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特開2022-73441におい評価装置及びにおい評価方法並びににおい評価用試料調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073441
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】におい評価装置及びにおい評価方法並びににおい評価用試料調整装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20220510BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20220510BHJP
   G01N 30/82 20060101ALI20220510BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220510BHJP
   G01N 30/78 20060101ALI20220510BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20220510BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G01N30/88 G
G01N30/80 B
G01N30/82
G01N30/72 A
G01N30/80 Z
G01N30/78
G01N33/00 C
G01N1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183426
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 純一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 太生
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA24
2G052AB25
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA17
2G052DA14
2G052FD01
2G052GA23
2G052GA24
2G052GA27
2G052JA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分析対象ガスに含まれる成分のにおいを正確に測定できるようにする。
【解決手段】におい評価装置は、においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラム10を有するガスクロマトグラフ1と、前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部2と、前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグ511に回収するガス回収部5と、前記サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部61、62、63、64と、前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部56とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える、におい評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のにおい評価装置において、
前記ガス回収部が、サンプルバッグを装着するための複数の装着口と、前記複数の装着口のそれぞれに装着されるサンプルバッグに前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスを導入するための導入口と、前記複数の装着口と前記導入口とを繋ぐ流路を切り替える流路切替部とを備える、におい評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のにおい評価装置において、
前記タイミング検出部が質量分析計である、におい評価装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のにおい評価装置において、さらに、
前記サンプルバッグ内のガスのにおいを測定するための、互いに異なる応答特性を有する複数個のにおいセンサを含むにおい測定部と
を備える、におい評価製置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のにおい評価装置において、
前記回収部が、サンプルバッグを装着するための装着口を備え、
前記装着口に接続されたにおい嗅ぎポートを備える、におい評価装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のにおい評価装置において、さらに、
第1分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる全ての成分と、前記第1分析対象ガスと同じ種類又は異なる種類の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち、所定のタイミングにおいて出てくる成分とを、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうちの一つに回収させる制御部を備える、におい評価装置。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載のにおい評価装置において、さらに、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングにおいて出てくる成分と、前記第1分析対象ガスとは別の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち前記所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分とを、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうちの一つに回収させる制御部を備える、におい評価装置。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載のにおい評価装置において、さらに、
分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分を、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうち予め所定のガスが収容されたサンプルバッグに回収させる制御部を備える、におい評価装置。
【請求項9】
においを有する分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収し、該サンプルバッグ内のガスを評価するにおい評価方法であって、
前記分離カラムと前記サンプルバッグを繋ぐ流路に、希釈用ガスを導入する、におい評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載のにおい評価方法において、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる全ての成分と、前記第1分析対象ガスと同じ種類又は異なる種類の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち、所定のタイミングにおいて出てくる成分とを前記サンプルバッグに回収する、におい評価方法。
