(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072978
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ビピリジン骨格を有する配位子、それを含む錯体及びそれを含む触媒
(51)【国際特許分類】
C07D 213/22 20060101AFI20220510BHJP
C07F 15/04 20060101ALI20220510BHJP
C07C 15/107 20060101ALI20220510BHJP
C07C 1/26 20060101ALI20220510BHJP
C07C 69/736 20060101ALI20220510BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20220510BHJP
C07C 255/57 20060101ALI20220510BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20220510BHJP
C07C 69/612 20060101ALI20220510BHJP
C07C 69/533 20060101ALI20220510BHJP
C07C 49/792 20060101ALI20220510BHJP
C07C 45/68 20060101ALI20220510BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20220510BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20220510BHJP
C07D 211/96 20060101ALI20220510BHJP
C07D 207/06 20060101ALI20220510BHJP
C07D 207/08 20060101ALI20220510BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
C07D213/22
C07F15/04 CSP
C07C15/107
C07C1/26
C07C69/736
C07C67/343
C07C255/57
C07C253/30
C07C69/612
C07C69/533
C07C49/792
C07C45/68
B01J31/22 Z
C07D471/04 112T
C07D211/96
C07D207/06
C07D207/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182709
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】澤村 正也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】金 容俊
【テーマコード(参考)】
4C055
4C065
4C069
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA25
4C055CA02
4C055CA06
4C055DA01
4C055EA01
4C055GA02
4C065AA04
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH02
4C065JJ01
4C065KK10
4C065LL10
4C065PP03
4C069AA02
4C069AA09
4C069BB08
4C069BB16
4C069BD03
4C069CC09
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB25
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC24
4H006BA21
4H006BJ50
4H006BP30
4H006KA31
4H006KC14
4H006QN30
4H039CA19
4H039CL25
4H050AA03
4H050AB40
(57)【要約】
【課題】金属との間で新規な錯体を形成することができる新規な配位子を提供する。その形成される錯体は、クロスカップリング反応の触媒として好適に使用することができる。
【解決手段】下記式(I)で示される2,2’-ビピリジン骨格を有する化合物(1)を含む配位子。 式(I):A12-A11-A12
[式(I)中、A11は、置換基を有してよい、5,5’位で2つのA12と結合可能な2,2’-ビピリジン又は3,8位で2つのA12と結合可能な1,10-フェナントロリンから選択され、2つのA12は、相互に同じでも異なってもよく、各々のA12は、3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基、及び分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基から選択される。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される2,2’-ビピリジン骨格を有する化合物(1)を含む配位子。
式(I)A
12-A
11-A
12
[式(I)中、A
11は、置換基を有してよい
【化1】
から選択され、
2つのA
12は、相互に同じでも異なってもよく、各々のA
12は、3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基であって、その3つの置換基の炭素原子数の合計が9以上であるメチル基もしくはシリル基、並びに分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基であって、その分岐を有する置換基の炭素原子数の合計が6以上であるアリール基から選択される。]
【請求項2】
3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基は、下記式(II):
【化2】
(式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計は9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して、置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基から選択されるが、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基は、R
21、R
22、R
23の多くともいずれか1つに選択されてよい。
式(II)中、R
21、R
22、R
23の炭素原子は、適宜、酸素原子で置き換えられていてもよく、分岐を有する炭素原子が存する場合、その炭素原子はケイ素原子で置き換えられていてもよく、R
21、R
22、R
23のいずれか2つは、結合して環構造を形成してよい)から選択され;又は
分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基は、下記式(III):
【化3】
(式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基)から選択される、請求項1に記載の配位子。
【請求項3】
式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R21、R22、R23の炭素原子数の合計は9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択され;又は
式(III)中、R24、R25の炭素原子数の合計は6以上であり、R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択される、請求項2に記載の配位子。
【請求項4】
式(II)中、Xは、炭素原子であり、R21、R22、R23の炭素原子数の合計が9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択され;又は
式(III)中、R24、R25の炭素原子数の合計は6以上であり、R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、分岐を有する炭素数6~10のアリールで置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基から選択される、請求項2に記載の配位子。
【請求項5】
式(II)中、Xは、炭素原子であり、R21、R22、R23の炭素原子数の合計が9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてもよいフェニル基から選択され;又は
式(III)中、R24、R25の炭素原子数の合計は6以上であり、R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、置換基を有してよいジフェニルメチル基から選択される、請求項2に記載の配位子。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の配位子を含む錯体。
【請求項7】
Ni、Co、Fe、Cu、Pd、Irから選択される少なくとも1種の金属を含む請求項6に記載の錯体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の錯体を含む触媒。
【請求項9】
クロスカップリング反応に用いられる、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとハロゲン化アルキルとの間のクロスカップリング反応を含む、請求項8又は9に記載の触媒。
【請求項11】
クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとアルキルカルボン酸との間のクロスカップリング反応を含む、請求項8又は9に記載の触媒。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載の触媒を使用することを含む、クロスカップリング反応方法。
【請求項13】
請求項8~11のいずれか1項に記載の触媒を使用することを含む、クロスカップリング生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビピリジン骨格を有する配位子及びその配位子を含む錯体に関し、さらに詳しくは触媒として有用な配位子及びその配位子を含む錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2’-ビピリジン(1’h)は、新規な分子変換を可能にする、一電子レドックスプロセスを伴うNi触媒のための重要な配位子骨格として知られている(非特許文献1~2参照)。例えば、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(1’i)又は4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン(1’j)が、Mn又はZn還元剤の存在下、臭化アリールと臭化アルキルとの間の交差求電子剤カップリングのために使用された(非特許文献3参照)。更に、(1’i)が、臭化アリールとアルキルカルボン酸との間の光誘起脱炭酸カップリングのために使用された(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. B. Diccianni, T. Diao, Trends Chem. 2019, 1, 830-844.
【非特許文献2】C. Kaes, A. Katz, M. W. Hosseini, Chem. Rev. 2000, 100, 3553-3590.
【非特許文献3】D. A. Everson, B. A. Jones, D. J. Weix, J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 6146-6159.
