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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073483
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】鉗子口密閉部材
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/018 20060101AFI20220510BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B1/018 512
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183496
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】仲 健太
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA21
2H040DA56
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC00
4C161DD03
4C161FF11
4C161FF24
4C161GG15
4C161HH23
(57)【要約】
【課題】体内の生体物質が内視鏡の鉗子口を介して手術室内に拡散することを抑制するための鉗子口密閉部材を提供する。
【解決手段】鉗子口密閉部材20は、内視鏡10の鉗子口10Bに挿通された処置具30のうち少なくとも鉗子口10Bの外部に配置されるハンドル部34を収容する袋部22と、袋部22を内視鏡10に固定する固定部21とを備える。袋部22が固定部21により内視鏡10に固定された状態において、鉗子口10Bに連なる袋部22の内部空間Sが密閉される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の鉗子口に挿通された処置具のうち少なくとも前記鉗子口の外部に配置されるハンドル部を収容する袋部と、
前記袋部を前記内視鏡に固定する固定部とを備え、
前記袋部が前記固定部により前記内視鏡に固定された状態において、前記鉗子口に連なる前記袋部の内部空間が密閉される、鉗子口密閉部材。
【請求項2】
前記袋部には、第1開口部が形成されており、
前記第1開口部の開口幅は、前記ハンドル部の幅よりも広く、
前記固定された状態において、前記固定部が前記第1開口部と前記内視鏡との間を封止することにより、前記内部空間が密閉される、請求項1に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項3】
前記袋部には、第1開口部および第2開口部が形成されており、
前記第1開口部の開口幅は、前記ハンドル部の幅よりも狭く、
前記第2開口部の開口幅は、前記ハンドル部の幅よりも広く、
前記袋部は、前記第2開口部を開閉する開閉部を含み、
前記固定された状態において、前記固定部は、前記第1開口部と前記内視鏡との間を封止し、
前記固定された状態において、前記開閉部が前記第2開口部を閉止することにより、前記内部空間が密閉される、請求項1に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項4】
前記固定部は、前記袋部のうち前記第1開口部に隣接する部分を前記内視鏡に押圧するように設けられている、請求項2または3に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項5】
前記固定部は、前記袋部のうち前記第1開口部に隣接する部分に接続されており、かつ前記内視鏡と嵌め合うように設けられている、請求項2または3に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項6】
前記固定された状態において、前記第1開口部および前記固定部は、前記鉗子口の外部に配置されて、前記内視鏡の外周面に固定される、請求項2~5のいずれか1項に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項7】
前記固定された状態において、前記固定部の一部は、前記鉗子口の内部に挿入されて前記鉗子口の内周面に固定され、前記固定部の残部は、前記鉗子口の外部に配置されて前記袋部のうち前記第1開口部に隣接する部分に接続されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項8】
前記袋部には、前記処置具と外部機器との間を接続する接続部材を通すための第3開口部が形成されており、
前記第3開口部の開口幅は、前記ハンドル部の幅よりも狭く、
