(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078095
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】偏光素子、円偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220517BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220517BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220517BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220517BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220517BHJP
C09K 19/60 20060101ALI20220517BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220517BHJP
C09B 69/10 20060101ALI20220517BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220517BHJP
C09B 33/12 20060101ALI20220517BHJP
C09B 35/033 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 313
C09K19/60 A
C09K19/38
C09B69/10 A
C09B67/20 K
C09B33/12
C09B35/033
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021453
(22)【出願日】2022-02-15
(62)【分割の表示】P 2020514376の分割
【原出願日】2019-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018079025
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】桑山 靖和
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
(72)【発明者】
【氏名】小糸 直希
(57)【要約】
【課題】画像表示装置に適用した際に反射防止機能に優れる偏光素子、ならびに、これを有する円偏光板および画像表示装置を提供すること。
【解決手段】配向膜と、二色性物質を用いて形成された異方性光吸収膜と、を有し、配向膜が、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜であり、異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上であり、配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0である偏光素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜と、二色性物質を用いて形成された異方性光吸収膜と、を有し、
前記配向膜が、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜であり、
前記異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上であり、
前記配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0である、偏光素子。
【請求項2】
前記配向膜の面内の波長550nmにおける屈折率異方性Δnが0.10以上である、請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
前記屈折率異方性Δnが0.20以上である、請求項2に記載の偏光素子。
【請求項4】
前記平均屈折率naveが1.55~1.80である、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項5】
前記配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550が1.55~1.75である、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項6】
前記配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550に対する、前記配向膜の波長450nmにおける平均屈折率n450の比が、1.0以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項7】
前記異方性光吸収膜の面内において、波長550nmにおける屈折率が最大となる方向において、前記異方性光吸収膜の屈折率をNx550、前記配向膜の屈折率をnx550とし、
前記異方性光吸収膜の面内における屈折率が最大となる方向に面内で直交する方向において、前記異方性光吸収膜の屈折率をNy550、前記配向膜の屈折率をny550としたときに、下記式(1)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光素子。
|Nx550-nx550|+|Ny550-ny550|<0.3 式(1)
【請求項8】
前記二色性物質の含有量が、前記異方性光吸収膜の全固形分質量に対して、8~22質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項9】
前記配向膜の厚みが10nm~100nmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項10】
前記光活性化合物が、下記式(I)で表される化合物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の偏光素子。
【化1】
式(I)中、R
21、R
22、R
23およびR
24はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、R
21、R
22、R
23およびR
24の少なくとも1つは、カルボキシ基、スルホ基またはそれらの塩を表す。また、R
21、R
22、R
23およびR
24の少なくとも1つは、重合性基を含む基を表す。
式(I)中、mは1~4の整数を表し、nは1~4の整数を表し、oは1~5の整数を表し、pは1~5の整数を表す。m、n、oおよびpが2以上の整数である場合、複数個のR
21、R
22、R
23およびR
24はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項11】
前記光配向膜が、屈折率1.50~1.60のバインダー成分を含み、
前記バインダー成分の含有量が、前記光配向膜の全固形分質量に対して、10質量%以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項12】
前記二色性物質が、下記式(II)で表される化合物を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の偏光素子。
【化2】
式(II)中、R
31、R
32、R
33、R
34およびR
35はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R
36およびR
37はそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Q
31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基またはシクロヘキサン環基を表し、L
31は2価の連結基を表し、A
31は酸素原子または硫黄原子を表す。R
36、R
37およびQ
31は、置換基としてラジカル重合性基を有していてもよい。
【請求項13】
前記異方性光吸収膜が、逆波長分散性を示す、請求項1~12のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項14】
さらに基板を有し、
前記基板、前記配向膜および前記異方性光吸収膜をこの順に有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の偏光素子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の偏光素子と、1/4波長板と、を有する、円偏光板。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の偏光素子または請求項15に記載の円偏光板と、画像表示素子と、を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光素子、円偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルOLED(Organic Light Emitting Diode)の開発が進んでおり、使用される各部材に対してフレキシブル化が進んでいる。中でも、外光の反射防止のために使用されている円偏光板は、高い偏光度とフレキシブル性が求められる。従来、円偏光板にはヨウ素偏光子が使用されている。ヨウ素偏光子は、ヨウ素をポリビニルアルコールのような高分子材料に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に高倍率に延伸することで作製されるため、十分なフレキブル性がなかった。
【0003】
そのため、ガラスや透明フィルム等の基板上に二色性物質を塗布し、分子間相互作用等を利用して配向させた偏光素子の使用が検討されている。例えば、特許文献1には、二色性物質の濃度が高く、薄膜であって、高い偏光度を有する偏光素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の方式のように、二色性物質の濃度を高くした場合、異方性光吸収膜の配向度を高くできるので偏光度の高い偏光素子が得られるものの、反射防止機能が低下することがわかった。
