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特開2022-76616リール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076616
(43)【公開日】2022-05-20
(54)【発明の名称】リール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20220513BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220513BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
C09J7/00
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187071
(22)【出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】友利 直己
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004EA01
4J004EA02
4J004GA02
4J040DG001
4J040EH031
4J040EJ021
(57)【要約】
【課題】巻出装置にセットする際の位置合わせの手間を省くことができるリール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法を提供する。
【解決手段】リール体1は、接着層8を基材層7上に有する接着フィルム2が巻芯3に巻き回されてなるリール体1であって、接着フィルム2は、接着層8上に保護層を有しておらず、接着層8と基材層7とが巻芯3の径方向に隣接した状態で巻芯3に巻き回されており、巻芯3の軸方向Lの幅W1は、接着フィルム2の幅W2よりも小さくなっており、接着フィルム2の巻回体4には、巻芯3の軸方向Lに張り出す張出部分5が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層を基材層上に有する接着フィルムが巻芯に巻き回されてなるリール体であって、
前記接着フィルムは、前記接着層上に保護層を有しておらず、前記接着層と前記基材層とが前記巻芯の径方向に隣接した状態で前記巻芯に巻き回されており、
前記巻芯の軸方向の幅は、前記接着フィルムの幅よりも小さくなっており、
前記接着フィルムの巻回体には、前記巻芯の前記軸方向に張り出す張出部分が設けられているリール体。
【請求項2】
前記張出部分は、前記巻芯の前記軸方向の一方側及び他方側にそれぞれ設けられている請求項1記載のリール体。
【請求項3】
前記張出部分は、前記軸方向の一方側及び他方側の一方にのみ設けられている請求項1記載のリール体。
【請求項4】
前記張出部分の内周側には、前記巻芯と同径の着脱自在の補助芯が配置されている請求項1~3のいずれか一項記載のリール体。
【請求項5】
前記接着フィルムの巻回体の前記軸方向の端面には、当該端面における前記接着フィルムの幅方向の縁を揃えるガイド板が配置されている請求項1~4のいずれか一項記載のリール体。
【請求項6】
接着層を基材層上に有する接着フィルムを巻芯に巻き回す巻回ステップを有するリール体の製造方法であって、
前記巻回ステップでは、前記接着フィルムの幅よりも軸方向の幅が小さい前記巻芯を用い、前記接着層上に保護層を有しない前記接着フィルムを、前記接着層と前記基材層とを前記巻芯の径方向に隣接させながら前記巻芯に巻き回すことにより、前記巻芯の前記軸方向に張り出す張出部分を接着フィルムの巻回体に形成するリール体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項記載のリール体から巻き出した前記接着フィルムを被着体に接合する接合ステップを有する物品の製造方法であって、
前記接合ステップでは、前記リール体における前記張出部分の内周側を巻出装置側の巻芯治具に固定すると共に、前記張出部分において前記接着フィルムの巻回体の前記軸方向の端面を前記巻出装置側のガイド板に当接させた状態で、前記接着フィルムを前記被着体に向かって巻き出す物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着フィルムを用いた物品の製造方法として、例えば特許文献1のように、リードフレームの裏面に仮保護テープとしての接着フィルムを貼り付ける方法がある。この特許文献1の方法では、リードフレームの裏面を接着フィルムで仮保護した状態で半導体素子の封止を行い、その後にリードフレームの裏面から接着フィルムを剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2001/035460号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着フィルムの製造にあたっては、接着フィルムを巻芯に巻き回すことによってリール体が形成される。製造された接着フィルムは、リール体の状態で流通し、ユーザ側の巻出装置にセットされて使用される。一般的なリール体では、巻芯の軸方向の幅と接着フィルムとの幅とが揃っており、リール体を巻出装置にセットする際には、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせが行われている。
【0005】
