(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073159
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】振動提示素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182964
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】山下 崇博
(72)【発明者】
【氏名】竹井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジメルカ
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107BB08
5D107CC02
5D107FF08
(57)【要約】
【課題】小型化、薄型化、及び低電圧化を図りつつ、生体の皮膚に対して効率よく振動を提示する振動提示素子を得ることが可能な技術を提供する。
【解決手段】生体の皮膚に対して振動を提示する振動提示素子であって、圧電効果によって振動を発生させる圧電アクチュエータと前記圧電アクチュエータからの振動を受けて共振するとともに当該振動を前記生体の皮膚に提示する毛状体、を複数備える毛状構造と、を有する、ことを特徴とする振動提示素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚に対して振動を提示する振動提示素子であって、
圧電効果によって振動を発生させる圧電アクチュエータと
前記圧電アクチュエータからの振動を受けて共振するとともに当該振動を前記生体の皮膚に提示する毛状体、を複数備える毛状構造と、を有する、
ことを特徴とする、振動提示素子。
【請求項2】
前記圧電アクチュエータは、前記生体の皮膚表面に対して、垂直方向への振動を発生させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の振動提示素子。
【請求項3】
前記毛状構造は、先端部が前記生体の皮膚表面に対して水平方向に振動する毛状体を含む、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の振動提示素子。
【請求項4】
前記毛状構造は、形状の異なる複数種類の毛状体を含んでいる、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の振動提示素子。
【請求項5】
前記複数種類の毛状体は、異なる固有周波数により振動する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の振動提示素子。
【請求項6】
前記生体は人体であって、
前記毛状構造は、人体の皮膚に接した際に、前記皮膚に存在する感覚受容器であるマイスナー小体への刺激が最大化される周波数で振動する第1毛状体と、前記皮膚に存在する感覚受容器であるメルケル盤への刺激が最大化される周波数で振動する第2毛状体と、を少なくとも含む、
ことを特徴とする、請求項5に記載の振動提示素子。
【請求項7】
前記毛状構造は、人体の皮膚に接した際に、前記皮膚に存在する感覚受容器であるパチニ小体への刺激が最大化される周波数で振動する第3毛状体をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項6に記載の振動提示素子。
【請求項8】
前記圧電アクチュエータは、前記の全ての毛状体の共振周波数を含む波形で振動するように、印可電圧が設定されている、
ことを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の振動提示素子。
【請求項9】
前記圧電アクチュエータを封止する封止部をさらに有しており、
前記毛状構造は、前記封止部表面に設けられ、
前記圧電アクチュエータからの振動は前記封止部を介して前記毛状構造に伝達される、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の振動提示素子。
【請求項10】
振動提示素子の製造方法であって、
封止材としての第1ラミネートフィルムに接着剤を塗布する第1ステップと、
前記第1ステップで塗布された接着剤上に圧電アクチュエータを配置して接着する第2ステップと、
前記第2ステップで配置された圧電アクチュエータへ、配線を接続する第3ステップと、
前記圧電アクチュエータ及び前記配線を含む領域を封止材としての第2ラミネートフィルムで覆う第4ステップと、
前記第1ラミネートフィルム及び前記第2ラミネートフィルムをラミネート加工することにより、前記圧電アクチュエータ及び前記配線を封止する封止部を形成する第5ステップと、
前記第5ステップにおいて封止された前記配線の一部を、端子として露出させる第6ステップと、を含む
ことを特徴とする、振動提示素子の製造方法。
【請求項11】
前記圧電アクチュエータが封止されている領域の前記封止部表面に接着剤を塗布する第7ステップと、
前記第7ステップで塗布された接着剤に、毛状体を静電植毛することで、毛状構造を形成する第8ステップと、をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の振動提示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動提示素子及び、振動提示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット端末、ゲーム用コントローラ、機器の遠隔操作のフィードバック機構など、人の触覚を刺激するハプティクスデバイスが知られている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