前記袋部は、前記第3開口部と前記接続部材との間を封止する封止部を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項9】
前記固定部は、前記袋部を前記内視鏡に着脱するように設けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の鉗子口密閉部材。
【請求項10】
前記袋部は、前記固定された状態において前記内部空間に収容された前記処置具の前記ハンドル部が前記袋部の外側から操作されるように、設けられている、請求項1~9のいずれか1項に記載の鉗子口密閉部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉗子口密閉部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、および大腸等の消化管の内腔に面する粘膜層またはその下層である粘膜下層に生じたがん等の病変を除去する手技として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が知られている。ESDは、消化管の内腔に内視鏡および処置具を挿入し、病変を内視鏡で確認しながら、該病変を処置具を用いて切除および剥離等するというものである。
【0003】
この場合、内視鏡には、処置具が挿通されるチャネルが設けられている。チャネルの一端(鉗子口)は被検者の体外に配置され、チャネルの他端は被検者の内腔に配置される。処置具は、チャネルの外部に配置されて術者によって操作されるハンドル部と、チャネルの内部に挿通される挿通部とを有している。挿通部の先端部は、病変を切除および剥離等するように設けられている。
【0004】
また、特表2009-527259号公報には、処置具の挿通部を鉗子口から引き抜く際あるいは挿通部を鉗子口に再び挿入する際に、体内で挿通部に付着した生体物質が手術室内に拡散することを防止するためのカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-527259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の内視鏡を用いたESDでは、被検者の体内と手術室内の空間とがチャネルを介して常に接続されている。そのため、例えばESDにおいて消化管の内腔を膨らませるために内腔の気圧が体外(手術室内)の気圧よりも高く設定された場合に、内腔内の気体がチャネルを通って体外に漏れる。この際、体内の生体物質がエアロゾルとして手術室内に拡散するおそれがある。エアロゾルが感染症状を引き起こすウイルス等を含んでいれば、術者が当該ウイルスに感染するリスクも在る。
【0007】
本発明の主たる目的は、体内の生体物質が内視鏡の鉗子口を介して手術室内に拡散することを抑制するための鉗子口密閉部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鉗子口密閉部材は、内視鏡の鉗子口に挿通された処置具のうち少なくとも鉗子口の外部に配置されるハンドル部を収容する袋部と、袋部を内視鏡に固定する固定部とを備える。袋部が固定部により内視鏡に固定された状態において、鉗子口に連なる袋部の内部空間が密閉される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体内の生体物質が内視鏡の鉗子口を介して手術室内に拡散することを抑制するための鉗子口密閉部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る鉗子口密閉部材を説明するための概略図である。
図2】実施の形態1に係る鉗子口密閉部材の固定部を説明するための概略図である。
図3】本実施の形態に係る鉗子口密閉部材の固定部の第1変形例を説明するための概略図である。
図4図3に示される第1変形例の固定部が内視鏡に固定された状態の部分断面図である。
図5】本実施の形態に係る鉗子口密閉部材の固定部の第2変形例を説明するための概略図である。
図6図5に示される第2変形例の固定部が内視鏡に固定された状態の部分断面図である。
図7】本実施の形態に係る鉗子口密閉部材の固定部の第3変形例を説明するための部分断面図である。
図8】本実施の形態に係る鉗子口密閉部材の固定部の第4変形例を説明するための部分断面図である。
図9】実施の形態2に係る鉗子口密閉部材を説明するための概略図である。
図10】実施の形態3に係る鉗子口密閉部材を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
<内視鏡および処置具の構成>
