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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074706
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】画像表示システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/31 20060101AFI20220511BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20220511BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220511BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220511BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220511BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220511BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220511BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G02F1/31
G09G3/36
G09G3/20 680D
G09G3/20 680H
G03B21/00 D
G09F9/00 359
G09F9/00 313
G09F9/00 311
G02F1/13 505
G02B26/10 104Z
G02B26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020184998
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2H045
2H088
2K102
2K203
5C006
5C080
5G435
【Fターム(参考)】
2H045BA02
2H088EA47
2H088JA10
2H088MA20
2K102AA21
2K102BA07
2K102BB05
2K102BC04
2K102BD08
2K102CA20
2K102DB08
2K102DD02
2K102EB08
2K102EB26
2K203GC22
2K203GC27
2K203HA32
2K203HA42
2K203HA67
2K203HA68
2K203HA95
2K203HB02
2K203MA40
5C006AA21
5C006BB28
5C006EA01
5C006EC09
5C006EC11
5C006EC14
5C006FA41
5C080AA06
5C080AA07
5C080AA10
5C080AA17
5C080CC03
5C080CC08
5C080DD22
5C080JJ06
5C080KK20
5C080KK23
5G435BB01
5G435BB12
5G435DD04
5G435DD05
5G435DD06
5G435FF05
5G435FF08
5G435LL17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なる2つの画像を奥行方向に重ねて表示することができる、新規で小型の画像表示システムを提供する。
【解決手段】導光板12と、導光板の一方の主面に配置された、右円偏光および左円偏光のいずれか一方を反射する第1液晶回折素子14と、導光板の他方の主面に配置された、第1液晶回折素子で反射される偏光とは逆の偏光を反射する第2液晶回折素子16と、第2液晶回折素子と対面する反射型表示装置18と、導光板の端面から光を入射するための画像表示装置20とを、備え、画像表示装置が、右円偏光による表示と、左円偏光による表示とを切り替え可能で、円偏光の切り替えに同期して、画像表示と白表示とを切り替えでき、画像表示装置は、白表示の時には、第1液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行い、画像表示装置は、画像表示の時には、第2液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、
前記導光板の一方の主面に配置された、右円偏光および左円偏光のいずれか一方を反射する第1液晶回折素子と、
前記導光板の他方の主面に配置された、前記第1液晶回折素子で反射される偏光とは逆の偏光を反射する第2液晶回折素子と、
前記第2液晶回折素子と対面する反射型表示装置と、
前記導光板の端面から光を入射するための画像表示装置とを、備え、
前記画像表示装置が、右円偏光による表示と、左円偏光による表示とを交互に表示し、画像表示と白表示との表示の切り替えに同期して、円偏光を切り替えでき、
前記画像表示装置は、白表示の時には、前記第1液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行い、
前記画像表示装置は、画像表示の時には、前記第2液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行う、画像表示システム。
【請求項2】
前記画像表示装置が、画像表示素子と、位相差可変装置とを有する、請求項1に記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記画像表示装置が、さらに、角度可変ミラーを有する、請求項2に記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記第1液晶回折素子よりも視認側に配置される正のレンズと、
前記第2液晶回折素子と前記反射型表示装置との間に配置される負のレンズと、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載される情報表示装置等において、表示される情報量が増大し、運転者が一目で情報を識別することが困難になりつつある。そこで、確認したい情報をより目立たせるため、確認したい表示画像を、それ以外の表示画像の上方に浮遊させ、重畳表示するシステムが望まれている。
【0003】
また、劇場およびコンサート会場等において、2つの異なる画像を奥行方向に重ねて(重畳して)表示するシステム、および、画像を実体物および人物等に重畳して表示するシステムなどが、視覚トリック効果および演出効果等をもたらす目的で利用されている。
【0004】
このような2つの異なる画像を重畳して表示する画像表示システムにおいては、2つの画像表示装置を用いて、それぞれが異なる画像となる光を照射することで、異なる2つの画像を重畳表示している。
【0005】
例えば、特許文献1には、第1の画像を表示する第1の画像表示面を有し、第1の偏光である第1の出射光を出射する第1の画像表示部と、入射した光の一部を透過し、他の一部を反射する透過反射面を有し、第1の画像表示部から出射された第1の出射光が入射する位置に透過反射面が配置されたビームスプリッターであって、第1の出射光の偏光を変化させて反射するビームスプリッターと、第1の出射光のうちビームスプリッターの透過反射面で反射された反射光が入射する位置に配置された、第1の偏光を吸収し、第1の偏光と異なる第2の偏光を透過させる吸収型偏光子とを備えた画像表示システムが記載されている。特許文献1においては、2つの異なる画像を重畳して表示する場合には、さらに、第2の画像表示部を有し、第2の画像表示部が第2の画像を表示することで、第1の画像と第2の画像とを重畳表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/169018号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような重畳画像を表示する画像表示システムでは、画像表示装置を2つ用いる必要があった。そのため、システムが大型化したり、コストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、異なる2つの画像を奥行方向に重ねて表示することができる、新規で小型の画像表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 導光板と、
導光板の一方の主面に配置された、右円偏光および左円偏光のいずれか一方を反射する第1液晶回折素子と、
導光板の他方の主面に配置された、第1液晶回折素子で反射される偏光とは逆の偏光を反射する第2液晶回折素子と、
第2液晶回折素子と対面する反射型表示装置と、
導光板の端面から光を入射するための画像表示装置とを、備え、
画像表示装置が、右円偏光による表示と、左円偏光による表示とを交互に表示し、画像表示と白表示との表示の切り替えに同期して、円偏光を切り替えでき、
画像表示装置は、白表示の時には、第1液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行い、
画像表示装置は、画像表示の時には、第2液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行う、画像表示システム。
[2] 画像表示装置が、画像表示素子と、位相差可変装置とを有する、[1]に記載の画像表示システム。
