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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072852
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】液化ガス濾過用フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/24 20060101AFI20220510BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B01D46/24 Z
B01D39/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182517
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000231556
【氏名又は名称】日本精線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】奥田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】進藤 侑也
(72)【発明者】
【氏名】小森 栄一
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA02
4D019BA02
4D019BB01
4D019BD01
4D019CA03
4D019DA02
4D019DA03
4D058JA02
4D058JB03
4D058JB22
4D058JB41
4D058KA03
4D058LA01
4D058UA01
(57)【要約】
【課題】 装置内での温度ムラを抑制し、ひいては、液化ガスの濾過中での変質や再液化を防止する。
【解決手段】 濾過用フィルタ1であって、熱伝導性を有するハウジング200と、フィルタ部材300と、熱伝導性を有する伝熱部材400とを含む。ハウジング200は、軸心方向Aの一端側に設けられたガス入口201と、その他端側に設けられたガス出口202と、これらの間を延びる濾過室203とを備える。伝熱部材400は、濾過室203を、上流側流路210と下流側流路220とに区画するようにハウジング200の内部に配される。伝熱部材は、ガス入口201の側でハウジング200に固定された第1部材401と、ガス出口202の側でハウジング200に固定された第2部材402と、これらに間を軸心方向Aに延びるガス透過性を有する筒状の第3部材403と、第1部材401及び/又は第2部材402から、第3部材403が囲む被包囲空間220Aの中に延びる第4部材404とを含む。フィルタ部材300が第3部材403に固定されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを濾過するための液化ガス濾過用フィルタであって、
熱伝導性を有するハウジングと、フィルタ部材と、熱伝導性を有する伝熱部材とを含み、
前記ハウジングは、軸心方向を規定する筒状であり、前記軸心方向の一端側に設けられたガス入口と、前記軸心方向の他端側に設けられたガス出口と、前記ガス入口と前記ガス出口との間を延びる濾過室とを備え、
前記フィルタ部材は、筒状の多孔質体であって、前記ハウジングの中に配されており、
前記伝熱部材は、前記濾過室を、前記ガス入口から前記フィルタ部材に至る上流側流路と、前記フィルタ部材から前記ガス出口までの下流側流路とに区画するように、前記ハウジングの内部に配されており、
前記伝熱部材は、前記ガス入口の側で前記ハウジングに固定された第1部材と、前記ガス出口の側で前記ハウジングに固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とに接し、かつ、これらの間を前記軸心方向に延びるガス透過性を有する筒状の第3部材と、前記第1部材及び/又は前記第2部材から、前記第3部材が囲む被包囲空間の中に延びる第4部材とを含み、
前記フィルタ部材が前記第3部材に固定されている、
液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記ハウジングと同一の材料で形成されている、請求項1に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記ハウジングとは異なる材料で形成されており、前記第1部材及び前記第2部材の熱伝導率が、前記ハウジングの熱伝導率よりも大きい、請求項1に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項4】
前記第4部材は、前記ハウジングと同じかそれよりも大きい熱伝導率を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項5】
