(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022079923
(43)【公開日】2022-05-27
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20220520BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20220520BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20220520BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220520BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G59/62
C08J5/24 CFC
H05K1/03 610L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190799
(22)【出願日】2020-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD28
4F072AD33
4F072AE01
4F072AF26
4F072AF28
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AL13
4J036AC01
4J036AC05
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD09
4J036AD11
4J036DB23
4J036DC40
4J036FB08
4J036JA07
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】
硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物とその硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】
2官能エポキシ化合物(A)とジヒドロキシ化合物(B)とを反応原料とするエポキシ樹脂であり、前記2官能エポキシ化合物(A)と前記ジヒドロキシ化合物(B)とのどちらか一方又は両方が、下記構造式(1)で表される化合物(X)であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能エポキシ化合物(A)とジヒドロキシ化合物(B)とを反応原料とするエポキシ樹脂であり、前記2官能エポキシ化合物(A)と前記ジヒドロキシ化合物(B)とのどちらか一方又は両方が、下記一般式(1)で表される化合物(X)であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【化1】
[上記一般式(1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。Xは水素原子又はグリシジル基である。]
【請求項2】
エポキシ基当量が10,000~50,000g/当量の範囲である請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
下記一般式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(X-1)と、エピハロヒドリンとを反応原料とし、エポキシ基当量が10,000~50,000g/当量の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【化2】
[上記一般式(1-1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。]
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が10,000~1,000,000の範囲である請求項1又は3記載のエポキシ樹脂。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一つに記載のエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4の何れか一つに記載のエポキシ樹脂と、これ以外のエポキシ樹脂と、活性エステル樹脂とを含有する請求項5記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ。
【請求項9】
請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板。
【請求項10】
請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物を用いたビルドアップフィルム。
【請求項11】
請求項5又は6記載の硬化性樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【請求項12】
請求項11記載の半導体封止材を用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物とその硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子機器の小型化や軽量化、信号の高速化や高周波化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。樹脂材料に求められる各種性能としては、例えば、硬化物における耐熱性、可撓性、誘電率の低さ、誘電正接の低さ等が挙げられ、これらの性能をバランスよく兼備する樹脂材料の開発が進められている。
【0003】
硬化物における可撓性や製膜性を向上させる技術として、比較的高分子量のエポキシ樹脂を用いる技術が知られている(下記特許文献1~3参照)。これらの文献に記載された高分子量エポキシ樹脂は、樹脂材料における可撓性や製膜性、耐衝撃性、基材密着性等を向上させる効果を有するが、反面、誘電率や誘電正接にて評価される誘電特性が十分ではないという課題があった。特に、昨今は信号の高速化及び高周波数化に伴う発熱等のエネルギー損失を低減させるため、誘電正接の低さが重要な性能となっており、可撓性と誘電正接の低さとを兼備し得る樹脂材料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-342350号公報