しかしながら、従来のリール体では、巻き回しの際に接着フィルムが少しでも軸方向にずれると、接着フィルムの巻回体から巻芯が軸方向に突出してしまうという問題があった。巻芯が軸方向に突出すると、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とすることができなくなり、巻出装置にセットする際の位置合わせに手間が生じることとなる。特に、接着層上に保護層がなく、接着層と基材層とが巻芯の径方向に隣接した状態で巻芯に巻き回された接着フィルムでは、巻回体に力を加えても巻芯に対する接着フィルムの位置を動かすことが困難であり、セットするリール体毎に位置合わせを行う必要が生じるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、巻出装置にセットする際の位置合わせの手間を省くことができるリール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るリール体は、接着層を基材層上に有する接着フィルムが巻芯に巻き回されてなるリール体であって、接着フィルムは、接着層上に保護層を有しておらず、接着層と基材層とが巻芯の径方向に隣接した状態で巻芯に巻き回されており、巻芯の軸方向の幅は、接着フィルムの幅よりも小さくなっており、接着フィルムの巻回体には、巻芯の軸方向に張り出す張出部分が設けられている。
【0008】
このリール体では、巻芯の軸方向の幅が接着フィルムの幅よりも小さくなっており、接着フィルムの巻回体が巻芯の軸方向に張り出している。このため、巻き回しの際に接着フィルムが巻芯の軸方向に多少ずれたとしても、接着フィルムの巻回体から巻芯が軸方向に突出してしまうことを抑制できる。巻芯の突出の抑制により、巻出装置にリール体をセットする際に、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせが容易となり、位置合わせの手間を省くことができる。
【0009】
張出部分は、巻芯の軸方向の一方側及び他方側にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、巻き回しの際の接着フィルムの位置ずれを巻芯の軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに許容できる。
【0010】
張出部分は、軸方向の一方側及び他方側の一方にのみ設けられていてもよい。この場合、軸方向の一方側及び他方側の一方において、巻き回しの際の接着フィルムの位置ずれの許容量を大きく確保できる。また、張出部分の反対側では、巻回体の軸方向の端面と巻芯の軸方向の端面とが揃うこととなる。したがって、張出部分と反対側の端面を位置合わせの基準として用いる場合には、張出部分の軸方向の幅によらず、巻出装置にリール体をセットする際の制約を回避できる。
【0011】
張出部分の内周側には、巻芯と同径の着脱自在の補助芯が配置されていてもよい。この場合、張出部分における接着フィルムのうねりの発生を抑制できる。巻出装置へのリール体のセットの際には、補助芯を脱抜することで、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせを容易に実施できる。
【0012】
接着フィルムの巻回体の軸方向の端面には、当該端面における接着フィルムの幅方向の縁を揃えるガイド板が配置されていてもよい。このようなガイド板の配置により、巻出装置での位置合わせの基準となる接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を保護できる。
【0013】
本開示の一側面に係るリール体の製造方法は、接着層を基材層上に有する接着フィルムを巻芯に巻き回す巻回ステップを有するリール体の製造方法であって、巻回ステップでは、接着フィルムの幅よりも軸方向の幅が小さい巻芯を用い、接着層上に保護層を有しない接着フィルムを、接着層と基材層とを巻芯の径方向に隣接させながら巻芯に巻き回すことにより、巻芯の軸方向に張り出す張出部分を接着フィルムの巻回体に形成する。
【0014】
このリール体の製造方法では、軸方向の幅が接着フィルムの幅よりも小さい巻芯を用い、巻芯の軸方向に張り出す張出部分を接着フィルムの巻回体に形成する。得られるリール体では、巻き回しの際に接着フィルムが巻芯の軸方向に多少ずれたとしても、接着フィルムの巻回体から巻芯が軸方向に突出してしまうことを抑制できる。巻芯の突出の抑制により、巻出装置にリール体をセットする際に、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせが容易となり、位置合わせの手間を省くことができる。
【0015】
本開示の一側面に係る物品の製造方法は、上記リール体から巻き出した接着フィルムを被着体に接合する接合ステップを有する物品の製造方法であって、接合ステップでは、リール体における張出部分の内周側を巻出装置側の巻芯治具に固定すると共に、張出部分において接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を巻出装置側のガイド板に当接させた状態で、接着フィルムを被着体に向かって巻き出す。
【0016】
この物品の製造方法では、リール体において接着フィルムの巻回体から巻芯が軸方向に突出してしまうことが抑制されている。これにより、巻出装置にリール体をセットする際に、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせが容易となり、位置合わせの手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、巻出装置にリール体をセットする際の位置合わせの手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係るリール体の斜視図である。
図2図1に示したリール体の断面図である。
図3】補助芯を装着した状態で示すリール体の断面図である。
図4】接着フィルムの層構成を巻回体と共に示す断面図である。
図5】リール体の製造装置の一例を示す概略的な斜視図である。
図6】リール体を用いた物品の製造装置の一例を示す概略的な図である。
図7】(a)及び(b)は、変形例に係るリール体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係るリール体、リール体の製造方法、及び物品の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む。
