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特開2022-78714複合粒子及びその製造方法並びに複合粒子の前駆体粒子
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  • 特開-複合粒子及びその製造方法並びに複合粒子の前駆体粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078714
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】複合粒子及びその製造方法並びに複合粒子の前駆体粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/16 20220101AFI20220518BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20220518BHJP
   C23C 18/12 20060101ALI20220518BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220518BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20220518BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
B22F1/02 D
C01B3/00 A
C23C18/12
C23C28/00 B
B22F1/02 A
C22C21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189587
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】竹元 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 篤志
【テーマコード(参考)】
4G140
4K018
4K022
4K044
【Fターム(参考)】
4G140AA34
4K018BA01
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA13
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018BD07
4K022AA02
4K022AA35
4K022BA33
4K022CA29
4K022DA06
4K022DB24
4K022DB29
4K044AA13
4K044AB01
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA12
4K044BB03
4K044BB13
4K044CA13
4K044CA15
4K044CA27
4K044CA29
4K044CA44
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】水素吸放出性能が劣化し難く、水素透過性に優れた被膜を備える水素吸放出性金属粒子及びその製造方法並びに製造用前躯体を提供する。
【解決手段】水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える複合粒子。被膜は厚さ方向の貫通孔を有し、貫通孔の平均開口径が1nm~10nmの範囲である。水素吸放出性金属粒子と、その表面を覆った金属酸化物被膜とを備える複合粒子の製造方法。水素吸放出性金属粒子の表面を低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜形成液で被覆する工程と、被膜形成液被覆粒子を乾燥させて、複合粒子の前駆体粒子を得る工程と、前駆体粒子を焼成して、金属酸化物被膜を形成する工程と、を含む。水素吸放出性金属粒子と、この粒子表面にアルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜を備える、複合粒子製造用前駆体粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える複合粒子であって、
前記被膜が、厚さ方向の貫通孔を有し、
前記貫通孔の平均開口径が1nm~10nmの範囲である複合粒子。
【請求項2】
前記貫通孔の開口は、平均円形度が0.55以上である請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物被膜表面に対する前記開口の開口率(開口部面積/被膜表面積×100)が、0.55~5.0%の範囲である、請求項2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物被膜が、酸化アルミニウム及び酸化亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物被膜の膜厚が、50~500nmの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項6】