[3] 画像表示装置が、さらに、角度可変ミラーを有する、[2]に記載の画像表示システム。
[4] 第1液晶回折素子よりも視認側に配置される正のレンズと、
第2液晶回折素子と反射型表示装置との間に配置される負のレンズと、を備える、[1]~[3]のいずれかに記載の画像表示システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる2つの画像を奥行方向に重ねて表示することができる、新規で小型の画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の画像表示システムの一例を概念的に表す図である。
図2図1に示す画像表示システムの作用を説明するための図である。
図3図1に示す画像表示システムの作用を説明するための図である。
図4】本発明の画像表示システムの他の一例の作用を説明するための図である。
図5】本発明の画像表示システムの他の一例の作用を説明するための図である。
図6】本発明の画像表示システムの他の一例を概念的に表す図である。
図7】液晶回折素子が有するコレステリック液晶層を概念的に示す平面図である。
図8図7に示すコレステリック液晶層を概念的に示す断面図である。
図9図7に示すコレステリック液晶層の断面SEM画像を概念的に示す図である。
図10図7に示すコレステリック液晶層の作用を説明するための概念図である。
図11】配向膜を露光する露光装置の一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、角度について「直交」および「平行」とは、厳密な角度±10°の範囲を意味するものとし、並びに角度について「同一」および「異なる」は、その差が5°未満であるか否かを基準に判断できる。
【0013】
本明細書において「遅相軸」とは、面内において屈折率が最大となる方向を意味する。
また、可視光とは、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。
【0014】
<画像表示システム>
本発明の画像表示システムは、
導光板と、
導光板の一方の主面に配置された、右円偏光および左円偏光のいずれか一方を反射する第1液晶回折素子と、
導光板の他方の主面に配置された、第1液晶回折素子で反射される偏光とは逆の偏光を反射する第2液晶回折素子と、
第2液晶回折素子と対面する反射型表示装置と、
導光板の端面から光を入射するための画像表示装置とを、備え、
画像表示装置が、右円偏光による表示と、左円偏光による表示とを交互に表示し、画像表示と白表示との表示の切り替えに同期して、円偏光を切り替えでき、
画像表示装置は、白表示の時には、第1液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行い、
画像表示装置は、画像表示の時には、第2液晶回折素子で反射する円偏光による表示を行う、映像表示システムである。
【0015】
図1は、本発明の画像表示システムを概念的に表す図である。
【0016】
図1に示す画像表示システム10は、導光板12と、第1液晶回折素子14と、第2液晶回折素子16と、反射型表示装置18と、画像表示装置20と、を有する。
【0017】
第1液晶回折素子14は、導光板12の一方の主面に配置されており、右円偏光および左円偏光のいずれか一方を選択的に反射しつつ、この反射光を正反射以外の角度に屈折(回折)させる素子である。第1液晶回折素子14は、導光板12内を導光された光を導光板の主面に対して全反射する角度から外れるように回折する。また、第1液晶回折素子14は、反射しない旋回方向の円偏光、すなわち、第2液晶回折素子16が反射する円偏光は透過する。
なお、主面とは、シート状物(板状物、フィルム等)の最大面である。
【0018】
第2液晶回折素子16は、導光板12の、第1液晶回折素子14が配置された主面とは反対側の主面に、第1液晶回折素子14と対面するように配置されており、第1液晶回折素子で反射される円偏光とは逆の円偏光を選択的に反射しつつ、この反射光を正反射以外の角度に屈折(回折)させる素子である。第2液晶回折素子16は、導光板12内を導光された光を導光板の主面に対して全反射する角度から外れるように回折する。また、第2液晶回折素子16は、反射しない旋回方向の円偏光、すなわち、第1液晶回折素子14が反射する円偏光は透過する。
【0019】
反射型表示装置18は、反射板を有し、入射する外光を利用して画像を表示する装置である。反射型表示装置18は、表示面が第2液晶回折素子に対面するように配置される。
【0020】
画像表示装置20は、導光板12の端面に配置されており、画像となる光、あるいは、白表示の光を照射して、これらの光を導光板12内に入射させるものである。
本発明においては、画像表示装置20は、右円偏光による表示と、左円偏光による表示とを交互に表示し、画像表示と白表示との表示の切り替え(タイミング)に同期して円偏光を切り替える。画像表示装置20は、白表示の場合には、第1液晶回折素子14が反射する円偏光による表示を行い、画像表示の場合には、第2液晶回折素子16が反射する円偏光による表示を行う。
【0021】
このような画像表示システム10の作用について図2および図3を用いて説明する。
図2は、画像表示システム10が反射型表示装置18による画像を実像として表示する状態を説明する図である。図3は、画像表示システム10が画像表示装置20による画像を虚像として表示する状態を説明する図である。
【0022】
まず、図2を用いて、画像表示システム10が反射型表示装置18による画像を実像として表示する状態(以下、単に「実像を表示する状態」ともいう)を説明する。
画像表示システム10が実像を表示する状態の場合には、画像表示装置20は、白表示を行う。前述のとおり、白表示の場合には、画像表示装置20は、第1液晶回折素子14が反射する円偏光で白表示を行う。
【0023】
画像表示装置20が白表示して照射した光は、導光板12の端面から導光板12内に入射して導光板12内を導光される(図2中矢印参照)。導光板12内を導光された光は、導光板12の一方の主面に配置されている第1液晶回折素子14によって反射、回折される。図2に示す例においては、第1液晶回折素子14は、その表面に斜め方向から入射する光を第1液晶回折素子14の表面に垂直な方向(導光板12の主面に垂直な方向)に反射するように回折する。
【0024】
第1液晶回折素子14に回折された光は、第1液晶回折素子14が配置される主面とは反対側の主面に到達するが、導光板12内を全反射する角度を外れているため、導光板12から出射される。また、光が出射される主面には、第2液晶回折素子16が配置されているが、第2液晶回折素子16は、第1液晶回折素子14が反射する円偏光を透過するため、導光板12から出射された光は第2液晶回折素子16を透過する。第2液晶回折素子16を透過した光は、反射型表示装置18に入射する。
【0025】
ここで、画像表示装置20が表示した画像は、白表示であるため、反射型表示装置18に入射する光は、反射型表示装置18が画像を表示するために用いる外光として利用することが可能である。従って、反射型表示装置18は、入射した光を利用して画像を表示する。
【0026】
反射型表示装置18が表示する画像の光は、第2液晶回折素子16、導光板12、および、第1液晶回折素子14を透過して使用者Uに到達し、反射型表示装置18の表示面上にある実像として表示される。
なお、反射型表示装置18から出射される光は、直線偏光または無偏光であればよい。これにより、第2液晶回折素子16および第1液晶回折素子14を透過可能となる。例えば、反射型表示装置18が液晶セルにより画像表示を行うものである場合、出射光は直線偏光となる。
【0027】
次に、図3を用いて、画像表示システム10が画像表示装置20による画像を虚像として表示する状態(以下、単に「虚像を表示する状態」ともいう)を説明する。
画像表示システム10が虚像を表示する状態の場合には、画像表示装置20は、画像表示を行う。前述のとおり、画像表示の場合には、画像表示装置20は、第2液晶回折素子16が反射する円偏光で画像表示を行う。
【0028】
画像表示装置20が画像表示して照射した光は、導光板12の端面から導光板12内に入射して導光板12内を導光される(図3中矢印参照)。導光板12内を導光された光は、導光板12の他方の主面に配置されている第2液晶回折素子16によって反射、回折される。図3に示す例においては、第2液晶回折素子16は、その表面に斜め方向から入射する光を第2液晶回折素子16の表面に垂直な方向(導光板12の主面に垂直な方向)に反射するように回折する。
【0029】
第2液晶回折素子16に回折された光は、第2液晶回折素子16が配置される主面とは反対側の主面に到達するが、導光板12内を全反射する角度を外れているため、導光板12から出射される。また、光が出射される主面には、第1液晶回折素子14が配置されているが、第1液晶回折素子14は、第2液晶回折素子16が反射する円偏光を透過するため、導光板12から出射された光は第1液晶回折素子14を透過する。第1液晶回折素子14を透過した光は、使用者Uに到達する。この光による画像は、第2液晶回折素子16が反射した光の進行方向と平行であって、画像表示装置20から使用者Uまでの光路長と同じ距離の位置にある虚像Vとして使用者Uに視認される。すなわち、虚像Vは、視認側(使用者U)から見て実像(反射型表示装置18)よりも奧側に視認される。
【0030】
