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特開2022-78835電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078835
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/10 20060101AFI20220518BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B07C5/10
B09B5/00 M ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189777
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】河野 弘
【テーマコード(参考)】
3F079
4D004
【Fターム(参考)】
3F079AD06
3F079CA18
3F079CA20
3F079CA23
3F079CA26
3F079CA32
3F079CB04
3F079CB09
3F079CB25
3F079CB29
3F079CB35
3F079DA01
4D004AA24
4D004AB05
4D004AB06
4D004AB08
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA09
4D004CA50
4D004CB46
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA16
(57)【要約】
【課題】電子部品屑の中から、複数の部品種を含む混合屑を適切に判定することが可能な電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法を提供する。
【解決手段】異なる形状を有する複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別し、各電子部品屑の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別工程と、各電子部品屑の特徴を少なくとも2以上解析し、特徴解析情報を得る特徴解析工程と、位置形状識別情報及び特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑を予め定められた部品種毎に分類する分類工程とを含む電子部品屑の分類方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる形状を有する複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別し、各電子部品屑の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別工程と、
各電子部品屑の特徴を少なくとも2以上解析し、特徴解析情報を得る特徴解析工程と、
前記位置形状識別情報及び前記特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑を予め定められた部品種毎に分類する分類工程と
を含む電子部品屑の分類方法。
【請求項2】
前記位置形状識別工程が、
撮像エリア内の前記複数の電子部品屑に対して領域検出用光を照射して、領域検出用データを取得し、前記領域検出用データを用いて、各電子部品屑の位置情報と形状情報を含む位置形状識別情報を作製することを含む請求項1に記載の電子部品屑の分類方法。
【請求項3】
前記特徴解析工程が、マルチスペクトル撮像手段を用いて、各電子部品屑に対して2以上のスペクトル情報を得ることを含む請求項1又は2に記載の電子部品屑の分類方法。
【請求項4】
前記特徴解析工程が、前記電子部品屑が有する特定の色彩と、前記電子部品屑の全面積に対して前記特定の色彩が占める面積の比を解析することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品屑の分類方法。
【請求項5】
前記異なる形状を有する複数の電子部品屑が、磁力選別機、色彩選別機、金属選別機、赤外線センサを含む光学式選別機、プラスチック選別機のいずれかを用いて選別処理を行った後の電子部品屑を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品屑の分類方法。
【請求項6】
異なる形状を有する複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別し、各電子部品屑の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別工程と、
各電子部品屑の特徴を少なくとも2以上解析し、前記位置形状識別情報に関連付けた特徴解析情報を得る特徴解析工程と、
前記位置形状識別情報及び前記特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑を予め定められた部品種毎に分類する分類工程と、
前記分類工程の分類結果及び前記位置形状識別情報に基づいて、前記複数の電子部品屑の中から抽出すべき電子部品屑を抽出する抽出工程と
を含む電子部品屑の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法に関し、例えば、使用済み電子・電気機器のリサイクル処理工程に利用可能な電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護の観点から、廃家電製品・PC、携帯電話等の電子部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきており、その効率的な回収方法が検討され、提案されている。
【0003】
例えば、特開平9-78151号公報(特許文献1)では、電子部品屑等の有価金属を含有するスクラップ類を銅鉱石溶錬用自溶炉へ装入し、有価金属を炉内に滞留するマットへ回収させる工程を含む有価金属のリサイクル方法が記載されている。
【0004】
特開2018-123380号公報(特許文献2)では、アルミニウムを含むリサイクル原料から有価金属を回収する方法として、リサイクル原料を銅製錬工程の溶融炉へ装入し、アルミニウムを酸化させて溶融スラグ層の成分にすることで系外に除去し、有価金属をメタル層やマット層に溶け込ませ、溶け込んだ有価金属を回収するリサイクル原料の処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-78151号公報