【特許文献2】特開2017-214529号公報
【特許文献3】特開2019-172996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物とその硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造部位を有するエポキシ樹脂を用いることにより、可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、2官能エポキシ化合物(A)とジヒドロキシ化合物(B)とを反応原料とするエポキシ樹脂であり、前記2官能エポキシ化合物(A)と前記ジヒドロキシ化合物(B)とのどちらか一方又は両方が、下記一般式(1)で表される化合物(X)であることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【0008】
【化1】
[上記一般式(1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。Xは水素原子又はグリシジル基である。]
【0009】
本発明は更に、下記一般式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(X-1)と、エピハロヒドリンとを反応原料とし、エポキシ基当量が10,000~50,000g/当量の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【0010】
【化2】
[上記一般式(1-1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。]
【0011】
本発明は更に、前記エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【0013】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグに関する。
【0014】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板に関する。
【0015】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いたビルドアップフィルムに関する。
【0016】
本発明は更に、前記硬化性樹脂組成物を用いた半導体封止材に関する。
【0017】
本発明は更に、前記半導体封止材を用いた半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物とその硬化物、プリプレグ、プリント配線基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、合成例1で得られた中間体(1)のGPCチャートである。
【
図2】
図2は、合成例1で得られた中間体(1)の
13C-NMRチャートである。
【
図3】
図3は、合成例1で得られた中間体(1)のFD-MSチャートである。
【
図4】
図4は、合成例1で得られたエポキシ樹脂(A1)のGPCチャートである。
【
図5】
図5は、合成例1で得られたエポキシ樹脂(A1)の
13C-NMRチャートである。
【
図6】
図6は、合成例1で得られたエポキシ樹脂(A1)のFD-MSチャートである。
【
図7】
図7は、実施例1で得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートである。
【
図8】
図8は、実施例2で得られたエポキシ樹脂(2)のGPCチャートである。
【
図9】
図9は、実施例3で得られたエポキシ樹脂(3)のGPCチャートである。
【
図10】
図10は、実施例4で得られたエポキシ樹脂(4)のGPCチャートである。
【
図11】
図11は、実施例5で得られたエポキシ樹脂(5)のGPCチャートである。
【
図12】
図12は、実施例6で得られたエポキシ樹脂(6)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、2官能エポキシ化合物(A)とジヒドロキシ化合物(B)とを反応原料とするエポキシ樹脂であり、前記2官能エポキシ化合物(A)と前記ジヒドロキシ化合物(B)とのどちらか一方又は両方が、下記一般式(1)で表される化合物(X)であることを特徴とする。このようなエポキシ樹脂を、以下、エポキシ樹脂(I)として説明する。
【0021】
【化3】
[上記一般式(1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数であり、0.2~20の数値を示す。Xは水素原子又はグリシジル基である。]
【0022】
前記一般式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。前記炭素数1~10のアルキル基は、直鎖型でもよいし、分岐構造を有していてもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。前記炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、キシリルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。前記炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げれる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0023】
前記R1は、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。また、lの値は0~2の整数値であることが好ましく、2であることがより好ましい。lが2の場合、二つのR1の置換位置は、R1が結合している芳香環上の酸素原子に対し2位及び6位であることが好ましい。
【0024】
前記R2及びR3について、エポキシ樹脂(I)の合成の容易性から、m及びnが0であることが好ましい。
