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  • 特開-スパッタリング装置 図1
  • 特開-スパッタリング装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077802
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
C23C14/34 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188813
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康司
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 英人
(72)【発明者】
【氏名】田代 征仁
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029DA10
4K029DC39
(57)【要約】
【課題】被処理基板の外周縁部での局所的な温度上昇を抑制することができるようにしたスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】ターゲット2と被処理基板Swとが対向配置される真空チャンバ1と、真空チャンバ内でターゲットと被処理基板との間の成膜空間1aを囲繞するシールド板5とを備える本発明のスパッタリング装置SMは、シールド板を冷却する冷却ユニットが設けられ、シールド板が、被処理基板を成膜空間に臨ませる、この被処理基板と同等の輪郭の第1開口51を有して被処理基板の周囲に配置される第1のシールド板部5aを有し、冷却ユニットが、第1のシールド板部に設けられると共に、第1開口の周囲に位置する第1のシールド板部の部分までのびる通路部分55aを持つ第1の冷媒通路55を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットと被処理基板とが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットと被処理基板との間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備えるスパッタリング装置であって、シールド板を冷却する冷却ユニットが設けられるものにおいて、
シールド板が、被処理基板を成膜空間に臨ませる、この被処理基板と同等の輪郭の第1開口を有して被処理基板の周囲に配置される第1のシールド板部を有し、
冷却ユニットが、第1のシールド板部に設けられると共に、第1開口の周囲に位置する第1のシールド板部の部分までのびる通路部分を持つ第1の冷媒通路を備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記シールド板が、前記ターゲットを成膜空間に臨ませる、このターゲットと同等の輪郭の第2開口を有してターゲットの周囲に配置される第2のシールド板部を有し、前記冷却ユニットが、第2のシールド板部に設けられると共に、第2開口の周囲に位置する第2のシールド板部の部分までのびる通路部分を持つ第2の冷媒通路を更に備えることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の両冷媒通路は、ターゲットまたは被処理基板の中心を通る径方向にてターゲットまたは被処理基板に対して近接離間する方向に蛇行させた単一の通路として夫々形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットと被処理基板とが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットと被処理基板との間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備えるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスパッタリング装置は、例えば特許文献1で知られている。このものでは、シールド板が、被処理基板を成膜空間に臨ませる、この被処理基板と同等の輪郭の第1開口を有して被処理基板の周囲に配置される第1のシールド板部(下部部分)と、ターゲットを成膜空間に臨ませる、このターゲットと同等の輪郭の第2開口を有してターゲットの周囲に配置される第2のシールド板部(上部部分)と、第1のシールド板部と第2のシールド板部とを結ぶ中間シールド板部(円筒体本体)とで構成されている。そして、中間シールド板部内には、冷却ユニットの構成要素である冷媒通路(伝熱チャンネル)が形成され、冷媒通路内に冷却水などの冷媒を流すことで、ターゲットのスパッタリングによる成膜中、シールド板が冷却されるようにしている。尚、冷媒の温度は、通常、室温(スパッタリング装置が設置されるクリーンルーム内の温度)に応じて、結露の発生を防止できる所定温度(例えば、20~25℃の温度)に設定される。