画像表示システム10は、実像を表示する状態と虚像を表示する状態とを高速に交互に切り替えることで、すなわち、画像表示装置の白表示と画像表示とを交互に表示し、および、その表示のタイミングに同期した円偏光の旋回方向の切り替えを行うことで、実像と虚像とが奥行方向に重なった重畳画像として表示することができる。
【0031】
一例として、このような本発明の画像表示システム10をカーナビゲーションシステムに利用し、例えば、虚像Vとして地図画像を表示し、実像として、位置情報、天気および到着時刻等の付加情報を表示する。この際には、使用者Uには、地図画像に対して、付加情報が手前に浮き上がったように視認される。
この結果、使用者Uは、観察する重畳画像において、地図画像と付加情報とを一目で識別することができ、自身に必要な情報を正確かつ迅速に知見できる。
【0032】
なお、実像を表示する状態と虚像を表示する状態とを切り替える時間(表示する時間)は、実像と虚像とが重畳画像として視認できる観点から、30ms以下が好ましく、16ms以下がより好ましく、8ms以下がさらに好ましい。
【0033】
ここで、本発明の画像表示システムにおいて、画像表示装置20が画像表示および白表示を行う際の光は、導光板12内を導光される際に、導光板12の両主面で全反射を繰り返しながら導光されてもよいし、両主面で全反射されることなく、直接、第1液晶回折素子14または第2液晶回折素子16に向かって導光されるようにしてもよい。
画像表示装置20からの光が、直接、第1液晶回折素子14または第2液晶回折素子16に向かう構成とする場合には、画像表示装置20は、白表示を行う際には、第1液晶回折素子14に向けて光を照射し、画像表示を行う際には、第2液晶回折素子16に向けて光を照射するように、画像表示と白表示との表示タイミングに同期して、光の照射方向を切り替えればよい。
【0034】
また、本発明の画像表示システムは、さらに、正のレンズと、負のレンズと、を有していてもよい。
このような画像表示システムの例を図4および図5に示す。図4は、画像表示システム10が反射型表示装置18による画像を実像として表示する状態を説明する図である。図5は、画像表示システム10が画像表示装置20による画像を虚像として表示する状態を説明する図である。
【0035】
図4および図5に示す画像表示システム10は、導光板12と、第1液晶回折素子14と、第2液晶回折素子16と、反射型表示装置18と、画像表示装置20と、正のレンズ22と、負のレンズ24と、を有する。
【0036】
導光板12、第1液晶回折素子14、第2液晶回折素子16、反射型表示装置18、および、画像表示装置20については、図1図3に示す例と同様であるためその説明は省略する。
【0037】
正のレンズ22は、入射した平行光束を収束させる働きを持つ凸レンズである。図に示すように、正のレンズ22は、第1液晶回折素子14よりも視認側に、第1液晶回折素子14に対面するように配置されている。正のレンズ22は、その光軸が第1液晶回折素子14の表面(主面)に垂直になるように配置されている。
【0038】
負のレンズ24は、入射した平行光束を発散させる働きを持つ凹レンズである。図に示すように、負のレンズ24は、第2液晶回折素子16と、反射型表示装置18との間に配置されている。負のレンズ24は、その光軸が反射型表示装置18の表面(表示面)に垂直になるように配置されている。
【0039】
このような画像表示システム10の作用について図4および図5を用いて説明する。
図4は、画像表示システム10が反射型表示装置18による画像を実像として表示する状態を説明する図である。図5は、画像表示システム10が画像表示装置20による画像を虚像として表示する状態を説明する図である。
【0040】
まず、図4を用いて、画像表示システム10が実像を表示する状態を説明する。
画像表示システム10が実像を表示する状態の場合には、画像表示装置20は、白表示を行う。前述のとおり、白表示の場合には、画像表示装置20は、第1液晶回折素子14が反射する円偏光で白表示を行う。
【0041】
画像表示装置20が白表示して照射した光は、導光板12の端面から導光板12内に入射して導光板12内を導光される(図4中矢印参照)。導光板12内を導光された光は、導光板12の一方の主面に配置されている第1液晶回折素子14によって反射、回折される。図4に示す例においては、第1液晶回折素子14は、その表面に斜め方向から入射する光を第1液晶回折素子14の表面に垂直な方向(導光板12の主面に垂直な方向)に反射するように回折する。
【0042】
第1液晶回折素子14に回折された光は、第1液晶回折素子14が配置される主面とは反対側の主面に到達するが、導光板12内を全反射する角度を外れているため、導光板12から出射される。また、光が出射される主面には、第2液晶回折素子16が配置されているが、第2液晶回折素子16は、第1液晶回折素子14が反射する円偏光を透過するため、導光板12から出射された光は第2液晶回折素子16を透過する。第2液晶回折素子16を透過した光は、負のレンズ24に入射して発散されて反射型表示装置18に入射する。
【0043】
ここで、画像表示装置20が表示した画像は、白表示であるため、反射型表示装置18に入射する光は、反射型表示装置18が画像を表示するために用いる外光として利用することが可能である。従って、反射型表示装置18は、入射した光を利用して画像を表示する。
【0044】
反射型表示装置18が表示する画像の光は、負のレンズ24によって発散された後、第2液晶回折素子16、導光板12、および、第1液晶回折素子14を透過し、正のレンズ22によって集光されて使用者Uに到達し、反射型表示装置18の表示面上にある実像として表示される。
【0045】
ここで、正のレンズ22のレンズパワーと負のレンズ24のレンズパワーの絶対値は略同じとすることで、負のレンズ24の発散させる作用と、正のレンズ22の収束させる作用とを相殺して、負のレンズ24、および、正のレンズ22で、反射型表示装置18が表示する実像が歪んだり、拡大または縮小されることを防止できる。
【0046】
次に、図5を用いて、画像表示システム10が虚像を表示する状態を説明する。
画像表示システム10が虚像を表示する状態の場合には、画像表示装置20は、画像表示を行う。前述のとおり、画像表示の場合には、画像表示装置20は、第2液晶回折素子16が反射する円偏光で画像表示を行う。
【0047】
画像表示装置20が画像表示して照射した光は、導光板12の端面から導光板12内に入射して導光板12内を導光される(図5中矢印参照)。導光板12内を導光された光は、導光板12の他方の主面に配置されている第2液晶回折素子16によって反射、回折される。図5に示す例においては、第2液晶回折素子16は、その表面に斜め方向から入射する光を第2液晶回折素子16の表面に垂直な方向(導光板12の主面に垂直な方向)に反射するように回折する。
【0048】
第2液晶回折素子16に回折された光は、第2液晶回折素子16が配置される主面とは反対側の主面に到達するが、導光板12内を全反射する角度を外れているため、導光板12から出射される。また、光が出射される主面には、第1液晶回折素子14が配置されているが、第1液晶回折素子14は、第2液晶回折素子16が反射する円偏光を透過するため、導光板12から出射された光は第1液晶回折素子14を透過する。
【0049】
第1液晶回折素子14を透過した光は、正のレンズ22に入射する。正のレンズ22に入射した光は収束されて、正のレンズ22の前(視認側)の空間で結像した後、使用者Uに到達する。この光による画像は、正のレンズ22によって光が結像した位置に虚像Vとして使用者Uに視認される。すなわち、虚像Vは視認側(使用者U)から見て実像(反射型表示装置18)よりも手前に視認される。
【0050】
図4および図5に示す画像表示システム10においても、実像を表示する状態と虚像を表示する状態とを高速に交互に切り替えることで、すなわち、画像表示装置の白表示と画像表示とを交互に表示し、その表示のタイミングに同期した円偏光の旋回方向の切り替えを行うことで、実像と虚像とが奥行方向に重なった重畳画像として表示することができる。
【0051】
この画像表示システム10をカーナビゲーションシステムに利用する場合には、例えば、実像として地図画像を表示し、虚像Vとして、位置情報、天気および到着時刻等の付加情報を表示する。この際には、使用者Uには、地図画像に対して、付加情報が手前に浮き上がったように視認される。
【0052】
次に、本発明の画像表示システムの各構成要素について説明する。
【0053】
〔画像表示装置〕
画像表示装置は、画像表示システムにおいて虚像となる画像を表示し、反射型表示装置の外光となる白表示を行うものである。また、前述のとおり、画像表示装置は、右円偏光により表示と、左円偏光による表示とを切り替え可能である。
また、前述のとおり、画像表示装置は、光の照射方向を切り替える機能を有していてもよい。
【0054】
円偏光を切り替える機能、および、光の照射方向を変える機能を有する画像表示装置を有する画像表示システムの一例を図6に示す。
【0055】
図6に示す画像表示システム10は、導光板12と、第1液晶回折素子14と、第2液晶回折素子16と、反射型表示装置18と、画像表示装置20と、正のレンズ22と、負のレンズ24と、を有する。画像表示装置20は、画像表示素子26と、位相差可変装置28と、角度可変ミラー29と、を有する。
【0056】