【非特許文献4】Z. Zuo, D. T. Ahneman, L. Chu, J. A. Terrett, A. G. Doyle, D. W. C. MacMillan, Science 2014, 345, 437-440.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の報告は、重要な進歩であるが、これらのクロスカップリング反応の出発原料に関する適用範囲は不十分であり、クロスカップリング反応の反応性は不十分であり、クロスカップリング反応生成物の選択性は不十分であるという問題がある。クロスカップリング反応の出発原料に関する適用範囲をより拡大し、クロスカップリング反応の反応性をより改良することが求められる。更に、副反応のホモカップリング反応で生成するホモカップリング反応生成物(例えば、ビアリール)の生成をより抑制しながら、クロスカップリング反応生成物(例えば、アリールアルカン)の選択性をより向上することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、2,2’-ビピリジン(1’h)は、Ni等の金属に、1つのみならず、2つ又は3つ配位可能であることに注目した(
図1参照)。
図1は、未配位のNi、1つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(モノキレートNi錯体)、2つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(ビスキレートNi錯体)、3つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(トリスキレートNi錯体)を模式的に示す。Niに2,2’-ビピリジンが配位した触媒システムでは、活性な触媒種は、モノキレートNi錯体と考えられるが、未配位のNiは凝集して失活を受けやすいこと、ビスキレートNi錯体とトリスキレートNi錯体が存在し、それらの存在割合が、反応原料、反応条件等によって乱されることなどが、反応性の低下及び選択性の低下などをもたらしていると考えた。
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、2,2’-ビピリジンのC5及びC5’に側方に立体障害を生じ得る置換基を導入したビピリジン骨格を有する配位子は、金属近傍に立体障害を与えることはなく、1つの2,2’-ビピリジン骨格を有する配位子と金属との錯体(モノキレート金属錯体)の形成により好ましいと考えた(
図2参照)。更に、そのような配位子を製造し、金属との間で生成した錯体は、クロスカップリング反応の触媒として好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本明細書は、下記実施形態を含む。
1.下記式(I)で示される2,2’-ビピリジン骨格を有する化合物(1)を含む配位子。
式(I)A
12-A
11-A
12
[式(I)中、A
11は、置換基を有してよい
【化1】
から選択され、
2つのA
12は、相互に同じでも異なってもよく、各々のA
12は、3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基であって、その3つの置換基の炭素原子数の合計が9以上であるメチル基もしくはシリル基、並びに分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基であって、その分岐を有する置換基の炭素原子数の合計が6以上であるアリール基から選択される。]
2.3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基は、下記式(II):
【化2】
(式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計は9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して、置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基から選択されるが、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基は、R
21、R
22、R
23の多くともいずれか1つに選択されてよい。
式(II)中、R
21、R
22、R
23の炭素原子は、適宜、酸素原子で置き換えられていてもよく、分岐を有する炭素原子が存する場合、その炭素原子はケイ素原子で置き換えられていてもよく、R
21、R
22、R
23のいずれか2つは、結合して環構造を形成してよい)から選択され;又は
分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基は、下記式(III):
【化3】
(式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基)から選択される、上記1に記載の配位子。
3.式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計は9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択され;又は
式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択される、上記2に記載の配位子。
4.式(II)中、Xは、炭素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計が9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択され;又は
式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、分岐を有する炭素数6~10のアリールで置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基から選択される、上記2に記載の配位子。
5.式(II)中、Xは、炭素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計が9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてもよいフェニル基から選択され;又は
式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、置換基を有してよいジフェニルメチル基から選択される、上記2に記載の配位子。
6.上記1~3のいずれか1に記載の配位子を含む錯体。
7.Ni、Co、Fe、Cu、Pd、Irから選択される少なくとも1種の金属を含む上記6に記載の錯体。
8.上記6又は7に記載の錯体を含む触媒。
9.クロスカップリング反応に用いられる、上記8に記載の触媒。
10.クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとハロゲン化アルキルとの間のクロスカップリング反応を含む、上記8又は9に記載の触媒。
11.クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとアルキルカルボン酸との間のクロスカップリング反応を含む、上記8又は9に記載の触媒。
12.上記8~11のいずれか1に記載の触媒を使用することを含む、クロスカップリング反応方法。
13.上記8~11のいずれか1に記載の触媒を使用することを含む、クロスカップリング生成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態の新規な配位子は、金属との間で新規な錯体を形成することができる。その錯体は、クロスカップリング反応の触媒として好適に使用することができる。更に、好ましくは、クロスカップリング反応の出発原料の適用範囲をより拡大することができ、クロスカップリング反応の反応性をより改良することができる。より好ましくは、副反応のホモカップリング反応で生成するホモカップリング反応生成物の生成をより抑制しながら、クロスカップリング反応生成物の選択性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、2,2’-ビピリジン(1’h)が、Ni等の金属に、1つのみならず、2つ又は3つ配位可能であることを模式的に示す。
【
図2】
図2は、2,2’-ビピリジンのC5及びC5’に側方に立体障害を生じ得る置換基を導入したビピリジン骨格を有する配位子を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書に添付した図面を参照しながら、更に本発明を詳細に説明する。
本発明は、一の実施形態において、下記式(I)で示される2,2’-ビピリジン骨格を有する化合物(1)を含む配位子を提供する。
式(I)A
12-A
11-A
12
[式(I)中、A
11は、置換基を有してよい
【化4】
から選択され、
2つのA
12は、相互に同じでも異なってもよく、各々のA
12は、3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基であって、その3つの置換基の炭素原子数の合計が9以上であるメチル基もしくはシリル基、並びに分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基であって、その分岐を有する置換基の炭素原子数の合計が6以上であるアリール基から選択される。]
【0011】
本発明の実施形態において、下記式(I)で示される2,2’-ビピリジン骨格を有する化合物(1)とは、下記式(I)で示され、
式(I)A
12-A
11-A
12
式(I)中、A
11は、置換基を有してよい
【化5】
から選択される。
【0012】
A11は、5,5’位で2つのA12と結合可能な2,2’-ビピリジン又は3,8位で2つのA12と結合可能な1,10-フェナントロリンを意味する。上述のA11の2つの両末端の2つの線は、A12との結合を示し、メチルを示すものではない。更に、これらのA11は、少なくとも一つの置換基を有してよい。これらが二つ以上の置換基を有する場合、二つの置換基は結合して環構造を形成してよい。置換基は、本発明が目的とする配位子を与える限り特に制限されることはない。そのような置換基として、例えば、炭化水素基を例示することができ、適宜置換基を有してよい。そのような炭化水素基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールから選択されることができる。置換基を有してよい炭化水素基は、置換基を有してよいアルキル、置換基を有してよいシクロアルキル及び置換基を有してよいアリールから選択されることが好ましい。
置換基を有してよい炭化水素基の炭素数は、1~20であってよく、1~10であってよく、6以下であってよく、3以下であってよい。
【0013】
アルキルとして、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル等を例示することができる。シクロアルキルとして、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を例示することができる。アルケニルとして、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニルを例示することができる。アルキニルとして、例えば、エチニル、プロピニル等を例示することができる。アリールとして、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等を例示することができる。