【請求項11】
請求項9に記載のにおい評価方法において、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングにおいて出てくる成分と、前記第1分析対象ガスとは別の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち前記所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分とを前記サンプルバッグに回収する、におい評価方法。
【請求項12】
請求項9に記載のにおい評価方法において、
分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分を、所定のガスが予め収容されたサンプルバッグに回収する、におい評価方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれかに記載のにおい評価方法において、
互いに異なる応答特性を有するm(mは2以上の整数)個のにおいセンサを含むにおい測定装置を用いて、前記サンプルバッグ内のガスのにおいを測定する、におい評価方法。
【請求項14】
請求項9~12のいずれかに記載のにおい評価方法において、
前記サンプルバッグ内のガスのにおいを、嗅覚を用いた官能試験により評価する、におい評価方法。
【請求項15】
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える、におい評価用ガス調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、におい評価装置及びにおい評価方法並びににおい評価用試料調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品や化粧品、洗剤等に添加される香料は、花卉や草本、果物等の天然物が発する香気(天然香料)を模倣して作られることがある。天然香料の多くは様々な成分が混ざり合った複合臭であり、成分の種類や各成分が含まれる割合によって多種多様なにおいとなる。さらには、複数の構成成分の場合、個々の構成成分のにおいからは予想がつかないようなにおいにもなる。また、天然香料を構成する成分の全てがそのにおいの形成に寄与しているわけではなく、寄与する割合が非常に小さいか、あるいは全く寄与していない成分も含まれる。香料の開発現場では、天然香料に含まれる成分のうち、そのにおいを再現するために最低限必要な成分がどれであるかを知りたいという要望がある。
【0003】
天然香料に含まれる成分がにおい形成に寄与する成分であるか、寄与しない成分であるかを特定する方法として、オミッションテストが利用される。複数の成分が合わさってできたにおい(複合臭)は、個々の成分のにおいからは想像できないにおいになることがある。そのため、複合臭を構成する個々の成分のにおいを調べても複合臭のにおいを創造することができない。オミッションテストとは、分析対象臭(複合臭)から任意の成分を除いてオミッション臭を調整し、該オミッション臭と分析対象臭のにおいを比較し、両者のにおいの類似性に基づき分析対象臭から除かれた所定の成分(群)がにおい形成に寄与する成分(群)であるか否かを評価する方法である。
【0004】
上述のオミッションテストでは、通常はにおい嗅ぎGCMS等を用いて、分析対象臭に含まれるにおいを有する成分をできるだけ多く検出し、その定量、定性を行う。検出された成分を混合すれば元のにおいになるはずだが、分析対象臭に含まれるすべての成分を検出することはほとんどの場合、不可能であるため、実際は元のにおいにはならない。そこで、調香師が、不足する成分を推定し、その濃度を調整して、元のにおいを再現する。ただし、複合臭の場合は、その成分の中に全体の匂いに寄与していない成分(群)が存在する。そこで、分析対象臭のにおいを再現する成分群とその濃度が求められると、その成分群からいくつかの成分を除いてそのにおいを構成するのに必要最低限の成分群を求める。このように、通常のオミッションテストは、多くの専門知識と専門技術が必要になるとともに、多大な時間を要する。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1に記載されているようなにおい評価装置を用いれば、通常のオミッションテストと同様のことが、短時間に自動で効率よく実施することができる。特許文献1に記載のにおい評価装置は、分析対象においガスを分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、分析対象においガスを分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる全ての成分を含むにおいガス(全成分においガス)、及び分析対象においガスを繰り返し分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分群のうち所定の成分(群)を除いたにおいガス(オミッションにおいガス)のそれぞれを別のサンプルバッグに回収するにおいガス回収部と、各サンプルバッグに回収されたにおいガスを嗅いで官能評価するためのにおい嗅ぎポートと、前記においガスのにおいを検出するにおいセンサとを備えている。そして、官能評価の結果、もしくはにおいセンサの検出結果に基づき全成分においガスとオミッションにおいガスとの類似性を表す指標値を算出する。
【0006】
まず、最初のバッグには、何もオミットせず分析対象においガスをすべて回収し、カラム等で加熱されてある成分が熱変性したりして元のにおいとは異なるにおいになっておらず、もとのにおいが再現していることを確認する。
その後、サンプルバッグごとにオミッションするクロマトの領域を変更し、最低限どの成分(群)が含まれればもとのにおいが再現するのかを確認する装置である。
【0007】
上記のにおい評価装置において、においガス回収部は、サンプルバッグが取り外し可能な複数の装着口と、該複数の装着口のいずれかに分離カラムから出てきた成分を導く切替バルブを備えている。このような構成により、複数成分のにおいガス(全成分においガスと1又は複数成分をオミットしたガス)をそれぞれ別の複数のサンプルバッグに回収しておくことができ、これら複数のサンプルバッグに回収されたにおいガスの測定を順次行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-036147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
分離カラムから出てくる成分の中には吸着性の高いものがあり、その一部が流路に付着することがある。特に、切替バルブのシール部に使用される柔らかい素材には前記成分が吸着しやすい。そのため、装着口の数が多くなって切替バルブの数が増えると、その分、吸着しやすい素材が多く使用されることになり、成分の吸着が起こり易くなる。流路や切替バルブ等に成分が吸着することでその成分がサンプルバッグに回収されるにおいガスから欠損してしまうと、そのサンプルバッグに回収されたにおいガスが、当初の目的と異なったものになってしまう。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、分析対象ガスのにおいを正しく評価することができるにおい評価用ガスを得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収される前記におい評価用ガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える、におい評価装置に関する。