はじめに、図1を参照して、内視鏡10および処置具30の構成について説明する。内視鏡10は、被検者の体外に配置されて術者によって操作される操作部と、被検者の体内に挿入される挿入部とを備える。図1では、内視鏡10の操作部と挿入部との境界が図示されていないが、紙面に向かって右側に位置する部分が操作部であり、紙面に向かって左側に位置する部分が挿入部である。
【0013】
内視鏡10には、処置具30が挿通されるための処置具チャネル11Aと、処置具チャネル11Aと連通しておりかつ体内から体液および空気を吸い出す吸引チャネル11Bと、内視鏡10の挿入部の先端部に取り付けられたレンズに洗浄するための液体(例えば水)を送る送水チャネル12Aと、送水チャネル12Aに連通しておりかつレンズ上の水を吹き飛ばすための気体(例えば空気)を送る送気チャネル12Bとが形成されている。
【0014】
処置具チャネル11Aは、挿入部の先端部において開口する開口部10Aと、操作部において開口する鉗子口10Bとの間に延びている。吸引チャネル11Bは、開口部10Aと、操作部において開口する開口部10Cとの間に延びている。つまり、処置具チャネル11Aおよび吸引チャネル11Bは、開口部10Aに連なる一部分を共有している。開口部10Cは、図示しない吸引装置に接続される。
【0015】
送水チャネル12Aは、挿入部の先端部において開口する開口部10Dと、操作部において開口する開口部10Eとの間に延びている。開口部10Eは、送水装置40と送水管41を介して接続されている。送気チャネル12Bは、開口部10Dと、操作部において開口する開口部10Eとの間に延びている。開口部10Fは、図示しない送気装置に接続されている。
【0016】
処置具チャネル11Aのうち吸引チャネル11Bと共通化されてない部分は、処置具チャネル11Aのうち吸引チャネル11Bと共通化されている部分に対して、鈍角を成すように屈曲している。
【0017】
内視鏡10の上記操作部には、突起部13が形成されている。鉗子口10Bは、突起部13に形成されている。
【0018】
処置具30は、消化管の内腔に対して、牽引、切除、洗浄、薬剤の注入・散布等の処置を施すように設けられた任意の処置具である。処置具30は、例えば内視鏡用のスネアである。処置具30は、例えばシース31と、ケーブル32と、スネア33と、ハンドル部34とを備える。処置具30のうち、シース31、ケーブル32、およびスネア33は、処置具チャネル11Aに挿通される。ハンドル部34は、処置具チャネル11Aの外部に配置される。ハンドル部34は、操作部35と、把持部36とを含む。
【0019】
シース31は、管状の部材である。シース31は、把持部36に固定されている。ケーブル32は、シース31に挿通されている。ケーブル32の一端は、スネア33と接続されている。ケーブル32の他端は、操作部35に接続されている。ケーブル32、スネア33、および操作部35は、シース31および把持部36に対して、スライド可能である。
【0020】
シース31および把持部36には、ケーブル32およびスネア33を挿通するための挿通チャネルが形成されている。具体的には、シース31は、体内に挿入される第1端37と、把持部36に接続された第2端とを有している。把持部36には、シース31の第2端と連通し、ケーブル32が挿通されている挿通孔38が形成されている。上記挿通チャネルは、シース31の第1端37と把持部36の挿通孔38との間に延びている。上記挿通チャネルは、処置具チャネル11Aの内部に通される。シース31により、挿通チャネルと、処置具チャネル11Aおよび吸引チャネル11Bとは、区画されている。つまり、挿通チャネルは、吸引装置により吸引されない。
【0021】
図1において、送水装置40が駆動すると、送水管41から開口部10Eに流入した水は、送水チャネル12Aを流れた後、開口部10Cから体内に流出する。また、送気装置が駆動すると、開口部10Fに流入した空気は、送気チャネル12Bを流れた後、開口部10Cから体内に流出する。また、吸引装置が駆動すると、開口部10Aに流入した体液および空気は、吸引チャネル11Bを流れた後、開口部10Cから吸引装置に流出する。
【0022】
上述のように、シース31内の挿通チャネルは、シース31によって吸引チャネル11Bと区画されているため、吸引装置によって吸引されない。そのため、例えば内腔を膨らませるために内腔の気圧が体外の気圧よりも高く設定される場合には、吸引装置が駆動されていても、内腔内のエアロゾルは挿通チャネルを通って挿通孔38から処置具30の外部に流出し得る。また、吸引装置が駆動を停止している状態では、内腔内のエアロゾルは、挿通チャネルを通って挿通孔38から処置具30の外部に流出するとともに、処置具チャネル11Aを通って鉗子口10Bから内視鏡10の外部に流出し得る。
【0023】
