IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

<>
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図1
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図2
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図3
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図4
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図5
  • 特開-形状測定装置および異常検出方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075107
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】形状測定装置および異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01B5/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185676
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 里志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智之
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA51
2F062CC08
2F062EE01
2F062EE31
2F062FF02
2F062HH01
2F062HH21
2F062JJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接触センサの感度の異常を検出できる形状測定装置を提供する。
【解決手段】形状測定装置は、ワークに接触可能な接触子と、ワークに対して接触子を相対移動させる移動機構4と、移動機構4を制御する移動制御部71と、ワークに対する接触子の接触量を検出し、接触量に応じた検出信号Sd2を出力する接触センサ6と、接触子がワークに押し当てられる移動機構4の動作中に接触センサ6から出力される検出信号Sd2の変化に基づいて、接触センサ6の感度の異常を判定する異常判定部75と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に接触可能な接触子と、
前記被測定物に対して前記接触子を相対移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御する移動制御部と、前記被測定物に対する前記接触子の接触量を検出し、前記接触量に応じた検出信号を出力する接触センサと、
前記接触子が前記被測定物に押し当てられる前記移動機構の動作中に前記接触センサから出力される前記検出信号の変化に基づいて、前記接触センサの感度の異常を判定する異常判定部と、を備える、形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の形状測定装置において、
前記異常判定部は、所定時間に対する前記検出信号の変化量と所定の閾値とを比較することにより、前記接触センサの感度の異常を判定する、形状測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の形状測定装置において、
前記異常判定部は、前記検出信号の所定変化量に対する所要時間と所定の閾値とを比較することにより、前記接触センサの感度の異常を判定する、形状測定装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の形状測定装置において、
前記異常判定部は、前記接触子が前記被測定物に押し当てられるときの前記接触子の相対移動速度ごとに異なる前記閾値を用いる、形状測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の形状測定装置において、
前記移動制御部は、前記異常判定部により前記接触センサの感度が異常であると判定された場合、前記移動機構の前記動作を停止させる、形状測定装置。
【請求項6】
被測定物に接触可能な接触子と、前記被測定物に対する前記接触子の接触量を検出し、前記接触量に応じた検出信号を出力する接触センサと、を備える形状測定装置において行われる異常検出方法であって、