そこで、本発明は、画像表示装置に適用した際に反射防止機能に優れる偏光素子、ならびに、これを有する円偏光板および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討の結果、配向膜と二色性物質を含む異方性光吸収膜とを有する偏光素子において、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜を用い、異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上であり、配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0であれば、反射防止機能に優れた偏光素子が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
[1]
配向膜と、二色性物質を用いて形成された異方性光吸収膜と、を有し、
上記配向膜が、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜であり、
上記異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上であり、
上記配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0である、偏光素子。
[2]
上記配向膜の面内の波長550nmにおける屈折率異方性Δnが0.10以上である、[1]に記載の偏光素子。
[3]
上記屈折率異方性Δnが0.20以上である、[2]に記載の偏光素子。
[4]
上記平均屈折率naveが1.55~1.80である、[1]~[3]のいずれかに記載の偏光素子。
[5]
上記配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550が1.55~1.75である、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光素子。
[6]
上記配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550に対する、上記配向膜の波長450nmにおける平均屈折率n450の比が、1.0以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の偏光素子。
[7]
上記異方性光吸収膜の面内において、波長550nmにおける屈折率が最大となる方向において、上記異方性光吸収膜の屈折率をNx550、上記配向膜の屈折率をnx550とし、
上記異方性光吸収膜の面内における屈折率が最大となる方向に面内で直交する方向において、上記異方性光吸収膜の屈折率をNy550、上記配向膜の屈折率をny550としたときに、式(1)を満たす、[1]~[6]のいずれかに記載の偏光素子。
|Nx550-nx550|+|Ny550-ny550|<0.3 式(1)
[8]
上記二色性物質の含有量が、上記異方性光吸収膜の全固形分質量に対して、8~22質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の偏光素子。
[9]
上記配向膜の厚みが10nm~100nmである、[1]~[8]のいずれかに記載の偏光素子。
[10]
上記光活性化合物が、後述の式(I)で表される化合物である、[1]~[9]のいずれかに記載の偏光素子。
[11]
上記光配向膜が、屈折率1.50~1.60のバインダー成分を含み、
上記バインダー成分の含有量が、上記光配向膜の全固形分質量に対して、10質量%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の偏光素子。
[12]
上記二色性物質が、後述の式(II)で表される化合物を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の偏光素子。
[13]
上記異方性光吸収膜が、逆波長分散性を示す、[1]~[12]のいずれかに記載の偏光素子。
[14]
さらに基板を有し、
上記基板、上記配向膜および上記異方性光吸収膜をこの順に有する、[1]~[13]のいずれかに記載の偏光素子。
[15]
[1]~[14]のいずれかに記載の偏光素子と、1/4波長板と、を有する、円偏光板。
[16]
[1]~[14]のいずれかに記載の偏光素子または[15]に記載の円偏光板と、画像表示素子と、を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像表示装置に適用した際に反射防止機能に優れる偏光素子、ならびに、これを有する円偏光板および画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交とは厳密な意味での平行、直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の総称であり、(メタ)アクリロイルオキシとは、「アクリロイルオキシ」および「メタクリロイルオキシ」の総称であり、(メタ)アクリレートとは、「アクリレート」および「メタクリレート」の総称である。
【0011】
また、本明細書において、液晶性組成物および液晶性化合物には、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
【0012】
[異方性光吸収膜の配向度]
本発明における異方性光吸収膜の配向度Sは、光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に異方性光吸収膜をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて異方性光吸収膜の吸光度を測定し、以下の式により算出される値である。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:異方性光吸収膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:異方性光吸収膜の透過軸方向の偏光に対する吸光度
【0013】
[屈折率]
本発明における異方性光吸収膜および配向膜の屈折率は、Woollam社製分光エリプソメトリM-2000Uを用いて測定される値である。
具体的には、所定の波長t[nm]において、異方性光吸収膜の面内における屈折率が最大となる方向をx軸、それに対して直交する方向をy軸、面内に対する法線方向をz軸とし、x軸方向の屈折率をNxt、y軸方向の屈折率をNyt、z軸方向の屈折率をNztと定義する。例えば、測定波長が550nmの場合、x軸方向の屈折率をNx550、y軸方向の屈折率をNy550、z軸方向の屈折率をNz550と呼ぶ。
本発明における配向膜の屈折率についても、異方性光吸収膜の屈折率と同様にして測定され、上記x軸方向(すなわち、異方性光吸収膜の面内における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnxt、上記y軸方向の屈折率をnyt、上記z軸方向の屈折率をnztと定義する。例えば、測定波長が550nmの場合、x軸方向の屈折率をnx550、y軸方向の屈折率をny550、z軸方向の屈折率をnz550と呼ぶ。
【0014】
本発明における配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveとは、波長400~700nmの範囲で1nm毎にnxtおよびnytを測定して、x軸方向の屈折率の平均値nxaveおよびy軸方向の屈折率の平均値nyaveを用いて、下記式(R1)によって算出される。
平均屈折率nave=(nxave+nyave)/2 (R1)
nxave=(nx400+nx401+nx402+・・・+nx699+nx700)/301
nyave=(ny400+ny401+ny402+・・・+ny699+ny700)/301
【0015】
本発明における配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550は、下記式(R2)によって算出される。
平均屈折率n550=(nx550+ny550)/2 (R2)
【0016】
本発明における配向膜の面内の波長550nmにおける屈折率異方性Δnは、下記式(R3)によって算出される。
屈折率異方性Δn=nx550-ny550 (R3)
【0017】
[レタデーション]
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((Nx+Ny)/2-Nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
レタデーションの算出に用いる屈折率Nx、Ny、および、Nzは、アッベ屈折率(NAR-4T、アタゴ社製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ社製)にて、干渉フィルタとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0018】
[偏光素子]
本発明の偏光素子は、配向膜と、二色性物質を含む異方性光吸収膜と、を有し、上記配向膜が、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜であり、上記異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上であり、上記配向膜の波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0である。
本発明の偏光素子によれば、画像表示装置に適用した際に優れた反射防止機能を発揮できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
【0019】
二色性物質を含む異方性光吸収膜のフレキシブル性を向上させるためには、例えば、異方性光吸収膜の厚みを小さくする方法が挙げられる。このような薄膜の異方性光吸収膜を用いた場合に、高い偏光度の偏光素子を得るための一つの方法として、異方性光吸収膜に含まれる二色性物質の濃度を高くしつつ、二色性物質の配向度を高くすることで得られる、高配向度の異方性光吸収膜を用いる方法がある。
しかしながら、高配向度の異方性光吸収膜(すなわち、高配向度の二色性物質)を用いた場合、二色性物質の可視光領域(波長400~700nm程度)における屈折率異方性が高くなる。その結果、異方性光吸収膜とこれに隣接する配向膜との界面における内部反射が大きくなって、偏光素子の反射防止機能が低下したと考えられる。
