IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076026
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】エステル交換油脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20220512BHJP
   A21D 13/46 20170101ALI20220512BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A21D13/46
A23D9/00 506
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019052028
(22)【出願日】2019-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】池之上 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】葉桐 宏厚
(72)【発明者】
【氏名】肥山 恵理奈
(72)【発明者】
【氏名】牧田 成人
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG06
4B026DH01
4B026DH03
4B026DX02
4B032DB31
4B032DK18
4B032DL20
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】 食品に付着させた際に、油っぽさを感じさせにくく、食品のサクサクした食感を向上させることができるエステル交換油脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 油脂Aの極度硬化油脂、油脂Bの極度硬化油脂、及び油脂Cを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記混合油脂中の
油脂Aの極度硬化油脂の含有量が35質量%以上70質量%以下、
油脂Bの極度硬化油脂の含有量が10質量%以上45質量%以下、
油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法である。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂Aの極度硬化油脂、油脂Bの極度硬化油脂、及び油脂Cを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記混合油脂中の
油脂Aの前記極度硬化油脂の含有量が35質量%以上70質量%以下、
油脂Bの前記極度硬化油脂の含有量が10質量%以上45質量%以下、
前記油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【請求項2】
油脂Aと油脂Bからなる油脂Xを準備する工程と、
油脂Xを準備する前記工程後の油脂を極度硬化する工程と、
極度硬化する前記工程後の油脂と油脂Cとを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記油脂X中の
前記油脂Aの含有量が40質量%以上88質量%以下、
前記油脂Bの含有量が12質量%以上60質量%以下であり、
前記混合油脂中の
極度硬化する前記工程後の油脂の含有量が60質量%以上85質量%以下、
前記油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【請求項3】
前記油脂Cの構成脂肪酸中のリノール酸含有量が30質量%以上80質量%以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記油脂Cがコーン油、大豆油及び米油からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエステル交換油脂の製造方法。
【請求項5】
前記エステル交換工程が非選択的エステル交換工程である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の製造方法で得られたエステル交換油脂を含む食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル交換油脂は、触媒を使って、原料油脂中の脂肪酸とグリセリンとのエステル結合の部位を交換して得られる油脂である。エステル交換油脂は、マーガリンやショートニングといった可塑性油脂組成物によく利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、パーム核油とパーム極度硬化油を70:30で混合した配合油のランダムエステル交換油脂が開示されている。該ランダムエステル交換油脂とコーン油を60:40の質量比で混合した混合油脂を油相とした可塑性油脂組成物は、クリーミング性が良好であり、呈味性が良好であるシュガークリームを得ることができるとされている。一方、特許文献2では、パーム極度硬化油、パーム油、パーム核極度硬化油を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下で、エステル交換反応した後、水洗、脱水、脱色しエステル交換油脂を得たことが開示されており、可塑性油脂として層状食品用油脂組成物に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-061487号公報