前記水素吸放出性金属粒子が、コア部と、このコア部の全体又は一部を水素吸放出性金属のシェル部で包囲したコア-シェル構造体を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記シェル部が、異なる水素吸放出性金属からなる2以上の層を有する、請求項6に記載の複合粒子。
【請求項8】
前記水素吸放出性金属が、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)及びアルミニウム(Al)から成る群より選ばれた金属またはこれらの金属の2種以上を含む合金である請求項1~7のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項9】
前記複合粒子が、金属水素間発熱性を有する粒子である、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項10】
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える複合粒子の製造方法であって、
前記水素吸放出性金属粒子の表面の少なくとも一部を低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜形成液で被覆する工程(1)と、
前記被膜形成液被覆粒子を乾燥させて、前記複合粒子の前駆体粒子を得る工程(2)と、
前記前駆体粒子を不活性ガス雰囲気又は大気中で焼成して、前記金属酸化物被膜を形成する工程(3)と、を含む前記製造方法。
【請求項11】
前記低級アルキル金属化合物が、アルキルアルミニウム化合物、アルキル亜鉛化合物またはアルキルアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物の混合物である請求項10に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項12】
前記被膜形成液は、低級アルキル金属化合物の部分加水分解物及び溶媒を含有し、前記溶媒は非水溶媒である請求項10または11に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項13】
前記水素吸放出性金属粒子が、コア部と、このコア部の全体又は一部を水素吸放出性金属のシェル部で包囲したコア-シェル構造体を有し、
前記工程(1)の前に、非酸化性雰囲気下で、コア部を形成する粒子の表面に水素吸放出性金属を蒸着させて水素吸放出性金属粒子を得る工程を、さらに含む請求項10~12のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項14】
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部に、アルキルアルミニウム化合物の部分加水分解物、アルキル亜鉛化合物の部分加水分解物、並びにアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物の部分加水分解物から成る群より選ばれた少なくとも1種の部分加水分解物を含む被膜を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合粒子製造用前駆体粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子及びその製造方法並びに複合粒子の前駆体粒子に関する。更に詳細には、本発明は、金属水素間発熱性を有し、耐久性の高い複合粒子及びその製造方法並びに複合粒子の前駆体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を可逆的に吸収・放出する水素吸放出性金属が知られている。
水素吸放出性金属は、加圧することで水素を吸蔵して発熱し、逆に減圧することで水素を放出して吸熱する。圧力を調節することでこれらの発熱及び吸熱を利用することができる。水素吸放出性金属の粒子は、金属水素間発熱材粒子とも呼ばれる。
【0003】
しかし、前記水素吸放出性金属は、水素の吸収・放出の繰返過程において、水や酸素などにより表面に酸化膜を形成して水素吸放出能が低下してしまう。それに対して、特許文献1には、ゾルゲル法で形成した疎水性のセラミック被膜で水素吸放出性金属を覆うことで、水による水素吸放出性金属の水素吸蔵能力低下を防止できる旨が開示されている。
【0004】
特許文献2は、コアシェル複合体である水素吸放出性金属粒子を開示し、シェル部の最外層の外側に水素透過性と耐熱性を併有する耐熱性水素透過殻層を備えることも開示する。具体的には、コアシェル複合体のAlシェル層の表面を酸化してAlシェル層外側に形成したAl23層を設けた粒子を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-1790号公報
【特許文献2】特開2020-132969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のようにゾルゲル法を用いてセラミック被膜を形成すると、塗工するゾル液が水を含むため、該ゾル液を塗工する際に水素吸放出性金属の表面に厚い酸化被膜が形成されて、水素の吸放出能が低下してしまう。