【0012】
本発明の第2態様は、
においを有する分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収し、該サンプルバッグ内のガスを評価するにおい評価方法であって、
前記分離カラムと前記サンプルバッグを繋ぐ流路に、希釈用ガスを導入する、におい評価方法に関する。
【0013】
本発明の第3態様は、
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収される前記におい評価用ガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える、におい評価用ガス調整装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、分析対象ガスを分離カラムに流すことにより該分離カラムから出てくる成分が希釈用ガスとともにガス回収部に導入される。つまり、分離カラムから出てくる成分が希釈用ガスで希釈されて分離カラムから回収部に至る流路を通過するため、前記成分が前記流路に吸着することが抑えられる。従って、各サンプルバッグに回収されたガスのにおいを測定するにあたり、該ガスの一つもしくは複数の成分が欠損することが防止されるため、分析対象ガスのにおいを正しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例に係るにおい評価装置の概略構成図。
図2】表示画面の一例を示す図。
図3】表示画面の他の例を示す図。
図4】異なる製造メーカの醤油の香り成分について調べた結果を示すものであり、第1段は、A社の醤油のガス中の全ての成分を含むガスのガスクロマトグラフ、第2段~第4段は、A社の醤油のガスの成分の一部をB社の醤油のガスの成分の一部と入れ替えたガスのガスクロマトグラフ。
図5】A社の醤油の香り成分、及びB社の醤油の香り成分の、香りの性質及び香り形成に対する寄与度を示す表。
図6】A社及びB社の醤油のガス、並びにA社の醤油のガス成分の一部をB社の醤油のガス成分の一部と入れ替えたガスのにおいベクトルを表す図。
図7】ガス回収部の装着口に至る流路に捕集管が取り付けられた構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例であるにおい評価装置について図面を参照して説明する。
<におい評価装置の構成>
図1は、本実施例に係るにおい評価装置の概略構成図である。本実施例のにおい評価装置は、大きく分けて、ガスクロマトグラフ部(GC部)1と、質量分析部(MS部)2と、におい測定部3と、インタフェイス部41,42と、ガス回収部5とから成る。
【0017】
GC部1は、分析対象ガスに含まれる成分を分離するためのカラム10と、そのカラム10を内装するカラムオーブン11と、カラム10の入口に設けられた試料注入部12と、カラム10の出口に設けられた流路切替部13と、これら各部を制御するGC制御部14とを含む。
【0018】
MS部2は、真空容器20、GC部1から導入される、カラム10から出てきた成分を含むガス中の成分分子をイオン化するイオン源21と、生成されたイオンを輸送するイオン光学系22と、イオンを質量数に応じて分離する質量分離部としての四重極質量フィルタ23と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出器24と、これら各部を制御するMS制御部25とを含む。
【0019】
インタフェイス部41はGC部1とMS部2の間に設けられ、ガス中の成分の流路内でのトラップ(吸着)を防止するために管路を高温に維持するヒータ411を含む。
【0020】
ガス回収部5は、GC部1とにおい測定部3の間に設けられ、複数のサンプルバッグ511(図1では12個のサンプルバッグ511を示す。)を装着するための装着口51と、装着口51に装着されたサンプルバッグ511にガスを出し入れするための導出入口52と、導出入口52(本発明の導入口に相当)と装着口51との流路を切り替える第1流路切替部53とを備えたオートサンプラ54と、導出入口52とにおい測定部3及びGC部1との流路を切り替える第2流路切替部55と、流路切替部13と第2流路切替部55との間の流路7であって第2流路切替部55の直前において希釈用ガスを導入するガス導入部56と、第1流路切替部53、第2流路切替部55、及びガス導入部56を制御するガス回収制御部57とを含む。インタフェイス部42はGC部1とガス回収部5の間の流路7に設けられ、流路7を例えば250℃程度に加熱するためのヒータ421を備える。なお、導入口52、第1流路切替部53、及び第2流路切替部55も図示しないヒータによって例えば250℃程度に加熱されている。これにより、カラム10から出てきた成分を含む高温のガスは、そのままの温度でガス回収部5に導入され、希釈用ガスとともにサンプルバッグ511に回収される。
【0021】
におい測定部3は、サンプルバッグ511に回収されたガス(後述のにおい測定用ガス)を吸引するための吸入口31、吸引したにおい測定用ガスを希釈する希釈部32、吸引したガスを濃縮する濃縮部33、各種のにおい成分を含むにおい測定用ガスを測定するための、応答特性が互いに異なる複数のにおいセンサ341(図1では1個のみ示す)を内部に備えたセンサセル34、におい測定用ガスをセンサセル34に引き込むためのポンプ35、においセンサ341による検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換部36、デジタル化された検出信号を解析処理する信号処理部37、におい測定部3全体の動作を制御するにおい測定制御部39、などから構成される。希釈部32は例えばシリンジとその駆動部で構成されており、シリンジでにおい測定用ガスの希釈を行うとともに、センサセル34にそのガスを押し出すポンプとしての役割を担う場合がある。
【0022】
においセンサ341は、におい成分に応じて抵抗値が変化する金属酸化物半導体センサが一般的であるが、それ以外に、導電性高分子センサや、水晶振動子又はSAWデバイスの表面にガス吸着膜を形成したセンサなど、他の検出メカニズムによるセンサでもよい。
信号処理部37及びにおい測定制御部39はパーソナルコンピュータ6を中心に構成される。なお、パーソナルコンピュータ6は、上記の他、MS部2のイオン検出器24で取得された信号を解析処理するためのデータ処理部61と、各制御部14、25、39、57を統括的に制御する中央制御部62を機能として含み、キーボードやマウス等の入力部63及び表示部64とが接続されている。本実施例では、MS部2が本発明のタイミング検出部に相当し、信号処理部37が演算処理部に相当する。また、本実施例では、サンプルバッグ511にガスを回収するときはGC部1、MS部2、ガス回収部5が統合的に動作し、サンプルバッグ511に回収されたガスのにおいをにおい測定部3で測定するときは、ガス回収部5がオートサンプラとして機能し、ガス回収部5とにおい測定部3が統合的に動作する。
なお、本実施例では、GC部1、MS部2、におい測定部3、ガス回収部5をそれぞれ別の制御部が制御することとして説明したが、例えばGC部1とMS部2を共通の制御部が制御し、におい測定部3とガス回収部5を共通の制御部が制御するようにしても良い。
【0023】