前記接触子を前記被測定物に押し当てる接触工程と、
前記接触工程の間に前記接触センサから出力される前記検出信号の変化に基づいて、前記接触センサの感度の異常を判定する異常判定工程と、を含む、異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式の形状測定装置および形状測定装置における接触センサの異常を検出する異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の形状や寸法等の測定を行う接触式の形状測定装置が知られている(例えば特許文献1)。このような形状測定装置は、被測定物に接触可能な接触子と、被測定物に対する接触子の接触量(例えば押圧や押込み量)を検出する接触センサと、を備えており、接触センサにより検出される接触量に基づいて、被測定物に対する接触子の接触状態を制御しながら被測定物の測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-279012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、接触子または接触センサ等に何らかの異常が生じることにより、接触センサの感度が低下してしまうことがある。このような場合、被測定物に対する接触子の接触状態を正しく制御できなくなり、接触子が被測定物に強く接触し、接触子や接触センサが損傷してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、接触センサの感度の異常を検出できる形状測定装置および異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の形状測定装置は、被測定物に接触可能な接触子と、前記被測定物に対して前記接触子を相対移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する移動制御部と、前記被測定物に対する前記接触子の接触量を検出し、前記接触量に応じた検出信号を出力する接触センサと、前記接触子が前記被測定物に押し当てられる前記移動機構の動作中に前記接触センサから出力される前記検出信号の変化に基づいて、前記接触センサの感度の異常を判定する異常判定部と、を備える。
【0007】
本発明の形状測定装置において、接触センサの感度に異常が発生した場合、接触子が被測定物に押し当てられる移動機構の動作中に接触センサから出力される検出信号の変化は、正常時よりも鈍くなる。このため、異常判定部は、移動機構の動作中に接触センサから出力される検出信号の変化を監視し、当該変化を正常時の変化と比べること等により、接触センサの感度の異常を判定できる。
このような本発明の形状測定装置によれば、接触子や接触センサが損傷する前に、接触センサの感度の異常を検出することができる。
なお、被測定物に対する接触子の接触量は、例えば被測定物に対する接触子の押圧や押込み量、接触子に加わる応力など、被測定物に対する接触子の接触の度合いを表すものであればよい。
【0008】
本発明の形状測定装置において、前記異常判定部は、所定時間に対する前記検出信号の変化量と所定の閾値とを比較することにより、前記接触センサの感度の異常を判定してもよい。
あるいは、本発明の形状測定装置において、前記異常判定部は、前記検出信号の所定変化量に対する所要時間と所定の閾値とを比較することにより、前記接触センサの感度の異常を判定してもよい。
このような構成によれば、接触センサの感度の異常を好適に検出することができる。
【0009】
本発明の形状測定装置において、前記異常判定部は、前記接触子が前記被測定物に押し当てられるときの前記接触子の相対移動速度ごとに異なる前記閾値を用いることが好ましい。
すなわち、本発明の形状測定装置において、接触子が被測定物に押し当てられる移動機構の動作中に接触センサから出力される検出信号の変化は、移動機構に設定された接触子の相対移動速度に応じて異なる。このため、異常判定部は、接触子の相対移動速度に適した閾値を利用して異常判定を行うことにより、接触センサの感度の異常をより正確に検出することができる。
【0010】
本発明の形状測定装置において、前記移動制御部は、前記異常判定部により前記接触センサの感度が異常であると判定された場合、前記移動機構の前記動作を停止させることが好ましい。
このような構成によれば、被測定物の測定中、接触子が被測定物に強く接触してしまうことを防止できる。その結果、接触子や接触センサが損傷してしまうことを防止できる。
【0011】
