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特開2022-73181ポリアミド繊維の回収方法、リサイクルポリアミド製品の製造方法、及びシリコーンの溶解液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073181
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ポリアミド繊維の回収方法、リサイクルポリアミド製品の製造方法、及びシリコーンの溶解液
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182999
(22)【出願日】2020-10-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】鈴岡 章黄
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 剛博
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA05
4F401AA24
4F401AC01
4F401AD02
4F401BA13
4F401CA32
4F401CA46
4F401CA50
4F401CA53
4F401CA55
4F401EA54
4F401EA79
(57)【要約】
【課題】ポリアミド繊維製の布からシリコーンを短時間で除去することのできる技術を提供すること。
【解決手段】シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品を溶解液により処理する工程を含み、前記溶解液が、アルキルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素とを含む、ポリアミド繊維の回収方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品から、ポリアミド繊維を回収する方法であって、
任意に行う工程であって、前記ポリアミド繊維製品を溶解処理のために前処理する工程と、
前記ポリアミド繊維製品を溶解液により処理する工程と、を含み、
前記溶解液が、アニオン系界面活性剤と、鎖状飽和炭化水素とを含む、
ポリアミド繊維の回収方法。
【請求項2】
前記溶解液中の前記アニオン系界面活性剤と前記鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン系界面活性剤が、スルホン酸型界面活性剤である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アニオン系界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鎖状飽和炭化水素が、1気圧で70℃以上の引火点を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記鎖状飽和炭化水素が、炭素数6~16の炭化水素である、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記鎖状飽和炭化水素が、ドデカンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
更に、前記溶解液により処理する工程の後に、前記溶解液をリサイクルする工程を含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記前処理する工程を含み、
前記前処理する工程が、前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記溶解液により処理する工程において、前記ポリアミド繊維製品を開繊しながら、前記シリコーンを前記溶解液に溶解させる、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品からポリアミド繊維を洗浄済ポリアミド繊維として回収する工程と、
前記洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する工程と、
を含む、
リサイクルポリアミド製品の製造方法。
【請求項14】
前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれかに記載の方法で使用される、溶解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド繊維の回収方法、リサイクルポリアミド製品の製造方法、及びシリコーンの溶解液に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6,6等のポリアミド製の製品は、様々な用途に使用されている。ポリアミドは、合成樹脂である。環境負荷の観点から、ポリアミドをリサイクルすることが望まれている。
【0003】
ポリアミド製品のなかには、シリコーンが塗布された布により構成されるポリアミド繊維製品がある。そのようなポリアミド繊維製品として、例えば、エアバッグの基布が挙げられる。エアバッグの基布には、空気のリークを防ぐため、シリコーンが塗布されることがある。
【0004】
シリコーンが塗布されたポリアミド繊維製品をリサイクルするためには、シリコーンを除去しなければならない。これに関連して、特許文献1(特開2017-124553号公報)には、シリコーンコーティングされたナイロン製エアバッグスクラップ布のリサイクル方法であって、前記スクラップ布のシリコーンコーティング層を、第3級アミンと界面活性剤を含むアルカリ水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とするナイロン製エアバッグスクラップ布のリサイクル方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特許第6006030号)には、シリコーンに対して分解能を有する酸、および/又は、シリコーンを溶解し得る所定の群から選ばれる溶剤を含有してなる剥離剤を用いて、所定の方法によってシリコーン系の表面処理剤を除去することが記載されている。
