(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076605
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】廃プラスチック処理システム
(51)【国際特許分類】
C10G 11/18 20060101AFI20220513BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20220513BHJP
C08J 11/20 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C10G11/18
C10G1/10
C08J11/20 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187054
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 忠洋
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】半田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 正夫
(72)【発明者】
【氏名】平松 義文
(72)【発明者】
【氏名】川添 繁美
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
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4H129AA01
4H129BA04
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4H129CA03
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4H129CA29
4H129DA04
4H129GA03
4H129KA02
4H129KB02
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックの分解性を向上できる廃プラスチック処理システムの提供。
【解決手段】溶融廃プラスチックを調製する溶融装置と、溶融廃プラスチックを原料油と混合して分解処理用混合物を調製する混合装置と、少なくとも溶融廃プラスチックを溶融装置から混合装置へ供給する溶融廃プラスチック供給ラインと、分解処理用混合物中の溶融廃プラスチック及び原料油を共に分解する分解処理装置と、原料油を分解処理装置に輸送する第1輸送ラインと、第1輸送ラインから溶融装置へ原料油を供給する第1分岐ライン、第1輸送ラインから溶融廃プラスチック供給ラインへ原料油を供給する第2分岐ライン、及び第1輸送ラインから混合装置へ原料油を供給する第3分岐ラインの少なくとも何れかと、分解処理用混合物を輸送する第2輸送ラインと、廃プラスチック供給制御手段と、原料油供給制御手段と、原料油温度制御手段と、を備える廃プラスチック処理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを処理する廃プラスチック処理システムであって、
廃プラスチックを溶融することにより、溶融廃プラスチックを調製する溶融装置と、
前記溶融廃プラスチックを原料油と混合することにより、分解処理用混合物を調製する混合装置と、
前記溶融装置と前記混合装置とを連結して、少なくとも前記溶融廃プラスチックを前記溶融装置から前記混合装置へ供給する溶融廃プラスチック供給ラインと、
前記分解処理用混合物中の前記溶融廃プラスチック及び前記原料油を共に分解する分解処理装置と、
前記分解処理装置に連結され、前記原料油を前記分解処理装置に輸送する第1輸送ラインと、
前記第1輸送ラインと前記溶融装置とを連結し、前記第1輸送ラインから前記溶融装置へ前記原料油を供給する第1分岐ライン、前記第1輸送ラインと前記溶融廃プラスチック供給ラインとを連結し、前記第1輸送ラインから前記溶融廃プラスチック供給ラインへ前記原料油を供給する第2分岐ライン、及び前記第1輸送ラインと前記混合装置とを連結し、前記第1輸送ラインから前記混合装置へ前記原料油を供給する第3分岐ラインの少なくともいずれかと、
前記分解処理用混合物を前記混合装置から前記第1輸送ライン及び前記分解処理装置の少なくともいずれかへ輸送する第2輸送ラインと、
前記溶融装置への前記廃プラスチックの供給量を制御する廃プラスチック供給制御手段と、
前記第1分岐ライン、前記第2分岐ライン、及び前記第3分岐ラインの少なくともいずれかから供給される前記原料油の供給量を制御する原料油供給制御手段と、
前記第1輸送ラインを輸送する前記原料油の温度を制御する原料油温度制御手段と、を備える、
廃プラスチック処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記原料油、軽質炭化水素油、ナフサ、軽油、及び前記原料油とは異なる重質炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種の他の追加原料油を供給する1つ以上の追加原料油供給ラインを備え、前記追加原料油供給ラインは、前記第1輸送ラインとは異なり、
前記追加原料油供給ラインは、前記溶融装置、前記混合装置、前記第1分岐ライン、前記第2分岐ライン、及び前記第3分岐ライン、前記溶融廃プラスチック供給ライン、及び前記第2輸送ラインの少なくともいずれかに連結される、
廃プラスチック処理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック供給制御手段は、前記溶融装置への前記廃プラスチックの供給量を制御することにより、前記溶融廃プラスチックの溶融量を制御する、
廃プラスチック処理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記原料油は、重質分解軽油、分解残渣油、常圧残渣油、脱硫残渣油、脱硫減圧軽油、未脱硫減圧軽油、未脱硫減圧残渣油、及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種である、
廃プラスチック処理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記原料油は、脱硫減圧軽油、重質分解軽油、脱硫残渣油及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種である、
廃プラスチック処理システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
少なくとも、前記第2分岐ラインを有する、廃プラスチック処理システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
少なくとも、前記第1分岐ライン及び前記第3分岐ラインを有する、
廃プラスチック処理システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記溶融装置及び前記混合装置の間に、第1貯留タンクを備え、
前記第1貯留タンクは、少なくとも、前記溶融廃プラスチックと、前記第1分岐ライン及び前記第2分岐ラインの少なくともいずれかから供給された前記原料油との混合物を貯留する、
廃プラスチック処理システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記混合装置及び前記分解処理装置の間に、第2貯留タンクを備え、
前記第2貯留タンクは、少なくとも、前記第2輸送ラインから輸送された前記分解処理用混合物を貯留する、
廃プラスチック処理システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの少なくともいずれかは、ガス抜き手段を備える、
廃プラスチック処理システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチックは、ポリエチレンに由来する廃プラスチック及びポリプロピレンに由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含む、
廃プラスチック処理システム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記溶融装置を複数備える、
廃プラスチック処理システム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記溶融装置は、混練機である、
廃プラスチック処理システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記混合装置を複数備える、
廃プラスチック処理システム。
【請求項15】
請求項14に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
複数の前記混合装置は、並列もしくは直列に配置される、
廃プラスチック処理システム。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記混合装置は、ラインミキサーである、
廃プラスチック処理システム。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記分解処理装置は、流動接触分解装置である、
廃プラスチック処理システム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック供給制御手段は、前記分解処理用混合物中における前記溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記廃プラスチックの供給量を制御し、
前記原料油供給制御手段は、前記分解処理用混合物中における前記溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記原料油の供給量を制御する、
廃プラスチック処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックの有効利用率の低さ、及び海洋プラスチック等による環境汚染が世界的な課題となっている。
廃プラスチックをリサイクルするための方法の1つとして、ケミカルリサイクルが挙げられる。ケミカルリサイクルの技術については、従来より、様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラスチック材料(1)を溶融させてプラスチック溶融物を形成し、脱ガスした後、解重合反応装置(3)へと送ることを含み、粗油から得られた留分を溶媒(6)として前記プラスチック溶融物に添加することにより、前記解重合反応装置(3)に供給されるそのプラスチック溶融物溶液の粘度を前記プラスチック溶融物の粘度よりも低下させることを特徴とする方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、炭化水素系重合体を流動接触分解(FCC)装置にて分解処理する方法において、該炭化水素系重合体と、FCCガソリン、軽質分解軽油、重質分解軽油、分解残渣油、常圧残渣油及び脱硫残渣油から選ばれる炭化水素油との混合物をFCC原料油に混ぜ、FCC装置に供給することを特徴とする炭化水素系重合体の分解処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-518906号公報