炭化水素基が有し得る置換基は、本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、特に制限されることはないが、上述のA11に記載した炭化水素基を例示することができる。
【0014】
更に、式(I)中、2つのA12は、相互に同じでも異なってもよく、各々のA12は、3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基であって、その3つの置換基の炭素原子数の合計が9以上であるメチル基もしくはシリル基、並びに分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基であって、その分岐を有する置換基の炭素原子数の合計が6以上であるアリール基から選択され、それらは、本発明が目的とする配位子を与える限り特に制限されることはない。
【0015】
本明細書において3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基とは、A11の炭素と結合するA12の炭素もしくはケイ素が3つの基と結合していることをいい、その3つの基の炭素原子数の合計が9以上であり、本発明が目的とする配位子を得ることができる限り特に制限されることはない。
その3つの基は、A12に含まれる。そのA12に含まれる3つの基は、各々、同じでも異なっていてもよく、炭化水素基から選択されることが好ましい。その炭化水素の炭素原子は、適宜、酸素原子で置き換えられていてもよく、分岐を有する炭素原子が存する場合、その炭素原子はケイ素原子で置き換えられていてもよい。各々の炭化水素基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を含むことができ、各々適宜置換基を有することができる。
【0016】
更に、炭化水素基の一つは、エーテル結合を介して、A11の炭素と結合するA12の炭素もしくはケイ素と結合してもよい。そのエーテル結合を介して結合する基とエーテル結合の全体は、例えば、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基を含むことができ、各々適宜置換基を有することができる。炭化水素基同士は、結合して、環を形成してよい。
【0017】
従って、A12は、式:-X(R12)m(OR12)p[式中、Xは、炭素もしくはケイ素、m+p=3、p=0又は1、3つのR12の炭素原子数の合計は9以上であり、3つのR12は、各々同じでも異なっていてもよく、各々独立して、置換基を有してよい炭化水素基から選択される。尚、その炭化水素基の炭素原子は、適宜、酸素原子で置き換えられていてもよく、分岐を有する炭素原子が存する場合、その炭素原子はケイ素原子で置き換えられていてもよい。更に、R12のいずれか2つは、結合して、環を形成してよい。]で、表すことができる。
【0018】
3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基について、その3つの置換基の炭素原子数の合計は9以上である。3つの置換基の炭素原子数の合計で、配位子側方への立体障害を調整することができ、3つの置換基の炭素原子数の合計が9以上である場合、クロスカップリング反応の反応性をより適切に調整することができる。3つの置換基の炭素原子数の合計が、12以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、18以上であることが特に好ましい。
3つの置換基の炭素原子数の合計は、80以下であってよく、60以下であってよく、40以下であってよい。
【0019】
そのような3つの基を有するメチル基もしくはシリル基として、例えば、下記式(II)で示される3つの置換基を有するメチル基もしくはシリル基が好ましい。
【化6】
(式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R
21、R
22、R
23の炭素原子数の合計は9以上であり、R
21、R
22、R
23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して、置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基から選択されるが、置換されていてよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルコキシ基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキニルオキシ基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基は、R
21、R
22、R
23の多くともいずれか1つに選択されてよい。
式(II)中、R
21、R
22、R
23の炭素原子は、適宜、酸素原子で置き換えられていてもよく、分岐を有する炭素原子が存する場合、その炭素原子はケイ素原子で置き換えられていてもよく、R
21、R
22、R
23のいずれか2つは、結合して環構造を形成してよい。)
【0020】
上記式(II)中、Xは、炭素原子もしくはケイ素原子であり、R21、R22、R23の炭素原子数の合計は9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてよい炭素数1~10のアルキニル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択されることが好ましく、置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択されることがより好ましく、置換されていてよい炭素数6~10のアリール基から選択されることがより好ましい。
R21、R22、R23は、各々置換基を有していても有していなくてもよい。
【0021】
本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、R21、R22、R23が有する置換基は、特に制限されることはないが、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数6~10のアリール、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数3~10のシクロアルコキシ、炭素数1~10のアルケニルオキシ、炭素数6~10のアリールオキシから選択されることが好ましく、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシから選択されることがより好ましい。
【0022】
上記式(II)中、Xは、炭素原子であり、3つのR12の炭素原子数の合計は9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基から選択されることがより好ましい。
上記式(II)中、Xは、炭素原子であり、3つのR12の炭素原子数の合計は9以上であり、R21、R22、R23は、相互に同じでも異なってもよく、各々独立して炭素数1~8のアルキル又は炭素数1~8のアルコキシで置換されていてもよいフェニル基から選択されることが好ましい。
【0023】
また、本明細書において分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基とは、上述のA11と結合するアリール基であって、A11と結合するそのアリール基の炭素原子と隣接する2つの炭素原子の両方に置換基を有し、その2つの置換基は両方共分岐を有し、その分岐を有する2つの置換基の炭素原子数の合計が6以上であり、本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、そのアリール基は、特に制限されることはない。
【0024】
そのようなアリール基は、炭素数6~10のアリール基であることが好ましく、例えば、ナフタレニル、フェニルを例示することができ、フェニルがより好ましい。そのようなアリール基は、A11と結合する炭素原子と隣接する2つの炭素原子を除く炭素原子に、置換基を有してもよい。そのような置換基は、本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、特に制限されることはない。そのような置換基として、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシを例示することができる。置換基を2つ以上有する場合、置換基同士が結合して、環状構造を形成してよい。
【0025】
上述の分岐を有する置換基とは、少なくとも3つの水素以外の原子(好ましくは、3つの炭素又は2つの炭素と1つの酸素)と結合する炭素原子を少なくとも1つ含む置換基をいい、本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、特に制限されることはない。そのような置換基として、分岐を有するアルキル基、シクロアルキル基(アリール基と結合するシクロアルキル基の炭素原子は、3つの炭素原子と結合する)、分岐を有するアルケニル基、アリール基(アリール基と結合するアリール基の炭素原子は、3つの炭素原子と結合する)等を例示することができる。ここで、シクロアルキル基及びアリール基は、少なくとも3つの炭素原子と結合する炭素原子を少なくとも1つ含み、分岐を有するといえるので、シクロアルキル基とアリール基について、分岐を有するという記載を省略する。
【0026】
分岐を有するアルキル基及び分岐を有するアルケニル基は、それらの分岐を、置換基を有することで、達成してもよい。そのような置換基として、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシを例示することができる。尚、分岐を有するアルキル基は、シクロアルキル、アリール、シクロアルコキシ、又はアリールオキシを置換基として有するメチル基を含む。
【0027】
分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基について、その分岐を有する2つの置換基の炭素原子数の合計は6以上である。分岐を有する2つの置換基の炭素原子数の合計で、配位子側方への立体障害を調整することができ、分岐を有する2つの置換基の炭素原子数の合計が6以上である場合、クロスカップリング反応の反応性をより適切に調整することができる。2つの置換基の炭素原子数の合計が、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが特に好ましい。
分岐を有する2つの置換基の炭素原子数の合計は、80以下であってよく、60以下であってよく、40以下であってよい。
【0028】
分岐を有する置換基を2位及び6位に有するアリール基は、下記式(III)で示されるアリール基が好ましい。
【化7】
(式(III)中、R
24、R
25の炭素原子数の合計は6以上であり、R
24、R
25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルケニル基、置換されていてよい炭素数1~10の分岐を有するアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される)。
【0029】
式(III)中、R24、R25の炭素原子数の合計は6以上であり、R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい炭素数1~10の分岐を有するアルキル基、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基から選択されることが好ましい。