【0007】
また、前記水素吸放出性金属は微細な粉粒体とすることで、水素吸放出反応によって1000℃以上の良質な熱エネルギーを得ることができる。しかし、ゾルゲル法で作製したセラミック被膜は、高温に曝されると体積収縮などによりひび割れが生じる。そのため、水素吸放出性金属の融点を超える1000℃以上の高温下において水素吸放出性金属粒子同士の融着を防止することは困難であった。ひび割れたセラミック被膜のひび割れは、セラミック被膜自体の膨張収縮や、内部の水素吸放出性金属粒子の膨張収縮によって広がり、近接するひび割れ同士が繋がってセラミック被膜が複数の部分に分割してしまい、内部の水素吸放出性金属が溶融すると支えを失って崩壊する。
【0008】
特許文献2に記載の耐熱性水素透過殻層は、コアシェル複合体のAlシェル層の表面を酸化して形成された層であり、外表面がAlでない場合には形成できず、耐熱性水素透過殻層形成のために酸化処理が必要となる。
【0009】
スパッタなどの蒸着法で形成したセラミック被膜は、高温暴露における体積収縮などによるひび割れを回避できる可能性があると考えられる。しかし、蒸着法で形成したセラミック被膜は、一般に緻密であり、そのため水素を透過せず、水素吸放出性金属粒子の被覆層としては適さないものと考えられる。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水素吸放出性能が劣化し難く、水素透過性に優れた被膜を備える水素吸放出性金属粒子及びその製造方法並びに製造用前躯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の貫通孔を有する金属酸化物被膜で水素吸放出性金属粒子の一部又は全体を覆うことにより、前記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下の通りである。
[1]
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える複合粒子であって、
前記被膜が、厚さ方向の貫通孔を有し、
前記貫通孔の平均開口径が1nm~10nmの範囲である複合粒子。
[2]
前記貫通孔の開口は、平均円形度が0.55以上である[1]に記載の複合粒子。
[3]
前記金属酸化物被膜表面に対する前記開口の開口率(開口部面積/被膜表面積×100)が、0.55~5.0%の範囲である、[2]に記載の複合粒子。
[4]
前記金属酸化物被膜が、酸化アルミニウム及び酸化亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の複合粒子。
[5]
前記金属酸化物被膜の膜厚が、50~500nmの範囲である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の複合粒子。
[6]
前記水素吸放出性金属粒子が、コア部と、このコア部の全体又は一部を水素吸放出性金属のシェル部で包囲したコア-シェル構造体を有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載の複合粒子。
[7]
前記シェル部が、異なる水素吸放出性金属からなる2以上の層を有する、[6]に記載の複合粒子。
[8]
前記水素吸放出性金属が、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)及びアルミニウム(Al)から成る群より選ばれた金属またはこれらの金属の2種以上を含む合金である[1]~[7]のいずれか1項に記載の複合粒子。
[9]
前記複合粒子が、金属水素間発熱性を有する粒子である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の複合粒子。
[10]
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える複合粒子の製造方法であって、
前記水素吸放出性金属粒子の表面の少なくとも一部を低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜形成液で被覆する工程(1)と、
前記被膜形成液被覆粒子を乾燥させて、前記複合粒子の前駆体粒子を得る工程(2)と、
前記前駆体粒子を不活性ガス雰囲気又は大気中で焼成して、前記金属酸化物被膜を形成する工程(3)と、を含む前記製造方法。
[11]
前記低級アルキル金属化合物が、アルキルアルミニウム化合物、アルキル亜鉛化合物またはアルキルアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物の混合物である[10]に記載の複合粒子の製造方法。
[12]
前記被膜形成液は、低級アルキル金属化合物の部分加水分解物及び溶媒を含有し、前記溶媒は非水溶媒である[10]または[11]に記載の複合粒子の製造方法。
[13]
前記水素吸放出性金属粒子が、コア部と、このコア部の全体又は一部を水素吸放出性金属のシェル部で包囲したコア-シェル構造体を有し、
前記工程(1)の前に、非酸化性雰囲気下で、コア部を形成する粒子の表面に水素吸放出性金属を蒸着させて水素吸放出性金属粒子を得る工程を、さらに含む[10]~[12]のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法。
