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特開2022-75003シリコーン系分散剤およびフィラー分散液
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  • 特開-シリコーン系分散剤およびフィラー分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075003
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】シリコーン系分散剤およびフィラー分散液
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20220511BHJP
   C08G 77/18 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20220511BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20220511BHJP
【FI】
C08G77/50
C08G77/18
C08L83/14
B01F17/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185512
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 脩吾
(72)【発明者】
【氏名】出山 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄斗
【テーマコード(参考)】
4D077
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AA08
4D077AB04
4D077AB05
4D077AC05
4D077BA02
4D077BA15
4D077DD56X
4D077DE37X
4J002AB01Y
4J002AE03W
4J002AE05W
4J002BG03W
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002CD01W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CF28W
4J002CK02W
4J002CP03W
4J002CP04W
4J002CP05W
4J002CP05X
4J002CP19X
4J002DA017
4J002DA027
4J002DA037
4J002DE107
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ037
4J002DK007
4J002DL007
4J002EA006
4J002EA026
4J002EC036
4J002EC066
4J002EF026
4J002EF056
4J002EH036
4J002EH046
4J002EH056
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD097
4J002FD117
4J002FD20X
4J002GB00
4J002GH01
4J002GH02
4J002GJ01
4J002GP00
4J002GP03
4J002GQ02
4J002HA06
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB01
4J246BA010
4J246BA01X
4J246BA04X
4J246BB021
4J246BB02X
4J246BB140
4J246BB142
4J246BB14X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA130
4J246CA13E
4J246CA13M
4J246CA13X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246FA221
4J246FC161
4J246FC231
4J246GA01
4J246GA02
4J246GC43
4J246HA05
4J246HA11
4J246HA21
4J246HA32
4J246HA37
4J246HA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液媒体中における優れたフィラー分散性を付与可能な分散剤を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物であり、片末端にアルコキシシリルを有し、かつ数平均分子量(Mn)が13000以上のオルガノポリシロキサンからなる、シリコーン系分散剤とする。

式(1)中、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基、または炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基であり、Xは、酸素、または炭素数2~8の2価炭化水素基であり、aは1~3の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物であり、片末端にアルコキシシリルを有し、かつ数平均分子量(Mn)が13000以上のオルガノポリシロキサンからなる、シリコーン系分散剤。

式(1)中、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基、または炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基であり、Xは、酸素、または炭素数2~8の2価炭化水素基であり、nは1以上の整数であり、aは1~3の整数である。
【請求項2】
フィラー、液媒体、および請求項1に記載のシリコーン系分散剤を含有する、フィラー分散液。
【請求項3】
フィラー100質量部に対して、液媒体の含有量が4~50質量部であり、シリコーン系分散剤の含有量が0.1~20質量部である、請求項2に記載のフィラー分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液媒体中における優れたフィラー分散性を付与可能な分散剤、およびそれを含んでなるフィラー分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素、アルカノール、アルケノール、脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、シリコーンオイル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの液媒体を用いた製品として、化粧品、液体トナー、油性インクジェットインク、弱溶剤型塗料、潤滑油、洗浄剤、熱伝導材料、導電材料、光学材料などがある。また、これらの液媒体中に顔料をはじめとするフィラーなどを分散させることで、用途に応じた機能が付与されている。