【0006】
特許文献3(特開2009-269475号公報)には、シリコーンがコーティングされたポリアミド繊維からなるエアバッグ基布を、アルカリ-イソプロピルアルコール液に浸漬することにより、エアバッグ基布にコーティングされたシリコーンをエアバッグ基布から除去することを特徴とするエアバッグ基布からのシリコーン除去方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-124553号公報
【特許文献2】特許第6006030号
【特許文献3】特開2009-269475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコーンが塗布されたポリアミド繊維製品のリサイクルを実用化するためには、短時間でシリコーンを除去する技術が必要である。従って、本発明の課題は、ポリアミド繊維製品からシリコーンを短時間で除去することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討した結果、所定の組成を有する溶解液を用いることによって、上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下の事項を含むものである。
[1]シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品から、ポリアミド繊維を回収する方法であって、任意に行う工程であって、前記ポリアミド繊維製品を溶解処理のために前処理する工程と、前記ポリアミド繊維製品を溶解液により処理する工程と、を含み、前記溶解液が、アニオン系界面活性剤と、鎖状飽和炭化水素とを含む、ポリアミド繊維の回収方法。
[2]前記溶解液中の前記アニオン系界面活性剤と前記鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超である、[1]に記載の方法。
[3]前記アニオン系界面活性剤が、スルホン酸型界面活性剤である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記アニオン系界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、[3]に記載の方法。
[5]前記鎖状飽和炭化水素が、1気圧で70℃以上の引火点を有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記鎖状飽和炭化水素が、炭素数6~16の炭化水素である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記鎖状飽和炭化水素が、ドデカンである、[6]に記載の方法。
[8]前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、[1]乃至[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、[1]乃至[8]のいずれかに記載の方法。
[10]更に、前記溶解液により処理する工程の後に、前記溶解液をリサイクルする工程を含む、[1]乃至[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記前処理する工程を含み、前記前処理する工程が、前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程を含む、[1]乃至[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記溶解液により処理する工程において、前記ポリアミド繊維製品を開繊しながら、前記シリコーンを前記溶解液に溶解させる、[1]乃至[10]のいずれかに記載の方法。
[13][1]乃至[12]のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品からポリアミド繊維を洗浄済ポリアミド繊維として回収する工程と、前記洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する工程とを含む、リサイクルポリアミド製品の製造方法。
[14]前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、[13]に記載の製造方法。
[15][1]乃至[12]のいずれかに記載の方法で使用される、溶解液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリアミド繊維製品からシリコーンを短時間で除去することのできる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品から、シリコーンを除去し、ポリアミド繊維を回収し、回収したポリアミド繊維から再度ポリアミド製品を製造する方法に関する。すなわち、本実施形態は、ポリアミドをリサイクルする方法に関する。
【0012】
本実施形態に係る方法では、シリコーンの除去にあたり、まず、任意の工程として、布状のポリアミド繊維製品に対する前処理が行われる(ステップS1)。続いて、ポリアミド繊維製品が溶解液により処理される(ステップS2)。この際、溶解液として、アニオン系界面活性剤と、鎖状飽和炭化水素とを含む液が用いられる。このような溶解液を用いることにより、短時間でシリコーンを除去することが可能になる。その後、ポリアミド繊維が回収され、リサイクルポリアミド製品が製造される(ステップS3)。