【特許文献2】特開2017-012089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1、2ともに、食品、特にサクサク感が好まれる食品にエステル交換油脂を付着させること、及び該食品の風味や食感について開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明の目的は、食品に付着させた際に、油っぽさを感じにくく、食品のサクサクした食感を向上させるエステル交換油脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の製造方法により製造されるエステル交換油脂を食品に付着させれば、油っぽさを感じさせにくく、該食品のサクサク感を向上させることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、油脂Aの極度硬化油脂、油脂Bの極度硬化油脂、及び油脂Cを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記混合油脂中の
油脂Aの極度硬化油脂の含有量が35質量%以上70質量%以下、
油脂Bの極度硬化油脂の含有量が10質量%以上45質量%以下、
油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法である。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【0009】
また、本発明は、油脂Aと油脂Bからなる油脂Xを準備する工程と、
油脂Xを準備する前記工程後の油脂を極度硬化する工程と、
極度硬化する前記工程後の油脂と油脂Cとを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記油脂X中の
前記油脂Aの含有量が40質量%以上88質量%以下、
前記油脂Bの含有量が12質量%以上60質量%以下であり、
前記混合油脂中の
極度硬化する前記工程後の油脂の含有量が60質量%以上85質量%以下、
前記油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法である。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【0010】
前記油脂Cの構成脂肪酸中のリノール酸含有量が30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記油脂Cがコーン油、大豆油及び米油からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0012】
エステル交換工程は非選択的エステル交換工程であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、前記製造方法で得られたエステル交換油脂を含む食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の製造方法により製造されるエステル交換油脂は、食品に付着させた際に、油っぽさを感じさせにくく、該エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0015】
本願の第一の発明は、油脂Aの極度硬化油脂、油脂Bの極度硬化油脂及び油脂Cを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法であって、
前記混合油脂中の
油脂Aの前記極度硬化油脂の含有量が35質量%以上70質量%以下、
油脂Bの前記極度硬化油脂の含有量が10質量%以上45質量%以下、
油脂Cの含有量が15質量%以上40質量%以下である、前記製造方法である。
油脂A:ラウリン系油脂
油脂B:パーム系油脂
油脂C:構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂
【0016】
前記油脂Aはパーム核油、ヤシ油、及びこれらに分別、水素添加、エステル交換などの加工処理がなされた加工油脂からなる群から選ばれる1種または2種以上のラウリン系油脂である。前記油脂Aは、パーム核油、ヤシ油、パーム核分別油、ヤシ分別油からなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、パーム核油、ヤシ油からなる群から選ばれる1種または2種がより好ましく、パーム核油がさらに好ましい。
【0017】
油脂Aの前記極度硬化油脂は、常法によって油脂Aを水素添加することによって得ることができる。例えば、ニッケルや白金などの金属触媒を用いて、ヨウ素価が実質的に0になるまで水素添加する方法が挙げられる。
【0018】
前記油脂Bはパーム油及びこれに分別、水素添加、エステル交換などの加工処理がなされた加工油脂からなる群から選ばれる1種または2種以上のパーム系油脂である。前記油脂Bは、パーム油、パーム分別油からなる群から選ばれる1種または2種が好ましく、パーム油がより好ましい。
【0019】
油脂Bの前記極度硬化油脂は、油脂Aの前記極度硬化油脂と同じ方法で得ることができる。
【0020】
前記油脂Cは、その構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下の食用油脂である。前記油脂Cの構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量は、70質量%以上90質量%以下であることが好ましく、75質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。また、前記油脂C中の構成脂肪酸中のリノール酸含有量は、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。上記の範囲にあることで、該エステル交換油脂を付着させた食品のサクサクした食感を向上させることができる。構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の含有量は、基準油脂分析試験法の2.4.2.3-2013に従って測定することができる。
