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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074165
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0392 20060101AFI20220511BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20220511BHJP
   H01L 31/046 20140101ALI20220511BHJP
   H01L 31/0749 20120101ALI20220511BHJP
【FI】
H01L31/04 284
H01L31/04 260
H01L31/04 500
H01L31/04 532Z
H01L31/06 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019014304
(22)【出願日】2019-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】下窪 秀基
(72)【発明者】
【氏名】有田 和雄
(72)【発明者】
【氏名】住永 憲治
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA09
5F151AA10
5F151BA15
5F151BA18
5F151DA03
5F151DA07
5F151EA03
5F151EA20
5F151FA02
5F151FA06
5F151FA17
5F151GA02
5F151GA06
(57)【要約】
【課題】 裏面電極と金属基板の間の絶縁層における絶縁破壊を抑止する。
【解決手段】 太陽電池モジュールは、受光面側に絶縁層が形成された導電性基板と、絶縁層の上に形成される第1の電極層と、第1の電極層よりも受光面側に形成される第2の電極層と、第1の電極層と第2の電極層との間に形成される光電変換層とを有する光電変換素子と、光電変換素子で生成される電力を出力する一対の電極と、を備える。一対の電極のうち、一方の電極は第1の電極層および導電性基板と電気的に接続され、他方の電極は導電性基板から絶縁される。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面側に絶縁層が形成された導電性基板と、
前記絶縁層の上に形成される第1の電極層と、前記第1の電極層よりも前記受光面側に形成される第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に形成される光電変換層とを有する光電変換素子と、
前記光電変換素子で生成される電力を出力する一対の電極と、を備え、
前記一対の電極のうち、一方の電極は前記第1の電極層および前記導電性基板と電気的に接続され、他方の電極は前記導電性基板から絶縁される、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記光電変換素子は、前記受光面の平面方向において前記絶縁層の上に複数配置されている、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
複数の前記光電変換素子は、直列に接続されている、
請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記一方の電極は、負極である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記絶縁層の材料は、アルカリ金属成分を含む、
請求項4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記一対の電極は、前記導電性基板の前記受光面側から裏面側にわたって配置された配線部材をそれぞれ含み、
前記一方の電極に接続される前記配線部材は、前記受光面側で前記第1の電極層と電気的に接続され、前記裏面側で前記導電性基板と電気的に接続される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば太陽電池に適用される光電変換素子の一つとして、Cu、In、Ga、Se、Sを含むカルコパイライト構造のI-III-VI族化合物半導体を光電変換層に用いたCIS系光電変換素子が提案されている。この種の光電変換素子は、製造コストが比較的安価であり、しかも可視から近赤外の波長範囲に大きな吸収係数を有するので高い光電変換効率が期待される。
【0003】