【0013】
以下、各工程について詳述する。
【0014】
ステップS1:前処理
まず、リサイクルの対象となる、シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品を準備し、必要に応じて溶解処理を行うための前処理を施す。
【0015】
好ましくは、前処理として、開繊処理を行う。開繊を行うことにより、次のステップS2における溶解液による処理の際に、より短時間でシリコーンを除去できるようになる。開繊には、市販の開繊機、例えば反毛開繊機を用いればよい。
【0016】
あるいは、前処理として、単にポリアミド繊維製の布を裁断する。例えば、ポリアミド繊維製品は、1辺のサイズが0.1~50cmの範囲になるような不定形になるように、裁断される。あるいは、面積が0.01~2500cm2、好ましくは1~100cm2になるように、裁断される。裁断後の形状は、正方形に近い形状が望ましい。この場合、詳細は後述するように、次のステップS2において開繊処理を行うことが好ましい。
【0017】
リサイクルの対象となるポリアミド繊維製品としては、シリコーンが塗布されたものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ポリアミド繊維製の布が挙げられ、好ましくはナイロン6,6製の布などが挙げられる。具体的には、エアバッグの基布などが挙げられる。エアバッグの基布の製造時は、端材が生じる。そのような端材についてリサイクルできれば好ましい。一方で、エアバッグの基布には、空気漏洩の防止などを目的として、シリコーンが塗布されることがある。本実施形態に係る方法は、シリコーンを短時間で除去できるので、シリコーンが塗布されたエアバッグの基布のリサイクルに好適に適用される。
【0018】
本実施形態において除去されるシリコーンは、特に限定されるものではないが、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とした高分子化合物、すなわちシリコーンゴムであることが好ましい。シロキサン結合数(Si-O結合の数)が5000~10000であるシリコーンゴムであることがより好ましい。
シリコーンゴムの具体例として、例えば、メチルシリコーンゴム、ビニル・メチルシリコーンゴム、及びフェニル・メチルシリコーンゴムなどが挙げられる。
【0019】
ステップS2:溶解液による処理
続いて、ポリアミド繊維製品を溶解液により処理する。具体的には、ポリアミド繊維製品を溶解液中に投入し、溶解液を攪拌する。これにより、ポリアミド繊維製品からシリコーンが除去され、洗浄済ポリアミド繊維が得られる。
【0020】
尚、ステップS1の前処理として開繊処理を行わなかった場合、例えば前処理として単に裁断のみを行った場合には、本ステップにおいて開繊処理を行うこともできる。例えば、攪拌時にポリアミド繊維製品が攪拌翼に衝突するように構成された攪拌装置を用い、ポリアミド繊維製品が開繊される程度に高速で攪拌を行うことにより、溶解液中で開繊処理を行うことができる。溶解液中で開繊処理を行った場合、より短時間でシリコーンを除去することができる。
【0021】
続いて、溶解液の組成について詳述する。上述のように、溶解液は、アニオン系界面活性剤と、鎖状飽和炭化水素とを含む。
【0022】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸型界面活性剤が挙げられ、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸であり、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸である。
溶解液中のアニオン系界面活性剤の含有量は、シリコーンを溶解させ、かつ、回収対象であるポリアミドを溶解させないように、設定することができる。溶解液中のアニオン系界面活性剤の含有量は、例えば0.1~75質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~15質量%である。尚、除去するシリコーンがメチルシリコーンゴム又はビニル・メチルシリコーンゴムである場合には、アニオン系界面活性剤の含有量は、1質量%以上であればよい。一方、シリコーンがフェニル・メチルシリコーンゴムを含む場合には、アニオン系界面活性剤の含有量は、6質量%以上であることが好ましい。
【0023】
鎖状飽和炭化水素は、溶解液の溶媒として用いられている。鎖状飽和炭化水素は、シリコーンを溶解する機能を有している。一方で、回収の対象とされるポリアミド繊維は、鎖状飽和炭化水素には溶解しにくい。従って、鎖状飽和炭化水素を溶媒として用いることにより、シリコーンを選択的に溶解させることが可能となる。
鎖状飽和炭化水素の構造は特に限定されるものではなく、直鎖構造のものであっても、分岐鎖構造のものであってもよい。
鎖状飽和炭化水素としては、好ましくは炭素数6~16、より好ましくは炭素数8~14のものが用いられる。
また、鎖状飽和炭化水素としては、引火点が高い(具体的には1気圧における引火点が70℃以上)であるものが好ましく用いられる。引火点が高い鎖状飽和炭化水素は、消防の観点から、取り扱いやすく好ましい。
【0024】
好ましい鎖状飽和炭化水素の具体例としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン系溶媒などが挙げられ、安全性などを考慮するとドデカンが最も好ましい。
【0025】
溶解液中には、種々の目的で、アニオン系界面活性剤及び鎖状飽和炭化水素以外の添加剤が含まれていてもよい。