前記被包囲空間は円柱状であり、前記第4部材は円柱状であり、前記第4部材は、前記被包囲空間と同軸状に配されて、前記第4部材の周囲にパイプ状流路を画定する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項6】
前記パイプ状流路の前記軸心方向と直交する断面積は、前記ガス出口の前記軸心方向と直交する断面積以上である、請求項5に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項7】
前記下流側流路は、前記軸心方向において、前記パイプ状流路と前記第2部材との間に円柱状流路をさらに含み、前記円柱状流路の外周面の表面積は、前記ガス出口の前記断面積以上である、請求項6に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項8】
前記フィルタ部材が、前記第3部材の外周面側に固定されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【請求項9】
前記フィルタ部材は、金属繊維の焼結体である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液化ガス濾過用フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス中に含まれる微細不純物を濾過処理するために用いられる液化ガス濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、液化ガスを濾過するためのフィルタ及びフィルタシステムが開示されている。このフィルタは、ハウジングと、その内部を上流側と下流側とに区分する仕切部材とを含む。前記ハウジングは、外部からの熱供給を受けるための受熱部を含む。また、前記仕切部材は、略円筒状の支持体と、前記支持体の周囲に配されかつ前記ハウジングの内周面との間で前記液化ガスが流れ込む流路を画定する略円筒状の多孔質フィルタ部と、前記支持体の一端側を前記ハウジングに連結しかつ前記受熱部からの熱を前記支持体に伝えるための熱伝導部材とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-18981号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、常温常圧の環境下において液化する液化ガスから不純物を除去する場合、その温度を高め(例えば、200℃程度)、気化した状態で濾過が行われる。しかしながら、液化ガスは、所定の温度t1よりも高くなると変質し、所定の温度t2よりも低くなると再液化する性質があることから、濾過室内の温度は、温度t1よりも低くかつ温度t2よりも高く維持する必要がある。特に、温度t1及びt2の差が著しく小さい液化ガスを濾過する場合、濾過室内のよりシビアな温度管理が必要となる。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解決するために案出なされたものであり、濾過室内での温度ムラを抑制し、ひいては、濾過中での液化ガスの変質や再液化を防止しうる液化ガス濾過用フィルタを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液化ガスを濾過するための液化ガス濾過用フィルタであって、熱伝導性を有するハウジングと、フィルタ部材と、熱伝導性を有する伝熱部材とを含み、前記ハウジングは、軸心方向を規定する筒状であり、前記軸心方向の一端側に設けられたガス入口と、前記軸心方向の他端側に設けられたガス出口と、前記ガス入口と前記ガス出口との間を延びる濾過室とを備え、前記フィルタ部材は、筒状の多孔質体であって、前記ハウジングの中に配されており、前記伝熱部材は、前記濾過室を、前記ガス入口から前記フィルタ部材に至る上流側流路と、前記フィルタ部材から前記ガス出口までの下流側流路とに区画するように、前記ハウジングの内部に配されており、前記伝熱部材は、前記ガス入口の側で前記ハウジングに固定された第1部材と、前記ガス出口の側で前記ハウジングに固定された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とに接し、かつ、これらの間を前記軸心方向に延びるガス透過性を有する筒状の第3部材と、前記第1部材及び/又は前記第2部材から、前記第3部材が囲む被包囲空間の中に延びる第4部材とを含み、前記フィルタ部材が前記第3部材に固定されている、液化ガス濾過用フィルタである。
【0007】
本発明の他の態様では、前記第1部材及び前記第2部材は、前記ハウジングと同一の材料で形成されても良い。
【0008】
