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特開2022-74125電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法
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  • 特開-電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法 図1
  • 特開-電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法 図2
  • 特開-電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074125
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20220510BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220510BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220510BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/40
H01M4/66 A
H01M4/70 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177764
(22)【出願日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143878
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 恩▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 復圭
(72)【発明者】
【氏名】柳 永均
(72)【発明者】
【氏名】尹 在久
(72)【発明者】
【氏名】李 柱郁
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM11
5H029BJ12
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA01
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA08
5H050FA03
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1面と第2面とを有し、第1面は、第1部分、第2部分、及び第1部分と第2部分との間の中間部を含み、中間部を中心に、第1部分と第2部分とが互いに逆方向に外部に向かうように配向され、第2面は内部に向かうように折れた構造を有する集電体と、第1面の第1部分に形成された正極活物質層と、第1面の第2部分に形成された負極活物質層と、集電体の折れた構造の内部に配置される圧縮パッドと、を含む電極構造体である。該電極構造体は、充放電時に負極の体積変化を吸収し、負極層を保護することができるので、電池の耐久性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有し、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含み、前記中間部を中心に、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向に外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうように折れた構造を有する集電体と、
前記第1面の第1部分に形成された正極活物質層と、
前記第1面の第2部分に形成された負極活物質層と、
前記集電体の折れた構造の内部に配置される圧縮パッドと、を含む、電極構造体。
【請求項2】
前記第1部分の中間部及び前記第2面は、無コート部である、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記圧縮パッドは、弾性材料からなる、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記弾性材料は、ポリウレタン、天然ゴム、スパンデックス、ブチルゴム(IIR)、フルオロエラストマー、エラストマー、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン、エラスチン、ゴムエピクロロヒドリン、ナイロン、テルペン、イソプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ハロゲン化ブチルゴム、ネオプレン及びそれらの共重合体からなる群から選択された1種以上を含む、請求項3に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記圧縮パッドは、変形率が30ないし60%であるウレタン系ポリマーシートで形成された、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項6】
前記圧縮パッドは、圧力を加える前の最初の厚みの40ないし90%厚みを有するように加圧されたものである、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項7】
前記圧縮パッドの厚みは、全固体二次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚みの200ないし500%範囲である、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項8】
前記圧縮パッドは、50μmないし300μmの厚みを有する、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項9】
前記集電体は、ステンレススチール、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの合金及びそれらのクラッドからなる群から選択される1種以上からなる、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項10】
前記集電体と負極活物質層との間に配置される第2負極活物質層をさらに含み、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項11】
請求項1に記載の電極構造体と、前記正極活物質層上に配置された固体電解質層と、を含む単位セルを含み、
前記単位セルが複数個積層された、バイポーラ全固体二次電池。
【請求項12】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質であり、前記硫化物系固体電解質が、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうちの1つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaまたはInのうちの1つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である、請求項11に記載のバイポーラ全固体二次電池。
【請求項13】
前記単位セルは、2個ないし12個積層された、請求項11に記載のバイポーラ全固体二次電池。
【請求項14】
積層された前記単位セルの両末端に存在する電解質層と負極活物質層の上に、それぞれ第1エンドプレート及び第2エンドプレートをさらに含み、