【特許文献2】特開2018-123380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品屑の処理は、破砕によって、回収に適した複数の部品種、例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサ、ICチップ、その他の部品種にうまく分離されていることが理想的である。現在多くの選別処理においては、破砕物が有価物の回収に適した状態となっていることを前提として分類し、処理されている。例えば、電子部品屑の処理では、有価金属を比較的多く含む基板を適切に回収することが目的の一つとなることがある。
【0007】
しかしながら、現状では、コンデンサ、ICチップ等の部品に付着した基板を含む部品屑、プラスチックに付着した基板を含む部品屑などの、分類すべき部品屑が複数種含まれた混合屑が存在する。このような混合屑の場合は、これまでの選別方法では選別が難しい。例えば、メタルソータを用いた選別においてプラスチックを比較的多く含む基板は、メタルソータの検知感度等によって、その基板に回収対象となる貴金属が多く含まれていたとしても、相対的にはプラスチックとして選別されることがある。また、基板が付着したコンデンサも、選別機の検出感度によっては、コンデンサとして判定されることにより、基板として回収されず、基板の回収効率が落ちることとなる。このように、電子部品屑に含まれる有価金属の含有比率は原料によっても異なるため、混合屑に対しては、従来の選別機の検知感度に依存した選別方法では、効率的な選別が行えていないのが現状である。
【0008】
上記課題を鑑み、本開示は、電子部品屑の中から、複数の部品種を含む混合屑を適切に判定することが可能な電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、電子部品屑は、プラスチック、金属等の2種類以上の部品が混在する上、金属の中でも有価金属として回収する金属と回収しない金属があるなどの複雑な事情を含むことから、回収すべき電子部品屑に対して2種類以上の部品屑の特徴を検出することが必要であると考えた。そして、本発明者らは、識別手段により複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別した後、位置及び形状が識別された各電子部品屑に対して、各電子部品屑が備える2以上の特徴を解析し、同一形状及び同一位置の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を利用して部品屑の分類を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0010】
上記の知見に基づいて完成した本発明の実施の形態は一側面において、異なる形状を有する複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別し、各電子部品屑の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別工程と、各電子部品屑の特徴を少なくとも2以上解析し、特徴解析情報を得る特徴解析工程と、位置形状識別情報及び特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑を予め定められた部品種毎に分類する分類工程とを含む電子部品屑の分類方法である。
【0011】
本発明の実施の形態は別の一側面において、異なる形状を有する複数の電子部品屑の中から各電子部品屑の位置及び形状を識別し、各電子部品屑の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別工程と、各電子部品屑の特徴を少なくとも2以上解析し、位置形状識別情報に関連付けた特徴解析情報を得る特徴解析工程と、位置形状識別情報及び特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑を予め定められた部品種毎に分類する分類工程と、分類工程の分類結果及び位置形状識別情報に基づいて、複数の電子部品屑の中から抽出すべき電子部品屑を抽出する抽出工程とを含む電子部品屑の処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電子部品屑の中から、複数の部品種を含む混合屑を適切に判定することが可能な電子部品屑の分類方法及び電子部品屑の処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る選別システムの一例を表す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る画像解析手段の一例を示す構成図である。
図3】本発明の実施の形態に係る画像解析処理の一例を示すフロー図である。
図4】領域検出用データの一例を示す写真である。
図5】マルチスペクトル撮像データの一例を表す写真である。
図6図4の領域検出用データを二値化処理したデータに検査エリアを割り当てた場合の例を示す写真である。
図7】従来のカラーカメラと本発明の実施の形態に係るマルチスペクトル照明を備えるカメラを撮像手段として使用した場合の認識精度の比較結果を表す表である。
図8】本発明の実施の形態に係るピッキング装置の一例を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態に係るピッキング装置が備えるロボットハンドの斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るピッキング装置が備えるロボットハンドの変形例に係る斜視図である。
図11】本発明の実施の形態に係る電子部品屑の処理方法の一例を表すフロー図である。
図12】電子部品屑の単体屑(Al屑)の例を示す写真である。
図13】電子部品屑の単体屑(Fe屑)の例を示す写真である。
図14】電子部品屑の混合屑(Al屑)の例を示す写真である。
図15】電子部品屑の混合屑(Fe屑)の例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0015】
(選別システム)