但し、好ましくは、アニオン系界面活性剤及び鎖状飽和炭化水素が溶解液の大部分を占める。具体的には、溶解液中のアニオン系界面活性剤と鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超であることが好ましく、合計含有量が85質量%以上であることがより好ましく、合計含有量が90質量%以上であることが更に好ましい。
【0026】
溶解液の温度は、例えば0~50℃、好ましくは5~40℃である。このような範囲内であれば、シリコーンを短時間に除去することができる。一方で、回収対象となるポリアミド繊維は溶解しにくい。従って、シリコーンを選択的に除去しやすくなる。
【0027】
溶解液によるポリアミド繊維製品の処理時間は、例えば0.1~100分であり、好ましくは0.5~60分である。このような処理時間であれば、シリコーンが十分に除去されるとともに、回収対象となるポリアミド繊維は溶解しにくい。従って、シリコーンを選択的に除去しやすくなる。
【0028】
(溶解液のリサイクル)
ポリアミド繊維製品を大量に処理すると、溶解液が疲労し、処理能力が低下する。疲労した溶解液については、蒸留により、リサイクルすることができる。蒸留を行うことにより、溶解液に溶解したシリコーンを取り除くことができる。蒸留により回収した溶解液に対し、必要に応じてアニオン系界面活性剤又は鎖状飽和炭化水素を添加して組成を再調整すれば、再び溶解液として使用することが可能になる。
【0029】
好ましくは、蒸留は、減圧蒸留により行われる。減圧蒸留を行えば、低温で蒸留を行うことができる。従って、溶解液を構成する成分が分解する温度以下で蒸留を行いやすくなる。
蒸留は、蒸留は単蒸留であっても多段蒸留であっても良い。
【0030】
蒸留によるリサイクルを考慮すると、アニオン系界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸を用い、鎖状飽和炭化水素としてドデカンを用いることが好ましい。ドデカンとドデシルベンゼンスルホン酸とは沸点が近いため、蒸留により両成分を共に回収しやすい。また、この場合、減圧蒸留を行えば、ドデシルベンゼンスルホン酸の沸点が下がり、ドデシルベンゼンスルホン酸の分解温度未満の温度で蒸留を行いやすくなる。
【0031】
ステップS3:洗浄済ポリアミド繊維からのリサイクルポリアミド製品の製造
続いて、ステップS2で得られた洗浄済ポリアミド繊維を原料として、リサイクルポリアミド製品を製造する。本工程は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄済ポリアミド繊維を溶解液から分離する工程(ステップS3-1)、洗浄済ポリアミド繊維を脱色する工程(ステップS3-2)、脱色された処理対象物をペレット化する工程(ステップS3-3)、及びペレットを用いてポリアミド製品を得る工程(ステップS3-4)を備える方法により実現できる。以下に、各工程について説明する。
【0032】
ステップS3-1:分離
ステップS2で得られた洗浄済ポリアミド繊維は、綿状のポリアミド繊維に溶解液が染み込んだ状態になっている。そこで、遠心分離器を用いて、ポリアミド繊維と溶解液とを分離する。遠心分離機の回転数は、例えば、3000~8000rpmである。これにより、ポリアミド繊維を溶解液から分離し、回収できる。
【0033】
ステップS3-2:脱色
続いて、必要に応じて、脱色処理を行う。例えば、ジメチルホルムアミドを用いて、120~160℃、10~60分間処理を行うことにより、ポリアミド繊維を脱色することができる。脱色後、遠心分離器を用いて、300~8000rpmで処理を行うことにより、脱色に使用した溶剤をポリアミド繊維から分離する。
尚、脱色に使用したジメチルホルムアミド等の脱色溶剤は、脱色性能が低下したら、例えば1~100Torrの真空度で蒸留することにより、再使用することができる。
【0034】
ステップS3-3:ペレット化
続いて、ポリアミド繊維をペレット化する。ペレット化は、公知の手段を用いて行えばよい。
【0035】
ステップS3-4:リサイクルポリアミド製品の製造
続いて、ステップS2-3で得られたペレットから、リサイクルポリアミド製品を製造する。例えば、ペレットを原料として紡糸処理を行い、ポリアミド長繊維を作成し、これを用いて衣料品を製造することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、特定の組成を有する溶解液を使用することにより、短時間でポリアミド繊維製の布からシリコーンを除去し、ポリアミドをリサイクルすることが可能になる。
【実施例0037】
以下に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0038】
(実験例1)アルカリ-イソプロピルアルコール液の検討
本発明者らが、各種の公知技術を事前検討したところ、特開2009-269475号公報(特許文献3)に記載されるように、アルカリ-イソプロピルアルコール液を用いた場合に、最もシリコーンを短時間で除去できるという知見を得た。
そこで、まず、アルカリ-イソプロピルアルコール液を用いた場合にどの程度の時間でシリコーンが除去されるのかを確認した。
具体的には、まず、シリコーンが塗布されたナイロン6,6製のエアバッグ基布の製品を入手した。尚、分析の結果、この製品に塗布されたシリコーンは、ビニル・メチルシリコーンゴム又はメチルシリコーンゴムであることを確認した。
準備したエアバッグ基布を、1辺が1~1.5cmの矩形状になるように裁断し、カット布を準備し、テストサンプルとした。
一方で、エアバッグ基布を乾式開繊設備(反毛機)を用いて開繊し、綿状のテストサンプルも得た。
準備したカット布のテストサンプル及び綿状のテストサンプルを、それぞれ溶解液が入れられたサンプル瓶に投入し、スターラーにて攪拌した。溶解液としては、NaOH約0.7g、水7g、イソアプロピルアルコール12.5gからなる液を用いた。温度及び時間を変えて試験を行い、試験後にシリコーンが除去されたか否かを観察した。尚、シリコーンは着色されているので、シリコーンが除去されたか否かは、目視により確認した。