導光板12、第1液晶回折素子14、第2液晶回折素子16、反射型表示装置18、正のレンズ22、および、負のレンズ24については上述した例と同様の構成を有するため、以下においては、画像表示装置20が有する画像表示素子26、位相差可変装置28、および、角度可変ミラー29について説明する。
【0057】
図6に示す例においては、画像表示素子26、位相差可変装置28、および、角度可変ミラー29は、導光板12の一方の側面側に配置されており、導光板12の主面に垂直な方向にこの順に配置されている。画像表示素子26は導光板12の主面に垂直な方向に位相差可変装置28に向けて光を照射する。この光は、位相差可変装置28を透過して、角度可変ミラー29に入射する。角度可変ミラー29に入射した光は、角度可変ミラー29によって、その進行方向を導光板12の側面方向に曲げられる。角度可変ミラー29によって進行方向を曲げられた光は導光板12の側面から導光板12内に入射する。
【0058】
(画像表示素子)
画像表示素子26には、制限はなく、例えば、画像表示装置に用いられる公知の表示装置が、各種、利用可能である。一例として、画像表示素子としては、プロジェクター、液晶ディスプレイ(LCOS:Liquid Crystal On Siliconなどを含む)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)、マイクロLED、DLP(Digital Light Processing)、および、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いたスキャニング方式ディスプレイ等が挙げられる。
【0059】
なお、画像表示素子26は、各液晶回折素子が異なる選択反射波長の複数のコレステリック液晶層を有する場合には、各コレステリック液晶層が反射する波長の光を用いて多色画像を表示する画像表示素子が用いられる。
【0060】
本発明の画像表示システムに用いられる画像表示素子26は、各種の画像表示装置に用いられる公知の投映レンズ(コリメートレンズ)を有していてもよい。
【0061】
画像表示素子26は、虚像として表示する画像の表示と、白表示とを高速に交互に表示する。
【0062】
(位相差可変装置)
位相差可変装置28は、画像表示素子26が照射した光の偏光状態を右円偏光と左円偏光とで切り替える装置である。
例えば、画像表示素子26が直線偏光を照射する場合には、位相差可変装置28は、遅相軸の方向またはレタデーションの大きさを切り替えることができるアクティブ位相差層を有する。
【0063】
遅相軸の方向を切り替えるアクティブ位相差層は、公知のものが、各種、利用可能である。一例として、1/4波長板として作用する液晶セルを用いて、例えばアクティブシャッター方式の立体画像表示装置のように、印加する電圧の切替えによって、遅相軸(液晶化合物の光学軸)の方向を、互いに直交する方向に切り替えるアクティブ位相差層が例示される。
【0064】
他方、レタデーションの大きさを切り替えるアクティブ位相差層も、公知のものが、各種、利用可能である。一例として、VA(Vertical Alignment)方式のような液晶セルを用い、印加する電圧の切替えによって、例えば位相差がゼロの状態と、位相差が1/2波長の場合とを切り替えるアクティブ位相差層が例示される。
【0065】
位相差可変装置28が、1/4波長板として作用するアクティブ位相差層を有し、遅相軸の方向、または、レタデーションの大きさを切り替えることで、画像表示素子26が照射した直線偏光を右円偏光に変換する状態と、左円偏光に変換する状態とを切り替えることができる。位相差可変装置28は、画像表示素子26の画像表示と白表示との切り替えに同期して、画像表示素子26が照射した光を右円偏光に変換する状態と、左円偏光に変換する状態とを切り替える。
【0066】
なお、位相差可変装置28がアクティブ位相差層を用いて右円偏光と左円偏光とを切り替える構成の場合には、画像表示素子は直線偏光を照射することが好ましく、OLED等の無偏光を照射する装置の場合には、直線偏光子を有する構成とすればよい。
【0067】
(角度可変ミラー)
角度可変ミラー29は、画像表示素子26が照射し、位相差可変装置28を透過した光が導光板に入射する際の角度を切り替えるものである。
角度可変ミラー29としては、公知のMEMSミラー、ポリゴンミラー等が利用可能である。
【0068】
例えば、角度可変ミラー29がMEMSミラーの場合には、位相差可変装置28を透過し、MEMSミラーに入射した光を反射して光の進行方向を曲げる。その際、MEMSによって、ミラーの角度を切り替えることで、光が導光板12の端面に入射する際の角度を切り替える。角度可変ミラー29は、画像表示素子26の画像表示と白表示との切り替えに同期して、角度可変ミラー29が照射した光の導光板12の端面に対する入射角度を切り替える。
【0069】
あるいは、角度可変ミラー29がポリゴンミラーの場合には、位相差可変装置28を透過し、ポリゴンミラーに入射した光を反射して光の進行方向を曲げる。その際、ポリゴンミラーを回転させることで、反射する光の角度を切り替えればよい。
【0070】
〔反射型表示装置〕
反射型表示装置は、画像表示システムにおいて実像となる画像を表示するものである。
反射型表示装置は、入射する外光を反射板で反射し画像を表示する表示装置であれば特に制限はなく、従来公知の反射型表示装置が適宜利用可能である。反射型表示装置は、バックライトもしくはフロントライトを有さないものであってもよいし、バックライトもしくはフロントライトを有しバックライトもしくはフロントライトも利用する反透過型の表示装置であってもよい。
例えば、反射型表示装置は、液晶セルと、反射板とを有し、入射した外光を反射板で反射して液晶セルで透過率を変えることで画像を表示する。
【0071】
また、反射型表示装置は、従来公知の反射型表示装置と同様に、液晶セルを挟む直線偏光子、および、カラーフィルター等を有していてもよい。
【0072】
〔導光板〕
導光板は、入射した光を内部で導光するものである。
導光板としては特に限定はなく、画像表示装置等で用いられている従来公知の導光板を用いることができる。
【0073】
導光板の厚さには特に制限はないが、画像表示システム全体の体積を小さくする観点から、1mm~500mmが好ましく、10mm~100mmがより好ましく、30mm~50mmがさらに好ましい。
また、導光板の主面の大きさには特に制限はなく、画像表示装置が表示する虚像の大きさ、反射型表示装置が表示する実像の大きさ、画像表示素子の表示面の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【0074】
〔液晶回折素子〕
第1液晶回折素子および第2液晶回折素子としては、公知の液晶回折素子を適宜用いることができる。なお、以下の説明において、第1液晶回折素子および第2液晶回折素子を区別する必要がない場合にはまとめて液晶回折素子ともいう。
【0075】
液晶回折素子は、液晶化合物を含む組成物を用いて形成されたコレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有する回折素子である。また、液晶回折素子が有するコレステリック液晶層は、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有しており、これにより、反射する光を回折する。
【0076】
液晶回折素子の一例を、図7および図8を用いて説明する。
図7は、液晶回折素子が有するコレステリック液晶層の平面図である。図8は、液晶回折素子の一例を模式的に示す図である。
図7および図8に示す液晶回折素子は、コレステリック液晶相を固定してなり、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層34を有する。コレステリック液晶層は、選択反射波長の一方の円偏光を反射し、他の波長域の光および他方の円偏光を透過するものである。したがって、コレステリック液晶層を有する回折素子は、反射型の回折素子である。
【0077】
図8に示す例では、液晶回折素子は、支持体30と、配向膜32と、コレステリック液晶層34と、を有する。
なお、図8に示す例の液晶回折素子は、支持体30と、配向膜32と、コレステリック液晶層34とを有するが、本発明は、これに制限はされない。液晶回折素子は、例えば、導光板12に貼り合わせた後に、支持体30を剥離した、配向膜32およびコレステリック液晶層34のみを有するものでもよい。または、液晶回折素子は、例えば、導光板12に貼り合わせた後に、支持体30および配向膜32を剥離した、コレステリック液晶層34のみを有するものでもよい。
【0078】
<支持体>
支持体30は、配向膜32、および、コレステリック液晶層34を支持するものである。
支持体30は、配向膜32、コレステリック液晶層34を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
なお、支持体30は、対応する光に対する透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
【0079】
支持体30の厚さには、制限はなく、液晶回折素子の用途および支持体30の形成材料等に応じて、配向膜32、コレステリック液晶層34を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
支持体30の厚さは、1~2000μmが好ましく、3~500μmがより好ましく、5~250μmがさらに好ましい。
