射される。
反射型偏光子32によって反射された垂直直線偏光Vは、直上のλ/4板34aに入射、透過して、再度、左円偏光Lに変換され、上方の凹面鏡18に向かう。
【0066】
ここで、上述の例と同様、画像表示装置12において、領域S、すなわち、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32の中央部、すなわち、凹面の底の近傍(凹面鏡18の焦点近傍)に表示されて出射した光は、図3に概念的に示すように、凹面鏡18によって反射されて、凹面鏡18(反射型偏光子32)の光軸と平行(略平行)な左円偏光Lとされ、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32に入射し、反射される。
従って、領域Sから出射された光は、凹面鏡18と、凹面鏡形状を有する反射型偏光子32との反射によって、反射型偏光子32の焦点(焦点近傍)に集光して、結像する。その結果、領域Sから出射された光、すなわち、領域Sに表示された画像は、凹面鏡18の貫通孔18aの近傍に浮いているように実像として表示される。
【0067】
図2および図3に示す本発明の第2の態様の空中ディスプレイは、好ましい態様として、λ/4板が凹面形状を有し、凹面鏡形状を有する凹面鏡18または反射型偏光子32と凹面の向きを一致して、好ましくは近接、より好ましくは積層して配置される。
しかしながら、本発明の第2の態様の空中ディスプレイは、これに制限はされない。すなわち、本発明の第2の態様の空中ディスプレイは、λ/4板が、凹面を対向する反射型偏光子32と凹面鏡18との間に配置されていれば、図4に概念的に示す空中ディスプレイ30Bのように、平板状のλ/4板34bを、例えば、反射型偏光子32と凹面鏡18の中間に設けてもよい。
ただし、光の利用効率を高くできる、迷光および多重像を抑制できる等の点では、図2および図3に示すように、λ/4板が凹面形状を有し、凹面鏡18または反射型偏光子と凹面の向きを一致して配置するのが好ましい。
【0068】
以上、本発明の空中ディスプレイについて詳細に説明したが、本発明は、上述の例に制限はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
商品のディスプレイ等に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10,30,30A,30B 空中ディスプレイ
12 画像表示装置
14,34,34a,34b λ/4板
16 コレステリック液晶層
18 凹面鏡
32 反射型偏光子
L 左円偏光
R 右円偏光
P 平行直線偏光(紙面に平行な直線偏光)
V 垂直直線偏光(紙面に垂直な直線偏光)
図1
図2
図3
図4