【0021】
前記油脂Cとしては、その構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が65質量%以上95質量%以下であれば、いずれの原料油脂を用いてもよい。例えば、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、米油、落花生油、ひまわり油、紅花油、ごま油、オリーブ油等の1種または2種以上を含み、大豆油、綿実油、コーン油、米油、落花生油、ひまわり油、ハイリノール紅花油、ごま油の1種または2種以上を含むことが好ましく、大豆油、コーン油、米油の1種または2種以上を含むことがより好ましく、コーン油を含むことがさらに好ましく、コーン油がさらにより好ましい。上記の原料油脂を選択することで、該エステル交換油脂を付着させた食品のサクサクした食感を向上させることができるとともに、食品の風味を向上させることができる。
【0022】
前記混合油脂は、油脂Aの前記極度硬化油脂、油脂Bの前記極度硬化油脂及び前記油脂Cを含む。前記混合油脂は、油脂Aの前記極度硬化油脂、油脂Bの前記極度硬化油脂及び前記油脂Cからなることが好ましい。前記混合油脂を得る前記工程は、油脂Aの前記極度硬化油脂、油脂Bの前記極度硬化油脂及び前記油脂Cのうち、任意の2種の油脂をエステル交換してから、もう1種の油脂を混合する工程を含んでいてもよい。
【0023】
前記混合油脂中の油脂Aの極度硬化油脂の含有量は、35質量%以上70質量%以下であり、37質量%以上70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。前記混合油脂中の油脂Aの極度硬化油脂の含有量が上記の範囲にあることで、前記エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0024】
前記混合油脂中の油脂Bの極度硬化油脂の含有量は、10質量%以上45質量%以下であり、10質量%以上43質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。前記混合油脂中の油脂Bの極度硬化油脂の含有量が上記の範囲にあることで、前記エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0025】
前記混合油脂中の油脂Cの含有量は、15質量%以上40質量%以下であり、18質量%以上37質量%以下であることが好ましく、20質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。前記混合油脂中の油脂Cの含有量が上記の範囲にあることで、食品に付着させた際に、油っぽさを感じさせにくく、前記エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0026】
前記エステル交換工程は、非選択的エステル交換工程でも、位置特異的エステル交換工程でもよいが、非選択的エステル交換工程が好ましい。非選択的エステル交換工程に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム等の化学触媒;Lipozyme(登録商標) TL IM等の酵素触媒が挙げられる。
【0027】
本願の第二の発明は、油脂Aと油脂Bからなる油脂Xを準備する工程と、
油脂Xを準備する前記工程後の油脂を極度硬化する工程と、
極度硬化する前記工程後の油脂と油脂Cとを含む混合油脂を得る工程と、
前記混合油脂のエステル交換工程と、を含む、
エステル交換油脂の製造方法である。
【0028】
本願の第二の発明における前記油脂A、前記油脂B、前記油脂C及び前記エステル交換工程については、本願の第一の発明に記載した通りである。
【0029】
極度硬化する前記工程においては、前記油脂Xをエステル交換処理する工程を含んでいてもよい。
【0030】
前記油脂X中の前記油脂Aの含有量は、40質量%以上88質量%以下であり、43質量%以上80質量%以下であることが好ましく、46質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。また、前記油脂X中の前記油脂Bの含有量は、12質量%以上60質量%以下であり、20質量%以上57質量%以下であることが好ましく、30質量%以上54質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記混合油脂は極度硬化する前記工程後の油脂と前記油脂Cとを含むが、極度硬化する前記工程後の油脂と前記油脂Cとからなることが好ましい。前記混合油脂中の極度硬化する前記工程後の油脂の含有量は、60質量%以上85質量%以下であり、65質量%以上85質量%以下であることが好ましい。前記混合油脂中の極度硬化する前記工程後の油脂の含有量が上記の範囲にあることで、前記エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0032】
前記混合油脂中の前記油脂Cの含有量は、15質量%以上40質量%以下であり、15質量%以上35質量%以下であることが好ましい。前記混合油脂中の油脂Cの含有量が上記の範囲にあることで、食品に付着させた際に、油っぽさを感じさせにくく、前記エステル交換油脂を付着させた食品のサクサク感を向上させることができる。
【0033】