[14]
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部に、アルキルアルミニウム化合物の部分加水分解物、アルキル亜鉛化合物の部分加水分解物、並びにアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物の部分加水分解物から成る群より選ばれた少なくとも1種の部分加水分解物を含む被膜を備える、[1]~[8]のいずれか1項に記載の複合粒子製造用前駆体粒子。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所望の貫通孔を有する融着防止被膜で水素吸放出性金属粒子を覆うこととしたため、融着防止被膜により水素吸蔵放出性能を低下させることなく、水素吸放出性金属粒子同士の融着を防止した複合粒子を提供することができる。
【0014】
また、アルキルアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物から成る群より選ばれた少なくとも1種の化合物の部分加水分解物を含む融着防止被膜塗工液を用いることとしたため、水素吸蔵放出性能の低下を防止する融着防止被膜を形成できる複合粒子の製造方法及び複合粒子の前駆体粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の複合粒子の一例の表面のSEM像である。(A)は、開口部の所在を分かりやすくするために開口部周囲に白円を加えた像であり、(B)は画像解析において開口部と認識された部分を表示す。
図2】本発明の複合粒子の一例の加熱後のSEM像である。
図3】加熱前後のアルミニウム粉のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願明細書において数値範囲を示す「~」は、以上及び以下の範囲を示し、それぞれ上限の値及び下限の値を含むものである。
【0017】
<複合粒子>
本発明の複合粒子について詳細に説明する。
本発明の複合粒子は、水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える粒子である。さらに、本発明の複合粒子の前記被膜は、厚さ方向の貫通孔を有し、前記貫通孔の平均開口径が1nm~10nmの範囲である。
【0018】
(水素吸放出性金属粒子)
水素吸放出性金属は、水素を可逆的に吸収・放出する金属であり、この金属を含む粒子が、水素吸放出性金属粒子である。水素吸放出性金属は、加圧することで水素を吸収して発熱し、減圧することで水素を放出して吸熱する。水素吸放出性金属の周辺の水素圧力を調節することで、吸発熱を利用することができる。水素吸放出性金属粒子は、金属水素間発熱材粒子とも呼ばれる。尚、本発明において水素吸放出性金属による水素の吸収と吸蔵とは同義であり、吸収の用語を使用する。
【0019】
水素吸放出性金属を構成する金属には特に制限はないが、例えば、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)及びアルミニウム(Al)を挙げることができる。
【0020】
水素吸放出性金属は、上記金属の単独でであること、及び上記元素から成る群より選ばれた少なくとも2種の元素を含む合金であることができる。合金としては、例えば、ニッケルとアルミニウムを含む水素吸放出性合金を挙げることができる。但し、この合金に限定される意図ではない。
【0021】
水素吸放出性金属粒子は、水素吸放出性金属または水素吸放出性合金のみからなる粒子であってもよいが、耐熱性材料を含むコア部と該コア部の全体又は一部を水素吸放出性金属のシェル部で包囲したコア-シェル構造体であってもよい。コア-シェル構造を有する粒子は、構造上安定し、充填性能も高くなるため好ましい。コア-シェル構造を有する粒子は、例えば、特許文献2に記載の耐熱性水素透過殻層を有さないコアシェル複合体であることができる。水素吸放出性金属からなるシェル部は、単層であっても異なる種類の金属または合金からなる2層以上の複数層であってもよい。2層以上の複数層からなるシェル部は、例えば、内側層がNi(融点約1455℃)であり、その外側層がAl(融点約660℃)であることができる。
【0022】
コア-シェル構造を有する水素吸放出性金属粒子は、耐熱性材料を含むコア部を有することで、熱履歴に対してほぼ一定の形状を維持することができる。コア部を構成する材料としては、無機酸化物、セラミックス又は鉱物、及びこれら任意の組み合わせであることができる。コア部を構成する材料の例としては、例えば、ジルコニア(ZrO2)(融点約2715℃)、アルミナ(Al23)(融点約2072℃)、シリカ(SiO2)(融点約1710℃)、炭化ケイ素(SiC)(融点約2730℃)及びゼオライト(融点約1250℃)などを挙げることができる。耐熱性の観点から、耐熱性材料は融点が例えば、1800℃以上の材料であることが好ましい。耐熱性材料としては、安定化ジルコニアが好ましい。
【0023】