また、太陽電池の薄型化、軽量化、または強度向上などを目的として、太陽電池の基板にSUSなどの金属基板を適用することも提案されている。例えば、特許文献1には、金属基板の受光面側に絶縁層、裏面電極および光電変換層を順次積層し、CIS系光電変換素子を形成した太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-229736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属基板などの導電性基板を用いた太陽電池においては、導電性基板と裏面電極の間に絶縁層が介在することで導電性基板と裏面電極の間にコンデンサが形成される。例えば、雷サージなどにより太陽電池に意図しない高電圧が印加されると、裏面電極と導電性基板の間の絶縁層において絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、裏面電極と導電性基板の間の絶縁層における絶縁破壊を抑止する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一例である太陽電池モジュールは、受光面側に絶縁層が形成された導電性基板と、絶縁層の上に形成される第1の電極層と、第1の電極層よりも受光面側に形成される第2の電極層と、第1の電極層と第2の電極層との間に形成される光電変換層とを有する光電変換素子と、光電変換素子で生成される電力を出力する一対の電極と、を備える。一対の電極のうち、一方の電極は第1の電極層および導電性基板と電気的に接続され、他方の電極は導電性基板から絶縁される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一例である太陽電池モジュールによれば、絶縁層の上に形成される第1の電極層および導電性基板が一方の電極と電気的に接続され、絶縁層を隔てて配置される第1の電極層および導電性基板は等電位になる。これにより、第1の電極層と導電性基板との間に絶縁層によるコンデンサが形成されなくなるので、例えば雷サージなどによる絶縁層の絶縁破壊が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図2】一実施形態の太陽電池モジュールにおける配線構造例を示す図である。
図3】太陽電池モジュールの構成の変形例を模式的に示す断面図である。
図4】太陽電池モジュールの構成の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
実施形態ではその説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面において、各層の厚さ、形状などは模式的に示したもので、実際の厚さや形状などを示すものではない。
【0011】
<太陽電池モジュールの構成例>
図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。図1に示す太陽電池モジュール100は、金属基板10における受光面の平面方向(XY方向)に複数の光電変換素子11-1~11-kが配置された、いわゆる集積型構造を有する。但し、kは、2以上の自然数である。
【0012】
(金属基板10)
金属基板10は、導電性基板の一例であって、例えば、ステンレス鋼(SUS)、銅、アルミニウム、あるいはこれらの合金等で形成される基板である。金属基板10は、フレキシブル基板であってもよい。金属基板10は、複数の金属基材を積層した積層構造であってもよく、例えば、ステンレス箔、チタン箔、モリブデン箔が基板の表面に形成されていてもよい。
【0013】
金属基板10の形状および寸法は、太陽電池モジュール100の大きさ等に応じて適宜決定される。一実施形態における金属基板10の全体形状は、例えば矩形の平板状であるがこれに限られることはない。
金属基板10の適用により、太陽電池モジュール100を曲げることが可能となり、曲げによる基板の割れも抑止できる。さらに、金属基板10の適用により、ガラス基板や樹脂基板と比べて、太陽電池モジュール100の軽量化および薄型化を図ることが容易となる。
【0014】
また、金属基板10の受光面側には絶縁層20が形成されている。絶縁層20は、例えば、ガラスフリットなどの被膜である。絶縁層20に適用するガラスの一例としては、シリカ(SiO2)、CaO、B23、SrO、BaO、Al23、ZnO、ZrO2、MgOのうち少なくとも1つを成分とするガラスや低融点ガラスを挙げることができる。
【0015】
(光電変換素子11)
太陽電池モジュール100は、上記のように、複数の光電変換素子11-1,11-2,…11-kを受光面上に備えている。これらの光電変換素子11-1~11-kは、直列に接続されている。
ここで、光電変換素子11-1~11-kの基本構成は共通であり、以下の説明で個々の光電変換素子11-1~11-kを区別する必要がない場合には光電変換素子11と総称して表記する。なお、光電変換素子11の後述する構成要素についても、個々を区別する必要がない場合には同様に総称して表記する。
【0016】
光電変換素子11は、金属基板10の上に、第1の電極層12、光電変換層13、バッファ層14、第2の電極層15を順次積層したサブストレート構造を有する。太陽光などの光は、金属基板10側とは反対側(図1の上側)から光電変換素子11に入射する。
【0017】
(第1の電極層12)
第1の電極層12は、金属基板10の絶縁層20の上に形成される。図1においては、複数の第1の電極層12-1,12-2,…12-k,12-(k+1)が、金属基板10の絶縁層20の上に並んで配置されている。第1の電極層12は、光電変換層13の受光面側ではなく裏面側(基板側)に臨むため、裏面電極とも称される。
【0018】
第1の電極層12は、例えば、金属電極層である。特に限定するものではないが、第1の電極層12の厚さは、例えば、200nm~500nmに設定される。
第1の電極層12は、光電変換層13との反応が発生し難い材料を備えることが好ましい。例えば、第1の電極層12の材料は、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)などから選択可能である。第1の電極層12は、後述する第2の電極層15内に含まれる材料と同じ材料を含んでいてもよい。