一方の末端に存在する電解質層と前記第1エンドプレートとの間に、第2負極活物質層、第2集電体及び圧縮パッドを含む第1ハーフセルをさらに含み、
他方の末端に存在する負極活物質層と前記第2エンドプレートとの間に、第2電解質層、第2正極活物質層及び第3集電体を含む第2ハーフセルをさらに含む、請求項11に記載のバイポーラ全固体二次電池。
【請求項15】
第1面と第2面とを有する集電体であって、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含む、集電体を準備するステップと、
前記第1部分に正極活物質層をコーティングするステップと、
前記第2部分に負極活物質層をコーティングするステップと、
前記中間部を折って、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向の外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうようにするステップと、
前記集電体の折れた内部に圧縮パッドを配置するステップと、を含む、電極構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業上の要求により、エネルギー密度と安全性が高い電池の開発が活発に行われている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器の分野だけでなく、自動車分野においても実用化されている。自動車分野においては、生命と係わるため、特に安全が重要視される。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含む電解液が利用されているため、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。それに対し、電解液の代わりに、固体電解質を利用した全固体二次電池が提案されている。
【0004】
該全固体二次電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発の発生可能性を大きく減らすことができる。したがって、そのような全固体二次電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べて、大きく安全性を高めることができる。
【0005】
また、該全固体二次電池の特徴のうちの1つは、一般的なリチウムイオン電池と異なり、バイポーラ(Bi-polar)構造を容易に構築することができることであるので、部品数を少なくし、大電流が流れやすく、高電圧を有した、高出力及び高エネルギー密度を有したセルの開発ができるという長所がある。しかし、電極を直列連結により配置するバイポーラ構造では、該全固体二次電池の負極に使用されるリチウム析出(Li deposition)反応による体積変化を吸収することができる構造を設計することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、全固体二次電池において、負極の体積変化を吸収することができる電極構造体を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記電極構造体を含むバイポーラ全固体二次電池を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記電極構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によって、
第1面と第2面とを有し、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含み、前記中間部を中心に、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向に外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうように折れた構造を有する集電体と、
前記第1面の第1部分に形成された正極活物質層と、
前記第1面の第2部分に形成された負極活物質層と、
前記集電体の折れた構造の内部に配置される圧縮パッドと、を含む電極構造体が提供される。
【0010】
他の側面によって、
前記電極構造体と、前記正極活物質層上に配置された固体電解質層と、を含む単位セルを含み、前記単位セルが複数個積層されたバイポーラ全固体二次電池が提供される。
【0011】
さらに他の側面によって、
第1面と第2面とを有する集電体であって、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含む、集電体を準備するステップと、
前記第1部分に正極活物質層をコーティングするステップと、
前記第2部分に負極活物質層をコーティングするステップと、
前記中間部を折って、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向の外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうようにするステップと、
前記集電体の折れた内部に圧縮パッドを配置するステップと、を含む前記電極構造体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
一側面によれば、電極構造体は、充放電時に負極の体積変化を吸収し、負極層を保護することができるので、電池の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な一具現例による電極構造体の断面模式図である。
図2】例示的な一具現例による電極構造体の製造過程を示す模式図である。
図3】例示的な一具現例によるバイポーラ全固体二次電池の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、色々な実施形態を有することができるが、特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
【0015】
以下で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0016】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大したり縮小したりして示した。明細書全体にわたって、類似した部分については、同じ図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるというとき、それは、他の部分の真上にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0017】
以下、例示的な具現例によるバイポーラスタック単位セル構造体、及びそれを含む全固体二次電池について、さらに詳細に説明する。
【0018】
従来、全固体二次電池の負極に使用されるリチウム析出反応による体積変化を吸収することができる構造をバイポーラ構造で設計することは困難であり、負極層の緩衝構造がなければ、不均一なリチウム電着によりセル内部での厚み偏差がひどくなり、部分的な充放電を起こし、電池性能が低下し、短絡の危険をもたらしていた。
【0019】
既存の全固体二次電池では、バイポーラ構造内にスタックしたセルを入れ、セルの容量を増加させる構造が提案されたが、体積変化を吸収するための構造は提案されていなかった。
【0020】
それにより、本発明者らは、同一集電体を使用するバイポーラセルにおいて前記の問題点を解決するために、同一集電体の内部に緩衝構造を有することができる電極構造体、それを含むバイポーラ全固体二次電池、及び前記電極構造体の製造方法を提供しようとする。
【0021】
[電極構造体]