式(III)中、R24、R25の炭素原子数の合計は6以上であり、R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、置換されていてよい分岐を有する炭素数1~10のアルキル基(置換及び/又は分岐は、アリール基と結合する炭素に存することが好ましい)、置換されていてよい炭素数3~10のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基から選択されることがより好ましい。
【0030】
炭素数1~10のアルキル基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル等を例示することができる。
炭素数3~10のシクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を例示することができる。
炭素数1~10の分岐を有するアルケニル基として、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル等を例示することができる。
炭素数6~10のアリール基として、例えば、ナフチル、フェニル等を例示することができる。
【0031】
本発明が目的とする配位子を得ることができる限り、R24、R25が有し得る置換基は、特に制限されることはないが、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数6~10のアリール、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数3~10のシクロアルコキシ、炭素数1~10のアルケニルオキシ、炭素数6~10のアリールオキシから選択されることが好ましく、炭素数1~8のアルキル、炭素数1~8のアルコキシ、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数6~10のアリールから選択されることがより好ましい。置換基の数は特に制限されることはない。
【0032】
R24、R25は、相互に同じでも異なってもよく、分岐を有する炭素数6~10のアリール基で置換されていてよい炭素数1~10のアルキル基から選択されることが好ましい。
R24及びR25は、相互に同じでも異なってもよく、置換基を有してよいジフェニルメチル基から選択されることが好ましい。
【0033】
本発明は、本発明の実施形態の配位子を含む錯体を提供することができる。
本発明の実施形態の錯体は、一般に金属(M)を含み、本発明が目的とする錯体を得られる限り、金属は特に制限されることはない。そのような金属として、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、銅、パラジウム、イリジウム等を例示することができる。
金属は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0034】
錯体は、本発明の実施形態の配位子と各金属の化合物を使用して、製造することができる。そのような金属化合物として、例えば、ニッケルでは、NiCl2、NiBr2、NiI2、Ni(cod)2等を例示することができ、イリジウムでは、[Ir(OMe)(cod)]2、[IrCl(cod)]2、[IrCl(coe)2]2等を例示することができ、コバルトでは、CoCl2、CoBr2、CoI2等を例示することができる。
【0035】
本発明の実施形態の錯体は、本発明の実施形態の配位子の他に、金属への配位性を有する化合物を含むことができる。そのような配位性化合物は、本発明が目的とする錯体を得られる限り、特に制限されることはない。そのような配位性化合物として、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、フェノール、ナフトール等のフェノール類、シクロオクタジエン(COD)、シクロオクテン(COE)等のアルケン類等を例示することができる。
【0036】
本発明は、本発明の実施形態の錯体を含む触媒を提供することができる。
そのような触媒は、種々の触媒反応に使用することができるが、クロスカップリング反応に使用することができる。クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)と、ハロゲン化アルキル(22)との間のクロスカップリング反応を含む。
【0037】
従って、本発明は、本発明の実施形態の触媒を使用することを含む、クロスカップリング反応方法を提供することができる。
更に、本発明は、本発明の実施形態の触媒を使用することを含む、クロスカップリング生成物の製造方法を提供することができる。
【0038】
本発明の実施形態の触媒を、クロスカップリング反応に使用すると、例えば、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)と、ハロゲン化アルキル(22)との間のクロスカップリング反応において、従来の触媒よりも、ホモカップリング反応生成物(24)よりクロスカップリング反応生成物(23)を生成する傾向にある。そのため、クロスカップリング反応生成物(23)の収率と選択率により優れるクロスカップリング反応方法及びクロスカップリング反応生成物の製造方法を提供することができる。
【0039】
本発明の実施形態において、上述の触媒を用いてクロスカップリング反応を行うことができる限り、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)と、ハロゲン化アルキル(22)は、特に制限されることはない。
本明細書において、ハロゲン化アリール(21)とは、ハロゲンがアリールと直接結合した化合物をいい、ハロゲンは、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から選択され、アリールは、クロスカップリング反応を行うことができる限り、適宜置換基を有してもよい。アリールとして、フェニル、ナフチル等を提示でき、置換基として、例えば、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、シアノ等を例示することができる。
本明細書において、ハロゲン化アルケニル(21)とは、ハロゲンが二重結合を有する炭素と直接結合した化合物をいい、ハロゲンは、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から選択され、アルケニルは、クロスカップリング反応を行うことができる限り、適宜置換基を有してもよい。アルケニルとして、例えば、エテニル、プロペニ、ブテニルを例示でき、置換基として、例えば、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、シアノ等を例示することができる。
本明細書において、ハロゲン化アルキル(22)とは、ハロゲンがアルキルと直接結合した化合物をいい、ハロゲンは、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から選択され、アルキルは、シクロアルキルを含み、クロスカップリング反応を行うことができる限り、適宜置換基を有してもよい。アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を提示でき、置換基として、例えば、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、シアノ、オキシカルボニル、アミノ等を提示することができる。
【0040】
更に、クロスカップリング反応は、ハロゲン化アリール(21)と、アルキルカルボン酸(25)との間のNiフォトレドックス協働触媒脱炭酸クロスカップリング反応を含む。
ハロゲン化アリール(21)は、上述の記載を参照することができる。
アルキルカルボン酸(25)とは、アルキルにカルボキシル基が直接結合した化合物をいい、アルキルは、シクロアルキルを含み、クロスカップリング反応を行うことができる限り、適宜置換基を有してもよい。アルキルとして、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を提示でき、置換基として、例えば、アルキル、アルコキシ、アルカノイル、シアノ、オキシカルボニル、アミノ等を提示することができる。
【0041】
本発明の実施形態のクロスカップリング反応は、通常、溶媒中で、本発明の実施形態の触媒を用いて、例えば、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)と、ハロゲン化アルキル(22)と、又はアルキルカルボン酸(25)とをクロスカップリング反応させて、行うことができ、従来の触媒と比べて、クロスカップリング反応生成物をより高い収率で、より高い選択性で製造することができる。
【0042】
溶媒は、通常、クロスカップリング反応に使用される溶媒であって、本発明が目的とするクロスカップリング反応、例えば、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)と、ハロゲン化アルキル(22)とのクロスカップリング反応、又はアルキルカルボン酸(25)とのクロスカップリング反応を行える限り、特に制限されることはない。
溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン(PhMe)、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、t-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の極性溶媒等を例示することができる。
【0043】
クロスカップリング反応は、種々の温度で行うことができる。例えば、0~90℃で行うことができ、5~80℃で行うことができ、10~70℃で行うことができる。室温付近の温度で行ってもよい。
更に、クロスカップリング反応は、光を照射して行うことができる。
【0044】
クロスカップリング反応は、常圧で行うことができる。
更に、クロスカップリング反応の反応時間は、例えば、30分~100時間でありえ、1~72時間であり得る。
【0045】
本発明の実施形態の触媒について、金属と化合物(1)とのモル比は、(金属/化合物(1))は、例えば、1/0.1~1/3でありえ、1/0.1~1/1でありえる。
【0046】
本発明の実施形態の触媒について、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)に対する触媒の使用量は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)に対する触媒の使用量(触媒/ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)X100(モル%))は、例えば、1~10モル%でありえ、1~5モル%でありえる。
【0047】
本発明の実施形態のハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)のクロスカップリング反応において、塩基を存在させることができる。塩基は、本発明が目的とするハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニル(21)のクロスカップリング反応を進行させることができれば、特に制限されることはない。
塩基として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;ナトリウム-メトキシド、ナトリウム-エトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、2,6-ジメトキシピリジン、4-メトキシ-2,6-ジメチルピリジン、キヌクリジン、DABCO等の有機塩基を例示できる。
塩基は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