におい測定部3では、以下のようにしてガスの成分が測定される。すなわち、センサセル34に目的とするガス(目的ガス)が導入されると、該目的ガス中の成分が複数のにおいセンサ341に接触し、各においセンサ341からそれぞれ異なる検出信号が並列に出力される。この検出信号はA/D変換部36によりサンプリングされた後にデジタル化されて信号処理部37に入力される。信号処理部37は、1つの目的ガスについてにおいセンサ341毎に1個ずつの検出データを取得する。従って、例えばセンサセル34が10個のにおいセンサ341を備える場合は、或る目的ガスの測定によって10個の検出データが得られることになる。10個のにおいセンサ341はそれぞれ異なる応答特性を有するため、これら10個のにおいセンサ341の出力をそれぞれ異なる方向の軸とする10次元のにおい空間を考えることができる。全てのにおいセンサ341の出力がゼロとなる状態が、このにおい空間の原点である。
【0024】
前記におい空間において、上記10個の検出データは或る1つの測定点として位置付けることができる。ここで、前記におい空間の原点を始点とし、測定点を終点とするにおいベクトルを考えたとき、該においベクトルの長さが目的ガスの「においの強さ」(即ち目的ガス中のにおい成分の濃度)に対応し、においベクトルの向きが「においの質」に対応する。即ち、或る目的ガスの測定によって得られたにおいベクトルが、他の目的ガスの測定によって得られたにおいベクトルと近い方向を向いていれば、両者は近い種類のにおいと考えることができ、逆にベクトルの向きが大きく異なっていれば、遠い種類のにおいであると考えることができる。そこで、2本のベクトルの向きの近似性を判断する指標として、両ベクトルが成す角度θを用い、この角度θに基づいて「においの質」の類似性を定めることができる。例えば、2つのにおいベクトルが重なる(全く同じ向きである)とき(つまりθ=0であるとき)の類似率を100%と定め、角度θが所定値α以上である場合には類似率を0%と定める。そして角度θが0~αの範囲であるときに、その角度θに応じて類似率を規定する。
【0025】
また、目的ガスの濃度(におい成分の濃度)に対してにおいセンサ341の出力レベルがほぼ線形である場合には、同種のにおいであれば、その濃度に関わらずにおいベクトルの向きが一定となる。したがって、2つのにおいベクトルが成す角度θも濃度によらず一定となるため、複数の目的ガス間のにおいの質の差を正確に判別することができる。
【0026】
一方、におい成分の濃度に対するにおいセンサ341の出力が非線形である場合には、同種のにおいであっても、濃度によってにおいベクトルの向きが変わってしまうため、複数の目的ガス間におけるにおいの質の差を正確に判別することが難しくなる。このような場合には、目的ガスの測定時において、各においセンサ341の出力値に基づいて希釈部32及び濃縮部33をフィードバック制御することにより、センサセル34に導入される目的ガスの濃度が常に適切な濃度となるように調整することができる。具体的には、においセンサ341から得られる検出信号を、上述のにおい空間における1個の測定点として位置付け、原点を始点としその測定点を終点とするにおいベクトルを作成して該ベクトルの長さを求める。そして、その長さが、予め定めた所定の値となるように、希釈部32における希釈率又は濃縮部33における濃縮率を制御する。
【0027】
<におい評価装置の基本動作>
次に、本実施例のにおい評価装置の基本的な動作について説明する。
入力部63を通してにおい評価装置を用いた各種動作の実行が指示されると、中央制御部62の制御の下、GC制御部14、MS制御部25、におい測定制御部39、ガス回収制御部57が、それぞれGC部1、MS部2、におい測定部3、ガス回収部5を制御する。
【0028】
そして、においを有する、気体、液体、固体サンプルから抽出された分析対象ガスが気体状態、もしくは液体状態で試料注入部12から投入されると、そのガスは試料導入部12aを通じてカラム10に導入される。また、分析対象ガスが液体状態で投入された場合、試料導入部12aで気化された後、キャリアガスに押されて試料導入部12aからカラム10に導入される。分析対象ガスに含まれる各成分はカラム10を通過する間に分離され、時間的にずれてカラム10から出てくる。カラム10から出てきた成分は、流路切替部13を経た後、インタフェイス部41を通ってMS部2に導入されるか、若しくはインタフェイス部42を通ってガス回収部5に導入される。
【0029】
分析対象ガスに含まれる各成分がカラム10から出てくるタイミングを調べる場合は、カラム10から出てくる全ての成分がMS部2に導入される。従って、このときは、分析対象ガスのカラム10への導入が開始されてから、全ての成分がカラム10から出てくるまでの間、流路切替部13はGC部1とMS部2を連通させた状態にされる。これにより、カラム10から出てきた成分が順次MS部2に導入される。
【0030】
MS部2に導入された成分は、MS制御部25の制御の下、イオン源21でイオン化され、四重極質量フィルタ23で選択された特定の質量数を有するイオンのみがイオン検出器24に到達する。そして、四重極質量フィルタ23において所定の質量範囲で繰り返し質量走査が行われ、走査毎にイオン検出器24においてマススペクトルの元となる検出信号が得られる。
【0031】
イオン検出器24で得られた検出信号はデータ処理部61で処理されることにより、横軸を質量数、縦軸を信号強度としたマススペクトルが繰り返し作成され、また質量数に着目せずに横軸を時間、縦軸を信号強度とすることでトータルイオンクロマトグラム(TIC)が作成される。さらにまた、ある質量数に着目して横軸を時間、縦軸を信号強度とすることでマスクロマトグラムが作成される。カラム10から各成分が出てくるタイミングを検出するためには、TICが作成されれば十分であるが、必要に応じてマススペクトルやマスクロマトグラムを作成するようにしても良い。データ処理部61で作成されたTICのデータは該データ処理部61に記憶される。また、データ処理部61は、作成されたTICからピークを抽出し、そのピークに関する情報(ピーク強度、ピーク面積、ピーク幅(時間範囲)等)を記憶する。
【0032】
また、データ処理部61で作成されたTICは、表示部64の表示画面上に描かれる。図2はTICが表示された表示画面641の一例を示している。
【0033】
本実施例では、表示画面641はサンプルバッグ511に回収される成分(群)から除かれる成分(群)がカラム10から出てくる時間範囲(リテンションタイム(RT)範囲)を設定するための設定画面を兼用する。データ処理部61は、予め設定された所定の時間範囲に対応する成分(群)のみが全体の成分から除かれてサンプルバッグ511に回収されるように、流路切替部13をGC部1とガス回収部5を連通させた状態にするタイミング、及びそのタイミングにおいてカラム10から出てきた成分(群)が回収されるサンプルバッグ511の番号を自動的に設定する。
【0034】
全体の成分(群)から除かれる(オミットされる)成分(群)がカラム10から出てくる時間範囲は、手動操作により、あるいは自動的に設定される。手動操作により時間範囲を設定する場合は、例えばマウスを使って表示画面641上の「手動」ボタン643をカーソルでクリックした上でTIC642上の任意の時間範囲をカーソルで指定する。例えば図2は、TIC642上に、「RUN1」及び「RUN2」で表された2種類の時間範囲が設定された状態を示している。
【0035】