一具現例による電極構造体は、
第1面と第2面とを有し、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含み、前記中間部を中心に、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向に外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうように折れた構造を有する集電体と、
前記第1面の第1部分に形成された正極活物質層と、
前記第1面の第2部分に形成された負極活物質層と、
前記集電体の折れた構造の内部に配置される圧縮パッドと、を含む。
【0022】
一具現例の電極構造体では、折れている集電体の内部に圧縮パッドが設置され、充放電時に負極層の体積変化を吸収することができる。集電体のそのような緩衝構造を通じて、充放電時に体積変化に対して負極層を保護することができるので、バイポーラ全固体二次電池の耐久性を向上させることができる。
【0023】
前記電極構造体は、例えば、下記のような方法により製造可能である。
【0024】
一具現例による電極構造体の製造方法は、
第1面と第2面とを有する集電体であって、前記第1面は、第1部分、第2部分、及び前記第1部分と前記第2部分との間の中間部を含む、集電体を準備するステップと、
前記第1部分に正極活物質層をコーティングするステップと、
前記第2部分に負極活物質層をコーティングするステップと、
前記中間部を折って、前記第1部分と前記第2部分とが互いに逆方向の外部に向かうように配向され、前記第2面は内部に向かうようにするステップと、
前記集電体の折れた内部に圧縮パッドを配置するステップと、を含む。
【0025】
図1は、例示的な一具現例による電極構造体の断面模式図である。図1に示すように、電極構造体1は、折れた構造の集電体10、正極活物質層20、負極活物質層30、及び集電体10の折れている内部に配置された圧縮パッド40を含む。
【0026】
図2は、例示的な一具現例による電極構造体の製造過程を示す模式図である。図2に示すように、集電体10は、第1面11と第2面12との両面を有し、第1面11は、第1部分11a、第2部分11b、及び第1部分11aと第2部分11bとを区切る中間部11cを含む。
【0027】
第1面11の第1部分11a上には、正極活物質層20がコーティングされ、第2部分11bには、負極活物質層30がコーティングされる。中間部11cは、活物質層がコーティングされない無コート部である。一方、第2面12は、全面が無コート部であり得る。
【0028】
中間部11cを中心に、集電体10を折り曲げれば、正極活物質層20がコーティングされた第1部分11aと、負極活物質層30がコーティングされた第2部分11bとが互いに逆方向に外部に向かうように配向され、第2面12は内部に向かう折れた構造の集電体10が得られる。
【0029】
そのような集電体10の折れた構造の内部に圧縮パッド40を配置することにより、緩衝構造を有する電極構造体1を形成することができる。折れている集電体10の内部に圧縮パッド40を設置することにより、充放電時に負極活物質層30の体積変化を吸収することができる。
【0030】
前記電極構造体1の正極活物質層20上に固体電解質層50を配置させることにより、一具現例による全固体二次電池を構成する単位セル2を形成することができる。
【0031】
以下、各構成要素について説明する。
【0032】
[集電体]
正極及び負極の両方として作用すべきバイポーラ電池の集電体10としては、耐電圧範囲が広いものを使用することができる。集電体10の耐電圧範囲は、例えば、-1ないし5.5V、具体的には、例えば、-0.5ないし5.5Vでもある。前記範囲において、バイポーラ電池の集電体10として適宜使用することができる。
【0033】
集電体10は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料で構成される。集電体10を構成する材料は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの合金及びそれらのクラッドなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バイポーラ電池の電極集電体として使用するものであるならば、いずれも可能である。集電体10は、上述の金属のうちの1種で構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金、または被覆材料でも構成される。
【0034】
一実施形態によれば、集電体10は、ステンレススチールからなってもよい。ステンレススチールは、耐電圧範囲が-0.5ないし5.5Vと広く、バイポーラ電池の集電体10として好適に使用可能である。一実施形態によれば、広い範囲で電位に耐えることができる、Al-Cuクラッドのような合金も、集電体10として好適に使用可能である。
【0035】
集電体10は、例えば、板状または箔状である。
【0036】
電極構造体1は、例えば、集電体10の第1面11の第2部分11b上において、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜をさらに含むことが可能である。該薄膜は、集電体10と負極活物質層30との間に配置される。該薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。該薄膜は、それら金属のうちの1つで構成されるか、あるいは複数種の金属の合金で構成される。該薄膜が集電体10と負極活物質層30との間に配置されることにより、例えば、前記薄膜と負極活物質層30との間に析出される第2負極活物質層の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池3のサイクル特性がさらに向上する。
【0037】
該薄膜の厚みは、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmである。該薄膜の厚みが1nm未満になる場合、該薄膜による機能が発揮されがたい。該薄膜の厚みが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを吸蔵し、負極におけるリチウムの析出量が減少し、全固体二次電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池3のサイクル特性が低下する。該薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、第1及び第2負極集電体10、10’上に配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において薄膜を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【0038】
[圧縮パッド]
集電体10の折れた構造の内部に設置された圧縮パッド40は、弾性材料からなるシート状であってもよい。
【0039】
該弾性材料としては、例えば、ポリウレタン、天然ゴム、スパンデックス、ブチルゴム(Isobutylene Isoprene Rubber: IIR)、フルオロエラストマー、エラストマー、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン、エラスチン、ゴムエピクロロヒドリン、ナイロン、テルペン、イソプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ハロゲン化ブチルゴム、ネオプレン及びそれらの共重合体からなる群から選択された1種以上を含むが、それらに限定されるものではなく、弾性を有する材質であるならば、制限なく使用可能である。一実施形態によれば、圧縮パッド40は、ウレタン系物質、例えば、ポリウレタンからなってもよい。
