(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073611
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】空気流形成装置およびエアーマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220510BHJP
A42B 1/04 20210101ALI20220510BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20220510BHJP
A42B 1/008 20210101ALI20220510BHJP
A42B 1/244 20210101ALI20220510BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A42B1/04 Z
A41D13/12 118
A42B1/24 J
A42B1/24 F
A62B18/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183712
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520429406
【氏名又は名称】株式会社iFactory
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢田 陽
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】甲村 長利
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆夫
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185CC32
3B011AA00
3B011AB00
3B011AC03
3B011AC11
(57)【要約】
【課題】物理的な部材で覆うことなく装着者の顔を保護することができる保護具を提供すること。
【解決手段】頭部装着具に設置され、前記頭部装着具の装着者の顔の少なくとも一部を保護する空気流を形成するための空気流形成装置であって、前記空気流を形成するための空気を送るための送気管と、前記送気管により送られてきた前記空気を前記装着者の前に向けて排出するための1または2以上の送気口と、を有する、空気流形成装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部装着具に設置され、前記頭部装着具の装着者の顔の少なくとも一部を保護する空気流を形成するための空気流形成装置であって、
前記空気流を形成するための空気を送るための送気管と、
前記送気管により送られてきた前記空気を前記装着者の前に向けて排出するための1または2以上の送気口と、
を有する、
空気流形成装置。
【請求項2】
前記送気口は、円形、楕円形、または長さが幅の3倍以上であるスリットである、請求項1に記載の空気流形成装置。
【請求項3】
前記送気口から排出された空気の流れを制御するための整流板をさらに有する、請求項1または2に記載の空気流形成装置。
【請求項4】
前記送気管に空気を送るための送気部をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気流形成装置。
【請求項5】
前記空気流を形成する空気を清浄にするための清浄部をさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気流形成装置。
【請求項6】
外部環境を検知するためのセンサーと、
前記センサーの検知結果に応じて前記送気部の動作を制御するための制御部と、
をさらに有する、請求項4に記載の空気流形成装置。
【請求項7】
頭部装着具と、
前記頭部装着具に設置された、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気流形成装置と、
を有する、エアーマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気流形成装置および当該空気流形成装置を有するエアーマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、装着者を外気から保護するための保護具としてマスクがよく知られている。マスクの主要部はガーゼや不織布などで構成され、装着者の口や鼻などを物理的に覆うことで装着者を保護する。たとえば、特許文献1はこのようなマスクを開示している。
【0003】
また、透明のプラスチック板で覆うことで装着者の顔を保護するフェイスガードも一般によく知られている。フェイスガードの主要部は透明なプラスチック板で構成され、上記のマスクと同様に装着者の口や鼻、目などを物理的に覆うことで装着者を保護する。たとえば、特許文献2はこのようなフェイスガードを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-079207号公報