このように時間範囲が設定されると、サンプルバッグ511へのガスの回収時、流路切替部13は、まずはRUN1で指定された時間範囲においてGC部1とガス回収部5とが連通されない状態になるように流路切替部13を切り替え、それ以外の時間範囲においてGC部1とガス回収部5とが連通される状態になるように流路を切り替える(1回目のガス回収)。続いて、RUN2で指定された時間範囲においてGC部1とガス回収部5とが連通されない状態になるように流路切替部13を切り替え、それ以外の時間範囲においてGC部1とガス回収部5とが連通される状態になるように流路を切り替える(2回目のガス回収)。1回目及び2回目のガス回収では、それぞれ異なるサンプルバッグ511に成分(群)が回収される。また、これにより、TIC上にピークを形成しないような低濃度、低感度の成分(群)をサンプルバッグ511に回収したり、サンプルバッグ511に回収される成分(群)から除いたりすることができる。
【0036】
一方、図3は、全体の成分から除かれる成分(群)がカラム10から出てくる時間範囲が自動的に設定された場合の表示画面641の例を示す。自動設定は、例えばマウスを使って表示画面641上の「自動」ボタン644をカーソルでクリックすることにより開始され、データ処理部61が、TIC642の全体の時間範囲を自動的に複数に分割して時間範囲を設定する。図3には、4個の時間範囲RUN1~RUN4が設定された様子が示されている。データ処理部61は、原則的にはTIC642を等分割して時間範囲を設定するが、時間範囲の始期又は終期が所定強度又は所定幅のピーク上に位置するときは、始期又は終期がピークから外れるように設定し直す。つまり、自動設定では、サンプルバッグ511に回収される成分(群)から除かれる成分(群)がカラム10から出てくるタイミングが機械的に設定される。
【0037】
自動設定又は手動設定の内容(つまり、サンプルバッグ511に回収される成分(群)から除かれる成分(群)がカラム10から出てくるタイミング、及びサンプルバッグの数等に関する情報)は、表示画面641の右下部に表示されている「SAVE」ボタン645がマウス等でクリックされることによりデータ処理部61に記憶される。
以上より、表示部64(表示画面641)、入力部63、データ処理部61、中央制御部62が本発明のタイミング設定部として機能する。
【0038】
分析対象ガスに含まれる成分(群)のにおいを測定するためのガス(におい測定用ガス)を調整する場合は、カラム10から出てくる成分(群)の全て又は一部がガス回収部5に導入される。すなわち、GC制御部14及びガス回収制御部57の制御の下、流路切替部13の駆動モータ、第1及び第2流路切替部53及び55が制御され、データ処理部61に記憶された自動設定又は手動設定の内容に従って、GC部1とMS部2が連通された状態と、GC部1とガス回収部5が連通された状態のいずれかに切り替えられる。これにより、所定のタイミングにカラム10から出てきた成分(群)がガス回収部5に導入され、所定の番号のサンプルバッグ511に回収される。
【0039】
また、流路切替部13がGC部1とガス回収部5を連通させた状態にあるときは、ガス導入部56より、流路切替部13と第2流路切替部55との間の流路7に希釈用ガスが流される。これにより、サンプルバッグ511にはカラム10から出てきた成分(群)とともに希釈用ガスが回収される。
【0040】
希釈用ガスとしては、ガス回収部に導入される各成分(群)のにおいに影響を及ぼさない無臭又は無臭に近いガス、例えば窒素やヘリウムが用いられる。
なお、希釈用ガスは、ガス回収部5内の流路をクリーニングする作用を有するため、GC部1からのガスが流路7を流れているとき、及び流れてないときのいずれの場合も流路7に流すようにすると良い。ただし、GC部1からのガスが流路7を流れているときにのみ希釈用ガスが流路7に流されるようにしても良く、カラム10から出てきた成分(群)がガス回収部5に導入されるときであっても希釈用ガスを流さないようにしても良い。
【0041】
以上により、分析対象ガスをカラム10に導入することにより該カラム10から出てくる成分の全て又は一部を含むにおい測定用ガスがサンプルバッグ511に回収される。また複数種類のにおい測定用ガスを、それぞれ別のサンプルバッグ511に回収することができる。さらに、或る分析対象ガスをカラム10に導入することにより該カラム10から出てくる成分の全て又は一部を含むガスを所定のサンプルバッグ511に回収した後、その分析対象ガスとは異なる種類の分析対象ガスをカラム10に導入することにより該カラム10から出てくる成分の全て又は一部を含むガスを前記所定のサンプルバッグ511に回収することも可能である。これにより、複数種類の分析対象ガスに含まれる成分から成るにおい測定用ガスが調整される。
【0042】
サンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスのにおいをにおい測定部3によって測定する動作は以下のとおりである。
ガス回収制御部57の制御の下、第1及び第2流路切替部53、55の流路が切り替えられる。また、におい測定制御部39の制御の下、ポンプ35によりガス回収部5のサンプルバッグ511から順次、におい測定用ガスがセンサセル34に引き入れられる。これにより、におい測定用ガスに含まれる成分(群)が複数のにおいセンサ341のそれぞれと接触することで該においセンサ341がそれぞれ検出信号を出力する。なお、ポンプ35に代えて希釈部32が備えるシリンジによってサンプルバッグ511からにおい測定用ガスを吸引した後、該シリンジによってにおいセンサ341側に押し出すようにしても良い。
【0043】
データ処理部61はにおい測定部3からの検出信号に基づいて、におい空間(例えば10次元空間)における各におい測定用ガスの検出結果を表すにおいベクトルを作成する。そして、各におい測定用ガスのにおいベクトルに基づき、複数のにおい測定用ガス間の類似度を表す指標値を算出し、その結果を表示部64に表示する。このとき、指標値が算出されるにおい測定用ガスの種類、表示部64に指標値が表示されるにおい測定用ガスの種類を選択できるようにしても良い。また、各におい測定用ガスの各においセンサ341による出力値が表示部64に表示されるようにしても良い。
【0044】
また、各サンプルバッグ511の装着口51ににおい嗅ぎポート(図示せず)を接続することにより、回収部5の複数のポートから複数人のにおい評価担当者による官能試験を行うことができる。また、一旦サンプルバッグ511にガスを捕集してから官能試験を行うことも可能である。例えば、サンプルバッグ511に回収された成分(群)を含むガス(におい測定用ガス)と分析対象ガスのにおいを比較する場合は、官能試験の一つである三点比較法を用いると良い。
【0045】
<具体例>
以下に、におい測定用ガスの調整例、及びサンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスの利用例を示す。
【0046】
(1)分析対象ガスをカラム10に導入し、該カラム10から出てくる全ての成分のうち所定のタイミングにおいてカラム10から出てくる成分(群)のみをにおい測定用ガスとしてサンプルバッグ511に回収する。
上記のにおい測定用ガスは、分析対象ガスに含まれる成分毎のにおい質を特定する場合、成分毎のにおいの強さを評価する場合等に有用である。
【0047】
(2)分析対象ガスをカラム10に導入し、該カラム10から出てくる全ての成分のうち所定のタイミングにおいてカラム10から出てくる成分(群)のみを除き、残りの成分(群)をにおい測定用ガスとしてサンプルバッグ511に回収する。
上記のにおい測定用ガスは、分析対象ガスのにおいを形成する最小限の成分(群)を特定する場合、分析対象ガスに含まれる目的成分のにおいを正しく評価する場合等に有用である。
【0048】