【0040】
一実施形態によれば、圧縮パッド40は、変形率が30ないし60%であるウレタン系ポリマーシートで形成されたものであってもよい。
【0041】
圧縮パッド40は、設置時の厚みが圧力を加える前の最初の厚みの40ないし90%厚みを有するように加圧されたものであってもよい。具体的には、例えば、圧縮パッド40の設置時の厚みは、圧力を加える前の最初の厚みの50ないし85%厚み、より具体的には、60ないし80%厚み、または65ないし75%厚みを有するように加圧されたものであってもよい。前記範囲において、負極の体積変化を効果的に吸収するので、全固体二次電池の円滑な充放電が可能である。
【0042】
圧縮パッド40の厚みは、全固体二次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚みの200ないし500%範囲でもある。全固体二次電池において、負極のリチウム析出層の厚みは、正極の電流密度に比例して決定されるが、すなわち、正極から負極に移動するリチウム量によって、負極のリチウム析出層の厚みが決定され、それにより、負極の体積変化が起こる。よって、そのような負極の体積変化を吸収できるように、圧縮パッドの厚みを決定することができる。したがって、圧縮パッド40の厚みを、全固体二次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚みの200ないし500%範囲に設定することにより、負極の体積変化を効果的に吸収することができる。例えば、圧縮パッド40の厚みは、全固体二次電池の充電時に形成される負極のリチウム析出層の厚みの250ないし450%範囲、具体的には、例えば、300ないし400%範囲である。
【0043】
圧縮パッド40の厚みは、例えば、50μmないし300μm範囲で設定可能であり、例えば、100μmないし150μm、200μmないし300μm、または50μmないし100μmのように、場合によって選択的に設定可能である。
【0044】
そのように、集電体10の折れた構造の内部に圧縮パッド40を設置することにより、負極に使用されるリチウム析出反応による体積変化を吸収することができるので、負極を保護することができ、それによってバイポーラ全固体二次電池の耐久性を向上させることができる。
【0045】
[正極層]
図1に示すように、電極構造体1は、集電体10の第1面11のうち第1部分11a上に、正極活物質層20が配置される。
【0046】
[正極活物質層:正極活物質]
正極活物質層20は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極活物質層20に含まれた固体電解質は、電解質層50に含まれる固体電解質と類似していても、異なっていてもよい。該固体電解質についての詳細な内容は、電解質層50部分を参照する。
【0047】
該正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)することができる正極活物質である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物、リチウムリン酸鉄酸化物などのリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄または酸化バナジウムなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において正極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。該正極活物質は、それぞれ単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0048】
該リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-b(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5及び0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記化学式で、0≦b≦0.5及び0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5及び0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5及び0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2); LiFePOの化学式のうちのいずれか1つで表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mnまたはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはそれらの組み合わせである。そのような化合物の表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、上述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素の酸化物・水酸化物、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に広く理解される内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0049】
該正極活物質は、例えば、上述のリチウム遷移金属酸化物のうち、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが交互に規則的に配列され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の1種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を表し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(face centered cubic lattice: fcc)が、互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を表す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)などの三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池3のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0050】
該正極活物質は、上述のように、コーティング層により覆われていてもよい。該コーティング層は、全固体二次電池の正極活物質のコーティング層として公知されているものであるならば、いずれでもよい。該コーティング層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などである。
【0051】
該正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMなどの三元系リチウム遷移金属酸化物であり、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池3の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出の低減が可能である。結果として、全固体二次電池3の充電状態におけるサイクル特性が向上する。
【0052】
