(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075509
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて封止された半導体素子
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20220511BHJP
C08G 59/22 20060101ALI20220511BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20220511BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/22
C08G59/40
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153116
(22)【出願日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148137
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 容 葉
(72)【発明者】
【氏名】李 東 桓
(72)【発明者】
【氏名】▲はい▼ 慶 徹
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 範之
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲てつ▼ 浩
【テーマコード(参考)】
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J036AD04
4J036AD08
4J036AD13
4J036AD15
4J036AD17
4J036AD20
4J036DB06
4J036DB15
4J036DC03
4J036DC10
4J036FA02
4J036FA05
4J036FB07
4J036JA07
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB12
4M109EC06
(57)【要約】
【課題】熱伝導性が高く放熱効果が著しく改善され、かつ流動性が改善された半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、および硬化触媒を含み、前記エポキシ樹脂は、化学式1で表されるエポキシ樹脂を含む、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物、ならびにそれを用いて封止された半導体素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、および硬化触媒を含み、前記エポキシ樹脂は下記化学式1で表されるエポキシ樹脂を含む、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物:
【化1】
前記化学式1中、
Xは、O、S、C(=O)、炭素数1~5のアルキレン基、またはNHであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基(-NH
2)、シアノ基(-CN)、水酸基(-OH)、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、水酸基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基である:
【化2】
前記化学式2中、*は連結地点であり、
R
11は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項2】
前記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、下記化学式1-1で表されるエポキシ樹脂、下記化学式1-2で表されるエポキシ樹脂、および下記化学式1-3で表されるエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物:
【化3】
前記化学式1-1、化学式1-2、および化学式1-3中、
Xは、前記化学式1で定義した通りであり、
R
11およびR
12は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、水酸基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基である。
【請求項3】
前記化学式1-1、前記化学式1-2、および前記化学式1-3において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキル基である、請求項2に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、前記エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、2~17質量%の含有量で含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填剤は、アルミナを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、前記エポキシ樹脂 2~17質量%、前記硬化剤 0.5~13質量%、前記無機充填剤 70~95質量%、および前記硬化触媒 0.01~5質量%を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止された半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて封止された半導体素子に関する。より詳しくは、本発明は、熱伝導性が高く半導体に対する放熱効果に優れ、かつ流動性に優れた半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて封止された半導体素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の集積度が向上している。このように、積層化および高密度化されている半導体素子を、小型および薄型のパッケージに封止した半導体装置では、半導体の動作時に発生する熱のために、パッケージの誤作動およびパッケージクラックの発生等の故障発生の頻度が非常に高くなり得る。
【0003】
熱放出に対する解決策としては、封止用エポキシ樹脂の成形時に、金属材料等の放熱材料を使用して放熱板によって放熱させる対策がある。しかし、放熱板は、FBGA(fine pitch ball grid array)、QFP(quad flat package)等の一部のパッケージだけで使用が可能であり、組み立て時に工程追加による生産性の低下と、放熱板の高コストによるコスト増加の問題がある。よって、高い熱伝導性による高放熱性封止用エポキシ樹脂成形材料の必要性が強く台頭している。一部の半導体パッケージでは、球状の酸化アルミニウム(アルミナ)を使用している。