[リール体の構成]
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係るリール体の斜視図である。また、図2は、その断面図である。リール体1は、図1及び図2に示すように、接着フィルム2が巻芯3に巻き回されることによって構成されている。接着フィルム2は、例えばリードフレームに搭載された半導体素子を封止する封止工程において、リードフレームの仮保護に用いられるフィルムである。接着フィルム2は、封止工程においてリードフレームの裏面(半導体素子の形成面とは反対側の面)に貼り付けられ、半導体素子を封止する封止層を形成している間、リードフレームを仮保護する。接着フィルム2は、封止工程が終了した後、リードフレームの裏面から剥離される。
【0021】
巻芯3は、接着フィルム2が巻き回される部分である。巻芯3は、例えば中空の円筒形状をなし、軸方向Lに沿って延在している。巻芯3の形成材料としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)などが挙げられる。巻芯3の外径は、例えば80mm~95mmであり、82mm~92mmであることがより好ましく、80mm~90mmであることが更に好ましい。巻芯3の内径は、例えば70mm~85mmであり、72mm~82mmであることがより好ましく、75mm~80mmであることが更に好ましい。巻芯3の軸方向Lの長さは、例えば40mm~100mmであり、50mm~90mmであることがより好ましく、60mm~80mmであることが更に好ましい。
【0022】
巻芯3の軸方向Lの幅W1は、接着フィルム2の幅W2よりも小さくなっている。このため、接着フィルム2を巻芯3に巻き回した巻回体4には、巻芯3の軸方向Lに張り出す張出部分5が設けられている。本実施形態では、張出部分5は、巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側にそれぞれ設けられている。巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側への張出部分5の張出幅W3は、例えば1mm~15mmであり、2mm~10mmであることがより好ましく、3mm~7mmであることが更に好ましい。巻芯3の軸方向Lの一方側への張出部分5の張出幅W3と、巻芯3の軸方向Lの他方側への張出部分5の張出幅W3とは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0023】
リール体1は、保管や搬送にあたって包装袋に収容した状態で取り扱われてもよい。包装袋には、単体のリール体1が収容されていてもよく、複数のリール体1が収容されていてもよい。包装袋は、樹脂フィルムによって形成されていてよく、アルミニウム層を有する複合樹脂フィルムによって形成されていてもよい。包装袋の具体例としては、アルミニウムコーティングされたプラスチック製の袋等が挙げられる。樹脂フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックが挙げられる。
【0024】
リール体1は、例えば、真空パックされた状態で包装袋に収容されていてもよい。包装袋には、リール体1と共に乾燥剤が収容されていてもよい。乾燥剤としては、例えばシリカゲルが挙げられる。包装体は、更に緩衝材で包まれていてもよい。包装体は、例えば段ボールのような梱包箱に収容されていてもよい。
【0025】
また、リール体1の保管や搬送にあたり、接着フィルム2の巻回体4における張出部分5の内周側には、図3に示すように、補助芯6が配置されていてもよい。補助芯6は、巻芯3と同径の中空の円筒形状をなしている。補助芯6は、例えば巻芯3と同材料にて巻芯3とは別体に構成され、張出部分5の内周側に対して着脱自在となっている。図3の例では、補助芯6は、巻回体4における軸方向Lの一方側の張出部分5の内周側と、巻回体4における軸方向Lの他方側の張出部分5の内周側とにそれぞれ配置されている。
【0026】
本実施形態では、補助芯6の軸方向Lの幅W4は、張出部分5の張出幅W3よりも大きくなっている。補助芯6における軸方向Lの一方端6aは、巻回体4の内周側で巻芯3における軸方向Lの端面3aと当接し、補助芯6における軸方向Lの他方端6bは、巻回体4における軸方向Lの端面4aよりも突出している。端面4aからの補助芯6の突出幅(=W4-W3)に特に制限はないが、突出幅は、例えば5mm~10mmとなっている。突出幅は、2mm~5mmであってもよく、0mm~2mmであってもよい。
【0027】
補助芯6は、必ずしも端面4aより突出している必要はない。例えば補助芯6の軸方向Lの幅W4と張出部分5の張出幅W3とが等幅であり、補助芯6における軸方向Lの他方端6bと端面4aとの位置が揃っていてもよい。また、補助芯6の軸方向Lの幅W4が張出部分5の張出幅W3よりも小さく、補助芯6における軸方向Lの他方端6bが巻回体4の内周側に位置していてもよい。
[接着フィルムの構成]
【0028】
接着フィルム2は、図4に示すように、基材層7と、基材層7の一面側に設けられた接着層8とによって2層に構成されている。本実施形態では、接着フィルム2は、接着層8上に保護層を有しておらず、接着層8と基材層7とが巻芯3の径方向に隣接した状態で巻芯3に巻き回されている。巻回体4の状態では、径方向の外側に接着層8が位置しており、径方向の内側に基材層7が位置している。
【0029】
接着フィルム2の幅(すなわち、巻回体4の軸方向Lの幅W2)は、例えば50mm以上となっている。接着フィルム2の幅は、100mm以上であってもよく、200mm以上であってもよい。接着フィルム2の幅は、600mm以下であってもよい。接着フィルム2の幅は、例えば50mm以上600mm以下であってもよく、100mm以上600mm以下であってもよく、200mm以上600mm以下であってもよい。