【特許文献2】特開2002-294251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、プラスチック溶融物に溶媒を添加することで、プラスチック溶融物溶液の粘度を低下させることが記載されている。しかしながら、単に溶媒を添加しただけのプラスチック溶融物溶液は分離し易いため、特許文献1に記載の方法では、混合性が不十分な状態のプラスチック溶融物溶液が解重合反応装置に供給されることがある。その結果、プラスチック材料の分解性を十分向上できないことがある。
なお、特許文献1には、プラスチック材料の混合方法として、解重合反応装置からプラスチック溶融物をポンプで連続的に外に出し、解重合反応装置に再循環させる方法が開示されているが、この方法では、分解対象であるプラスチック溶融物を再循環させることになるため、解重合反応装置に供給されるプラスチック溶融物に対する、プラスチック材料の分解性を向上させることは難しいと考えられる。
特許文献2には、触媒反応により、原油中の高沸点留分を付加価値の高いガソリン等に分解できるFCC装置を用いて、炭化水素系重合体と炭化水素油との混合物を分解する方法が開示されているが、特許文献2は、炭化水素油への炭化水素系重合体の溶解性、具体的には、炭化水素系重合体と炭化水素油との混合性に何ら着目していない。そのため、特許文献2に記載の方法においても、混合性が不十分な状態の前記混合物がFCC原料油に混ぜられてFCC装置に供給されることがある。その結果、炭化水素系重合体の分解性を十分向上できないことがある。
【0007】
本発明は、分解処理装置を用いた廃プラスチックを処理するシステムにおいて、廃プラスチックの分解性を向上できる廃プラスチック処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、廃プラスチックを処理する廃プラスチック処理システムであって、
廃プラスチックを溶融することにより、溶融廃プラスチックを調製する溶融装置と、
前記溶融廃プラスチックを原料油と混合することにより、分解処理用混合物を調製する混合装置と、
前記溶融装置と前記混合装置とを連結して、少なくとも前記溶融廃プラスチックを前記溶融装置から前記混合装置へ供給する溶融廃プラスチック供給ラインと、
前記分解処理用混合物中の前記溶融廃プラスチック及び前記原料油を共に分解する分解処理装置と、
前記分解処理装置に連結され、前記原料油を前記分解処理装置に輸送する第1輸送ラインと、
前記第1輸送ラインと前記溶融装置とを連結し、前記第1輸送ラインから前記溶融装置へ前記原料油を供給する第1分岐ライン、前記第1輸送ラインと前記溶融廃プラスチック供給ラインとを連結し、前記第1輸送ラインから前記溶融廃プラスチック供給ラインへ前記原料油を供給する第2分岐ライン、及び前記第1輸送ラインと前記混合装置とを連結し、前記第1輸送ラインから前記混合装置へ前記原料油を供給する第3分岐ラインの少なくともいずれかと、
前記分解処理用混合物を前記混合装置から前記第1輸送ライン及び前記分解処理装置の少なくともいずれかへ輸送する第2輸送ラインと、
前記溶融装置への前記廃プラスチックの供給量を制御する廃プラスチック供給制御手段と、
前記第1分岐ライン、前記第2分岐ライン、及び前記第3分岐ラインの少なくともいずれかから供給される前記原料油の供給量を制御する原料油供給制御手段と、前記第1輸送ラインを輸送する前記原料油の温度を制御する原料油温度制御手段と、を備える、廃プラスチック処理システムが提供される。
【0009】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記原料油、軽質炭化水素油、ナフサ、軽油、及び前記原料油とは異なる重質炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種の他の追加原料油を供給する1つ以上の追加原料油供給ラインを備え、前記追加原料油供給ラインは、前記第1輸送ラインとは異なり、
前記追加原料油供給ラインは、前記溶融装置、前記混合装置、前記第1分岐ライン、前記第2分岐ライン、及び前記第3分岐ライン、前記溶融廃プラスチック供給ライン、及び前記第2輸送ラインの少なくともいずれかに連結されることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記廃プラスチック供給制御手段は、前記溶融装置への前記廃プラスチックの供給量を制御することにより、前記溶融廃プラスチックの溶融量を制御することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記原料油は、重質分解軽油、分解残渣油、常圧残渣油、脱硫残渣油、脱硫減圧軽油、未脱硫減圧軽油、未脱硫常圧残渣油、及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記原料油は、脱硫減圧軽油、重質分解軽油、脱硫残渣油及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、少なくとも、前記第2分岐ラインを有することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、少なくとも、前記第1分岐ライン及び前記第3分岐ラインを有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記溶融装置及び前記混合装置の間に、第1貯留タンクを備え、
前記第1貯留タンクは、少なくとも、前記溶融廃プラスチックと、前記第1分岐ライン及び前記第2分岐ラインの少なくともいずれかから供給された前記原料油との混合物を貯留することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記廃プラスチック処理システムは、さらに、前記混合装置及び前記分解処理装置の間に、第2貯留タンクを備え、
前記第2貯留タンクは、少なくとも、前記第2輸送ラインから輸送された前記分解処理用混合物を貯留することが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記第1貯留タンク及び前記第2貯留タンクの少なくともいずれかは、ガス抜き手段を備えることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記廃プラスチックは、ポリエチレンに由来する廃プラスチック及びポリプロピレンに由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記溶融装置を複数備えることが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記溶融装置は、混練機であることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記混合装置を複数備えることが好ましい。
【0022】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、複数の前記混合装置は、並列もしくは直列に配置されることが好ましい。
【0023】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記混合装置は、ラインミキサーであることが好ましい。
【0024】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、前記分解処理装置は、流動接触分解装置であることが好ましい。
【0025】
本発明の一態様に係る廃プラスチック処理システムにおいて、
前記廃プラスチック供給制御手段は、前記分解処理用混合物中における前記溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記廃プラスチックの供給量を制御し、
前記原料油供給制御手段は、前記分解処理用混合物中における前記溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記原料油の供給量を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、分解処理装置を用いた廃プラスチックを処理するシステムにおいて、廃プラスチックの分解性を向上できる廃プラスチック処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【
図2】第2実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【
図3】第3実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【
図4】第4実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【
図5】第5実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【
図6】第6実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値とし、「~」の後に記載される数値を上限値として含む範囲を意味する。
【0029】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る廃プラスチック処理システム(以下、単に「処理システム」とも称する)は、石油精製の分野で用いられる分解処理装置を用いて、廃プラスチックを処理するシステムである。
本発明者らは、原料油を輸送するラインに設けた分岐ラインから、廃プラスチックの溶融物(以下、「溶融廃プラスチック」とも称する)に原料油を供給し、混合装置にて、溶融廃プラスチックと原料油とを混合することで、原料油中に溶融廃プラスチックが均一に近い状態で溶解し、つまり、混合性が向上した、溶融廃プラスチックと原料油との混合物(本実施形態では、「分解処理用混合物」と称する)が得られることを見出した。
また、本実施形態の処理システムでは、溶融廃プラスチックに原料油を供給する際に、溶融廃プラスチックと原料油との質量比率を調整することで、分解処理用混合物の動粘度を所定の範囲に調整することができる。
本実施形態の処理システムでは、分解処理用混合物が分解処理装置に直接または原料油と共に供給されて、分解処理用混合物中の廃プラスチックが分解される。
本実施形態の処理システムによれば、溶融廃プラスチックと原料油との混合性が向上し、かつ動粘度が所定の範囲に調整された分解処理用混合物が分解処理装置にて分解されるので、廃プラスチックの分解性を向上できる。
また、本実施形態の処理システムによれば、動粘度が所定の範囲に調整された分解処理用混合物を分解処理装置へ供給するため、分解処理用混合物の輸送性が良好になり、ポンプ等の輸送手段への負荷も軽減できる。
