(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073729
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】氷菓子、及び氷菓子の融点を上昇させる方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A23G9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183897
(22)【出願日】2020-11-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】松川 真吾
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GB21
4B014GG07
4B014GG14
4B014GP12
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、氷菓子の保存及び輸送において、エネルギーコストを低減することのできる氷菓子の保存方法を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を含む、氷菓子、又は氷菓子において、0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を形成することを特徴とする、氷菓子の融点を上昇させる方法によって解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を含む、氷菓子。
【請求項2】
界面活性剤を実質的に含まない、請求項1に記載の氷菓子。
【請求項3】
前記油脂の融点が-10℃以下である、請求項1又は2に記載の氷菓子。
【請求項4】
氷菓子において、0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を形成することを特徴とする、氷菓子の融点を上昇させる方法。
【請求項5】
氷菓子に界面活性剤を実質的に添加しない、請求項4に記載の氷菓子の融点を上昇させる方法。
【請求項6】
前記油脂の融点が-10℃以下である、請求項4又は5に記載の氷菓子の融点を上昇させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷菓子、及び氷菓子の融点を上昇させる方法に関する。本発明によれば、氷菓子の融点を上昇させることができる。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム及びシャーベット等の氷菓子の保存及び輸送には、融解を防ぐために、低温状態を維持する必要がある。
また、氷菓子中には氷結晶が形成され、この氷結晶が細かいと氷菓子の口当たりがよくなることが知られている。しかし、この微細な氷結晶が粗大化すると滑らかさが失われ、口当たりが悪くなる。この氷結晶の粗大化を防ぐためには、-25℃以下での温度管理が必要である。
しかしながら、氷菓子の低温での保存及び輸送には、多くのエネルギーコストがかかることから、改善が求められていた。
【0003】
氷菓子の低温での保存に関して、溶けにくい氷菓子の開発が行われている。例えば、特許文献2には、ラウリン酸の含有量、及び固体脂含量を調整することによって、濃厚感に優れ、そして溶けにくい冷凍菓子用油脂組成物が開示されている。また、引用文献2には、植物性タンパク質を加水分解して得られるタンパク分解物を氷菓子原料として製造された氷菓子が、常温での融解を抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-28238号公報
【特許文献2】特開2020-80717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの氷菓子は、保存時及び輸送時に溶けにくいものであるかが不明であった。
本発明の目的は、氷菓子の保存及び輸送において、エネルギーコストを低減することのできる氷菓子の保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、保存及び輸送において、エネルギーコストを低減することのできる氷菓子の保存方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、氷菓子に含まれる油脂の粒子径を細かくすることによって、氷菓子の融点が上昇できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を含む、氷菓子、
[2]界面活性剤を実質的に含まない、[1]に記載の氷菓子、
[3]前記油脂の融点が-10℃以下である、[1]又は[2]に記載の氷菓子、
[4]氷菓子において、0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を形成することを特徴とする、氷菓子の融点を上昇させる方法、