本発明の異常検出方法は、被測定物に接触可能な接触子と、前記被測定物に対する前記接触子の接触量を検出し、前記接触量に応じた検出信号を出力する接触センサと、を備える形状測定装置において行われる異常検出方法であって、前記接触子を前記被測定物に押し当てる接触工程と、前記接触工程の間に前記接触センサから出力される前記検出信号の変化に基づいて、前記接触センサの感度の異常を判定する異常判定工程と、を含む。
このような異常検出方法によれば、上述した形状測定装置の効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる形状測定装置を示す斜視図。
図2】前記実施形態の測定機本体の概略構成を示すブロック図。
図3】接触子が被測定物に押し当てられる様子を模式的に示す図。
図4】前記実施形態の接触センサから出力される検出信号の変化を示すグラフ。
図5】前記実施形態の接触センサから出力される検出信号の変化を示すグラフであって、接触センサの感度に関する異常判定方法の一例を説明するグラフ。
図6】前記実施形態の接触センサから出力される検出信号の変化を示すグラフであって、接触センサの感度に関する異常判定方法の他の例を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の形状測定装置1は、ワークWの形状等を測定する三次元測定機であり、ワークWが設置される測定機本体2と、測定機本体2の制御や測定結果の分析などを行う制御装置9と、を備える。
【0014】
〔測定機本体2の構成〕
測定機本体2は、図1に示すように、ステージ3に設けられた移動機構4と、移動機構4により3軸方向(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向)に移動可能なプローブ5と、測定機本体2の内部などに設けられたコントローラ7(図2参照)と、を備える。
【0015】
ステージ3には、被測定物であるワークWが載置される。
移動機構4は、プローブ5を移動させるための構成として、ガイド41、コラム42、サポータ43、ビーム44、Xスライダ45、およびZスライダ46を備える。
ガイド41は、ステージ3の+X側において、ステージ3に対してY軸方向に沿って設けられ、コラム42は、ガイド41に対してY軸方向にスライド移動可能に設けられる。サポータ43は、ステージ3の-X側において、ステージ3に対してエアベアリング等を介して設けられる。ビーム44は、コラム42とサポータ43との間にX方向に沿って架橋される。Xスライダ45は、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム44上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる。Zスライダ46は、Xスライダ45の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる。Zスライダ46の先端部には、プローブ5が固定される。
【0016】
また、移動機構4は、コラム42をY軸方向に駆動するY軸駆動部41Aと、Xスライダ45をX軸方向に駆動するX軸駆動部44Aと、Zスライダ46をZ軸方向に駆動するZ軸駆動部45Aと、を備える。Y軸駆動部41A、X軸駆動部44AおよびZ軸駆動部45Aは、それぞれ、図示略の駆動源、および、駆動源から供給される駆動力を伝達する駆動伝達機構を含んで構成される。
【0017】
また、移動機構4には、コラム42、Xスライダ45、およびZスライダ46の各軸方向の位置、すなわちステージ3上におけるプローブ5の座標を検出するための座標検出機構48(図2参照)が設けられている。
例えば、座標検出機構48は、コラム42に設けられたY軸スケールセンサと、Xスライダ45に設けられたX軸スケールセンサと、Zスライダ46に設けられたZ軸スケールセンサとを含む機構であり、各センサからスケール信号Sx,Sy,Szを出力する。
【0018】
プローブ5は、図1に示すように、移動機構4に保持されるプローブ本体51と、プローブ本体51に対して着脱可能に取り付けられるスタイラス52とを備える。スタイラス52の先端には、例えば球状の接触子52Aが設けられている。
また、プローブ5には、ワークWに対する接触子52Aの接触量を検出する接触センサ6のセンサ本体61(図2参照)が設けられている。
【0019】
本実施形態の接触センサ6は、いわゆる加振型センサであり、スタイラス52を振動させると共にスタイラス52の振動を検出することで、ワークWに対する接触子52Aの接触量(具体的には押圧)を検出するセンサである。
【0020】
具体的には、本実施形態の接触センサ6は、図2に示すように、プローブ5に設けられたセンサ本体61と、センサ本体61から出力される信号を処理するセンサ回路部62とを含んで構成される。なお、本実施形態のセンサ回路部62は、コントローラ7内に設けられている。