例えば三点比較法により、或るにおい測定用ガスのにおいが分析対象ガスのにおいと近いと判定された場合は、そのにおい測定用ガスから除かれた(オミットされた)成分(群)に、分析対象ガスのにおい形成に重要な成分が含まれていなかったと判断することができる。
【0049】
また、ヒトは400個の嗅覚レセプターでにおいを選択し、識別しているといわれている。したがって、におい識別装置、もしくは電子鼻のようなヒトの嗅覚を代用する装置が、特定のにおい質だけでなく様々なにおい質に応答するように、且つヒトが嗅ぎ分けることができる全てのにおい質に対して選択性、識別性を有するようにするためには、本来は400個以上のセンサが必要となる。しかし、400個ものセンサを準備することは現状の技術レベルでは無理があり、現実的ではない。また、10個程度のセンサでも、ある特定の種類のにおいであればその違い(例えば花の種類によるにおいの違い)を識別することができるが、そのにおいに全く別の種類のにおい(例えば牛乳のにおい)が混在したときは、その別の種類のにおいにセンサの反応が妨害され、目的とするにおいの識別が難しくなる。これに対して、上記実施例のにおい評価装置では、分析対象ガスに含まれる成分(群)から、その分析対象ガスのにおいの評価を妨害するような成分(妨害成分)を除いたにおい測定用ガスを調整できる。したがって、10個程度のセンサでも目的対象ガスのにおいを十分、識別することができる。妨害成分の例として、トイレから発生する悪臭のにおいを測定するためにトイレ空間から採取された分析対象ガスに含まれるトイレ用芳香剤の溶媒成分(トルエン)、柑橘系の香料が分析対象ガスである場合に、該香料に過剰に含まれるリモネン等が挙げられる。
【0050】
(3)分析対象ガスをカラム10に導入し、該カラム10から出てくる全ての成分をサンプルバッグ511に回収する。続いて、前記分析対象ガスを再度カラム10に導入し、所定のタイミングにおいてカラム10から出てくる成分(群)を除き、それ以外の成分(群)を前記サンプルバッグ511と同じサンプルバッグ511に回収する。全ての成分をサンプルバッグ511に回収する回数、一部の成分を除いた成分をサンプルバッグ511に回収する回数を種々変更することにより、成分比率の異なる複数種類のにおい測定用ガスを調整することができる。また、カラム10から出てくる成分とともにガス回収部5に導入される希釈用ガスの量を変えることにより、サンプルバッグ511に回収されるにおい測定用ガスに含まれる成分の濃度を変更することができる。
【0051】
また、最初にカラム10に導入する分析対象ガス(第1ガス)と、次にカラム10に導入する分析対象ガス(第2ガス)の種類を異ならせることにより、第1ガスの全ての成分と第2ガスの一部の成分が含まれる、におい測定用ガスを調整することができる。このにおい測定用ガスは、例えば、或る悪臭(第1ガスに相当)に対してマスキング効果を有するガス(マスキングガス、第2ガスに相当)に含まれる成分(群)のどの成分がマスキング作用を有するかを特定する場合に有用である。
【0052】
すなわち、マスキングガスから一部の成分(群)を除いたガスと悪臭を混合したにおい測定用ガスと、マスキングガスの全ての成分と悪臭を混合したにおい測定用ガスを調整し、前者の方が後者よりもマスキング効果が低下している場合には、マスキングガスから除かれた成分(群)がマスキング作用を有する成分であると特定することができる。つまり、どの成分(群)がマスキングに最低限必要であるかが分かる。
【0053】
(4)或る分析対象ガス(第1ガス)をカラム10に導入し、該カラム10から出てくる全ての成分のうち所定のタイミング(RT範囲)においてカラム10から出てくる成分(群)のみをサンプルバッグ511に回収する。次に、前記分析対象ガスとは別の分析対象ガス(第2ガス)をカラム10に導入し、該カラム10から出てくる全ての成分のうち前記所定のタイミング以外においてカラム10から出てくる成分(群)を、同じサンプルバッグ511に回収する。これにより、第2ガスに含まれる成分のうち前記所定のタイミングにおいてカラムから出てくる成分(群)が、第1ガスに含まれる成分(群)のうち前記所定のタイミングにおいてカラム10から出てくる成分(群)と置換されたガスであるにおい測定用ガスが調整される。
【0054】
上記のにおい測定用ガスは、においが少しだけ異なる2種類のガス間のにおいの違いを決定づける成分(群)やマスキング効果を有する成分(群)を特定したり、においの質の変化を調べたりする場合に有用である。
例えば、第1ガスと第2ガスの間で置換される成分(群)がカラム10から出てくるタイミングを変えた、複数種類のにおい測定用ガスを調整する。そして、これら複数種類のにおい測定用ガスと第1ガスとのにおいの類似度を求め、第1ガスと第2ガスの類似度よりもにおい測定用ガスと第1ガスの類似度の方が高い(類似している)場合は、その測定用ガスにおいて置換された成分(群)が、第1ガスと第2ガスのにおいの違いを決定づける成分(群)であると判断することができる。
【0055】
次に、具体的な食品についてにおいの成分(群)を調べた結果について説明する。
ここでは、においの質が異なる、A社とB社の醤油について調べた。A社の醤油とB社の醤油は、いずれも全ての香気成分は特定されているものの、どの成分(群)がそのにおいの質の違いを形成しているのかが分かっていなかった。
【0056】
図4の最上段は、A社の醤油から発生するガス(におい成分)のクロマトグラムである。図4の上から2段目~4段目は、それぞれ、最上段のクロマトグラフのうちRTの前半部分に対応するA社の醤油のガスをB社の醤油のガスと入れ替えることで得られたガス(におい測定用ガス)のガスクロマトグラフ(ケース1)、最上段のクロマトグラフのうちRTの中間部分に対応するA社の醤油のガスをB社の醤油のガスと入れ替えてできたにおい測定用ガスのクロマトグラフ(ケース2)、最上段のクロマトグラフのうちRTの後半部分に対応するA社の醤油のガスをB社の醤油のガスと入れ替えてできたにおい測定用ガスのクロマトグラフ(ケース3)である。
【0057】
ケース1,ケース2ではにおい測定用ガスのにおいは、B社の醤油のにおいにならなかったが、ケース3はにおい成分の入れ替えによりにおい測定用ガスのにおいがB社の醤油のにおいとほぼ同じになった。このことから、A社の醤油のクロマトグラフのうちRTの後半部分に対応する成分(群)に、A社の醤油の香りとB社の醤油の香りの違いを決定づける(言い換えると、B社の醤油の成分(群)と入れ替えることにより、A社の醤油の香りがB社の醤油の香りになる)重要な香気成分(群)が含まれるといえる。そこで、A社の醤油のクロマトグラフのRTの後半分に対応する成分(群)をより詳細に調べたのが、図5である。
【0058】
図5は、かなり狭いRT範囲内において各成分(群)がどのようなにおいを有しているかを本実施例のにおい評価装置を用いた官能試験により調べた結果である。図5において、細い矢印で示した成分(群)は、そのにおいの強さとそのにおいの質から、醤油の香りを決定づけていると思われたが、その成分を入れ替えてもA社の醤油の香りはB社の醤油の香りにならなかった。この結果を受けて、システマティックに種々の成分(群)を入れ替えたところ、図5に太い矢印で示す成分を入れ替えたA社の醤油の香りがB社の醤油の香りになることが分かった。この結果は、通常のにおい嗅ぎGCを用いた官能試験の結果とほぼ同じであった。
【0059】