本発明の実施の形態に係る選別システム100は、図1に示すように、電子部品屑5を搬送する搬送面30を備える搬送部3と、搬送面30上に搬送された電子部品屑5を画像認識する画像認識部2と、電子部品屑5を対象物としてピッキングロボット10を用いて搬送元から搬送先へと搬送する選別部1とを備える。
【0016】
電子部品屑5は、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑を意味し、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。電子部品屑5を得るための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0017】
破砕方法としては、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。以下に限定されるものではないが、本実施形態における電子部品屑5は、典型的には、粒度10mm以上100mm以下、より典型的には15mm以上50mm以下に破砕された屑を原料として利用することが好ましい。
【0018】
電子部品屑5としては、磁力選別機、色彩選別機、金属選別機、赤外線センサを含む光学式選別機、プラスチック選別機のいずれかを用いて選別処理を行った後の電子部品屑5を好適に採用することができる。
【0019】
特に、電子部品屑5には、後述する製錬工程での回収に適した製錬原料となる部品屑(例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサ、ICチップ等)又は系外原料となる部品屑(ヒートシンク、筐体、鉄(Fe)屑、アルミ(Al)屑、ステンレス(SUS)屑、合成樹脂類等)が、単体状態(即ち、一の部品屑に対する主要部品の含有比率が重量比で90%以上をいう)で存在する単体屑と、これら複数の部品屑が混在する混合屑が含まれる。
【0020】
単体屑としては、以下に限定されるものではないが例えば、図12(a)に示すような、銀白色を呈するヒートシンク又は筐体を含むAl屑、図12(b)に示すような、黒色を呈するヒートシンク又は筐体を含むAl屑、図12(c)に示すような、円筒形状を有し、黒色又は青色を呈するコンデンサ、図13(a)で示すような黒色又は灰色を呈する鉄芯を含むFe屑、図13(b)に示すような銀色を呈するネジ、ばね類が含まれる。
【0021】
混合屑としては、図14(a)に示すような、IC付きヒートシンク、図14(b)に示すような、基板付きコンデンサ、図14(c)に示すような、銅線付きアルミ屑、図15(a)に示すような、銅コイル付き鉄芯、図15(b)に示すような基板付き鉄屑又は鉄芯、図5(c)に示すようなリード線付き基板等が含まれる。図12(a)~図13(b)に示すような単体屑は、選別機の選別精度の調整を適切に行うことによりある程度選別を適切に行うことができるが、図14(a)~図15(c)に示すような混合屑は、製錬原料と系外原料とが混在しているため適切な選別が困難な場合がある。
【0022】
電子部品屑5は、搬送面30上を搬送元から搬送方向に沿って搬送され、画像認識部2が備える画像解析手段20が、画像解析処理を行う。画像解析手段20は、図2に示すように、搬送面30上に設定された撮像エリア内の電子部品屑5の画像を撮像する撮像手段21と、撮像手段21の各種動作を制御する制御手段200と、制御手段200の動作に必要な情報を記憶する記憶装置210と、制御手段200に必要な情報を入出力可能な入力手段120及び出力手段130とを備えることができる。
【0023】
撮像手段21は、撮像エリア内の複数の電子部品屑5に対して異なる波長の光(マルチスペクトル光)を照射することにより、電子部品屑5に対して2以上のスペクトル情報を得るマルチスペクトル照明部(不図示)と、異なる波長の光で照射された撮像エリア内の電子部品屑5を撮像するマルチスペクトル撮像部(マルチカメラ部:不図示)とを備える。撮像制御手段201は、マルチスペクトル撮像部が撮像したマルチスペクトル撮像データを抽出し、マルチスペクトル撮像データ記憶手段211に記憶させる。
【0024】
画像認識部2には、撮像エリア内の電子部品屑5に対して領域検出用光を照射して、領域検出用データを取得する領域検出部23を備えていてもよい。領域検出とは、画像認識部2の撮像エリア内に存在する電子部品屑5の領域(存在エリア)を画像認識処理により検出することを含み、これにより対象物の輪郭が明確に認識可能となる。具体的には、電子部品屑5を含む撮像エリアの画像である領域検出用データを二値化することで得られ、これにより、撮像エリア内に存在する電子部品屑5の位置、個数、輪郭(形状)及び面積が明確になる。例えば、選別部1における任意の電子部品屑5の位置が、画像認識部2で得られる領域検出用データ内の特定の電子部品屑5の位置と一致すれば、これらが同一物であるとの判別ができる。
【0025】
領域検出部23の具体的構成は特に限定されないが、例えば、撮像エリア内の物体に対して、可視光、赤外光又は紫外光等の領域検出用光を照射する光源と、領域検出用光で照らされた撮像エリア内の物体を検出する検出器等を備えることができる。領域検出用データは、領域検出用データ記憶手段212に記憶される。なお、領域検出用データを、撮像手段21が備えるマルチスペクトル照明部及びマルチスペクトル撮像部によって領域検出部23の代わりに作製できる場合には、領域検出部23を省略してもよい。
【0026】
制御手段200は、例えば、撮像手段21及び領域検出部23を制御する撮像制御手段201と、異なる形状を有する複数の電子部品屑5の中から各電子部品屑5の位置及び形状を識別し、各電子部品屑5の位置情報と形状情報とを含む位置形状識別情報を得る位置形状識別手段202と、各電子部品屑5の特徴を少なくとも2以上解析し、特徴解析情報を得る特徴解析手段203と、位置形状識別情報及び特徴解析情報に基づいて、同一形状で同一位置にある一の電子部品屑5に対して関連付けられた2以上の特徴を用いて、各電子部品屑5を予め定められた部品種毎に分類する分類手段204と、各電子部品屑5に対して識別情報を作製する識別情報作製手段205と、移動追従手段207とを備える。
【0027】