【0080】
支持体30は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の支持体30としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体30が例示される。多層である場合の支持体30の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
【0081】
<配向膜>
液晶回折素子において、支持体30の表面には配向膜32が形成される。
配向膜32は、コレステリック液晶層34を形成する際に、液晶化合物40を所定の液晶配向パターンに配向するための配向膜である。
後述するが、本発明において、コレステリック液晶層34は、液晶化合物40に由来する光学軸40A(図7参照)の向きが、面内の一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。従って、配向膜32は、コレステリック液晶層34が、この液晶配向パターンを形成できるように、形成される。
以下の説明では、『光学軸40Aの向きが回転』を単に『光学軸40Aが回転』とも言う。
【0082】
配向膜32は、公知の各種のものが利用可能である。
例えば、ポリマーなどの有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、ならびに、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチルなどの有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett:ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜、等が例示される。
【0083】
ラビング処理による配向膜32は、ポリマー層の表面を紙または布で一定方向に数回こすることにより形成できる。
配向膜32に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005-097377号公報、特開2005-099228号公報、および、特開2005-128503号公報記載の配向膜32等の形成に用いられる材料が好ましい。
【0084】
液晶回折素子においては、配向膜32は、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜32とした、いわゆる光配向膜が好適に利用される。すなわち、液晶回折素子においては、配向膜32として、支持体30上に、光配向材料を塗布して形成した光配向膜が、好適に利用される。
偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0085】
本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-076839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-094071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-012823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
【0086】
配向膜32の厚さには、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜32の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0087】
配向膜32の形成方法には、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じた公知の方法が、各種、利用可能である。一例として、配向膜32を支持体30の表面に塗布して乾燥させた後、配向膜32をレーザ光によって露光して、配向パターンを形成する方法が例示される。
【0088】
図11に、配向膜32を露光して、配向パターンを形成する露光装置の一例を概念的に示す。
図11に示す露光装置60は、レーザ62を備えた光源64と、レーザ62が出射したレーザ光Mの偏光方向を変えるλ/2板65と、レーザ62が出射したレーザ光Mを光線MAおよびMBの2つに分離する偏光ビームスプリッター68と、分離された2つの光線MAおよびMBの光路上にそれぞれ配置されたミラー70Aおよび70Bと、λ/4板72Aおよび72Bと、を備える。
なお、光源64は直線偏光P0を出射する。λ/4板72Aは、直線偏光P0(光線MA)を右円偏光PRに、λ/4板72Bは直線偏光P0(光線MB)を左円偏光PLに、それぞれ変換する。
【0089】
配向パターンを形成される前の配向膜32を有する支持体30が露光部に配置され、2つの光線MAと光線MBとを配向膜32上において交差させて干渉させ、その干渉光を配向膜32に照射して露光する。
この際の干渉により、配向膜32に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。これにより、配向状態が周期的に変化する配向パターンを有する配向膜(以下、パターン配向膜ともいう)が得られる。
【0090】
露光装置60においては、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節できる。すなわち、露光装置60においては、交差角αを調節することにより、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する配向パターンにおいて、光学軸40Aが回転する1方向における、光学軸40Aが180°回転する1周期の長さを調節できる。
【0091】
このような配向状態が周期的に変化した配向パターンを有する配向膜32上に、コレステリック液晶層を形成することにより、後述するように、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンを有する、コレステリック液晶層34を形成できる。
また、λ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転することにより、光学軸40Aの回転方向を逆にすることができる。
【0092】
上述のとおり、パターン配向膜は、パターン配向膜の上に形成されるコレステリック液晶層中の液晶化合物の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンとなるように、液晶化合物を配向させる配向パターンを有する。パターン配向膜が、液晶化合物を配向させる向きに沿った軸を配向軸とすると、パターン配向膜は、配向軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している配向パターンを有するといえる。パターン配向膜の配向軸は、吸収異方性を測定することで検出することができる。例えば、パターン配向膜に直線偏光を回転させながら照射して、パターン配向膜を透過する光の光量を測定した際に、光量が最大または最小となる向きが、面内の一方向に沿って漸次変化して観測される。
【0093】
なお、本発明において、配向膜32は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要件ではない。
例えば、支持体30をラビング処理する方法、支持体30をレーザ光などで加工する方法等によって、支持体30に配向パターンを形成することにより、コレステリック液晶層34が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する構成とすることも、可能である。すなわち、本発明においては、支持体30を配向膜として作用させてもよい。
【0094】
<コレステリック液晶層>
液晶回折素子において、配向膜32の表面には、コレステリック液晶層34が形成される。
上述したように、コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶層であり、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層である。液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層は、コレステリック液晶層の主面に垂直な断面においてSEMにて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜している。
【0095】
コレステリック液晶層34は、図8に概念的に示すように、通常のコレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層と同様に、液晶化合物40が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物40が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチとして、螺旋状に旋回する液晶化合物40が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
【0096】
周知のように、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、波長選択反射性を有する。後に詳述するが、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域は、上述した螺旋1ピッチの厚さ方向の長さに依存する。