【0039】
試験条件および結果を表1に示す。尚、表1の結果において、「布」はカット布をテストサンプルとした場合の結果であり、「綿」は開繊処理により得られた綿状のテストサンプルの場合の結果である。
表1に示されるように、「綿」については、室温で4日間処理、あるいは、80℃で1時間の処理で、シリコーンを除去できた。
しかし、「布」については、室温では、4日間処理を行ってもシリコーンを除去できなかった。また、80℃の場合に3時間処理を行っても、シリコーンを除去できなかった。
【0040】
(実験例2)他の溶媒の検討
溶解液組成を様々に変更し、実験例1と同様に、シリコーンを除去できるか否かを検討した。検討した溶解液の組成、試験条件、及び結果を表2-1~表2-3に示す。
なお、表2-1~2-3において、「IP-1016」とは、出光興産社製の鎖状飽和炭化水素溶媒の商品名であり、イソパラフィン系の溶媒である。
「DBSA」は、n-ドデシルベンゼンスルホン酸を示す。
「DBSA-Na」は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを示す。
【0041】
表2-1~2-3に示される組成においては、短時間(3時間以内)に、シリコーンを除去することができる組成は見つからなかった。
【0042】
(実験例3)アニオン系界面活性剤の検討
続いて、溶解液として、ドデシルベンゼンスルホン酸(アニオン系界面活性剤)と有機溶媒との組み合わせを用い、実験例1と同様に検討した。用いた有機溶媒、試験条件及び結果を、表3に示す。
表3(例3-9)に示されるように、ドデシルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素であるIP-1016との組み合わせを用いた場合にのみ、短時間で、シリコーンを除去することができた。
【0043】
(実験例4)溶解処理の条件についての検討
実験例3において有効であることが確認されたドデシルベンゼンスルホン酸と鎖状飽和炭化水素(IP-1016)との組み合わせについて、ドデシルベンゼンスルホン酸の濃度を変え、実施例1と同様にシリコーンの除去性を検討した。溶解液の組成及び溶解処理条件と、結果を表4に示す。
表4に示されるように、ドデシルベンゼンスルホン酸が1質量%の場合には、常温、短時間では、シリコーンを除去できなかった。
テストサンプルを「綿」にした場合であれば、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が5%以上であれば、常温、短時間で、シリコーンを除去することができた。テストサンプルが「布」である場合、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が10質量%以上であれば、常温、短時間でシリコーンを除去することができた。
なお、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が70質量%でありテストサンプルが「綿」の場合には、ナイロン6,6の一部が溶解していた。
【0044】
(実験例5)鎖状飽和炭化水素についての検討
実験例3において、鎖状飽和炭化水素であるIP-1016の使用が有効であることが判ったため、他の鎖状飽和炭化水素について検討した。具体的には、鎖状飽和炭化水素として、TMP(トリメチルペンタン;イソオクタン)を用い、実験例1と同様に、シリコーンの除去性を検討した。結果を表5に示す。
【0045】
表5に示されるように、TMPとドデシルベンゼンスルホン酸を併用した場合にも、常温で、60分の処理により、シリコーンを除去できた。
【0046】
(実験例6)シリコーンの検討
シリコーンが塗布されたエアバッグの基布として、実験例1~6で用いたものとは異なる製品Aを準備した。製品Aに塗布されたシリコーンを分析したところ、ビニルメチルシリコーンゴムであった。準備した製品Aを用いて、各種条件を変更し、実験例1と同様にシリコーンの除去性を検討した。結果を表6に示す。
表6に示されるように、開繊処理を行った場合、即ち、「綿」の場合、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が1%以上であれば、シリコーンを短時間で除去できた。一方、「布」の場合には、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が5%以上であれば、シリコーンを短時間で除去できた。尚、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度が70%以上の場合、30分間処理を行うと、ナイロン6,6繊維の一部が溶解した。
【0047】
(実験例7)実機テスト
以上の検討結果を受けて、鎖状飽和炭化水素とドデシルベンゼンスルホン酸との組み合わせについて、実機を用いて検討した。
具体的には、溶解槽として、湿式でエアバッグ基布を開繊できるような攪拌装置が設けられたものを準備した。より具体的には、回転軸に連結された攪拌翼を有しており、カット布が投入された溶解液を攪拌した場合に、攪拌翼にカット布が衝突してカット布に剪断力が加わるように構成された攪拌装置を用いた。
【0048】
一方で、溶解液として、ドデカンと、ドデシルベンゼンスルホン酸(10重量%)とからなる液(その他に成分は存在しない)を準備した。
【0049】
テストサンプルとしては、シリコーンが塗布されたエアバッグ基布を、1cm×1cmの正方形になるように裁断されたカット布を用いた。
【0050】
カット布を溶解液に投入し、攪拌装置を高速回転(約9000~16000rpm)させ、シリコーンが除去されるまでの時間を観察した。
【0051】