本発明の他の態様では、前記第1部材及び前記第2部材は、前記ハウジングとは異なる材料で形成されており、前記第1部材及び前記第2部材の熱伝導率が、前記ハウジングの熱伝導率よりも大きくても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記第4部材は、前記ハウジングと同じかそれよりも大きい熱伝導率を有しても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記被包囲空間は円柱状であり、前記第4部材は円柱状であり、前記第4部材は、前記被包囲空間と同軸状に配されて、前記第4部材の周囲にパイプ状流路を画定しても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記パイプ状流路の前記軸心方向と直交する断面積は、前記ガス出口の前記軸心方向と直交する断面積以上であっても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記下流側流路は、前記軸心方向において、前記パイプ状流路と前記第2部材との間に円柱状流路をさらに含み、前記円柱状流路の外周面の表面積は、前記ガス出口の前記断面積以上であっても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記フィルタ部材が、前記第3部材の外周面側に固定されていても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記フィルタ部材は、金属繊維の焼結体であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液化ガス濾過用フィルタは、上記の構成を採用したことにとり、濾過室内での温度の均一化を図り、ひいては、濾過中における液化ガスの変質や再液化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の液化ガス濾過用フィルタの断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5】(A)は、円柱状流路付近の要部拡大図、(B)は、その要部斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれていることが理解されなければならない。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0018】
[フィルタ]
図1は、本発明の一実施形態を示す液化ガス濾過用フィルタ(以下、単に「フィルタ」という)1 の断面図である。本実施形態のフィルタ1は、例えば、半導体の製造等に用いられる液化ガスGからの微細な不純物を濾過するためのものである。本実施形態の液化ガスGは、例えば、常温常圧では液体を呈するが、高温とされることで気化するものである。なお、液化ガスGの種類や用途については、上述の態様に限定されるものではない。
【0019】
図1に示されるように、フィルタ1は、ハウジング200と、フィルタ部材300と、伝熱部材400とを含んで構成されている。
【0020】
[ハウジング]
ハウジング200は、フィルタ1の外装材であって、軸心方向Aを規定する筒状に形成されている。軸心方向Aは、筒の軸心CLに沿った方向である。本実施形態のハウジング200は、円筒状に形成されている。他の態様では、ハウジング200は、断面が多角形の筒状であっても良い。
【0021】
ハウジング200は、軸心方向Aの一端側に設けられたガス入口201と、軸心方向Aの他端側に設けられたガス出口202と、ガス入口201とガス出口202との間を延びる濾過室203とを備える。
【0022】
本実施形態のハウジング200は、内径d1のガス入口201及びガス出口202を画定する一対の小径部200Aを含む。小径部200Aは、共通の軸心CL上に位置するようにレイアウトされている。
【0023】
また、本実施形態のハウジング200は、一対の小径部200Aの間に、内径d2(>d1)の濾過室203を画定する大径部200Bを含む。小径部200Aと大径部200Bとの間には、ハウジング200の径方向B(軸心方向Aと直交する方向で、以下同じ。)にのびる径方向壁200Cが設けられる。なお、径方向Bは、軸心方向Aの周りに360度存在するが、図1には、その一例が符号Bとして表示されている。
【0024】
本実施形態のハウジング200は、熱伝導性を有する材料で形成されている。すなわち、ハウジング200は、高温側から低温側へ熱を伝えることができる材料からなる。
【0025】
また、本実施形態のハウジング200のガス入口201の近傍には、受熱部205が設けられる。受熱部205は、例えば、電気ヒータHなどの熱源が接続されることで、外部からの熱を受ける。この熱は、ハウジング200の全体に伝わり、ハウジング200を高温にする。高温となったハウジング200は、輻射によって、濾過室203を流れる液化ガスGを加熱する。
【0026】
本実施形態のハウジング200は、上述のような熱伝導性を有する材料として、ステンレス鋼で形成されている。好ましい態様では、ハウジング200には、オーステナイト系ステンレスが用いられ、とりわけ、高耐食性を有するSUS316Lが好適である。
【0027】
[フィルタ部材]
