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  • 特開-多層プリント配線板及びその製造方法 図1
  • 特開-多層プリント配線板及びその製造方法 図2
  • 特開-多層プリント配線板及びその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079841
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】多層プリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190669
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大隅 勇汰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 了晃
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA15
5E316AA42
5E316BB20
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316DD12
5E316DD22
5E316DD32
5E316FF13
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG37
5E316HH25
(57)【要約】
【課題】スタブ除去によるピッチの拡大を排除しつつ、多層プリント配線板のスルーホール内壁のスタブを除去可能にすることにより、高速伝送に対応しつつ、部品の高密度化にも対応可能な多層プリント配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に配線層を設けたプリント配線板を複数枚積層した多層プリント配線板であって、エッチングにより余剰部分が削り取られたスルーホールめっき層を有するスルーホールを備えることを特徴とする多層プリント配線板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して厚さ方向に複数の配線層が形成された多層プリント配線板であって、
エッチングにより余剰部分が削り取られたスルーホールめっき層を有するスルーホールを備えることを特徴とする多層プリント配線基板。
【請求項2】
絶縁層を介して厚さ方向に複数の配線層が形成された多層プリント配線板の製造方法であって、
多層プリント配線板の所定の位置にスルーホールを形成する工程と、
スルーホールの内壁面にスルーホールめっき層を形成する工程と、
スルーホール内に樹脂を充填する工程と、
エッチングによりスルーホールめっき層の余剰部分を削り取る工程と
をこの順に含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化に伴い、多層プリント配線板にも高多層化や配線密度の向上が要求されてきている。
最近では電子機器の高速化が進み配線板内を流れる電気信号は短時間により多くの情報を伝達するため、周波数が益々高くなっている。高周波対応の基板設計では、導体損失と誘電損失を考慮する必要があり、導体損失は信号線の導体を太くすることが有効であり、誘電損失においては使用する基材やプリプレグなどの信号線の周囲に配置される材料の比誘電率や誘電正接を下げることが有効であるが、高密度化した配線板においては、対応できる信号線の導体幅に制限があることから、誘電損失の改善が重要となっている。
【0003】
スルーホールにおいても電気信号の反射を低減するために、スルーホールめっき後にスタブを除去することが必要となってきた。ここで、スタブとは、一般に、その先に何も接続されていない配線のことであり、多層配線板の配線層間の接続を行うためのスルーホールにおいては、配線層間の接続に寄与しない余剰部分のことをいう。
これに対応して、従来の電気信号の高速伝送が必要な多層プリント配線板では、電気信号の反射を低減するためにスルーホールのスタブを除去する場合がある。このスタブ除去のため、めっきでスルーホールを形成した後に、貫通穴明ドリル径よりも太径ドリルで基板表面側のスルーホール入り口からバックドリル加工を行う方法が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-026549号公報
【特許文献2】特開2009-004585号公報
【特許文献3】特開2012-248653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、図3に示すように、多層プリント配線板100の貫通孔6の直径よりも大きい直径で入り口(開口部)から所定の深さまでのスルーホールめっき5を除去して電気的に接続されない不連続部9を形成するので、穴間の配線収容量が低下し、高密度化の妨げとなる。しかも、スタブ除去のためのドリルの直径は、スルーホール用の貫通孔を形成するためのドリルの直径よりも大きいため、平面視において、スルーホールよりも大きな面積を占めることになる。その結果、スタブ除去のために、スルーホールのピッチを広げる必要があり、狭ピッチな高密度部品への対応が難しい問題がある。
【0006】
本発明はスタブ除去によるピッチの拡大を排除しつつ、多層プリント配線板のスルーホール内壁のスタブを除去可能にすることにより、高速伝送に対応しつつ、部品の高密度化にも対応可能な多層プリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、エッチングによってスルーホールめっき層の余剰箇所を取り除いた多層プリント配線板及びその製造方法を提供する。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関するものである。
[1]絶縁層を介して厚さ方向に複数の配線層が形成された多層プリント配線板であって、エッチングにより余剰部分が削り取られたスルーホールめっき層を有するスルーホールを備えることを特徴とする多層プリント配線板。