塩基として、市販品を使用することができる。
【0048】
本発明の実施形態の化合物(1)を含む触媒は、上述のように優れた効果を奏するが、それは、以下のような、理由によると考えられる。
本発明の実施形態の化合物(1)は、式(I):A12-A11-A12に示すように、2,2’-ビピリジン骨格の両端に、側方に立体障害を生じ得る基(A12)を有する。
【0049】
2,2’-ビピリジン(1’h)は、Ni等の金属に、1つのみならず、2つ又は3つ配位可能であると考えられる(
図1参照)。即ち、2,2’-ビピリジンとNiを混合すると、未配位のNi、1つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(モノキレートNi錯体)、2つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(ビスキレートNi錯体)、3つの2,2’-ビピリジンがNiに配位した錯体(トリスキレートNi錯体)等を生ずると考えられる。活性な触媒種は、モノキレートNi錯体と考えられるが、未配位のNi及びその他のNi錯体が存在し、それらが、反応性の低下及び選択性の低下などをもたらすと考えた。
【0050】
2,2’-ビピリジンのC5及びC5’に側方に立体障害を生じ得る基を導入したビピリジン骨格を有する化合物(1)(
図2参照)を配位子として使用すると、金属近傍に立体障害を与えることはなく、1つの2,2’-ビピリジン骨格を有する配位子と金属との錯体(モノキレート金属錯体)の形成により好ましいと考えられる。更に、そのような配位子を用いた錯体は、クロスカップリング反応の触媒として好適であると考えられる。尚、本発明は、このような理由により、優れた効果を奏すると考えられるが、本発明は、このような理由によって制限されるものでない。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0052】
本実施例で使用した分析装置及び化合物等を以下に示す。
NMRスペクトルは、JEOL ECX-400IIを用いて記録した。1HNMRは400MHzで、13CNMRは100.5MHzで操作した。1HNMRと13CNMRの化学シフト値はMe4Si(0ppm)及びCDCl3(77.0ppm)を各々参照した。化学シフトはδppmで記録した。
高分解能マススペクトルは、北海道大学農学部GC-MS&NMR研究室(FD-MS用JEOL JMS-T100GCv)で記録した。
融点は、マイクロカバーグラスを使用する微量融点測定装置(Yanaco MP-500D)で測定した。
TLC分析は、市販の0.25mm層を有する市販のガラスプレート、Merck Silica gel 60F254を使用した。
シリカゲル(関東化学社製、Silica gel 60 N、球状、中性)を、カラムクロマトグラフィーに使用した。
IRスペクトルは、PerkinElmer Frontier instrumentを使用した。
UV-vis吸収スペクトルは、Hitachi U-3900分光光度計を用いて記録した。
【0053】
すべての反応は、窒素又はアルゴン雰囲気で行った。特に記載しない限り、材料は、市販品又は一般的な手順に基づいて製造した。臭化ニッケル(II)エチレングリコールジメチルエーテル錯体(NiBr2・DME) 及び Ir[dF(CF3)ppy]2(4,4’-tBu2bpy)PF6 (CAS: 870987-63-6) は、シグマ-アルドリッチ社から購入し、そのまま使用した。亜鉛粉末(平均粒子寸法:6~9μm, 有機合成用)は、富士フィルム和光純薬工業から購入し、N2充填グローブボックス中に保管した。N,N-ジメチルアセトアミド (無水)は、関東化学から購入し、凍結-減圧-融解サイクルによって(by freeze-pump-thaw cycle)脱ガスした。
【0054】
ビピリジン構造を有する実施例1~7の化合物(1a)~(1g)及び比較例1~6の化合物(1’h)~(1’m)を以下に示す。
(1a):5,5’-ジトリチル-2,2’-ビピリジン(1a)
(1b):5,5’-ビス(トリス(4-tert-ブチル)フェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン
(1c):5,5’-ビス(トリス(3,5-ジメチルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン
(1d):5,5’-ビス(トリス(3,5-ジエチルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン
(1e):5,5’-ビス(トリス(3,5-ジイソプロピルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン
(1f):5,5’-ビス(2,6-ビス(ジフェニルメチル)-4-メチルフェニル)-2,2’-ビピリジン
(1g):3,8-ビス(2,6-ビス(ジフェニルメチル)-4-メチルフェニル)-1,10-フェナントロリン
(1’h):2,2’-ビピリジン
(1’i):4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン
(1’j):4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン
(1’k):5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジン
(1’l):5,5’-ジメシチル-2,2’-ビピリジン
(1’m):6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジン
【0055】
【0056】
実施例1
5,5’-ジトリチル-2,2’-ビピリジン(1a)の製造
窒素充填グローブボックス中で、[PdCl(π-allyl)]2 (36.6 mg, 0.1 mmol, 20 mol% Pd)、P(1-Ad)2Bu (108 mg, 0.3 mmol, 30 mol%) 及びトルエン(10 mL) をオーブンで乾燥した試験管に入れた。室温で5分間撹拌後、5,5’-dimethyl-2,2’-bipyridine (1’k, 184 mg, 1.0 mmol, 1.0 eq)、ブロモベンゼン(12a, 1.88 g, 12 mmol, 12 eq)、及びNaOtBu (1.15 g, 12 mmol, 12 eq) を加えた。試験管をスクリューキャップで封止して、グローブボックスから取り出した。反応混合物を130℃で14時間撹拌した。室温に冷却後、2N NaOH aq (20 mL)を加え、その後混合物をCHCl3 (40 mL x 3)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/CHCl3 = 20:80) で精製して、オレンジ色結晶を得た。この結晶にCH3CN (50 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で2時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、白色結晶として(1a)を得た (188 mg, 29% yield)。
M.p.: > 300 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.54 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.25 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.67 (dd, J = 8.7, 2.3 Hz, 2H), 7.32-7.18 (m, 30H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 153.1, 151.9, 145.7, 142.5, 139.1, 130.9, 127.8, 126.3, 119.6, 63.3. IR (ATR): 3055, 1594, 1543, 1492, 1459, 1442, 1243, 1184, 1083, 1022, 892, 837, 762, 747, 699 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C48H36N2 640.2878; found, 640.2863.
【0057】
実施例2
5,5’-ビス(トリス(4-tert-ブチル)フェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン(1b)の製造
(1a)の製造方法と同様の方法を用いて、(1b)を製造した。窒素充填グローブボックス中で、[PdCl(π-allyl)]2 (18.2 mg, 0.05 mmol, 20 mol% Pd)、P(1-Ad)2Bu (53.7 mg, 0.15 mmol, 30 mol%) 及びトルエン(5 mL) をオーブンで乾燥した試験管に入れた。室温で5分間撹拌後、5,5’-dimethyl-2,2’-bipyridine (1’k, 92.1 mg, 0.50 mmol, 1.0 eq)、1-ブロモ-4-tert-ブチルベンゼン(12b, 1.28 g, 6.0 mmol, 12 eq)、及びNaOtBu (577 mg, 6.0 mmol, 12 eq) を加えた。試験管をスクリューキャップで封止して、グローブボックスから取り出した。反応混合物を130℃で14時間撹拌した。室温に冷却後、NH4Cl aq (20 mL)を加え、その後混合物をCHCl3 (10 mL x 3)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/CHCl3 = 20:80) で精製して、オレンジ色結晶を得た。この結晶にCH3CN (50 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で2時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、不純物を有する黄褐色結晶として(1b)を得た (294 mg)。 更に、CHCl3 (5 mL) とCH3CN (30 mL)を加えて、得られた懸濁液を90℃で15分間激しく撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、白色結晶として(1b)を得た(190 mg, 39% yield)。
M.p.: > 300 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.49 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.22 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.65 (dd, J = 8.3, 2.3 Hz, 2H), 7.28-7.21 (m, 12H), 7.14-7.07 (m, 12H), 1.30 (s, 54H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 153.0, 151.9, 148.7, 143.1, 142.8, 139.3, 130.5, 124.4, 119.3, 62.0, 34.3, 31.3. IR (ATR): 2960, 1507, 1469, 1397, 1363, 1268, 1109, 1023, 842, 823, 753, 677 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C72H84N2 976.6634; found, 976.6641.