【特許文献2】特開2018-149295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなマスクやフェイガードは装着者を外気や外界から保護することができる。しかしながら、これらは、装着者の顔(口や鼻、目など)を物理的な部材で覆うことになるため、これに伴う問題が生じることがある。このような問題として、例えば、装着者が暑さ、息苦しさ、蒸れを感じるという身体的な問題や、人との距離の遠さを感じるという心理的な問題などを挙げることができる。さらに、これらはプラスチック製であり、使い捨てタイプが多く、近年、指摘され始めているプラスチック問題に悪影響を与えると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、物理的な部材で装着者の顔を覆うことなく、装着者の顔を保護することができる使い捨てではない保護具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気流形成装置は、頭部装着具に設置され、前記頭部装着具の装着者の顔の少なくとも一部を保護する空気流を形成するための空気流形成装置であって、前記空気流を形成するための空気を送るための送気管と、前記送気管により送られてきた前記空気を前記装着者の前に向けて排出するための1または2以上の送気口と、を有する。
【0008】
本発明のエアーマスクは、頭部装着具と、前記頭部装着具に設置された上記の空気流形成装置と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物理的な部材で装着者の顔を覆うことなく、装着者の顔を保護することができる保護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、装着された状態の本発明の実施の形態に係るエアーマスクを示す模式図である。
【
図3】
図3Aは空気流が線状である様子を示し、
図3Bは空気流が面状である場合を示す。
【
図7】
図7Aは送気管の中にチューブがある場合の断面斜視図であり、
図7Bはこの場合の断面図である。
【
図8】
図8はエアーマスクの換気能力について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[エアーマスク]
図1は、装着された状態の実施の形態に係るエアーマスク100を示す図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態に係るエアーマスク100は、頭部装着具200と、空気流形成装置300と、空気流形成装置300を頭部装着具200に備え付けるための着脱装置210を有する。本実施の形態では、空気流形成装置300は、送気管310、送気部350、清浄部360および制御部400を有する。送気管310は、頭部装着具200の所定の位置に設置されている。空気流形成装置300は1または2以上の送気口330から空気を排出する。
【0014】
空気流形成装置300は、空気流10を形成して装着者の顔の少なくとも一部を保護する。以下、それぞれの部材について説明する。
【0015】
(頭部装着具)
頭部装着具200は装着者の頭部に装着され、空気流形成装置300の送気口330からの空気流10が装着者の顔の少なくとも一部を保護するように、装着者の顔に対して送気口330を位置決めする。頭部装着具200の構成は、上記の機能を発揮できれば特に制限されない。頭部装着具200の例には、帽子、サンバイザー、ヘルメット、着ぐるみの頭部などが含まれる。なお、
図1に示されるように、本実施の形態では、頭部装着具200はサンバイザーである。この後説明するように、空気流形成装置300の送気管310は、サンバイザーの鍔の縁に取り付けられている。
【0016】
(空気流形成装置)
空気流形成装置300は、送気管310と、送気口330とを有する。空気流形成装置300は、さらに、送気部350や清浄部360、制御部400などを有していてもよい。前述のとおり、本実施の形態では、空気流形成装置300は、送気管310、送気口330、送気部350、清浄部360および制御部400を有する。
【0017】
図2A~Dは、送気管310を示す図である。
図2Aは送気管310の底面図を示し、
図2Bは送気管310の背面図を示し、
図2Cは送気管310の左側面図を示し、
図2Dは
図2AのA-A線に沿う断面図を示す。
【0018】
図2A~Dに示されるように、送気管310は、空気入口320、送気口330および整流板340を有する。外部装置(本実施の形態では送気部350)から供給された空気は、空気入口320から送気管310内に入り、送気管310内を送り、送気口330から排出され、整流板340に沿って流れる。これにより、装着者の顔を保護する空気流10が形成される(
図1参照)。
【0019】
送気管310の平面視形状は、特に制限されないが、装着者の顔を保護する観点からは、例えば装着者の顔に沿う形状であってもよい。本実施の形態では、
図2Aに示されるように、送気管310は、サンバイザー(頭部装着具200)の鍔の外縁に沿う略U字形状である。送気管310がこのような形状を有することで、装着者の顔を覆うように空気流10を形成することができる。
