(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076376
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】複合冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/04 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A23G9/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186764
(22)【出願日】2020-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森田 健一
(72)【発明者】
【氏名】松田 侑士
(72)【発明者】
【氏名】樫葉 健二
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GB19
4B014GB20
4B014GE01
4B014GE03
4B014GP18
4B014GP25
4B014GQ02
4B014GU08
4B014GU15
4B014GU16
(57)【要約】
【課題】2つの吸湿性可食容器の縁部の隙間を通じた吸湿性可食容器の吸湿を抑制した複合冷菓を提供する。
【解決手段】複合冷菓1は、舟形、箱形、又は椀形である2つの吸湿性可食容器2と、該2つの吸湿性可食容器に挟まれたクリーム部3とを含み、
前記2つの吸湿性可食容器2の縁部22の間には隙間Mがあり、前記クリーム部3の一部が前記隙間Mから前記吸湿性可食容器2の外に露出し、
前記クリーム部3の前記露出する部分は、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される被覆層31を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舟形、箱形、又は椀形である2つの吸湿性可食容器と、該2つの吸湿性可食容器に挟まれたクリーム部とを含み、
前記2つの吸湿性可食容器の縁部の間には隙間があり、前記クリーム部の一部が前記隙間から前記吸湿性可食容器の外に露出し、
前記クリーム部の前記露出する部分は、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される被覆層を有する、複合冷菓。
【請求項2】
前記クリーム部の前記露出する部分を含まない面は、前記被覆層を有さない、請求項1に記載の複合冷菓。
【請求項3】
前記吸湿性可食容器は、クリーム部との接触面に、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される防湿層を有する、請求項1又は2に記載の複合冷菓。
【請求項4】
前記被覆層は、厚さ0.8mm以上の部分を含む、請求項1~3の何れかに記載の複合冷菓。
【請求項5】
前記クリーム部の表面1cm2あたりの前記被覆層の質量が、0.05g未満である、請求項1~4の何れかに記載の複合冷菓。
【請求項6】
前記クリーム部の表面1cm2あたりの前記被覆層及び前記防湿層の合計質量が、0.08g未満である、請求項3~5の何れかに記載の複合冷菓。
【請求項7】
舟形、箱形、又は椀形である2つの吸湿性可食容器と、該2つの吸湿性可食容器に挟まれたクリーム部とを含む複合冷菓の製造方法であって、
一方の吸湿性可食容器内にクリームを載置し、クリーム部を形成するクリーム部形成工程と、
前記クリーム部に他方の吸湿性可食容器を被せる被せ工程と、を有し、
前記クリーム部形成工程は、クリーム部の側面に-18℃以下で固化状態の油脂組成物の被覆層を形成する被覆層形成工程を有する製造方法。
【請求項8】
前記クリーム部の側面以外には前記被覆層を形成しない、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記クリーム部形成工程は、ノズルからクリームを吐出することにより行い、
前記被覆層形成工程は、前記クリームを吐出しながら前記油脂組成物を塗布することにより行う、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記吸湿性可食容器の内面に、前記クリーム部形成工程前に-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される防湿層を形成する工程を含む、請求項7~9の何れかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モナカ皮等の吸湿性可食容器の間にクリームを挟んだ複合冷菓、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モナカ皮等の吸湿性可食容器の間にクリームを挟んだ複合冷菓については、クリームから吸湿性可食容器への水分移行をいかに防止し、可食容器本来の食感を維持するかが検討されてきた。