[5]氷菓子に界面活性剤を実質的に添加しない、[4]に記載の氷菓子の融点を上昇させる方法、及び
[6]前記油脂の融点が-10℃以下である、[4]又は[5]に記載の氷菓子の融点を上昇させる方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の氷菓子及び融点の上昇方法によれば、氷菓子の融点を上昇させることができる。また、氷菓子の融点が上昇することによって、氷菓子の保存及び輸送時の温度を上昇させ、エネルギーコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】比較例1の試料及び実施例3の試料の融解温度を測定した写真である。
【
図2】比較例1の試料及び実施例3の試料の示差走査熱量測定のチャートである。
【
図3】製造例2のナノ油滴の光学顕微鏡写真である。
【
図4】製造例3のナノエマルジョンの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]氷菓子
本発明の氷菓子は、0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を含む。
【0010】
《0℃以下の融点を有する油脂》
本発明の氷菓子に含まれる油脂は、0℃以下の融点を有する(以下、便宜的に「低融点油脂」と称することがある)。油脂の融点は、0℃以下である限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは-5℃以下であり、より好ましくは-10℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下であり、最も好ましくは-20℃以下である。低融点油脂の融点の下限は、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、非常に低い融点であっても、本発明の効果を得ることができる。低融点油脂の融点が、前記範囲であることによって、氷菓子において、油脂が後述のナノ油滴を形成することができる。
【0011】
前記低融点油脂は、本発明の氷菓子において、平均粒子径100~5000nmの油滴(以下、便宜的にナノ油滴と称することがある)を形成している。本発明の氷菓子は、平均粒子径100~5000nmの油滴を含むことによって、氷菓子の融点を上昇させることができる。油滴の平均粒子径は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、下限は100nmであり、好ましくは120nmであり、より好ましくは160nmであり、更に好ましくは180nmであり、更に好ましくは200nmである。油滴の平均粒子径の上限は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、5000nm以下であり、好ましくは3000nm以下であり、より好ましくは2000nm以下であり、更に好ましくは1000nm以下であり更に好ましくは800nm以下であり、更に好ましくは600nm以下であり、更に好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは400nm以下である。前記下限と上限とは、適宜組み合わせることができる。
【0012】
前記ナノ油滴の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば電子顕微鏡観察法、光学顕微鏡観察法、動的光散乱法、又は光子相関法などを用いることができるが、電子顕微鏡観察法、又は動的光散乱法が好ましい。
電子顕微鏡観察に基づく平均粒子径は、例えば以下のように測定することができる。透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、日本電子(株)製の透過型電子顕微鏡 JEM2000FX(200kV))を用いて写真を撮影し、この写真を、解析ソフトを用いて解析する。平均粒子径は2000個程度のナノ油滴の粒子径を解析し、小粒径側からの積算粒度分布(累積体積基準)が50%となる粒径を、解析ソフトを用いて算出し、平均粒子径(D50)を求めることができる。
光学顕微鏡観察に基づく平均粒子径の測定も、倍率が異なることを除いては、同様に実施することができる。なお光学顕微鏡観察で測定できる粒子径は、500~5000nm程度である。
【0013】
本発明の氷菓子に用いられる低融点油脂は、0℃以下の融点を有する限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、スクアレン(融点-75℃)、スクアラン(融点-38℃)、なたね油、ごま油、パーム核油、ヤシ油、鯨ろう、桂皮油、月桂樹油、ニクヅク油、テンニンカ油、カラシナ油、トウモロコシ油、綿実油、大豆油、月見草油、アマニ油、魚油、又はキャノーラ油が挙げられるが、不飽和度が高い脂肪酸、アルキル鎖が短い脂肪酸を含む油脂が好ましい。前記油脂は、限定されるものではないが、カルボキシル基を有さないものが好ましい。