【0030】
第1実施形態の処理システムについて、図面を参照して説明する。
第1実施形態では、溶融装置として混練機を備え、混合装置としてラインミキサーを備え、分解処理装置として残油流動接触分解装置(RFCC装置)(FCC装置の一態様)を備え、原料油温度制御手段として熱交換器を備える廃プラスチック処理システムを例に挙げて説明する。
以降の説明において、「第1」、「第2」及び「第3」という序数による表現は、部材を区別することを目的としており、順序を意味するものではない。
【0031】
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図1に示す処理システム100は、廃プラスチックを溶融することにより溶融廃プラスチックを調製する混練機20と、混練機20で調製された溶融廃プラスチックを、原料油と混合することにより分解処理用混合物を調製するラインミキサー30と、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物中の溶融廃プラスチック及び原料油を共に分解するRFCC装置50と、ラインミキサー30及びRFCC装置50の間に設けられた第2貯留タンク40と、を備える。
また、処理システム100は、RFCC装置50に連結され、原料油をRFCC装置50に輸送する第1輸送ライン10と、混練機20とラインミキサー30とを連結して、少なくとも溶融廃プラスチックを混練機20からラインミキサー30へ供給する溶融廃プラスチック供給ライン15と、第1輸送ライン10と溶融廃プラスチック供給ライン15とを連結し、第1輸送ライン10から溶融廃プラスチック供給ライン15へ原料油を供給する第2分岐ライン12と、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物を、ラインミキサー30から第1輸送ライン10へ輸送する第2輸送ライン14と、を備える。本実施形態では、分解処理用混合物は、第2貯留タンク40で貯留された後、遠心ポンプ41により第2輸送ライン14を介して第1輸送ライン10へ輸送される。
また、処理システム100は、混練機20へ供給される廃プラスチックの供給量を制御する廃プラスチック供給制御手段25と、第2分岐ライン12から溶融廃プラスチック供給ライン15へ供給される原料油の供給量を制御する第2原料油供給制御手段121と、原料油の温度を制御する熱交換器HE(原料油温度制御手段の一例)と、を備える。
【0032】
<混練機20>
混練機20は、廃プラスチックを溶融することにより溶融廃プラスチックを調製する(得る)。
本明細書において、溶融廃プラスチックとは、固体状の廃プラスチックを溶融して液状にしたものを意味する。そのため、溶融廃プラスチックと固体状の廃プラスチックとの違いは、物質の状態が異なるのみである。
混練機20には、廃プラスチックの供給量を制御するための廃プラスチック供給制御手段25が接続されている。
廃プラスチック供給制御手段25は、廃プラスチック供給手段としてのフィーダー21と、フィーダー21の動作を制御するフィーダー制御器24とを有する。廃プラスチック供給制御手段25は、フィーダー制御器24からフィーダー21へ制御信号を送信し、フィーダー21の動作を制御することで、廃プラスチックの供給量を制御する。フィーダー制御器24はマイクロコンピュータ等を使用できる。
本明細書において、廃プラスチックの供給量とは、単位時間当たりに供給される廃プラスチックの量(質量)を意味する。
また、混練機20には、廃プラスチック供給ライン23を介して、フィーダー21と、ホッパー22とが連結されている。ホッパー22は、下部に供給口(不図示)を有し、供給口からフィーダー21へ廃プラスチックを供給できるようになっている。
本実施形態の混練機20は、ホッパー22からフィーダー21を経由して供給された廃プラスチックを所定温度で溶融及び混練することにより溶融廃プラスチックを調製する(得る)。
【0033】
廃プラスチック供給制御手段25は、フィーダー21から混練機20への廃プラスチックの供給量を制御することにより、溶融廃プラスチックの溶融量を制御してもよい。溶融廃プラスチックの溶融量は、混練機20への廃プラスチックの供給量より算出される。この場合、廃プラスチック供給制御手段25は、フィーダー制御器24からフィーダー21へ制御信号を送信し、フィーダー21の動作を制御することで、溶融廃プラスチックの溶融量を制御する。
本明細書において、溶融廃プラスチックの溶融量とは、単位時間当たりに溶融される廃プラスチックの量(質量)を意味する。溶融廃プラスチックの溶融量は、廃プラスチックの供給量から算出される。
【0034】
混練機20としては、特に限定されないが、例えば、押出機(例えば、単軸押出機及び多軸押出機等)、ニーダー、及び混合機等が挙げられる。
廃プラスチックの溶融温度は、例えば、175℃以上260℃以下である。なお、廃プラスチックの溶融温度は、混練機20の設定温度である。
【0035】
<第1輸送ライン10>
第1輸送ライン10は、RFCC装置50に連結され、原料油をRFCC装置50に輸送する。本実施形態の第1輸送ライン10は、上流側で第2分岐ライン12に分岐する分岐点B1と、下流側で第2輸送ライン14と合流する合流点C1とを有する。
第1輸送ライン10中の原料油は、例えば、80℃以上240℃以下に加熱されることが好ましく、160℃以上230℃以下に加熱されることがより好ましい。第1輸送ライン10中の原料油の温度は、例えば、第1輸送ライン10の任意の箇所に設置した温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御できる。
【0036】
<溶融廃プラスチック供給ライン15>
溶融廃プラスチック供給ライン15は、混練機20とラインミキサー30とを連結して、少なくとも溶融廃プラスチックを混練機20からラインミキサー30へ供給する。
本実施形態の溶融廃プラスチック供給ライン15は、混練機20で調製された溶融廃プラスチックを、合流点C2で第2分岐ライン12より輸送された原料油と合流(混合)して溶融廃プラスチック混合油(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)とし、当該溶融廃プラスチック混合油をラインミキサー30へ供給する。
溶融廃プラスチック供給ライン15の温度は、混練機20から排出された溶融廃プラスチックの溶融状態を維持できる温度に加熱されていることが好ましい。
溶融廃プラスチック供給ライン15の温度は、例えば、160℃以上260℃以下である。溶融廃プラスチック供給ライン15の温度は、例えば溶融廃プラスチック供給ライン15の任意の箇所に設置した温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御できる。
【0037】
<第2分岐ライン12>
第2分岐ライン12は、第1輸送ライン10と溶融廃プラスチック供給ライン15とを連結し、第1輸送ライン10から溶融廃プラスチック供給ライン15へ原料油を供給する。本実施形態の第2分岐ライン12は、第1輸送ライン10の分岐点B1から分岐され、溶融廃プラスチック供給ライン15との合流点C2へ原料油を供給する。
第2分岐ライン12の途中には、合流点C2への原料油の供給量を制御するための第2原料油供給制御手段121が設けられている。
第2原料油供給制御手段121は、原料油供給手段としての第2調節弁122と、第2制御器123とを有する。
第2原料油供給制御手段121は、第2制御器123から第2調節弁122に制御信号を送信し、第2調節弁122の動作を制御することで、原料油の供給量を制御する。第2制御器123はマイクロコンピュータ等を使用できる。
本明細書において、原料油の供給量とは、単位時間当たりに供給される量(質量)を意味する。
【0038】
第2分岐ライン12中の原料油は、原料油と溶融廃プラスチックとを良好に混合させる観点から、例えば、80℃以上240℃以下に加熱されることが好ましく、160℃以上230℃以下に加熱されることがより好ましい。第2分岐ライン12中の原料油の温度は、例えば、第2分岐ライン12の任意の箇所に設置した温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御できる。なお、原料油の温度とは、温度制御手段の設定温度である。
図1の場合、第2分岐ライン12中の原料油の温度は、第2分岐ライン12の途中に配置された熱交換器HEにより制御される。
熱交換器HEの数及び設置箇所は特に限定されない。例えば、第1輸送ライン10及び第2分岐ライン12に複数の熱交換器HEを設け、段階的に原料油を加熱してもよい。
【0039】
<ラインミキサー30>
ラインミキサー30は、混練機20で調製された溶融廃プラスチックを、原料油と混合することにより分解処理用混合物を調製する(得る)。
本実施形態のラインミキサー30は、混練機20で調製され、溶融廃プラスチック供給ライン15を介して輸送された溶融廃プラスチックを、第2分岐ライン12より輸送された原料油と混合することにより、分解処理用混合物を調製する。
調製された分解処理用混合物の動粘度は、廃プラスチックの分解性を向上させる観点から、所定の範囲に調整されていることが好ましい。所定の範囲については後述する。
ラインミキサー30は、攪拌手段(例えば回転翼等)を有する。
ラインミキサー30としては、特に限定されず、インラインミキサー(例えばスタティックミキサー等)を用いることができる。ラインミキサー30は、連続式ミキサーであってもよい。
混合温度は、溶融廃プラスチック供給ライン15の温度、及び各分岐ライン中の原料油の温度(本実施形態の場合は第2分岐ライン12中の原料油の温度)により設定される。そのため、混合温度は、溶融廃プラスチック供給ライン15の温度、及び各分岐ライン中の原料油の温度と同程度であることがよく、例えば、160℃以上260℃以下である。
混合温度は、制御しなくてもよいが、ラインミキサー30の任意の箇所に設置した温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御してもよい。
【0040】
<第2貯留タンク40>
第2貯留タンク40は、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物を貯留する。第2貯留タンク40には、遠心ポンプ41が接続されている。なお、ポンプは分解処理用混合物の動粘度に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、ポンプとしてギアポンプを用いてもよい。第2貯留タンク40は、分解処理用混合物を供給する手段として、ポンプを備えていることが好ましいが、自圧により分解処理用混合物を第2輸送ライン14へ供給してもよい。
第2貯留タンク40は、分解処理用混合物から発生するガス(例えば、二酸化炭素ガス、水蒸気、及び揮発性有機化合物等)を排出するガス抜き手段を有することが好ましい。ガス抜き手段としては、特に限定されないが、例えば、ガス抜き管等が挙げられる。
