(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079200
(43)【公開日】2022-05-26
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20220519BHJP
【FI】
H01L33/32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190238
(22)【出願日】2020-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA04
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA14
5F241CA22
5F241CA23
5F241CA40
5F241CA49
5F241CA57
5F241CA58
5F241CA65
5F241CB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性を向上しつつ、光取り出し効率を向上させることができる発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子1は、n型コンタクト層12と、n型コンタクト層上に設けられた中間層20とを含むn側半導体層10と、中間層上に設けられた活性層30と、活性層上に設けられたp側半導体層40とを備える。中間層は、第1層21と第2層22とからなる積層部23を少なくとも1つ含み、第1層は、n型不純物とAlとGaとを含むn型窒化物半導体層であり、第2層は、AlとGaとを含み、第1層よりもn型不純物濃度が低く、第1層の厚さよりも厚い窒化物半導体層である。第1層のAl組成比は、第2層のAl組成比よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型コンタクト層と、前記n型コンタクト層上に設けられた中間層とを含むn側半導体層と、
前記中間層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられたp側半導体層と、
を備え、
前記中間層は、第1層と第2層とからなる積層部を少なくとも1つ含み、
前記第1層は、n型不純物とAlとGaとを含むn型窒化物半導体層であり、
前記第2層は、AlとGaとを含み、前記第1層よりもn型不純物濃度が低く、前記第1層の厚さよりも厚い窒化物半導体層であり、
前記第1層のAl組成比は、前記第2層のAl組成比よりも高い発光素子。
【請求項2】
前記中間層は、複数の前記積層部を含む請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
複数の前記第1層のうち、前記活性層に最も近い位置にある前記第1層のAl組成比は、他の前記第1層のAl組成比よりも高い請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
複数の前記第1層のうち、前記活性層に最も近い位置にある前記第1層のn型不純物濃度は、他の前記第1層のn型不純物濃度よりも高い請求項2または3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記中間層は、前記活性層に最も近い位置にある前記第1層と、前記活性層との間に設けられ、前記活性層に最も近い位置にある前記第1層よりもn型不純物濃度が低く、AlとGaとを含む窒化物半導体層をさらに含む請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
複数の前記第2層のうち、前記活性層に最も近い位置にある前記第2層のn型不純物濃度は、他の前記第2層のn型不純物濃度よりも高い請求項2~5のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項7】
前記n型不純物はシリコンである請求項1~6のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2層の厚さは、前記第1層の厚さの10倍以上である請求項1~7のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項9】
前記第2層の厚さは、50nm以上100nm以下である請求項1~8のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1層は、Ala1Ga1-a1N(0<a1<1)からなり、
前記第2層は、Ala2Ga1-a2N(0<a2<1)からなり、
前記第1層のAl組成比a1及び前記第2層のAl組成比a2は、0.01以下である請求項1~9のいずれか1つに記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、複数の窒化物半導体からなる層を積層させた発光素子が開示されている。このような窒化物半導体を用いた発光素子において、信頼性の向上と光取り出し効率の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-144378号公報