【0058】
実施例3
5,5’-ビス(トリス(3,5-ジメチルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン(1c)の製造
(1a)の製造方法と同様の方法を用いて、(1c)を製造した。窒素充填グローブボックス中で、[PdCl(π-allyl)]2 (18.3 mg, 0.05 mmol, 20 mol% Pd)、PCy3 (42.1 mg, 0.15 mmol, 30 mol%) 及びトルエン(5 mL) をオーブンで乾燥した試験管に入れた。室温で5分間撹拌後、5,5’-dimethyl-2,2’-bipyridine (1’k, 92.1 mg, 0.50 mmol, 1.0 eq)、1-ブロモ-3,5-ジメチルベンゼン(12c, 1.11 g, 6.0 mmol, 12 eq)、及びNaOtBu (577 mg, 6.0 mmol, 12 eq) を加えた。試験管をスクリューキャップで封止して、グローブボックスから取り出した。反応混合物を130℃で14時間撹拌した。室温に冷却後、飽和NH4Cl aq (20 mL)を加え、その後混合物をトルエン (40 mL x 3) で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/hexane = 5:95) で精製して、黄色結晶を得た。この結晶にCH3CN (50 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で2時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、黄褐色結晶として(1c)を得た (120 mg, 30% yield)。
M.p.: > 300 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.57 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.19 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.68 (dd, J = 8.7, 2.8 Hz, 2H), 6.84 (s, 12H), 6.82 (s, 6H), 2.21 (s, 36H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 152.8, 151.8, 145.9, 143.2, 139.4, 136.8, 128.7, 127.7, 119.5, 63.0, 21.6. IR (ATR): 2917, 1594, 1466, 1374, 1025, 846, 819, 762, 711 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C60H60N2 808.4756; found, 808.4744.
【0059】
実施例4
5,5’-ビス(トリス(3,5-ジエチルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン(1d)の製造
(1a)の製造方法と同様の方法を用いて、(1d)を製造した。窒素充填グローブボックス中で、[PdCl(π-allyl)]2 (7.3 mg, 0.02 mmol, 20 mol% Pd)、PCy3 (16.8 mg, 0.06 mmol, 30 mol%) 及びトルエン(2 mL) をオーブンで乾燥した試験管に入れた。室温で5分間撹拌後、5,5’-dimethyl-2,2’-bipyridine (1’k, 36.8 mg, 0.2 mmol, 1.0 eq)、1-ブロモ-3,5-ジエチルベンゼン(12d, 511 mg, 2.4 mmol, 12 eq)、及びNaOtBu (231 mg, 2.4 mmol, 12 eq) を加えた。試験管をスクリューキャップで封止して、グローブボックスから取り出した。反応混合物を130℃で16時間撹拌した。室温に冷却後、飽和NH4Cl aq (20 mL)を加え、その後混合物をEt2O (20 mL x 3) で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/hexane = 5:95) で精製して、黄色結晶を得た。この結晶にCH3CN (25 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で2時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、わずかに灰色がかった結晶として(1d)を得た (81.3 mg, 42% yield)。
M.p.: 231.7-232.3 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.60 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.19 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.74 (dd, J = 8.2, 2.3 Hz, 2H), 6.94 (s, 12H), 6.83 (s, 6H), 2.51 (q, J = 7.8 Hz, 24H), 1.13 (t, J = 7.8 Hz, 36H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 152.8, 151.8, 146.2, 143.5, 143.3, 139.2, 127.9, 125.0, 119.5, 63.5, 29.0, 15.8. IR (ATR): 2961, 2929, 2868, 1593, 1542, 1457, 1414, 1370, 1219, 1062, 1025, 868, 772, 741 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C72H84N2 976.6634; found, 976.6622.
【0060】
実施例5
5,5’-ビス(トリス(3,5-ジイソプロピルフェニル)メチル)-2,2’-ビピリジン(1e)の製造
(1a)の製造方法と同様の方法を用いて、(1e)を製造した。窒素充填グローブボックス中で、[PdCl(π-allyl)]2 (18.3 mg, 0.05 mmol, 20 mol% Pd)、PCy3 (42.1 mg, 0.15 mmol, 30 mol%) 及びトルエン(5 mL) をオーブンで乾燥した試験管に入れた。室温で5分間撹拌後、5,5’-dimethyl-2,2’-bipyridine (1’k, 92.1 mg, 0.5 mmol, 1.0 eq)、1-ブロモ-3,5-ジエチルベンゼン(12d, 511 mg, 2.4 mmol, 12 eq)、及びNaOtBu (577 mg, 6.0 mmol, 12 eq) を加えた。試験管をスクリューキャップで封止して、グローブボックスから取り出した。反応混合物を130℃で20時間撹拌した。室温に冷却後、飽和NH4Cl aq (20 mL)を加え、その後混合物をEt2O (30 mL x 3) で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/hexane = 5:95) で精製して、黄色結晶を得た。この結晶にCHCl3 (10 mL) とCH3CN (40 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で2時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、わずかに灰色がかった結晶として(1e)を得た (297 mg, 52% yield)。
M.p.: 256.7-258.0 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.64 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.20 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.80 (dd, J = 8.7, 2.8 Hz, 2H), 6.97 (s, 12H), 6.83 (s, 6H), 2.76 (septet, J = 6.9 Hz, 12H), 1.12 (d, J = 6.9 Hz, 72H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 152.7, 151.8, 147.7, 146.3, 143.7, 139.1, 126.4, 121.9, 119.5, 64.1, 34.2, 24.0. IR (ATR): 2958, 2868, 1592, 1464, 1361, 1190, 1024, 866, 843, 758, 738, 719 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C84H108N2 1144.8512; found, 1144.8496.