その結果、30秒後には、カット布が開繊されるとともに、シリコーンが除去されていることが確認された。
【0052】
(実験例8)実機によるシリコーンの種類の検討
テストサンプルとして、実験例1と同様のエアバッグ基布(ビニル・メチルシリコーンゴム、又は、メチルシリコーンゴムが塗布されていることを確認したもの)と、製品B(フェニル・メチルシリコーンゴムが塗布されていることを確認した)とを準備した。
準備したエアバッグ基布を、1cm×1cmの正方形になるように裁断し、テストサンプルとした。
次いで、実験例7と同様に、実機を用いて、シリコーンが除去されるか否かを確認した。溶解液としては、ドデカンとドデシルベンゼンスルホン酸との混合物を用いた。
【0053】
溶解液の組成及び結果を表7に示す。
本発明者の知見によれば、フェニル・メチルシリコーンゴムは、ビニル・メチルシリコーンゴム及びメチルシリコーンゴムに比べて除去し難い傾向にある。しかし、本発明によれば、表7に示されるように、シリコーンがフェニル・メチルシリコーンゴムである場合であっても、ドデシルベンゼンスルホン酸濃度を7%以上にすることにより、除去することができた。
【0054】
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品から、ポリアミド繊維を回収する方法であって、
任意に行う工程であって、前記ポリアミド繊維製品を溶解処理のために前処理する工程と、
前記ポリアミド繊維製品を溶解液により処理する工程と、を含み、
前記溶解液が、アルキルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素とを含み、
前記溶解液中の前記アルキルベンゼンスルホン酸と前記鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超であり、
前記溶解液中の前記アルキルベンゼンスルホン酸の含有量が0.1~75質量%であり、
前記鎖状飽和炭化水素が、1気圧で70℃以上の引火点を有し、
前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、ポリアミド繊維の回収方法。
【請求項2】
前記アルキルベンゼンスルホン酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記鎖状飽和炭化水素が、炭素数6~16の炭化水素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鎖状飽和炭化水素が、ドデカンである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
更に、前記溶解液により処理する工程の後に、前記溶解液をリサイクルする工程を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記前処理する工程を含み、
前記前処理する工程が、前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記溶解液により処理する工程において、前記ポリアミド繊維製品を開繊しながら、前記シリコーンを前記溶解液に溶解させる、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品からポリアミド繊維を洗浄済ポリアミド繊維として回収する工程と、
前記洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する工程と、
を含む、
リサイクルポリアミド製品の製造方法。
【請求項10】
前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法で使用される、溶解液。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
発明者は、鋭意検討した結果、所定の組成を有する溶解液を用いることによって、上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下の事項を含むものである。
[1]シリコーンが塗布された布状のポリアミド繊維製品から、ポリアミド繊維を回収する方法であって、任意に行う工程であって、前記ポリアミド繊維製品を溶解処理のために前処理する工程と、前記ポリアミド繊維製品を溶解液により処理する工程と、を含み、前記溶解液が、アルキルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素とを含み、前記溶解液中の前記アルキルベンゼンスルホン酸と前記鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超であり、前記溶解液中の前記アルキルベンゼンスルホン酸の含有量が0.1~75質量%であり、前記鎖状飽和炭化水素が、1気圧で70℃以上の引火点を有し、前記ポリアミド繊維製品が、エアバッグである、ポリアミド繊維の回収方法。
]前記アルキルベンゼンスルホン酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、[]に記載の方法。
]前記鎖状飽和炭化水素が、炭素数6~16の炭化水素である、[1]又は[2]のいずれかに記載の方法。
]前記鎖状飽和炭化水素が、ドデカンである、[]に記載の方法。
]前記ポリアミド繊維製品が、脂肪族ポリアミド製である、[1]乃至[]のいずれかに記載の方法。
]更に、前記溶解液により処理する工程の後に、前記溶解液をリサイクルする工程を含む、[1]乃至[]のいずれかに記載の方法。
]前記前処理する工程を含み、前記前処理する工程が、前記ポリアミド繊維製品を開繊する工程を含む、[1]乃至[]のいずれかに記載の方法。
]前記溶解液により処理する工程において、前記ポリアミド繊維製品を開繊しながら、前記シリコーンを前記溶解液に溶解させる、[1]乃至[]のいずれかに記載の方法。