【0025】
前記kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。kの値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される重量平均分子量から算出することができる。中でも、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、1~20の範囲であることが好ましく、1~10の範囲であることがより好ましく、2~7の範囲であることが特に好ましい。なお、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0026】
前記エポキシ樹脂(I)は、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、そのエポキシ基当量が、10,000~50,000g/当量の範囲であることが好ましく、10,000~40,000g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0027】
また、前記エポキシ樹脂(I)は、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、重量平均分子量(Mw)が10,000~1,000,000の範囲であることが好ましい。本明細書において、エポキシ樹脂(I)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0028】
前記エポキシ樹脂(I)の反応原料である前記一般式(1)で表される化合物(X)は、前記一般式(1)で表される分子構造を有するものであれば、どのような方法にて製造されたものであってもよい。その一例としては、例えば、前記一般式(1)中のXが水素原子であるもの(以下、「ジヒドロキシ化合物(X-1)」と略記する場合がある)については、下記一般式(2)で表される化合物(x1)、下記一般式(3)で表される化合物(x2)、及び所望に応じて下記一般式(4)で表される化合物(x3)を、酸触媒条件下で反応させる方法が挙げられる。また、前記一般式(1)中のXがグリシジル基であるもの(以下、「2官能エポキシ化合物(X-2)」と略記する場合がある)については、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)をエピハロヒドリンと反応させる方法が挙げられる。
【0029】
【化4】
[上記一般式(2)~(4)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。R
4は水素原子、或いはベンジル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、アセチル基、ベンゾイル基等のヒドロキシ基保護基を表す。Zはハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0030】
前記一般式(2)~(4)中、R1、R2、R3の具体例及び好ましいものは前記一般式(1)と同様である。また、l、m、nの好ましい値についても前記一般式(1)と同様である。前記一般式(3)、(4)中のYは前記一般式(y1)、(y2)、(y3)のいずれかで表される構造部位であり、一般式中2つのYが同一構造であってもよいし、互いに異なる構造であってもよい。化合物(x1)、(x2)、(x3)は、それぞれ同一構造のものを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前記一般式(2)で表される化合物(x1)の具体例としては、例えば、フェノール;クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール等のモノアルキルフェノール;キシレノール等のジアルキルフェノール;フェニルフェノール等のアリール基を有するフェノール等が挙げられる。中でも、キシレノール等のジアルキルフェノールが好ましく、二つのアルキル基の置換位置がフェノール性水酸基に対し2位及び6位であるものがより好ましい。また、アルキル基としては炭素数1~4のものが好ましい。
【0032】
前記一般式(3)で表される化合物(x2)について、式中に示す通り、一方のYの少なくとも一方のオルト位は水素原子である。他方のYの置換位置は特に限定されないが、反応性に優れることから、2つのYが互いにメタ位又はパラ位にあることが好ましい。前記化合物(x2)の具体例としては、例えば、m-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、m-ジイソプロペニルベンゼン、p-ジイソプロペニルベンゼン、m-ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、p-ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-3-イソプロペニルベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-4-イソプロペニルベンゼン、及びこれらの芳香環上に前記一般式(3)中のR2で表される置換基を一つないし複数有する化合物等が挙げられる。
【0033】
前記一般式(4)で表される化合物(x3)は必須の反応成分ではなく、必要に応じて用いられる成分であり、前記一般式(4)で表され、且つ、前記化合物(x2)とは異なる化合物として、前記化合物(x2)と併用して用いられる。前記化合物(x3)は、前記化合物(x2)と前記化合物(x3)との合計質量に対し、50質量%以下の範囲で用いることが好ましく、10質量%以下の範囲で用いることがより好ましい。
【0034】