安定化ジルコニアとしては、イットリア(Y23)、セリア(CeO2)、及びマグネシア(MgO2)からなる群より選ばれた1種以上で安定化されたジルコニアを挙げることができる。安定化ジルコニアの融点は、安定化のために添加された成分の種類と量により変動するが、例えば、1300~1700℃の範囲である。
【0024】
非コア-シェル構造体である水素吸放出性金属粒子の平均粒径は、特に制限はないが、例えば、10~50μmの範囲であることができる。水素吸放出性金属粒子の粒径が前記範囲内であることで比較的大きな表面積を確保でき、水素吸放出により良質な熱エネルギーを得ることができると共に、ハンドリングが容易であり熱エネルギーの生産性が向上する。
【0025】
コア-シェル構造体である水素吸放出性金属粒子の場合、コア部の平均粒径は、例えば、10~50μmの範囲であることができる。シェル部、すなわち水素吸放出性金属部の厚さは、特に制限はなく、シェル部を構成する金属又は合金の種類やシェル部の層数も考慮して適宜決定することができ、例えば、10nm~1000nm、好ましくは50nm~800nm、より好ましくは100~500nm、一層好ましくは、150~350nmの範囲である。水素吸放出性金属は水素を吸収して膨張するが、水素吸収による膨張量が抑えられ、前記金属酸化物被膜の割れを防止できるといか観点から、シェルの厚さは前記範囲内であることが適当である。
【0026】
(水素吸放出性金属粒子の作製)
非コア-シェル構造体である水素吸放出性金属粒子は、例えば、水素吸放出性金属の塊を粉砕することで作製できる。コア-シェル構造体である水素吸放出性金属粒子は、例えば、非酸化性雰囲気下でコア部の表面にシェル部の金属又合金を蒸着させることで作製できる。
【0027】
ここで、非酸化性雰囲気下とは、実質的に酸化が進行しない雰囲気であり、酸素不存在下、すなわち酸素が実質的に存在しない状態をいい、不活性雰囲気や真空雰囲気が好ましい。
【0028】
具体的には、10-7Torr前後の減圧下や、アルゴンガスなどの不活性ガスが僅かに注入されている状態であることが好ましい。このようなドライプロセスによる蒸着を適用することにより、酸素の混入を防止でき、純度の高い成膜を行うことができる。
【0029】
蒸着としては、CVDやPVD、好ましくはスパッタリングを例示できる。スパッタリングを適用する場合、シェル部が複数層の場合、この複数層の各層に対応するターゲットの変更を窒素気流下で行うか、又は前記ターゲット変更後のスパッタリング開始前に逆スパッタリングを行うことが好ましい。かかる処理によって、酸化を抑制でき、シェル部の構成金属などの間に酸化被膜が形成されるのを十分に抑制でき、かつ酸化被膜が生成されても効果的に除去できる。
【0030】
(金属酸化物被膜)
水素吸放出性金属は、金属酸化物被膜を有さない状態では加圧することで水素を吸収して発熱し、発熱の程度によっては、複数の水素吸放出性金属粒子同士が融着する。本発明の複合粒子における金属酸化物被膜は、発熱による高温下での複合粒子同士の融着防止被膜として機能する。金属酸化物被膜が有する貫通孔は、粒子の内外に存在する水素ガスを透過するチャンネル(通路)の役割を果たす、水素ガス透過チャンネルである。融着防止被膜としての機能が損なわれず、かつ水素ガス透過チャンネルとして機能するという観点から貫通孔の開口部は、平均開口径が1nm~10nmの範囲とする。金属酸化物被膜は水素ガス透過チャンネルとして機能する貫通孔を有するため、その内部の水素吸放出性金属粒子は圧力に応じて水素を外部から吸収し、または内部から放出することができる。
【0031】
金属酸化物被膜が厚さ方向に有する貫通孔の平均開口径は、水素ガス透過性がより良好であるという観点から、好ましくは1nm~8nmの範囲のである。
【0032】
金属酸化物被膜を構成する耐熱性金属酸化物としては、融点が1800℃以上の金属酸化物であることができ、例えば、酸化アルミニウム(融点約2072℃)及び酸化亜鉛(融点約1975℃)を挙げることができ、酸化アルミニウムと酸化亜鉛の混合物または複合体であることもできる。
【0033】
金属酸化物被膜は、耐熱性金属酸化物で構成されるため、水素吸放出性金属の水素吸収による発熱で水素吸放出性金属が溶融するような高温下になっても、融点未満の温度においては溶融することはない。水素吸放出性金属粒子は金属酸化物被膜で覆われているため、水素吸放出性金属粒子同士の融着を防止できる。金属酸化物被膜は、水素吸放出性金属粒子の少なくとも一部、好ましくは全体を被覆していることが、融着防止の観点からは好ましい。
【0034】
金属酸化物被膜は、平均開口径が前記範囲であることに加えて、貫通孔開口部の平均円形度が0.55以上の略円形であることが、金属酸化物被膜の耐久性の観点から好ましい。平均円形度が0.55以上の略円形であることで、開口部の一点に応力が集中することなく分散するため、貫通孔が金属酸化物被膜の割れの起点となり難い。水素吸放出性金属粒子の熱膨張収縮によって、金属酸化物被膜の貫通孔が起点となるひび割れを防止するという観点から、貫通孔は開口部の平均円形度が0.55以上であることが好ましい。開口部の平均円形度が0.55以上であることで、近接する貫通孔同士が繋がって金属酸化物被膜が崩壊するのを防止することもできる。開口部の平均円形度は、好ましくは0.6以上、1.0以下である。