【0021】
センサ本体61は、加振素子611および検出素子612を有する。加振素子611および検出素子612は、それぞれ、圧電素子などによって構成される。
加振素子611は、図示を省略する発振器から加振信号を与えられることで共振状態に励振され、スタイラス52を振動させる。
検出素子612は、スタイラス52の振動を検出し、スタイラス52の振動状態に応じた振動波形成分を含む振動信号Sd1を出力する。
【0022】
センサ回路部62は、振幅抽出回路などを含んで構成される。センサ回路部62は、センサ本体61から入力される振動信号Sd1の振幅を計測し、振動信号Sd1の振幅に応じた出力値Vを有する検出信号Sd2を出力する。
【0023】
ここで、接触子52AがワークWに接触したとき、スタイラス52の振動はワークWによって拘束され、検出素子612から出力される振動信号Sd1の振幅は、ワークWに対する接触子52Aの押圧に応じて減衰する。具体的には、ワークWに対する接触子52Aの押圧が大きくなるほど、振動信号Sd1の振幅は大きく減衰する。よって、ワークWに対する接触子52Aの押圧が大きくなるほど、センサ回路部62から出力される検出信号Sd2の出力値Vは小さくなる。
すなわち、本実施形態の接触センサ6は、ワークWに対する接触子52Aの接触量(押圧)に応じた検出信号Sd2を出力する。
【0024】
なお、本実施形態では、説明の簡略化のため、X,Y,Z軸方向のうちの任意の一方向(例えばX軸方向)の接触を検出する接触センサ6の構成例を説明しているが、接触センサ6は、X,Y,Z軸方向の各方向の接触を検出可能な構成を有してもよい。
【0025】
コントローラ7は、上述のセンサ回路部62を含むと共に、移動制御部71、座標検出部72、接触判定部73、測定部74および異常判定部75を含む。
【0026】
移動制御部71は、制御装置9から入力される測定指示などに従って移動機構4の動作を制御する。例えば、ワークWをタッチ測定する場合、移動制御部71は、測定経路に設定された測定点ごとに接触子52AがワークWに接触するように、移動機構4の動作を制御する。ここで、移動制御部71は、ワークWに接触子52Aを接触させるとき、後述の接触判定部73からタッチ信号Stが入力されるまで接触子52AをワークWに押し込む。
【0027】
座標検出部72は、座標検出機構48から入力されるスケール信号Sx,Sy,Szをカウントすることで、プローブ5の座標を検出する。
【0028】
接触判定部73は、センサ回路部62から入力される検出信号Sd2に基づいて、接触子52AがワークWに対して適切に接触したか否かを判定する。例えば、接触判定部73は、検出信号Sd2の出力値Vと所定の目標値Vtとを比較し、検出信号Sd2の出力値Vが目標値Vt以下である間、接触子52AがワークWに接触したことを表すタッチ信号Stを出力する。
【0029】
測定部74は、接触判定部73からタッチ信号Stが入力される毎に、座標検出部72に検出されたプローブ5の座標を取り込み、測定値として制御装置9に出力する。
【0030】
異常判定部75は、センサ回路部62から入力される検出信号Sd2に基づいて、接触センサ6の感度に関する異常の有無を判定する。
なお、異常判定部75は、IC等によってハードウェア的に構成されてもよいし、CPUを備えるコンピュータを中心に構成され、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0031】
〔異常判定方法〕
本実施形態の形状測定装置1における異常検出方法について説明する。
なお、以下では、任意の測定点においてワークWをタッチ測定する場合について説明する。
【0032】
まず、移動制御部71により制御された移動機構4の動作により、プローブ5がワークWに向かって移動し、接触子52AがワークWに押し当てられる(接触工程)。
ここで、図3は、接触子52AがワークWに対して非接触である状態から、接触子52AがワークWに対して押し込まれた状態まで移行するときの接触状態の変化を模式的に示している。図4は、図3に示す各状態に対応する検出信号Sd2の出力値Vの変化を示している。また、図4では、接触センサ6の感度が正常である場合の検出信号Sd2の出力値Vを実線で例示し、接触センサ6の感度が異常である場合の検出信号Sd2の出力値Vを点線で例示している。
【0033】
図3および図4に示すように、時刻t0では、接触子52AがワークWに対して非接触状態であり、時刻t1で接触子52AがワークWに接触を開始する。その後、ワークWに対して接触子52Aが押し込まれ、検出信号Sd2の出力値Vが徐々に低下していく。