【0019】
(光電変換層13)
光電変換層13は、第1の電極層12上に形成される。光電変換層13は、受光面側(図1の上側)および金属基板10側(図1の下側)ではバンドギャップがそれぞれ大きく、光電変換層13の厚さ方向内側ではバンドギャップが小さいダブルグレーデッド構造を有してもよい。特に限定するものではないが、光電変換層13の厚さは、例えば、1.0μm~3.0μmに設定される。
【0020】
光電変換層13は、多結晶または微結晶のp型化合物半導体層として機能する。光電変換層13は、I族元素と、III族元素と、VI族元素(カルコゲン元素)と、を含むカルコパイライト構造の混晶化合物(I-III-VI)を備える。I族元素は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などから選択可能である。III族元素は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)などから選択可能である。また、光電変換層13は、VI族元素として、セレン(Se)や硫黄(S)の他に、テルル(Te)などを含んでもよい。また、光電変換層13は、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属を含んでいてもよい。
【0021】
(バッファ層14)
バッファ層14は、光電変換層13の上に形成される。特に限定するものではないが、バッファ層14の厚さは、例えば、10nm~100nmに設定される。
バッファ層14は、例えば、n型またはi(intrinsic)型高抵抗導電層である。ここで「高抵抗」とは、後述する第2の電極層15の抵抗値よりも高い抵抗値を有するという意味である。
【0022】
バッファ層14は、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)を含む化合物から選択可能である。亜鉛を含む化合物としては、例えば、ZnO、ZnS、Zn(OH)2、または、これらの混晶であるZn(O,S)、Zn(O,S,OH)、さらには、ZnMgO、ZnSnOなど、がある。カドミウムを含む化合物としては、例えば、CdS、CdO、または、これらの混晶であるCd(O,S)、Cd(O,S,OH)がある。インジウムを含む化合物としては、例えば、InS、InO、または、これらの混晶であるIn(O,S)、In(O,S,OH)があり、In23、In23、In(OH)x等を用いることができる。また、バッファ層14は、これらの化合物の積層構造を有してもよい。
【0023】
なお、バッファ層14は、光電変換効率などの特性を向上させる効果を有するが、これを省略することも可能である。バッファ層14が省略される場合、第2の電極層15は光電変換層13の上に形成される。
【0024】
(第2の電極層15)
第2の電極層15は、バッファ層14の上に形成される。第2の電極層15は、例えば、n型導電層である。特に限定するものではないが、第2の電極層15の厚さは、例えば、0.5μm~2.5μmに設定される。
第2の電極層15は、例えば、禁制帯幅が広く、抵抗値が十分に低い材料を備えることが好ましい。また、第2の電極層15は、太陽光などの光の通り道となるため、光電変換層13が吸収可能な波長の光を透過する性質を持つことが好ましい。この意味から、第2の電極層15は、透明電極層または窓層とも称される。
【0025】
第2の電極層15は、例えば、III族元素(B、Al、Ga、またはIn)がドーパントとして添加された酸化金属を備える。酸化金属の例としては、ZnO、または、SnO2がある。第2の電極層15は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ITiO(酸化インジウムチタン)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZTO(酸化亜鉛スズ)、FTO(フッ素ドープト酸化スズ)、GZO(ガリウムドープト酸化亜鉛)などから選択可能である。
【0026】
光電変換素子11-1,11-2,…11-kにおいて、第2の電極層15は、第1の電極層12-1,12-2,…12-(k+1)のうちの1つに接続される。例えば、光電変換素子11-1の第2の電極層15は、その隣に位置する光電変換素子11-2の第1の電極層12-2に接続される。残りの光電変換素子11-2,…11-kの第2の電極層15も同様に、隣に位置する光電変換素子11の第1の電極層12に接続される。これにより、複数の光電変換素子11-1,11-2,…11-kは、直列に接続される。
【0027】
(正極21、負極22)
太陽電池モジュール100の正極21は、第1の電極層12-1に接続される。一方、太陽電池モジュール100の負極22は、光電変換素子11-kの第2の電極層15と接続されている第1の電極層12-(k+1)に接続される。つまり、各々の光電変換素子11は、第1の電極層12から第2の電極層15に向けて電流が流れるように構成される。
【0028】
本実施形態の太陽電池モジュール100においては、電極の一方が金属基板10と電気的に接続されている。これにより、絶縁層20を隔てて配置される第1の電極層12と金属基板10が等電位になるので、金属基板10と第1の電極層12の間に絶縁層20によるコンデンサが形成されなくなる。