この結果で注目すべきは、太い矢印を示した成分(群)は、その成分(群)単独ではほとんど香りがないということである。すなわち、A社の醤油の成分(群)から香りのほとんどしない成分(群)をB社の醤油の成分(群)と入れ替えただけで、A社の醤油の香りがB社の醤油の香りになった。この結果を確かめるため、A社及びB社の醤油、及び成分(群)を入れ替えた後のA社の醤油の類似度を測定部3で調べた結果が図6である。測定部3は、におい識別装置と通称される装置と実質的に同じである。図6において、符号Aが付されているベクトルがA社の醤油の香りの測定ベクトル、符号Bが付されているベクトルがB社の醤油の香りの測定ベクトルを示している。そして、符号Cが付されているベクトルが、A社の醤油について、図5において太い矢印が付された成分(群)をB社の醤油の成分(群)と入れ替えたものの測定ベクトルである。ベクトルAとベクトルBのなす角度を100%とすると、ベクトルAとベクトルCのなす角度は76%であった。つまり、A社の醤油について、太い矢印が付された成分(群)を入れ替えたものと、B社の醤油の香りの類似度は76%であることが示された。醤油のようにエタノールが多量に含まれる食品は、測定部3ではうまく測定できないことが多いが、本実施例のにおい評価装置であれば、妨害を受けるエタノール成分が除去されているので、官能試験と同等の結果が得られる。
【0060】
(5)サンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスは、におい測定部3で測定する他、GCMSを用いて分析することができる。例えばにおい測定用ガスには予定した通りの成分が含まれているはずであるが、におい測定用ガスを調整するまでの間に熱分解したり揮発したりして、一部の成分が欠落する場合がある。このような場合には、サンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスをGCMSで分析し、におい測定用ガスに含まれる成分を確認すると良い。本実施例では、におい測定用ガスがサンプルバッグ511に収容されているため、におい測定用ガスのにおいを測定した後でもそのガスをGCMSで分析することができる。
【0061】
また、図7に示すように、第1流路切替部53と装着口51との間の流路の分岐路に切替バルブを介して捕集管58を着脱自在に取り付けておけば、該切替バルブで流路を切り替えることにより、におい測定用ガスがサンプルバッグ511に回収されずに捕集管58に捕集されるようにすることができる。この構成では、分岐路から捕集管58を取り外してGCMS装置の試料注入部に装着することにより、捕集管58に捕集された成分(つまり、サンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスの成分)を簡便に分析することができる。また、サンプルバッグ511では該バッグに吸着してしまい回収できない成分も、捕集管58であれば回収して分析することができる。なお、捕集管58としては、例えばガスの成分を吸着する吸着剤を内部に有するテナックス捕集管を用いることができる。
【0062】
(6)上述したように、サンプルバッグ511に回収されたにおい測定用ガスは、におい測定部3でにおい測定する他、ヒトの嗅覚による官能評価を行うことができる。
通常のにおい嗅ぎGCを複数人で嗅ぐ場合、GCの出口から鼻で嗅ぐところまでの配管を人数分に分岐しなければならず、装置的にも複雑になる。また、各成分がGCの出口に流れ出てくるときに複数人が遅れないように集中しなければならない。これに対して、本実施例に係る装置では、回収部5の複数の装着口51ににおい嗅ぎポートを接続することによりにおい嗅ぎGCと同じことができるとともに、図5に示されるように、ある時間帯においてカラムから出てくる成分(群)を含むにおいを一旦サンプルバッグに捕集した後、ゆっくり嗅ぐことができる。また、複数人が同じサンプルを嗅ぐことができる。
【0063】
[態様]
上述した実施例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
(第1項)第1態様のにおい評価装置は、
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える。
【0065】
第1項のにおい評価装置によれば、分析対象ガスに含まれる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収する際に前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを流すことにより、前記成分が前記流路に吸着することを防止できる。これにより、サンプルバッグに回収されるガスに不要な成分が混入することが防止される。また、分離カラムから出てくるガスに含まれる成分がMS分析に最適な濃度となるように、前処理によって濃縮された分析対象ガスがガスクロマトグラフに導入されることが一般的であるが、希釈用ガスによって、サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分の濃度を元の濃度に戻すことが可能となる。
【0066】
(第2項)第2項のにおい評価装置は、第1項のにおい評価装置において、
前記ガス回収部が、サンプルバッグを装着するための複数の装着口と、前記複数の装着口のそれぞれに装着されるサンプルバッグに前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスを導入するための導入口と、前記複数の装着口と前記導入口とを繋ぐ流路を切り替える流路切替部とを備えるものとすることができる。
【0067】
第2項のにおい評価装置によれば、複数のサンプルバッグのそれぞれに、分析対象ガスのにおいの評価に用いられるガスを収容することができる。また、複数のサンプルバッグに回収されたガスをまとめてにおい測定に供することができる。
【0068】
(第3項)第3項のにおい評価装置は、第1項又は第2項のにおい評価装置において、
前記タイミング検出部が質量分析計であるものとすることができる。
【0069】
タイミング検出部は分析対象ガスに含まれる成分が分離カラムから出てくるタイミングを特定することができれば良いため、ガスクロマトグラフで用いられる標準的な検出器である水素炎イオン化検出器(FID)を用いることができるが、第3項のにおい評価装置のように、タイミング検出部を質量分析計にすると、分離カラムから複数の成分のそれぞれが出てくるタイミングの検出と併せて各成分を同定することができる。
ここで、「分離カラムから出てくるタイミング」とは、分離カラムから或る成分が出てくる始期、始期と終期、始期と時間範囲等をいう。
【0070】
(第4項)第4項のにおい評価装置は、第1項から第3項のいずれかのにおい評価装置において、さらに、
前記サンプルバッグ内のガスのにおいを測定するための、互いに異なる応答特性を有する複数個のにおいセンサを含むにおい測定部と
を備えるものとすることができる。
【0071】
第4項のにおい評価装置によれば、ガス回収部からサンプルバッグを取り外すことなく該サンプルバッグに回収されたガスをにおい測定部に導入して、そのにおいを測定することができる。
【0072】
(第5項)第5項のにおい評価装置は、第1項~第3項のいずれかのにおい評価装置において、
前記回収部が、サンプルバッグを装着するための装着口を備え、
前記装着口に接続されたにおい嗅ぎポートを備えるものとすることができる。
【0073】
におい嗅ぎGCでは、分離カラムから成分が出てくる時間に合わせてそのにおいを嗅いで官能試験を行う必要があったが、第5項のにおい評価装置によれば、ある時間帯において分離カラムから出てくる成分を含むにおいを一旦サンプルバッグに捕集した後、そのサンプルバッグに回収されたガスのにおいをゆっくり嗅いで官能試験を行うことができる。また、同じサンプルバッグに回収されたガスを複数人で嗅いで官能試験を行うことができる。