【0020】
空気入口320は、空気を送気管310内に供給するための開口部である。空気入口320の数および位置は、特に制限されない。本実施の形態では、空気入口320は送気管310の両端に配置されている。両方の空気入口320から送気管310内に空気を供給してもよいが、一方の空気入口320のみから送気管310内に空気を供給してもよい。後者の場合は、他方の空気入口320は、ゴムキャップなどで塞がれる。
【0021】
送気口330は、送気管310の管壁に配置された、送気管310内の空気を送気管310外に排出するための部分である。送気口330の数、形状および位置は、装着者の顔を適切に保護することができれば特に制限されない。送気口330の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。送気口330の形状は、形成される空気流の形状に影響を及ぼす。たとえば、送気口330が円柱形状であれば、空気流は円錐状になりやすくなり、送気口330がスリット形状であれば空気流は面状になりやすくなる。
【0022】
図3A、Bは空気流形成装置300によって形成される空気流10の形状を示す図である。
図3Aは空気流10が線状である場合を示し、
図3Bは空気流10が
図3Aと比較して面状である場合を示す。
図3Aに示されるように、空気流10が線状であると、空気流10の間に隙間ができてしまい、装着者の顔を十分に保護することができないおそれがある。一方、
図3Bに示されるように、空気流10が面状であると、空気流10の間に隙間ができにくくなり、装着者の顔をより確実に保護することができる。
【0023】
送気口330の形状は特に制限されず、送気口330の形状の例には、円形、楕円形、スリットが含まれる。空気流10を面状にするという観点からは、送気口330は、送気管310が延在する方向に長いスリットであることが好ましい。より具体的には、送気口330は、長さが幅の3倍以上であるスリットであることが好ましい。送気口330の長さは、例えば6~12mmである。送気口330の幅は、例えば1~2mmである。
【0024】
また、各送気口330からの空気の排出量を一定にするという観点からは、送気口330の大きさは、空気入口320から離れるほど大きくなることが好ましい。たとえば、複数の送気口330の幅が一定のスリットである場合、空気入口320の近傍の送気口330の長さは約7mmであるが、装着者の顔の正面に位置する空気入口320から最も離れた送気口330の長さは約10mmである(
図2Aも参照)。
【0025】
図4A~Dは、送気口330がより長いスリットである送気管310を示す。
図4Aは、この送気管310の底面図であり、
図4Bは正面図であり、
図4Cは左側面図であり、
図4Dは断面斜視図である。
【0026】
図4A~Cに示されるように、この送気管310も、サンバイザー(頭部装着具200)の鍔に沿うように形成されている。
図4Aに示されるように、送気管310の平面視形状は略U字形状である。
図4Bに示されるように、送気管310の装着者の顔の正面に位置する中央部は、上に湾曲している。
【0027】
図4Aに示されるように、この送気管310は、送気口330として非常に長い1つのスリットを有している。このスリットは、一方の空気入口320の近傍から他方の空気入口320の近傍まで延在している。この送気口330の幅は、例えば0.4mm~0.6mmである。この送気口330から排出された空気は、1つの面状の空気流10になり、より確実に装着者の顔を保護することができる。なお、
図4A、Bに示される例では、送気管310の強度を保つために2箇所に支持梁311が設けられている。
【0028】
また、本実施の形態では、
図2Dおよび
図4Dに示されるように、空気流形成装置300は、送気口330から排出された空気の流れを制御するための整流板340を有する。送気口330から排出された空気の流れを整流板340によって制御することで、空気の流れが方向づけられて、面状の空気流10をより確実に形成することができる。
図2A~Dおよび
図4A~Dに示される例では、整流板340は送気管310と一体であるが、整流板340は送気管310と別体であってもよい。
【0029】
図5は、別の送気管310の断面の例を示す。この断面は送気管310を流れ、送気口330から排出された空気がコアンダ効果によって、壁面にそって流れるようになっている。
【0030】
図6A~Cは、送気管310の別の例を示す。
図6Aは送気管310の底面図であり、
図6Bは正面図であり、
図6Cは側面図である。
【0031】
図6Aに示されるように、この送気管310は複数の送気口330を有する。具体的には、この送気管310では送気口330が左右に5個ずつあり、また、空気入口320が左右に1個ずつある。また、この送気管310では
図6Aに示されるように平面視したときの左右の中心に仕切り312があり、左右から流れてきた空気はそれぞれ左側、右側にのみ流れるようになっている。なお、この仕切りは送気管310内にあるので本来見えないが、
図6Aでは説明のために図示した。
【0032】
ここで送気口330の合計面積は、空気入口320の面積の面積と等しいことが好ましい。たとえば、