したがって、本実施形態によれば、雷サージなどにより太陽電池モジュール100に意図しない高電圧が印加されても絶縁層20の絶縁破壊が抑止される。例えば、絶縁層20に絶縁破壊が生じると漏電による異常加熱の発生などが懸念されるが、このような事象の生じるおそれは非常に低くなる。
【0029】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように負極22を金属基板10に接触させて両者を電気的に接続している。なお、図1では負極22を受光面で金属基板10に接触させて両者を電気的に接続しているが、負極22を受光面では金属基板10に接触させずに、後述する図2のように金属基板10の裏面で負極22を金属基板10に接触させて両者を電気的に接触してもよい。
かかる構成によれば、太陽電池の出力が短期間で大幅に低下するPID(Potential Induced Degradation)現象を抑制しやすくなる点で好ましい。
【0030】
PID現象は、例えば太陽電池のガラス基板などからナトリウムイオンなどのアルカリ金属成分が拡散し、セルの表面や内部に侵入することが原因の1つと考えられている。金属基板10を採用する場合においても絶縁層20の材料がアルカリ金属成分を含むガラスベースであれば、絶縁層20に含まれるアルカリ金属イオンに起因してPID現象が生じうる。
本実施形態の構成においては、図1の下側に位置する金属基板10が負極22と等電位になるので、絶縁層20に含まれるナトリウムイオン(Na)は、厚さ方向(Z方向)において光電変換層13とは反対側の金属基板10に引き寄せられる。したがって、絶縁層20において、第1の電極層12に臨む面(図1の上側)にはナトリウムイオンが析出しにくくなる。以上のように、本実施形態のような負極接地の構成によると、アルカリ金属成分を含むガラスベースの絶縁層20を採用した場合においても、絶縁層20に含まれるアルカリ金属イオンに起因したPID現象を抑制しやすくなる。
【0031】
また、本実施形態の太陽電池モジュール100によれば、光電変換素子11-1,11-2,…11-kをそれぞれ1つのユニットとした場合、複数のユニットが正極21と負極22との間に直列接続されている。しかも、これら複数のユニットは、1枚の金属基板10上に形成可能である。例えば、このような太陽電池モジュール100は、部分的に日陰となっても発電量の低下が限定的であるので、安定的な発電を実現することができる。
【0032】
次に、図2を参照しつつ、本実施形態の太陽電池モジュール100における配線構造例を説明する。図2(A)は、太陽電池モジュール100を受光面側からみた図であり、図2(B)は、太陽電池モジュール100を裏面側からみた図であり、図2(C)は、太陽電池モジュール100の側面図である。
【0033】
図2(A)、(B)に示すように、太陽電池モジュール100の受光面から裏面にわたって、正極21側のリボンワイヤ30と、負極22側のリボンワイヤ31が配設されている。
また、太陽電池モジュール100は、後述するように、絶縁テープ32によって部分的に覆われている。太陽電池モジュール100において絶縁テープ32で覆われた領域では、太陽電池モジュール100と、リボンワイヤ30、31との間が絶縁テープ32により絶縁される。
【0034】
リボンワイヤ30、31は、太陽電池モジュール100で発生した電力を外部負荷に導出するための電力線として機能し、外部負荷と接続された外部導線(図示省略)にそれぞれ接続される配線部材である。
リボンワイヤ30、31は、導電性および可撓性を有する帯状の薄い金属板で構成される。リボンワイヤ30、31の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、あるいは錫メッキされた銅などが挙げられる。
【0035】
図2(A)に示すように、太陽電池モジュール100の受光面において、リボンワイヤ30は基板長手方向(X方向)の一端側に配置され、リボンワイヤ31は基板長手方向の他端側に配置されている。リボンワイヤ30、31は、受光面においていずれも基板短手方向(Y方向)に沿って延長するように配置されている。そして、リボンワイヤ30、31の間には、k個の光電変換素子(11-1~11-k)が配置されている。
【0036】
リボンワイヤ30は、受光面において、光電変換素子11-1に接続される第1の電極層(図1に示す第1の電極層12-1)と電気的に接続される。また、リボンワイヤ31は、受光面において、光電変換素子11-kの第2の電極層に接続される第1の電極層(図1に示す第1の電極層12-(k+1))と電気的に接続される。
【0037】
図2(A)~(C)に示すように、リボンワイヤ30、31は、太陽電池モジュール100の受光面から裏面へ回り込むように、図中上側で折り返されている。また、図2(B)に示すように、リボンワイヤ30、31は、裏面側において太陽電池モジュール100の側端からリボンワイヤ30、31同士が近接する向きに90°折曲し、基板長手方向に沿って延長している。裏面側でのリボンワイヤ30、31の端部は、いずれも基板の中央部近傍に位置している。
【0038】
例えば、外部導線は、太陽電池モジュール100の裏面において、金属基板10の中央部近傍に位置するリボンワイヤ30、31の端部と接続される。これにより、太陽電池モジュール100に外部導線を接続する際には、外部導線の正極側および負極側を近くに配置でき、外部導線の配線をすっきりさせることができる。なお、金属基板10の裏面側において、リボンワイヤ30、31を適宜引き回すことにより、外部導線とリボンワイヤ30、31の端部との接続位置を変えることが可能である。