本実施の形態に係る鉗子口密閉部材20は、体内のエアロゾルが挿通チャネルおよび処置具チャネル11Aを介して手術室内に拡散することを抑制するものである。
【0024】
<鉗子口密閉部材の構成>
次に、図1を参照して、鉗子口密閉部材20について説明する。鉗子口密閉部材20は、固定部21および袋部22を備える。
【0025】
固定部21は、袋部22を内視鏡10に固定する。固定部21は、例えば内視鏡10の突起部13に固定される。
【0026】
袋部22は、内視鏡10の鉗子口10Bに挿通された処置具30のうち、鉗子口10Bの外部に配置される部分を収容する。袋部22は、少なくともハンドル部34を収容する。処置具30のうちシース31およびケーブル32の各一部、ならびにハンドル部34が鉗子口10Bの外部に配置される場合、袋部22は、処置具30のうちシース31およびケーブル32の各一部、ならびにハンドル部34を収容する。
【0027】
袋部22が固定部21により内視鏡10に固定された状態(以下、単に固定状態とよぶ)において、鉗子口10Bに連なる袋部22の内部空間Sは密閉される。
【0028】
そのため、鉗子口密閉部材20は、体内のエアロゾルが挿通チャネルおよび処置具チャネル11Aを介して手術室内に拡散することを抑制できる。
【0029】
袋部22は、上記記固定状態において、袋部22の内部空間Sに収容されたハンドル部34が袋部22の外側から操作されるように、設けられている。袋部22を構成する材料は、可撓性およびエアロゾルに対する耐食性を有する任意の材料であればよいが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリ塩化ビニル(PVC)の少なくともいずれかを含む。
【0030】
鉗子口密閉部材20は、上記固定状態において、内視鏡10のうち突起部13のみと接続され、または内視鏡10のうち突起部13のみを覆うように設けられている。
【0031】
そのため、鉗子口密閉部材20は、上記固定状態において、術者による内視鏡10および処置具30の操作を妨げない。鉗子口密閉部材20は、術者が内視鏡10および処置具30の操作している間も、体内のエアロゾルが挿通チャネルおよび処置具チャネル11Aを介して手術室内に拡散することを抑制できる。
【0032】
以下、鉗子口密閉部材20の一例として、実施の形態1~3に係る鉗子口密閉部材20を説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1および図2に示されるように、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20の袋部22には、第1開口部22Aのみが形成されている。
【0034】
図1および図2に示されるように、固定部21は、例えば、袋部22のうち第1開口部22Aに隣接する開口端部22Cに接続されており、かつ内視鏡10の突起部13と嵌め合うように設けられている。固定部21は、袋部22の開口端部22Cに接続されている接続部分と、内視鏡10の突起部13と嵌め合うように設けられている嵌合部分とを有している。固定部21は、例えば環状部材である。
【0035】
固定部21の上記接続部分と袋部22の開口端部22Cとの接続方法は、両者の間を気密に接続し得る任意の接続方法であればよいが、例えば接着または溶着である。また、袋部22の開口端部22Cが固定部21の上記接続部分を覆うように配置された状態において、開口端部22Cが結束バンド等の緊締部材によって緊締されてもよい。
【0036】
固定部21の上記嵌合部分と内視鏡10の突起部13との嵌合方法は、両者の間を気密に接続し得る任意の嵌合方法であればよいが、好ましくは着脱可能な嵌合方法であり、例えば螺合である。図2に示されるように、固定部21の嵌合部分は、例えば内視鏡10の突起部13と螺合するように設けられている。このような固定部21は、内視鏡10に対して着脱され得る。
【0037】
具体的には、固定部21の内周面には、螺旋状に延在する凸部23が形成されている。突起部13の外周面には、螺旋状に延在する凸部14が形成されている。凸部23は螺旋の軸方向に隣り合う凸部14間に収容されるように設けられている。凸部14は当該軸方向に隣り合う凸部23間に収容されるように設けられている。好ましくは、凸部23は、上記固定状態において凸部14と面接触するように設けられている。
【0038】
上記固定状態において、固定部21は、第1開口部22Aと内視鏡10との間を封止している。これにより、袋部22の上記内部空間は密閉される。
【0039】
好ましくは、鉗子口密閉部材20は、ハンドル部34が出し入れされるように設けられている。この場合、固定部21および袋部22は、弾性を有している。固定部21の最大開口幅および第1開口部22Aの最大開口幅は、ハンドル部34の幅よりも広い。ハンドル部34の幅は、ケーブル32の延在方向と直交する方向におけるハンドル部34の幅であり、例えば把持部36の幅である。