【0004】
アルミナは、25~30W/m・Kの熱伝導度を有する。しかし、封止用エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、熱伝導度が0.2W/m・Kであり非常に低いため、組成物で形成された封止層の熱伝導度を6W/m・K以上に向上させるには限界があった。また、熱伝導度が高い銅、アルミニウム、または銀粒子は、絶縁性能が悪く、絶縁性能が比較的良好な窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素充填剤等は、充填剤の流動性がよくないため、充填率を高めることができなかった。近年では、エポキシ樹脂の熱伝導度を高める事例は多いが、絶縁性能および熱硬化性に優れた圧縮樹脂封止型半導体材料の常用化は、未だなされていない状態である。
【0005】
よって、従来のエポキシ樹脂よりも熱伝導性および流動性が高いエポキシ樹脂を適用することにより、熱伝導性を高めて放熱効果を改善させることによって、熱による半導体パッケージの誤作動および不良の発生を抑制する半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2017-0152632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱伝導性が高く放熱効果が著しく改善され、かつ流動性が改善された半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、および硬化触媒を含み、前記エポキシ樹脂は下記化学式1で表されるエポキシ樹脂を含む:
【0009】
【0010】
前記化学式1中、
Xは、O、S、C(=O)、炭素数1~5のアルキレン基、またはNHであり、
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基(-NH2)、シアノ基(-CN)、水酸基(-OH)、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R6、R7、R8、R9、およびR10のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、水酸基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基である:
【0011】
【0012】
前記化学式2中、
*は、連結地点であり、
R11は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体素子は、本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物によって封止される。
【0014】
本発明によれば、熱伝導性が高く放熱効果が著しく改善され、かつ流動性が改善された半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、数値範囲を記載する際の「X~Y」は、X以上Y以下を意味する。
【0016】
本明細書において、「置換または非置換の」の「置換」とは、該当する官能基の1つ以上の水素原子が、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のヘテロアリール基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10のヘテロシクロアルキル基、炭素数7~30のアリールアルキル基、または炭素数1~30のヘテロアルキル基で置換されることを意味する。
【0017】
半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物に高い熱伝導性を付与しようとする場合、比較的多量の無機充填剤の使用が必要となる。しかし、多量の無機充填剤を使用することになると、組成物の粘度が高くなり、流動性が悪くなって、半導体パッケージの成形性に問題が生じ得る。無機充填剤として、相対的に熱伝導性が高い無機充填剤であるアルミナを使用する方法が考えられる。しかし、組成物に必須的に含まれるエポキシ樹脂の熱伝導度は、約0.2W/m・Kと非常に低いため、アルミナを使用しても組成物の熱伝導性を向上させるには限界があった。
【0018】
本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、および硬化触媒を含み、上記エポキシ樹脂は、下記で説明する化学式1で表されるエポキシ樹脂を含む。化学式1で表されるエポキシ樹脂は、熱伝導性が高く組成物の放熱特性を改善し、流動性にも優れている。
【0019】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、下記化学式1で表されるエポキシ樹脂を含む。下記化学式1で表されるは、熱伝導性が高く組成物の放熱特性を著しく改善し、かつ流動性も高いため組成物の加工性を改善する:
【0020】
【0021】
上記化学式1中、
Xは、O(酸素原子)、S(硫黄原子)、C(=O)、炭素数1~5のアルキレン基、またはNHであり、
R1、R2、R3、R4、およびR5のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基(-NH2)、シアノ基(-CN)、水酸基(-OH)、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基であり、
R6、R7、R8、R9、およびR10のうちのいずれか1つは、下記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、水酸基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基である:
【0022】
【0023】
上記化学式2中、
*は、連結地点であり、
R11は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基である。
【0024】
好ましくは、Xは、OまたはSであり、より好ましくはOである。
【0025】
好ましくは、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちのいずれか1つは、上記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちのいずれか1つは、上記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。
【0026】