記憶装置210は、電子部品屑5に対してマルチスペクトル撮像データを記憶するマルチスペクトル撮像データ記憶手段211と、領域検出用データを記憶する領域検出用データ記憶手段212と、画像解析手段20が画像解析対象とする電子部品屑5が備える色彩に基づく色特性情報を記憶する色特性情報記憶手段213と、分類情報記憶手段214と、電子部品屑5の特徴に基づいて、各部品屑の識別情報を作製する識別情報記憶手段215とを備える。
【0028】
制御手段200は、ネットワーク22を介してサーバ25又は他の選別システム24に接続され、図2の画像解析手段20が解析する電子部品屑5の画像解析結果を相互に共有できるように構成されてもよい。
【0029】
画像解析手段20は、例えば図3に示すような手順に沿って画像解析処理を進めることができる。例えば、図3のステップS100に示すように、撮像制御手段201が領域検出部23を制御して、撮像エリア内に搬送された電子部品屑5に、領域検出用光を照射し、領域検出用光で照らされた撮像エリア内の物体を検出し、撮像エリア内に搬送された電子部品屑5の領域検出用データを撮像する(図4参照)。領域検出用データは領域検出用データ記憶手段212に記憶される。
【0030】
ステップS101において、撮像手段21が備えるマルチスペクトル照明部が、異なる波長のマルチスペクトル照明光を撮像エリア内の電子部品屑5に照射し、マルチスペクトル撮像部が、照明色の異なる複数枚のマルチスペクトル撮像データを得る(図5(a)~図5(h)参照)。ここでは、例えば、白色、紫外線(UV)、青色、緑色、橙色、赤色、遠赤外色(FR)、赤外(IR)の8色の照明光のマルチスペクトル撮像データを得ることができる。マルチスペクトル撮像データは、マルチスペクトル撮像データ記憶手段211に記憶される。
【0031】
ステップS102において、図2の位置形状識別手段202が、領域検出用データに基づいて、撮像エリア内に存在する電子部品屑5の位置及び形状を検出する。例えば、位置形状識別手段202が、図4の撮像データを二値化することにより、電子部品屑5の外径と背景との濃淡を明確化し(図5参照)、濃淡を明確化した画像に基づいて、白い背景上に浮き上がる黒い図形を、それぞれ検出すべき電子部品屑5として抽出する。例えば、図6の例では、白い背景状に3つの塊が存在する。よって、位置形状識別手段202は、撮像データ内の電子部品屑5が3個検出する。領域検出用データを用いて撮像エリア内に存在する電子部品屑5の個数を検出することで、電子部品屑5の位置及び形状(面積(ピクセル数))をより適切に検出することができる。
【0032】
ステップS103において、特徴解析手段203は、検査エリア毎に電子部品屑5がそれぞれ1個のみ含まれるように、第1~第3の検査エリア51、52、53を設定する。例えば、図6の例では、特徴解析手段203は、第1、第2及び第3の検査エリア51、52、53を設定することができる。特徴解析手段203は、更に、各第1~第3の検査エリア51~53内の電子部品屑5に対し、マルチスペクトル撮像データと、色特性情報記憶手段213に予め登録された電子部品屑5に含まれる複数の部品種を識別するための識別情報とに基づいて、各電子部品屑5の特徴を少なくとも2以上解析し、特徴解析情報を得る。
【0033】
電子部品屑5の特徴を解析するための特徴解析情報には、色特性情報を含むことができ、色特性情報としては、抽出色情報と、抽出色面積情報を少なくとも含むことができる。抽出色情報には、製錬原料又は系外原料が備える典型的な色彩の色相、彩度、明度等の各値の設定値を含む情報が含まれる。抽出色面積情報には、検査エリア内の電子部品屑5中にユーザが予め設定した「抽出色」が含まれる場合に、その電子部品屑5を製錬原料又は系外原料と判断するための面積の閾値(面積率の設定値)の情報を含む。特徴解析手段203は、電子部品屑が有する特定の色彩と、電子部品屑5の全面積に対して特定の色彩が占める面積の比を解析し、製錬原料又は系外原料を判断するための閾値と比較することで、製錬原料又は系外原料の特徴を解析することができる。なお、製錬原料又は系外原料を判断するための面積の閾値の情報は、予め入力することができる。
【0034】
色特性情報としては、回収対象とされる製錬原料に含まれる有価物を含有する材料、例えば、線屑(銅色、金色)、真鍮等の金属屑(銅色、金色)、IC又はLSI(黒色、金色、緑色)、有価金属を含有する基板(緑色、茶色、黒、白)、銅線を含むコネクタの挿し口(白)、有価金属を一定量以上含有するコンデンサ及びヒートシンク(銀、白、黒)等が含まれる。系外原料としては、鉄、アルミニウム又はステンレス等の製錬工程での回収に適さない金属屑(光沢を有する銀色)、プラスチック(白、黒、茶)、有価金属を一定量以上含有しないコンデンサ及びヒートシンク等(銀、白、黒)が含まれる。
【0035】
これら製錬原料と系外原料の誤認識をなるべく減らし、より認識精度を上げるための抽出色情報としては、製錬原料及び系外原料が備える白色、緑色、黒色、金色、銅色を、少なくとも選別対象物の抽出判断に使用される「抽出色」の情報として含むことが好ましい。更に好ましい態様では、白色、緑色、黒色、金色、銅色、茶色、銀色を、少なくとも選別対象物の抽出判断に使用される「抽出色」の情報として含むことが好ましい。
【0036】
各種抽出色の中でも、黒色は、製錬原料と系外原料との両方に含まれ得る色であり、誤認識が特に生じやすい抽出色である。そのため、本実施形態において、特徴解析情報として利用される抽出色面積情報には、黒色の面積の閾値を2値以上備えることが好ましい。例えば、第1の閾値と、第1の閾値よりも大きい第2の閾値を設定した場合、黒色を有する電子部品屑5のうち、第1の閾値以下のものは、電子部品屑5の凹凸でできる影の影響を受けただけものと考えられるから、製錬原料として摘出すべき「選別対象物」と設定することができる。第1~第2の閾値の間にあるものは、ヒートシンクに付随するレギュレータ(IC)を検知しているものであると考えられるため、系外原料として搬送面30上に残すべき「選別除外物」と設定する。第2の閾値以上のものは、黒色塗装された金属屑であるものと考えられるから製錬原料として「選別対象物」と設定することができる。このように、抽出色面積情報として、黒色の面積率の閾値を2以上備えることにより、電子部品屑5の中から製錬原料と系外原料とを選別する際の誤認識を低減し、認識精度を高めることができる。
【0037】