本発明の製造方法で得られたエステル交換油脂は、サクサクした食感が好まれる食品に好適に用いられる。そのような食品としては、クルトン、ラスク、ビスコッティ、揚げ物、米菓、クッキー、ビスケット等が挙げられる。前記エステル交換油脂を前記食品に含有させる手段は問わないが、含浸、塗布、噴霧、滴下、油ちょう等の付着させる手段が好ましい。前記エステル交換油脂を付着させた食品は、油っぽさを感じにくく、サクサク感が向上する。
【0034】
本発明の製造方法で得られたエステル交換油脂は、他の食用油脂、食用油脂以外の食材、食品添加物等と混合した食用油脂組成物として使用することもできる。前記食用油脂組成物は、例えば、フライ油、マーガリンやショートニングとして用いることができる。
【実施例0035】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0036】
(原料油脂)
エステル交換油脂の製造および評価に際して、以下の原料油脂を使用した。なお、原料油脂の構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の含有量は、基準油脂分析試験法の2.4.2.3-2013に従って測定した。
コーン油(オレイン酸含有量:39質量%、リノール酸含有量:57質量%、株式会社J-オイルミルズ製)
パーム油(オレイン酸含有量:39質量%、リノール酸含有量:9質量%、株式会社J-オイルミルズ製)
パーム核油(オレイン酸含有量:14質量%、リノール酸含有量:2質量%、株式会社J-オイルミルズ製)
パーム極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)
パーム核極度硬化油(株式会社J-オイルミルズの社内調製品)
【0037】
(エステル交換油脂1の調製)
100質量部のパーム核油と60質量部のパーム油とを混合した混合油脂を調製した。前記混合油脂100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、極度硬化油になるまで水素添加をおこなった。水素添加後、活性白土を用いて脱色処理をおこない、さらに脱臭処理をおこない、エステル交換油脂1を得た。
【0038】
(エステル交換油脂2の調製)
80質量部のエステル交換油脂1と20質量部のコーン油とを混合した混合油脂を調製した。前記混合油脂100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色処理をおこない、さらに脱臭処理をおこない、エステル交換油脂2を得た。
【0039】
(エステル交換油脂3の調製)
エステル交換油脂2の調製に記載の混合油脂を、80質量部のエステル交換油脂1と20質量部のパーム油とを混合した混合油脂に変えた以外はエステル交換油脂2の調製と同じ方法で、エステル交換油脂3を得た。
【0040】
(エステル交換油脂4の調製)
エステル交換油脂2の調製に記載の混合油脂を、40質量部のパーム極度硬化油と40質量部のパーム核極度硬化油、20質量部のコーン油とを混合した混合油脂に変えた以外はエステル交換油脂2の調製と同じ方法で、エステル交換油脂4を得た。
【0041】
(クルトンによる評価)
表1に記載の油脂を60℃に加温して溶解させた。溶解した油脂に予め質量(M1)を測定したクルトン(製品名:HANDPACKこんがりクルトンプレーン味、ノンフライクルトン、日本製粉株式会社製)を漬けて、クルトンに油脂を含浸させた後、遠心管に入れて、1000rpm、4分の条件で遠心分離した。遠心管からクルトンを取り出し、油脂含浸後のクルトンの質量(M2)を測定した。油脂含浸後のクルトンは、チャック付きポリ袋に入れて、20℃で24時間保管してから、専門パネラー3名が食し、風味、サクサク感、油っぽさについて下記の評価基準により、合議の上評価した。評価結果は表1に記載した。
【0042】
【表1】
【0043】
(吸油量の計算)
吸油量は下記式により計算して求めた。求めた吸油量は表1に記載した。
吸油量(質量%)=(M2-M1)/M1×100
【0044】
(風味の評価基準)
5:油脂含浸前のクルトンよりも風味がとてもよい
4:油脂含浸前のクルトンよりも風味がよい
3:油脂含浸前のクルトンよりも風味がややよい
2:油脂含浸前のクルトンと風味が変わらない
1:油脂含浸前のクルトンよりも風味が悪い
ここで風味がよいとは、咀嚼中に香ばしい香りが感じられることを意味する。
【0045】
(サクサク感の評価基準)
5:油脂含浸前のクルトンよりもとてもサクサクしている
4:油脂含浸前のクルトンよりもサクサクしている
3:油脂含浸前のクルトンよりもややサクサクしている
2:油脂含浸前のクルトンよりもやや硬くあまりサクサク感を感じない
1:油脂含浸前のクルトンよりも硬くサクサク感を感じない
【0046】
(油っぽさの評価基準)
5:全く油っぽさを感じない
4:ほとんど油っぽさを感じない
3:あまり油っぽさを感じない
2:やや油っぽい
1:油っぽい
【0047】
表1に記載の通り、クルトンの吸油量はいずれも約23質量%であり、吸油量に大きな差はなかった。実施例の油脂を含浸させたクルトンは、24時間経過しても風味がとてもよく、サクサクした食感にも優れていた。更に油っぽさもほとんど感じられなかった。構成脂肪酸中のオレイン酸及びリノール酸の合計含有量が48質量%のパーム油と極度硬化油とのエステル交換油脂である比較例1及び、エステル交換後に極度硬化した油脂を含浸させた比較例2のクルトンは、ほとんど油っぽさを感じないものの、風味が悪く、硬すぎるため、サクサクした食感に劣っていた。エステル交換後に極度硬化した油脂とコーン油とを混合した油脂を含浸させた比較例3のクルトンは、風味がよく、サクサクした食感であったが、油っぽさがやや感じられた。