【0030】
接着フィルム2の面内方向の30℃~200℃における線膨張係数は、例えば16ppm/℃以上20ppm/℃以下となっている。面内方向とは、例えばMD(Machine Direction)方向及びTD(Transverse Direction)方向のいずれかであってよい。MD方向は、通常、接着フィルム2の長手方向である。TD方向は、MD方向に直交する方向(幅方向)である。線膨張係数の測定は、熱機械分析装置(例えばセイコーインスツル株式会社製:SSC5200)により測定できる。接着フィルム2の面内方向の30℃~200℃における線膨張係数は、例えば接着層8の厚さを変えることによって調整できる。
【0031】
接着フィルム2の30℃における弾性率は、例えば9GPa以下となっている。接着フィルム2の30℃における弾性率は、8GPa以下であってよく、7GPa以下であってもよい。接着フィルム2の30℃における弾性率は、4GPa以上であってもよく、5GPa以上であってもよい。接着フィルム2の30℃における弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば株式会社ユービーエム製:Rheogel-E4000)により測定できる。この場合、接着フィルム2を例えば4mm×30mmサイズに切って得た試験片をチャック間距離20mmで動的粘弾性測定装置にセットする。そして、正弦波、温度範囲30℃(一定)、周波数10Hzの条件で試験片の引張弾性率を測定することにより、接着フィルム2の30℃における弾性率を求めることができる。
【0032】
基材層7は、接着層8の形成工程、半導体パッケージの組立工程などの各工程での熱に対する耐熱性を有する材料によって構成されている。かかる材料としては、例えば芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーが挙げられる。
【0033】
基材層7のガラス転移温度は、耐熱性を向上させる観点から、200℃以上であってもよく、250℃以上であってもよい。これにより、ダイパッドに半導体素子を接着する工程、ワイヤボンディング工程、封止工程、仮保護フィルムを封止成形体から引き剥がす工程といった熱の加わる工程において、基材層7の軟化が抑制され、作業効率の向上が図られる。また、基材層7の230℃における弾性率は、接着層8の230℃における弾性率よりも高くなっている。
【0034】
基材層7は、接着層8に対する密着性を十分に有していることが好ましい。基材層7が接着層8に対する密着性を十分に有している場合、例えば100℃~300℃の温度で接着フィルム2をリードフレーム及び封止材から引き剥がす際に、接着層8と基材層7との界面で剥離が生じることを抑制できる。これにより、リードフレーム及び封止材に樹脂が残留することを抑制できる。
【0035】
耐熱性及び接着層8に対する密着性の双方を十分に有する観点から、基材層7がポリイミドによって構成されていてもよい。ポリイミドによる基材層7の30℃~200℃における線膨張係数は、3.0×10-5/℃以下であってもよく、2.5×10-5℃以下であってもよく、2.0×10-5/℃以下であってもよい。200℃で2時間加熱した際の基材層7の加熱収縮率は、0.15%以下であってもよく、0.1%以下であってもよく、0.05%以下であってもよい。
【0036】
基材層7を構成する材料は、上記した樹脂に限られず、銅、アルミニウム、ステンレス、及びニッケルよりなる群から選ぶこともできる。基材層7をこれらの金属によって構成する場合、接着フィルム2の線膨張係数をリードフレームの線膨張係数に近づけることが可能となる。この場合、接着フィルム2をリードフレームに貼り付けた際のリードフレームの反りを好適に低減できる。
【0037】
基材層7には、表面処理が施されていてもよい。表面処理の種類としては、例えばアルカリ処理、シランカップリング処理等の化学的処理、サンドマット処理等の物理的処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙げられる。表面処理を施すことにより、接着層8に対する密着性を一層十分に高めることができる。
【0038】
基材層7の厚さは、接着フィルム2をリードフレームに貼り付けた際のリードフレームの反りを低減する観点から、例えば100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。基材層7の厚さは、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0039】
接着層8は、例えばアミド基(-NHCO-)、エステル基(―CO-O-)、イミド基(-NR2、ただしRはそれぞれ-CO-である)、エーテル基(-O-)、又はスルホン基(-SO2-)を有する熱可塑性樹脂によって構成されている。これらの樹脂は、アミド基、エステル基、イミド基、又はエーテル基を有する熱可塑性樹脂であってもよい。具体的には、このような熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルアミドイミド、芳香族ポリエーテルアミド、芳香族ポリエステルイミド、及び芳香族ポリエーテルイミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、耐熱性及び接着性の点から、芳香族ポリエーテルアミドイミド、芳香族ポリエーテルイミド、及び芳香族ポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であってもよい。
【0040】