【0003】
例えば、近年、トランジスター、IC、メモリー素子等の電子部品を登載したプリント回路基板やハイブリッドICの高密度・高集積化、二次電池(セル式)の容量の増大にともなって、電子部品や電池等の電子・電気機器から発生する熱を効率よく放熱するために、熱伝導材料として、オルガノポリシロキサン、および酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末等の熱伝導性フィラーからなる熱伝導性シリコーン組成物が広く利用されている。そして、特に、高い放熱量に対応すべく、多量の熱伝導性フィラーを充填した熱伝導性シリコーン組成物が提案されている。しかしながら、熱抵抗を低減させる、または熱伝導率を向上するために、放熱グリースや放熱シート等に充填する熱伝導性フィラーの充填率を向上させても、放熱グリースや放熱シート等に使用されている樹脂組成物の粘度が上昇してしまい、樹脂組成物の吐出が困難となる。そのため、これまで、放熱グリースや放熱シート等の熱抵抗を下げる、または熱伝導率を高めるために、充填する熱伝導性フィラーの組み合わせについて種々検討がなされている(特許文献1、特許文献2、または特許文献3を参照)。しかしながら、従来検討されている熱伝導性フィラーの組み合わせでは、熱伝導率の観点からすると十分でなかったり、熱伝導率が高くても粘度が高かったりするものなどであって、これらを両立するものはなかった。
【0004】
その問題を解決するため、特許文献4には、熱伝導性フィラーを充填した熱伝導性シリコーン組成物において、片末端にトリメトキシシリルを有するオルガノポリシロキサンが組成物の粘度を低下させ、流動性を付与する役割を有することが記載されている。粘度低下や流動性付与へのトリメトキシシリルを有するオルガノポリシロキサンの分子量の影響に関しては、分子量が大きい方が好ましいことが記載されているが、実施例では分子量が5000以上である片末端にトリメトキシシリルを有するオルガノポリシロキサンを用いた具体的な例は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-054099号公報
【特許文献2】特開2004-091743号公報
【特許文献3】特開2000-063873号公報
【特許文献4】特開2020-066678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液媒体中における優れたフィラー分散性を付与可能な分散剤、およびそれを含んでなるフィラー分散液に関するものである。本発明の課題は、液媒体中における優れたフィラー分散性を付与可能な分散剤を提供することである。また、本発明のさらなる課題は、上記分散剤を用いて得られる、フィラーが安定して分散されているフィラー分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分散剤として、数平均分子量(Mn)が13000以上である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンが有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す分散剤が提供される。
項1. 式(1)で表される化合物であり、片末端にアルコキシシリルを有し、かつ数平均分子量(Mn)が13000以上のオルガノポリシロキサンからなる、シリコーン系分散剤。

式(1)中、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基、または炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基であり、Xは、酸素、または炭素数2~8の2価炭化水素基であり、nは1以上の整数であり、aは1~3の整数である。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示すフィラー分散液が提供される。
項2. フィラー、液媒体、および項1に記載のシリコーン系分散剤を含有するフィラー分散液。
項3. フィラー100質量部に対して、液媒体の含有量が4~50質量部であり、シリコーン系分散剤の含有量が0.1~20質量部である、項2に記載のフィラー分散液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液媒体中にフィラーを安定して分散させることが可能な分散剤を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記分散剤を用いて得られる、フィラーが安定して分散されているフィラー分散液を提供することができる。本発明のフィラー分散液は、例えば、化粧品、液体現像剤、油性インクジェットインク、紫外線硬化型インクジェットインク、弱溶剤型塗料、オフセットインク、潤滑剤、洗浄剤、殺虫剤、離形剤、接着剤、熱伝導材料、導電材料、光学材料などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1および比較例1~比較例3の分散剤における、せん断速度に対するせん断粘度の変化をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
<シリコーン系分散剤>
本発明の分散剤は、液媒体中にフィラーを分散させるために用いる、数平均分子量(Mn)が13000以上である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンである。そして、本発明の分散剤は、式(1)で表される片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンであって、数平均分子量(Mn)が13000以上である、シリコーン系分散剤である。
【0015】

式(1)中、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基、または炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、Rは独立して、炭素数1~12の1価飽和炭化水素基であり、Xは、酸素、または炭素数2~8の2価炭化水素基であり、nは1以上の整数であり、aは1~3の整数である。