従って、液晶回折素子に波長選択性を持たせ、回折素子ごとに異なる波長の光を回折する構成とする場合には、各液晶回折素子ごとに、コレステリック液晶層の螺旋ピッチPを調整して、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域を適宜設定すればよい。
【0097】
図7に示すように、コレステリック液晶層34のX-Y面において、液晶化合物40は、X-Y面内の互いに平行な複数の配列軸Dに沿って配列しており、それぞれの配列軸D上において、液晶化合物40の光学軸40Aの向きは、配列軸Dに沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している。ここで、説明のため、配列軸DがX方向に向いているとする。また、Y方向においては、光学軸40Aの向きが等しい液晶化合物40が等間隔で配向している。
【0098】
なお、「液晶化合物40の光学軸40Aの向きが配列軸Dに沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している」とは、液晶化合物40の光学軸40Aと配列軸Dとのなす角度が、配列軸D方向の位置により異なっており、配列軸Dに沿って光学軸40Aと配列軸Dとのなす角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで徐々に変化していることを意味する。つまり、配列軸Dに沿って配列する複数の液晶化合物40は、図7に示すように、光学軸40Aが配列軸Dに沿って一定の角度ずつ回転しながら変化する。
【0099】
なお、配列軸D方向に互いに隣接する液晶化合物40の光学軸40Aの角度の差は、45°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましく、より小さい角度であるのがさらに好ましい。
【0100】
また、本明細書において、液晶化合物40が棒状液晶化合物である場合、液晶化合物40の光学軸40Aは、棒状液晶化合物の分子長軸を意図する。一方、液晶化合物40が円盤状液晶化合物である場合、液晶化合物40の光学軸40Aは、円盤状液晶化合物の円盤面に対する法線方向に平行な軸を意図する。
【0101】
コレステリック液晶層34においては、このような液晶化合物40の液晶配向パターンにおいて、面内で光学軸40Aが連続的に回転して変化する配列軸D方向において、液晶化合物40の光学軸40Aが180°回転する長さ(距離)を、液晶配向パターンにおける1周期の長さΛとする。
すなわち、配列軸D方向に対する角度が等しい2つの液晶化合物40の、配列軸D方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。具体的には、図7に示すように、配列軸D方向と光学軸40Aの方向とが一致する2つの液晶化合物40の、配列軸D方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。以下の説明では、この1周期の長さΛを『1周期Λ』とも言う。
コレステリック液晶層34の液晶配向パターンは、この1周期Λを、配列軸D方向すなわち光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する一方向に繰り返す。
【0102】
一方、コレステリック液晶層34を形成する液晶化合物40は、配列軸D方向と直交する方向(図7においてはY方向)、すなわち、光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい。
言い換えれば、コレステリック液晶層34を形成する液晶化合物40は、Y方向では、液晶化合物40の光学軸40Aと配列軸D方向とが成す角度が等しい。
【0103】
図8に示すコレステリック液晶層34のX-Z面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察すると、図9に示すような明部42と暗部44とが交互に配列された配列方向が、主面(X-Y面)に対して所定角度で傾斜している縞模様が観察される。このようなSEM断面において、隣接する明部42から明部42、または、暗部44から暗部44の、明部42または暗部44が成す線の法線方向における間隔が1/2ピッチに概ね相当する。
【0104】
以下、液晶層による回折の作用について説明する。
従来のコレステリック液晶層において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸は、主面(X-Y面)に対して垂直であり、その反射面は主面(X-Y面)と平行な面である。また、液晶化合物の光学軸は、主面(X-Y面)に対して傾斜していない。言い換えると、光学軸は主面(X-Y面)に対して平行である。したがって、従来のコレステリック液晶層のX-Z面をSEMにて観察すると、明部と暗部とが交互に配列された配列方向は主面(X-Y面)と垂直となる。
コレステリック液晶相は鏡面反射性であるため、例えば、コレステリック液晶層に法線方向から光が入射される場合、法線方向に光が反射される。
【0105】
これに対して、明部と暗部の配列方向が傾斜した構成のコレステリック液晶層34は、入射した光を、鏡面反射に対して配列軸D方向に傾けて反射する。コレステリック液晶層34は、面内において、配列軸D方向(所定の一方向)に沿って光学軸40Aが連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有するものである。以下、図10を参照して説明する。
【0106】
一例として、コレステリック液晶層34は、赤色光の右円偏光RRを選択的に反射するコレステリック液晶層であるとする。従って、コレステリック液晶層34に光が入射すると、コレステリック液晶層34は、赤色光の右円偏光RRのみを反射し、それ以外の光を透過する。
【0107】
コレステリック液晶層34では、液晶化合物40の光学軸40Aが配列軸D方向(一方向)に沿って回転しながら変化している。コレステリック液晶層34に形成された液晶配向パターンは、配列軸D方向に周期的なパターンである。そのため、コレステリック液晶層34に入射した赤色光の右円偏光RRには、図10に概念的に示すように、液晶配向パターンの周期に応じた方向に反射(回折)され、反射された赤色光の右円偏光RRは、XY面(コレステリック液晶層の主面)に対して配列軸D方向に傾いた方向に反射(回折)される。
【0108】
従って、コレステリック液晶層34において、光学軸40Aが回転する一方向である配列軸D方向を、適宜、設定することで、光の反射方向(回折角度)を調節できる。
【0109】
また、同じ波長で、同じ旋回方向の円偏光を反射する場合に、配列軸D方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆にすることで、円偏光の反射方向を逆にできる。
例えば、図7および図8においては、配列軸D方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りで、ある円偏光が配列軸D方向に傾けて反射されるが、これを反時計回りとすることで、ある円偏光が配列軸D方向とは逆方向に傾けて反射される。
【0110】
さらに、同じ液晶配向パターンを有する液晶層では、液晶化合物40の螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向によって、反射方向が逆になる。
例えば、螺旋の旋回方向が右捩じれの場合、右円偏光を選択的に反射するものであり、配列軸D方向に沿って光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有することにより、右円偏光を配列軸D方向に傾けて反射する。
また、例えば、螺旋の旋回方向が左捩じれの場合、左円偏光を選択的に反射するものであり、配列軸D方向に沿って光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する液晶層は、左円偏光を配列軸D方向と逆方向に傾けて反射する。
【0111】
液晶配向パターンを有する液晶層では、1周期Λが短いほど、入射光に対する反射光の角度が大きくなる。すなわち、1周期Λが短いほど、入射光に対して、反射光を大きく傾けて反射できる。従って、各回折素子が有する液晶層における液晶配向パターンの1周期は、各回折素子の回折角度、配置等に応じて適宜設定すればよい。
これらの回折素子の回折構造の周期(1周期Λ)は0.1μm~10μmが好ましく、0.1μm~1μmがより好ましく、0.1μm~0.8μmがさらに好ましく、入射する光の波長λ以下がさらに好ましい。
【0112】
ここで、図8に示す例では、コレステリック液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40が、主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが平行に配向している構成としたがこれに限定はされない。例えば、コレステリック液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40が、主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが傾斜して配向している構成であってもよい。