【0074】
(第6項)第6項のにおい評価装置は、第1項~第4項のいずれかのにおい評価装置において、
第1分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる全ての成分と、前記第1分析対象ガスと同じ種類又は異なる種類の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち、所定のタイミングにおいて出てくる成分とを、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうちの一つに回収させる制御部を備えるものとすることができる。
【0075】
(第7項)第7項のにおい評価装置は、第1項~第4項のいずれかのにおい評価装置において、さらに、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングにおいて出てくる成分と、前記第1分析対象ガスとは別の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち前記所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分とを、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうちの一つに回収させる制御部を備えるものとすることができる。
【0076】
(第8項)第8項のにおい評価装置は、第1項~第4項のいずれかのにおい評価装置において、さらに、
分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分を、前記ガス回収部が備えるサンプルバッグのうち予め所定のガスが収容されたサンプルバッグに回収させる制御部を備えるものとすることができる。
【0077】
第6項~第8項のにおい評価装置によれば、分析対象ガスに含まれる各成分を、該分析対象ガスとは異なる比率で混合したガス、分析対象ガスに含まれる成分の一部だけを除いたガス、異なる種類の分析対象ガスに含まれる成分の全て又は一部を混合したガス等、様々な種類のガスを分析対象ガスの評価のために調整することができる。つまり、分析対象ガスに含まれる、該分析対象ガスのにおいの測定に影響を及ぼす成分を除去したり、該分析対象ガスに含まれる成分のうち特定の成分の混合比率を高くしたり(濃縮したり)低くしたり(希釈したり)した、適宜のガスを調整することができる。
【0078】
(第9項)第2態様のにおい評価方法は、
においを有する分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収し、該サンプルバッグ内のガスを評価するにおい評価方法であって、
前記分離カラムと前記サンプルバッグを繋ぐ流路に、希釈用ガスを導入するものである。
【0079】
(第10項)第10項のにおい評価方法は、第9項のにおい評価方法において、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる全ての成分と、前記第1分析対象ガスと同じ種類又は異なる種類の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち、所定のタイミングにおいて出てくる成分とを前記サンプルバッグに回収するものとすることができる。
【0080】
(第11項)第11項のにおい評価方法は、第9項のにおい評価方法において、
第1分析対象ガスをガスクロマトグラフの分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングにおいて出てくる成分と、前記第1分析対象ガスとは別の第2分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち前記所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分とを前記サンプルバッグに回収するものとすることができる。
【0081】
(第12項)第12項のにおい評価方法は、第9項のにおい評価方法において、
分析対象ガスを前記ガスクロマトグラフの前記分離カラムに通すことにより該分離カラムから出てくる成分のうち所定のタイミングを除く時間範囲において出てくる成分を、所定のガスが予め収容されたサンプルバッグに回収するものとすることができる。
【0082】
(第13項)第13項のにおい評価方法は、第9項~第12項のいずれかのにおい評価方法において、
互いに異なる応答特性を有するm(mは2以上の整数)個のにおいセンサを含むにおい測定装置を用いて、前記サンプルバッグ内のガスのにおいを測定するものとすることができる。
【0083】
(第14項)第14項のにおい評価方法は、第9項~第12項のいずれかのにおい評価方法において、
前記サンプルバッグ内のガスのにおいを、嗅覚を用いた官能試験により評価するものとすることができる。
【0084】
(第15項)第3態様のにおい評価用ガス調整装置は、
においを有する分析対象ガスに含まれる複数の成分を時間方向に分離する分離カラムを有するガスクロマトグラフと、
前記複数の成分のそれぞれが前記分離カラムから出てくるタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記分析対象ガスを前記分離カラムに通すことにより、前記分離カラムから出てくる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収するガス回収部と、
前記サンプルバッグに回収されるガスに含まれる成分が前記分離カラムから出てくるタイミングを設定するためのタイミング設定部と、
前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを導入するガス導入部と
を備える。
【0085】
第15項のにおい評価用ガス調整装置によれば、分析対象ガスに含まれる成分の全て又は一部を含むガスをサンプルバッグに回収する際に前記分離カラムと前記サンプルバッグの間を繋ぐ流路に希釈用ガスを流すことにより、前記成分が前記流路に吸着することを防止できる。したがって、サンプルバッグに回収されるガスに不要な成分が混入することが防止され、分析対象ガスのにおいの評価に有用な必要なガスを調整することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…GC部
10…カラム
12…試料注入部
13…流路切替部
14…GC制御部
2…MS部
25…MS制御部
3…測定部
31…吸入口
34…センサセル
341…においセンサ
36…A/D変換部
37…信号処理部
39…測定制御部
41、42…インタフェイス部
411、421…ヒータ
5…ガス回収部
51…装着口
511…サンプルバッグ
52…導出入口
53…第1流路切替部
54…オートサンプラ
55…第2流路切替部
56…ガス導入部
57…ガス回収制御部
58…ガス捕集管
6…パーソナルコンピュータ
61…データ処理部
62…中央制御部
63…入力部
64…表示部
641…表示画面
642…TIC
図1
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図3
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図5
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図7