該正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形などの粒子状である。該正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極層に適用可能な範囲である。
【0053】
[正極活物質層:固体電解質]
正極活物質層20は、例えば、固体電解質を含んでもよい。正極活物質層20が含む固体電解質は、電解質層50が含む固体電解質と同一であっても、異なっていてもよい。固体電解質についての詳細な内容は、電解質層50部分を参照する。
【0054】
正極活物質層20が含む固体電解質は、電解質層50が含む固体電解質に比べ、平均粒径D50が小さくてもよい。例えば、正極活物質層20が含む固体電解質の平均粒径D50は、電解質層50が含む固体電解質の平均粒径D50の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下であってもよい。
【0055】
平均粒径D50は、例えば、メジアン粒径D50である。メジアン粒径D50は、例えば、レーザ回折法により測定される粒子サイズ分布において、小さい粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0056】
[正極活物質層:バインダ]
正極活物質層20は、バインダを含んでもよい。該バインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野においてバインダとして使用するものであるならば、いずれも可能である。
【0057】
[正極活物質層:導電材]
正極活物質層20は、導電材を含んでもよい。該導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ、金属粉末などであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において導電材として使用するものであるならば、いずれも可能である。
【0058】
[正極活物質層:その他の添加剤]
正極活物質層20は、上述の正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0059】
正極活物質層20が含んでもよいフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に、全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0060】
[電解質層]
図3に示すように、正極活物質層20上に電解質層50が配置されることにより、電極構造体1及び電解質層50を含む単位セル2を形成する。電解質層50は、固体電解質層でもある。
【0061】
[固体電解質層:固体電解質]
固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質である。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうちの1つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaまたはInのうちの1つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pなどの出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を行うことができる。該固体電解質は、非晶質であるか、結晶質であるか、あるいはそれらが混合された状態である。また、該固体電解質は、例えば、上述の硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも、構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものであってもよい。例えば、該固体電解質は、LiS-Pを含む材料であってもよい。該固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むものを利用する場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50ないし90:10ほどの範囲である。
【0062】
該硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式1で表示されるアルジロダイト型(Argyrodite type)固体電解質を含んでもよい:
【0063】
[化学式1]
Li 12-n-xn+2- 6-x
【0064】
前記化学式1で、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Yは、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCNまたはNであり、1≦n≦5、0≦x≦2である。該硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物であってもよい。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiPSCl、LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物であってもよい。
【0065】
該アルジロダイト型の固体電解質の密度は、1.5ないし2.0g/ccでもある。該アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が低減し、Liによる固体電解質層の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0066】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層は、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層に含まれるバインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野においてバインダとして使用するものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層のバインダは、正極活物質層20及び負極活物質層30が含むバインダと同一であっても、異なっていてもよい。バインダは省略可能である。
【0067】
固体電解質層が含むバインダの含量は、固体電解質層の全体重量に対し、0ないし10wt%、0ないし5wt%、0ないし3wt%、0ないし1wt%、0ないし0.5wt%、または0ないし0.1wt%である。
【0068】
[負極層]
図1に示すように、電極構造体1は、集電体10の第1面11のうち第2部分11b上に、負極活物質層30が配置される。
【0069】
[負極活物質層:負極活物質]
負極活物質層30は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0070】
負極活物質層30が含む負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。該粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nmないし4μm以下、10nmないし3μm以下、10nmないし2μm以下、10nmないし1μm以下、または10nmないし900nm以下である。該負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時に、リチウムの可逆的な吸蔵及び/または放出がさらに容易になりうる。該負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン直径D50である。