【0061】
実施例6
5,5’-ビス(2,6-ビス(ジフェニルメチル)-4-メチルフェニル)-2,2’-ビピリジン(1f)の製造
2-ブロモ-1,3-ビス(ジフェニルメチル)-5-メチルベンゼン(12e、2.11 g, 4.2 mmol)とTHF(8.4 mL)を、撹拌棒を備えたシュレンク管に入れた。シュレンク管を-40℃に冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.57M、2.68 mL, 4.2 mmol)を滴下して加えた。溶液を-40℃で1時間撹拌後、THF(5 mL)中のZnCl2 (409 mg, 4.2 mmol) を、-25℃で加えた。混合物を室温に昇温後、5,5’-ジブロモ-2,2’-ビピリジン(440 mg, 1.4 mmol), [Pd(PPh3)4] (161.8 mg, 0.14 mmol) 及びトルエン (8.4 mL) を加えた。混合物を110℃で37時間加熱した。室温に冷却後、飽和Na2CO3水溶液を加え、混合物をCHCl3 (50 mL x 3)を用いて抽出した。有機層をNa2SO4 を用いて乾燥し、ろ過し、減圧して濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/CH2Cl2 = 0:100 to 5:95) で精製して、白色結晶を得た。この結晶にCH3CN (50 mL) を加え、得られた懸濁液を60℃で2時間激しく撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、所望の化合物を白色結晶(1f)(173 mg, 12% yield)として得た。
M.p.: > 300 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.18 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.27-7.11 (m, 24H), 6.98-6.83 (m, 18H), 6.80 (s, 4H), 5.22 (s, 4H), 2.23 (s, 6H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 154.3, 149.8, 143.7, 143.4, 142.8, 138.6, 137.4, 135.6, 129.5, 128.7, 128.2, 126.2, 119.8, 54.0, 21.7. IR (ATR): 3061, 3024, 2922, 1598, 1493, 1447, 1031, 846, 764, 752, 697 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C76H60N2 1000.4757; found, 1000.4765.
【0062】
実施例7
3,8-ビス(2,6-ビス(ジフェニルメチル)-4-メチルフェニル)-1,10-フェナントロリン(1g)の製造
2-ブロモ-1,3-ビス(ジフェニルメチル)-5-メチルベンゼン(12f、2.11 g, 4.2 mmol)とTHF(8.4 mL)を、撹拌棒を備えたシュレンク管に入れた。シュレンク管を-40℃に冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.57M、2.68 mL, 4.2 mmol)を滴下して加えた。溶液を-40℃で1時間撹拌後、THF(5 mL)中のZnCl2 (409 mg, 4.2 mmol) を、-25℃で加えた。混合物を室温に昇温後、3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン(473 mg, 1.4 mmol), [Pd(PPh3)4] (161.8 mg, 0.14 mmol) 及びトルエン (8.4 mL) を加えた。混合物を110℃で44時間加熱した。室温に冷却後、飽和Na2CO3水溶液を加え、混合物をCH2Cl2 (50 mL x 3)を用いて抽出した。有機層をNa2SO4 を用いて乾燥し、ろ過し、減圧して濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/hexane = 50:50) で精製して、1.38gの黄色結晶を得た。この結晶をCH2Cl2/MeOH を用いて再結晶後、MeOHを用いて洗浄して、所望の化合物を白色結晶(1g)(725 mg, 50% yield)として得た。
M.p.: > 300 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.93 (d, J = 1.6 Hz, 2H), 7.29-7.07 (m, 24H), 7.05, (s, 2H), 7.09-7.03 (m, 8H), 6.92 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 6.84 (s, 4H), 6.80-6.72 (m, 8H), 5.17 (s, 4H), 2.25 (s, 6H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 151.2, 144.6, 143.7, 143.2, 143.0, 137.6, 135.4, 134.7, 129.5, 128.7, 128.3, 128.0, 127.5, 126.4, 126.3, 126.1, 54.3, 21.7. IR (ATR): 3024, 1598, 1562, 1493, 1447, 1421, 1275, 1061, 916, 763, 744, 697 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C78H60N2 1024.4757; found, 1024.4768.
【0063】
比較例5
5,5’-ジメシチル-2,2’-ビピリジン(1’l)の製造
2-ブロモメシチレン (0.449 mL, 3.0 mmol) と THF (3 mL) を、撹拌棒を備えたシュレンク管(Schlenk tube)に入れた。シュレンク管を-40℃に冷却し、n-ブチルリチウム (1.57 M in hexane, 1.91 mL, 3 mmol) を滴下して加えた。その溶液を-40℃で30分間撹拌後、THF中のZnCl2 (409 mg, 3.0 mmol)を加えた。その混合物を、室温に温めた後、5,5’-ジブロモ-2,2’-ビピリジン (314 mg, 1.0 mmol)、 [Pd(PPh3)4] (34.7 mg, 0.03 mmol, 3 mol%) 及びトルエン (6 mL) を加えた。混合物を105℃で13時間加熱した。室温に冷却後、15%NaOH水溶液を加え、その後混合物をCHCl3 (20 mL x 3) で抽出した。有機層をNa2SO4 で乾燥し、ろ過し減圧して濃縮した。残さにCH3CN (40 mL)を加え、得られた懸濁液を激しく60℃で1時間撹拌した。残った結晶をろ過で集めて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (EtOAc/CHCl3 = 1:1) で精製した。溶媒を減圧して除去して、白色結晶として(1’l)を得た(287 mg, 73% yield)。
M.p.: 298.7-299.5 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.57-8.47 (m, 4H), 7.67 (dd, J = 7.8, 2.3 Hz, 2H), 7.00 (s, 4H), 2.36 (s, 6H), 2.07 (s, 12H). 13C NMR (100.5 MHz, CDCl3): δ 154.4, 149.8, 138.1, 137.5, 136.7, 136.2, 134.9, 128.4, 120.6, 21.0, 20.8. IR (ATR): 2919, 2853, 1609, 1592, 1541, 1459, 1380, 1356, 1228, 1123, 1062, 1034, 999, 848, 754, 742 cm-1. HR-FDMS (m/z): [M]+ Calcd for C28H28N2 392.2252; found, 392.2247.