上記樹脂は、いずれも、塩基成分である芳香族ジアミン又はビスフェノール等と、酸成分であるジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、若しくは芳香族塩化物、又はこれらの反応性誘導体とを重縮合させて作製できる。すなわち、上記樹脂の作製は、アミンと酸との反応に用いられる通常の方法で行うことができ、諸条件等についても特に制限はない。芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、又はこれらの反応性誘導体とジアミンとの重縮合反応についても、通常の方法が用いられる。
【0041】
芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルアミドイミド、芳香族ポリエーテルアミドの合成に用いられる塩基成分としては、例えば2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ヘキサフルオロプロパン等のエーテル基を有する芳香族ジアミン;4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアミン)等のエーテル基を有しない芳香族ジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のシロキサンジアミン;及び1,12-ジアミノドデカン、1,6-ジアミノヘキサン等のα,ω-ジアミノアルカンを用いることができる。
【0042】
塩基成分総量中、上記のエーテル基を有する芳香族ジアミンを40~100モル%又は50~97モル%、エーテル基を有しない芳香族ジアミン、シロキサンジアミン、及びα,ω-ジアミノアルカンから選ばれる少なくとも1種を0~60モル%、又は3~50モル%の量で用いてもよい。塩基成分の具体例としては、(1)エーテル基を有する芳香族ジアミン60~89モル%又は68~82モル%と、シロキサンジアミン1~10モル%又は3~7モル%と、α,ω-ジアミノアルカン10~30モル%又は15~25モル%と、からなる塩基成分、(2)エーテル基を有する芳香族ジアミン90~99モル%又は93~97モル%と、シロキサンジアミン1~10モル%又は3~7モル%と、からなる塩基成分、(3)エーテル基を有する芳香族ジアミン40~70モル%又は45~60モル%と、エーテル基を有しない芳香族ジアミン30~60モル%又は40~55モル%と、からなる塩基成分が挙げられる。
【0043】
芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルアミドイミド、芳香族ポリエーテルアミドの合成に用いられる酸成分としては、例えば(A)無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸の反応性誘導体、ピロメリット酸二無水物等の単核芳香族トリカルボン酸無水物、単核芳香族テトラカルボン酸二無水物、(B)ビスフェノールAビストリメリテート二無水物、オキシジフタル酸無水物等の多核芳香族テトラカルボン酸二無水物、(C)テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド等のフタル酸の反応性誘導体等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられる。これらの中でも、上記塩基成分(1)又は(2)1モル当たり、上記酸成分(A)0.95~1.05モル又は0.98~1.02モルを反応させて得られる芳香族ポリエーテルアミドイミド、及び、上記塩基成分(3)1モル当たり、上記酸成分(B)0.95~1.05モル又は0.98~1.02モルを反応させて得られる芳香族ポリエーテルイミドを用いることができる。
【0044】
接着層8は、上記樹脂以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えばセラミック粉、ガラス粉、銀粉、銅粉、樹脂粒子、ゴム粒子等のフィラー、酸化防止剤、カップリング剤が挙げられる。接着層8が他の成分としてフィラーを含有する場合、フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、1~30質量部であってもよく、5~15質量部であってもよい。
【0045】
カップリング剤としては、例えばビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、チタネート、アルミキレート、ジルコアルミネート等を用いることができる。カップリング剤は、シランカップリング剤であってもよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の末端に有機反応性基を有し、これらのうち、エポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤を用いることができる。
【0046】
有機反応性基とは、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、メルカプト基等の官能基である。シランカップリング剤の添加は、基材層7に対する接着層8の密着性を向上させ、100~300℃の温度で剥離する際に、基材層7と接着層8との界面での剥離の発生を抑制する効果を奏する。接着層8がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、1~15質量部であってもよく、2~10質量部であってもよい。
【0047】
接着層8の厚さは、例えば20μm以下となっている。接着層8の厚さは、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下であってもよい。接着層8の厚さは、例えば1μm以上となっている。接着層8の厚さは、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上であってもよい。接着層8の厚さは、1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上15μm以下であってもよく、1μm以上8μm以下であってもよい。