具体的な油脂成分としては、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミトオレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、パクセン酸(C18:1)、エルカ酸(C22:1)、リノール酸(C18:2)、γ-リノレン酸(C18:3)、α-リノレン酸(C18:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)などの脂肪酸を含むトリグリセリドが挙げられる。
【0014】
前記低融点油脂の氷菓子中の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%であり、好ましくは0.2重量%であり、より好ましくは0.3重量%であり、更に好ましくは0.4重量%である。低融点油脂の含有量の上限も、限定されるものではないが、20重量%であり、好ましくは15重量%であり、より好ましくは10重量%であり、更に好ましくは8重量%であり、更に好ましくは6重量%であり、更に好ましくは4重量%である。前記範囲であることにより、氷菓子の融点を上昇させることができる。
【0015】
《氷菓子》
本発明の氷菓子としては、限定されるものではないが、例えばアイスクリーム(ソフトクリームを含む)、アイスミルク、ラクトアイス、又はシャーベットが挙げられる。「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」においては、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)は、氷菓子には含まれないが、本明細書においては、氷菓子は、アイスクリーム類を含む。
なお、アイスクリーム類のうち、一般に乳固形分が15.0質量%以上のものをアイスクリーム、前記乳固形分が10.0質量%以上15.0質量%未満のものをアイスミルク、前記乳固形分が3.0質量%以上10.0質量%未満のものをラクトアイスと称する。
【0016】
アイスクリーム類は、一般的に乳成分、糖分、及び油脂を含み、更に場合により安定剤、香料、及び乳化剤などを含む。乳成分には、乳脂肪分及び無脂乳固形分が含まれる。乳脂肪分としては、パルミチン酸、ミリスチン酸、、ステアリン酸、ペンタデカン酸、及びオレイン酸などの油脂が含まれるが、これらの油脂は融点が0℃を超えているため、本発明における「0℃以下の融点を有する油脂」には含まれない。通常、アイスクリーム類においては、乳脂肪は、10μm程度の粒子径の油滴を形成し、その周囲を界面活性剤(乳化剤)が取り囲むことによって乳化している。
【0017】
シャーベットは、一般的に、果汁、糖分(砂糖など)、及び香料を含み、更に場合により牛乳、卵白、及び安定剤(例えば、ゼラチン)を含む。
【0018】
(糖分)
本発明の氷菓子に含まれる糖分は、特に限定されるものではないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等のニ糖類、プルラン、アミノロース、アミロペプチンなどの易水溶性多糖類、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、アガペエキス、蜂蜜等の混合単糖、ケーンシュガー、又はメイプルシロップが挙げられる。
【0019】
本発明の氷菓子は、オリゴ糖、又は糖アルコールを含んでもよい。オリゴ糖としては、三糖類としてラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノースが挙げられ、四糖類としてスタキオ-スが挙げられる。糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、又はマンニトールが挙げられる。
前記糖分、オリゴ糖、又は糖アルコールの含有量は、例えば1~65%であり、好ましくは5~40%であり、より好ましくは10~20%である。
【0020】
本発明の氷菓子は、人工甘味料を含んでもよい。人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルファム-K、L-アスパルチル-L-フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料、L-アスパルチル-D-アラニンアミド、L-アスパルチル-D-セリンアミド、L-アスパルチル-ヒドロキシメチルアルカンアミド甘味料、L-アスパルチル-1-ヒドロキシエチルアルカンアミド甘味料等の高甘味度甘味料、ソーマチン、グリチルリチン、合成アルコキシ芳香族化合物等が挙げられる。
【0021】
(油脂)
本発明の氷菓子は、前記低融点油脂の他に氷菓子に通常使用される油脂を含んでもよい。例えば、植物性油脂が使用され、具体的な植物油としては、ヤシ硬化油、パーム油、綿実油などが挙げられる。
【0022】
(安定剤)