[2]絶縁層を介して厚さ方向に複数の配線層が形成された多層プリント配線板の製造方法であって、多層プリント配線板の所定の位置にスルーホールを形成する工程と、スルーホールの内壁面にスルーホールめっき層を形成する工程と、スルーホール内に樹脂を充填する工程と、エッチングによりスルーホールめっき層の余剰部分を削り取る工程とをこの順に含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スタブ除去によるピッチの拡大を排除しつつスルーホール内壁のスタブを除去した構造を有することで、高速伝送に対応しつつ、部品の高密度化にも対応可能な多層プリント配線板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の多層プリント配線板の一実施形態の構造を示す概略断面図である。
図2】本発明のエッチングによりスタブを除去する多層プリント配線板の製造工程の一実施形態を示す概略断面図である。
図3】バックドリル加工によってスタブを除去した従来の多層プリント配線板の構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(多層プリント配線板)
図1に、本発明の多層プリント配線板1の一実施形態(概略断面図)を表す。本実施の形態の多層プリント配線板1は、絶縁層3を介して厚さ方向に積層された複数の配線層2と、これらの配線層2を厚さ方向に貫通する貫通孔6と、この貫通孔6の内壁に配置され前記配線層2と電気的に接続するスルーホールめっき5と、スルーホールめっき内壁に充填された穴埋樹脂4と、を備える多層プリント配線板であって、前記スルーホールめっき5が、多層プリント配線板1の厚さ方向に一部がエッチングにより削り取られ、電気的に接続されない不連続部9を有する多層プリント配線板1である。
【0012】
本実施の形態において、絶縁層とは、異なる配線層間の絶縁を確保しつつ配線層を支持するものである。多層プリント配線板において、一般的に用いられるガラスエポキシ、ガラスポリイミド等を用いて形成することができる。
【0013】
配線層とは、回路を通じて電気的な導通を行うものである。多層プリント配線板において一般的に用いられる銅箔等の金属箔又はめっき等の材料を用い、配線層となる回路はエッチング等によって形成することができる。
【0014】
スルーホールめっきとは、貫通孔の内壁に配置され、配線層と電気的に接続するものである。一般に知られているように、厚付け用の無電解めっきを用いて形成する方法(1段階法)、下地となる無電解めっきを形成した後、これを給電層として電気めっきを行って形成する方法(2段階法)等により形成することができる。
【0015】
穴埋樹脂とは、スルーホールめっき内壁に充填され、部品実装時にはんだがスルーホール内部に流れ込むことを防ぐものである。樹脂は例えば、太陽インキ製造株式会社製THP-100DX1等を用いる。
【0016】
図1に示すように、貫通孔6の内壁に配置されるスルーホールめっき5が、多層プリント配線板1の厚さ方向の内部の一部において、電気的に接続されない不連続部9を有する。
不連続部とは、貫通孔の内壁に配置されるスルーホールめっきが、多層プリント配線板の厚さ方向の内部の一部において、電気的に接続されない部分をいう。この不連続部の形成は、多層プリント配線板の表裏面に感光性フィルムをラミネートした後、貫通孔開口部以外の箇所を露光し、次に現像によりエッチングレジストを形成し、次にスルーホール内壁のスタブ(余剰部分)をエッチングにより除去し、次にエッチングレジストを剥離して、貫通孔の内壁に配置されるスルーホールめっきが、多層プリント配線板の厚さ方向の内部の一部において、電気的に接続されない不連続部を形成することによって可能である。
【0017】
本実施の形態においては、エッチングによりスルーホール内壁のスタブを除去するため貫通孔の直径よりも大きな直径のドリルを用いたバックドリル加工が不要である。このため、スタブが除去されて不連続部を有する領域が平面視において、貫通孔の直径と同等である。したがって、スタブ除去によるピッチの拡大を排除しつつ、多層プリント配線板の厚さ方向のスルーホールめっきを除去可能にすることにより、高速伝送に対応しつつ、部品の高密度化にも対応可能な多層プリント配線板を提供することができる。
【0018】
(多層プリント配線板の製造方法)
次に、本発明の一実施形態の多層プリント配線板の製造方法について説明する。図2に示すように、本実施の形態に多層プリント配線板1の製造方法は、絶縁層3を介して複数の配線層2を積層する工程と、積層された配線層2を厚さ方向に貫通する貫通孔6を形成する工程と、この貫通孔6の内壁に配置され配線層2を電気的に接続するスルーホールめっき5を形成する工程と、スルーホール内壁に穴埋樹脂4を充填する工程(a)と、多層プリント配線板1の表裏面に感光性フィルム7をラミネートする工程(b)と、貫通孔開口部以外の箇所を露光する工程(c)と、スルーホール開口部上の感光性フィルムを除去する工程(d)と、スルーホールめっき5の一部を除去する工程(e)と、エッチングレジスト8を剥離する工程(f)(図示しない)と、を有する。
【0019】
本実施の形態の多層プリント配線板の製造方法によれば、貫通孔を形成する工程ではドリルを用いて貫通孔を加工し、次にスルーホールめっきを形成する工程により、貫通孔の内壁に配置されたスルーホールめっきと配線層とが電気的に接続されて接続部が形成される。
【0020】
また、スルーホール内壁に樹脂を充填し(a)、次に多層プリント配線板1の表面に感光性フィルムをラミネートし(b)、次に貫通孔の位置に貫通孔と同じ直径の円状のマスクを有するフォトマスク等を用いて貫通孔開口部以外の箇所を露光し(c)、次に現像により貫通孔開口部上の感光性フィルムを除去しエッチングレジスト8を形成し(d)、次にエッチングによりスルーホールめっき5の一部を除去し(e)、次にエッチングレジスト8を剥離(f)し、不連続部を形成することができる。また、スタブが除去されて不連続部を有する開口部の領域が、平面視において、貫通孔の直径と同等である。したがって、部品の高密度化を妨げる心配がない。
【0021】
不連続部を設けることで、不要なスルーホールめっきによる高周波信号の反射の影響を抑制することができる。しかも、貫通孔の直径よりも大きい直径のドリルによるバックドリル工法が不要であるため不連続部の領域が貫通孔の直径と同等である。したがって、スタブ除去によって高速伝送に対応しつつ、部品の両面実装化や高密度化にも対応可能な多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1,100…多層プリント配線板
2…配線層
3…絶縁層
4…穴埋樹脂
5…スルーホールめっき
6…貫通孔
7…感光性フィルム
8…エッチングレジスト
9…不連続部
図1
図2
図3