この問題に対して、本発明者らは、配向膜の可視光領域の屈折率を所定範囲に設定すれば、画像表示装置に適用した際に優れた反射防止機能を発揮できることを見出した。このように配向膜の可視光領域の屈折率を所定範囲に設定することで、異方性光吸収膜の可視光領域の屈折率と、配向膜の可視光領域の屈折率とが適合して、異方性光吸収膜と配向膜との界面における内部反射が抑制できるためと推測される。
【0020】
〔配向膜〕
本発明における配向膜は、波長400~700nmにおける平均屈折率naveが1.55~2.0である。これにより、高配向度の異方性光吸収膜を用いた場合であっても、反射防止機能に優れた偏光素子が得られる。
配向膜の平均屈折率naveは、偏光素子の反射防止機能がより優れる点から、1.55~1.80が好ましく、1.60~1.80がより好ましい。
【0021】
配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550は、1.55~1.80が好ましく、1.55~1.75がより好ましく、1.60~1.75がさらに好ましい。波長550nmの光は人の目に視認されやすい波長の光である。配向膜の平均屈折率n550が上記範囲内であれば、反射光が視認されにくくなるので、偏光素子の反射防止機能がより向上する。
【0022】
配向膜の波長550nmにおける面内の屈折率異方性Δnは、偏光素子の反射防止機能がより向上する点から、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましい。
配向膜の波長550nmにおける面内の屈折率異方性Δnの上限値は、偏光素子の反射防止機能が低下するため0.45以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましい。
【0023】
配向膜の波長550nmにおける平均屈折率n550に対する、配向膜の波長450nmにおける平均屈折率n450の比(n450/n550)は、偏光素子の反射防止機能がより向上する点から、1.0以上が好ましく、1.05以上がより好ましい。
比(n450/n550)の上限値は、偏光素子の反射光が色味づくことを抑制できる点から、1.2以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
【0024】
配向膜の厚さは、10~10000nmが好ましく、10~1000nmがより好ましく、10~300nmがさらに好ましく、10~100nmが特に好ましい。特に、配向膜の厚さが10~100nmの範囲内にあれば、光の干渉作用を利用して、可視光のうち短波長側の光による内部反射を抑制できるので、反射光の色付きを抑えることができる。そのため、偏光素子の反射防止機能がより向上する。
【0025】
異方性光吸収膜を配向膜上に塗布して形成する場合、配向膜は、異方性光吸収膜組成物の塗布により溶解しない程度の溶剤耐性を有することが好ましい。また、配向膜は、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。
【0026】
配向膜は、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物(以下、単に「光活性化合物」ともいう。)を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜である。
本発明において、光配向膜とは、上記光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された膜を意味する。光配向膜は、例えば、上記光活性化合物と、溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう。)を例えば後述する基板に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV(ultraviolet))を照射することによって配向規制力を付与して形成される。
光活性化合物は、重合性基および光反応性基を有する化合物であり、ポリマーであってもモノマーであてもよい。光反応性基とは、光の照射によって液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光反応性基は、光を照射することで生じる分子の配向誘起、または、異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応のような液晶配向能の起源となる光反応を起こすものである。
光反応性基は、不飽和結合を有することが好ましく、二重結合を有するものがより好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合。「アゾ基」ともいう。)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を有する基がさらに好ましい。
【0027】
C=C結合を有する光反応性基としては、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基が挙げられる。
C=N結合を有する光反応性基としては、例えば、芳香族シッフ塩基および芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。
N=N結合(アゾ基)を有する光反応性基としては、例えば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼンを基本構造とする基が挙げられる。
C=O結合を有する光反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基が挙げられる。
これらの光反応性基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、スルホン酸基またはハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性および経時安定性に優れる光配向膜が得られやすい点、および、各種屈折率を上述の範囲により設定しやすい点から、N=N結合(アゾ基)を有する光反応性基が好ましく、アゾベンゼン基がより好ましい。
【0028】
重合性基としては特に限定されないが、重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、重合性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。下記例において、Etはエチル基、Prはプロピル基を表す。
【0029】
【0030】
重合性基としては、ラジカル重合またはカチオン重合する重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)を挙げることができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基等を挙げることができる。なかでも脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。
【0031】
N=N結合(アゾ基)を有する光反応性基および重合性基を有する光活性化合物は、熱安定性および経時安定性に優れる光配向膜が得られやすい点、および、各種屈折率を上述の範囲により設定しやすい点から、式(I)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【0033】
式(I)中、R21、R22、R23およびR24(以下、「R21~R24」と略記する場合がある。)はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、R21~R24の少なくとも1つは、カルボキシ基、スルホ基またはそれらの塩を表す。また、R21~R24の少なくとも1つは、重合性基を含む基を表す。
式(I)中、mは1~4の整数を表し、nは1~4の整数を表し、oは1~5の整数を表し、pは1~5の整数を表す。m、n、oおよびpが2以上の整数である場合、複数個のR21~R24はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
R21~R24が表す置換基の具体例を以下に示す。
カルボキシ基またはその塩(アルカリ金属と塩を形成していてもよく、好ましくは塩を形成していないか、ナトリウム塩を形成しているカルボキシ基であり、より好ましくはナトリウム塩を形成しているカルボキシ基である)、スルホ基またはその塩(アルカリ金属と塩を形成していてもよく、好ましくは塩を形成していないか、ナトリウム塩を形成しているスルホ基であり、より好ましくはナトリウム塩を形成しているスルホ基である)、アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、および、シクロヘキシル基等が挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、および、3-ペンテニル基等が挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、および、3-ペンチニル基等が挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、さらに好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,5-ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基等が挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、および、アニリノ基等が挙げられる)、
【0035】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、および、ブトキシ基等が挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは2~6であり、例えば、メトキシカルボニル基、および、エトキシカルボニル基等が挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは2~6であり、例えば、アセトキシ基、および、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、アセチルアミノ基、および、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~16、さらに好ましくは炭素数7~12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、および、ベンゼンスルホニルアミノ基等が挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、さらに好ましくは炭素数0~6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、および、フェニルスルファモイル基等が挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、および、フェニルカルバモイル基等が挙げられる)、