【0040】
実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20は、以下にように変形され得る。
(第1変形例)
図3および図4に示される第1変形例では、固定部21に、複数の切り欠き部24が形成されている。切り欠き部24は、固定部21の内周面と外周面との間を貫通する貫通孔として設けられている。この場合、内視鏡10の突起部13には、各切り欠き部24と嵌合するように設けられた複数の凸部15が形成されている。好ましくは、切り欠き部24は、上記固定状態において凸部15と面接触するように設けられている。
【0041】
各切り欠き部24および各凸部15は、鉗子口10Bの孔軸に対する周方向に沿って延びている。複数の切り欠き部24は、鉗子口10Bの孔軸を挟むように配置されている。複数の凸部15は、鉗子口10Bの孔軸を挟むように配置されている。このような固定部21も、内視鏡10に対して着脱され得る。
【0042】
なお、第1変形例では、少なくとも1つの切り欠き部24が形成されていればよい。1つの切り欠き部24のみが形成されている場合、切り欠き部24の上記周方向の長さは、例えば固定部21の上記周方向の長さの半分よりも長い。
【0043】
また、第1変形例では、切り欠き部24が、固定部21の外周面まで達しておらず、内周面に対して凹んでいる凹部として形成されていてもよい。
【0044】
また、第1変形例では、固定部21に凸部が形成されており、内視鏡10の突起部13に該凸部と嵌合するように設けられた切り欠き部が形成されていてもよい。
【0045】
(第2変形例)
図5および図6に示される第2変形例では、固定部21が、開口端部22Cを内視鏡10の突起部13に押圧するように設けられている。
【0046】
固定部21は、一対の押圧部25、ピボット26、一対のグリップ部27、および弾性部28を含む。固定部21は、一対の押圧部25が開閉し、かつ、一対の押圧部25が閉じている状態において、一対の押圧部25が開口端部22Cを内視鏡10の突起部13に押圧するように設けられている。
【0047】
具体的には、一対の押圧部25は、第1押圧部25Aおよび第2押圧部25Bを有する。第1押圧部25Aおよび第2押圧部25Bの各々は、C字状に設けられている。第1押圧部25Aおよび第2押圧部25Bは、例えば上記閉じている状態において環状に連なる。一対のグリップ部27は、第1グリップ部27Aおよび第2グリップ部27Bを有する。第1押圧部25Aおよび第1グリップ部27Aは、一体に構成されている。第2押圧部25Bおよび第2グリップ部27Bは、一体に構成されている。第1押圧部25Aと第1グリップ部27Aとの接続部は、第2押圧部25Bと第2グリップ部27Bとの接続部と、ピボット26によって連結されている。第1グリップ部27Aおよび第2グリップ部27Bは、上記閉じている状態において、ピボット26に対する周方向に間隔を空けて配置される。弾性部28は、第1押圧部25Aおよび第2押圧部25Bの各々をピボット26に対する周方向に接近させるように、第1押圧部25Aおよび第2押圧部25Bの各々を付勢している。弾性部28は、例えばC字状に設けられている。
【0048】
このような構成を備える固定部21では、第1押圧部25Aおよび第1グリップ部27Aは、第2押圧部25Bおよび第2グリップ部27Bに対してピボット26を支点として相対的に旋回する。これにより、固定部21の一対の押圧部25は開閉する。
【0049】
袋部22の開口端部22Cは、固定部21に固定されていない。つまり、第2変形例に係る鉗子口密閉部材20では、固定部21と袋部22とが別体として構成されている。
【0050】
袋部22の開口端部22Cは、突起部13の少なくとも一部を覆うように配置される。このように配置された開口端部22Cおよび突起部13が、一対の押圧部25に挟持されて押圧されることにより、上記固定状態が実現され、上記内部空間が密閉される。
【0051】
一対の押圧部25が開かれると、上記固定状態が解消される。袋部22は、固定部21と分離され、かつ突起部13から取り外される。第2変形例では、袋部22のみを都度交換し、固定部21を再利用できる。
【0052】
好ましくは、開口端部22Cが、上記固定状態において突起部13と面接触するように設けられており、かつ一対の押圧部25が、上記固定状態において開口端部22Cと面接触するように設けられている。
【0053】
(第3変形例)
図7に示される第3変形例では、固定部21が鉗子口10Bに挿入されるコネクタとして設けられている。
【0054】