例えば、選別対象物(ピックアップ(摘出)して搬送面30から除去するもの)として基板屑等の「製錬原料」を選別する場合、分類手段204は、「製錬原料」として予め設定された、抽出色情報及び抽出色面積情報とに基づいて、検査エリア内の電子部品屑5が「製錬原料」の条件を満たすか否か、マルチスペクトル撮像データと照合することにより分類する。検査エリア内の電子部品屑5が「製錬原料」の条件を満たす場合には、その電子部品屑5を、後述の選別処理で取り除くべき「製錬原料」であると分類する。
【0038】
ステップS104として、分類手段204は、各検査エリア内の電子部品屑5に対し、マルチスペクトル撮像データと、色特性情報記憶手段213に予め登録された製錬原料と系外原料とを識別するための色特性情報とに基づいて、選別しない対象物(選別除外物:製錬原料又は系外原料のいずれか)を決定する。
【0039】
ステップS105において、選別対象物及び選別除外物の設定結果に基づいて、識別情報作製手段205が、識別情報を作製する。識別情報には、各検査エリア内の電子部品屑5が選別対象物であるか選別非対象物であるかの情報と、電子部品屑5の位置、色彩、面積、対象物の長径及び短径の向き、重心等の情報が含まれる。識別情報は識別情報記憶手段215に記憶される。
【0040】
本発明の実施の形態によれば、撮像エリア内の電子部品屑5を撮像してマルチスペクトル撮像データを得るためのマルチスペクトル照明を備えた撮像手段21及び、マルチスペクトル撮像データと予め登録された製錬原料と系外原料の色特性情報とに基づいて、製錬原料又は系外原料を識別し、製錬原料又は系外原料の位置情報を含む識別情報を得る画像解析手段20とを備えることにより、従来のカラーカメラを用いた撮像手段を備える場合に比べて電子部品屑5の認識精度を向上できる。
【0041】
例えば、系外原料とされる電子部品屑5の中でも、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属屑は、金属光沢をもつことから、従来のカラーカメラではハレーションにより白色に見え、銀色の認識面積が小さくなり、対象物の認識率が低下する場合がある。一方で、誤認識率を低減しようとして抽出色を白銀色にまで拡大すると、製錬原料の基板屑に含まれる白銀色を誤検知してしまう。
【0042】
本実施形態によれば、マルチスペクトル照明部を備える撮像手段21により、ハレーションの影響を抑えた複数のマルチスペクトル撮像データが得られるため、このマルチスペクトル撮像データを用いて、その中に含まれる電子部品屑5と予め登録された抽出色の情報を含む色特性情報とを対比することにより、ハレーションの影響を小さくでき、電子部品屑5が有する色彩の誤認識を抑えることができる。
【0043】
また、従来のカラーカメラでは、凹凸のある金属物は光の反射によって暗くなる部分が広い範囲で黒色に見え、メタルが呈する銀色の認識面積が小さくなるため、認識率が低下する場合がある。本実施形態によれば、マルチスペクトル照明部を備える撮像手段21により、微妙な色の違いを認識できるため、影の影響を抑えてメタルが呈する銀色の認識面積をより現実に近いものにすることができる。
【0044】
また、従来のカラーカメラでは、カラーフィルタを通すため、ステンレスのような黒銀色はメタルのスペクトル強度が下がって黒色に見え、銀色の認識面積が小さくなるため、認識率が低下する場合がある。本実施形態によれば、マルチスペクトル照明部を備える撮像手段21により、ステンレスのような黒銀色をしたメタルも認識可能となる。また、黒く塗装された金属屑は、赤外領域の波長のマルチスペクトル撮像データを用いて評価することにより、塗装の影響を無視した識別が行える。
【0045】
図7は、図1の画像認識部2で画像解析させる電子部品屑5として、金属屑を2種類とプラスチックを2種類、処理した場合に、従来のカラーカメラを撮像手段21として用いた場合と、マルチスペクトル照明光を照射するカメラを撮像手段21として用いた場合の比較結果の例を表す。
【0046】
従来の照明光の照射により白色の反射光を発する金属屑(1)の場合、カラーカメラでは、系外原料である白色のプラスチックと混同されて誤認識が生じる。一方、マルチスペクトル照明光を照射する撮像手段21を使用した場合は、製錬原料である基板屑として認識させることができる。同様に、照明光の照射により緑色の反射光を発する金属屑(2)の場合、カラーカメラでは、系外原料である緑色のプラスチック基板と混同されて誤認識が生じる。一方、マルチスペクトル照明光を照射する撮像手段21を使用した場合は、製錬原料である基板屑として認識させることができる。
【0047】
外観が非常に汚れたプラスチック(1)の場合、カラーカメラでは、製錬原料である茶色の基板屑と混同されて誤認識が生じる。一方、マルチスペクトル照明光を照射する撮像手段21を使用した場合は、系外原料であるプラスチックとして認識させることができる。赤色プラスチック(2)の場合、カラーカメラでは、製錬原料である銅線屑と混同されて誤認識が生じる。一方、マルチスペクトル照明光を照射する撮像手段21を使用した場合は、系外原料であるプラスチックとして認識させることができる。
【0048】
図2に示すように、制御手段200は、移動追従手段207を有していても良い。搬送部3を連続的に動かして、電子部品屑5を搬送面30上で連続的に移動させると、最初と最後の撮像データ間で位置のズレが生じる場合がある。本実施形態では、搬送方向に沿って連続的に移動する電子部品屑5を画像解析により識別する場合には、画像解析により識別する工程として、領域検出用光及びマルチスペクトル照明光を撮像する直前及び直後に、撮像エリア内の電子部品屑5に基準光を照射する。基準光としてはマルチスペクトル照明の白色光を利用することができる。この基準光で照射された撮像データに基づいて、電子部品屑5の移動による撮像データの位置ずれを補正することで、搬送部3を連続運転することができるため、処理効率が向上する。
【0049】
画像認識部2で画像解析処理が行われた後の電子部品屑5は図1に示す選別部1へ送られる。選別部1は、搬送面30上の対象物を選別する装置を有していれば特に限定されない。例えば、エア噴射、電動パドル、吸着機構、ロボットハンド等を利用した選別装置が利用可能である。一実施態様においては、選別部1は、搬送面30上の対象物を、搬送部3から搬送部4へと搬送するピッキングロボット10と、ピッキングロボット10に接続され、電子部品屑5の中から製錬原料又は系外原料を対象物として把持するロボットハンド11とを備える。ピッキングロボット10は、画像認識部2で作製された識別情報に基づいて、対象物を摘出する。
【0050】