例えば、モナカ皮の内面に、チョコレートをスプレーし、薄い被膜を形成することで、クリームからモナカ皮への水分移行を防ぐ技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、クリームを隙間なく隅々まで満たした状態の複合冷菓を開発、工業生産する過程で、内部のクリームのかさなどが一つの原因となって、2つの可食容器の縁部同士が密着せず、縁部にわずかに隙間ができること、この場合に、冷凍保存中にこの隙間を通じてクリームに含まれる氷が昇華することを発見している。これまで、当該わずかな隙間を通じた氷の昇華による可食容器の食感への影響は大きくないと考えられていたが、本発明者らは当該影響が意外にも大きいことを発見した。
【0005】
そこで、本発明は、このような2つの吸湿性可食容器の縁部の隙間を通じた吸湿性可食容器の吸湿を防ぐ技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、舟形、箱形、又は椀形である2つの吸湿性可食容器と、該2つの吸湿性可食容器に挟まれたクリーム部とを含み、前記2つの吸湿性可食容器の縁部の間には隙間があり、前記クリーム部の一部が前記隙間を通じて前記吸湿性可食容器の外に露出し、
前記クリーム部の前記露出する部分は、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される被覆層を有する、複合冷菓である。
本発明において、固化状態とは、油脂組成物がこれに含まれる油脂の結晶化に伴い、組成物が全体として流動性を失って、形状を維持している状態をいう。
本発明によれば、2つの吸湿性可食容器の隙間を通じた昇華による吸湿が抑制された複合冷菓が提供される。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記クリーム部の前記露出する部分を含まない面は、前記被覆層を有さない。
これにより、クリーム部が本来有する風味、食感などの嗜好性を生かすことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記吸湿性可食容器は、クリーム部との接触面に、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される防湿層を有する。
これにより、クリーム部との接触による水分移行による吸湿と、2つの可食容器同士の隙間を通じた氷の昇華とによる吸湿の両方を防ぐことができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記被覆層は厚さ0.8mm以上の部分を含む。
これにより、吸湿を防ぐ効果を十分に得ることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記クリーム部の表面1cm2あたりの前記被覆層の質量が、0.05g未満である。
また、本発明の好ましい形態では、前記クリーム部の表面1cm2あたりの前記被覆層及び防湿層の合計質量が、0.08g未満である。
これにより、クリーム部が本来有する風味、食感などの嗜好性を存分に生かすことができる。
【0011】
また、前記課題を解決する本発明は、舟形、箱形、又は椀形である2つの吸湿性可食容器と、該2つの吸湿性可食容器に挟まれたクリーム部とを含む複合冷菓の製造方法であって、1つの吸湿性可食容器内にクリームを載置し、クリーム部を形成するクリーム部形成工程と、前記クリーム部に他の1つの吸湿性可食容器を被せる被せ工程と、を有し、前記クリーム部形成工程は、クリーム部の側面に-18℃以下で固化状態の油脂組成物の被覆層を形成する被覆層形成工程を含む。
本発明の製造方法により、可食容器の隙間を通じた昇華による吸湿が抑制された複合冷菓が製造できる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記クリーム部の側面以外には前記被覆層を形成しない。
これにより、クリーム部が本来有する風味、食感などの嗜好性を生かした複合冷菓が製造できる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記クリーム部形成工程は、ノズルからクリームを吐出することにより行い、前記被覆層形成工程は、前記クリームを吐出しながら前記油脂組成物を塗布することにより行う。
これにより、本発明の複合冷菓を効率よく生産できる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記吸湿性可食容器の内面に、前記クリーム部形成工程前に-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される防湿層を形成する工程を含む。
これにより、クリーム部との接触による水分移行による吸湿と、可食容器同士の隙間を通じた昇華による吸湿の両方を抑制した複合冷菓が製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つの吸湿性可食容器の隙間を通じた氷の昇華による吸湿が抑制された複合冷菓、およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の複合冷菓の構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1の実施形態の複合冷菓の構造を示すA-A’断面図である。
【
図3】実施形態の複合冷菓の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1、2を参照しながら、本発明の複合冷菓の一実施形態について説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