第2貯留タンク40がガス抜き手段を有することにより、分解処理用混合物の発泡を防ぐもしくは低減させることができ、分解処理用混合物の移送をスムーズに行うことができるため、運転性の向上が見込まれる。その結果、廃プラスチックの分解効率を向上できると考えられる。
また、第2貯留タンク40は、分解処理用混合物の混合性をより向上させる観点から、攪拌手段(例えば回転翼等)を有していてもよい。
第2貯留タンク40の温度は、分解処理用混合物中における溶融廃プラスチックの溶融状態を維持しつつ、分解処理用混合物の動粘度を所定の範囲に維持する観点から、例えば、160℃以上240℃以下に加熱されることが好ましい。第2貯留タンク40は、温度検知手段(例えば温度計等)を備え、第2貯留タンク40の温度を、温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御することが好ましい。
【0041】
<RFCC装置50>
RFCC装置50は、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物中の溶融廃プラスチック及び原料油を共に分解する。
本実施形態のRFCC装置50は、第2輸送ライン14を介して輸送された分解処理用混合物と、合流点C1(第2分岐ライン12より下流側)で第1輸送ライン10からRFCC装置50へ輸送されている原料油とが合流(混合)され、分解処理用混合物及び原料油が共に供給されるように構成されている。
RFCC装置50は、流動接触分解装置(FCC装置)の一態様である。
RFCC装置50及びFCC装置は、石油精製の分野で通常用いられている装置でよく、基本的には、反応塔、触媒/生成油分離器、触媒表面上油分の除去部、及び触媒再生塔からなり、触媒はこの系内を流動循環する。
触媒としては、通常、合成ゼオライトを含む触媒が用いられる。プロセスとしては、UOP社及びIFP社等で開発されたいずれのプロセスでもよい。
RFCC装置50及びFCC装置に用いられる触媒、並びに稼働条件は、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0042】
<第2輸送ライン14>
第2輸送ライン14は、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物を、ラインミキサー30から第1輸送ライン10へ輸送する。
本実施形態の第2輸送ライン14は、ラインミキサー30で調製され、第2貯留タンク40で貯留された分解処理用混合物を、遠心ポンプ41にて、第1輸送ライン10との合流点C1へ輸送する。
第2輸送ライン14の温度は、分解処理用混合物の動粘度を所定の範囲に維持した状態で分解処理用混合物を輸送する観点から、例えば、160℃以上240℃以下に加熱されることが好ましい。第2輸送ライン14の温度は、第2輸送ライン14の任意の箇所に設置した温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御できる。
【0043】
<作用>
第1実施形態の処理システム100では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
まず、混練機20に、フィーダー21より廃プラスチックが供給される。廃プラスチックは、混練機20内において所定温度で溶融されて溶融廃プラスチックとなる。溶融廃プラスチックは、混練機20から、溶融状態、溶解状態、またはスラリーで排出される。混練機20から排出された溶融廃プラスチックは、溶融廃プラスチック供給ライン15を介して輸送され、合流点C2で、第2分岐ライン12より輸送された原料油と合流(混合)されて溶融廃プラスチック混合油となり、ラインミキサー30へ供給される。
ラインミキサー30では、溶融廃プラスチック混合油(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)がさらに混合されて分解処理用混合物が調製される。この分解処理用混合物は、詳細は後述するが、動粘度が所定範囲に調整されている。
ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物は、第2輸送ライン14を介して第2貯留タンク40に供給され貯留される。その後、分解処理用混合物は、遠心ポンプ41にて、第2輸送ライン14を介して合流点C1まで輸送され、合流点C1で、第1輸送ライン10からRFCC装置50へ輸送されている原料油と合流(混合)されてRFCC装置50へ供給される。
RFCC装置50では、所定の条件で、分解処理用混合物中に含まれる溶融廃プラスチックが、液化石油ガス類(プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン及びブチレン等)に分解され、原料油が、FG(ガソリン)、LCO(軽質分解軽油)及びCLO(残油)等に分解される。
【0044】
<効果>
第1実施形態の処理システム100では、合流点C2で、混練機20で調製された溶融廃プラスチックと、第2分岐ライン12より輸送された原料油とが混合されて溶融廃プラスチック混合油となり(1回目の混合)、続くラインミキサー30で、溶融廃プラスチック混合油がさらに混合されて分解処理用混合物が調製される(2回目の混合)。
また、合流点C1においても、分解処理用混合物と、第1輸送ライン10からRFCC装置50へ輸送されている原料油とが混合される(3回目の混合)。
このように第1実施形態の処理システム100では、溶融廃プラスチックに多段的に原料油が供給されるため、RFCC装置50へ供給される分解処理用混合物は混合性の向上した混合物となる。
また、廃プラスチック供給制御手段25で混練機20への廃プラスチックの供給量を制御し、第2原料油供給制御手段121で第2分岐ライン12から供給される原料油の供給量を制御することで、ラインミキサー30で調製される分解処理用混合物の動粘度を所定の範囲に調整できる。
よって、第1実施形態の処理システム100によれば、溶融廃プラスチックと原料油との混合性が向上し、かつ動粘度が制御された分解処理用混合物がRFCC装置50にて分解されるので、廃プラスチックの分解性を向上できる。また、原料油の分解性も向上できる。
【0045】
〔第2実施形態〕
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0046】
<全体構成>
図2は、第2実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図2に示す処理システム200は、混練機20と、ラインミキサー30と、RFCC装置50と、第1輸送ライン10と、溶融廃プラスチック供給ライン15と、第1分岐ライン11と、第3分岐ライン13と、第2輸送ライン14と、第1貯留タンク60と、第2貯留タンク40と、を備える。
また、処理システム200は、廃プラスチック供給制御手段25と、第1分岐ライン11から混練機20へ供給される原料油の供給量を制御する第1原料油供給制御手段111と、第3分岐ライン13からラインミキサー30へ供給される原料油の供給量を制御する第3原料油供給制御手段131と、原料油の温度を制御する熱交換器HEと、を備える。
すなわち、第2実施形態の処理システム200は、第1実施形態に対し、第1分岐ライン11を備える点、第3分岐ライン13を備える点、第1貯留タンク60を備える点、並びに第2分岐ライン12を備えない点が異なる。その他の点は、第1実施形態と同様である。
【0047】
<第1貯留タンク60>
第1貯留タンク60は、混練機20で調製された溶融廃プラスチックと、第1分岐ライン11から混練機20へ供給された原料油との混合物(以下、「溶融廃プラスチック混合油A」とも称する)を貯留する。第1貯留タンク60には、ギアポンプ61が接続されている。第1貯留タンク60は、溶融廃プラスチック混合油Aを供給する手段として、ポンプを備えていることが好ましいが、自圧により溶融廃プラスチック混合油Aを溶融廃プラスチック供給ライン15へ供給してもよい。
第1貯留タンク60は、溶融廃プラスチック混合油Aから発生するガス(例えば、二酸化炭素、水蒸気、及び揮発性有機化合物等)を排出するガス抜き手段を有することが好ましい。ガス抜き手段としては、特に限定されないが、例えば、ガス抜き管等が挙げられる。
第1貯留タンク60がガス抜き手段を有することにより、溶融廃プラスチック混合油Aの発泡を防ぐもしくは低減させることができ、溶融廃プラスチック混合油Aの移送をスムーズに行うことができ、運転性の向上が見込まれる。その結果、廃プラスチックの分解効率を向上できると考えられる。
また、第1貯留タンク60は、溶融廃プラスチック混合油Aの混合性をより向上させる観点から、攪拌手段(例えば回転翼等)を有していてもよい。
第1貯留タンク60の温度は、溶融廃プラスチック混合油A中における溶融廃プラスチックの溶融状態を維持する観点から、例えば、160℃以上260℃以下に加熱されることが好ましい。第1貯留タンク60は、温度検知手段(例えば温度計等)を備え、第1貯留タンク60の温度を、温度制御手段(例えば、熱交換器及びヒーター等)で制御することが好ましい。
【0048】
<第1分岐ライン11>
第1分岐ライン11は、第1輸送ライン10と混練機20とを連結し、第1輸送ライン10から混練機20へ原料油を供給する。
本実施形態の第1分岐ライン11は、第1輸送ライン10の分岐点B1から分岐され、さらに分岐点B2で分岐されて、混練機20の出口側へ原料油を供給する。
第1分岐ライン11の途中には、混練機20への原料油の供給量を制御するための第1原料油供給制御手段111が設けられている。
第1原料油供給制御手段111は、原料油供給手段としての第1調節弁112と、第1制御器113とを有する。
第1原料油供給制御手段111は、第1制御器113から第1調節弁112に制御信号を送信し、第1調節弁112の動作を制御することで、原料油の供給量を制御する。第1制御器113はマイクロコンピュータ等を使用できる。
第1分岐ライン11中の原料油の温度は、溶融廃プラスチックの溶融状態を維持したまま、原料油と、溶融廃プラスチックとを混合できる温度に加熱されていることが好ましい。
第1分岐ライン11中の原料油は、分岐ライン温度制御手段(不図示、例えば熱交換器及びヒーター等)により、例えば、80℃以上240℃以下に加熱され、好ましくは160℃以上230℃以下に加熱される。なお、原料油の温度は、分岐ライン温度制御手段の設定温度である。
図2の場合、第1分岐ライン11中の原料油の温度は、分岐点B1及び分岐点B2の間に配置された熱交換器HEにより制御される。分岐ライン温度制御手段の数及び設置箇所は特に限定されない。
【0049】
<第3分岐ライン13>
第3分岐ライン13は、第1輸送ライン10とラインミキサー30とを連結し、第1輸送ライン10からラインミキサー30へ原料油を供給する。
本実施形態の第3分岐ライン13は、第1輸送ライン10の分岐点B1から分岐され、さらに分岐点B2で分岐されて、ラインミキサー30へ原料油を供給する。
第3分岐ライン13の途中には、原料油の供給量を制御するための第3原料油供給制御手段131が設けられている。
第3原料油供給制御手段131は、原料油供給手段としての第3調節弁132と、第3制御器133とを有する。