【特許文献2】特開2001-77480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、信頼性を向上しつつ、光取り出し効率を向上させることができる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子は、n型コンタクト層と、前記n型コンタクト層上に設けられた中間層とを含むn側半導体層と、前記中間層上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられたp側半導体層と、を備え、前記中間層は、第1層と第2層とからなる積層部を少なくとも1つ含み、前記第1層は、n型不純物とAlとGaとを含むn型窒化物半導体層であり、前記第2層は、AlとGaとを含み、前記第1層よりもn型不純物濃度が低く、前記第1層の厚さよりも厚い窒化物半導体層であり、前記第1層のAl組成比は、前記第2層のAl組成比よりも高い。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、信頼性を向上しつつ、光取り出し効率を向上させることができる発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の発光素子の模式断面図である。
【
図2】発光素子の特性評価の結果を示すグラフである。
【
図3】発光素子の特性評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態の発光素子1の模式断面図である。
【0010】
発光素子1は、基板100と、基板100上に設けられたn側半導体層10と、n側半導体層10上に設けられた活性層30と、活性層30上に設けられたp側半導体層40と、n側半導体層10に接続されたn側電極52と、p側半導体層40に接続されたp側電極51とを含む。
【0011】
n側半導体層10、活性層30、およびp側半導体層40は窒化物半導体からなる層である。本明細書において「窒化物半導体」とは、例えば、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むものも「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0012】
基板100は、例えばサファイア基板である。その基板100上に、例えばMOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、n側半導体層10、活性層30、およびp側半導体層40が順に成長される。基板100にサファイア基板を用いる場合、窒化物半導体層は、例えばサファイア基板のC面上に成長される。
【0013】
n側半導体層10は、下地層11と、下地層11上に設けられたn型コンタクト層12と、n型コンタクト層12上に設けられた中間層20と、中間層20上に設けられた超格子層26とを含む。
【0014】
中間層20は、第1層21と第2層22とからなる積層部23を少なくとも1つ含む。本実施形態では、中間層20は、複数の積層部23を含む。したがって、中間層20は、複数の第1層21と複数の第2層22とを含む。第1層21と第2層22は交互に積層されている。例えば、1つの積層部23において、第2層22上に第1層21が設けられている。中間層20は、例えば、3個以上7個以下の積層部23を含む。本実施形態では、中間層20は、4個の積層部23を含む。
【0015】
第1層21は、n型不純物とAlとGaとを含むn型窒化物半導体層である。第1層21は、例えば、n型のAlGaN層である。第1層21は、n型不純物として、例えばシリコン(Si)を含む。第1層21のn型不純物濃度は、n型コンタクト層12のn型不純物濃度よりも低い。第1層21のn型不純物濃度は、例えば、1×1017/cm3以上1×1018/cm3以下である。
【0016】
第2層22は、AlとGaとを含む窒化物半導体層である。第2層22のn型不純物濃度は、第1層21のn型不純物濃度よりも低い。第2層22は、例えば、アンドープのAlGaN層である。ここで、アンドープの半導体層とは、導電性を制御するための不純物を意図的にドープするための原料ガス(例えばSiやMgを含むガス)を用いることなく形成された層であり、プロセス上不可避的に混入される不純物を含む場合もある。アンドープの半導体層のn型不純物濃度は、例えば、1×1017/cm3以下である。
【0017】
第2層22の厚さは、第1層21の厚さよりも厚い。例えば、第1層21の一般式は、Ala1Ga1-a1N(0<a1<1)であり、第2層22の一般式は、Ala2Ga1-a2N(0<a2<1)である。第1層21のAl組成比a1は、第2層22のAl組成比a2よりも高い。
【0018】
n側半導体層10は、中間層20と活性層30との間に設けられた超格子層26をさらに含む。超格子層26は、格子定数の異なる複数の半導体層が交互に積層された積層構造を有する。超格子層26は、例えば、複数のGaN層と複数のInGaN層とを含む。超格子層26は、GaN層とInGaN層とが交互に積層されている。例えば、超格子層26は、GaN層とInGaN層とからなる積層部を15個以上25個以下含む。超格子層26におけるGaN層とInGaN層とからなる1つの積層部の厚さは、中間層20における1つの積層部23の厚さよりも薄い。例えば、超格子層26が含む1つのGaN層の厚さは1nm以上3nm以下である。例えば、超格子層26が含む1つのInGaN層の厚さは1nm以上3nm以下である。
【0019】
活性層30は、光を発する発光層である。活性層30は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有するMQW(Multiple Quantum well)構造を有する。例えば、井戸層はInGaN層であり、障壁層はGaN層である。活性層30の発光ピーク波長は、例えば、430nm以上540nm以下程度であり、青色光や緑色光を発する。活性層30の井戸層のバンドギャップエネルギーは、中間層20における各層のバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0020】
p側半導体層40は、p型窒化物半導体層を含む。p型窒化物半導体層は、例えばp型不純物としてマグネシウム(Mg)を含むGaN層である。
【0021】