本実施形態の複合冷菓1は、2つの箱形のモナカ皮2,2と、該モナカ皮に挟まれたクリーム部3とを含む。
なお、本実施形態では可食容器として箱形のモナカ皮の例を示すが、可食容器はビスケット、クッキー、ウェハースなどの任意の焼成菓子で形成することができ、その形状も、舟形、椀形であってもよい。なお、本発明において、箱形、舟形、椀形という語句は、厳密な形状を特定する意味合いではなく、2つの可食容器内を対向させることで、クリーム部を内部に収容できる程度の凹形状を有しているという意味合いで用いるものである。
本実施形態において、モナカ2,2の内側(クリーム部3に接触する側)には、チョコレートコーチング(-18℃以下で固化状態の油脂組成物)がコーティングされ、防湿層21を形成している。ここで、本発明において、防湿層は、可食容器内面に付着させて形成されるものを指す。
チョコレートコーチングなどの油脂組成物については、例えば、冷菓用のチョコレートコーチングとして使用されるものを特に制限なく用いることができる。
本発明において、防湿層に用いられる油脂組成物は、例えば、後述する被覆層に用いられる油脂組成物と同様の形態とすることが好ましい。
また、油脂組成物の60℃における粘度が500cp~2500cp、好ましくは700~1500cpである形態が好ましく挙げられる。60℃における粘度が当該範囲の油脂組成物は、スプレーコーティングに好適である。
粘度は、B型粘度計で測定することができる。
【0018】
また、防湿層21の厚さは、好ましくは0.3mm以上である。また、可食容器の表面1cm2当たりの防湿層21の量は、0.02~0.1gとなるようにすることが好ましい。
【0019】
前記2つのモナカ皮が互いに相対する縁部22、22の間には隙間Mがあり、前記クリーム部3の側面の一部が前記隙間を通じて可食容器の外に露出している。ここで、隙間Mは必ずしも縁部の全周に渡っていなくてもよく、少なくとも一部に存在していればよい。
ここで、「クリーム部が・・・隙間を通じて可食容器の外に露出」とは、クリーム部の一部の表面が隙間を通じて、可食容器の外の気体に触れているという意味である。
隙間Mの大きさは、通常0.1mm~5mmの間である。
【0020】
クリーム部3は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス(本発明において、まとめてクリームという。)を主とする。
そして、クリーム部3の前記隙間Mから露出する部分は、被覆層31を有する。本発明において、被覆層とはクリームに直接塗布され、クリーム部の表面に形成される層を指し、上述した可食容器内面に形成される層とは区別される。
本実施形態では、製造工程の簡素化の観点から、直方体状のクリーム部3の側面の長い方にのみ被覆層31が形成されている。このように、被覆層31は、隙間Mから露出する部分の少なくとも一部に形成されていてもよいが、前記部分の少なくとも5割を覆っていることが好ましい。もちろん、隙間Mから露出する部分の全てを覆う形態は、吸湿を防ぐ観点から好ましい。本実施形態のように箱形の可食容器を用いて、直方体状のクリーム部を形成する場合には、クリーム部の側面の長い方と短い方の4辺に被覆層を形成する形態が、吸湿を防ぐ観点から好ましい。
また、クリーム部が直方体状である場合には、前記側面の高さの1/4~3/4程度の幅で被覆層31が形成されることが好ましい。
【0021】
また、クリーム部3の前記隙間Mから露出する部分が存在する面以外には被覆層を有さないことが好ましい。
ここで、前記隙間Mから露出する部分が存在する面は、通常は、複合冷菓を安定的に載置した場合に、側面に相当する面である。
これにより、クリーム部3を形成するクリームの本来の風味や食感を生かすことができる。
【0022】
被覆層31は、-18℃以下で固化状態の油脂組成物で構成される。
このような油脂組成物として、冷菓のコーティング等に汎用されるチョコレートコーチングを特に制限なく用いることができる。
チョコレートコーチングは、ブラウンタイプのものであっても、ホワイトタイプのものであってもよい。例えば、クリーム部3がバニラやミルク風味である場合には、製品イメージの観点から、ホワイトタイプとすることも好ましい。
【0023】
また、品温60℃の油脂組成物を冷媒温度-10℃の環境下に置き、固体脂含有率の変化を測定したとき、冷却開始から、120秒経過時から300秒経過時までの、時間(秒)に対する固体脂含有率の変化を示す近似直線の傾きが、0.03~0.2であることが好ましい。
【0024】
固体脂含有率の測定は、固体脂含有率(SFC)測定器を用いて行うことができる。具体的には、試験管に、油脂組成物を2g加え、当該サンプルを恒温槽に入れ、60℃にて調温する。それから、目的とする温度の恒温槽にて30分以上調温し、SFC測定器にて数値を読み取る。
本明細書において、固体脂含有率は、油脂組成物について固体脂含有率(SFC)測定器での測定によって得られた値から、油脂以外の固形分を差し引き、脂質全量における固体脂の割合を算出した値である。
また、前記傾きの測定は以下の方法で行うことができる。
試験管に、油脂組成物を2g加えサンプルを作成し、当該サンプルを恒温槽に入れ、60℃に調温する。