特許文献1には、タッチパネルの端部にアクチュエータとして振動モーターを配置し、タッチパネル全体を略均一な振動量で振動させる構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、PVCゲルアクチュエータに複数の凸構造を設け、当該凸構造をアクチュエータにより変位させることで、凸構造間の間隔を広げることにより、皮膚に引張歪みを与えて、触覚を刺激するハプティクスデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-137971号公報
【特許文献2】特開2019-133274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなハプティクスデバイスを衣服などに実装してウェアラブル化することで、その技術の応用をさらに広げることが期待されている。しかしながら、特許文献1、2に記載のようなアクチュエータを用いると、ハプティクスデバイスを小型化(薄型化)、軽量化することが難しく、ウェアラブル化には支障があるという問題がある。
【0007】
これに対して、圧電効果により変位を生じさせる圧電アクチュエータを用いると、ハプティクスデバイスを小型化(薄型化)、軽量化することが可能であるが、その変位により効果的なハプティクス効果を得るには、高い電圧(例えば数十V程度)を印可する必要があり、ウェアラブル化には適さない、という問題がある。
【0008】
上記のような問題点に鑑み、本発明は、小型化、薄型化、及び低電圧化を図りつつ、生体の皮膚に対して効率よく振動を提示する振動提示素子を得ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る振動提示素子は、
生体の皮膚に対して振動を提示する振動提示素子であって、
圧電効果によって振動を発生させる圧電アクチュエータと
前記圧電アクチュエータからの振動を受けて共振するとともに当該振動を前記生体の皮膚に提示する毛状体、を複数備える毛状構造と、を有する、
ことを特徴とする。
【0010】
ここで、圧電アクチュエータについては、無機(例えばPZTなど)、有機(例えばPVDFなど)を問わず、圧電材料を用いたアクチュエータであればよいが、薄膜型で柔軟性を有するものが望ましい。また、毛状体には、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レー
ヨン繊維など、所望の繊維素材を採用することができる。
【0011】
このような構成によると、圧電アクチュエータからの振動で共振する毛状体によって生体の皮膚に存在する感覚受容器が刺激されるため、低電圧で駆動する圧電アクチュエータであっても、効果的に生体の皮膚に対して振動を提示することが可能になる。
【0012】
また、前記圧電アクチュエータは、前記生体の皮膚表面に対して、垂直方向への振動を発生させるものであってもよい。このような構成であると、生体の皮膚表面から深い位置にある感覚受容器を効率的に刺激することができる。
【0013】
また、前記毛状構造は、先端部が前記生体の皮膚表面に対して水平方向に振動する毛状体を含んでいてもよい。このような構成であると、生体の皮膚表面に近い位置にある感覚受容器を効率的に刺激することができる。
【0014】
また、前記毛状構造は、形状の異なる複数種類の毛状体を含んでいてもよい。また、前記複数種類の毛状体は、異なる固有周波数により振動するものであってもよい。このような構成であると、生体の皮膚表面に存在する複数種類の感覚受容器のそれぞれに対して、最適化された振動を提示する毛状体を、一の毛状構造に備えることが可能になる。なお、固有周波数は、毛状体の長さ、太さ(径)、その他形状を調整することで、所望の値を得るようにするとよい。
【0015】
また、前記生体は人体であって、前記毛状構造は、人体の皮膚に接した際に、前記皮膚に存在する感覚受容器であるマイスナー小体への刺激が最大化される周波数で振動する第1毛状体と、前記皮膚に存在する感覚受容器であるメルケル盤への刺激が最大化される周波数で振動する第2毛状体と、を少なくとも含むものであってもよい。また、前記毛状構造は、人体の皮膚に接した際に、前記皮膚に存在する感覚受容器であるパチニ小体への刺激が最大化される周波数で振動する第3毛状体をさらに含んでいてもよい。
【0016】
また、前記圧電アクチュエータは、前記の全ての毛状体の共振周波数を含む波形で振動するように、印可電圧が設定されていてもよい。これにより、一の圧電アクチュエータにより、それぞれ別の固有周波数を有する毛状体を、まとめて共振させることが可能になる。
【0017】
また、前記圧電アクチュエータを封止する封止部をさらに有しており、前記毛状構造は、前記封止部表面に設けられ、前記圧電アクチュエータからの振動は前記封止部を介して前記毛状構造に伝達されるのであってもよい。
【0018】
ここで、封止部は柔軟性を有する封止材を充填することにより形成されてもよいし、フィルムを接着剤により貼り合わせることにより形成されてもよいし、ラミネータによりフィルム熱圧着して形成されるのであってもよい。また、毛状構造は、鋳型を用いたナノインプリントにより形成されるのであってもよいし、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で毛状構造の版を製作してこれを転写することにより形成するのであってもよいし、3Dプリンタで形成したものを貼り付けることにより形成するのであってもよいし、静電植毛により起毛構造を形成するのであってもよい。
【0019】
また、本発明に係る振動提示素子の製造方法は、
封止材としての第1ラミネートフィルムに接着剤を塗布する第1ステップと、