【0071】
負極活物質層30が含む負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質、及び金属負極活物質または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含む。
【0072】
該炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素である。該非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black: CB)、アセチレンブラック(acetylene black: AB)、ファーネスブラック(furnace black: FB)、ケッチェンブラック(ketjen black:KB)、グラフェンなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。該非晶質炭素は、結晶性を有しないか、または結晶性が非常に低い炭素であり、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0073】
該金属負極活物質または半金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または半金属負極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0074】
負極活物質層30は、そのような負極活物質のうちの1種の負極活物質を含むか、あるいは複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、負極活物質層30は、非晶質炭素のみを含むか、あるいは金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。代案としては、負極活物質層30は、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などとの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池3の特性によって選択される。負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池3のサイクル特性がさらに向上する。
【0075】
負極活物質層30が含む負極活物質は 例えば、非晶質炭素からなる第1粒子と、金属または半金属からなる第2粒子との混合物を含む。金属または半金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。該半金属は、代案としては、半導体である。該第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準として、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%である。該第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池3のサイクル特性がさらに向上する。
【0076】
[負極活物質層:バインダ]
負極活物質層30が含むバインダは、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野においてバインダとして使用するものであるならば、いずれも可能である。該バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダで構成されてもよい。
【0077】
負極活物質層30がバインダを含むことにより、負極活物質層30が集電体10上に安定化される。また、充放電過程において、負極活物質層30の体積変化、及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、負極活物質層30の亀裂が抑制される。例えば、負極活物質層30がバインダを含まない場合、負極活物質層30が集電体10から容易に分離されることが可能である。集電体10から負極活物質層30が離脱することにより、集電体10が露出された部分で、集電体10が固体電解質層50と接触することにより、短絡が発生する可能性が増加する。負極活物質層30は、例えば、負極活物質層30を構成する材料が分散されたスラリーをそれぞれ集電体10上に塗布し、乾燥させて作製される。バインダを負極活物質層30に含めることにより、スラリー内での負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法により、スラリーを集電体10上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することが可能である。
【0078】
[負極活物質層:その他の添加剤]
負極活物質層30は、従来の全固体二次電池3に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことが可能である。
【0079】
[負極層:負極活物質層]
負極活物質層30の厚みは、例えば、正極活物質層20の厚みの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。負極活物質層30の厚みは、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmである。負極活物質層30の厚みが過度に薄ければ、負極活物質層30と集電体10との間に形成されるリチウムデンドライトが、負極活物質層30を崩壊させ、全固体二次電池3のサイクル特性は向上しがたい。負極活物質層30の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池3のエネルギー密度が低下し、負極活物質層30による全固体二次電池3の内部抵抗が増加し、全固体二次電池3のサイクル特性は向上しがたい。
【0080】
負極活物質層30の厚みが減少すれば、例えば、負極活物質層30の充電容量も低減する。負極活物質層30の充電容量は、例えば、正極活物質層20の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。負極活物質層30の充電容量は、例えば、正極活物質層20の充電容量に比べて、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%である。負極活物質層30の充電容量が過度に低ければ、負極活物質層30の厚みが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程において、負極活物質層30と集電体10との間に形成されるリチウムデンドライトが、負極活物質層30を崩壊させ、全固体二次電池3のサイクル特性は向上しがたい。負極活物質層30の充電容量が過度に高ければ、全固体二次電池3のエネルギー密度が低下し、負極活物質層30による全固体二次電池3の内部抵抗が増加し、全固体二次電池3のサイクル特性は向上しがたい。
【0081】