ピッキングロボット10は、対象物を掴んで搬送する機能を有する産業用ロボットであれば特に限定されず、種々の方式の産業用ロボットが利用できる。例えば、ピッキングロボット10としては、直行式、多関節式、パラレルリンク式等の種々の方式を備えたロボットが利用可能である。直行式ロボットは、2~3のスライド軸で構成されるシンプルなロボットである。多関節ロボットは、垂直式又は水平式があり、垂直式は、台座の回転とアームの運動によって可動域が広く、自由度の高い3次元的な動きが可能である。水平式ロボットは、関節の回転軸がすべて垂直にそろっており、垂直多関節ロボットよりもシンプルな構造を有する。パラレルリンク式ロボットは、関節を並列に配置したパラレルリンク構造を有する産業用ロボットである。
【0051】
中でもパラレルリンク式ロボットは、パラレルリンクメカニズムにより、ターゲットの位置に最短距離で移動するため、抽出対象とする対象物の位置に高速・高精度で移動し、物質を把持し、高速で所定の位置へ送り出すことができる点で、ピッキングロボット10として利用可能な種々の産業用ロボットの中でも特に好適に利用できる。
【0052】
以下の態様に限定されるものではないが、ピッキングロボット10は、図8に示すように、搬送部3の搬送面30を横切るように、典型的には搬送方向に対して垂直に交わる方向に搬送方向を有する搬送部4の搬送先に向けて搬送部3から対象物を摘出することができる。搬送部4はコンベア等で構成することができる。
【0053】
このように、搬送部3及びピッキングロボット10がお互い近接して配置され、ピッキングロボット10が、対象物を搬送部3の搬送方向を横切る方向に排出するように構成されることで、対象物を電子部品屑5中から短時間で精度よく取り除いて搬送することができる。
【0054】
(ロボットハンド)
ピッキングロボット10が備えるロボットハンド11は、図9(a)に示すように、中央部に、対象物を吸引するための吸引パッド13a及び吸引パッド13aに接続された真空発生器13bを備える吸引部13と、吸引パッド13aに吸引される対象物を挟むための挟持部14(第1~第4のアーム部14a~14d)と、吸引部13及び挟持部14を固定するための固定部12とを備える。固定部12は一端がピッキングロボット10に固定され、他端に挟持部14が固定される。吸引パッド13aは、ゴム、シリコン等の弾性部材で形成されており、下方(搬送面30側)へ突出している。
【0055】
挟持部14は、対象物を挟むことができる構成であれば特に制限はされない。挟持部14は、例えば、第1のアーム部14a、第2のアーム部14b、第3のアーム部14c及び第4のアーム部14dを備えることができる。これらの第1~第4のアーム部14a~14dの基端部分は固定部12内の駆動機構(不図示)にそれぞれ接続されている。
【0056】
図9(b)に示すように、第1のアーム部14a及び第2のアーム部14bは、駆動機構からの動力の伝達を受けて、吸引パッド13aの中心軸Xに近づく方向V又は遠ざかる方向Wに互いに連動して開閉可能になっている。図9(b)の紙面奥方向に位置する第3のアーム部14c及び第4のアーム部14dも、第1~第4のアーム部14a~14dに接続されたエアチャック(不図示)からの動力の伝達を受けて、吸引パッド13aの中心軸Xに近づく方向V又は遠ざかる方向Wにそれぞれ連動して開閉可能になっている。第1~第4のアーム部14a~14dはそれぞれ同一のタイミングで開閉でき、これにより、吸引パッド13aの先端部に吸引された対象物を挟持又は開放する。
【0057】
第1~第4のアーム部14a~14dの先端部にはそれぞれ、吸引パッド13aが配置された中央部へ突出する爪部141a~141dを備えることが好ましい。第1~第4のアーム部14a~14dがそれぞれ爪部141a~141dを備えることにより、対象物の落下を抑制しながらより的確に対象物を把持できる。
【0058】
爪部141a~141dは、吸引パッド13a側に向かって先細り形状を有するように成形されていることが好ましい。これにより、爪部141a~141dが、対象物の底面と接触して、対象物を掬い上げやすくすることができる。
【0059】
図9(b)に示すように、爪部141a~141dの先端部(最下端部)は、吸引パッド13aの先端部よりも相対的に低い位置、即ち搬送面30により近い位置に配置されることが好ましい。これにより、爪部141a~141dが吸引パッド13aに吸引された対象物を、搬送面30から掬い上げて挟持しやすくできる。
【0060】
また、図10に示すように、第1のアーム部14aの爪部141aと第4のアーム部14dの爪部141dが連結され、第2のアーム部14bの爪部141bと第3のアーム部14cの爪部141cが連結されていてもよい。このように構成されることで、電子部品屑5中の基板等を含む長尺状の対象物をより適切に把持できる。
【0061】
また、対象物の形状に応じて爪部141a~141dの長さを変更することにより、より小さい対象物をより確実に把持することができる。第1~第4のアーム部14a~14dの開閉方向と平行な方向に沿った爪部141a~141dの長さL(図9(a)参照)は、本実施形態に係る電子部品屑5を処理する場合は5mm以上であることが好ましく、更には10mm以上、より更には15mm以上であることが好ましい。上限はロボットハンド11の寸法にもよるが、例えば40mm以下、更には30mm以下とすることができる。第1~第4のアーム部14a~14dの開閉方向と垂直な方向に沿った爪部141a~141dの長さD(図9(b)参照)は、本実施形態に係る電子部品屑5を処理する場合は5mm以上であることが好ましく、更には10mm以上、より更には20mm以上であることが好ましい。上限はロボットハンド11の寸法にもよるが、例えば40mm以下、更には30mm以下とすることができる。
【0062】
本発明の実施の形態に係るピッキングロボット10が備えるロボットハンド11によれば、対象物を吸引する吸引パッド13aと、吸引パッド13aに吸引された対象物を挟む第1~第4のアーム部14a~14dを備える挟持部14とを備え、対象物をまず吸引パッド13aで吸引した後に、第1~第4のアーム部14a~14dで対象物を把持する(図9(c)参照)。これにより、吸引パッド13aによる吸引力ではピッキングが困難な重量物に対しても、挟持部14で挟んで運ぶことができるため、種々の形状からなる電子部品屑5をより確実かつ適切に搬送することができる。