次に、調温しておいたサンプルを-10℃の恒温槽に移し、固体脂含有率を60秒ごとに測定する。
測定後、測定時間に対する固体脂含有率をプロットし、冷却開始から、120秒経過時から300秒経過時までの、時間(秒)に対する固体脂含有率の変化を示す近似直線を作成し、当該近似曲線の傾きの値を計算する。
なお、近似直線の作成、及び傾きの計算は、一般的な表計算ソフトを用いて行うことができる。
【0025】
また、油脂組成物における品温60℃以上における固体脂含有率は0%であることが好ましい。
また、油脂組成物における品温40℃における固体脂含有率は0~10%であることが好ましい。
また、油脂組成物における品温25℃以上における固体脂含有率は0~20%であることが好ましい。
また、油脂組成物における品温0℃における固体脂含有率は20~50%であることが好ましい。
また、油脂組成物における品温-20℃における固体脂含有率は40~80%であることが好ましい。
【0026】
また、油脂組成物の水分は3%以下であることが好ましい。
本発明において、油脂組成物は、カカオ分が8%以上又はココアバターが2%以上のチョコレートコーチングであることが好ましい。
【0027】
チョコレートコーチングに含まれるカカオ原料としては、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、ココアパウダー及び調整ココアパウダー等の、チョコレート製品に一般に用いられるカカオ原料を用いることができる。
【0028】
油脂としては、前記固体脂含有率の傾き、温度ごとの固体脂含有率、粘度が特定の範囲内となるように、調製することが可能な製菓用油脂を用いることができる。
【0029】
チョコレートコーチングは、前記カカオ原料及び前記油脂の他に、チョコレート製品に一般的に用いられる成分を含むことができる。
例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、オリゴ糖、マルトース、パラチノース、ガラクトース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチュロース等の糖アルコール、グルチルリチン、ステビオサイド、レバウディオサイド等の天然甘味料、スクラロース、アステルパーム等の人工甘味料、牛乳、全粉乳及び脱脂粉乳等の乳原料並びに香料等が挙げられる。
【0030】
チョコレートコーチングは、乳化剤として、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含むことが好ましい。
この場合、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含有量は、0.05~1質量%とすることができる。
被覆層に用いられる油脂組成物を前述の通りの物性とすることで、半凍結又は凍結したクリームへできるだけ均一に塗布し、被覆の対象とする部位を適切に被覆することが可能となる。
また、油脂組成物の40℃における粘度が1000~4000cp、好ましくは1500~3000cpである形態が好ましく挙げられる。40℃における粘度が当該範囲の油脂組成物は、半凍結又は凍結したクリーム部にコーティングする際に、液だれなどを起こすことがないため、好適である。
【0031】
本発明においては、前述した防湿層と被覆層を構成する油脂組成物は、同一であっても異なっていてもよい。生産性の観点からは同一であることが好ましい。
この場合、油脂組成物の粘度は、60℃で500~2500cp、好ましくは700~1500cpであり、かつ40℃で1500~3000cpであると、全体として加工適性に優れる。
【0032】
被覆層31は、厚みが、0.8mm以上、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上の部分を含むことが好ましい。好ましくは、前記隙間から露出している部分の半分以上は、前記厚みであることが好ましい。また、好ましくは、被覆層の体積を被覆層の塗布面積で除した場合の計算値として前記厚みになるように被覆層の量、及び塗布領域を決定することが好ましい。これにより十分に吸湿を防ぐことができる。また、前記厚みは、5.0mm以下、好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下である。これより、油脂組成物の存在感を極力抑え、クリーム部3が本来意図するクリームの食感や風味を生かすことができる。
【0033】
前記被覆層31の前記クリーム部の表面1cm2あたりの質量は、0.05g未満、好ましくは0.03g未満である(算出方法は実施例を参照)。これより、油脂組成物の存在感を極力抑え、クリーム部3が本来意図するクリームの食感や風味を生かすことができる。
【0034】
また、前記防湿層21と前記被覆層31の合計量(油脂組成物の量)の前記クリーム部の表面1cm2あたりの質量は、0.08g未満、好ましくは0.07g未満である(算出方法は実施例を参照)。これより、油脂組成物の存在感を極力抑え、クリーム部3が本来意図するクリームの食感や風味を生かすことができる。
【0035】
本実施形態の複合冷菓の製造方法について説明する(
図3参照)。
(1)モナカ皮の形成