【0036】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メチルチオ基、および、エチルチオ基等が挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~16、さらに好ましくは炭素数6~12であり、例えば、フェニルチオ基等が挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メシル基、および、トシル基等が挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルフィニル基、および、ベンゼンスルフィニル基等が挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、および、フェニルウレイド基等が挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、および、フェニルリン酸アミド基等が挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子等が挙げられる)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは1~12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、および、ベンズチアゾリル基等が挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、さらに好ましくは、炭素数3~24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、および、トリフェニルシリル基等が挙げられる)が挙げられる。
【0037】
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、互いに同じであっても異なっていてもよい。また、可能な場合には、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
R21~R24が表す置換基は、重合性基であってもよいし、重合性基を含む基であってもよい。
重合性基または重合性基を含む基は、分子末端に存在すること、すなわち、R23およびR24の少なくとも一方が重合性基または重合性基を含む基であるのが好ましい。この場合、R23およびR24の少なくとも一方は、アゾ基に対してパラ位に置換しているのが好ましい。
重合性基の定義は、上述した通りである。
重合性基を含む基は、上述したように、重合性基を含んでいればよい。重合性基を含む基としては、例えば、上記で例示した置換基またはそれらを組み合わせた基に重合性基が置換した基が挙げられる。なかでも、重合性基を含む基としては、式(A)で表される基が好ましい。式(A)中、*は結合位置を表す。
式(A) *-L-Ra
Lは、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、および、炭素数1~10のアルキニレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基等の2価の芳香族炭化水素基)、2価の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、-CO-、または、これらを組み合わせた基(例えば、-O-CO-アリーレン基-O-2価の炭化水素基-O-、-(O-2価の炭化水素基)m-O-(mは、1以上の整数を表す)等)が挙げられる。Qは、水素原子またはアルキル基を表す。
Raは、重合性基を表す。重合性基の定義は、上述した通りである。
【0039】
式(I)中、R21~R24は、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくはハロゲン化アルキル基)、アルコキシ基(好ましくはハロゲン化アルコキシ基)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または、重合性基を含む基が好ましく、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、または、重合性基を含む基がより好ましく、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、重合性基を含む基がさらに好ましい。
【0040】
R21~R24の少なくとも1つは、カルボキシ基またはスルホ基である。カルボキシ基またはスルホ基の置換位置については特に制限はないが、光活性作用の観点では、少なくとも1つのR21および/または少なくとも1つのR22がスルホ基であるのが好ましく、少なくとも1つのR21および少なくとも1つのR22がスルホ基であるのがより好ましい。また、同様の観点から、少なくとも1つのR23および/または少なくとも1つのR24がカルボキシ基であるのが好ましく、少なくとも1つのR23および少なくとも1つのR24がカルボキシ基であるのがより好ましい。カルボキシ基は、アゾ基に対してメタ位に置換したR23およびR24であるのがさらに好ましい。
R21~R24の少なくとも1つは、重合性基を含む基である。R23およびR24の少なくとも一方が、重合性基を含む基であるのが好ましい。この場合、R23およびR24の少なくとも一方は、アゾ基に対してパラ位に置換しているのが好ましい。
【0041】
式(I)において、mは1~4の整数を表し、nは1~4の整数を表し、oは1~5の整数を表し、pは1~5の整数を表す。好ましくは、mは1~2の整数、nは1~2の整数、oは1~2の整数、pは1~2の整数である。
【0042】
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に制限されるものではない。
【0043】
【0044】
光配向膜形成用組成物は、上記光活性化合物以外の添加剤を1種以上含んでいてもよい。添加剤は、例えば、光配向膜形成用組成物の屈折率調整を目的として添加される。
添加剤は、バインダー成分であるのが好ましく、光活性化合物との相溶性の観点から、親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物が好ましい。親水性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基およびアミノ基等が挙げられる。
添加剤は、配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
【0045】
光配向膜形成用組成物の屈折率調整を目的として、添加剤を用いる場合には、添加剤の屈折率(波長550nmにおける屈折率)は、1.40~1.60が好ましい。
特に、添加剤がバインダー成分である場合、光配向膜の屈折率調整が容易になる点から、バインダー成分の屈折率(波長550nmにおける屈折率)は、1.40~1.60が好ましく、1.50~1.60がより好ましい。
【0046】
親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物のうち、ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物は、親水性により優れる点から、ヒドロキシ基を2つ以上有することが好ましい。このような化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のモノグリシジルエーテル、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシルピバリン酸ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、および、エトキシ化ビスフェノールA等の2価アルコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン、エトキシ化トリメチロールプロパン、プロポキシ化トリメチロールプロパン、および、グリセリン等の3価アルコールのトリグリシジルエーテル、少なくとも1個の芳香環または脂環を有する多価フェノール(なお、ここでいう多価フェノールとは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物またはビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加体、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等またはそのアルキレンオキサイド付加体等を例として挙げることができる)のポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物のグリシジル基に、(メタ)アクリル酸を反応させて得たエポキシ(メタ)アクリレート化合物、および、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシルエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の、ポリオールのヒドロキシ基の一部に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるアルコール性(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0047】
ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物の市販品としては、デコナールアクリレートDA-212、DA-111、DA-911M、DA-931(商品名。以上、全てナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0048】