第3原料油供給制御手段131は、第3制御器133から第3調節弁132に制御信号を送信し、第3調節弁132の動作を制御することで、原料油の供給量を制御する。第3調節弁132はマイクロコンピュータ等を使用できる。
第3分岐ライン13中の原料油の温度は、溶融廃プラスチック混合油Aの溶融状態を維持したまま、ラインミキサー30にて、原料油と、溶融廃プラスチック混合油Aとを混合できる温度に加熱されていることが好ましい。
第3分岐ライン13中の原料油は、分岐ライン温度制御手段(不図示、例えば熱交換器及びヒーター等)により、例えば、80℃以上240℃以下に加熱され、好ましくは160℃以上230℃以下に加熱される。なお、原料油の温度は、分岐ライン温度制御手段の設定温度である。
図2の場合、第3分岐ライン13中の原料油の温度は、分岐点B1及び分岐点B2の間に配置された熱交換器HEにより制御される。分岐ライン温度制御手段の数及び設置箇所は特に限定されない。
【0050】
<作用>
第2実施形態の処理システム200では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
まず、混練機20に、フィーダー21より廃プラスチックが供給される。廃プラスチックは、混練機20内において所定温度で溶融されて溶融廃プラスチックとなる。
また、混練機20には、第1分岐ライン11より輸送された原料油が、混練機20の出口側に供給され、溶融廃プラスチックと混合されて、前記溶融廃プラスチック混合油A(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)が調製される。
溶融廃プラスチック混合油Aは、混練機20から排出され、第1貯留タンク60に貯留された後、ギアポンプ61にて、溶融廃プラスチック供給ライン15を輸送され、ラインミキサー30へ供給される。
また、ラインミキサー30には、第3分岐ライン13より輸送された原料油が供給される。ラインミキサー30では、溶融廃プラスチック混合油Aと、第3分岐ライン13より供給された原料油とが混合されて分解処理用混合物が調製される。この分解処理用混合物は、第1実施形態と同様に、動粘度が所定範囲に調整されている。
ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物は、第1実施形態と同様に、第2貯留タンク40に貯留された後、RFCC装置50へ供給される。RFCC装置50では、第1実施形態と同様に、溶融廃プラスチックが原料油と共に分解される。
【0051】
<効果>
第2実施形態の処理システム200では、混練機20内で、溶融廃プラスチックと、第1分岐ライン11より輸送された原料油とが混合されて前記溶融廃プラスチック混合油A(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)が調製され(1回目の混合)、ラインミキサー30内で、前記溶融廃プラスチック混合油Aと第3分岐ライン13より供給された原料油とが混合されて分解用理用混合物が調製される(2回目の混合)。
また、合流点C1においても、分解処理用混合物と、第1輸送ライン10からRFCC装置50へ輸送されている原料油とが混合される(3回目の混合)。
このように第2実施形態の処理システム200では、第1実施形態と同様に、溶融廃プラスチックに多段的に原料油が供給されるため、RFCC装置50へ供給される分解処理用混合物の混合性が向上した混合物となる。
また、廃プラスチック供給制御手段25で混練機20への廃プラスチックの供給量を制御し、第1原料油供給制御手段111で第1分岐ライン11から供給される原料油の供給量を制御し、第3原料油供給制御手段131で第3分岐ライン13から供給される原料油の供給量を制御することで、分解処理用混合物の動粘度を所定の範囲に調整できる。
よって、第2実施形態の処理システム200によれば、溶融廃プラスチックと原料油との混合性が向上し、かつ動粘度が制御された分解処理用混合物がRFCC装置50で分解されるので、廃プラスチックの分解性を向上でき、かつ原料油の分解性も向上できる。
特に、第2実施形態の処理システム200では、第1貯留タンク60に貯留された溶融廃プラスチック混合油Aがギアポンプ61にて、溶融廃プラスチック供給ライン15からラインミキサー30へ供給されるため、ラインミキサー内における分解処理用混合物の粘度の変動幅を小さくでき、動粘度が調整された分解処理用混合物が得られ易くなる。その結果、分解処理用混合物をRFCC装置50へ安定してスムーズに輸送でき、廃プラスチックを効率よく分解できる。
【0052】
〔第3実施形態〕
第3実施形態について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0053】
<全体構成>
図3は、第3実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図3に示す処理システム300は、第2実施形態に対し、第2分岐ライン12を備える点、及びガス抜きライン43,44を備える点が第2実施形態と相違する。その他の点は、第2実施形態と同様である。
【0054】
<第2分岐ライン12>
第3実施形態の第2分岐ライン12は、第1輸送ライン10の分岐点B1から分岐され、さらに分岐点B2及びB3で分岐されて、溶融廃プラスチック供給ライン15との合流点C3へ原料油を供給する。
第2分岐ライン12の途中には、原料油の供給量を制御するための第2原料油供給制御手段121が設けられている。
第2原料油供給制御手段121の構成は、第1実施形態と同様である。
第2分岐ライン12中の原料油の温度も、第1実施形態と同様に、熱交換器HEにより、例えば、80℃以上240℃以下に加熱され、好ましくは160℃以上230℃以下に加熱される。
【0055】
<ガス抜きライン43,44>
第1貯留タンク60の上部には、ガス抜き手段として、第1ガス抜きライン44が設けられている。同様に、第2貯留タンク40の上部には、ガス抜き手段として、第2ガス抜きライン43が設けられている。
第3実施形態では、第1ガス抜きライン44が第2ガス抜きライン43に連結されている。第1貯留タンク60内で発生したガスは、第1ガス抜きライン44を介して第2ガス抜きライン43へ流通し、第2貯留タンク40内で発生したガスと共に第2ガス抜きライン43から外部に排出される。
ガス抜き手段は、ガス抜きラインに限定されない。第1貯留タンク60及び第2貯留タンク40のそれぞれからガス抜き手段を介してガスを外部に排出(ガス抜き)してもよい。
【0056】
<作用>
第3実施形態の処理システム300では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
第2実施形態と同様の方法で、混練機20の出口側で、前記溶融廃プラスチック混合油A(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)が調製される。
混練機20から排出された前記溶融廃プラスチック混合油A(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)は、溶融廃プラスチック供給ライン15途中の合流点C3で、第2分岐ライン12より輸送された原料油と(混合)され、溶融廃プラスチック混合油Aと原料油との混合物(以下、「溶融廃プラスチック混合油B」とも称する)となり、第1貯留タンク60に貯留される。その後は、第2実施形態と同様である。
【0057】
<効果>
第3実施形態の処理システム300は、第2実施形態に対し、さらに溶融廃プラスチック供給ライン15途中の合流点C3において、前記溶融廃プラスチック混合油Aと、第2分岐ライン12より輸送された原料油とが混合される。
そのため、第3実施形態の処理システム300においても、溶融廃プラスチックに多段的に原料油が供給されるため、ラインミキサー30で調製され、RFCC装置50へ供給される分解処理用混合物は混合性の向上した混合物となる。
よって、第3実施形態の処理システム300によれば、溶融廃プラスチックと原料油との混合性が向上し、かつ動粘度が制御された分解処理用混合物がRFCC装置50にて分解されるので、廃プラスチックの分解性を向上できる。また、原料油の分解性も向上できる。
特に、第3実施形態の処理システム300では、第1貯留タンク60に、さらに第2分岐ライン12より原料油を供給するため、第1貯留タンク内に貯留された混合物(前記溶融廃プラスチック混合油B)を、溶融廃プラスチック供給ライン15からラインミキサー30へギアポンプ61にて輸送する際に、当該混合物の粘度およびその変動幅を小さくすることができ、ラインミキサー30へ安定してスムーズに輸送できる。その結果、動粘度が調整された分解処理用混合物が得られ易くなる。
【0058】
〔第4実施形態〕
第4実施形態について、第1実施形態から第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0059】
<全体構成>
図4は、第4実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図4に示す処理システム300Aは、第3実施形態に対し、2機のラインミキサーを備える点が処理システム300と異なる。その他の点は第3実施形態と同様である。
【0060】
<ラインミキサー30,30B>
第4実施形態の処理システム300Aは、2機のラインミキサー30,30Bを備える。2機のラインミキサー30,30Bは並列に配置されている。
【0061】
<溶融廃プラスチック供給ライン15>
第4実施形態の溶融廃プラスチック供給ライン15は、混練機20、第1貯留タンク60、ラインミキサー30及びラインミキサー30Bを連結する。
図4の場合、溶融廃プラスチック供給ライン15は、第1貯留タンク60の下流側の分岐点B5で第1混合油分岐ライン151及び第2混合油分岐ライン152に分岐される。
第1混合油分岐ライン151はラインミキサー30に連結される。第2混合油分岐ライン152はラインミキサー30Bに連結される。
【0062】
<第3分岐ライン13>
第4実施形態の第3分岐ライン13は、第1輸送ライン10及びラインミキサー30、並びに第1輸送ライン10及びラインミキサー30Bをそれぞれ連結する。
図4の場合、第3分岐ライン13は、第1輸送ライン10の分岐点B1から分岐点B2及びB3を経た後、分岐点B4で第1分岐ライン13A及び第2分岐ライン13Bに分岐される。第1分岐ライン13Aはラインミキサー30に連結される。第2分岐ライン13Bはラインミキサー30Bに連結される。
第1分岐ライン13Aの途中には、第2実施形態と同様の第3原料油供給制御手段131が設けられている。
第2分岐ライン13Bの途中には、ラインミキサー30Bへの原料油の供給量を制御するための第4原料油供給制御手段も設けられているが、第4原料油供給制御手段は図示を省略している。第4原料油供給制御手段は、第3原料油供給制御手段131と同じ構成及び稼働条件であってもよいし、互いに異なる構成及び稼働条件であってもよい。
【0063】
<作用>