【0003】
ここで、ターゲットを例えばアルミニウム製とし、上記従来例のスパッタリング装置を用いて被処理基板表面にアルミニウム膜を成膜すると、被処理基板面内におけるアルミニウム膜の膜質が不均一になることが判明した。そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、上記従来例のように、成膜中、中間シールド板部の冷媒通路に上記温度の冷媒を流して伝熱でシールド板全体を冷却しようとしても、第1のシールド板部では、成膜時に成膜空間に発生させたプラズマからの入熱が優勢となって比較的高い温度まで昇温し、特に、中間シールド板部から最も離れた第1開口の周縁部が高い温度となる。すると、第1のシールド板部の表面からそこに吸着している水分子や酸素分子といったガスが放出され、この放出されたガスが第1開口の近傍に位置する被処理基板の外周縁部に取り込まれ易くなり、これに加えて、第1開口の近傍に位置する被処理基板の外周縁部が局所的に加熱されることで、被処理基板の外周縁部にてグレインサイズが局所的に増大し、これに起因して、アルミニウム膜の膜質が不均一になることを知見するのに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-519426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、被処理基板の外周縁部での局所的な温度上昇を抑制することができるようにしたスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ターゲットと被処理基板とが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットと被処理基板との間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備える本発明のスパッタリング装置は、シールド板を冷却する冷却ユニットが設けられ、シールド板が、被処理基板を成膜空間に臨ませる、この被処理基板と同等の輪郭の第1開口を有して被処理基板の周囲に配置される第1のシールド板部を有し、冷却ユニットが、第1のシールド板部に設けられると共に、第1開口の周囲に位置する第1のシールド板部の部分までのびる通路部分を持つ第1の冷媒通路を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ターゲットのスパッタリングによる成膜中、第1開口の周囲に位置する通路部分まで冷媒を流すことで、プラズマからの入熱を受けても、第1のシールド板部の昇温が抑制される。これにより、第1のシールド板部の表面からそこに吸着している水分子や酸素分子といったガスの放出が抑制されるだけでなく、第1開口の近傍に位置する被処理基板の外周縁部の局所的な加熱も抑制される。結果として、ターゲットを例えばアルミニウム製とし、被処理基板表面にアルミニウム膜を成膜するような場合に、膜質が均一なアルミニウム膜を成膜することが可能になる。
【0008】
ところで、シールド板が、前記ターゲットを成膜空間に臨ませる、このターゲットと同等の輪郭の第2開口を有してターゲットの周囲に配置される第2のシールド板部を有する場合に、成膜空間に生成されるプラズマからの入熱によって第2のシールド板部が加熱され、第2開口が歪むように熱変形すると、プラズマ放電が不安定になる虞がある。そこで、前記冷却ユニットが、第2のシールド板部に設けられると共に、第2開口の周囲に位置する第2のシールド板部の部分までのびる通路部分を持つ第2の冷媒通路を更に備えることが好ましい。これにより、ターゲットのスパッタリングによる成膜中、第2開口の周囲に位置する通路部分まで冷媒を流すことで、プラズマからの入熱を受けても、第2のシールド板部の昇温が確実に抑制され、第2開口の熱変形に伴ってプラズマ放電が不安定になることを可及的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記第1及び第2の両冷媒通路は、ターゲットまたは被処理基板の中心を通る径方向にてターゲットまたは被処理基板に対して近接離間する方向に蛇行させた単一の通路として夫々形成される構成としてもよい。これによれば、第1開口及び第2開口の周囲に夫々位置する第1及び第2の両シールド板部の部分の昇温が確実に抑制され、ひいては、被処理基板の外周縁部の局所的な加熱が抑制される構成が実現でき、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置の構成を示す模式図。