【0039】
ここで、金属基板10の基板長手方向の両端部は、受光面側の上端近傍から基板上面を経て裏面側に至るまで絶縁テープ32で覆われており、この絶縁テープ32の上にリボンワイヤ30、31が配置される。特に、金属基板10の図中の上縁部が絶縁テープ32で覆われるように構成することで、金属基板10の端面に形成される鋭利なエッジでリボンワイヤ30、31が損傷することが防止される。
【0040】
なお、図2に示すリボンワイヤ30、31の配置はあくまで一例にすぎず、図示の配置に限定されるものではない。図示は省略するが、例えば、リボンワイヤ30、31を、受光面においていずれも基板短手方向(Y方向)に沿って基板長手の端部近傍まで延長するように配置し、リボンワイヤ30、31同士が遠ざかる向きに90°折曲させて、基板短手方向の端部より受光面から裏面へ回り込むように折り返してもよい。そして、裏面においてリボンワイヤ30、31をそれぞれ基板長手方向に沿って延長するように配置し、リボンワイヤ30、31の端部がいずれも基板の中央部近傍に位置するようにしてもよい。
上記のように、リボンワイヤ30、31を基板短手の端部より受光面から裏面へ回り込むように折り返す場合には、金属基板10の基板短手方向の両端部が、受光面側の上端近傍から基板上面を経て裏面側に至るまで絶縁テープ32で覆うようにすることが好ましい。
【0041】
図2(B)に示すように、金属基板10の裏面側において、リボンワイヤ30の配置される領域は絶縁テープ32ですべて覆われる。そのため、リボンワイヤ30は絶縁テープ32によって金属基板10から絶縁されている。
一方、図2(B)に示すように、金属基板10の裏面側において、リボンワイヤ31の配置される領域のうちの一部の領域33は、絶縁テープ32で覆われずに金属基板10の表面が露出している。そして、裏面側の領域33において金属基板10とリボンワイヤ31が電気的に接続される。金属基板10とリボンワイヤ31の接続は、例えば、はんだ付け等で接着してもよく、リボンワイヤ31を粘着テープ等で金属基板10に固定する構成としてもよい。
なお、金属基板10の裏面側において、リボンワイヤ31の配置される領域全体で金属基板10の表面が露出していてもよい。
以上のようにして、図1に示す太陽電池モジュール100の配線構造が実現される。
【0042】
<実施形態の変形例>
図3および図4は、それぞれ太陽電池モジュール100の構成の変形例を示している。以下の説明では、図1と同様の要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
図3は、受光面の表面側において、金属基板10上に絶縁層20を形成しない領域(23)を設け、当該領域23で金属基板10と第1の電極層12-(k+1)を直接電気的に接続した例を示している。
【0044】
また、図4は、第1の電極層12-(k+1)、絶縁層20および金属基板10を厚さ方向に貫通するスルーホール24を形成し、スルーホール24内に導電部材25を配置して金属基板10と第1の電極層12-(k+1)を電気的に接続した例を示している。なお、図4の構成としては、導電性の固体(例えば導電性のピン)や導電性の液体をスルーホール24に充填して導電部材25を形成してもよく、例えばスルーホール24の内表面にメッキを施すことで中空の導電部材25を形成してもよい。
【0045】
上記の図3図4に示す変形例の構成においては、金属基板10が負極22として機能する。したがって、太陽電池モジュール100の裏面側に外部導線を接続する場合には、負極の配線のレイアウトが容易となる。また、図3図4に示す変形例の構成によると、負極側にリボンワイヤを設けて裏面側に配線を引き回す必要がないので、受光面において負極側のリボンワイヤを配置するスペースが必要なくなり、光電変換素子を配置するスペースをより広く確保できる。
図3図4では、金属基板10が負極22として機能する変形例を示したが、金属基板10が正極21として機能する場合においても、太陽電池モジュール100の裏面側に外部導線を接続する場合には、正極の配線のレイアウトが容易となる。また、正極側にリボンワイヤを設けて裏面側に配線を引き回す必要がないので、受光面において正極側のリボンワイヤを配置するスペースが必要なくなり、光電変換素子を配置するスペースをより広く確保できる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。これら実施形態は、上述以外の様々な形態で実施することが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更など、を行える。これら実施形態およびその変形は、本発明の範囲および要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等物についても、本発明の範囲および要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 金属基板
11 光電変換素子
12 第1の電極層
13 光電変換層
15 第2の電極層
20 絶縁層
21 正極
22 負極
30、31 リボンワイヤ
100 太陽電池モジュール

図1
図2
図3
図4