図6Cに示される空気入口320の直径が0.08mmであり、面積が0.524mm
2であるとする。ここで送気管310に5つの送気口330を配置すると考えたとき、1つの送気口330の面積は0.524mm
2/5=0.10048mm
2であることが好ましい。
【0033】
また、この送気管310は
図6Bに示されるように、正面視したときに、頭部装着具200である帽子などの鍔に沿うように中心において上に湾曲している。この湾曲した部分(中心に向かって斜め上に延びる部分)に配置された送気口330から排出される空気は送気管310に対してほぼ垂直になる。そうすると
図6B、Cに示されるように中心から左右対称に配置された送気口330からの2つの空気流10が中心でぶつかり、そこで下向きの空気流10が形成される。そしてこの下向きの空気流10が装着者を保護することができる。
【0034】
図7A、Bは送気管310の中に空気を通すためのチューブ20がある場合を示す。
図7A、Bに示されるように、送気管310はチューブ20を取り囲むように構成され、送気管310内にチューブ20が配置される。送気管310は、チューブ20の送気孔21から排出された空気を面方向に広がらせるための壁面371と、壁面371により広げられた空気の厚みを制御するための送気口330(スリット372)と、スリット372を通った面状(膜状)の空気の進行方向を制御するための整流板340とを有する。これらにより、チューブ20の送気孔21から排出される空気流10が線状の空気流であっても、面状の空気流10に変換することができる。このような送気管310およびチューブ20は、例えば頭部装着具(サンバイザー)の鍔に沿って配置されていればよい。
【0035】
図1に示されるように、本実施の形態に係る空気流形成装置300は、送気管310に空気を送るための送気部350を有していてもよい。送気部350は、直接、または管などを介して送気管310の空気入口320に接続される。
図1に示される例では、送気部350は、管を介して送気管310の空気入口320に接続されている。
【0036】
送気部350の構成は、送気管310に空気を送ることができれば特に制限されず、公知の空気ポンプなどから適宜選択されうる。静音性および小型化の観点からは、送気部350は、超音波振動を利用して空気を送ることができるマイクロブロア(村田製作所製、MZB1001TO2)が好ましい。
【0037】
送気部350の位置は、送気部350が送気管310に空気を送ることができる限り特に制限されない。送気部350は、例えば装着者の着衣に配置されてもよいし、頭部装着具200に配置されてもよい。
【0038】
また、
図1に示されるように、本実施の形態に係る空気流形成装置300は、空気流10を形成する空気を清浄にするための清浄部360を有していてもよい。
図1に示される例では、清浄部360は、送気部350と送気管310との間に配置されている。
【0039】
清浄部360の構成は、空気流10を形成する空気を清浄にすることができれば特に制限されない。たとえば、清浄部360は、空気中の異物を除去するためのフィルターを有している。フィルターは、例えば0.1μm以上、0.3μm以上、1μm以上、3μm以上、または5μm以上の粒子を捕集できるものが好ましい。フィルターが0.1μm以上の粒子を捕集する能力を有すればウイルスを除去することができ、3μm以上の粒子を捕集する能力を有すれば花粉を除去することができる。低圧力損失、高捕集性能を発揮させる観点からは、フィルターは、トレミクロン(登録商標、東レ・ファインケミカル製)であることが好ましい。また、清浄部360は、空気中の有害物質(例えばNOxなど)を分解するための触媒を含んでいてもよい。
【0040】
また、
図1に示されるように、本実施の形態に係る空気流形成装置300は、空気流10の形成を制御するための制御部400を有していてもよい。制御部400は、例えば送気部350を制御して空気流10の形成を制御する。
【0041】
制御部400は、センサーからの信号に基づいて送気部350を制御してもよい。センサーの例には、温度センサー、人感センサー、音声センサーなどが含まれる。
【0042】
たとえば気温が高いことを温度センサーが感知し、制御部400に信号を送り制御部400が送気部350を制御して空気流10を形成してもよい。このようにすることで装着者が涼しさを感じることができる。
【0043】
また、例えば人感センサーが、第三者が近づいてきたことを感知して信号を制御部400に送り、制御部400が送気部350を制御して空気流10を形成してもよい。このようにすることで、例えば、近づいてきた第三者が感染症に罹患している場合に装着者を感染から保護することができる。また、装着者が感染症に罹患している場合に近づいてきた第三者を感染から保護することができる。
【0044】
また、例えば音声センサーが、装着者または第三者が発話したことを感知して同様に空気流10を形成してもよい。このようにすることで上記と同様に装着者を感染から保護し、第三者を感染から保護することができる。
【0045】