【0063】
特に、基板屑等は基板上にICや配線が敷設されており、重量が重く、吸引パッド13a又は第1~第4のアーム部14a~14dのいずれか一方による把持では、搬送中に落下が生じる場合がある。本発明の実施の形態に係るピッキング装置によれば、種々の原料が混在する電子部品屑5の中でも特に、比重が大きく種々のサイズが混在する基板屑のような屑をより確実に取り除くことができるため、目的とする対象物を、大量に且つ適切に選別することができる。
【0064】
第1~第4のアーム部14a~14dの開閉速度は搬送面30の搬送速度に応じて調整することができる。また、第1~第4のアーム部14a~14dによりピッキング処理対象とする対象物と隣接する別の対象物との間隔を5mm以上、更には10mm以上離すことが好ましい。これにより、第1~第4のアーム部14a~14dを用いて対象物をより適切に把持することができる。
【0065】
(電子部品屑の処理方法)
本発明の実施の形態に係る電子部品屑5の処理方法の一例を図11に示す。本発明の実施の形態に係る電子部品屑の処理方法は、電子部品屑5を少なくとも2段階の風力選別(S2、S4)により処理する工程と、メタルソータを用いた金属選別工程(S6)により基板屑を選別する工程を少なくとも含むことができる。
【0066】
本発明の実施の形態に係る処理方法によれば、物理選別の初期段階において、まず風力選別を2段階に分けて行う(S2、S4)ことにより、初期に磁力選別の処理を行う場合に比べて有価金属のロスを抑えることができ、より多くの有価金属を濃縮しながら、多量の電子部品屑5を一気に選別処理することができる。そして、2段階の風力選別の後、処理に時間を要するメタルソータを用いた選別処理(S6)を組み合わせることによって、電子部品屑5の処理量を増大しながら、製錬阻害物質を除去して、有価金属を効率的に回収することができる。
【0067】
一実施形態においては、本発明の実施の形態に係る電子部品屑5の処理方法は、電子部品屑5の中から塊状銅線屑を取り除く前選別工程(S1)と、前選別後の電子部品屑5を風力選別して粉状物及びフィルム状の屑を軽量物側に移行させて取り除く風力選別工程(S2)と、風力選別で得られる重量物を篩別し、線状(長尺状)銅線屑を取り除く篩別工程(S3)と、二段階目の風力選別工程(S4)と、線状銅線屑除去後の電子部品屑5から、カラーソータを用いて銅等の有価金属を含む基板屑を取り除く色彩選別工程(S5)と、色彩選別工程後の電子部品屑5の中からメタルソータを用いて銅等の有価金属を含む基板屑を更に取り除く金属選別工程(S6)を含むことができる。
【0068】
一段階目の風力選別工程(S2)と二段階目の風力選別工程(S4)との間に篩別工程(S3)を備えることにより、電子部品屑5に含まれる線屑を除去することができる。篩別工程では、スリット状の篩を有する篩別機を用いて処理することが好ましい。篩別工程(S3)においては、篩別により、線屑の他に粉状物も除去することができる。篩別後の粉状物及び銅線屑は、焼却前処理工程を経由して製錬工程に送ることで、部品屑中の有価金属をより効率的に回収できる。また、風力選別工程(S4)の後に色彩選別工程(S5)が実施されることにより、金属選別工程(S6)に送られる処理対象物の金属含有比率を下げることができるため、金属選別工程(S6)における選別工程をより高くすることができる。
【0069】
更に、二段階目の風力選別工程(S4)で得られる重量物の中には、銅製錬工程で処理すべき基板が一部混入する場合がある。よって、二段階目の風力選別工程(S4)で得られる重量物を、磁力選別、渦電流選別、カラーソータ、手選別、ロボット等の処理により更に分類することで、銅製錬工程で処理すべき基板を分離して製錬工程に送ることができるため、有価金属の回収効率が高まる。
【0070】
例えば、二段階目の風力選別工程(S4)で得られる重量物を、前選別工程(S7)を経て、磁力選別工程(S8)に送る。磁力選別工程(S8)では、重量物から鉄を含む原料を、製錬工程の系外原料として除去する。磁力選別工程(S8)後には渦電流選別工程(S9)が行われ、更に、前選別工程(S10)が行われ、アルミ、合成樹脂類(プラスチック)、SUSを含む屑等を除去し、残った基板屑を製錬工程へ送る。
【0071】
本発明の実施の形態に係る電子部品屑5の処理方法では、図1に示す選別システム100を、風力選別工程(S2、S4)の前後の前選別工程(S1、S7)、或いは、渦電流選別工程(S9)後の前選別工程(S10)に導入することにより、電子部品屑5の中から、製錬工程で処理可能な有価金属を含む製錬原料、或いは、貴金属を含まず、且つ、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、合成樹脂のいずれかを含む、系外原料を、効率良く迅速に処理することができる。これにより、手選別を適用する場合に比べて、電子部品屑5をより効率良く選別処理することが可能となり、より大量の電子部品屑5の機械的処理が可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る電子部品屑5の処理方法では、上記の前選別工程(S1、S7、S10)に限定されるものではなく、各選別処理に適宜組み合わせて利用することも可能である。例えば、電子部品屑5を各種選別工程(S3~S6、S8~S9)で処理する前又は後で適宜必要な時に、画像認識部2において画像認識を行い、図9(a)~図10に示すロボットハンド11を備える選別装置を用いて対象物を抽出する選別処理を行うこともまた好ましい。
【0073】
特に、前選別工程(S7)、磁力選別工程(S8)、渦電流選別工程(S9)、前選別工程(S10)で系外原料として選別される原料には、単体原料の他に、製錬原料と系外原料とが混在する混合屑が多く存在する。この複合屑に対して、本実施形態に係る画像認識処理を行い、図9(a)~図10に示すロボットハンド11を備える選別装置を用いて対象物を抽出する選別処理を実施することにより、従来、手作業で行っていた作業を機械化することができるため、選別処理を高速化することができるとともに、系外原料中の単体屑と製錬原料を含有する混合屑の中から混合屑又は単体屑を適切に判定することが可能となる。
【0074】