【0016】
アルコキシシリルとしては、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリプロポキシシリル、メチルジメトキシシリル、メチルジエトキシシリル、エチルジメトキシシリル、エチルジエトキシシリル、プロピルジメトキシシリル、プロピルジエトキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルエトキシシリル、ジエチルメトキシシリル、ジエチルエトキシシリル、ジプロピルメトキシシリル、ジプロピルエトキシシリル、等が挙げられる。これらの中でも、フィラーとの親和性、製造原料の入手容易性等の観点から、トリメトキシシリルが好ましい。
【0017】
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定される分散剤のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が13000以上である。数平均分子量が13000未満であると、分子量が小さすぎるためにフィラーを分散させた際の立体反発が発揮されず、安定な分散液を得ることができない。
【0018】
本発明の分散剤は、液媒体中にフィラーを分散させるために用いられる。液媒体としては、炭化水素、アルカノール、アルケノール、脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、シリコーンオイル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。これらの液媒体は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱伝導材料として好適な液媒体としては、シリコーンオイルである。
【0019】
炭化水素としては、ヘキサン、ヘキセン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、ヘプテン、シクロヘキサン、シクロヘキサンヘプタン、オクタン、オクテン、2-エチルヘキサン、ノナン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、ウンデカン、オクタデカン、C8-20のイソパラフィン、スクアラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン、1-オクテン、2-オクテン、1-ノネン、2-ノネン、1-デセン、2-デセン、1-ウンデセン、2-ウンデセン、1-ドデセン、2-ドデセン、1-トリデセン、2-トリデセン、1-テトラデセン、2-テトラデセン、1-ペンタデセン、2-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、2-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、2-ヘプタデセン、1-オクタデセン、2-オクタデセンジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、などを挙げることができる。
【0020】
アルカノールまたはアルケノールとしては、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、イソデカノール、ドデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどを挙げることができる。
【0021】
飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノレイン酸、ウンデシレン酸、イソノナン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、2-エチルヘキサン酸などを挙げることができる。
【0022】
飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、または不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステルとしては、ラウリン酸メチル、ウンデシレン酸ヘプチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスチル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリル脂肪酸などを挙げることができる。さらには、グリセリンとのトリエステルであるアーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、ローズヒップ油などの油脂;ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、カルナウバロウなどの蝋;などを挙げることができる。
【0023】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0024】
アクリル樹脂としては、たとえば、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0025】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラックなどのフェノール系グリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールなどのアルコール系グリシジルエーテルなどの主剤と、硬化剤との組み合せなどが挙げられる。なお、硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、脂環式ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、3級アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらの硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、主剤と硬化剤の反応を促進させる反応促進剤を用いることもできる。反応促進剤としては、例えば、フェノール、p-t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、クレゾール、トリフェニルフォスファイト、サリチル酸、トリエタノールアミンなどが挙げられる。これらの反応促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ウレタン樹脂としては、水酸基含有化合物とポリイソシアナート化合物の反応物、例えば、ハードセグメントとして短鎖グリコールや短鎖エーテルとイソシアナート化合物との反応で得られるポリウレタンと、ソフトセグメントとして長鎖グリコールや長鎖エーテルとイソシアナート化合物の反応で得られるポリウレタンの直鎖状のマルチブロックコポリマーを挙げることができる。また、ウレタンプレポリマーとポリイソシアナート化合物の反応物(硬化物)などを挙げることができる。