フィルタ部材300は、液化ガスGから不純物を取り除くためのものである。本実施形態のフィルタ部材300は、内部に多数の連続孔を有する多孔質体で構成されている。
【0028】
多孔質体としては、例えば、金属繊維の焼結体が好適である。金属繊維としては、例えば、ステンレス鋼の長繊維の金属繊維が好適である。ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレスが用いられ、とりわけ、高耐食性を有するSUS316Lが好適である。金属繊維(長繊維)の平均繊維径は、例えば、1~100μm程度が望ましい。このようなフィルタ部材300は、液化ガスG の微細な不純物(ミストや埃)を高精度で捕捉することができる。
【0029】
フィルタ部材300の平均空隙率は、特に限定されないが、例えば、80%以上が望ましく、また94%以下が望ましい。なお、フィルタ部材300は、平均空隙率が異なる複数の層が積層された構造であっても良い。
【0030】
[伝熱部材]
伝熱部材400は、ハウジング200の濾過室203を、上流側流路210と、下流側流路220とに区画するように、ハウジング200の内部に配されている。また、伝熱部材400は、ハウジング200と同様に、熱伝導性を有する。
【0031】
上流側流路210は、ガス入口201からフィルタ部材300に至るまでの流路を意味する。したがって、この上流側流路210を流れる液化ガスGは、未濾過の状態である。また、本実施形態において、下流側流路220は、フィルタ部材300からガス出口202までの流路を意味する。したがって、下流側流路220を流れる液化ガスGは、濾過された状態である。これらの詳細は、後で述べる。
【0032】
また、伝熱部材400は、第1部材401、第2部材402、第3部材403及び第4部材404を含んで構成される。
【0033】
[第1部材]
第1部材401は、ガス入口201の側でハウジング200に固定されている。図2は、図1のII-II線断面図を示す。図1及び2に示されるように、本実施形態の第1部材401は、例えば、ハウジング200の径方向Bに延びる円板状の部材である。本実施形態の第1部材401は、その外周縁が、ハウジング200の大径部200Bの内周面に固着されている。
【0034】
本実施形態の第1部材401は、例えば、溶接によりハウジング200に固着されている。このような第1部材401は、ハウジング200からの熱を受け取ることにより、高温に制御され得る。
【0035】
また、図2に示されるように、第1部材401の外周縁側には、この第1部材401を軸心方向Aに貫通する複数の通気孔401Aが形成されている。また、図1に示されるように、第1部材401のガス出口202の側には、第3部材403を固着するための第1取付部401Bが形成されている。
【0036】
第1部材401は、通気孔401Aを除いて、ガス入口201から流入する液化ガスGの下流側への移動を妨げる。したがって、ガス入口201からハウジング200に流入した高圧の液化ガスGは、第1部材401の外周縁側から通気孔401Aを通って、第1部材401の下流側へと流れる。
【0037】
第1部材401は、ガス入口201の側でハウジング200に固定されていれば、その具体的形状は、上述のような態様以外にも種々変形可能である。例えば、第1部材401は、ハウジング200と別部材であっても良いし、ハウジング200と予め一体的に形成されても良い。また、第1部材401の固定位置は、ハウジング200の大径部200Bではなく、例えば、径方向壁200Cであっても良い。
【0038】
[第2部材]
第2部材402は、第1部材401よりもガス出口202の側でハウジング200に固定されている。図3は、図1のIII-III線断面図を示す。図1及び図3に示されるように、本実施形態の第2部材402は、例えば、ガス出口202の側の径方向壁200Cからハウジング200内を軸心方向Aに延びる筒状(円筒状)の部材である。本実施形態の第2部材402は、ガス出口202の側の端部が、ハウジング200の径方向壁200Cの内面に固着されており、その反対側の端部が、ハウジング200内で終端している。
【0039】
本実施形態の第2部材402は、例えば、溶接によりハウジング200に固着されている。このような第2部材402は、ハウジング200からの熱を受け取ることにより、高温に制御され得る。
【0040】
図3に示されるように、第2部材402は、濾過室203のガス出口202の側を、ハウジング200の径方向Bで内外に区画している。そして、第2部材402で囲まれた内側の流路区画は、ガス出口202と連通している。また、図1に示されるように、第2部材402のガス入口201の側の端部には、第3部材403を固着するための第2取付部402Bが形成されている。
【0041】
第2部材402は、ガス出口202の側でハウジング200に固定されていれば、その具体的形状は、上述のような態様に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、第2部材402は、本実施形態のように、ハウジング200と別部材として構成される態様の他、ハウジング200と予め一体的に形成された態様でも良い。