好ましくは、R6、R7、R8、R9、およびR10のうちのいずれか1つは、上記化学式2で表される基であり、残りはそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、R6、R7、R8、R9、およびR10のうちのいずれか1つは、上記化学式2で表される基であり、残りは水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。
【0027】
好ましくは、R11は、置換または非置換の炭素数1~5のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。
【0028】
一具体例において、上記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、下記化学式1-1で表される化合物、下記化学式1-2で表される化合物、および下記化学式1-3で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる:
【0029】
【0030】
上記化学式1-1、上記化学式1-2、および上記化学式1-3中、
Xは、上記化学式1で定義した通りであり、
R11およびR12は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、水酸基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基である。
【0031】
具体例において、上記化学式1-1、上記化学式1-2、および上記化学式1-3において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキル基である。
【0032】
上記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の1種以上を含むことができ、エポキシ樹脂組成物中、2~17質量%(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17質量%)、好ましくは2~10質量%の含有量で含まれ得る。上記範囲であれば、組成物の放熱特性が良くなり、組成物の硬化性の低下を防止することができる。
【0033】
上記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、上記化学式1を参照して、当業者に知られている通常のエポキシ樹脂を製造する方法によって製造することができる。例えば、上記化学式1で表されるエポキシ樹脂は、上記化学式1において、R1、R2、R3、R4、およびR5のうちのいずれか1つが下記化学式3で表される基であり、R6、R7、R8、R9、およびR10のうちのいずれか1つが下記化学式3で表される基であることを除いては、実質的に同じジカルボン酸化合物および下記化学式4で表される化合物の間の一般的な反応を通じて製造することができる。
【0034】
【0035】
上記化学式3中、*は連結地点である:
【0036】
【0037】
上記化学式4中、
Yは、ハロゲン原子であり、
R11は、上記化学式2の定義と同じである。
【0038】
エポキシ樹脂は、上記化学式1で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂をさらに含むことができる。便宜上、上記化学式1で表されるエポキシ樹脂を第1のエポキシ樹脂、上記化学式1で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を第2のエポキシ樹脂と称する。
【0039】
第2のエポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、線形脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であり得る。第2のエポキシ樹脂は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは2~17質量%(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17質量%)、より好ましくは2~10質量%の含有量で含まれ得る。このような範囲であれば、組成物の硬化性の低下を防止することができる。
【0041】
硬化剤
硬化剤としては、例えば、多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、キシロック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールとから合成されたノボラック型フェノール樹脂;トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジヒドロキシビフェニルを含む多価フェノール化合物;無水マレイン酸および無水フタル酸を含む酸無水物;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等を挙げることができる。好ましくは、硬化剤は、キシロック型フェノール樹脂またはフェノールアラルキル型フェノール樹脂であり得る。
【0042】
硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中、0.5~13質量%(例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13質量%)の含有量で含まれ得る。このような範囲であれば、組成物の硬化性の低下を防止することができる。
【0043】
無機充填剤
無機充填剤は、エポキシ樹脂組成物の機械的物性と低応力化とを向上させることができる。さらに、本発明において無機充填剤は、熱伝導性を向上させて放熱効果を高め、流動性を良くすると共に、熱膨張性と吸水性とを低減することができる。
【0044】
無機充填剤は、溶融シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレイ(clay)、タルク(talc)、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、およびガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0045】
好ましくは、無機充填剤はアルミナを含み得る。アルミナは、熱伝導度が25~30W/m・Kであって、組成物の熱伝導性を高めることが容易になり得る。
【0046】
アルミナの形状は制限されず、球状であってもよいし非球状であってもよい。球状であれば、組成物の流動性を改善することができる。アルミナは、平均粒径(D50)が、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは0.5~30μmであり得る。このような範囲であれば、流動性が良く、熱伝導性が良くなり得る。一具体例において、アルミナは、平均粒径(D50)が互いに異なる2種の混合物を含むことができる。例えば、アルミナは、第1のアルミナ:第2のアルミナの質量比が好ましくは1:1~10:1で混合され、第1のアルミナの平均粒径(D50)は、第2のアルミナの平均粒径(D50)よりも大きくてもよい。アルミナは、必要に応じて、エポキシ樹脂または硬化剤で予め被覆した後、組成物に含まれてもよい。