【0048】
接着層8の厚さが1μm以上である場合、充分な接着性を確保できると共に、封止時の封止材の漏れを抑制できる。接着層8の厚さが20μm以下である場合、接着フィルム2の全体の層厚みが抑えられ、コストが抑えられるほか、300℃以上の熱処理を行う際のボイドの発生を抑制できる。また、接着層8の厚さが20μm以下である場合、熱処理時の濡れ性の上昇を抑制できる。これにより、接着層8がリードフレームに過剰な接着強度で貼りつくことが抑制され、剥離性を確保できる。
【0049】
基材層7の厚さに対する接着層8の厚さの比は、例えば0.2以下となっている。基材層7の厚さに対する接着層8の厚さの比は、0.1以下であってもよく、0.05以下であってもよい。これにより、基材層7への接着層8の塗工後の溶剤除去時の体積減少に起因する反りが抑制され、接着フィルム2をリードフレームに貼り付ける際の作業性を向上できる。
【0050】
接着層8のガラス転移温度(Tg)は、常温(例えば25℃)よりも高くなっている。接着層8のガラス転移温度(Tg)は、例えば100℃以上であってもよく、150℃以上であってもよい。接着層8のガラス転移温度は、例えば300℃以下であってもよく、250℃以下であってもよい。接着層8のガラス転移温度が100℃以上である場合、接着フィルム2をリードフレーム及び封止材から剥離する際、基材層7と接着層8との界面での剥離が抑制されると共に、接着層8の凝集破壊が抑制される。
【0051】
接着層8のガラス転移温度が100℃以上である場合、リードフレーム及び封止材への接着層8の残留を抑制できる。また、ワイヤボンディング工程での熱による接着層8の軟化を抑制でき、ワイヤの接合不良の発生を低減できる。さらに、封止工程での熱による接着層8の軟化を抑制でき、リードフレームと接着層8との間に封止材が入り込むといった不具合の発生を抑制できる。接着層8のガラス転移温度が300℃以内の場合、接着時の接着層8の軟化が十分に抑制される。また、常温(例えば25℃)において、接着フィルム2とリードフレームとの間の剥離角度90°でのピール強度を十分に確保できる。
【0052】
接着層8のガラス転移温度は、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社製:SSC5200型)により測定できる。測定条件は、例えばチャック間距離10mm、温度範囲30℃~300℃、昇温速度10℃/分の引っ張りモードとすることができる。
【0053】
接着層8の5%重量減少温度は、300℃以上であってもよく、350℃以上であってもよく、400℃以上であってもよい。接着層8の5重量%減少温度が300℃以上である場合、リードフレームに接着フィルム2を貼り付ける際の熱及びワイヤボンディング工程での熱によるアウトガスが生じにくくなり、リードフレーム、ワイヤ等の汚染を抑制できる。5%重量減少温度は、示差熱天秤(例えばセイコーインスツル株式会社製:SSC5200型)により測定できる。測定条件は、例えば空気雰囲気下、昇温速度10℃/分とすることができる。
【0054】
接着層8の230℃における弾性率は、例えば1MPa以上となっている。接着層8の230℃における弾性率は、3MPa以上であってもよい。半導体パッケージの製造工程において、ワイヤボンディング工程中の温度(ワイヤボンドディング温度)は、特に制限されないが、一般には200~260℃程度であり、230℃前後となっている。したがって、接着層8の230℃における弾性率が1MPa以上である場合、ワイヤボンディング工程での熱による接着層8の軟化が抑制され、ワイヤの接合不良の発生を抑制できる。接着層8の230℃における弾性率は、例えば2000MPa以下となっている。接着層8の230℃における弾性率は、1500MPa以下であってもよく、1000MPa以下であってもよい。
【0055】
接着層8の230℃における弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば株式会社ユービーエム製:Rheogel-E4000)により測定できる。この場合、測定条件は、チャック間距離20mm、正弦波、周波数10Hz、昇温速度5℃/分の引張モードとすることができる。
【0056】
接着層8を基材層7上に形成する方法は、特に制限されないが、例えば樹脂を溶剤に溶解して作製した樹脂ワニスを基材層7の表面に塗工し、その後、加熱処理して溶剤を除去する方法を用いることができる。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。樹脂の前駆体を溶剤に溶解した前駆体ワニスを基材層7の表面に塗工し、その後、加熱処理して溶剤を除去する方法を用いることもできる。接着層8を構成する樹脂がポリイミド樹脂である場合、前駆体は、例えばポリアミド酸である。
【0057】
加熱処理の温度は、樹脂ワニスを用いる場合と前駆体ワニスを用いる場合とで異なっていてもよい。樹脂ワニスの場合、加熱処理の温度は、溶剤を除去できる温度であればよい。前駆体ワニスの場合、加熱処理の温度は、前駆体から樹脂を形成(例えばイミド化)するため、接着層8のガラス転移温度以上であってもよい。
【0058】
樹脂ワニス又は前駆体ワニスを基材層7の表面に塗工する方法としては、特に制限されないが、例えばロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート、ダイコート、減圧ダイコートを用いることができる。また、樹脂ワニス又は前駆体ワニスに基材層7を浸漬することにより、樹脂ワニス又は前駆体ワニスを基材層7の表面に塗工してもよい。
【0059】