【0027】
フィラーとしては、無機顔料、有機顔料、体質顔料、充填剤、無機微粒子、ダイヤモンド、グラフェン、グラファィト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、クレイ、導電性フィラー、熱伝導剤、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース、セルロースナノフィバーなどを挙げることができる。これらのフィラーは、強度や機能性の向上およびコスト低減のために、プラスチックス、ゴム、塗料、インクなどに添加される粒子状、粉状、または繊維状の物質である。フィラーの結晶形、粒子径、表面状態、表面処理の有無などについては特に制限されない。熱伝導材料のフィラー(熱伝導剤)としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素であることが好ましく、より好ましくは酸化アルミニウムである。
【0028】
<フィラー分散液>
本発明のフィラー分散液は、フィラー、液媒体、およびこの液媒体中にフィラーを分散させる分散剤を含有する。そして、分散剤が、前述のシリコーン系分散剤である。液媒体としては、前述の液媒体を使用する。なかでも、シリコーンオイルを用いることが好ましい。なお、液媒体以外にも、例えば、種々の有機溶媒、モノマー、液状オリゴマーなども使用することができる。
【0029】
フィラーとしては、前述のフィラーを使用する。なかでも、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウムまたは窒化ホウ素であることが好ましく、より好ましくは酸化アルミニウムである。
【0030】
フィラー分散液は、フィラー100質量部に対して、液媒体の含有量が4~50質量部で含有することが好ましく、5~30質量部含有することがさらに好ましい。また、フィラー分散液は、フィラー100質量部に対して、シリコーン系分散剤の含有量が0.1~20質量部で含有することが好ましく、0.5~10質量部含有することがさらに好ましい。フィラー100質量部に対するシリコーン系分散剤の含有量が0.1質量部未満であると、フィラーを安定して分散させることが困難になる場合がある。一方、フィラー100質量部に対するシリコーン系分散剤の含有量が10質量部超であると、フィラーの分散に寄与しない過剰のシリコーン系分散剤が含まれることになる。
【0031】
本発明のフィラー分散液には、その目的が損なわれない範囲で、他の界面活性剤、可塑剤および消泡剤などの各種添加剤を配合させることができる。
【0032】
本発明のフィラー分散液は、公知のフィラー分散液の製造方法に準じて製造することができる。例えば、シリコーン系分散剤を添加した液媒体中にフィラーを添加した後、攪拌し混合する方法、フィラーに液媒体およびシリコーン系分散剤を添加した後、攪拌し混合する方法などが挙げられる。攪拌、混合、あるいは分散するための分散機器としては、公知の分散機を使用することができる。例えば、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ホモジナイザー、ディスパー、自転公転型ミキサーなどが挙げられる。また超音波発生浴中において分散処理を行うこともできる。
【実施例0033】
以下、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における「部」、「%」は特記のない限りいずれも質量基準(質量部、質量%)である。また、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0034】
<分子量の測定>
オルガノポリシロキサンの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比を分子量分布指数(Mw/Mn)とした。標準試料としてポリスチレンを用い、ポリスチレン換算分子量を測定した。
なおGPC法によるポリスチレン換算分子量測定は、以下の測定条件で行ったものとする。
a)測定機器:日本分光製HPLC LC-2000Plus series
b)カラム:Shodex KF-804L ×2本
c)オーブン温度:40℃
d)溶離液:トルエン0.7mL/min
e)標準試料:ポリスチレン
f)注入量:20μL
g)濃度:0.05g/10mL
h)試料調製:トルエンを溶媒として、室温で攪拌して溶解させた。
【0035】
<合成例1:数平均分子量が17000である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンの合成>
撹拌器、温度計および還流コンデンサを装備した1000mlの4つ口フラスコに、片末端にヒドロシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=17100)697g、ビニルトリメトキシシラン(JNC社製S210、分子量=148.2)14gをそれぞれ秤量し、窒素雰囲気下、撹拌しながら70℃まで昇温した。70℃に到達後、Karstedt触媒として、ユミコアジャパン社製Pt-VTSC-3.0X 81μLを添加し、70℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却し、還流コンデンサを、収集フラスコを有する蒸留ヘッドに交換した。次に、真空ポンプを用いて0.3kPaAの減圧条件下、120℃で1時間加熱し、生成物中に残留している揮発性物質を留去することで、片末端にトリメトキシシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=16900、重量平均分子量(Mw)=17600、分子量分布指数(Mw/Mn)=1.04)703gを取得した。
【0036】