【0047】
無機充填剤の使用量は、熱伝導性、成形性、低応力性、および高温強度等の要求物性によって異なりうる。具体例において、無機充填剤は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、70~95質量%(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95質量%)の含有量で含まれ得る。このような範囲であれば、エポキシ樹脂組成物の難燃性、流動性、および信頼性を確保することができる。
【0048】
硬化触媒
硬化触媒としては、例えば、3級アミン化合物、有機金属化合物、有機リン化合物、イミダゾール系化合物、またはホウ素化合物等を使用することができる。3級アミン化合物の例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジエチルアミノエタノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノールと、トリ-2-エチルヘキシル酸塩等が挙げられる。有機金属化合物の例としては、例えば、クロム(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート等が挙げられる。有機リン化合物の例としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス-4-メトキシホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、トリフェニルホスフィン-1,4-ベンゾキノン付加物等が挙げられる。イミダゾール系化合物の例としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-アミノイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。ホウ素化合物の例としては、例えば、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、テトラフェニルボロン塩、トリフルオロボラン-n-ヘキシルアミン、トリフルオロボランモノエチルアミン、テトラフルオロボラントリエチルアミン、テトラフルオロボランアミン等がある。これら以外にも、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene:DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene:DBU)およびフェノールノボラック樹脂塩等を使用できる。
【0049】
硬化触媒としては、エポキシ樹脂、または硬化剤と先に反応させて得られた付加物を使用することもできる。
【0050】
硬化触媒は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、0.01~5質量%(例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、または5質量%)の含有量で含まれ得る。このような範囲であれば、硬化反応時間が遅延せず、組成物の流動性を確保することができる。
【0051】
エポキシ樹脂組成物は、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物に含まれ得る通常の添加剤をさらに含むことができる。具体例において、添加剤としては、カップリング剤、離型剤、着色剤、応力緩和剤、架橋増進剤、およびレベリング剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0052】
カップリング剤は、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応して界面強度を向上させるためのものであり、例えば、シランカップリング剤を使用することができる。当該シランカップリング剤は、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応して、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度を向上させるものであればよく、その種類は特に制限されない。シランカップリング剤の具体的な例としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、およびアルキルシラン等を挙げることができる。カップリング剤は、単独で使用することができるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。カップリング剤は、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%の含有量で含まれ得る。このような範囲であれば、エポキシ樹脂組成物硬化物の強度が向上し得る。
【0053】
離型剤としては、パラフィン系ワックス、エステル系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、天然脂肪酸、および天然脂肪酸金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を使用できる。離型剤は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、0.1~1質量%の含有量で含まれ得る。
【0054】
着色剤としては、カーボンブラックを使用できる。着色剤は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、0.1~1質量%の含有量で含まれ得る。
【0055】
応力緩和剤は、変性シリコンオイル、シリコンエラストマー、シリコンパウダー、およびシリコンレジンからなる群より選択される少なくとも1種を使用できるが、これらに制限されるものではない。応力緩和剤を含む場合、その含有量は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、0質量%を超えて2質量%以下、例えば0質量%を超えて1質量%以下、例えば0.1~1質量%であってもよい。
【0056】
上記添加剤は、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して、0.1~5質量%、例えば0.1~3質量%の含有量で含まれ得る。
【0057】