【0035】
本発明において、円形度は、開口部と同じ面積を有する円の周囲長さをL0、開口部の周囲長をLとするとき、L0/Lで表され、平均円形度は、走査型電子顕微鏡で撮影したSEM像における所定面積中の開口径が1nm以上の貫通孔の円形度を平均することで算出できる。
【0036】
本発明の複合粒子が有する金属酸化物被膜は、それ自体の熱膨張収縮や、内部の水素吸放出性金属粒子の膨張収縮によっても、金属酸化物被膜自体でその形状を維持することができ、内部の水素吸放出性金属粒子が溶融しても金属酸化物被膜は崩壊しにくい。但し、熱膨張収縮による金属酸化物被膜の崩壊を防止するという観点を考慮して、金属酸化物被膜の膜厚及び金属酸化物被膜表面に存在する貫通孔の割合(金属酸化物被膜表面に対する貫通孔の開口率)を決定することが適当である。
【0037】
本発明の複合粒子が有する金属酸化物被膜表面に対する前記貫通孔の開口率(開口部面積/被膜表面積×100)は、0.55~5.0%であることが、水素ガスの透過性と金属酸化物被膜の耐久性との両立という観点から好ましい。開口率が小さくなると、水素の吸放出を阻害して発熱量が低下する傾向があり、開口率が大きくなると、金属酸化物被膜の耐久性が低下して複合粒子同士が融着しやすくなる傾向がある。開口率は、好ましくは0.1~1.0%の範囲である。
【0038】
金属酸化物被膜表面の開口径、貫通孔形状及び開口率は、複合粒子の走査型電子顕微鏡で撮影したSEM像を2値化し画像解析することで測定することができる。SEM像を2値化して行う画像解析は、画像解析ソフトを用いることで実施できる。使用する画像解析ソフトは、画像内の貫通孔の開口を人的に又は自動で認識し、認識した開口と同一の面積を持つ円の直径であるHeywood径を算出することができるソフトであれは特に制限はない。例えば、画像解析ソフトとしてはMacViewを用いることができる。MacViewは株式会社マウンテックの製品であり、JIS8827-1(2018)に準拠した画像解析式粒度分布測定ソフトウェアである。本発明においては、画像内の貫通孔の開口を粒子の粒度と見立てて開口のHeywood径を算出する。Heywood径の算出は、貫通孔の開口を粒子の粒度と見立てて行う以外は、JIS8827-1(2018)に準拠して実施される。平均開口径は、SEM像における所定面積中で測定された開口径を平均することで算出できる。
【0039】
貫通孔の開口率は、開口部面積/被膜表面積×100であり、SEM像の所定面積を式中の被膜表面積とし、開口部面積は、当該所定面積中の開口部においてSEM像から画像解析ソフトを用いて算出された面積である。
【0040】
金属酸化物被膜の膜厚は、水素ガスの透過性と金属酸化物被膜の耐久性とを両立するという観点から、例えば、50nm~500nmの範囲であることができ、好ましくは50~300nmの範囲、より好ましくは60~250nmの範囲、特に好ましくは80~200nmの範囲であることができる。但し、金属酸化物被膜の膜厚は、これらの範囲に制限される意図ではなく、平均開口径、平均円形度、開口率等を考慮して、適宜決定できる。金属酸化物被膜の膜厚は、複合粒子の断面を観察したTEM画像により測定できる。
【0041】
金属酸化物被膜は、例えば、後述する金属酸化物被膜の形成液の粘度を調節することで、所望の膜厚に調整することができる。
【0042】
本発明の複合粒子が有する金属酸化物被膜は、前記膨張収縮による割れが抑止され、水素吸放出性金属が溶融するような高温下においても崩壊することがなく、水素吸放出性金属粒子同士の融着が防止される。したがって、水素吸放出性金属粒子群の表面積が減少することがなく、金属水素間発熱を繰り返し行うことができる。
【0043】
<複合粒子の製造方法>
水素吸放出性金属粒子と、この水素吸放出性金属粒子表面の一部又は全部を覆った金属酸化物被膜と、を備える本発明の複合粒子の製造方法は、以下の工程(1)~(3)を含む。
工程(1):水素吸放出性金属粒子の表面の少なくとも一部を低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜形成液で被覆する工程、
工程(2):被膜形成液被覆粒子を乾燥させて、複合粒子の前駆体粒子を得る工程、及び
工程(3):前駆体粒子を焼成して、金属酸化物被膜を形成する工程。
【0044】
工程(1)
低級アルキル金属化合物は、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4のアルキル金属化合物であり、金属としては、例えば、アルミニウム及び亜鉛を挙げることができる。低級アルキル金属化合物は、アルキルアルミニウム化合物、アルキル亜鉛化合物またはアルキルアルミニウム化合物及びアルキル亜鉛化合物の混合物であることができ、1種又は2種以上のアルキルアルミニウム化合物であるか、1種又は2種以上のアルキル亜鉛化合物であるか、1種又は2種以上のアルキルアルミニウム化合物及び1種又は2種以上のアルキル亜鉛化合物の混合物であることができる。低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を含む被膜形成液は、部分加水分解物に加えて非水溶媒を含むことができる。