p側半導体層40上にp側電極51が設けられ、p側電極51はp側半導体層40に電気的に接続される。
【0022】
n型コンタクト層12は、中間層20、超格子層26、活性層30、およびp側半導体層40が設けられていないn側コンタクト面12aを有する。n型コンタクト層12のn側コンタクト面12a上にn側電極52が設けられ、n側電極52はn側半導体層10に電気的に接続される。n型コンタクト層12は、例えば、n型不純物を含むGaN層である。n型コンタクト層12のn型不純物濃度は、例えば、3×1018/cm3以上3×1020/cm3以下である。
【0023】
活性層30からの光は、n側半導体層10を透過して、基板100の下面や側面から主に取り出される。なお、基板100は除去してもよい。基板100を除去した場合、活性層30からの光は、n側半導体層10の下面から主に取り出される。
【0024】
本実施形態によれば、n側半導体層10に、活性層30の井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きなAlGaN層を含む中間層20を設けることで、n側半導体層10における光吸収を抑制して、発光素子1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0025】
中間層20は、n型不純物として例えばSiを含むn型の第1層21を含む。これにより、p側半導体層40に含まれるp型不純物(例えばMg)がn側半導体層10側に拡散しても、n側半導体層10に含まれるn型半導体層(例えばn型コンタクト層12)のp型化を低減することができる。
【0026】
AlGaN層にドープされたSiはAlGaN層に含まれるIII族元素と置換される。Siの原子半径は、窒化物半導体中におけるGaの原子半径よりも窒化物半導体中におけるAlの原子半径に近いことから、SiがGaではなくAlと置換されたAlGaN層の方が結晶欠陥が生じにくいと考えられる。そこで、本実施形態では、第2層22よりもn型不純物濃度の高い第1層21のAl組成比を第2層22のAl組成比よりも高くし、SiがAlGaN層中のAlと置換されやすくすることで、中間層20における結晶欠陥の発生を抑制することができる。その結果、中間層20の結晶性を良好にすることができ、発光素子1の信頼性を向上させることができる。
【0027】
窒化物半導体層においてAl組成比が高くなると結晶欠陥が増える傾向にある。例えば、第1層21の一般式は、Ala1Ga1-a1N(0<a1<1)であり、第2層22の一般式は、Ala2Ga1-a2N(0<a2<1)である。結晶欠陥の発生を抑制しつつ、活性層30からの光の吸収を抑制するために、第1層21のAl組成比a1及び第2層22のAl組成比a2は0.01以下であることが好ましい。第1層21及び第2層22のAl組成比aを1以下とすることで、結晶欠陥の増加による信頼性の悪化を低減しつつ、光取り出し効率を向上させることができる。また、第1層21のAl組成比a1と、第2層22のAl組成比a2との差は、0.001以上0.002以下であることが好ましい。
【0028】
また、中間層20はアンドープの第2層22を含み、その第2層22の厚さを、n型の第1層21の厚さよりも厚くすることで、発光素子1のESD(Electro Static Discharge)による破壊率を低くし発光素子1の信頼性を向上することができる。例えば、第2層22の厚さは第1層21の厚さの10倍以上が好ましい。例えば、第1層21の厚さは1nm以上5nm以下である。例えば、第2層22の厚さは50nm以上100nm以下である。
【0029】
複数の第1層21のうち、活性層30に最も近い位置にある第1層21aのAl組成比は、他の第1層21のAl組成比よりも高い。例えば、第1層21aの一般式は、Ala3Ga1-a3N(0<a3<1)であり、第1層21aのAl組成比a3は、他の第1層21のAl組成比a1よりも高い。これにより、中間層20の中でもより多くの光が伝播する活性層30に近い領域での光吸収の抑制効果を高め、光取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
複数の第1層21のうち、活性層30に最も近い位置にある第1層21aのn型不純物濃度は、他の第1層21のn型不純物濃度よりも高い。複数の第2層22のうち、活性層30に最も近い位置にある第2層22aのn型不純物濃度は、他の第2層22のn型不純物濃度よりも高い。中間層20におけるp側半導体層40により近い領域のn型不純物濃度を相対的に高くすることで、n型コンタクト層12などのp型化を効果的に抑制することができる。また、上述した複数の第1層21のうち、活性層30に最も近い位置にある第1層21aのAl組成比を他の第1層21のAl組成比よりも高くする場合においては、第1層21aのn型不純物濃度をより高くすることで、AlGaN層中においてSiがAlとさらに置換されやすくなると推測される。そのため、中間層20の結晶性をさらに良好にすることができ、発光素子1の信頼性をさらに向上させることができる。複数の第1層21のうち、活性層30に最も近い位置にある第1層21aのn型不純物濃度は、例えば、3×1018/cm3以上3×1019/cm3以下である。
【0031】
なお、中間層20の最上層が高い濃度の不純物を含むと、中間層20の最上層の平坦性が悪化しやすく、中間層20の上に積層される活性層30などの結晶性にも影響を与える。そこで、本実施形態によれば、中間層20は、活性層30に最も近い位置にある第1層21aと、活性層30との間に設けられた窒化物半導体層25をさらに含む。窒化物半導体層25は、活性層30に最も近い位置にある第1層21aよりもn型不純物濃度が低く、例えば、AlとGaとを含むn型AlGaN層である。これにより、中間層20の最上層の平坦性の悪化を低減し、中間層20の上に積層される活性層30などの結晶性を良好にできる。または、窒化物半導体層25は、アンドープのAlGaN層であってもよい。