][1]乃至[]のいずれかに記載の方法により、前記ポリアミド繊維製品からポリアミド繊維を洗浄済ポリアミド繊維として回収する工程と、前記洗浄済ポリアミド繊維から、リサイクルポリアミド製品を製造する工程とを含む、リサイクルポリアミド製品の製造方法。
10]前記リサイクルポリアミド製品が、衣料品である、[]に記載の製造方法。
11][1]乃至[10]のいずれかに記載の方法で使用される、溶解液。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本実施形態に係る方法では、シリコーンの除去にあたり、まず、任意の工程として、布状のポリアミド繊維製品に対する前処理が行われる(ステップS1)。続いて、ポリアミド繊維製品が溶解液により処理される(ステップS2)。この際、溶解液として、アルキルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素とを含む液が用いられる。このような溶解液を用いることにより、短時間でシリコーンを除去することが可能になる。その後、ポリアミド繊維が回収され、リサイクルポリアミド製品が製造される(ステップS3)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本実施形態において除去されるシリコーンは、特に限定されるものではないが、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とした高分子化合物、すなわちシリコーンゴムであることが好ましい。
リコーンゴムの具体例として、例えば、メチルシリコーンゴム、ビニル・メチルシリコーンゴム、及びフェニル・メチルシリコーンゴムなどが挙げられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
続いて、溶解液の組成について詳述する。上述のように、溶解液は、アルキルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素とを含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
アルキルベンゼンスルホン酸としては、り好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸である。
溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、シリコーンを溶解させ、かつ、回収対象であるポリアミドを溶解させないように、設定することができる。溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、例えば0.1~75質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~15質量%である。尚、除去するシリコーンがメチルシリコーンゴム又はビニル・メチルシリコーンゴムである場合には、アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、1質量%以上であればよい。一方、シリコーンがフェニル・メチルシリコーンゴムを含む場合には、アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、6質量%以上であることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
溶解液中には、種々の目的で、アルキルベンゼンスルホン酸及び鎖状飽和炭化水素以外の添加剤が含まれていてもよい。
但し、好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸及び鎖状飽和炭化水素が溶解液の大部分を占める。具体的には、溶解液中のアルキルベンゼンスルホン酸と鎖状飽和炭化水素の合計含有量が、80質量%超であることが好ましく、合計含有量が85質量%以上であることがより好ましく、合計含有量が90質量%以上であることが更に好ましい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
(溶解液のリサイクル)
ポリアミド繊維製品を大量に処理すると、溶解液が疲労し、処理能力が低下する。疲労した溶解液については、蒸留により、リサイクルすることができる。蒸留を行うことにより、溶解液に溶解したシリコーンを取り除くことができる。蒸留により回収した溶解液に対し、必要に応じてアルキルベンゼンスルホン酸又は鎖状飽和炭化水素を添加して組成を再調整すれば、再び溶解液として使用することが可能になる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
蒸留によるリサイクルを考慮すると、アルキルベンゼンスルホン酸としてドデシルベンゼンスルホン酸を用い、鎖状飽和炭化水素としてドデカンを用いることが好ましい。ドデカンとドデシルベンゼンスルホン酸とは沸点が近いため、蒸留により両成分を共に回収しやすい。また、この場合、減圧蒸留を行えば、ドデシルベンゼンスルホン酸の沸点が下がり、ドデシルベンゼンスルホン酸の分解温度未満の温度で蒸留を行いやすくなる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
(実験例3)アルキルベンゼンスルホン酸の検討
続いて、溶解液として、ドデシルベンゼンスルホン酸(アルキルベンゼンスルホン酸)と有機溶媒との組み合わせを用い、実験例1と同様に検討した。用いた有機溶媒、試験条件及び結果を、表3に示す。
表3(例3-9)に示されるように、ドデシルベンゼンスルホン酸と、鎖状飽和炭化水素であるIP-1016との組み合わせを用いた場合にのみ、短時間で、シリコーンを除去することができた。