エポキシ樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されないが、組成物に含まれる各構成成分を、ヘンシェルミキサー(登録商標)やレーディゲ(登録商標)ミキサーを用いて均一に混合した後、ロールミルやニーダーで90~120℃で溶融混練し、冷却および粉砕工程を経て製造することができる。
【0058】
本発明の半導体素子は、本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を使用して封止される。本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子等を封止する方法としては、トランスファー成形、インジェクション(injection)成形、キャスティング成形、圧縮成形等を用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。1つの具体例では、低圧トランスファー成形方法で封止することができる。別の具体例では、圧縮成形によって封止することができる。
【実施例0059】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味としてもこれによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【0060】
製造例1:エポキシ樹脂の製造
下記化学式5-1で表される化合物に、下記化学式5-2で表される化合物を過剰量入れ、110℃で加熱しながら攪拌して反応させた。反応物を室温に冷ました後、ロータリーエバポレーター(浴槽温度:50℃,圧力:30mbar)を用いて、反応せずに残っている下記化学式5-2で表される化合物を除去した。これにより得た化合物を、トルエンに溶解した後、混合物を80℃に加熱した。NaOH水溶液を入れ反応させた後、反応物を、フィルターを通して濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて残っている溶媒を除去して、下記化学式5で表されるエポキシ樹脂を製造した。
【0061】
【0062】
製造例2:エポキシ樹脂の製造
下記化学式6-1で表される化合物に、上記化学式5-2で表される化合物を過剰量入れ、110℃に加熱しながら反応させた。反応物を室温に冷ました後、ロータリーエバポレーター(浴槽温度:50℃,圧力:30mbar)を用いて、反応せずに残っている化学式5-2で表される化合物を除去した。これにより得た化合物をトルエンに溶解した後、反応物を80℃に加熱した。NaOH水溶液を入れ反応させた後、反応物を、フィルターを通して濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去して、下記化学式6で表されるエポキシ樹脂を製造した。
【0063】
【0064】
下記実施例および比較例で使用した成分の具体的な仕様は次の通りである:
(A)エポキシ樹脂
(A1)製造例1のエポキシ樹脂
(A2)製造例2のエポキシ樹脂
(A3)NC-3000(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)
(A4)EPPN-501HY(多官能型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)
(A5)下記化学式7で表されるエポキシ樹脂
【0065】
【0066】
(B)硬化剤
(B1)KPH-F3065(キシロック型フェノール樹脂、Kolon Chemical社製)
(B2)MEH-7851(フェノールアラルキル型フェノール樹脂、明和化成株式会社製)
(C)硬化触媒:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)
(D)無機充填剤:平均粒径(D50)20μmの球状溶融体アルミナ:平均粒径(D50)0.5μmの球状溶融体アルミナの9:1質量比の混合物
(E)カップリング剤
(E1)メチルトリメトキシシラン(SZ-6070、Dow Corning社製)
(E2)KBM-573(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)
(F)カーボンブラック(MA-600B、三菱ケミカル株式会社製)。
【0067】
実施例1~5、および比較例1~4
下記表1に示す組成(単位:質量部)に従って、(A)~(F)の成分を、ヘンシェルミキサー(登録商標)(KEUM SUNG MACHINERY CO.LTD,KSM-22)を用いて、25~30℃で30分間均一に混合した。その後、連続ニーダー(kneader)を用いて最大110℃で30分間溶融混練した。その後、10~15℃に冷却し粉砕して、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を製造した。なお、下記表1において「-」は、該当成分が含まれないことを意味する。
【0068】
製造した半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物に対して、下記物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0069】
(1)流動性(単位:inch):低圧トランスファー成形機を使用して、EMMI-1-66に準じて、流動性測定用金型に金型温度175℃、70kgf/cm2、注入圧力9MPa、硬化時間90秒の条件で半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を注入し、流動の長さを測定した。測定値が高いほど流動性に優れる。
【0070】
(2)熱伝導度(単位:W/m・K):ASTM D5470によってエポキシ樹脂組成物で評価用試験片を製造し、25℃で測定した。
【0071】
(3)半導体表面温度(単位:℃):テスト用半導体素子をボードに実装した後、ワイヤボンディングで連結した。その後、テスト用半導体素子に、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を、500μmの厚さに175℃で120秒間成形した。テスト設備に入れ、電圧を印加した後、半導体を動作させ、非接触式温度計で1時間後の半導体パッケージ表面の温度を測定した。
【0072】
【0073】
上記表1に示すように、本発明の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物は、流動性に優れ、かつ熱伝導性が高いため放熱特性に優れて、半導体動作時に半導体表面温度を低く保つ効果があることが確認された。
【0074】
一方、本発明の化学式1で表されるエポキシ樹脂を含有しない比較例の組成物は、熱伝導度が低いため放熱特性が悪いか、または流動性が低いため成形が困難であるという問題があった。
【0075】
本発明の単純な変形または変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。