第4実施形態の処理システム300Aでは、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
第3実施形態と同様の方法で、第1貯留タンク60に貯留された前記溶融廃プラスチック混合油Bは、ギアポンプ61にて溶融廃プラスチック供給ライン15を輸送し、前記溶融廃プラスチック混合油Bの一部は分岐点B5から第1混合油分岐ライン151を介してラインミキサー30へ供給され、残りは分岐点B5から第2混合油分岐ライン152を介してラインミキサー30Bへ供給される。
ラインミキサー30では、溶融廃プラスチック混合油Bと、第1分岐ライン13Aより供給された原料油とが混合されて分解処理用混合物(以下、「分解処理用混合物X1」とも称する)が調製される。ラインミキサー30Bでは、溶融廃プラスチック混合油Bと、第2分岐ライン13Bより供給された原料油とが混合されて分解処理用混合物(以下、「分解処理用混合物Y1」とも称する)が調製される。
分解処理用混合物X1及び分解処理用混合物Y1は、第2輸送ライン14の合流点C4で合流した後、第2貯留タンク40に貯留され、その後は、第3実施形態と同様の方法でRFCC装置50へ供給される。
【0064】
<効果>
第4実施形態の処理システム300Aでは、第3実施形態に対し、2機のラインミキサー30,30Bを並列に配置し、それぞれのラインミキサーで分解処理用混合物を調製するため、溶融廃プラスチックと原料油の混合状態をさらに高めるとともに、溶融廃プラスチックの処理用を増加することができ、分解対象となる分解処理用混合物をより多く調製できる。
よって、第4実施形態の処理システム300Aによれば、廃プラスチックの分解性をより向上でき、原料油の分解性を向上でき、さらに廃プラスチックの分解量を増加できる。
【0065】
〔第5実施形態〕
第5実施形態について、第1実施形態~第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0066】
図5は、第5実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図5に示す処理システム400は、第4実施形態に対し、混練機を2機備える点、ラインミキサーを3機備える点、及び第2分岐ライン12を備えない点が処理システム300Aと異なる。その他の点は第4実施形態と同様である。
【0067】
<混練機20,20A>
第5実施形態の処理システム400は、2機の混練機20,20Aを備える。2機の混練機20,20Aは並列に配置されている。
混練機20は、廃プラスチックの溶融で得られた溶融廃プラスチックと、第1分岐ライン11より混練機20の出口側に供給された原料油とを混合して、溶融廃プラスチック混合油A(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)を調製する。
混練機20Aは、図示は省略するが、混練機20と同様に、廃プラスチックの溶融で得られた溶融廃プラスチックと、第1分岐ライン11とは異なる供給ライン(例えば、追加原料油供給ライン等)より混練機20Aの出口側に供給された原料油とを混合して、溶融廃プラスチック混合油A’(溶融廃プラスチックと原料油との混合物)を調製する。
混練機20A内への原料油の供給量は、任意の原料油供給制御手段により制御されることが好ましい。
混練機20Aは、混練機20と同様の構成及び稼働条件であってもよいし、互いに異なる構成及び稼働条件であってもよい。
図5では、混練機20Aに接続されるフィーダー、ホッパー及び廃プラスチック供給制御手段の図示を省略している。当該フィーダー、ホッパー及び廃プラスチック供給制御手段の構成は特に限定されない。
【0068】
<ラインミキサー30,30A,30B>
第5実施形態の処理システム400は、3機のラインミキサーを備える。2機のラインミキサー30,30Aは直列に配置され、残りの1機のラインミキサー30Bは2機のラインミキサー30,30Aに対し並列に配置されている。
ラインミキサー30A,30Bは、ラインミキサー30と同じ構成及び稼働条件であってもよいし、互いに異なる構成及び稼働条件であってもよい。
【0069】
<溶融廃プラスチック供給ライン15>
第5実施形態の溶融廃プラスチック供給ライン15は、混練機20、混練機20A、第1貯留タンク60、ラインミキサー30及びラインミキサー30Bを連結する。
【0070】
<作用>
第5実施形態の処理システム400では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
まず、第1実施形態と同様の方法で、2機の混練機20,20Aに廃プラスチックがそれぞれ供給される。混練機20では、溶融廃プラスチック混合油Aが調製され、混練機20Aでは、溶融廃プラスチック混合油A’が調製される。
溶融廃プラスチック混合油A及び溶融廃プラスチック混合油A’は、合流点C5で合流(混合)されて第1貯留タンク60に貯留される。第1貯留タンク60に貯留された溶融廃プラスチック混合油(溶融廃プラスチック混合油A及び溶融廃プラスチック混合油A’の混合物)は、ギアポンプ61にて溶融廃プラスチック供給ライン15を輸送し、一部は分岐点B5から第1混合油分岐ライン151を介してラインミキサー30へ供給され、残りは分岐点B5から第2混合油分岐ライン152を介してラインミキサー30Bへ供給される。
ラインミキサー30では、第1混合油分岐ライン151より供給された溶融廃プラスチック混合油と、第1分岐ライン13Aより供給された原料油とが混合され分解処理用混合物が調製される。その後、分解処理用混合物は、ラインミキサー30の出口に連結された第2輸送ライン14を輸送し、ラインミキサー30Aに供給される。ラインミキサー30Aでは、分解処理用混合物がさらに混合された分解処理用混合物(以下、「分解処理用混合物X2」とも称する)が調製される。
一方、ラインミキサー30Bでは、第2混合油分岐ライン152より供給された溶融廃プラスチック混合油と、第2分岐ライン13Bより供給された原料油とが混合されて分解処理用混合物(以下、「分解処理用混合物Y2」とも称する)が調製される。
分解処理用混合物X2及び分解処理用混合物Y2の160℃における動粘度は、所定範囲(好ましくは1mm2/s以上60mm2/s以下)に調整されている。
分解処理用混合物X2及び分解処理用混合物Y2は、第2輸送ライン14の合流点C4で合流した後、第2貯留タンク40に貯留され、その後は、第4実施形態と同様の方法でRFCC装置50へ供給される。
RFCC装置50では、第4実施形態と同様に、溶融廃プラスチックが原料油と共に分解される。
【0071】
<効果>
第5実施形態の処理システム400では、第4実施形態に対し、2機の混練機20,20Aを並列に配置し、それぞれの混練機で溶融廃プラスチック混合油A及び溶融廃プラスチック混合油A’を調製するため、分解対象となる溶融廃プラスチックをより多く調製できる。さらに、それぞれの混練機において対象となる廃プラの種類、組成、形状、及び状態に応じて、同一もしくは別々の運転条件に設定することができるため、溶融廃プラスチック混合油A及び溶融廃プラスチック混合油A’の混合性が向上する。
また、第5実施形態の処理システム400では、ラインミキサー30で調製された分解処理用混合物を、さらにラインミキサー30Aで連続して混合するため、より混合性が向上した「分解処理用混合物X2」が調製される。
よって、第5実施形態の処理システム400によれば、廃プラスチックの分解性をより向上でき、原料油の分解性を向上でき、さらに廃プラスチックの分解量を増加できる。
【0072】
〔第5実施形態A〕
第5実施形態Aの処理システムは、第5実施形態で説明した処理システム400(
図5)に対し、ラインミキサー30Bの下流側に、直列してさらにラインミキサー30Cを備える点が処理システム400と異なる。その他の点は第5実施形態と同様である。
第5実施形態Aの処理システムについては、図示を省略する。以下の説明は、
図5の符号を援用して説明する。
【0073】
<ラインミキサー30,30A,30B,30C>
第5実施形態Aの処理システムは、4機のラインミキサーを備える。2機のラインミキサー30,30Aは直列に配置され、残りの2機のラインミキサー30B,30Cは、前記2機のラインミキサー30,30Aに対し並列に配置されている。
ラインミキサー30Cは、ラインミキサー30,30A,30Bと同じ構成及び稼働条件であってもよいし、互いに異なる構成及び稼働条件であってもよい。
【0074】
<作用>
第5実施形態Aの処理システム400では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
第5実施形態と同様の方法で、第1貯留タンク60に貯留された溶融廃プラスチック混合油(溶融廃プラスチック混合油A及び溶融廃プラスチック混合油A’の混合物)は、ギアポンプ61にて溶融廃プラスチック供給ライン15を輸送し、一部は分岐点B5から第1混合油分岐ライン151を介してラインミキサー30へ供給され、残りは分岐点B5から第2混合油分岐ライン152を介してラインミキサー30Bへ供給される。
ラインミキサー30Bでは、分解処理用混合物Y2が調製される。分解処理用混合物Y2は、ラインミキサー30Bの出口に連結された第2輸送ライン14を輸送し、ラインミキサー30Cに供給される。ラインミキサー30Cでは、分解処理用混合物Y2がさらに混合され、分解処理用混合物(以下、「分解処理用混合物Y2’」とも称する)が調製される。
分解処理用混合物Y2’の160℃における動粘度は、1mm2/s以上60mm2/s以下に調整されている。
ラインミキサー30Cは、ラインミキサー30,30A,30Bと同じ構成及び稼働条件であってもよいし、互いに異なる構成及び稼働条件であってもよい。
分解処理用混合物X2及び分解処理用混合物Y2’は、第2輸送ライン14の合流点C4で合流した後、第2貯留タンク40に貯留され、その後は、第5実施形態と同様の方法でRFCC装置50へ供給される。
RFCC装置50では、第5実施形態と同様に、溶融廃プラスチックが原料油と共に分解される。
【0075】
<効果>
第5実施形態Aの処理システムでは、より混合性が向上した分解処理用混合物X2及び分解処理用混合物Y2’が調製される。
よって、第5実施形態Aの処理システムによれば、廃プラスチックの分解性をさらに向上でき、原料油の分解性を向上でき、さらに廃プラスチックの分解量を増加できる。
【0076】
〔第6実施形態〕
第6実施形態について、第1実施形態~第5実施形態及び第5実施形態Aとの相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
【0077】
図6は、第6実施形態に係る廃プラスチック処理システムの概略図である。
図6に示す処理システム500は、第1実施形態に対し、他の追加原料油(以下、「追加原料油」とも称する)を供給する追加原料油供給ライン70を備える点で第1実施形態と相違する。その他の点は、第1実施形態と同様である。
【0078】
<追加原料油供給ライン70>
本実施形態の追加原料油供給ライン70は、混練機20の出口側へ追加原料油を供給する。追加原料油については後述する。