親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物のうち、カルボキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物は、カルボキシ基の親水性が十分高いことから、1分子あたりのカルボキシ基の数に特に制限はなく、1つでも2つ以上でもよい。
ただし、有機溶剤に対する溶解性を向上する点、および、化合物の結晶性の向上を抑制できる点から、隣接する層との接着性および溶剤耐性を維持できる範囲で、カルボキシ基の数は少ない方がよい。特に、芳香環に直結したカルボキシ基を持つ化合物の場合には、1分子あたりのカルボキシ基の数は2以下が好ましい。
【0049】
カルボキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物の具体例としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイルオキシエチルフタレート、2-メタクリロイルオキシエチルフタレート、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等の、カルボキシ基および1分子中に少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートの等のヒドロキシ基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物に無水フタル酸等の酸無水物を付加させて得られる化合物、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたアルキル(オキシ)基を置換基に有する安息香酸誘導体が挙げられる。
【0050】
安息香酸誘導体の場合、置換基である末端に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたアルキル(オキシ)基の数は1つでもそれ以上でもよいが、1~3が合成の容易さの点から好ましい。また、複数の末端に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたアルキル(オキシ)基を導入する場合には、置換する位置として分子の対称性を低くするような位置を選択することが、結晶性を高くしすぎないという点で好ましい。
具体的には、2-(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,3-ジ(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,4-ジ(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、2,5-ジ(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、3-(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、3,4-ジ(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸、4-(ω-(メタ)アクリロイルオキシアルキル(オキシ))安息香酸であって、アルキル鎖のメチレン基の数が1~14のものが挙げられる。特に、メチレン基の数が2~10のものがさらに好ましい。
【0051】
カルボキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物の市販品としては、ライトアクリレートHOAHH、HOHH、HOMPL、HOMPP、HOA-MS(商品名。以上、全て共栄社化学製)等が挙げられる。
【0052】
親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は親水性が高いため、式(I)で表される化合物との相溶性は良好であるが、まれに結晶化が生じる組み合わせがある。その場合、配合した状態で結晶性が著しく高くならないような親水性基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と式(I)で表される化合物との組み合わせが好ましい。これにより、光配向膜が平滑になって、配向規制力に及ぼす影響が小さくなる。
結晶化の有無は、例えば、光学的観察、分光分析または散乱実験等により判断が可能である。
【0053】
バインダー成分の含有量は、光配向膜(光配向膜形成用組成物)の全固形分質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。バインダー成分の含有量が10質量%以上であれば、光配向膜の屈折率の調整が容易になること、隣接する層との接着性および溶剤耐性を向上できること等の利点がある。
バインダー成分の含有量の上限値は、光配向膜(光配向膜形成用組成物)の全固形分質量に対して、光配向膜に含まれる式(I)で表される化合物の配向規制力がより発揮される点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
光配向膜形成用組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。上記塗布液の調製に使用する溶剤としては特に限定はないが、通常は光活性化合物が溶解するような溶剤を使用する。例えば、メタノール、および、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、および、1,3-ブタンジオール等のジオール系溶剤、テトラヒドロフラン、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、および、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテル系溶剤、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、クロロベンゼン、並びに、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
光配向膜形成用組成物は、全固形分質量が0.2質量%以上の塗布液として調製されるのが好ましく、全固形分質量が0.5~10質量%程度の塗布液として調製されるのがより好ましい。
【0055】
光配向膜形成用組成物を基板(後述)上に塗布する方法としては、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法およびアプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が採用される。なお、偏光素子の製造を、ロールツーロール(Roll to Roll)形式の連続的製造方法により実施する場合、塗布方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法またはフレキソ法等の印刷法が好ましい。
【0056】
〔異方性光吸収膜〕
本発明における異方性光吸収膜は、二色性物質を用いて形成された膜であり、配向度Sが0.92以上である。
【0057】
異方性光吸収膜の配向度Sは、0.92以上であり、0.94以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、1.00が挙げられる。
偏光素子として偏光度を高めるには、二色性物質の配向度を向上させることが必要であるが、配向度が高くなると、異方性光吸収膜の屈折率異方性が大きくなり、隣接層との界面反射が大きくなる傾向がある。よって、上記のように配向度が高い場合に、本発明がより有効である。
【0058】
異方性光吸収膜は、逆波長分散性を示してもよい。異方性光吸収膜が逆波長分散性を示すとは、特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
異方性光吸収膜が逆波長分散性を示し、かつ、配向膜の上記比(n450/n550)が1.0以上であれば、異方性光吸収膜と配向膜との界面における内部反射がより抑制できる。
【0059】
異方性光吸収膜の厚さは、100~8000nmが好ましく、300~5000nmがより好ましい。このように、異方性光吸収膜が薄膜であること(厚みが上記範囲にあること)で、偏光素子がフレキシブル性に優れる。
【0060】
本発明の異方性光吸収膜は、二色性物質を含む組成物を用いて形成されることが好ましい。
【0061】
(二色性物質)
本発明における二色性物質は、異方性光吸収膜の配向度Sが0.92以上にできるのであれば特に限定はない。具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落(、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特願2015-001425号公報の[0022]~[0080]段落、特願2016-006502号公報の[0005]~[0051段落]、WO2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、特願2016-044909号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-044910号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-095907号公報の[0013]~[0037]段落、特願2017-045296号公報の[0014]~[0034]段落等が挙げられる。
【0062】
二色性物質は、配向度Sが0.92以上である異方性光吸収膜が得られやすいという点から、下記式(II)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0063】
【0064】
式(II)中、R31、R32、R33、R34およびR35(以下、「R31~R35」と略記する場合がある。)はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R36およびR37はそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基またはシクロヘキサン環基を表し、L31は2価の連結基を表し、A31は酸素原子または硫黄原子を表す。R36、R37およびQ31は、置換基としてラジカル重合性基を有していてもよい。