【0045】
低級アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びトリノルマルブチルアルミニウムを挙げることができる。低級アルキル亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、及びブチル亜鉛を挙げることができる。
【0046】
低級アルキル金属化合物は、水やカルボン酸によって部分加水分解される。水やカルボン酸による部分加水分解の典型例は、例えば、下記反応式(1)で示される。
【0047】
【化1】
【0048】
反応式(1)中、Mは、3価のAlであり、部分加水分解におけるMR3に対する水またはカルボン酸の量は、上記式では1当量であり、最大1.5当量未満である。Mが2価のZnの場合にはMに結合するRは2個であり、部分加水分解におけるMR2に対する水またはカルボン酸の量は、最大1当量未満である。Rは、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、ノルマルブチル基などを表し、nは整数(例えば、50以下)を表す。
【0049】
部分加水分解に用いるカルボン酸は、例えば、下記一般式(2)で示される脂肪族または芳香族カルボン酸であることができる。
【化2】
【0050】
但し、一般式(2)中、R1は、C1~C20の直鎖あるいは分岐したアルキル基、アルケニル基、アリール基の炭化水素基を表し、nは1~5の整数を表す。
【0051】
一般式(2)で示される脂肪族または芳香族カルボン酸の例としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、安息香酸無水物、フタル酸、フタル酸無水物、トルイル酸等を挙げることができる。
【0052】
上記被膜形成液の作製には、前記化合物に対して当量未満の水やカルボン酸を用い、前記化合物を完全に加水分解する量の水やカルボン酸は用いない。そのため用いられた水やカルボン酸は、前記化合物の加水分解によって完全に消費され、作製された被膜形成液は、余剰の水やカルボン酸は含まない。
【0053】
このように、被膜形成液は、水やカルボン酸を含んでいないため、被膜形成液で粒子表面を被覆することによって水素吸放出性金属粒子が酸化されることがなく、水素の吸放出性能の低下を防止できる。
【0054】
前記被膜形成液形成のために前記化合物に添加する水やカルボン酸の量は、アルキルアルミニウム化合物に対しては1.0当量未満であり、アルキル亜鉛化合物に対しては1当量未満である。添加量の下限は特に制限はなく、大気中の水分によっても加水分解反応が進むため、添加しなくても構わない。
【0055】
被膜形成液は、低級アルキル金属化合物を非水溶媒に溶解させ、必要に応じて水やカルボン酸を混合した非水溶媒を添加することで作製できる。被膜形成液の粘度を調節することで、金属酸化物被膜の膜厚を所望の膜厚に調整することができる。
【0056】
前記非水溶媒としては、低級アルキル金属化合物及びこれらの部分加水分解物を溶解するものを使用することができる。
例えば、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン等の環状アミド、
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジ-n-ブチルエーテル、ジアルキルエチレングリコール、ジアルキルジエチレングリコール、ジアルキルトリエチレングリコール等のエーテル、
グライム、ジグライム、トリグライム系溶媒等の電子供与性有機溶媒または、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の非電子供与性有機溶媒を挙げることができる。
【0057】
水素吸放出性金属粒子の表面の少なくとも一部を被膜形成液で被覆する方法としては、特に制限はなく、浸漬法等を挙げることができる。
【0058】
工程(2)
工程(2)では、水素吸放出性金属粒子の表面の被膜形成液を乾燥させて塗膜し、複合粒子の前駆体粒子を得る。工程(2)においては、前駆体粒子同士が結着しなければよく、被膜形成液が指触乾燥していれば足り、乾燥方法としては、風乾や加熱乾燥などを挙げられる。なお、被膜形成液を塗布した前駆体粒子中の前記部分加水分解物の組成は、被膜形成液中の部分加水分解物とほぼ同等であることから、塗布前の被膜形成液中の部分加水分解物をNMRにより確認できる。
【0059】
工程(3)
工程(3)は、前記前駆体粒子を不活性ガス雰囲気又は大気中で焼成し、低級アルキル金属化合物の部分加水分解物を酸化し、金属酸化物被膜を形成して複合粒子を得る工程である。焼成温度は、生成される金属酸化物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、低級アルキル金属化合物がアルキルアルミニウム又はアルキル亜鉛の場合、酸化アルミニウム又は酸化亜鉛の金属酸化物被膜になればよく、例えば、200℃~1000℃であることができ、200℃~500℃であることが好ましい。
【0060】