<合成例2:数平均分子量が1500である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンの合成>
撹拌器、温度計および還流コンデンサを装備した500mlの4つ口フラスコに、片末端にヒドロシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=1300)300g、ビニルトリメトキシシラン(JNC社製S210、分子量=148.2)55gをそれぞれ秤量し、窒素雰囲気下、撹拌しながら70℃まで昇温した。70℃に到達後、Karstedt触媒として、ユミコアジャパン社製Pt-VTSC-3.0X 4μLを添加し、70℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却し、還流コンデンサを、収集フラスコを有する蒸留ヘッドに交換した。次に、真空ポンプを用いて5kPaAの減圧条件下、150℃で1時間加熱後、さらに0.1kPaAの減圧条件下、150℃で2時間加熱し生成物中に残留している揮発性物質を留去することで、片末端にトリメトキシシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=1500、重量平均分子量(Mw)=1700、分子量分布指数(Mw/Mn)=1.14)338gを取得した。
【0037】
<合成例3:数平均分子量が6500である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンの合成>
撹拌器、温度計および還流コンデンサを装備した2000mlの4つ口フラスコに、片末端にヒドロシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=5000)1000g、ビニルトリメトキシシラン(JNC社製S210、分子量=148.2)45gをそれぞれ秤量し、窒素雰囲気下、撹拌しながら70℃まで昇温した。70℃に到達後、Karstedt触媒として、ユミコアジャパン社製Pt-VTSC-3.0X 12μLを添加し、70℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却し、還流コンデンサを、収集フラスコを有する蒸留ヘッドに交換した。次に、真空ポンプを用いて5kPaAの減圧条件下、150℃で1時間加熱後、さらに0.1kPaAの減圧条件下、150℃で2時間加熱し生成物中に残留している揮発性物質を留去することで、片末端にトリメトキシシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=6500、重量平均分子量(Mw)=6900、分子量分布指数(Mw/Mn)=1.05)1010gを取得した。
【0038】
<合成例4:数平均分子量が12000である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンの合成>
撹拌器、温度計および還流コンデンサを装備した1000mlの4つ口フラスコに、片末端にヒドロシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=11100)659g、ビニルトリメトキシシラン(JNC社製S210、分子量=148.2)20gをそれぞれ秤量し、窒素雰囲気下、撹拌しながら70℃まで昇温した。70℃に到達後、Karstedt触媒として、ユミコアジャパン社製Pt-VTSC-3.0X 76μLを添加し、70℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却し、還流コンデンサを、収集フラスコを有する蒸留ヘッドに交換した。次に、真空ポンプを用いて0.3kPaAの減圧条件下、120℃で1時間加熱し、生成物中に残留している揮発性物質を留去することで、片末端にトリメトキシシリルを有するポリジメチルシロキサン(数平均分子量(Mn)=11600、重量平均分子量(Mw)=17600、分子量分布指数(Mw/Mn)=1.04)663gを取得した。
【0039】
実施例1および比較例1~比較例3については、表1~表4に示したように、合成例1~合成例4で合成した片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンを用いて、以下の方法で評価した。結果を表1~表4および図1に示す。
【0040】
<分散性評価用サンプルの調製>
軟膏壺容器に、液媒体として、シリコーンオイルであるポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製KF-96-1000CS)2.6g、シリコーン系分散剤として、合成例1から合成例4で合成した片末端にトリメトキシシリルを有するオルガノポリシロキサン0.1g、を計量した。さらに分散質として、平均径13μmのアルミナ(デンカ株式会社製DAW-10)10gを計量し、スパチュラを用いて撹拌した。次いで、シンキー社あわとり練太郎 真空タイプ(型式:ARV-310)を用いて、常圧条件下にて2000rpmで1分間、減圧条件下にて2000rpmで1分間、混錬し、分散性評価用サンプルを調製した。
【0041】
<分散性評価>
上記のとおり調製した分散性評価用サンプルを、レオメーター(アントンパール社製、MCR302)を用い、下記条件にて、異なるせん断速度におけるせん断粘度を測定することで、分散性を評価した。
a)プレート形状:円形平板25mmφ
b)試料厚み:1mm
c)温度:25±1℃
d)せん断速度:0.001~1S-1
【0042】
表1.分散性評価結果1



【0043】
表2.分散性評価結果2


【0044】
表3.分散性評価結果3

【0045】
表4.分散性評価結果4

【0046】
本発明の数平均分子量(Mn)が13000以上である片末端にトリメトキシシリルを有するオルガノポリシロキサンは、数平均分子量(Mn)が13000未満である片末端にアルコキシシリルを有するオルガノポリシロキサンと比較して、分散性の評価において各せん断速度のせん断粘度が低く抑えられた結果となり、分散剤として良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のシリコーン系分散剤は、化粧品、液体現像剤、油性インクジェットインク、紫外線硬化型インクジェットインク、弱溶剤型塗料、オフセットインク、潤滑剤、洗浄剤、殺虫剤、離形剤、接着剤、熱伝導材料、導電材料、光学材料などの分野において、液媒体中にフィラーを安定して分散させるための分散剤として利用できる。
図1