異方性光吸収膜には、上記二色性物質そのものが含まれていてもよいし、上記二色性物質の重合体が含まれていてもよいし、これらの両方が含まれていてもよい。
【0065】
式(II)における置換基およびラジカル重合性基の定義は、上記式(I)における置換基と同様である。
Q31が表す芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
Q31が表す芳香族複素環基としては、単環または2環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基としては、具体的には、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアゾリル基、フタルイミド基、および、チエノチアゾリル基等が挙げられる。
L31が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、および、Z”は、それぞれ独立に、水素原子、C1~C4(炭素数1~4)のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-等が挙げられる。これらの中でも、-N=N-が好ましい。
【0066】
以下に、式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に制限されるものではない。
【0067】
【0068】
二色性物質の含有量は、異方性光吸収膜の全固形分質量に対して、8~22質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。二色性物質の含有量が上記範囲内にあれば、異方性光吸収膜を薄膜にした場合であっても、高配向度の異方性光吸収膜を得ることができる。そのため、フレキシブル性に優れた異方性光吸収膜が得られやすい。
二色性物質は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。二色性物質を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0069】
本発明においては、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質をより高い配向度で配向させることができる理由から、異方性光吸収膜が、上述した二色性物質とともに液晶性化合物と含む組成物(以下、「液晶性組成物」ともいう。)を用いて形成される膜であることが好ましい。
【0070】
(液晶性化合物)
液晶性組成物が含む液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。
また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
二色性物質を含む組成物が液晶性化合物を含有する場合、液晶性化合物の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、70~95質量部が好ましく、70~90質量部がより好ましい。
液晶性化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。液晶性化合物を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0071】
(重合開始剤)
液晶性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)等が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア(以下、「Irg」とも略す。)-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
液晶性組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、異方性光吸収膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、異方性光吸収膜の配向度がより良好となる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0072】
(界面改良剤)
液晶性組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度がさらに向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性が向上したりする効果が見込まれる。
界面改良剤としては、二色性物質と液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。
本発明に用いられる異方性光吸収膜が界面改良剤を含む場合、界面改良剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
界面改良剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。界面改良剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0073】
(溶剤)
液晶性組成物は、作業性等の観点から、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、および、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼン等)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル等)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタン等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド等)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン等)等の有機溶剤、ならびに、水が挙げられる。これの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶剤のうち、有機溶剤を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類またはケトン類を用いることがより好ましい。
液晶性組成物が溶剤を含む場合において、溶剤の含有量は、液晶性組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~97質量%がより好ましく、85~95質量%がさらに好ましい。
溶剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0074】
〔基板〕
本発明の偏光素子は、さらに基板を有していてもよい。
基板は、光学フィルム等を作成する場合に用いられる基板であれば特に限定はない。基板は、必要に応じて、フレキシブル性および剥離性を持たせてもよい。
上記配向膜および上記異方性光吸収膜を基板上にこの順に設けて、配向膜の異方性光吸収膜とは反対側に、基板が配置される態様としてもよい。
【0075】
基板は、可視光に対して透明性を有する基板であることが好ましい。透明性とは、波長380~780nmに渡る光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。
基板としては、具体的には、ガラス基板およびプラスチック基板が挙げられ、好ましくはプラスチック基板である。プラスチック基板を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースおよびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシドおよびポリイミド等が挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステルまたはポリイミドである。
基板上には、変性ポリビニルアルコール等を用いて形成された配向膜が形成されていてもよく、変性ポリビニルアルコール等を用いて形成された配向膜上に、本発明における配向膜を形成してもよい。
【0076】
基板の厚さは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、および、十分な透明性が確保できる点から、強度および加工性を維持できる程度に薄い方が好ましい。
ガラス基板の厚みは、これに限定されないが、100~3000μmが好ましく、100~1000μmがより好ましい。
プラスチック基板の厚みは、これに限定されないが、5~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。
本発明の偏光素子を後述する円偏光板として使用する場合(特にモバイル機器用途の円偏光板として使用する場合)、基板の厚みは5~100μm程度が好ましい。
【0077】
〔屈折率差〕
異方性光吸収膜の面内において、波長550nmにおける屈折率が最大となる方向において、異方性光吸収膜の屈折率をNx550、配向膜の屈折率をnx550とし、異方性光吸収膜の面内における屈折率が最大となる方向に面内で直交する方向において、異方性光吸収膜の屈折率をNy550、配向膜の屈折率をny550としたときに、下記式(1)を満たすことが好ましい。
|Nx550-nx550|+|Ny550-ny550|<0.3 式(1)
【0078】
波長550nmの光は人の目に視認されやすい波長の光である。そのため、異方性光吸収膜の配向度が高く屈折率の異方性が大きい場合であっても、上記式(1)を満たすことで、反射光がより視認されにくくなるので、異方性光吸収膜と配向膜との界面反射をより抑制できる。そのため、上記式(1)を満たす偏光素子は、画像表示装置に適用した際により優れた反射防止機能を発揮できる。
【0079】
|Nx550-nx550|+|Ny550-ny550|の値は、0.3未満であり、上記効果がより発揮される点から、0.2以下が好ましい。下限は特に制限されないが、0.01以上の場合が多い。
【0080】
[円偏光板]
本発明の円偏光板は、上述の偏光素子と、1/4波長板とを有する。
【0081】
〔1/4波長板〕
本発明に用いられる1/4波長板は、通常用いられるものであれば特に限定はなく、ポリマーフィルムや、液晶性化合物から作製されたものを用いることができる。例えば、ピュアエースWR(帝人株式会社製)等が挙げられる。
また、上述の基板が1/4波長板を兼ねていてもよい。