【0064】
実施例11~38及び比較例11~36
臭化アリールと臭化アルキルとの間のNi触媒交差求電子剤カップリングの一般的な手順を詳細に示す。
窒素で満たしたグローブボックス中で、NiBr2・DME (1.5 mg, 0.005 mmol, 1 mol%) と化合物(1)(0.0055 mmol, 1.1 mol%)を磁気撹拌棒を含む4mL試験管に加えた。2mLのDMAを加えた後、混合物を室温で5分間撹拌した。臭化アリール (21, 0.5 mmol, 1 equiv.)、臭化アルキル(22, 0.6 mmol, 1.2 equiv.)、及び亜鉛粉末 (65.4 mg, 1 mmol, 2.0 equiv.)を溶液に加えた。試験管にキャップをして、グローブボックスから取り出した。混合物を60℃で14時間撹拌し(aluminum block + IKA Plate (RCT digital), 750 rpm)、その後、室温に冷やした。反応混合物をEt2Oで希釈後、セライトの短いプラグを通して、Et2Oで洗浄した。ろ液を1M NaHSO4水溶液でクエンチして、更にEt2O (40 mL)で希釈した。有機層を水(2 x 30 mL)、食塩水 (20 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥して、減圧して濃縮した。内部標準(1,1,2,2-テトラブロモエタン又は1,3,5-トリメトキシベンゼン)を加えて、所望のクロスカップリング生成物(23)の1H NMR yieldを得た。粗生成物は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製した。
【0065】
実施例11~17及び比較例11~16
Ni触媒のリガンドとして、種々のビピリジル化合物(1)を使用して、ブロモベンゼン(21a、0.5mmol)と1-ブロモドデカン(22a、0.6mmol)との間の交差求電子剤カップリングを行った結果を表1に示す。
化合物(1a)~(1g)を使用すると、クロスカップリング生成物であるドデシルベンゼン(23a)が良好な収率で得られた。特に化合物(1c)~(1g)を使用すると、クロスカップリング生成物(23a)の収率により優れた。
これに対し、化合物(1’h)~(1’m)を用いると、ホモカップリング生成物であるビフェニル(24a)が良好な収率で得られた。
化合物(1a)~(1g)を使用した場合の23a/24aと、化合物(1’h)~(1’m)を使用した場合の23a/24aを比較すると、化合物(1a)~(1g)を使用すると、クロスカップリング生成物をより得られる傾向にあり、更に、その収率もより高い傾向にあることが理解できる。
尚、表1中の収率は、1H-NMR分析で得られた。単離収率はカッコ内に記載した。
【0066】
【0067】
実施例21~38及び比較例21~36
Ni触媒の配位子として化合物(1c)~(1e)及び(1’h)を使用して、いくつかの臭化アリール(21、0.5mmol)と臭化アルキル(22、0.6mmol)との間の交差求電子剤カップリングを行った結果を表2に示す。
例えば、配位子として化合物(1c)を使用して、電子供与性メトキシ基を有する4-ブロモアニソール(21b)とエチル4-ブロモブタノエート(22b)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(23b)を82%の収率で得た(実施例21)。これに対し、配位子として化合物(1’h)を使用すると、クロスカップリング生成物(23b)を25%の収率で、ホモカップリング生成物を31%の収率で得た(比較例21)。
配位子として化合物(1e)を使用して、電子求引性ニトリル基を有する4-ブロモベンズニトリル(21c)とエチル4-ブロモブタノエート(22b)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(23c)を83%の収率で得た(実施例24)。
配位子として化合物(1c)を使用して、オルト位に置換基を有する臭化o-トリル(21d)とエチル4-ブロモブタノエート(22b)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(23d)を47%の収率で得た(実施例27)。
配位子として化合物(1c)~(1e)を使用して、臭化アルケニルである2-ブロモプロペン(21e)とベンジル4-ブロモブタノエート(22c)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(23e)を収率58~71%で得た(実施例30~32)。
配位子として化合物(1c)~(1e)を使用して、臭化環状2級アルキルであるブロモシクロペンタン(22d)と4-ブロモ-N-トシルピペリジン(22e)について反応を行うと、対応するクロスカップリング生成物(23f)~(23g)を良好な収率で得た(実施例33~38)。
【0068】
【0069】
実施例41~49及び比較例41~47
臭化アリール(21)とアルキルカルボン酸(25)との間のNiフォトレドックス協働触媒脱炭酸クロスカップリングの一般的な手順を詳細に示す。
窒素で満たしたグローブボックス中で、 Ir[dF(CF3)ppy]2(4,4’-tBu2bpy)PF6 (1.1 mg, 0.001 mmol, 1 mol%)、NiBr2・DME (1.5 mg, 0.005 mmol, 5 mol%) 、化合物(1)(0.0055 mmol, 5.5 mol%)、N-(tertブトキシカルボニル)-L-プロリン (25, 64.6 mg, 0.3 mmol, 0.3 equiv.)を、磁気撹拌棒を含む4mL試験管に加えた。2mLのDMAを加えた後、混合物を室温で5分間撹拌した。臭化アリール(21, 0.1 mmol, 1 equiv.)、及び Cs2CO3 (97.7 mg. 0.3 mmol, 3.0 equiv.)を溶液に加えた。試験管にキャップをして、グローブボックスから取り出した。
混合物を青色LED照射下、22時間室温で撹拌した(40W, Kessil A160WE Tuna Blue + EvoluChemTM photoredox box device)。反応混合物をEt2O (50 mL)で希釈した。その後、有機層を水(2 x 30 mL)、食塩水 (20 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥して、減圧して濃縮した。内部標準(1,1,2,2-テトラブロモエタン)を加えて、所望のカップリング生成物(26)の1H NMR yieldを得た。粗生成物は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製した。
【0070】
実施例41~49及び比較例41~47
Ni触媒の配位子として化合物(1c)~(1e)及び(1’i)を使用して、いくつかの臭化アリール(21、0.1mmol)とアルキルカルボン酸(25、3 equiv.)との間のNiフォトレドックス協働触媒脱炭酸クロスカップリングを行った結果を表3に示す。
例えば、Ni触媒の配位子として化合物(1c)~(1e)を使用して、光触媒としてIr[dF(CF3)ppy]2(4,4'-tBu2bpy)PF6 (1 mol%)存在下で、5mol%のNi含有触媒を用いて、ブロモベンゼン(21a)とN-Boc-プロリン(25a)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(26a)を良好な収率で得た(実施例41~43)。
Ni触媒の配位子として化合物(1c)を使用して、4-ブロモアニソール(21b)とN-Boc-プロリン(25a)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(26b)を72%の収率で得た(実施例44)。
Ni触媒の配位子として化合物(1c)を使用して、2-ブロモプロペン(21e)とN-Boc-プロリン(25a)との間の反応を行うと、クロスカップリング生成物(26c)を52%の収率で得た(実施例47)。
上述の交差求電子剤カップリングと同様に、化合物(1c)~(1e)を使用した場合と、化合物(1’i)を使用した場合を比較すると、化合物(1c)~(1e)を使用すると、クロスカップリング生成物をより得られる傾向にあり、更に、その収率もより高い傾向にあることが理解できる。
【0071】
【0072】
実施例1~7の化合物(1a)~(1g)は、2,2’-ビピリジン構造のC5及びC5’に大きな立体障害を有し、これらは、Ni等の金属の配位子として使用することができる。
実施例1~7の化合物(1a)~(1g)をNi等の金属の配位子として使用して、臭化アリールと臭化アルキルとの間の交差求電子剤カップリング及び臭化アリールとアルキルカルボン酸との間のフォトレドックス協働触媒脱炭酸クロスカップリングを行うと、ホモカップリング生成物よりクロスカップリング生成物をより高い収率で、より選択的に与える傾向にある。
【0073】
これに対し、従来の比較例の化合物(1’h)~(1’m)をNi等の金属に配位子として使用して、臭化アリールと臭化アルキルとの間の交差求電子剤カップリング及び臭化アリールとアルキルカルボン酸との間のフォトレドックス協働触媒脱炭酸クロスカップリングを行うと、ホモカップリング生成物をクロスカップリング生成物より与える傾向にあり、全体的に収率もより低い傾向にある。
本発明の実施形態の新規な配位子は、金属との間で新規な錯体を形成することができる。その錯体は、クロスカップリング反応の触媒として好適に使用することができる。更に、好ましくは、クロスカップリング反応の出発原料の適用範囲をより拡大することができ、クロスカップリング反応の反応性をより改良することができる。より好ましくは、副反応のホモカップリング反応で生成するホモカップリング反応生成物の生成をより抑制しながら、クロスカップリング反応生成物の選択性をより向上することができる。