正極活物質層20の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層20のうち正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の合計が正極活物質層20の充電容量である。負極活物質層30の充電容量も、同様な方法により計算される。すなわち、負極活物質層30の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、負極活物質層30のうち負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の合計が負極活物質層30の充電容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。該全固体半電池を利用した充電容量の測定により、正極活物質層20及び負極活物質層30の充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で割れば、充電容量密度が得られる。代案としては、正極活物質層20及び負極活物質層30の充電容量は、1サイクルの充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0082】
[負極層:第2負極活物質層(析出層)]
図示していないが、全固体二次電池3は、充電により、例えば、集電体10と負極活物質層30との間に配置される第2負極活物質層(図示せず)をさらに含んでもよい。該第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。該金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、該第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野においてリチウム合金として使用するものであるならば、いずれも可能である。該第2負極活物質層は、そのような合金のうちの1つ、またはリチウムからなるか、あるいは複数種の合金からなる。
【0083】
該第2負極活物質層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1μmないし1000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。該第2負極活物質層の厚みが過度に薄ければ、該第2負極活物質層によるリチウム貯蔵庫の役割を行いがたい。該第2負極活物質層の厚みが過度に厚ければ、全固体二次電池3の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下する可能性がある。該第2負極活物質層は、例えば、そのような範囲の厚みを有する金属箔でもある。
【0084】
全固体二次電池3において、該第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池3の組み立て前、集電体10と負極活物質層30との間に配置されるか、あるいは全固体二次電池3の組み立て後、充電により、集電体10と負極活物質層30との間に析出される。全固体二次電池3の組み立て前、集電体10と負極活物質層30との間に該第2負極活物質層が配置される場合、該第2負極活物質層はリチウムを含む金属層であるので、リチウム貯蔵庫として作用する。例えば、全固体二次電池3の組み立て前、集電体10と負極活物質層30との間にリチウム箔が配置される。それにより、該第2負極活物質層を含む全固体二次電池3のサイクル特性がさらに向上する。全固体二次電池3の組み立て後、充電により、該第2負極活物質層が析出される場合、全固体二次電池3の組み立て時、該第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池3のエネルギー密度が上昇する。例えば、全固体二次電池3の充電時、負極活物質層30の充電容量を超えて充電する。すなわち、負極活物質層30を過充電する。充電初期には、負極活物質層30にリチウムを吸蔵させる。負極活物質層30が含む負極活物質は、正極活物質層20から移動してきたリチウムイオンと、合金または化合物を形成する。負極活物質層30の容量を超えて充電すれば、例えば、負極活物質層30の背面、すなわち、集電体10と負極活物質層30との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、該第2負極活物質層に該当する金属層が形成される。該第2負極活物質層は、主に、リチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。そのような結果は、例えば、負極活物質層30に含まれる負極活物質が、リチウムと合金または化合物を形成する物質で構成されることによって得られる。放電時には、負極活物質層30及び第2負極活物質層、すなわち、金属層のリチウムがイオン化され、正極活物質層20の方向に移動する。したがって、全固体二次電池3において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、負極活物質層30が第2負極活物質層を被覆するため、該第2負極活物質層、すなわち、金属層の保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割を行う。したがって、全固体二次電池3の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池3のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池3の組み立て後、充電により、該第2負極活物質層が配置される場合、集電体10、負極活物質層30及びそれらの間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0085】
[全固体二次電池]
前記全固体二次電池は、同一集電体を使用するバイポーラセルであり、同一集電体の内部に緩衝構造を有することにより、充放電時に体積変化に対して負極層を保護することができるので、電池の耐久性を向上させることができる。
【0086】
図3は、例示的な一具現例による全固体二次電池の断面模式図である。
【0087】
図3に示すように、全固体二次電池3は、前記電極構造体1と、前記電極構造体1の正極活物質層20上に配置された固体電解質層50と、を含む単位セル2を含み、前記単位セル2が複数個積層されたバイポーラ全固体二次電池である。電極構造体1が複数個積層され、バイポーラで連結された構造を有し、バイポーラで連結させることにより、所望の電圧設計が可能である。
【0088】
一実施形態によれば、前記単位セル2は、2個ないし12個積層され、全固体二次電池3を構成することができる。単位セル2を2個ないし12個積層することにより、ハンドリング可能な適切な電圧範囲を有する全固体二次電池3を製造することができる。
【0089】
積層された単位セル2の両末端に存在する電解質層50と負極活物質層30の上には、それぞれ第1エンドプレート60及び第2エンドプレート60’をさらに含み、一方の末端に存在する電解質層50と第1エンドプレート60との間には、第3負極活物質層30’、第2集電体10’及び圧縮パッド40’を含む第1ハーフセル4をさらに含み、他方の末端に存在する負極活物質層30と第2エンドプレート60’との間には、第2電解質層50’、第2正極活物質層20’及び第3集電体10’’を含む第2ハーフセル5をさらに含んでもよい。
【0090】
以上、図面及び実施形態を参照して一具現例が述べられたが、それは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲により決まらなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば、全固体二次電池関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 電極構造体
2 単位セル
3 全固体二次電池
10 集電体
11 第1面
11a 第1部分
11b 第2部分
11c 中間部
12 第2面
20 正極活物質層
30 負極活物質層
40 圧縮パッド
図1
図2
図3