【0034】
接触センサ6の感度が正常である場合、時刻t2にて、接触子52Aが適切な押圧でワークWに接触し、検出信号Sd2の出力値Vが目標値Vtに到達する。このとき、接触判定部73は、接触子52AがワークWに接触したことを表すタッチ信号Stを出力開始する。タッチ信号Stを入力された測定部74は、座標検出機構48に検出された接触子52Aの座標を取り込み、測定値として制御装置9に出力する。また、タッチ信号Stを入力された移動制御部71は、移動機構4を制御することで、ワークWに向かうプローブ5の移動を停止させる。すなわち、ワークWに対する接触子52Aの押込みを停止する。
【0035】
一方、接触センサ6の感度が異常である場合、ワークWに対して接触子52Aが押し込まれる間の検出信号Sd2の変化の傾きが、接触センサ6の感度が正常である場合と比べて小さい。このため、時刻t2にて、接触子52Aが適切な押圧でワークWに接触している場合であっても、検出信号Sd2の出力値Vは目標値Vtに到達しない。
このような場合、従来技術では、時刻t2後も、ワークWに向かうプローブ5の移動が継続する。そして、時刻t2よりも後の時刻t3にて、検出信号Sd2が目標値Vtに到達するが、接触子52AがワークWに対して過度に強く押し当てられた状態になってしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、接触工程の間、異常判定部75が、検出信号Sd2の出力値Vの変化を監視し、出力値Vの変化に基づいて接触センサ6の感度に関する異常の有無を判定する(異常判定工程)。
具体的には、異常判定部75は、図5に示すように、検出信号Sd2の出力値Vが変化開始判定値Vsに到達した時点t11以降、所定時間ΔTaにおける出力値Vの変化量ΔVを算出し、この変化量ΔVを、予め設定されている閾値ΔVthと比較する。
【0037】
ここで、変化開始判定値Vsは、接触子52AがワークWに接触を開始したことを検出するための値であり、接触子52AがワークWに対して非接触状態であるときの出力値Vに対して、区別が可能な値に設定されればよい。
また、閾値ΔVthは、接触工程におけるプローブ5の移動速度(接触子52Aの相対移動速度)ごとに設定されていることが好ましい。具体的には、閾値ΔVthは、接触センサ6の感度が正常な場合において、プローブ5が設定速度で所定時間ΔTaだけ移動するときに得られる検出信号Sd2の変化量ΔVに基づき、この変化量ΔVの許容範囲の下限値に設定できる。
また、図5では、説明のために所定時間ΔTaの幅を広く図示しているが、所定時間ΔTaは、変化量ΔVを算出可能な最小単位時間であることが好ましい。
【0038】
異常判定部75は、算出された変化量ΔVが閾値ΔVth以上である場合(図5中の実線参照)には、接触センサ6の感度が正常であると判定し、検出信号Sd2の出力値Vの変化について監視を継続する。
【0039】
一方、異常判定部75は、変化量ΔVが閾値ΔVthより小さい場合(図5中の点線参照)には、接触センサ6の感度に異常が発生していると判定し、移動制御部71に対して異常判定信号を出力する。
移動制御部71は、異常判定部75から異常判定信号を入力された場合、移動機構4の動作を停止させ、接触工程を中断させる。これにより、接触子52AがワークWに対して過度に強く押し当てられることを防止する。
【0040】
また、異常判定部75は、制御装置9に対して異常判定信号を出力してもよい。制御装置9は、異常判定部75から異常判定信号を入力された場合、ディスプレイ等にアラームを表示させ、測定者に異常を知らせることができる。
【0041】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態の形状測定装置1では、上述したように、異常判定部75が、移動機構4の動作中に接触センサ6から出力される検出信号Sd2の変化を監視し、当該変化を正常時の変化と比べることにより、接触センサ6の感度の異常を判定できる。
よって、本発明の形状測定装置1は、接触子52Aや接触センサ6が損傷する前に、接触センサ6の感度の異常を検出することができる。
【0042】
また、本実施形態の異常判定部75は、所定時間ΔTaに対する検出信号Sd2の変化量ΔVが閾値ΔVthよりも小さい場合、接触センサ6の感度が異常であると判定する。これにより、接触センサ6の感度の異常を好適に検出することができる。
【0043】
また、本実施形態の形状測定装置1において、異常判定部75は、接触工程におけるプローブ5の移動速度に適した閾値ΔVthを利用して異常判定を行うため、接触センサ6の感度の異常をより正確に検出することができる。