追加原料油供給ライン70の途中には、追加原料油の供給量を制御するための追加原料供給制御手段171が設けられている。追加原料供給制御手段171は、追加原料供給手段としての第4調節弁172と、第4制御器173とを有する。
追加原料供給制御手段171は、第4制御器173から第4調節弁172に制御信号を送信し、第4調節弁172の動作を制御することで、追加原料油の供給量を制御する。
追加原料油供給ライン70中の追加原料油の温度は、第1分岐ライン11中の原料油の温度と同様に、溶融廃プラスチックの溶融状態を維持したまま、原料油と、溶融廃プラスチックとを混合できる温度に加熱されていることが好ましい。
追加原料油供給ライン70中の追加原料油は、追加原料温度制御手段(不図示、例えば熱交換器及びヒーター等)により、例えば、80℃以上240℃以下に加熱され、好ましくは160℃以上230℃以下に加熱される。なお、追加原料油の温度は、追加原料温度制御手段の設定温度である。
追加原料温度制御手段の数及び設置箇所は特に限定されない。
追加原料油供給ライン70は、追加原料油を貯留する貯留タンクに接続されてもよい。また、追加原料油供給ライン70は、例えば、第1輸送ライン10に接続された第2分岐ライン12を追加原料油供給ライン70として用い、追加原料油を第1輸送ライン10から混練機20内に供給できるようにしてもよい。
追加原料油供給ライン70の数は限定されず、1つであっても2つ以上であってもよい。
【0079】
<作用>
第6実施形態の処理システム500では、以下のようにして廃プラスチックが原料油と共に分解される。
第1実施形態と同様の方法で、溶融廃プラスチックが調製される。
混練機20には、追加原料油供給ライン70より輸送された追加原料油が、混練機20の出口側に供給され、溶融廃プラスチックと混合されて、溶融廃プラスチックと追加原料油との混合物(以下、「溶融廃プラスチック混合油C」とも称する)が調製される。
調製された溶融廃プラスチック混合油Cは、第1実施形態と同様にして、溶融廃プラスチック供給ライン15を介して輸送され、合流点C2で、第2分岐ライン12より輸送された原料油と合流(混合)されてラインミキサー30へ供給される。
その後は、第1実施形態と同様である。
【0080】
<効果>
第6実施形態の処理システム500は、第1実施形態に対し、混練機20内で、さらに溶融廃プラスチックと、追加原料油供給ライン70より輸送された追加原料油とが混合されて前記溶融廃プラスチック混合油Cが調製される。
追加原料油の種類を適宜選択することで、廃プラスチックの性質に応じ、前記溶融廃プラスチック混合油Cの混合性をより向上できる。
よって、第6実施形態の処理システム500によれば、廃プラスチックの分解性を向上でき、かつ原料油(追加原料油を含む)の分解性も向上できる。
また、第6実施形態の処理システム500では、追加原料油の種類を適宜選択することで、前記溶融廃プラスチック混合油Cの混合性をより向上できるため、ラインミキサー30での分解処理用混合物の調製がより容易になり、粘度の変動幅が小さい分解処理用混合物が得られ易くなる。その結果、分解処理用混合物をRFCC装置50へ安定してスムーズに輸送でき、廃プラスチックを効率よく分解できると考えられる。
【0081】
次に、第1実施形態から第6実施形態に共通する構成について説明する。以下、符号の記載を省略することがある。
【0082】
<廃プラスチック>
廃プラスチックとしては、例えば、非塩素化プラスチック、塩素化プラスチック、及びこれらの混合物等が挙げられる。
非塩素化プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、スチレンオリゴマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂等が挙げられる。
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖低密度ポリエチレン等が挙げられる。
塩素化プラスチックとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0083】
廃プラスチックは、ビニル系重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、及びスチレンオリゴマー等)に由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
廃プラスチックは、ポリエチレンに由来する廃プラスチック及びポリプロピレンに由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0084】
なお、廃プラスチックは、ポリスチレンに由来する廃プラスチック、及びエチレン酢酸ビニルに由来する廃プラスチックを含まないことが好ましい。
【0085】
<原料油>
原料油としては、特に限定されないが、重質分解軽油(HCO)、分解残渣油(CLO)、常圧残渣油(RC)、脱硫残渣油(DSRC)、脱硫減圧軽油(VHHGO)、未脱硫減圧軽油(VGO)、未脱硫減圧残渣油(VC)、及び鉱油(例えばHG500(500ニュートラル留分の鉱油)等)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、脱硫減圧軽油(VHHGO)、重質分解軽油(HCO)、脱硫残渣油(DSRC)及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、前記原料油を輸送する第1輸送ライン10は、FCC装置またはRFCC装置で回収された重質分解軽油(HCO)及び分解残渣油(CLO)の少なくともいずれかを直接供給できるように、例えば、HCO貯留タンクまたはCLO貯留タンクに接続されていてもよい。
また、第1輸送ライン10は、例えば、重油直接脱硫装置で生成された脱硫残渣油(DSRC)を直接供給できるように、例えば、DSRC貯留タンクに接続されていてもよい。
【0086】
<追加原料油>
追加原料油としては、前記原料油(重質分解軽油、分解残渣油、常圧残渣油、脱硫残渣油、脱硫減圧軽油、未脱硫減圧軽油、未脱硫減圧残渣油、及び鉱油からなる群から選ばれる少なくとも1種)、軽質炭化水素油、ナフサ、軽油、及び前記原料油とは異なる重質炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0087】
<分解処理装置>
分解処理装置としては、例えば、接触分解装置(FCC装置)、残油流動接触分解装置(RFCC装置)(FCC装置の一態様)及び水素化分解装置等が挙げられる。
分解処理装置は、廃プラスチックの分解性を向上させる観点から、接触分解装置(FCC装置)または残油接触分解装置(RFCC装置)であることが好ましい。
【0088】
<分解処理用混合物の動粘度>
混合装置(第1実施形態から第6実施形態の場合はラインミキサー)で調製される分解処理用混合物は、廃プラスチックの分解性を向上させる観点から、160℃における動粘度が、1mm2/s以上60mm2/s以下であることが好ましい。
160℃における動粘度は、JIS K 2283(2000)の「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準じて測定される値である。
【0089】
分解処理用混合物の160℃における動粘度を所定の範囲に制御する方法としては、例えば、廃プラスチック供給制御手段25が廃プラスチックの供給量もしくは溶融廃プラスチックの溶融量を制御し、かつ各原料油供給制御手段が各原料油の供給量を制御する方法が挙げられる。また、分解処理用混合物の160℃における動粘度を所定の範囲に制御する方法としては、混練機の溶融条件(例えば、温度、スクリューの回転数及び時間等)、ラインミキサーの混合条件(例えば、温度、攪拌手段の回転数及び時間等)、各分岐ラインの温度、及び各輸送ラインの温度を制御する方法も挙げられる。
【0090】
具体的には、以下の制御方法が好ましい。
廃プラスチック供給制御手段25は、分解処理用混合物中における溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油(混練機20からラインミキサー30に至るまでに供給された原料油)の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲(好ましくは10以上200以下)になるように、前記廃プラスチックの供給量を制御し、
原料油供給制御手段は、分解処理用混合物中における溶融廃プラスチックの溶融量に対する、前記原料油(混練機からラインミキサーに至るまでに供給された原料油)の合計供給量との比率(前記原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記原料油の合計供給量を制御することが好ましい。当該所定の範囲は、好ましくは10以上200以下、より好ましくは20以上200以下である。
「混練機からラインミキサーに至るまでに供給された原料油の合計供給量」とは、例えば
図2の場合、第1原料油供給制御手段111及び第3原料油供給制御手段131により供給された原料油の合計供給量である。
また、前記実施形態のいずれかの処理システムが、追加原料油供給ライン及び追加原料供給制御手段を有する場合、追加原料供給制御手段は、分解処理用混合物中における溶融廃プラスチックの溶融量に対する、混練機からラインミキサーに至るまでに供給された原料油、及び混練機からラインミキサーに至るまでに供給された追加原料油の合計供給量の比率(前記原料油及び前記追加原料油の合計供給量/前記溶融廃プラスチックの溶融量)が、質量比で、所定の範囲になるように、前記追加原料油の供給量を制御することが好ましい。当該所定の範囲は、好ましくは10以上200以下、より好ましくは20以上200以下である。
「混練機からラインミキサーに至るまでに供給された原料油、及び混練機からラインミキサーに至るまでに供給された前記追加原料油の合計供給量」とは、例えば
図6の場合、第2原料油供給制御手段121により供給された原料油、及び追加原料供給制御手段171により供給された追加原料油の合計供給量である。
【0091】
<溶融廃プラスチック混合油の粘度>
前記実施形態のいずれかの処理システムにおいて、混合装置に供給される前の溶融廃プラスチック混合油(例えば溶融廃プラスチック混合油Aから溶融廃プラスチック混合油Cのいずれか)の200℃における溶融粘度は、所定範囲(好ましくは100mPa・s以上5000万mPa・s以下)に調整されていることが好ましい。
200℃における溶融粘度は、レオメータ装置(アントンパール社製、MCR302(品番))を用いて、以下の条件で、測定治具としてコーンプレートを用いて測定された値である。
<条件>
・コーンプレート測定システム:DIN EN(ISO 3219及びDIN 53019に準拠)
・角周波数(ω) :0.1rad/秒~100rad/秒
・測定温度 :200℃
・試料仕込み質量 :0.1g~0.3g
【0092】
〔他の実施形態〕