【0042】
[第3部材]
図4は、図1のIV-IV線断面図である。図1及び図4に示されるように、第3部材403は、第1部材401と第2部材402との間を軸心方向Aに延びている。本実施形態の第3部材403は、円筒状であり、ハウジング200の軸心CLと同軸に配置されている。
【0043】
また、第3部材403は、その軸心方向Aの一端が、第1部材401の第1取付部401Bに接触し、かつ、その軸心方向Aの他端が、第2部材402の第2取付部402Bに接触している。このような第3部材403は、第1部材401及び第2部材402の両方から熱を受け取ることができる。
【0044】
また、第3部材403は、ガス透過性を有する。本実施形態の第3部材403は、その径方向Bで液化ガスGが通過可能な複数の貫通孔403A(図4)を有する。本実施形態の第3部材403は、ステンレス鋼等の金属材料からなる円筒体の表面に、直径1.0~1.5mmの円形の貫通孔403Aが複数形成されたいわゆるパンチングメタルが用いられている。ただし、第3部材403の構成は、このような態様に限定されるものではない。
【0045】
[第4部材]
下流側流路220は、第3部材403で囲まれた被包囲空間220Aを含む。この被包囲空間220Aは、ハウジング200の大径部200Bから径方向内側に離れたところに位置することから、他の部分に比べてガス温度が低くなりやすい。第4部材404は、被包囲空間220Aを効果的に暖めるために、第1部材401及び/又は第2部材402から、被包囲空間220Aの中に延びている。
【0046】
本実施形態の第4部材404は、例えば、円柱状とされており、その外径は、被包囲空間220Aの径方向寸法よりも小さい。また、第4部材404は、例えば、第1部材401に設けられており、被包囲空間220Aを通ってガス出口202の側に突出している。他の態様では、第4部材404は、第2部材402の側に設けられても良いし、第1部材401及び第2部材402の両側に設けられても良い。
【0047】
[フィルタ部材の固定]
上述のフィルタ部材300は、第3部材403に固定されている。本実施形態では、フィルタ部材300は、第3部材403の外周面の側に配されている。これにより、フィルタ部材300は、その上流側において、液化ガスGとの接触面積を広く確保することができる。他の態様では、フィルタ部材300は、第3部材403の内周面の側に配されても良い。
【0048】
[本実施形態の作用]
以上のように構成された本実施形態のフィルタ1では、図1に示されるように、上流側流路210は、ガス入口201から第1部材401の通気孔401Aを経由して、フィルタ部材300の外周面に至る流路として区画される。上流側流路210の軸心方向Aの下流側は、ハウジング200のガス出口202の側の径方向壁200Cで閉塞される。
【0049】
また、下流側流路220は、フィルタ部材300から第3部材403の貫通孔403A(図4)を経て、第3部材403と第4部材404との間を通り、さらに、第2部材402の内周側を通ってガス出口202に至る流路として区画される。下流側流路220の軸心方向Aの上流側は、第1部材401のガス出口202の側の面で閉塞される。
【0050】
ガス入口201から高温高圧の液化ガスGが供給されると、液化ガスGは、上流側流路210を通ってフィルタ部材300に至る。液化ガスGは、フィルタ部材300を通過する際に、ガス中の不純物が取り除かれる。フィルタ部材300を通過した液化ガスGは、清浄化され、下流側流路220を経て、ガス出口202から取り出される。
【0051】
上記濾過プロセスにおいて、ハウジング200は、液化ガスGが変質及び液化しない温度に制御されるのが望ましい。本実施形態では、外部熱源である電気ヒータHから、ハウジング200の受熱部205に熱が供給される。受熱部205に加えられた熱は、例えば、ハウジング200の小径部200A、大径部200B及び径方向壁200Cなど全体に伝わり、ハウジング200を所定の温度まで温める。また、伝熱部材400(第1部材401、第2部材402、第3部材403及び第4部材404)も、ハウジング200からの熱を受け、所定の温度まで温められる。
【0052】
したがって、本実施形態の濾過室203は、第1部材401によって上流側流路210が、また第2部材402によって下流側流路220がそれぞれバランス良く温められる。このため、濾過室203内において、軸心方向Aにおける温度ムラが抑制され、精度の高い温度環境の下で液化ガスGの濾過を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、第3部材403が、第1部材401及び第2部材402に接しているため、第3部材403は、その軸心方向Aの両側から熱を受け取る。このような第3部材403は、その軸心方向Aにおける温度分布が均一化され、ひいては濾過室203において、軸心方向Aにおける温度ムラが低減される。