本発明の氷菓子は、安定剤を含んでもよい。安定剤は、輸送や貯蔵などの途中で温度が変動することによって、氷の結晶が大きくなり、硬い食感になることがある。これを防ぐために安定剤が使用することがある。安定剤としては、限定されるものではないが、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、又はアラビアガムなどが挙げられる。
【0023】
(香料)
本発明の氷菓子に用いる香料は、本願発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば,バニラフ、チョコレート、ストロベリー、ココア、フルーツ、抹茶、又はコーヒーなどのフレーバーが挙げられる。
【0024】
(界面活性剤:乳化剤)
本発明の氷菓子に用いる界面活性剤(乳化剤)としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。しかしながら、界面活性剤を含み、エマルジョンとなっている場合、融点が低下することがある。従って、本発明の氷菓子は、実質的に界面活性剤(乳化剤)を含まないものが好ましい。しかしながら、例えば牛乳には、界面活性作用を有するカゼインナトリウムが含まれているが、氷菓子の原料に含まれている界面活性作用を有する成分を排除するものではない。
また、本明細書において、「実質的に界面活性剤を含まない」とは、界面活性剤の添加によって、ナノ油滴の効果(融点の上昇)が完全に消失しない範囲で界面活性剤を含んでもよいことを意味する。換言すれば、ナノ油滴を含むことによって、融点が上昇する限りにおいて、界面活性剤を含んでもよい。具体的な界面活性剤の含有量としてしては、1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以下である。
【0025】
(果汁)
本発明の氷菓子に用いる果汁としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ、マンゴー、又はパイナップルなどの果汁が挙げられる。
【0026】
[2]氷菓子の融点上昇方法
本発明の氷菓子の融点上昇方法においては、氷菓子において、0℃以下の融点を有する油脂の、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を形成する。
【0027】
本発明の氷菓子の融点上昇方法における、氷菓子は、前記「[1]氷菓子」の項に記載の氷菓子であり、「0℃以下の融点を有する油脂」、及び「糖分」等は同じものを使用することができる。
本発明の氷菓子の融点上昇方法においては、好ましくは、実質的に界面活性剤を添加しない。
【0028】
本発明に融点上昇方法において、100~5000nmの平均粒子径を有する油滴を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば高圧ホモジナイザー、又はハイシアーミキサーを用いて形成することができる。
高圧ホモジナイザーは、試料に高い圧力を印加して試料を微粒化するものであり、ノズル式高圧ホモジナイザー又はバルブ式高圧ホモジナイザーが挙げられる。ノズル式高圧ホモジナイザーは、高圧下において、油脂を細孔(例えば、ノズル)に通過させることにより微粒化する方法である。一方、バルブ式高圧ホモジナイザーは、油脂をホモバルブに通過させることによりを微粒化する方法である。
ハイシアーミキサーは特殊な構造の攪拌翼と高出力のモータにより試料に高せん断応力を印加することで油脂を微粒化する方法である。
市販されている高圧式ホモジナイザーとしては、三丸機械工業のバルブ式高圧ホモジナイザー、シルバーソン社の高圧ホモジナイザー、エムエステー社の超高圧式高圧ホモジナイザー(LAB1000/2000、ラニエタイプ、ゴーリンタイプ)、株式会社常光の超高圧ホモジナイザー(NAGS20)、が挙げられる。
ハイシアーミキサーとしてはシルバーソン社のハイシアーミキサーがある。
高圧ホモジナイザーまたはハイシアーミキサーにより、前記低融点油脂から、100~5000nmの平均粒子径の油滴を形成することができる。
【0029】
本発明の氷菓子の融点上昇方法においては、前記低融点油脂を含む氷菓子原料を、高圧ホモジナイザーに通過させ微細な油滴を作製する。氷菓子原料中の低融点油脂の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%であり、好ましくは0.2重量%であり、より好ましくは0.3重量%であり、更に好ましくは0.4重量%である。低融点油脂の含有量の上限も、限定されるものではないが、20重量%であり、好ましくは15重量%であり、より好ましくは10重量%であり、更に好ましくは8重量%であり、更に好ましくは6重量%であり、更に好ましくは4重量%である。
【0030】
《作用》
本発明において、ナノ油滴が氷菓子の融点を上昇させるメカニズムは、明確に改正されているわけではないが、以下のように推定される。しかしながら、本発明は以下の推定によって限定されるものではない。