また、例えば、風力選別工程(S4)で選別される重量物中のAlを含む部品屑は、渦電流選別工程(S9)によりAl屑として系外原料側に選別されるが、このAl屑には、図12(a)~図12(c)に示すようなAlの単体屑だけでなく、図14(a)~図14(c)に示すようなAlを含む混合屑も含まれる。そのため、渦電流選別工程(S9)で選別されるAl屑に対して、本実施形態に係る選別手法を用いて部品屑の特徴を解析し、更に図9(a)~図10に示すロボットハンド11を備える選別装置を用いて対象物を抽出する選別処理を行うことにより、図12(a)~図12(c)に示すようなAlの単体屑と図14(a)~図14(c)に示すようなAlを含む混合屑とを選別することができる。そして、選別された混合屑を、有価物を含む製錬原料として製錬工程へ投入することにより、有価物の回収効率を向上できる。
【0075】
風力選別工程(S4)で選別される重量物中のFeを含む部品屑は、その後の磁力選別工程(S8)によって系外原料であるFe屑として選別される。ここで選別されるFe屑には、図13(a)及び図13(b)に示すようなFeを単体で含む単体鉄屑の他に、図15(a)~図(c)に示すようなFeに他の部品屑が付着した、銅コイル付き鉄芯、基板付き鉄屑又は鉄芯、あるいは、リード線付き基板等の混合鉄屑等が含まれる。そのため、磁力選別工程(S8)で処理されたFe屑について、本実施形態に係る処理方法を利用し、これらを部品の特性毎に判別することで、単体鉄屑と混合鉄屑とを含むFe屑の中から、所定の混合鉄屑を抽出することができる。混合鉄屑と判断されたものは、ピッキング等によって有価物側(製錬原料側)に仕分けすることで、有価物の回収効率を向上させることができる。
【0076】
(製錬工程)
本発明の実施の形態に係る電子部品屑5の処理方法は、各物理選別工程(S1~S10)でそれぞれ選別された有価金属を含む処理原料を製錬する製錬工程を更に有する。
【0077】
有価金属として銅を回収する場合は、溶錬炉を用いた製錬が行われる。製錬工程には、例えば、電子部品屑5を焼却する工程と、焼却物を破砕及び篩別する工程と、破砕及び篩別処理した処理物を銅製錬する工程とを備える。製錬工程の処理能力に応じて、電子部品屑5を焼却する工程は省略してもよい。
【0078】
製錬工程において、電子部品屑5を破砕及び篩別する工程は、電子部品屑5を製錬処理に好ましいサイズに成形する処理であれば任意の手法を選択できる。図11に示す物理選別工程が、製錬工程における焼却工程、破砕及び篩別する工程の前に行われることにより、有価金属をより効率的に回収しながら製錬阻害物質となる鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、合成樹脂のいずれかを含む原料を系外へ効率良く送ることができる。
【0079】
以下に制限されるものではないが、本実施形態に係る製錬工程としては、自溶炉法を用いた銅製錬工程が好適に利用できる。自溶炉法を用いた銅製錬工程としては、例えば、自溶炉のシャフトの天井部から銅精鉱と溶剤と電子部品屑5を装入する。装入された精鉱及び電子部品屑5が、自溶炉のシャフトにおいて溶融し、自溶炉のセットラーにおいて例えば50~68%の銅を含むマットとそのマットの上方に浮遊するスラグとに分離される。電子・電気機器部品中の銅、金、銀などの有価金属は、自溶炉内を滞留するマットへ吸収されることで、電子部品屑5中から有価金属を回収できる。
【0080】
銅製錬においては、銅を製造するとともに、金、銀などの貴金属をより多く回収するために、処理する原料として銅、金、銀など有価金属の含有量の多い電子部品屑5をできるだけ多く投入して処理することが重要である。一方、電子部品屑5には、銅製錬における製品、副製品の品質に影響を与える物質及び/又は銅製錬のプロセスに影響を与える製錬阻害物質が含有される。例えば、上記のようなSb、Ni等の元素を含有する物質の溶錬炉への投入量が多くなると、銅製錬で得られる電気銅の品質が低下する場合がある。
【0081】
また、銅製錬などの非鉄金属製錬工程では、精鉱の酸化によって発生する二酸化硫黄から硫酸を製造するが、二酸化硫黄に炭化水素が混入すると、産出される硫酸が着色する場合がある。炭化水素の混入源としては、例えばプラスチックなどの合成樹脂類などが挙げられるが、銅製錬へ持ち込まれる電子部品屑5の構成によっては、このような合成樹脂類が多く含まれる場合がある。合成樹脂類は、溶錬炉内での急激な燃焼、漏煙のほか局所加熱による設備劣化を生じさせる恐れもある。
【0082】
更に、Al、Feなどが溶錬炉内に一定以上の濃度で存在すると、例えば、銅製錬のプロセスでスラグ組成に変化を与え、有価金属のスラグへの損失、いわゆるスラグロスに影響する場合もある。また、Cl、Br、F等のハロゲン元素が溶錬炉へ投入される電子部品屑5中に多く含まれていると、銅製錬の排ガス処理設備の腐食や硫酸触媒の劣化を引き起こす場合がある。このような製錬阻害物質の混入の問題は、電子部品屑5の処理量が多くなるにつれて顕在化し、製錬工程に負担がかかるという問題が生じてきている。
【0083】
本発明の実施の形態に係る電子部品屑5の処理方法によれば、製錬工程の前に、図11に示すような電子部品屑5の物理選別工程を備える。これにより、製錬工程に持ち込まれる製錬阻害物質の割合を極力抑えるとともに、電子部品屑5の処理量を増やし、銅及び有価金属を含む電子部品屑5の割合を多くして銅及び有価金属を効率的に回収することが可能となる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0085】
1…選別部
2…画像認識部
3…搬送部
4…搬送部
5…電子部品屑
10…ピッキングロボット
11…ロボットハンド
12…固定部
13…吸引部
14…挟持部
13a…吸引パッド
13b…真空発生器
14a~14d…アーム部
20…画像解析手段
21…撮像手段
22…ネットワーク
23…領域検出部
24…選別システム
25…サーバ
30…搬送面
51、52、53…検査エリア
100…選別システム
120…入力手段
130…出力手段
141a~141d…爪部
200…制御手段
201…撮像制御手段
202…位置形状識別手段
203…特徴解析手段
204…分類手段
205…識別情報作製手段
207…移動追従手段
210…記憶装置
211…マルチスペクトル撮像データ記憶手段
212…領域検出用データ記憶手段
213…色特性情報記憶手段
214…分類情報記憶手段
215…識別情報記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15