接着フィルム2は、基材層7の他面側(接着層8の反対面側)に非接着層(不図示)を更に備え、3層構成となっていてもよい。非接着層としては、0℃~270℃においてリードフレームに対する接着性(又は感圧接着性)を実質的に有しない樹脂層が挙げられる。非接着層の形成には、例えば熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばアミド基、エステル基、イミド基、又はエーテル基を有する樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂(例えばビス(4-マレイミドフェニル)メタンをモノマーとするビスマレイミド樹脂)が挙げられる。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを組み合せて用いてもよい。このような非接着層を基材層7の他面側に設ける場合、溶剤除去時の非接着層の体積減少、非接着層のイミド化、熱硬化性樹脂の硬化等の際の非接着層の収縮により、接着層8の体積減少に起因する接着フィルム2の反りを相殺することができる。
[リール体の製造方法]
【0060】
リール体1の製造にあたっては、接着層8を基材層7上に有する接着フィルム2を巻芯3に巻き回す巻回ステップを実施する。巻回ステップでは、接着フィルム2の幅W2よりも軸方向Lの幅W1が小さい巻芯3を用い、接着層8上に保護層を有しない接着フィルム2を、接着層8と基材層7とを巻芯3の径方向に隣接させながら巻芯3に巻き回す。これにより、巻芯3の軸方向Lに張り出す張出部分5を接着フィルム2の巻回体4に形成する。
【0061】
巻回ステップの実施には、例えば図5に示す製造装置11を用いることができる。図5では、左右方向を水平方向とし、上下方向を鉛直方向とする。同図に示す製造装置11は、接着フィルム2の母材Bから複数の接着フィルム2を切り出し、切り出した接着フィルム2のそれぞれを巻き取ることによってリール体1を形成する。製造装置11は、図5に示すように、繰出ローラ12と、切断部13と、複数の巻芯3とを備えている。
【0062】
繰出ローラ12は、接着フィルム2の母材Bを繰り出す部分である。繰出ローラ12から繰り出された接着フィルム2の母材Bは、所定の速度で切断部13に向かって水平に搬送される。切断部13は、接着フィルム2の母材Bから所定幅の複数の接着フィルム2に切り出す部分である。切断部13は、母材Bを挟んで上下一対に配置された上軸16及び下軸17と、上軸16に設けられた複数の円盤状の上刃18と、下軸17に設けられた複数の円盤状の下刃(不図示)とを有している。
【0063】
上刃18及び下刃は、例えば互いの刃先の側面同士が摺接した状態となっており、シャーカット方式で母材Bを切断する。切断部13によって切り出される複数の接着フィルム2の幅は、上刃18及び下刃の軸方向の間隔を変えることにより調整される。本実施形態では、切断部13により、接着フィルム2の母材Bから幅の異なる複数の接着フィルム2が切り出されている。
【0064】
繰出ローラ12から切断部13を経て巻芯3に至る母材B及び複数の接着フィルム2には、巻取張力が付与されている。母材B及び複数の接着フィルム2への巻取張力の付与には、テンションローラを用いてもよく、繰出ローラ12及び巻芯3の軸位置を調整する調整機構を用いてもよい。巻取張力は、特に制限はないが、例えば60N/m以上となっている。巻取張力は、70N/m以上であってもよく、80N/m以上であってもよい。巻取張力は、例えば150N/m以下となっている。巻取張力は、140N/m以下であってもよく、130N/m以下であってもよい。
【0065】
複数の巻芯3は、複数の接着フィルム2のそれぞれを巻き取る部分である。製造装置11にセットされる巻芯3は、そのままリール体1の巻芯3となる。巻芯3には、接着層8が径方向の外側を向くように接着フィルム2が巻き取られる。本実施形態では、複数の巻芯3は、第1の軸G1及び第2の軸G2にセットされる。第1の軸G1と第2の軸G2とは、少なくとも水平方向について互いにずれた状態となっている。第1の軸G1の巻芯3と第2の軸G2の巻芯3とは、軸方向について交互に配置されている。これらの巻芯3のそれぞれは、軸方向Lについて巻取対象の接着フィルム2の幅W2よりも小さい幅W1を有している。これにより、巻芯3のそれぞれで接着フィルム2を巻き取ったリール体1において、巻芯3の軸方向Lに張り出す張出部分5が巻回体4に形成される。
[物品の製造方法]
【0066】
リール体1を用いた物品の製造方法では、リール体1から巻き出した接着フィルム2を被着体Pに接合する接合ステップを実施する。ここでは、被着体Pは、半導体素子が搭載されるリードフレームである。被着体Pは、例えば搬送ステージS上に載置され、接着フィルム2の接合方向に対して搬送可能となっている。接合ステップでは、例えば図6に示すような巻出装置21を用いることができる。図6の例では、巻出装置21は、巻芯治具22と、ガイド板23とを含んで構成され、被着体Pが載置される搬送ステージSの上方に配置されている。
【0067】
巻芯治具22は、軸回りに回転可能な巻芯24の周面に突出部25を設けた治具である。突出部25は、巻芯24の周面から径方向に突出可能に設けられている。突出部25は、例えばエア等により駆動し、巻芯24の周面に対する突出及び退避が自在となっている。リール体1を巻芯24に通し、突出部25によってリール体1における巻芯3の内周側を支持することで、リール体1が巻芯治具22にセットされる。リール体1に補助芯6が配置されている場合、巻芯治具22へのリール体1のセットの直前に補助芯6をリール体1から脱抜すればよい。
【0068】
ガイド板23は、巻出装置21によってリール体1から巻き出される接着フィルム2の位置合わせに用いられる板状部材である。ガイド板23は、例えばリール体1の径に対して十分に大径の円盤状をなしている。ガイド板23には、巻芯治具22の巻芯24が挿通している。リール体1を巻芯3に通した後、巻回体4における軸方向Lの端面4aをガイド板23の一面側に当接させることにより、巻回体4の軸方向Lの端面4aを基準として、巻出装置21によってリール体1から巻き出される接着フィルム2の位置合わせを行うことができる。この状態で巻芯治具22を回転させ、接着フィルム2を被着体Pに向かって巻き出すことにより、被着体Pに対して接着フィルム2が接合される。