図2】第1のシールド板部を説明する横断面図。
図3】本発明の効果を確認する実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、被処理基板を略円形の輪郭を持つシリコンウエハ(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swの表面にアルミニウム膜を成膜する場合を例に、本発明のスパッタリング装置の実施形態を説明する。以下において、上、下といった方向を示す用語は、図1に示すスパッタリング装置の設置姿勢を基準とする。
【0012】
図1を参照して、SMは、スパッタリング装置であり、スパッタリング装置SMは、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、ターボ分子ポンプやロータリーポンプなどで構成される真空ポンプユニットPuに通じる排気管11が接続され、真空チャンバ1内を所定圧力(例えば1×10-5Pa)に真空排気することができる。真空チャンバ1の側壁10には、マスフローコントローラ12が介設されたガス管13が接続され、流量制御された希ガス(例えばアルゴンガス)を真空チャンバ1内に導入することができる。真空チャンバ1の上部には、スパッタ面2aの輪郭を基板Swの輪郭に対応させて製作したアルミニウム製のターゲット2が設けられている。この場合、ターゲット2の上面には、バッキングプレート21が接合され、バッキングプレート21の外周縁部に絶縁体Io1を介して、スパッタ面2aが下方を向く姿勢で真空チャンバ1の側壁10に着脱自在に取り付けられる。ターゲット2には、DC電源Psからの出力が接続されて負の電位を持つ直流電力をターゲット2に投入することができ、また、ターゲット2の上方には、ターゲット中心を通る中心線Cl回りに回転自在な磁石ユニット3が設けられている。なお、DC電源Psや磁石ユニット3としては、公知のものを用いることができるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0013】
真空チャンバ1の下部には、ターゲット2に対向させてステージ4が設けられ、その成膜面を上に向けた姿勢で基板Swを保持することができる。ステージ4は、絶縁体Io2を介して真空チャンバ1の下壁に設けられる金属(例えばSUS)製の基台41と、基台41上に設けられて静電チャック用電極を内蔵するチャックプレート42とを備え、図外のチャック用電源により電極に通電することで、基板Swを吸着保持することができる。なお、チャックプレート42にヒータを組み付けて基板Swを所定温度に加熱するホットプレートの機能を持たせるようにしてもよい。そして、真空チャンバ1内に、ターゲット2と基板Swとの間の成膜空間1aを囲繞するようにシールド板5が配置されている。
【0014】
シールド板5は、例えばSUS製であり、互いに分離可能な第1のシールド板部5aと、第2のシールド板部5bと、第1のシールド板部5aと第2のシールド板部5bとの間に配置される中間シールド板部5cとで構成される。第1のシールド板部5aには、基板Swと同等の輪郭を有し且つ基板Swの外形より一回り大きな径の第1開口51が設けられている。そして、第1開口51の内周縁部が所定の隙間を存して基板Swの周囲に位置するように基板Swに略平行に着脱自在に配置され、基板Swを成膜空間1aに臨ませるようにしている。これにより、基板Swの下面より下方に位置する真空チャンバ1内の壁面部分やそこに存する部品(図示せず)へのスパッタ粒子の付着が可及的に防止される。なお、本実施形態では、基板Swの上面の延長線上に第1開口51が位置するように第1のシールド板部5aが配置されているが、これに限定されるものではなく、スパッタ粒子の回り込みやプラズマ放電の安定性などを考慮して上方または下方にオフセットすることもできる。
【0015】