なお、本発明においては、被膜形成液の乾燥と塗膜の焼成とを連続的に1工程で行ってもよく、工程(2)が乾燥工程(3)を含んでいてもよい。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
透過型電子顕微鏡(TEM)観察には日本電子製JEM-2010を使用した。加速電圧200kVで高分解能観察を行った。金属水素間発熱材の粒子を日本電子製のイオンスライサーEM-09100ISを用いて、薄切片化し粒子断面TEM画像を取得した。断面画像により膜厚を実測した。
【0063】
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
図1のSEM画像は日立製作所製S-5500を用い、加速電圧20kVで観察を行った。
図2のSEM画像はカールツアイス社製URTRA55を用い、加速電圧1kVで観察を行った。
【0064】
(3)平均開口径の求め方
開口径は、日立製作所製S-5500(加速電圧20kV)で観察したSEM画像において、画像解析ソフト(MacView)を用いて貫通部を選択し、選択した部分と同一の面積を持つ円の直径(Heywood径)を算出することにより求る。平均開口径は、所定面積(6.3μm×4.7μm=29.61μm2)中の選択されたすべての貫通部の開口のHeywood径を平均することで算出する。
【0065】
(4)平均円形度の求め方
円形度は、日立製作所製S-5500(加速電圧20kV)で観察したSEM画像において、画像解析ソフト(MacView)を用いて貫通部を選択し、選択した部分の面積及び周囲長から(式1)を用いて求る。
【0066】
【数1】
【0067】
平均円形度は、所定面積(29.61μm2)中の選択されたすべての貫通部の円形度を平均することで算出できる。
【0068】
(5)貫通孔の開口率の求め方
日立製作所製S-5500(加速電圧20kV)で観察した粒子表面のSEM画像の所定面積(6.3μm×4.7μm29.61μm2)中の開口部を人的に選択し、画像解析ソフトMacViewにより開口と同一の面積を持つ円の直径であるHeywood径を算出する。次にHeywood径から算出された開口部の面積の合計をSEM画像の全体の面積29.1μm2で割ることにより開口率(開口部面積/被膜表面積×100)を算出する。
【0069】
[実施例1]
(金属酸化物被膜形成液の作製)
N-メチル-ピロリドン(NMP)20gにトリエチルアルミニウム(TEAL)9gを加え、十分攪拌した。その後、25℃で20質量%の水を含むNMP溶媒7gを50分間かけて滴下した(水:TEAL=1当量)。25℃の温度条件下、5時間攪拌を続けることにより熟成反応を行い、トリエチルアルミニウム(TEAL)の部分加水分解物のNMP溶液(EAO/NMP)を得た。
【0070】
(水素吸放出性金属粒子の作製)
ジルコニアビーズ(東ソー社製:TZ-B30:粒径30μm)に、AlとNiがモル比(Al/Ni)で3.65/1になるようにスパッタリングを行い、厚さが150nmのシェル部を有するコア-シェル構造の水素吸放出性金属粒子を得た。
【0071】
(複合粒子の作製)
窒素気流下、9.9gの水素吸放出性金属粒子に、NMPを5.7g加え、スラリーを調製した。このスラリーに前記EAO/NMP溶液を0.71g(Al濃度4.95wt%)加え、攪拌した。次に、エバポレーターを用いて溶媒を留去し乾燥させた後、大気中でるつぼに移し、500℃で1時間焼成して、本発明の複合粒子を得た。この複合粒子の断面を観察したTEM画像により金属酸化物被膜の膜厚は80nmであった。
【0072】
前記複合粒子表面を200,000倍で測定したSEM像を図1に示す。
図1(A)中、円で囲んだ部分の黒点が貫通孔である。
図1に示すSEM像より画像解析ソフトMacViewを用いて開口径、平均円形度、開口率を求めた。金属酸化物被膜の表面の貫通孔開口部は、開口径が1.6~7.8nm(平均開口径4nm)であり、平均円形度が0.65であり、開口率は0.22%であった。
この複合粒子は、水素吸放出反応による発熱が確認された。
【0073】
前記複合粒子を1000℃まで加熱し、融着の有無を確認した。
加熱後のSEM像を図2に示す。参考例としてアルミニウム粉の加熱前後のSEM像を図3に示す。
【0074】
図2より、本発明の複合粒子は、1000℃の熱履歴によっても粒子の変形や粒子同士の融着が生じていないことが確認された。これに対し、図3よりアルミニウム粉は、1000℃の熱履歴により溶融して球形を維持できておらず、粒子同士が融着して全体が一体化していることがわかる。
【0075】
(実施例2)
窒素気流下、10.0gの水素吸放出性金属粒子に、NMPを14.32g加え、スラリーを調製した。このスラリーに実施例1と同様のEAO/NMP溶液を1.77g(Al濃度4.95wt%)加え、攪拌した以外は実施例1と同様にし、金属酸化物被膜の膜厚が200nmの本発明の複合粒子を得た。この複合粒子は、水素吸放出反応による発熱が確認された。さらに1000℃の熱履歴によっても粒子の変形や粒子同士の融着が生じていないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は水素吸放出性金属粒子に関連する分野に有用である。
図1
図2
図3