【0113】
また、コレステリック液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40の主面(X-Y面)に対する傾斜角度(チルト角)は厚さ方向(Z方向)に一様であってもよいし、液晶化合物40のチルト角が厚さ方向で異なっている領域を有していてもよい。
例えば、コレステリック液晶層の、配向膜32側の界面において液晶化合物40の光学軸40Aが主面に平行であり(プレチルト角が0であり)、配向膜32側の界面から厚さ方向に離間するにしたがって、液晶化合物40のチルト角が大きくなって、その後、他方の界面(空気界面)側まで一定のチルト角で液晶化合物が配向されている構成であってもよい。
【0114】
このように、コレステリック液晶層においては、上下界面の一方の界面において、液晶化合物の光学軸がプレチルト角を有している構成であってもよく、両方の界面でプレチルト角を有する構成であってもよい。また、両界面でプレチルト角が異なっていてもよい。
このように液晶化合物がチルト角を有して(傾斜して)いることにより、光が回折する際に実効的な液晶化合物の複屈折率が高くなり、回折効率を高めることができる。
【0115】
液晶化合物40の光学軸40Aと主面(X-Y面)とのなす平均角度(平均チルト角)は、5~80°が好ましく、10~50°がより好ましい。なお、平均チルト角は、コレステリック液晶層34のX-Z面を偏光顕微鏡観察することにより測定できる。なかでも、コレステリック液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40は、主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが同一の方向に傾斜配向することが好ましい。
なお、上記チルト角は、コレステリック液晶層断面の偏光顕微鏡観察において、液晶化合物40の光学軸40Aと主面とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
【0116】
回折素子(コレステリック液晶層)に垂直に入射した光は、コレステリック液晶層内において斜め方向に、屈曲力が加わり斜めに進む。コレステリック液晶層内において光が進むと、本来垂直入射に対して所望の回折角が得られるように設定されている回折周期等の条件とのずれが生じるために、回折ロスが生じる。
液晶化合物をチルトさせた場合、チルトさせない場合と比較して、光が回折する方位に対してより高い複屈折率が生じる方位が存在する。この方向では実効的な異常光屈折率が大きくなるため、異常光屈折率と常光屈折率の差である複屈折率が高くなる。
狙った回折する方位に合わせて、チルト角の方位を設定することによって、その方位での本来の回折条件とのずれを抑制することができ、結果としてチルト角を持たせた液晶化合物を用いた場合の方が、より高い回折効率を得ることができると考えられる。
【0117】
また、チルト角は液晶層の界面の処理によって制御されることが望ましい。支持体側の界面においては、配向膜にプレチルト処理をおこなうことにより液晶化合物のチルト角を制御することが出来る。例えば、配向膜の形成の際に配向膜に紫外線を正面から露光した後に斜めから露光することにより、配向膜上に形成するコレステリック液晶層中の液晶化合物にプレチルト角を生じさせることが出来る。この場合には、2回目の照射方向に対して液晶化合物の単軸側が見える方向にプレチルトする。但し2回目の照射方向に対して垂直方向の方位の液晶化合物はプレチルトしないため、面内でプレチルトする領域とプレチルトしない領域が存在する。このことは、狙った方位に光を回折させるときにその方向に最も複屈折を高めることに寄与するので回折効率を高めるのに適している。
さらに、コレステリック液晶層中または配向膜中にプレチルト角を助長する添加剤を加えることも出来る。この場合、回折効率を更に高める因子として添加剤を利用できる。
この添加剤は空気側の界面のプレチルト角の制御にも利用できる。
【0118】
ここで、コレステリック液晶層は、法線方向および法線に対して傾斜した方向から面内レタデーションReを測定した際に、遅相軸面内および進相軸面内のいずれかにおいて、面内レタデーションReが最小となる方向が法線方向から傾斜しているのが好ましい。具体的には、面内レタデーションReが最小となる方向が法線と成す測定角の絶対値が5°以上であることが好ましい。言い換えると、コレステリック液晶層の液晶化合物が主面に対して傾斜し、かつ、傾斜方向がコレステリック液晶層の明部および暗部に略一致していることが好ましい。なお、法線方向とは、主面に対して垂直な方向である。
コレステリック液晶層がこのような構成を有することにより、液晶化合物が主面に平行であるコレステリック液晶層に比して、高い回折効率で円偏光を回折できる。
【0119】
コレステリック液晶層の液晶化合物が主面に対して傾斜し、かつ、傾斜方向が明部および暗部に略一致している構成では、反射面に相当する明部および暗部と、液晶化合物の光学軸とが一致している。そのため、光の反射(回折)に対する液晶化合物の作用が大きくなり、回折効率を向上できる。その結果、入射光に対する反射光の光量をより向上できる。
【0120】
コレステリック液晶層の進相軸面または遅相軸面において、コレステリック液晶層の光学軸傾斜角の絶対値は5°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上がさらに好ましい。
光学軸傾斜角の絶対値を15°以上とすることにより、より好適に、液晶化合物の方向を明部および暗部に一致させ、回折効率を向上できる点で好ましい。
【0121】
また、X-Z面においてSEMにより観察されるコレステリック液晶相に由来する明部42および暗部44からなる明暗線の形状が波状(波打ち構造)である構成のコレステリック液晶層を用いることもできる。明暗線の形状が波打ち構造のコレステリック液晶層は、光を拡散することができるため、投映型画像表示システムにおいて表示される画像の視野角を大きくすることができる。
【0122】
好ましくは、波打ち構造とは、縞模様を成す明部または暗部の連続線において、コレステリック液晶層の平面に対する傾斜角度の絶対値が5°以上である領域Mが少なくとも1つ存在し、かつ、領域Mを面方向に挟んで最も近い位置にある、傾斜角度が0°の山または谷が特定される構造である。
傾斜角度0°の山または谷とは、凸状、凹状を含むが、傾斜角度0°であれば、階段状および棚状の点も含む。波打ち構造は、縞模様の明部または暗部の連続線において、傾斜角度の絶対値が5°以上である領域Mと、それを挟む山または谷とが、複数、繰り返すのが好ましい。
【0123】
波打ち構造を有するコレステリック液晶層は、ラビング等の配向処理を施さない形成面にコレステリック液晶層を形成することで、形成できる。
【0124】
<<コレステリック液晶層の形成方法>>
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を層状に固定して形成できる。
コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造が好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、コレステリック液晶層において、液晶化合物40は液晶性を示さなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、液晶性を失っていてもよい。
【0125】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましい。
また、コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤およびキラル剤を含んでいてもよい。
【0126】
--重合性液晶化合物--
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
コレステリック液晶相を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0127】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1-272551号公報、特開平6-016616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-080081号公報、および、特開2001-328973号公報等に記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0128】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9-133810号公報に開示されているような液晶性高分子、および、特開平11-293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0129】
--円盤状液晶化合物--
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
【0130】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75~99.9質量%であるのが好ましく、80~99質量%であるのがより好ましく、85~90質量%であるのがさらに好ましい。
【0131】
--界面活性剤--