また、制御部400は携帯情報端末など(スマートフォンなど)であってもよい。たとえば装着者のスマートフォンが、第三者のスマートフォンからのブルートゥース(登録商標)信号を受信して第三者が濃厚接触距離に近づいてきたことを検知し、空気流10を形成するようにしてもよい。このようにすることで上記と同様に装着者を感染から保護し、第三者を感染から保護することができる。この場合は、スマートフォン中のブルートゥース信号の受信部がセンサーとして機能する。
【0046】
(着脱)
空気流形成装置300は、頭部装着具200に着脱可能であってもよいし、頭部装着具200に備え付けられていてもよい(着脱不可能であってもよい)。
【0047】
空気流形成装置300が頭部装着具200に着脱可能である場合、着脱装置210が頭部装着具200または空気流形成装置300に予め備え付けられていてもよい。また、着脱装置210は、頭部装着具200および空気流形成装置300とは独立した部材であってもよい。着脱装置210は、例えば空気流形成装置300の送気管310を保持しつつ、帽子に取り付けられるようなクリップである。
【0048】
空気流形成装置300が着脱可能であれば、市販の頭部装着具200(例えば、帽子やサンバイザー、ヘルメットなど)に自由に空気流形成装置300を取り付けることができ、手軽にエアーマスク100を構築することができる。
【0049】
(エアーマスクによる空気流の形成)
エアーマスク100の空気流形成装置300によって形成される空気流10は、装着者の顔面の少なくとも一部を保護することができれば特に制限されない。
【0050】
空気流10は、エアーマスク100の装着者の顔を、例えばウイルスや細菌、飛沫、花粉、ホコリ、タバコの煙、悪臭、熱気、冷気などから保護することができる。また、空気流10は、エアーマスク100の装着者の顔面付近に気流を生じさせて局所的な空調空間を提供することができる。
【0051】
空気流10は、目的に応じて、例えば、少なくとも、装着者の目を覆う位置まで、鼻を覆う位置まで、口を覆う位置まで、または顎を覆う位置まで形成されればよい。
【0052】
また、空気流10の形態の例には、上述したように線状の空気流10、面状の空気流10などが含まれるが、空気流10の形態は、空気流10の隙間がなく、より確実に装着者を保護するという観点から面状であることが好ましい。また、空気流10は排出された清浄な空気が外部の空気を巻き込み、隙間のない空気流10が形成されることが好ましい。
【0053】
空気流10は、装着者の顔側と外界側とを隔てるエアーカーテンを形成するように配置されてもよい。また、空気流10は、その少なくとも一部が装着者の顔に直接吹き付けられるように配置されてもよい。このようにすることで、装着者が高温下では涼しさを感じることができ、装着者を熱中症などから守ることができる。
【0054】
空気流10の強さ、範囲、角度などは、エアーマスク100の装着者を何から保護するか、装着者にどのような局所的な空調空間を提供するかなどの目的に合わせて適宜調整されればよい。
【0055】
また、空気流10の形成は、上述したようにセンサーが外部環境を感知して制御部に信号を送ることで自動的に制御されてもよいし、装着者の判断により装着者が手動で行ってもよい。
【0056】
また、空気流10の強さ(風量、風速)は求められる換気能力に基づいて制御されてもよい。
図8は、エアーマスク100の換気能力について説明するための図である。
図8において示されている直方体はエアーマスク100によって形成されると考えられる空気流10の容積を表している。この直方体が仮に横40cm、高さ25cm、幅0.5cmとすると容積は50cm
3である。そして送気部350によって供給される空気の量が1000cm
3/minであるとすると換気能力は、1000cm
3/min÷50cm
3=20である。すなわち、1分間に20回換気されていることになる。
【0057】
(効果)
従来のマスクやフェイスガードなどは、常時装着者を物理的な部材で覆い、装着者が閉塞感を感じることがある。これに対してエアーマスクは上記のように装着しても必要なときに必要な量だけ空気流10を形成して装着者の顔を保護することができる。これにより装着者は顔の全面を覆うことにより視界が悪くなるというストレスを感じることなく、より開放感を感じることができる。また、対面者からは、口元がはっきり目視できることにより、聴覚障害者、被介護者へのコミュニケーション改善にも効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の空気流形成装置を有するエアーマスクは、例えば、医療や介護、工場、建築などの現場での作業、スポーツやアウトドアのアクティビティ、接客業務、学校現場、オフィスワーク、飲食、日常生活などの様々な場面において有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 空気流
20 チューブ
21 送気孔
100 エアーマスク
200 頭部装着具
210 着脱装置
300 空気流形成装置
310 送気管
311 支持梁
320 空気入口
330 送気口
340 整流板
350 送気部
360 清浄部
371 壁面
372 スリット
400 制御部