【0054】
さらに、多孔質のフィルタ部材300は、濾過室203内において、断熱材として機能することから、フィルタ部材300を通過した直後の液化ガスG(すなわち、被包囲空間220Aの液化ガスG)は、特に温度が低くなる傾向がある。しかし、本実施形態では、第4部材404が、被包囲空間220Aの内へと延びているため、被包囲空間220Aの液化ガスGをその内側から温めることができる。したがって、本実施形態のフィルタ1は、上述のような被包囲空間220Aでの径方向Bの温度ムラを抑制することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のフィルタ1は、濾過室203内での軸心方向A及び径方向Bの温度ムラを抑制し、ひいては、濾過中での液化ガスGの変質や再液化を防止することができる。
【0056】
[好ましい態様]
上述の作用をさらに高めるために、第4部材404の軸心方向Aの長さは、被包囲空間220Aの軸心方向Aの長さの好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とされるのが望ましい。第4部材404の軸心方向Aの長さが被包囲空間220Aの軸心方向Aの長さの50%以上とされることで、フィルタ部材300のガス出口202側の端部まで十分に熱を行き渡らせることができ、ひいては、温度低下による温度ムラをよく確実に防止することができる。したがって、第4部材404は、その先端がフィルタ部材300のガス出口202側の端部まで延びているような態様が、特に望ましい。
【0057】
また、本実施形態の第4部材404は、ハウジング200の軸心CLと同軸状に配されている。これにより、第4部材404の周囲には、パイプ状流路220Bが画定される。このようなパイプ状流路220Bは、被包囲空間220Aの液化ガスGをより均一に温めるのに役立つ。
【0058】
パイプ状流路220Bの軸心方向Aと直交する断面積a1(図4に示す)は、ガス出口202の軸心方向Aと直交する断面積a2(図3に示す)以上とされるのが望ましい。これにより、濾過室203内での圧力損失を低減することができる。
【0059】
また、下流側流路220は、軸心方向Aにおいて、パイプ状流路220Bと第2部材402との間に円柱状流路220Cをさらに含む。この円柱状流路220Cは、第4部材404の端部よりも下流側に形成され、かつ、ガス出口202の内径d1よりも径が大きい上流側の部分である。この円柱状流路220Cは、パイプ状流路220Bからの液化ガスGをガス出口202へとスムーズに流す役割を果たす。図5(A)には、円柱状流路220C付近の要部拡大図、図5(B)は、その要部斜視図を示す。好ましい態様では、図5(A)、(B)に示されるように、第4部材404の先端の縁404eと、ガス出口202の上流側の開口縁202eとを接続する仮想円筒Vの表面積a3(図5(B)において薄く着色されている。)は、ガス出口202の前記断面積a2以上とされている。これにより、圧力損失をさらに減らしつつ濾過室203内の温度の均一化を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態では、ハウジング200、フィルタ部材300及び伝熱部材400が、いずれもステンレス鋼(SUS316L)で形成された場合を示した。他の態様では、例えば、液化ガスGが腐食性を有する場合、前記SUS316Lに代えて、ハステロイ(米ヘインズ社の登録商標)や純ニッケル、ニッケル合金等が採用されても良い。
【0061】
さらに、本実施形態では、第1部材401、第2部材402及び第3部材403は、ハウジング200と同一の材料で形成されていることから、ハウジング200と熱伝導率も同一である。他の態様では、第1部材401及び第2部材402は、ハウジング200とは異なる材料で形成されても良い。この場合、第1部材401及び第2部材402は、それらの熱伝導率が、ハウジング200の熱伝導率よりも大きいものが望ましい。これによって、ハウジング200の濾過室203内に、より効率的に熱を伝えることができる。
【0062】
同様の観点より、第4部材404は、ハウジング200と同じかそれよりも大きい熱伝導率を有するのが望ましい。
【0063】
本実施形態のフィルタ1は、電気ヒータHとセットとすることで、フィルタシステムを構築することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 フィルタ
200 ハウジング
201 ガス入口
202 ガス出口
203 濾過室
210 上流側流路
220 下流側流路
220A 被包囲空間
220B パイプ状流路
220C 円柱状流路
300 フィルタ部材
400 伝熱部材
401 第1部材
402 第2部材
403 第3部材
404 第4部材
A 軸心方向
G 液化ガス
図1
図2
図3
図4
図5