また、第1のシールド板部5aは、例えば、所定の板厚を持つ同一形態の2枚の板材50a,50bを接合して構成される。板材50a(50b)の一方の面には、図2に示すように、径方向に凹凸を繰り返す花弁状の溝部52a(52b)が設けられ、溝部52a(52b)の両自由端が夫々板材52a(52b)の外側まで達し、冷媒の流入口53a(53b)と流出口54a(54b)を構成するようにしている。これにより、各溝部52a,52bを上下方向で合致させた姿勢で板材50a,50bを接合すると、第1のシールド板部5a内に、第1開口51の周囲に位置する第1のシールド板部5aの部分までのびる通路部分55aを持ち、基板Swに対して近接離間する方向に蛇行した単一の冷媒通路(第1の冷媒通路)55が形成される。なお、冷媒通路55の流路幅や、近接離間する方向に蛇行させる回数などは、成膜時、第1のシールド板部5aが所定温度以下に維持できるように、冷媒温度や流路抵抗などを考慮して適宜設定される。また、両板材50a,50bの一方の面に溝部52a,52bを夫々形成したものを例に説明するが、第1のシールド板部5a内に、通路部分55aを持つ冷媒通路55が形成できるものであれば、これに限定されるものではない。例えば、少なくとも一方の板材50a(50b)にのみ溝部52a(52b)を形成してもよく、他方で、両板材50a,50bを接合する際に、その接合面に複数のスペーサーを介在させ、スペーサーで仕切られた両板材50a,50bの間の隙間を冷媒通路としてもよい。また、1枚の板材の成膜空間1aと背向する面に配管を敷設して冷媒通路とすることもできる。第1のシールド板部5aの真空チャンバ1内での取付方法としては、係止手段を用いたものなど公知のものが利用できるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0016】
第2のシールド板部5bには、ターゲット2と同等の輪郭を有し且つターゲット2の外形より一回り大きな径の第2開口56が設けられている。そして、第2開口56の内周縁部が所定の隙間を存してターゲット2の周囲に位置するようにターゲット2に略平行に着脱自在に配置され、ターゲット2を成膜空間1aに臨ませるようにしている。これにより、バッキングプレート21といった部品へのスパッタ粒子の付着が可及的に防止される。特に図示して説明しないが、第2のシールド板部5bはまた、第1のシールド板部5aと同様、例えば、所定の板厚を持つ同一形態の2枚の板材50c,50dを接合して構成される。板材50c(50d)の一方の面には、径方向に凹凸を繰り返す花弁状の溝部57a(57b)が設けられ、溝部57a(57b)の両自由端が夫々板材50c(50d)の外側まで達し、冷媒の流入口58aと流出口(図示せず)を構成するようにしている。これにより、各溝部57a,57bを合致させた姿勢で板材50c,50dを接合すると、第2のシールド板部5b内に、第2開口56の周囲に位置する第2のシールド板部5aの部分までのびる通路部分59aを持ち、ターゲット2に対して近接離間する方向に蛇行した単一の冷媒通路(第2の冷媒通路)59が形成される。第2の冷媒通路59もまた、上記と同様、他の手法で形成することもでき、第2のシールド板部5bの真空チャンバ1内での取付方法としては、係止手段を用いたものなど公知のものが利用できる。
【0017】
第1の冷媒通路55の流入口53a及び流出口54aと、第2の冷媒通路59の流入口58a及び流出口(図示せず)とには、チラー6からの配管61a,61bが夫々接続され、第1及び第2の両冷媒通路55,59に冷却水などの冷媒を循環させることができる。このとき、第1及び第2の各シールド板部5a,5bに結露が生じないように、例えば、20~25℃の範囲に冷媒温度が設定される。本実施形態では、これら第1及び第2の各冷媒通路55,59とチラー6とが、特許請求の範囲の冷却ユニットを構成する。中間シールド板部5cは、板材を筒状に成形して構成され、第1のシールド板部5aの上面で支持されるように配置される。これにより、真空チャンバ1内の側壁10内面やそこに存する部品(図示せず)へのスパッタ粒子の付着が可及的に防止される。なお、本実施形態では、中間シールド板部5cに冷媒通路を設けていないが、第1及び第2の各シールド板部5a,5bのようにその内部に冷媒通路を設けて、成膜時に冷却できるようにしてもよい。
【0018】
スパッタリング装置SMにより基板Sw表面にアルミニウム膜を成膜するのに際しては、真空チャンバ1内のステージ4上に基板Swを設置し、真空チャンバ1が所定圧力まで真空排気されると、真空チャンバ1内にアルゴンガスを所定流量で導入し、DC電源Psからターゲット2に負の電位を持つ所定の直流電力を投入する。これにより、真空チャンバ1内にプラズマが発生し、プラズマ中で電離したアルゴンイオンによりターゲット2のスパッタ面2aがスパッタリングされ、スパッタ面2aから余弦側に従い飛散したスパッタ粒子が基板Swの表面に付着、堆積することでアルミニウム膜が成膜される。このとき、シールド板5を比較的熱伝導率の低いSUS製としても、第1開口51の周囲に位置する通路部分55aまで冷媒を流すことで、プラズマからの入熱を受けても、第1のシールド板部5aの昇温が抑制され、第1のシールド板部5aの表面からの水分子や酸素分子といった不純物ガスの放出が抑制されるだけでなく、第1開口51の近傍に位置する基板Swの外周縁部の局所的な加熱も抑制される。結果として、基板Sw表面に膜質が均一なアルミニウム膜を成膜することが可能になる。しかも、第2開口56の周囲に位置する通路部分59aまで冷媒を流すことで、プラズマからの入熱を受けても、第2のシールド板部5bの昇温が抑制されることで、第2開口56の熱変形が抑制されてプラズマ放電を安定させることができる。