コレステリック液晶層を形成する際に用いる液晶組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、安定的に、または迅速に、コレステリック液晶相の配向に寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0132】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-099248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0133】
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~1質量%がさらに好ましい。
【0134】
--キラル剤(光学活性化合物)--
キラル剤(カイラル剤)はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0135】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-080478号公報、特開2002-080851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0136】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0137】
--重合開始剤--
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~12質量%であるのがさらに好ましい。
【0138】
--架橋剤--
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度向上の効果が得られやすく、コレステリック液晶相の安定性がより向上する。
【0139】
--その他の添加剤--
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0140】
液晶組成物は、コレステリック液晶層を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0141】
コレステリック液晶層を形成する際には、コレステリック液晶層の形成面に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶層とするのが好ましい。
すなわち、配向膜32上にコレステリック液晶層を形成する場合には、配向膜32に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を形成するのが好ましい。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
【0142】
塗布された液晶組成物は、必要に応じて乾燥および/または加熱され、その後、硬化され、コレステリック液晶層を形成する。この乾燥および/または加熱の工程で、液晶組成物中の液晶化合物がコレステリック液晶相に配向すればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0143】
配向させた液晶化合物は、必要に応じて、さらに重合される。重合は、熱重合、および、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いるのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、50~1500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射する紫外線の波長は250~430nmが好ましい。
【0144】
また、コレステリック液晶層の形成方法としては、円盤状液晶化合物を含む組成物を用いて、上記円盤状液晶化合物の分子軸が表面に対して傾斜している傾斜液晶層を形成し、傾斜液晶層上に、液晶化合物を含む組成物を用いて、コレステリック液晶層を形成する方法も好適に用いられる。
このような傾斜液晶層を用いたコレステリック液晶層の形成方法は、国際公開2019/181247の段落[0049]~[0194]に記載されている。
【0145】
コレステリック液晶層の厚さには、制限はなく、液晶回折素子の用途、コレステリック液晶層に要求される光の反射率、および、コレステリック液晶層の形成材料等に応じて、必要な光の反射率が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
【0146】
ここで、第1液晶回折素子、および、第2液晶回折素子は、波長選択性を有するコレステリック液晶層を1層有する構成であってもよいし、2層以上有する構成であってもよい。
【0147】
液晶回折素子が2以上のコレステリック液晶層を有する場合には、2以上のコレステリック液晶層はそれぞれ、SEMによって観察されるコレステリック液晶層の断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、明部から明部、または暗部から暗部の傾斜面に対する法線方向の間隔を1/2ピッチとした際に、コレステリック液晶層のピッチPが互いに異なることが好ましい。すなわち、2以上のコレステリック液晶層は波長選択性が互いに異なることが好ましい。
【0148】
例えば、液晶回折素子は、赤色光を選択的に反射するコレステリック液晶層と緑色光を選択的に反射するコレステリック液晶層との2層のコレステリック液晶層を有するものでもよく、赤色光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、緑色光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、青色光を選択的に反射するコレステリック液晶層との3層の液晶層を有するものでもよい。
【0149】
液晶回折素子が複数のコレステリック液晶層を有する構成の場合には、例えば、各コレステリック液晶層が赤色光、緑色光および青色光の3色の光をそれぞれ反射する構成とすることで、画像表示装置が表示するカラー画像、および、白画像を導光することができる。
また、例えば、液晶回折素子は、選択反射中心波長が異なる3層のコレステリック液晶層を有し、赤色光、緑色光および青色光等の可視光から選択される1色または2色と、赤外線および/または紫外線を反射する構成でもよく、可視光以外の光のみを反射する構成でもよい。
あるいは、液晶回折素子は、選択反射中心波長が異なるコレステリック液晶層を2層または4層以上、有するものであってもよい。また、液晶回折素子は、赤色光、緑色光および青色光等の可視光に加えて、赤外線および/または紫外線等の可視光以外の光を反射する構成でもよく、あるいは、各コレステリック液晶層が、赤外線および/または紫外線等の可視光以外の光を反射する構成でもよい。
【0150】
また、液晶回折素子が2以上のコレステリック液晶層有する場合には、2以上のコレステリック液晶層はそれぞれ、液晶配向パターンにおける液晶化合物由来の光学軸の向きが面内方向に180°回転する長さ、すなわち、回折構造の1周期Λが、互いに異なることが好ましい。
具体的には、コレステリック液晶層のピッチPが互いに異なる場合には、ピッチP(選択反射中心波長の長さ)の順列と、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける1周期Λの長さの順列とが等しいことが好ましい。これにより、各コレステリック液晶層の、SEM断面における明部および暗部の傾斜角度を略一致させることができ、各コレステリック液晶層の選択反射波長の光に対する回折角度を略一致させることができる。すなわち、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に回折することができる。
【0151】
例えば、液晶回折素子が第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との2つのコレステリック液晶層を有する場合に、第1コレステリック液晶層のピッチをP1、1周期をΛ1とし、第2コレステリック液晶層のピッチをP2、1周期をΛ2とすると、P1<P2、Λ1<Λ2を満たすことが好ましい。
【0152】
以上、本発明の画像表示システムについて詳細に説明したが、本発明は、上述の例に制限はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0153】
カーナビゲーションシステム等に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0154】
10 画像表示システム
12 導光板
14 第1液晶回折素子
16 第2液晶回折素子
18 反射型表示装置
20 画像表示装置
22 正のレンズ
24 負のレンズ
26 画像表示素子
28 位相差可変装置
29 角度可変ミラー
32 配向膜
34 コレステリック液晶層
40 液晶化合物
40A 光学軸
42 明部
44 暗部
60 露光装置
62 レーザ
64 光源
65 λ/2板
68 ビームスプリッター
70A,70B ミラー
72A,72B λ/4板
U 使用者
V 虚像
Λ 1周期
D 配列軸
P 螺旋ピッチ
R 右円偏光
L 左円偏光
M レーザ光
MA,MB 光線
O 直線偏光
R 右円偏光
L 左円偏光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11