本発明の氷菓子においては、氷菓子の中の微細な氷結晶の周囲をナノ油滴が覆っていると考えられる。微細な氷結晶がナノ油滴に覆われていることによって、融解と凍結の繰り返しなどによる氷結晶の粗大化を防いでいるものと推定される。従って、氷結晶より融点が低いナノ油滴であれば、本発明の効果を得ることができると考えられる。また、ナノ油滴の平均粒子径も、微細な氷結晶を覆うことが可能であればよいため、前記の範囲の平均粒子径の油滴を用いることができると推定される。
なお、氷菓子に界面活性剤が含まれている場合、ナノ油滴の周囲に界面活性剤が付着し、ナノ油滴が、直接氷菓子に付着することを阻害し、融点が低下するものと考えられる。従って、本発明の氷菓子は、実質的に界面活性剤が含まれないことが好ましい。
【実施例0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
《製造例1》
本製造例では30%(w/w)のショ糖溶液を製造した。ショ糖3gと7gの水に溶解して10gして30%(w/w)のショ糖溶液を得た。得らえた液を、ショ糖液aと称する。
【0033】
《製造例2》
本製造例では、スクアレン2%(w/w)のナノ油滴を含む30%(w/w)のショ糖溶液を製造した。ショ糖1.5gを3.5gの水に溶解して全体を5gとし、更にスクアレン0.1gを添加した。得られた混合物5.1gを、ボルテックスミキサー(FINEPCR社製)にて予備撹拌して均一な分散液とした後に、高圧ホモジナイザーLV1(microfluidics社製)に圧力30,000PSIで分散処理を6回行い、試料とした。得られたナノ油滴の粒径は顕微鏡観察により約300nmであった(
図3)。得られた液を、ショ糖液bと称する。
【0034】
《製造例3》
本製造例では、スクアレン2%(w/w)のエマルジョンを含む30%(w/w)のショ糖溶液を製造した。ショ糖1.5gを3.5gの水に溶解して全体を5gとし、更にスクアレン0.1g及びTween60を0.4192g添加した。得られた混合物5.5192gを、ボルテックスミキサー(FINEPCR社製)にて予備撹拌して均一な分散液とした後に、高圧ホモジナイザーLV1(microfluidics社製)に圧力30,000PSIで分散処理を6回行い、試料とした。得られたエマルジョンの粒径は顕微鏡観察により約300nmであった(
図4)。得られた液を、ショ糖液cと称する。
【0035】
《比較例1》
本比較例では、製造例1で得られたショ糖液a(2mL)をボトルに入れた。
【0036】
《実施例1》
本実施例では、製造例1で得られたショ糖液a(1.5mL)及び製造例2で得られたショ糖液b(0.5mL)をボトルに入れた。
【0037】
《実施例2》
本実施例では、製造例1で得られたショ糖液a(1mL)及び製造例2で得られたショ糖液b(1mL)をボトルに入れた。
【0038】
《実施例3》
本実施例では、製造例1で得られたショ糖液a(2mL)をボトルに入れた。
【0039】
《比較例2》
本比較例では、製造例1で得られたショ糖液a(1mL)及び製造例3で得られたショ糖液c(1mL)をボトルに入れた。
【0040】
《比較例3》
本比較例では、製造例3で得られたショ糖液c(2mL)をボトルに入れた。
【0041】
以下の表1に実施例1~3及び比較例1~3のショ糖、ナノ油滴、及びエマルジョンの組成を示す。
【表1】
【0042】
《融解温度の測定1》
比較例1のボトル試料及び実施例3のボトル試料を-20℃に1週間保存後、0.4℃/minで昇温し、融解温度を測定した。
図1に示すように、比較例1の試料は、-2.8℃でほぼ融解し、-2.0℃で完全に融解した。これに対して、実施例3の試料は、-0.6℃で融解が始まった。
従って、ナノ油滴を含むことによって、試料の融解温度が上昇した。
【0043】
《示差走査熱量測定》
比較例1の試料及び実施例3の試料について、示差走査熱量の測定を行った。示差走査熱量計(Setaram社製)を用い、比較例1の試料及び実施例3の試料を-30℃に3次案保持し、0.5℃/min昇温することによって、測定した。
図2に示すように、比較例1の試料の融解温度は-2.026℃であり、実施例3の試料の融解温度は-0.989℃であった。従って、ナノ油滴を含むことによって、試料の融解温度が上昇した。
【0044】
《融解温度の測定2》
本測定においては、比較例1及び実施例3の試料について、-20℃に1週間保存後、0.5℃/minで昇温し、融解温度を測定した。
比較例1の試料は、1.3℃で完全に融解した。これに対して、実施例3の試料は、2.0~2.4℃で完全に融解した。
【0045】
《融解温度の測定3》
本測定においては、比較例1~3、実施例1及び3の試料について、-20℃に1週間保存後、0.5℃/minで昇温し、融解温度を測定した。
比較例1~3、実施例1及び3の試料は、下記の順に溶解した。
比較例2及び3<比較例1<実施例1<実施例3
すなわち、ナノ油滴を2重量%含む実施例3が最も融点が高かった。また、エマルジョンを含む比較例2及び3が、最も融点が低かった。