固定部21は、上記固定状態において鉗子口10Bの内部に挿入されて鉗子口10Bの内周面に固定される第1部29Aと、上記固定状態において鉗子口10Bの外部に配置される第2部29Bとを有している。固定部21には、第1部29Aおよび第2部29Bを貫通する貫通孔が形成されている。
【0055】
袋部22の開口端部22Cは、第2部29Bに固定されている。第2部29Bと開口端部22Cとの固定方法は、両者の間を気密に固定し得る任意の固定方法であればよいが、例えば接着または溶着である。また、開口端部22Cが第2部29Bを覆うように配置された状態において、開口端部22Cが結束バンド等の緊締部材によって緊締されてもよい。
【0056】
第1部29Aは、例えば第2部29Bに近づくにつれて徐々に拡径されている。第1部29Aを構成する材料は、例えば弾性材料である。固定部21が内視鏡10に固定されていない状態では、第1部29Aの最外径は、鉗子口10Bの孔径よりも大きい。第1部29Aが鉗子口10Bに挿入されると、第1部29Aは弾性変形し、弾性変形した第1部29Aの復元力によって、第1部29Aと突起部13との間には接圧が生じる。これにより、上記固定状態が実現される。
【0057】
固定部21は、例えばストッパ部29Cおよびフランジ部29Dをさらに有している。ストッパ部29Cは、第1部29Aと第2部29Bとの境界に形成されており、第1部29Aよりも外側に突出している。ストッパ部29Cは、上記固定状態において、鉗子口10Bが形成されている突起部13の頂面と接触する。ストッパ部29Cは、例えば固定部21の上記貫通孔の孔軸に対する周方向の全周に連なるように設けられている。
【0058】
フランジ部29Dは、第2部29Bにおいて第1部29Aとは反対側に位置する端部に形成されており、第2部29Bよりも外側に突出している。フランジ部29Dは、例えば固定部21の上記貫通孔の孔軸に対する周方向の全周に連なるように設けられている。この場合、第2部29Bの外周面上には、ストッパ部29Cとフランジ部29Dとの間に、ストッパ部29Cおよびフランジ部29Dに対して凹んでいる凹領域が形成されている。開口端部22Cは、少なくとも第2部29Bの上記凹領域に固定されている。好ましくは、開口端部22Cは、上記凹領域、ストッパ部29Cおよびフランジ部29Dの各々と固定されている。つまり、開口端部22Cは、固定部21の異なる方向に延びる複数の面と固定されている。この場合、当該複数の面の全てにおいて互いに連なる隙間が生じない限り、袋部22の上記内部空間の密閉は維持される。よって、この場合、開口端部22Cが固定部21の1つの方向に延びる1つの面のみと固定されている場合と比べて、上記内部空間の密閉が解消されるリスクは低い。
【0059】
(第4変形例)
図8に示される第4変形例は、第3変形例と基本的に同様の構成を備えるが、上記固定状態において、開口端部22Cが突起部13を覆うように配置される点で、第3変形例とは異なる。
【0060】
図8に示されるように、第4変形例では、袋部22のうち、開口端部22Cよりも袋部22の底側に位置する環状部分22Dが、第2部29Bに固定されている。
【0061】
(実施の形態2)
図9に示されるように、実施の形態2に係る鉗子口密閉部材20は、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、袋部22には、第1開口部22Aおよび第2開口部22Bが形成されている点で、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20とは異なる。
【0062】
鉗子口密閉部材20は、ハンドル部34が第2開口部22Bを介して出し入れされるように設けられている。第1開口部22Aの開口幅W1は、ハンドル部34の上記幅よりも狭い。第2開口部22Bの開口幅W2は、ハンドル部34の上記幅よりも広い。袋部22は、例えば開口端部22Cと、開口端部22Cよりも幅広である幅広部分22Eとを有している。第2開口部22Bは、幅広部分22Eに形成されている。
【0063】
袋部22は、第2開口部22Bを開閉する開閉部22Fを含む。開閉部22Fは、例えば線状部材である。袋部22には、例えば開閉部22Fの一部が通される通路22Gが形成されている。開閉部22Fおよび通路22Gは、例えば巾着と同様に構成されている。
【0064】
通路22Gは、第2開口部22Bに沿った周方向に連なっており、かつ当該周方向の一部で外部に開口している。通路22Gは、袋部22の上記内部空間とは分離されている。開閉部22Fの両端部は、通路22Gの外部に配置されている。開閉部22Fの両端部間の一部は、通路22Gに通されている。開閉部22Fは、通路22Gに対して相対的に移動可能である。開閉部22Fのうち通路22Gの外部に配置されている部分が長くなるように、開閉部22Fの両端部が通路22Gの外側に引っ張られることにより、第2開口部22Bは窄まり閉じられる。さらに、開閉部22Fの両端部が結ばれることにより、第2開口部22Bが閉じた状態は維持される。窄まった第2開口部22Bが延ばされることにより、第2開口部22Bは再び開かれ、第2開口部22Bの開口幅W2がハンドル部34の上記幅よりも広くなる。