前記第1ステップで塗布された接着剤上に圧電アクチュエータを配置する第2ステップと、
前記第2ステップで配置された圧電アクチュエータへ、配線を接続する第3ステップと
、
前記圧電アクチュエータ及び前記配線を含む領域を封止材としての第2ラミネートフィルムで覆う第4ステップと、
前記第1ラミネートフィルム及び前記第2ラミネートフィルムをラミネート加工することにより、前記圧電アクチュエータ及び前記配線を封止する封止部を形成する第5ステップと、
前記第5ステップにおいて封止された前記配線の一部を、端子として露出させる第6ステップと、を含む
ことを特徴とする。
【0020】
また、前記振動提示素子の製造方法は、
前記圧電アクチュエータが封止されている領域の前記封止部表面に接着剤を塗布する第7ステップと、
前記第7ステップで塗布された接着剤に、毛状体を静電植毛することで、毛状構造を形成する第8ステップと、をさらに含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、小型化、薄型化、及び低電圧化を図りつつ、生体の皮膚に対して効率よく振動を提示する振動提示素子を得ることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1Aは、実施形態に係る振動提示素子の概略断面図である。
図1Bは実施形態に係る振動提示素子の概略平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る圧電アクチュエータの概略を示す図である。
【
図3】
図3は、皮膚に存在する感覚受容器と、皮膚表面に対する毛状体の振動特性を説明する図である。
【
図4】
図4は、皮膚に存在する感覚受容器の存在深度と最大感度周波数を示す表である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る振動提示素子の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7Aは、実施形態に係る振動提示素子の変形例を示す第1の図である。
図7Bは、実施形態に係る振動提示素子の変形例を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る振動提示素子1の概略を示す図であり、
図1Aは振動提示素子1の概略断面図、
図1Bは振動提示素子1の概略平面図である。振動提示素子1は、人が身に着ける衣類、アクセサリなどに実装されて、着用者の皮膚に振動を提示するウェアラブルタイプのハプティクスデバイスである。
【0025】
(振動提示素子の構成)
図1に示すように、振動提示素子1は、概略、圧電アクチュエータ10と、当該圧電アクチュエータ10を封止する封止部30、及び、毛状構造20を有する構成となっている。振動提示素子1を実装する場合には、圧電アクチュエータ10が着用者の皮膚表面に対
して垂直な方向の振動を発生させるように、かつ、毛状構造20が着用者の皮膚に接するように配置される。
【0026】
圧電アクチュエータ10は、例えば半導体プロセスによって形成される極薄型(例えば厚さが5μm)のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとすることができる。
図2に、極薄型の圧電アクチュエータ10の概略構成を示す。
【0027】
図2に示すように、圧電アクチュエータ10は、シリコン(Si)からなる基部91と、例えばプラチナ(Pt)電極からなる電極層92、94と、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層93と、例えば二酸化ケイ素(SIO
2)からなる、絶縁層95を備える構成となっている。また、圧電アクチュエータ10は半導体プロセスによって形成されるMEMSデバイスであるため、基部91上には図示しない半導体回路が作り込まれており、この半導体回路は、必要に応じて、集積回路等の能動素子、コンデンサ、インダクタ、配線等の回路要素を備えていてもよい。
【0028】
また、圧電アクチュエータ10には配線11(例えば銅線)が接続されており、外部電源から配線11を介して圧電アクチュエータ10に電圧が印可されると、圧電効果により振動が発生し、当該振動が毛状構造20を構成する各毛状体を介して着用者の皮膚に伝達される。
【0029】
封止部30は、例えば、圧電アクチュエータ10を覆ったポリイミド(PI)などのフィルムを熱圧着することによって形成することができる。なお、フィルムの素材はPIに限られるわけではなく、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの他の素材を採用することもできる。
【0030】
毛状構造20は、封止部30の表面上に設けられる接着剤層40に、それぞれ形状の異なる、第1毛状体21、第2毛状体22、第3毛状体23、の3種類の毛状体を、例えば静電植毛の技術により植毛することにより形成される。なお、各毛状体の素材は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維など、所望の繊維素材を採用することができる。
【0031】
第1毛状体21及び第2毛状体は、その先端が着用者の皮膚表面に対して水平方向に振動するように形成されており、第3毛状体は、皮膚表面に対して垂直方向に振動するように形成されている。
図3は、人体の皮膚H及び皮膚に存在する感覚受容器のモデル図と、皮膚表面に対する各毛状体の振動特性を示す説明図である。
【0032】