【0044】
また、本実施形態の形状測定装置1において、移動制御部71は、異常判定部75により接触センサ6の感度が異常であると判定された場合、移動機構4の動作を停止させる。このため、ワークWの測定中、接触子52AがワークWに強く接触してしまうことを防止できる。その結果、接触子52Aや接触センサ6が損傷してしまうことを防止できる。
【0045】
特に、本実施形態の接触センサ6は、加振式センサであるため、ワークWの表面性状やワークWの表面に対するごみの付着を原因として、スタイラス52の振動の減衰度合が本来よりも低下することにより、接触センサ6の感度が低下することがある。本実施形態の形状測定装置1は、このような接触センサ6の感度の異常についても好適に検出することができる。
【0046】
〔変形例〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、プローブ5の移動を制御しているが、ワークWが載置されるステージ3の移動を制御してもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、異常判定部75は、検出信号Sd2の変化を監視する指標として、所定時間ΔTaに対する検出信号Sd2の変化量ΔVを用いているが、これ以外の指標を用いてもよい。
例えば、図6に示すように、異常判定部75は、検出信号Sd2が変化開始判定値Vsに到達した時刻以降、検出信号Sd2の所定変化量ΔVaに対する所要時間ΔTを用いて、検出信号Sd2の変化を監視してもよい。この場合、異常判定部75は、所要時間ΔTが所定の閾値ΔTthよりも大きい場合、接触センサ6の感度が異常であると判定することができる。
なお、図6では、図5と同様、接触センサ6の感度が正常である場合の検出信号Sd2の変化を実線で示し、接触センサ6の感度が異常である場合の検出信号Sd2の変化を点線で示している。
また、閾値ΔTthは、上記実施形態と同様、プローブ5の移動速度ごとに設定された値であることが好ましい。
【0048】
本発明の接触センサは、上記実施形態で説明したような加振式の接触センサであることに限られない。すなわち、本発明の接触センサは、ワークWに対する接触子52Aの接触量として、例えば被測定物に対する押込み量や、接触子に加わる応力など、被測定物に対する接触子の接触の度合いを表す任意の物理量を検出するものであればよい。
例えば、上記実施形態において、接触センサ6は、プローブ本体51に対するスタイラス52の変位量に基づいて、ワークWに対する接触子52Aの押し込み量を検出してもよい。また、接触センサ6は、スタイラス52の変形量に基づいて、接触子52Aに加わる応力を検出してもよい。
【0049】
上記実施形態では、ワークWをタッチ測定する場合の異常判定処理について説明しているが、ワークWを倣い測定する場合にも、上述の異常判定処理を実施することができる。
例えば、本実施形態の形状測定装置1がワークWを倣い測定する場合、移動制御部71は、接触センサ6からの検出信号Sd2の出力値Vが目標値Vtを保つように移動機構4の動作を制御し、これにより、接触子52AがワークWを一定の測定力で走査する。ここで、移動制御部71は、接触子52AをワークWに対して接触開始するとき、接触センサ6から出力される検出信号Sd2の出力値Vが目標値Vtに達するまで、プローブ5をワークWに向かって移動させる。このとき、異常判定部75は、上記実施形態と同様、検出信号Sd2の出力値Vの変化を監視することにより、接触センサ6の感度の異常を判定することができる。
【0050】
上記実施形態では、形状測定装置1として三次元測定機の構成を説明しているが、本発明は、三次元測定機に限られず、接触センサを用いる種々の形状測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…形状測定装置、2…測定機本体、3…ステージ、4…移動機構、41…ガイド、41A…Y軸駆動部、42…コラム、43…サポータ、44…ビーム、44A…X軸駆動部、45…Xスライダ、45A…Z軸駆動部、46…Zスライダ、48…座標検出機構、5…プローブ、51…プローブ本体、52…スタイラス、52A…接触子、6…接触センサ、61…センサ本体、611…加振素子、612…検出素子、62…センサ回路部、7…コントローラ、71…移動制御部、72…座標検出部、73…接触判定部、74…測定部、75…異常判定部、9…制御装置、Sd1…振動信号、Sd2…検出信号、St…タッチ信号、Sx,Sy,Sz…スケール信号、Vs…変化開始判定値、Vt…目標値、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6