、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)について、前記化合物(x1)~(x3)との反応割合は、前記化合物(x3)を用いない場合には、前記化合物(x1)1モルに対し、前記化合物(x2)を0.1~10.0モルの範囲で用いることが好ましい。中でも、エポキシ基当量及び重量平均分子量(Mw)の値が好ましいものとなることから、前記化合物(x1)1モルに対し、前記化合物(x2)を0.2~8.0の範囲で用いることがより好ましい。また、前記化合物(x3)を用いる場合には、前記化合物(x1)1モルに対し、前記化合物(x2)と前記化合物(x3)とを合計で0.1~10.0モルの範囲で用いることが好ましく、0.2~8.0モルの範囲で用いることがより好ましい。必要に応じて前記化合物(x1)~(x3)以外の反応原料を用いる場合には、反応原料の合計質量に対し、前記前記化合物(x1)~(x3)の合計質量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。
【0035】
前記酸触媒としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができる。中でも、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸が好ましい。前記酸触媒の配合量は、反応原料の合計100質量部に対し、0.001~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0036】
前記ジヒドロキシ化合物(X-1)の製造における反応温度は、通常50~300℃の範囲であればよく、80~200℃が好ましい。また、その反応時間は、通常、のべ0.5~24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5~12時間の範囲である。
【0037】
前記ジヒドロキシ化合物(X-1)のを製造する反応は、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。用いる溶媒は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これら有機溶剤の使用量は、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)の反応原料の合計質量に対し30質量%から300質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
反応終了後は、反応溶液を中和し、減圧条件下で残存した反応原料や溶媒等を留去することにより、目的のジヒドロキシ化合物(X-1)を得ることができる。
【0039】
前記ジヒドロキシ化合物(X-1)或いはこれを含む組成物の水酸基当量は、200~20,000の範囲であることが好ましく、200~5,000の範囲であることがより好ましく、200~800g/当量の範囲であることが特に好ましい。また、その重量平均分子量(Mw)は、500~50,000の範囲であることが好ましく、500~10,000の範囲であることがより好ましく、500~3,000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0040】
前記2官能エポキシ化合物(X-2)について、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)或いはこれを含有する組成物とエピハロヒドリンとの反応は、例えば、反応原料中の水酸基に対し過剰量のエピハロヒドリンを用い、塩基性触媒の存在下、20~120℃の温度で0.5~10時間反応させる方法にて行うことができる。
【0041】
前記エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量は、反応原料中の水酸基の合計1モルに対して、通常、1.5~30モルであり、好ましくは、2~15モルの範囲である。
【0042】
前記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。中でも、触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等がより好ましい。また、これら塩基性触媒は、固形の状態で使用してもよいし、水溶液の状態で使用してもよい。前記塩基性触媒の添加量は反応原料中の水酸基の合計1モルに対して、0.9~2.0モルの範囲であることが好ましい。
【0043】
前記2官能エポキシ化合物(X-2)を製造する反応は有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これら有機溶剤の使用量は、前記2官能エポキシ化合物(X-2)の反応原料の合計質量に対し5質量%から300質量%の範囲であることが好ましい。
【0044】
前記エピハロヒドリンとの反応終了後は、過剰のエピハロヒドリンを留去することにより、粗生成物を得ることができる。必要に応じて、得られた粗生成物を再度有機溶剤に溶解させ、塩基性触媒を加えて再度反応させることにより、加水分解性ハロゲンを低減させてもよい。反応で生じた塩は濾過や水洗等により除去することができる。また、有機溶媒を用いた場合には、留去して樹脂固形分のみを取り出してもよいし、そのまま溶液として用いてもよい。
【0045】
前記2官能エポキシ化合物(X-2)或いはこれを含む組成物のエポキシ基当量は、150~20,000g/当量の範囲であることが好ましく、150~5,000g/当量の範囲であることがより好ましく、150~1,000g/当量の範囲であることが特に好ましい。また、その重量平均分子量(Mw)は、500~50,000の範囲であることが好ましく、500~10,000の範囲であることがより好ましく、500~3,000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0046】
前記エポキシ樹脂(I)は、前記2官能エポキシ化合物(A)と前記ジヒドロキシ化合物(B)との少なくともどちらか一方として、前記一般式(1)で表される化合物(X)を用いていれば、その他の化合物を併用してもよい。組み合わせの具体例として、例えば、前記2官能エポキシ化合物(A)の一部乃至全部が前記2官能エポキシ化合物(X-2)である場合、前記ジヒドロキシ化合物(B)の全部がその他の化合物であってもよいし、一部乃至全部が前記ジヒドロキシ化合物(X-1)であってもよい。反対に、前記ジヒドロキシ化合物(B)の一部乃至全部が前記ジヒドロキシ化合物(X-1)である場合、前記2官能エポキシ化合物(A)の全部がその他の化合物であってもよいし、一部乃至全部が前記2官能エポキシ化合物(X-2)であってもよい。いずれの場合においても、その他の化合物は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、いずれの場合においても、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂となることから、前記エポキシ樹脂(I)の反応原料に占める前記化合物(X)の割合が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0047】