図3に示すように、人体の皮膚に存在する感覚受容器には、その表層近くに存在するマイスナー小体H1及びメルケル盤H2と、表層から深い位置に存在するパチニ小体H3及びルフィニ終末(図示せず)が存在している。皮膚の表層近くに存在するマイスナー小体H1及びメルケル盤H2に対しては、毛状体の水平方向への振動が感覚受容器を引っ掻くような刺激を与えることになり、効果的に触覚を刺激することができる。一方、皮膚の深部に存在するパチニ小体H3(及びルフィニ終末)に対しては、水平方向への振動は伝達しづらく、垂直方向への振動を加えることが効果的となる。
【0033】
また、マイスナー小体H1、メルケル盤H2、パチニ小体H3の各感覚受容器は、それぞれ最大の感度を有する振動の周波数が異なっている。
図4に、感覚受容器の存在深度と、最大の感度を有する周波数に係る表を示す。
【0034】
このため、第1毛状体21、第2毛状体22、第3毛状体23の各毛状体は、それぞれ
、感覚受容器の最大感度周波数に応じて、異なる固有周波数(固有振動数)を有するように形成されている。例えば、毛状体の長さ、径、その他の形状などを調整することで、所望の周波数を得るようにしてもよい。
【0035】
具体的には、第1毛状体21は、マイスナー小体H1への刺激が最大化される周波数で振動するように固有周波数(例えば40Hz)が設定されている。同様に、第2毛状体22はメルケル盤H2への刺激が最大化される固有周波数(例えば70Hz)が設定されており、第3毛状体23はパチニ小体H3への刺激が最大化される固有周波数(例えば200Hz)が設定されている。
【0036】
各毛状体は、圧電アクチュエータ10からの振動を受けてそれぞれ固有の周波数で共振することによって、各感覚受容器を効率的に刺激する。即ち、圧電アクチュエータ10は、第1毛状体21、第2毛状体22、第3毛状体23の各毛状体の共振周波数を含む波形(例えば、各毛状体の固有周波数の合成波)で振動するように印可電圧が設定される。
【0037】
(振動提示素子の製造方法)
次に、
図5及び
図6に基づいて、本実施形態に係る振動提示素子1の製造方法を説明する。
図5は、本実施形態に係る振動提示素子1の製造の流れを示すフローチャートであり、
図6は、振動提示素子1の製造の各工程における模式図である。
【0038】
図5及び
図6に示すように、振動提示素子1を製造するには、まず、封止部30の一部となるラミネートフィルム31上に、圧電アクチュエータを接着するための接着剤を塗布する(S101、
図6A)。次に、接着剤の上に圧電アクチュエータ10を配置して接着する(S102、
図6B)。続けて、圧電アクチュエータ10と接続される配線11を設ける(S103、
図6C)。
【0039】
次に、ラミネートフィルム32で圧電アクチュエータ10及び配線11を覆い(S104、
図6D)、ラミネートフィルム31、32をラミネートヒータ(図示せず)により熱圧着する(S105、
図6E)ことで、封止部30が形成される。次に、配線11の端部にあたる部分の封止部を切り欠いて配線11を露出させ、端子を形成する(S106、
図6F)。
【0040】
次に、圧電アクチュエータ10が封止されている領域の封止部表面に、接着剤を塗布し(S107、
図6G)、毛状体となる繊維を静電植毛の手法により接着剤に植え付けることで、毛状構造20を形成すると(S108、
図6H)、製造工程は終了する。
【0041】
以上のような、本実施形態に係る振動提示素子1によれば、低電圧で駆動する小型の圧電アクチュエータによる振動提示素子でありながら、特性の異なる感覚受容器のそれぞれに対して最適化された刺激を与えることで、効果的に振動の提示ができる振動提示素子を提供することができる。
【0042】
<変形例>
なお、上記の実施形態に係る振動提示素子1は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記の実施形態に係る振動提示素子1の毛状構造20は、3種類の毛状体を、封止部30の一の面にのみ備える構成であったが、本発明はこのような構成に限定されない。
図7に、振動提示素子1の変形例を複数示す。
【0043】
例えば、
図7Aに示すように、毛状体の種類を2種類としてもよいし、毛状構造を1種類のみの毛状体で構成してもよい。また、
図7Bに示すように、毛状構造を、封止部の複
数の面に設けるようにしてもよい。また、毛状体の長さ、径、その他の形状などは、自由に変更可能である。
【0044】
このように、毛状構造を所望の毛状体で形成することができるため、人体の構造の凹凸に合わせて毛状体の長さ及び径を調節して(長くした場合には固有周波数が低くなるため、径を太くするなど)、凹部であっても適切に振動を伝達することが可能になる。
【0045】
また、上記の実施形態では、毛状構造を静電植毛の手法により形成していたが、鋳型を用いたナノインプリントにより形成されるのであってもよいし、PDMSで毛状構造の版を製作してこれを転写することにより形成するのであってもよいし、3Dプリンタで形成したものを貼り付けることにより形成するのであってもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、圧電アクチュエータは、PZTからなる有機圧電体を備えるMEMSデバイスであったが、これに限らず、所望の圧電アクチュエータを採用することが可能である。
【0047】
また、上記の実施形態では、ラミネートフィルムを熱圧着することで、封止部を形成していたが、封止材の充填、接着剤によるフィルム貼り合わせなどで、封止部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1・・・振動提示素子
10・・・圧電アクチュエータ
11・・・配線
20・・・毛状構造
21・・・第1毛状体
22・・・第2毛状体
23・・・第3毛状体
30・・・封止部
31、32・・・ラミネートフィルム
40・・・接着剤層
H・・・皮膚
H1・・・マイスナー小体
H2・・・メルケル盤
H3・・・パチニ小体