【0069】
リール体1を挟んでガイド板23の反対側には、ガイド板23と対向して押さえ板26が配置されていてもよい。押さえ板26は、例えばガイド板23と同径の円盤状をなしている。押さえ板26の配置により、巻き出し中のリール体1の姿勢を一層安定化させることができる。押さえ板26の配置は、省略されていてもよい。
[作用効果]
【0070】
一般的なリール体では、巻芯の軸方向の幅と接着フィルムとの幅とが揃っており、リール体を巻出装置にセットする際には、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とした位置合わせが行われている。しかしながら、従来のリール体では、巻き回しの際に接着フィルムが少しでも軸方向にずれると、接着フィルムの巻回体から巻芯が軸方向に突出してしまうという問題があった。巻芯が軸方向に突出すると、接着フィルムの巻回体の軸方向の端面を基準とすることができなくなり、巻出装置にセットする際の位置合わせに手間が生じることとなる。特に、接着層上に保護層がなく、接着層と基材層とが巻芯の径方向に隣接した状態で巻芯に巻き回された接着フィルムでは、巻回体に力を加えても巻芯に対する接着フィルムの位置を動かすことが困難であり、セットするリール体毎に位置合わせを行う必要が生じるおそれがある。
【0071】
これに対し、本実施形態のリール体1では、巻芯3の軸方向Lの幅W1が接着フィルム2の幅W2よりも小さくなっており、接着フィルム2の巻回体4が巻芯3の軸方向Lに張り出している。このため、巻き回しの際に接着フィルム2が巻芯3の軸方向Lに多少ずれたとしても、接着フィルム2の巻回体4から巻芯3が軸方向Lに突出してしまうことを抑制できる。巻芯3の突出の抑制により、巻出装置21にリール体1をセットする際に、接着フィルム2の巻回体4の軸方向Lの端面4aを基準とした位置合わせが容易となり、位置合わせの手間を省くことができる。また、巻芯3の軸方向Lの幅W1を接着フィルム2の幅W2に合わせずに済むため、異なる幅を有する接着フィルム2に対して巻芯3の共通化も可能となる。
【0072】
本実施形態では、張出部分5が巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側にそれぞれ設けられている。これにより、巻き回しの際の接着フィルム2の位置ずれを巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側のそれぞれに許容できる。
【0073】
本実施形態では、張出部分5の内周側に巻芯3と同径の着脱自在の補助芯6が配置されている。補助芯6の配置によって張出部分5が内周側から支えられるため、張出部分5における接着フィルム2のうねりの発生を抑制できる。巻出装置21へのリール体1のセットの際には、補助芯6を脱抜することで、接着フィルム2の巻回体4の軸方向Lの端面4aを基準とした位置合わせを容易に実施できる。
[変形例]
【0074】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、張出部分5が巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側にそれぞれ設けられていたが、図7(a)及び図7(b)に示すように、張出部分5は、巻芯3の軸方向Lの一方側及び他方側の一方にのみ設けられていてもよい。この場合、軸方向Lの一方側及び他方側の一方において、巻き回しの際の接着フィルム2の位置ずれの許容量を大きく確保できる。
【0075】
また、図7(a)及び図7(b)の構成では、張出部分5の反対側では、巻回体4の軸方向Lの端面4aと巻芯3の軸方向Lの端面3aとが揃うこととなる。したがって、張出部分5と反対側の端面4aを位置合わせの基準として用いる場合には、張出部分5の軸方向Lの幅W3によらず、巻出装置21にリール体1をセットする際の制約を回避できる。例えば巻出装置21における巻芯治具22の軸方向Lの幅が張出部分5の軸方向の幅W3に満たず、張出部分5側から巻芯治具22をリール体1に通したときに巻芯治具22がリール体1の巻芯3に届かない場合には、張出部分5と反対側から巻芯治具22をリール体1に通せばよい。
【0076】
図7(a)及び図7(b)の例では、図3の場合と同様に、張出部分5の内周側に補助芯6が配置されている。また、張出部分5の反対側において、巻回体4の軸方向Lの端面4aには、当該端面4aにおける接着フィルム2の幅方向の縁を揃えるガイド板31が配置されていてもよい。図7(a)及び図7(b)の例では、ガイド板31は、巻回体4の径よりも大径の円盤状をなしている。ガイド板31の内面側には、巻芯3の中空部分に嵌合する凸部32が設けられている。凸部32により、ガイド板31は、巻芯3に対して着脱自在となっている。巻芯3の中空部分に凸部32を嵌合した状態において、ガイド板31の内面は、巻回体4の軸方向Lの端面4aに当接する。このようなガイド板31の配置により、巻出装置21での位置合わせの基準となる巻回体4の軸方向Lの端面4aを保護できる。
【0077】
ガイド板31は、図2に示したリール体1に適用することもできる。この場合、ガイド板31は、軸方向Lの一方側の張出部分5における端面4a及び軸方向Lの他方側の張出部分5における端面4aの双方に配置されていてもよく、一方に配置されていてもよい。また、ガイド板31と補助芯6とを組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…リール体、2…接着フィルム、3…巻芯、4…巻回体、4a…端面、5…張出部分、6…補助芯、7…基材層、8…接着層、21…巻出装置、22…巻芯治具、31…ガイド板、L…軸方向、P…被着体、W1…巻芯の軸方向の幅、W2…接着フィルムの幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7