【0032】
窒化物半導体層25のAl組成比は、活性層30に最も近い位置にある第1層21aのAl組成比と同程度である。
【0033】
中間層20の複数の第1層21および第2層22は、例えば、炉内に、ガリウムを含むガスと、アルミニウムを含むガスと、窒素を含むガスとを導入し、炉内を加熱した状態で形成される。例えば、ガリウムを含むガスはTMG(トリメチルガリウム)ガスであり、アルミニウムを含むガスはTMA(トリメチルアルミニウム)ガスであり、窒素を含むガスはアンモニア(NH3)ガスである。第1層21を形成するときは、さらにシリコンを含むガスが炉内に導入される。
【0034】
例えば、炉内の温度を1100℃から1050℃に降温しながら、複数の第1層21及び複数の第2層22をn型コンタクト層12上に積層する。炉内温度が低い方がAlがNと結合しやすく、複数の第1層21の中で活性層30に近い上層の第1層21ほどAl組成比が高くなる。
【0035】
図2および
図3は、発光素子の特性評価の結果を示すグラフである。
【0036】
6つのサンプルA~Fについて特性評価を行った。サンプルB~Fは、
図1に示す構造において、中間層20の第1層21はSiがドープされたAlGaN層であり、第2層22はアンドープのAlGaN層である。中間層20は、第1層21と第2層22からなる積層部23を4個含む。複数の第1層21のうち活性層30に最も近い位置にある第1層21a以外の第1層21の厚さは3.3nm程度、複数の第1層21のうち活性層30に最も近い位置にある第1層21aの厚さは30nm程度である。第2層22の厚さは75nm程度である。また、窒化物半導体層25は、厚さが5nm程度のSiがドープされたAlGaN層である。中間層20の各層および窒化物半導体層25を形成する際に導入するアルミニウムを含むガスの流量は同じである。
【0037】
サンプルAは、サンプルB~Fにおける中間層20の第1層21および第2層22をAlGaN層ではなくGaN層で形成したものであり、その他の構造はサンプルB~Fと同じである。
【0038】
サンプルB~Fは、それぞれ、中間層20を形成するときの炉内の温度が異なる。サンプルAの中間層を形成するときの温度を基準にしてサンプルB~Fの温度を変更している。サンプルBは、サンプルAよりも20℃低い温度で中間層20を成長させたものである。サンプルCは、サンプルAよりも10℃低い温度で中間層20を成長させたものである。サンプルDは、サンプルAと同じ温度で中間層20を成長させたものである。サンプルEは、サンプルAよりも10℃高い温度で中間層20を成長させたものである。サンプルFは、サンプルAよりも20℃高い温度で中間層20を成長させたものである。
【0039】
図2における左側の縦軸は、サンプルAの出力Poを基準(0%)にした出力Poの増加率を表し、この特性は
図2において棒グラフで表される。
図2における右側の縦軸は、サンプルAの順方向電圧Vfを基準(0)にした順方向電圧Vfの変化量を表し、この特性は
図2において折れ線グラフで表される。
図3における左側の縦軸は、サンプルAの発光効率を基準(0%)にした発光効率の増加量を表し、この特性は
図3において棒グラフで表される。
図3における右側の縦軸は、サンプルAのESD(Electro Static Discharge)破壊率を基準(0)にしたESD破壊率の変化量を表し、この特性は
図3において折れ線グラフで表される。
【0040】
図2の結果より、サンプルAよりもサンプルB~Fの出力Poが増加している。これは、中間層20に含まれる各層をGaN層からAlGaN層とすることにより光吸収が低減され光取り出し効率が向上したことによるものであると推測される。サンプルB、Cは、サンプルAよりも順方向電圧Vfが増大しており、サンプルD~Fは、順方向電圧VfをサンプルAと同等かそれ以下である。これは、中間層20を形成する際の炉内の温度をサンプルAよりも低くすることで、形成される各層の結晶性が低下したことが要因であると考えられる。一方、炉内の温度を高くすると形成される各層の結晶性が向上し順方向電圧Vfを低減する効果が得られたと推測される。なお、中間層20の各層をGaN層とする場合、炉内の温度を高くしすぎるとGaN層の表面の平坦性が悪化する傾向があり、サンプルE、Fのように炉内の温度を高くすることによる順方向電圧Vfの低減効果は得られにくいと考えられる。サンプルD~Fは、順方向電圧VfをサンプルAと同等かそれ以下としつつ、出力PoをサンプルAよりも増加することができる。
【0041】
図3の結果より、サンプルAよりもサンプルB~Fの発光効率が増加している。特にサンプルD~Fの発光効率は、サンプルAよりも0.3%以上増加している。サンプルB、Cは、サンプルAよりもESD破壊率が高くなっており、サンプルD~Fは、サンプルAのESD破壊率と同等かそれ以下である。これは、上述したとおり、炉内の温度を変更することで、中間層20の各層の結晶性に影響が生じたことが要因であると考えられる。特にサンプルE、Fでは、炉内の温度をサンプルAよりも高くすることで中間層20の各層の結晶性を向上しESD破壊率を低減することができている。サンプルD~Fは、ESD破壊率をサンプルAと同等かそれ以下としつつ、発光効率をサンプルAよりも高くすることができる。
【0042】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0043】
1…発光素子、12…n型コンタクト層、10…n側半導体層、20…中間層、21…第1層、22…第2層、23…積層部、30…活性層、40…p側半導体層、51…p側電極、52…n側電極、100…基板