前記その他の化合物のうち、前記ジヒドロキシ化合物(B)の具体例としては、例えば、下記一般式(5-1)~(5-17)の何れで表される化合物や、これらの化合物とラクトン化合物との開環重合物、ポリオキシアルキレン変性物等が挙げられる。
【0048】
【0049】
【化6】
[一般式(5-1)~(5-17)中、R
1は炭素原子数2~10の脂肪族炭化水素基或いはその炭素原子上にアルコキシ基又はハロゲン原子を一つ乃至複数有する構造部位である。R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。R
3はそれぞれ独立に炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかである。上記一般式(5-6)において、2つのR
3は脂環構造を形成していてもよい。kは1~4の整数、lは0又は1~4の整数、mは0又は1~6の整数、pは0又は1~3の整数、qは0又は1~5の整数である。Ar
1は置換基を有してもよいアリール基、Ar
2は置換基を有してもよいモノヒドロキシアリール基を表す。上記一般式(5-13)及び上記一般式(5-14)中xとyとは互いに隣接する炭素原子に結合し、それぞれキサンテン構造又はジナフトフラン構造を形成する。上記一般式(5-17)中Zは炭化水素基、酸素原子、カルボニル基の何れかである。]
【0050】
中でも、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂となることから、前記一般式(5-2)、(5-3)、(5-4)、(5-6)のいずれかで表される化合物が好ましく、前記一般式(5-3)、(5-4)、(5-6)のいずれかで表される化合物が特に好ましい。
【0051】
前記その他の化合物のうち、前記2官能エポキシ化合物(A)の具体例としては、前記一般式(5-1)~(5-17)の何れで表される化合物、或いはこれらの化合物とラクトン化合物との開環重合物、ポリオキシアルキレン変性物等のジグリシジルエーテル化物が挙げられる。中でも、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂となることから、前記一般式(5-2)、(5-3)、(5-4)、(5-6)のいずれかで表される化合物のジグリシジルエーテルが好ましく、前記一般式(5-3)、(5-4)、(5-6)のいずれかで表される化合物のジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0052】
前記エポキシ樹脂(I)を製造する際の反応条件としては、例えば、反応原料を触媒の存在下、50~230℃、好ましくは、120~200℃の温度条件下で、1~12時間程度反応させる方法が挙げられる。
【0053】
前記エポキシ樹脂(I)の反応原料の仕込み比は、原料中の水酸基に対し、エポキシ基が過剰となる割合であればよく、反応効率当の点から、両者のモル比(エポキシ基)/(水酸基)が1.01~1.10の範囲であることが好ましい。
【0054】
前記触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。触媒の添加量は、エポキシ樹脂(I)の原料の総質量に対し、100~10,000ppmの範囲であることが好ましい。
【0055】
前記エポキシ樹脂(I)を製造する際には、必要に応じて、有機溶媒を用いてもよい。前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これら有機溶剤の使用量は、前記エポキシ樹脂の反応原料の合計質量に対し30質量%から300質量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂は、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)と、エピハロヒドリンとを反応原料とする方法にて製造したものであってもよい。すなわち、本発明のエポキシ樹脂は、下記一般式(1-1)で表されるジヒドロキシ化合物(X-1)と、エピハロヒドリンとを反応原料とし、エポキシ基当量が10,000~50,000g/当量の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂であってもよい。このようなエポキシ樹脂を、以下、エポキシ樹脂(II)とする。
【0057】
【化7】
[上記一般式(1-1)中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子を表す。lは0~4の整数値であり、lが2~4の場合、R
1は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。mは0~3の整数値であり、mが2~3の場合、R
2は同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは0~4の整数値であり、nが2~4の場合、R
3はすべて同じであってもよいし異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数の平均値であり、0.2~20の数値を示す。]
【0058】
前記一般式(1-1)中、R1、R2、R3の具体例及び好ましいものは前記一般式(1)と同様である。また、k、l、m、nの好ましい値についても前記一般式(1)と同様である。
【0059】
前記エポキシ樹脂(II)は、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、そのエポキシ基当量が、10,000~50,000g/当量の範囲であることが好ましく、10,000~40,000g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0060】