第1実施形態~第6実施形態では、ラインミキサーで調製された分解処理用混合物が、第2輸送ラインを介して合流点C1まで輸送され、合流点C1で、第1輸送ライン10からRFCC装置50へ輸送されている原料油と合流(混合)され、RFCC装置50に供給される態様について説明したがこれに限定されない。例えば、前記実施形態のいずれかにおいて、ラインミキサーで調製された分解処理用混合物を第2輸送ラインから直接(第1輸送ラインを介さずに)RFCC装置に供給してもよい。
【0093】
第5実施形態では、2機のラインミキサー30,30Aが直列に連続して配置され、残りの1機のラインミキサー30Bが2機のラインミキサー30,30Aに対し並列に配置される態様について説明したがこれに限定されない。
また、第5実施形態Aでは、2機のラインミキサー30,30Aが直列に連続して配置され、残りの2機のラインミキサー30B,30Cが前記2機のラインミキサー30,30Aに対し並列に配置される態様について説明したがこれに限定されない。
例えば、前記実施形態のいずれかにおいて、複数のラインミキサーが直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて配置されていてもよい。複数のラインミキサーは、互いに同一であっても異なっていてもよい。ラインミキサーの数及び配置も限定されない。
第5実施形態及び第5実施形態Aでは、2機の混練機を並列に設置し、各々の混練機に供給された廃プラスチックから溶融廃プラスチックを調製する態様について説明したがこれに限定されない。例えば、前記実施形態のいずれかにおいて、混錬機を3機以上配置してもよい。複数の混練機は、互いに同一であっても異なっていてもよい。混練機の数も限定されない。
【0094】
第6実施形態では、追加原料油供給ライン70が、混練機20に連結される態様について説明したがこれに限定されない。例えば、前記実施形態のいずれかにおいて、追加原料油供給ラインは、混練機、ラインミキサー、第1分岐ライン、第2分岐ライン、第3分岐ライン、溶融廃プラスチック供給ライン、第1輸送ライン及び第2輸送ラインの少なくともいずれかに連結されていればよい。追加原料油供給ラインの数も限定されない。
【0095】
前記実施形態のいずれかの処理システムは、混練機20,20Aに代えて、公知の溶融装置を用いてもよい。
前記実施形態のいずれかの処理システムは、ラインミキサー30,30A,30B,30Cに代えて、公知の混合装置を用いてもよい。
前記実施形態のいずれかの処理システムは、RFCC装置50に代えて、例えば、石油精製の分野で用いられている公知の分解処理装置を用いてもよい。
【実施例0096】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0097】
〔分解処理用混合物の調製1〕
〔実施例1〕
廃プラスチックとして、圧密化された円柱状のポリプロピレン(径8mm×長さ10~15mm)を用いて、以下の条件で溶融ポリプロピレン(以下、「溶融PP」とも称する)を調製した。
(条件)
・混練機 :芝浦機械社製:二軸混練押出機(品番TEM-37SS)
・溶融温度 :200℃
・溶融量 :30kg/hr
【0098】
次に、溶融PPに対する脱硫残渣油(DSRC)の比率(DSRC/溶融PP)が、質量比で1になるように、溶融PP(10kg)に、原料油としてのDSRCを加え、溶融PPとDSRCとの混合物(20kg)(以下、「溶融PP混合油1」とも称する)を調製した。
溶融PP混合油1の溶融粘度を既述の方法で測定した。溶融PP混合油1の200℃における溶融粘度は、100万mPa・sであった。
【0099】
次に、溶融PPに対する脱硫残渣油(DSRC)の比率(DSRC/溶融PP)が、質量比で50になるように、溶融PP混合油1(6g)に、さらにDSRC(147g)を加えた。その後、バッチ式ミキサーを用いて、以下の条件で溶融PP混合油1とDSRCとの混合物を混合し、分解処理用混合物を調製した。
分解処理用混合物の動粘度を既述の方法で測定した。分解処理用混合物の160℃における動粘度は、10mm2/sであった。
(条件)
・バッチ式ミキサー :プライミクス社製:ホモミクサーMKII ホモミクサー翼
・回転数 :900rpm
・温度 :220℃
・時間 :30秒
【0100】
次に、実施例1の分解処理用混合物をFCC装置に相当する小型反応評価装置(MAT装置)を用い、以下の条件で分解した。
(条件)
・小型反応評価装置:Kayser社製:ACE R+
・反応温度 :530℃
・圧力 :0.05MPaG
・時間 :90秒(オイル通油時間)
・触媒/分解処理用混合物(質量比):6
・触媒 :9g
・触媒種 :FCC平衡触媒
(実装置から抜き出したFCC平衡触媒)
【0101】
〔実施例2〕
実施例1に対し、「触媒/分解処理用混合物(質量比)」を5に変更したこと以外、実施例1と同様の方法で、分解処理用混合物を調製し分解した。
【0102】
〔実施例3〕
実施例1に対し、「触媒/分解処理用混合物(質量比)」を3.98に変更したこと以外、実施例1と同様の方法で、分解処理用混合物を調製し分解した。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法で、小型反応評価装置にてDSRC(溶融PPを含まない)を分解した。
【0104】
〔比較例2〕
比較例1に対し、「触媒/DSRC(質量比)」を5に変更したこと以外、比較例1と同様の方法で、DSRCを分解した。
【0105】
〔比較例3〕
比較例1に対し、「触媒/DSRC(質量比)」を3.98に変更したこと以外、比較例1と同様の方法で、DSRCを分解した。
【0106】
<分解性評価1>
実施例1~3の分解処理用混合物、及び比較例1~3のDSRCの分解性をマイクロアクティビィティテスト(MAT)にて評価した結果を表1に示す。
表1中の値は、分解して得られた生成油中の、DSRCの質量に対する各成分の質量の百分率を表す。
転化率(質量%)は、下記式(1)より算出した。
転化率(質量%)=100-(LCO+CLO) …(1)
【0107】
【0108】
・表1中の説明
Dry Gasは、メタン、エタン及びエチレンを表す。
FGは、ガソリンを表す。
LCOは、分解軽油(軽質分解軽油+重質分解軽油)を表す。
CLOは、分解残渣油を表す。
COKEは、コークを表す。
後述する表2も同様である。
【0109】
実施例1と比較例1とを対比した結果、溶融PPを含む分解処理用混合物を分解した実施例1は、DSRCのみを分解した比較例1に比べ、転化率、FG収率、及び液化石油ガス類(プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン及びブチレン)の収率が向上した。特に、プロピレン収率、イソブタン収率及びブチレン収率が向上した。
実施例2と比較例2との対比の結果、及び実施例3と比較例3との対比の結果も同様であった。
本実施例によれば、分解処理用混合物中の廃プラスチックを、原料油と共に有用な液化石油ガス類へ転化でき、かつ廃プラスチックの分解性を向上できることが確認された。
【0110】
〔分解処理用混合物の調製2〕
〔実施例4〕
実施例1と同様の廃プラスチックを用いて、実施例1と同様の条件で溶融PPを調製した。ただし、実施例4では、溶融PP(10kg)に対する鉱油(HG500)の比率(HG500/溶融PP)が、質量比で1になるように、混練機の出口側に、原料油としてのHG500を供給しながら廃プラスチックを溶融させた。この操作により、溶融PPとHG500との混合物(20kg)(以下、「溶融PP混合油2」とも称する)を得た。
溶融PP混合油2の溶融粘度を既述の方法で測定した。溶融PP混合油2の200℃における溶融粘度は、100万mPa・sであった。
【0111】
次に、溶融PPに対するHG500の比率(HG500/溶融PP)が、質量比で25になるように、溶融PP混合油2(8g)に、さらにHG500(96g)を加えた。その後、以下の条件で溶融PP混合油2とHG500との混合物を混合し、分解処理用混合物を調製した。
分解処理用混合物の動粘度を既述の方法で測定した。分解処理用混合物の160℃における動粘度は、21mm2/sであった。
【0112】
次に、実施例4の分解処理用混合物をFCC装置に相当する小型反応評価装置(MAT装置)を用い、実施例1と同様の方法で分解した。
【0113】
〔実施例5〕
実施例4に対し、「触媒/分解処理用混合物(質量比)」を5に変更したこと以外、実施例4と同様の方法で、分解処理用混合物を調製し分解した。
【0114】
〔比較例4〕
実施例4と同様の方法で、小型反応評価装置にてHG500(溶融PPを含まない)を分解した。
【0115】
〔比較例5〕
比較例4に対し、「触媒/HG500(質量比)」を5に変更したこと以外、比較例4と同様の方法で、HG500を分解した。
【0116】
<分解性評価2>
実施例4~5の分解処理用混合物、及び比較例4~5のHG500の分解性をマイクロアクティビィティテスト(MAT)にて評価した結果を表2に示す。
表2中の値は、分解して得られた生成油中の、HG500の質量に対する各成分の質量の百分率を表す。
転化率(質量%)は、前記式(1)より算出した。
【0117】
【0118】
実施例4と比較例4とを対比した結果、溶融PPを含む分解処理用混合物を分解した実施例4は、HG500のみを分解した比較例4に比べ、転化率、FG収率、及び液化石油ガス類(プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン及びブチレン)の収率が向上した。特に、プロピレン収率、イソブタン収率及びブチレン収率が向上した。
実施例5と比較例5との対比の結果も同様であった。
本実施例によれば、分解処理用混合物中の廃プラスチックを、原料油と共に有用な液化石油ガス類へ転化でき、かつ廃プラスチックの分解性を向上できることが確認された。
【0119】
以上の結果から、動粘度が所定の範囲に調整された分解処理用混合物を調製できる混合装置、及び分解処理装置等を備える廃プラスチック処理システムによれば、廃プラスチックの分解性を向上できると考えられる。
10…第1輸送ライン、11…第1分岐ライン、12…第2分岐ライン、13…第3分岐ライン、13A…第1分岐ライン、13B…第2分岐ライン、14…第2輸送ライン、15…溶融廃プラスチック供給ライン、20,20A…混練機、21…フィーダー、22…ホッパー、23…廃プラスチック供給ライン、24…フィーダー制御器、25…廃プラスチック供給制御手段、30,30A,30B…ラインミキサー、40…第2貯留タンク、41…遠心ポンプ、43,44…ガス抜きライン、50…RFCC装置、60…第1貯留タンク、61…ギアポンプ、70…追加原料油供給ライン、100,200,300,300A,400,500…処理システム、111…第1原料油供給制御手段、112…第1調節弁、113…第1制御器、121…第2原料油供給制御手段、122…第2調節弁、123…第2制御器、131…第3原料油供給制御手段、132…第3調節弁、133…第3制御器、151…第1混合油分岐ライン、152…第2混合油分岐ライン、171…追加原料供給制御手段、172…第4調節弁、173…第4制御器、HG…熱交換器。