【0019】
次に、上記効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて、以下の実験を行った。発明実験1では、ターゲット2をΦ440mmのアルミニウム製のもの、シールド板5をSUS製のもの、基板SwをΦ300mmのシリコンウエハとした(TS距離は60mm)。そして、第1の冷媒通路55の通路部分55aと第1開口51との間の距離dは3mmに設定した。真空チャンバ1内を所定真空度まで真空排気した後、真空チャンバ1内にアルゴンガスを50sccmの流量で導入し(真空チャンバ1内の全圧は0.6Pa)、DC電源Psからターゲット2に20kWの直流電力を投入し、所定時間(120sec)の間、ターゲット2をスパッタリングして基板Sw表面にアルミニウム膜を成膜した。そして、一枚の基板Swへの成膜が完了した後、基板Swを入れ替え、次の基板Swに対して上記条件でアルミニウム膜を成膜し、これを複数回繰り返した。
【0020】
基板Swの入れ替えを含む成膜中、チラー6により20℃の冷却水を第1及び第2の各冷媒通路55,59に3.5L/minの流量で夫々循環させると共に、熱電対により第1のシールド板部5aの第1開口51の周囲の部分の温度を測定した。なお、比較実験として、上記発明実験1と同様の条件でアルミ二ウム膜を成膜する際、第1及び第2の各冷媒通路55,59に冷媒を循環させない実験を行った。これによれば、比較実験では、時間が長くなるのに従い、第1開口51の周囲の部分が昇温し、最大250℃まで達したが、発明実験1では、第1開口51の周囲の部分は40℃以下に維持されることが確認された。また、成膜中、質量分析計により、不純物(水素分子、水分子、窒素分子、酸素分子)の分圧を測定したところ、図3に示すように、発明実験1では、比較実験と比較して不純物分圧を低減でき、特に、水素分子の分圧を1/11に、水分子の分圧を1/2.5に低減できることが確認された。また、発明実験1では、基板Sw表面に膜質が均一なアルミニウム膜を成膜できることが確認された。尚、発明実験2として、第1の冷媒通路55のみに冷却水を循環させ、また、発明実験3として、第2の冷媒通路59のみに冷却水を循環させ、上記発明実験1と同様の条件でアルミ二ウム膜を成膜したところ、比較実験と比較して不純物分圧を低減できることも確認された(図3参照)。次に、他の発明実験として、ターゲット2への投入電力を30kWに増加させたところ、第1開口51の周囲の部分が45℃以下に維持されることが確認された。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、アルミニウム膜を成膜する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えばチタン膜のような他の金属膜や窒化チタン膜のような金属化合物膜を成膜する場合にも本発明を適用することができる。上記実施形態では、第1及び第2の各冷媒通路55,59を単一の通路で夫々構成する場合を例に説明したが、第1及び第2の各シールド板部5a,5bの第1及び第2の各開口51,56の周囲の部分を冷却できれば通路の本数が限定されず、例えば各冷媒通路55,59を夫々複数本(例えば2本)の通路で構成することもできる。また、上記実施形態では、シールド板5は、第1のシールド板部5aと第2のシールド板部5bと中間シールド板部5cとに分割されたものを例に説明したが、一体に形成することもでき、また、防着板としての機能を損なうものではない限り、第1のシールド板部5aと第2のシールド板部5bの形状は上記のものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
SM…スパッタリング装置、Sw…基板(被処理基板)、1…真空チャンバ、1a…成膜空間、2…ターゲット、5…シールド板、5a…第1のシールド板部、5b…第2のシールド板部、51…第1開口、55…第1の冷媒通路(冷却ユニットの構成要素)、55a…第1開口の周囲に位置する通路部分、56…第2開口、59…第2の冷媒通路(冷却ユニットの構成要素)、59a…第2開口の周囲に位置する通路部分、6…チラー(冷却ユニットの構成要素)。
図1
図2
図3