【0082】
1/4波長板は、逆分散性を示すものを用いることが好ましい。また、複数層を積層させて、あわせて1/4波長板としてもよい。
【0083】
1/4波長板と本発明の偏光素子とは、接して設けられていてもよいし、1/4波長板と本発明の偏光素子との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0084】
〔バリア層〕
バリア層は、本発明の偏光素子と1/4波長板との間に設けることができる。なお、本発明の偏光素子と1/4波長板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を備える場合には、バリア層は、例えば、本発明の偏光素子と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から本発明の偏光素子を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0085】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述の偏光素子または円偏光板と、画像表示素子と、を有する。画像表示装置において、偏光素子または円偏光板が、反射防止層として機能することが好ましい。
【0086】
〔画像表示素子〕
画像表示素子は、特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、画像表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、または、画像表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましい。
【0087】
(液晶セル)
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報等に開示されている。
【0088】
(有機EL表示装置)
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、偏光素子と、1/4波長板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、1/4波長板を有する上述した円偏光板と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、円偏光板は、視認側から、基板、配向膜、異方性光吸収膜、および、1/4波長板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例0089】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0090】
[λ/4位相差フィルム1の作製]
〔光配向膜用組成物の調製〕
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0質量部、メチルイソブチルケトン500質量部、および、トリエチルアミン10.0質量部を仕込み、室温で混合物を撹拌した。次に、脱イオン水100質量部を滴下漏斗より30分かけて得られた混合物に滴下した後、還流下で混合物を混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機相を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで有機相を洗浄した。その後、得られた有機相から減圧下で溶剤および水を留去し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次に、100mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン10.1質量部、アクリル基含有カルボン酸(東亞合成社製、商品名「アロニックスM-5300」、アクリル酸ω-カルボキシポリカプロラクトン(重合度n≒2))0.5質量部、酢酸ブチル20質量部、特開2015-26050号公報の合成例1の方法で得られた桂皮酸誘導体1.5質量部、および、テトラブチルアンモニウムブロミド0.3質量部を仕込み、得られた混合物を90℃で12時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物と等量(質量)の酢酸ブチルで混合物を希釈し、さらに希釈された混合物を3回水洗した。得られた混合物を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(下記重合体C-2)を含む溶液を得た。この重合体C-2の重量平均分子量Mwは9,000であった。また、1H-NMR分析の結果、重合体C-2中のシンナメート基を有する成分は23.7質量%であった。
【0091】
【0092】
以下の成分を混合して、配向層形成用組成物10を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・重合体C-2 10.67質量部
・低分子化合物R-1 5.17質量部
・添加剤(B-1) 0.53質量部
・酢酸ブチル 8287.37質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2071.85質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0093】
【0094】
添加剤(B-1):サンアプロ社製TA-60B(以下、構造式参照)
【0095】
【0096】
〔光学異方性層用塗布液の調製〕
下記組成の光学異方性層用塗布液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物L-3 42.00質量部
・下記液晶性化合物L-4 42.00質量部
・下記重合性化合物A-1 16.00質量部
・下記低分子化合物B2 6.00質量部
・下記重合開始剤S-1(オキシム型) 0.50質量部
・下記レベリング剤G-1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶性化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
下記化合物F 2質量部
メチレンクロライド(第1溶剤) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
─────────────────────────────────
【0103】
化合物F
【0104】
【0105】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル社製) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶剤) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0106】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルタでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶剤含有率略20質量%の状態でドラム上からフィルムを剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、フィルムを横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルム1を作製した。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レタデーションは0nmであった。
【0107】
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
作製したセルロースアシレートフィルム1の片側の面に、先に調製した光配向膜用組成物をバーコーターで塗布した。
塗布後、120℃のホットプレート上で1分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.3μmの光異性化組成物層を形成した。得られた光異性化組成物層を偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成した。
次いで、光配向膜上に、先に調製した光学異方性層用塗布液をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層をホットプレート上でいったん110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2.3μmの光学異方性層を形成し、λ/4位相差フィルム1を作製した。
得られたλ/4位相差フィルム1の面内レタデーションは140nmであった。
【0108】
〔ポジティブCプレート膜2の作製〕
仮支持体として、市販されているトリアセチルセルロースフィルム「Z-TAC」(富士フイルム社製)を用いた(これをセルロースアシレートフィルム2とする)。セルロースアシレートフィルム2を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、ノリタケカンパニーリミテド社製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム2を作製した。
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アルカリ溶液の組成(質量部)
─────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
含フッ素界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0109】
上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム2を用い、下記の組成の配向膜形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向膜を形成した。
─────────────────────────────────
配向膜形成用塗布液の組成
─────────────────────────────────
PVA(クラレ社製、製品名「クラレポバール PVA-103」)
2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