【0065】
上記固定状態では、固定部21が第1開口部22Aと内視鏡10との間を封止し、かつ開閉部22Fが第2開口部22Bを閉止することにより、袋部22の上記内部空間が密閉される。
【0066】
開閉部22Fは、固定部21が第1開口部22Aと内視鏡10との間を封止している状態で、開閉され得る。これにより、実施の形態2に係る鉗子口密閉部材20では、内視鏡10に固定されている状態で、処置具30が鉗子口密閉部材20から出し入れされ得る。
【0067】
なお、開閉部22Fは、線状部材に限られるものではなく、例えばチャックであってもよい。この場合、通路22Gは不要となる。
【0068】
また、第2開口部22Bには、処置具30と外部機器との間を接続する接続部材が通されてもよい。この場合、開閉部22Fは、第2開口部22Bと接続部材との間を封止する。
【0069】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る鉗子口密閉部材20は、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、袋部22に、処置具30と外部機器との間を接続する接続部材を通すための第3開口部22Hが形成されている点で、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20とは異なる。
【0070】
なお、実施の形態3に係る鉗子口密閉部材20は、第3開口部22Hが形成されている点を除き、実施の形態2に係る鉗子口密閉部材20と同様の構成を備えていてもよい。
【0071】
図10に示される実施の形態3に係る鉗子口密閉部材20は、複数の第3開口部22Hが形成されている点を除き、実施の形態2に係る鉗子口密閉部材20と同様の構成を備えている。
【0072】
処置具30が電気出術用処置具である場合、処置具30は配線39Aを介して高周波装置(図示しない)と接続される。また、処置具30が送水機能付きの電気出術用処置具である場合、処置具30は配線39Aを介して高周波装置と接続されるとともに、送水管39Bを介して送水装置(図示しない)と接続される。
【0073】
各第3開口部22Hの開口幅は、ハンドル部34の上記幅よりも狭い。袋部22は、各第3開口部22Hと接続部材としての配線39Aまたは送水管39Bとの間を封止する封止部22Iをさらに含む。好ましくは、封止部22Iは、第3開口部22Hに接続部材が通されている状態では、第3開口部22Hと配線39Aまたは送水管39Bとの間を封止し、かつ、第3開口部22Hに接続部材が通されていない状態では、第3開口部22Hを封止するように設けられている。封止部22Iは、例えば弁である。
【0074】
図10に示される開閉部22Fは、チャックである。第3開口部22Hは、袋部22の上記幅広部分22Eに形成されている。
【0075】
なお、実施の形態3に係る鉗子口密閉部材20では、少なくとも1つの第3開口部22Hが形成されていればよい。
【0076】
また、実施の形態2および3に係る鉗子口密閉部材20は、実施の形態1に係る鉗子口密閉部材20と同様に、上述した第1~第4変形例を採り得る。
【0077】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 内視鏡、10A,10C,10D,10E,10F 開口部、10B 鉗子口、11A 処置具チャネル、11B 吸引チャネル、12A 送水チャネル、12B 送気チャネル、13 突起部、14,15,23 凸部、20 鉗子口密閉部材、21 固定部、22 袋部、22A 第1開口部、22B 第2開口部、22C 開口端部、22D 環状部分、22E 幅広部分、22F 開閉部、22G 通路、22H 第3開口部、22I 封止部、24 切り欠き部、25 押圧部、25A 第1押圧部、25B 第2押圧部、26 ピボット、27 グリップ部、27A 第1グリップ部、27B 第2グリップ部、28 弾性部、29A 第1部、29B 第2部、29C ストッパ部、29D フランジ部、30 処置具、31 シース、32 ケーブル、33 スネア、34 ハンドル部、35 操作部、36 把持部、37 第1端、38 挿通孔、39A 配線、39B,41 送水管、40 送水装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10