従来知られている任意の方法により、防湿層21を含むモナカ皮2を製造する。このような防湿層を有するモナカ皮の製造方法としては、例えば、モナカ皮を移動させる搬送手段の経路上にチョコレートを吹き付けるノズルを配置し、モナカ皮を前記搬送手段に載せて移動させ、最中皮の移動方向の先端部が前記ノズルに近接した位置で、前記ノズルからチョコレートを噴射し、チョコレートが後端部にまで吹き付けられる位置でチョコレートの噴射を停止することにより、モナカ皮の内面にチョコレートをコーティングする方法が挙げられる。
【0036】
(2)クリーム部の形成
(1)で製造した防湿層21を含むモナカ皮2(可食容器)を移動させる搬送手段の経路上にクリームを吐出するノズルを配置し、モナカ皮2を前記搬送手段に載せて移動させ(
図3(ア))、モナカ皮2が前記ノズル下に移動した位置で、モナカ皮2の内部に前記ノズルからクリームを吐出する。この際に、クリームを吐出しつつ、その側面に、チョコレートコーチング(油脂組成物)を塗布ないし、吹き付けることにより被覆層31を形成する。
これにより、側面に被覆層31を有するクリーム部3を、モナカ皮2上に形成することができる(
図3(イ))。
なお、本実施形態では、クリームの吐出と被覆層31の形成を同時に行う形態について例示したが、クリームをモナカ皮2内に充填したのちに、モナカ皮2内に載置されたクリームの側面に被覆層31を形成する方法をとってもよい。
【0037】
(3)モナカ皮の載置
続いて、(1)で製造したモナカ皮2を(2)で形成したクリーム部3の上に載置し、モナカ皮2,2で挟まれた複合冷菓を製造することができる(
図3(ウ))。
以上のような製造方法を取ることにより、連続生産が可能となる。
製造した複合冷菓は、常法に従い、包装をして、急速冷凍する。
【実施例0038】
(1)複合冷菓の製造
図1に示すような箱形のモナカ皮を用いて、実施例の複合冷菓を製造した。
電動スプレー装置を用いた公知の方法にて予め内面に防湿層を形成したモナカ皮の上に、ノズルを用いてクリーム部を形成した。
クリーム部は、ノズルを用いて、12.5cm×5.5cm×2.2cmのサイズの直方体状に吐出することで形成した。このときに、クリーム部の側面に対して、ノズルを用いてチョコレートコーチングを吐出することでクリーム部の側面に被覆層を形成した。チョコレートコーチングは、クリーム部の側面の厚さ方向における少なくとも中心付近を被覆するように吐出した。
実施例1~5については、側面のうち長い方の2面に対して、実施例6については、4つの側面に対して被覆層を形成した。
チョコレートコーチングとしては、ココアバター、植物油脂、糖類を含み、以下の物性のものを使用した。
【0039】
(固体脂含有率)
25℃以上 0%
10℃ 13.7%
0℃ 31.1%
-20℃ 58.9%
(前述の固体脂含有率の変化を示す近似直線の傾き)
0.14
(水分)
3%未満
(粘度)
60℃で、1000cp
40℃で、2150cp
【0040】
クリーム部を形成した後、モナカ皮を被せることにより、複合冷菓を製造した。
比較例の複合冷菓は、クリーム部の側面に被覆層を形成しないことを除いて、実施例の複合冷菓と同様に製造した。
実施例、比較例の複合冷菓は、いずれもモナカ皮の縁部の間に、0.5mm~2mm程度の隙間が生じている部分が存在するものであった。
【0041】
(2)吸湿試験
製造した複合冷菓をビニール袋に個包装した後、-30℃冷凍庫にて1日置き、テスト用複合冷菓を得た。
テスト用複合冷菓を、-20℃の冷凍庫へ入れ(1日2回のデフロストあり)、10日後、15日後にそれぞれモナカ皮部分の水分を測定した。
モナカ皮部分の水分は、複合冷菓からモナカ皮を分離したうえで、乾燥減量法(ケツト科学研究所社製赤外線水分計FD-620にて105℃10分)にて測定した。
【0042】
(3)食感評価
上記の15日後の複合冷菓を専門パネラーが食し、比較例1の食感を基準(1点)として、パリパリとした食感であるか否かの観点から、1~4点の間(得点が高いほどパリパリとした食感である)で評価した。
(4)風味評価
上記の15日後の複合冷菓を専門パネラーが食し、比較例1のクリーム風味を基準(4点)として、クリーム風味を感じるかの観点から、1~4点の間(得点が高いほどクリーム風味を感じる)で評価した。
【0043】
各複合冷菓の特徴と、結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
クリーム部の表面積は、クリーム部の大きさの設計値(12.5cm×5.5cm×2.2cm)を用いて計算した。
また、防湿層の厚み、被覆層の厚みは、塗布した油脂組成物の体積(油脂組成物の重量と比重から算出)と塗布した部分の面積(設計値から算出)から算出した。また、クリーム部単位面積当たりの被覆層及び油脂組成物の重量については、上記クリーム部の表面積(設計値から算出)と被覆層又は油脂組成物の重量から算出した。
【0046】
比較例と実施例の比較から、被覆層を有することで、可食容器の吸湿が抑制されることがわかった。
特に、比較例1と実施例1、比較例2と実施例2の比較から、複合冷菓全体に用いる-18℃以下で固化状態の油脂組成物の量(被覆層と防湿層の合計質量)が同一である場合に、被覆層を設けた場合の方が吸湿の抑制効果が高いことは驚くべき結果であった。
また、本発明の複合冷菓は、一部の被覆のみで大きな吸湿防止効果を奏するものであり、クリーム風味を良好に感じることができる冷菓であった。