─────────────────────────────────
【0110】
上記で作製した配向膜を有するセルロースアシレートフィルム2上に、下記光学異方性層用塗布液Nを塗布し、60℃にて60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、重合性棒状液晶性化合物を垂直配向させ、ポジティブCプレート膜2を作製した。波長550nmにおいてRthが-60nmであった。
【0111】
─────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液Nの組成
─────────────────────────────────
下記液晶性化合物L-1 80質量部
下記液晶性化合物L-2 20質量部
下記垂直配液晶化合物向剤(S01) 1質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学社製) 8質量部
イルガキュア907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬社製) 1質量部
下記化合物B03 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
─────────────────────────────────
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
[配向膜28の作製]
厚み40μmのTAC(トリアセチルセルロース)基板(TG40、富士フイルム社製)上に、下記の組成の配向膜塗布液12を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。100℃の温風で2分間乾燥し、厚み0.8μmの配向膜を得た。なお、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)は、固形分濃度が4質量%となるように配向膜塗布液中に加えた。上記作製した配向膜にラビング処理を施し、配向膜12を作製した。
【0116】
配向膜塗布液12の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール
水 70質量部
メタノール 30質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0117】
【0118】
40μmのTAC基板(TG40、富士フイルム社製)上に設けられた配向膜12に対し、後述する光配向膜用塗布液28を塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量1000mJ/cm2)を照射し、配向膜28を作製した。得られた配向膜28の各種屈折率および膜厚を表1に示す。
【0119】
下記構造の光配向材料E-3 1.0質量部に、ブトキシエタノール41.6質量部、ジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで光配向膜用塗布液28を作製した。
【0120】
【0121】
[配向膜29の作製]
光配向膜用塗布液28を後述する光配向膜用塗布液29に変更した以外は、配向膜28と同様の方法で配向膜29を作製した。得られた配向膜毎の各種屈折率および膜厚を表1に示す。
【0122】
光配向材料E-3 0.3質量部に、ナガセケムテックス社製のデコナールアクリレートDA-212 0.7質量部、ブトキシエタノール41.6質量部、およびジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで光配向膜用塗布液29を作製した。
【0123】
[配向膜21の作製]
40μmのTAC基板(TG40、富士フイルム社製)上に設けられた配向膜12に対し、後述する光配向膜用塗布液1を塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量250mJ/cm2)を照射し、配向膜21を作製した。得られた配向膜21の各種屈折率および膜厚を表1に示す。
【0124】
下記構造の光配向材料E-1 1.0質量部に、ブトキシエタノール41.6質量部、ジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで光配向膜用塗布液1を作製した。
【0125】
【0126】
[配向膜30の作製]
40μmのTAC基板(TG40、富士フイルム社製)上に設けられた配向膜12上に配向層形成用組成物10をスピンコート法により塗布し、配向層形成用組成物10が塗布された支持体を80℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、塗膜を形成した。
得られた塗膜に対して、偏光紫外線照射(25mJ/cm2、超高圧水銀ランプ)することで配向膜30を作製した。
【0127】
[比較例401]
〔異方性光吸収膜の作製〕
得られた配向膜12上に、下記の液晶性組成物2を#5のワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布膜401を形成した。
塗布膜401を140℃で90秒間加熱し、塗布膜401を室温になるまで冷却した。次いで、80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜12上に異方性光吸収膜401(厚み600nm)を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物2の組成
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・イエローアゾ色素Y-1 2.7質量部
・シアンアゾ色素C-1 13.5質量部
・高分子液晶化合物P-1 101.1質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1.0質量部
・界面改良剤F-1 0.5質量部
・シクロペンタノン 617.0質量部
・テトラヒドロフラン 264.4質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0128】
【0129】
イエローアゾ色素Y-1
【0130】
【0131】
シアンアゾ色素C-1
【0132】
【0133】
高分子液晶化合物P-1(繰り返し単位中の数値は、高分子液晶性化合物P-1中の全繰り返し単位に対する各繰り返し単位のモル%を表す。)
【0134】
【0135】
界面改良剤F-1(繰り返し単位中の数値は、界面改良剤F-1中の全繰り返し単位に対する各繰り返し単位のモル%を表す。)
【0136】
〔酸素遮断層の作製〕
異方性光吸収膜401上に、後述する酸素遮断層形成用組成物2を#5のワイヤーバーで連続的に塗布し、60℃で5分間乾燥を行うことで、異方性光吸収膜上に酸素遮断層が形成された偏光素子を作製した。このようにして、比較例401の偏光素子を作製した。得られた偏光素子の配向度を表1に示す。
なお、比較例401の偏光素子から異方性光吸収膜を剥離して、上述した方法によって、配向度Sを測定した。異方性光吸収膜の配向度Sを表1に示す。
【0137】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
酸素遮断層形成用組成物2
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化合物BA-1(下記) 29質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
エタノール 70質量部
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【0138】
【0139】
[実施例309~310、比較例402~403]
2種類の二色性物質の配合割合は比較例401と同様にして、二色性物質の固形分量のみを表1のように変更した以外は、比較例401と同様の方法で、配向膜21および28~30上に異方性光吸収膜を作製した。このようにして、実施例309~310および比較例402~403の偏光素子を作製した。
なお、各実施例および比較例の偏光素子から異方性光吸収膜を剥離して、上述した方法によって、配向度Sを測定した。異方性光吸収膜の配向度Sを表1に示す。
【0140】
[円偏光板の作製]
上述のλ/4位相差フィルム1の光学異方性層側に、粘着剤を介して上述のポジティブCプレート膜2を転写し、セルロースアシレートフィルム2を除去した。また、λ/4位相差フィルム1のセルロースアシレートフィルム1側に粘着剤を介して実施例309~310および比較例401~403の偏光素子を貼り合わせて円偏光板を得た。
【0141】
有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S5を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。続いて、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記作製した円偏光板をポジティブCプレート側がパネル側になるようにタッチパネル上に貼合し、有機EL表示装置を作製した。
【0142】
[表示性能評価]
実施例309~310および比較例401~403の偏光素子を用いて得られた各有機EL表示装置について、明光下にて視認性および表示品位を評価した。表示装置の表示画面を黒表示にして、正面および極角45度から蛍光灯を映しこんだときの反射光を観察した。下記の基準に基づいて表示性能を評価した。評価結果を表1にまとめて示す。
A:黒色で色づきが全く視認されない
B:わずかに着色が視認されるが、反射率が非常に低い
C:わずかに着色が視認されるが、反射率が低い
D:わずかに着色が視認され、かつ反射率が高い
E:着色が明らかに視認され、かつ反射率が高い
【0143】
【0144】
表1より、配向膜が、重合性基および光反応性基を有する光活性化合物を含む光配向膜形成用組成物を用いて形成された光配向膜であり、異方性光吸収膜の配向度が0.92以上であり、配向膜の平均屈折率naveが1.55~2.0の範囲内にあれば、画像表示装置の表示性能が優れることが確認された(実施例309~310)。
一方、異方性光吸収膜の配向度が0.92未満、または、配向膜の平均屈折率naveが1.55~2.0の範囲外である場合、画像表示装置の表示性能が劣ることが確認された(比較例401~403)。