また、前記エポキシ樹脂(II)は、硬化物における可撓性と誘電特性とのバランスに優れるものとなることから、重量平均分子量(Mw)が10,000~1,000,000の範囲であることが好ましい。本明細書において、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0061】
前記エポキシ樹脂(II)が反応原料とする前記ジヒドロキシ化合物(X-1)は、前記エポキシ樹脂(I)の反応原料として用いる前記ジヒドロキシ化合物(X-1)と同様のものである。前記エポキシ樹脂(II)は、反応原料として、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)以外の、その他のジヒドロキシ化合物を併用してもよい。その他のジヒドロキシ化合物としては、前記一般式(5-1)~(5-17)の何れで表される化合物や、これらの化合物とラクトン化合物との開環重合物、ポリオキシアルキレン変性物等が挙げられる。これらその他のジヒドロキシ化合物を併用する場合には、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有するエポキシ樹脂となることから、前記エポキシ樹脂(II)のジヒドロキシ原料に占める前記ジヒドロキシ化合物(X-1)の割合が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0062】
前記エポキシ樹脂(II)は、前記ジヒドロキシ化合物(X-1)を必須とするジヒドロキシ化合物原料と、エピハロヒドリンとを反応させる方法にて製造することができる。ジヒドロキシ化合物原料とエピハロヒドリンとの反応は、例えば、反応原料中の水酸基に対し過剰量のエピハロヒドリンを用い、塩基性触媒の存在下、20~120℃の温度で0.5~10時間反応させる方法にて行うことができる。
【0063】
前記エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量は、反応原料中の水酸基の合計1モルに対して、通常、1.5~30モルであり、好ましくは、2~15モルの範囲である。
【0064】
前記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。中でも、触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等がより好ましい。また、これら塩基性触媒は、固形の状態で使用してもよいし、水溶液の状態で使用してもよい。前記塩基性触媒の添加量は反応原料中の水酸基の合計1モルに対して、0.9~2.0モルの範囲であることが好ましい。
【0065】
前記エポキシ樹脂(II)を製造する反応は有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これら有機溶剤の使用量は、前記エポキシ樹脂(I)の反応原料の合計質量に対し5質量%から300質量%の範囲であることが好ましい。
【0066】
反応終了後は、過剰のエピハロヒドリンを留去することにより、エポキシ樹脂(II)の粗生成物を得ることができる。必要に応じて、得られた粗生成物を再度有機溶剤に溶解させ、塩基性触媒を加えて再度反応させることにより、加水分解性ハロゲンを低減させてもよい。反応で生じた塩は濾過や水洗等により除去することができる。また、有機溶媒を用いた場合には、留去して樹脂固形分のみを取り出してもよいし、そのまま溶液として用いてもよい。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤や硬化促進剤と配合して硬化性樹脂組成物として用いても良い。前記硬化剤は本発明のエポキシ樹脂と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂;活性エステル樹脂;シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾオキサジン樹脂;スチレン-無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステルやリン酸エステル-カーボネート共重合体等を含有しても良い。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、特に硬化物の誘電特性に優れることから、活性エステル樹脂が好ましい。
【0068】
前記活性エステル樹脂は、具体的には、フェノール性水酸基含有化合物と、芳香族カルボン酸又はその酸ハロゲン化物とを反応原料とするものである。特に、反応性及び硬化物物性の観点から、フェノール性水酸基を一つ有する化合物(e1)とフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(e2)と、芳香族ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(e3)とを反応原料とする活性エステル樹脂が好ましい。
【0069】
前記フェノール性水酸基を一つ有する化合物(e1)は、例えば、フェノール、ナフトール、アントラセノール、これらの芳香核上にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を一つ乃至複数有する化合物等が挙げられる。
【0070】
前記フェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(e2)は、例えば、ポリヒドロキシベンゼン、ポリヒドロキシナフタレン、ポリヒドロキシアントラセン、これらの芳香核上にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を一つ乃至複数有する化合物の他、各種のフェノール性水酸基含有化合物とホルムアルデヒドとを反応原料とするノボラック型フェノール樹脂や、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0071】
【化8】
[式中pは1又は2であり、qは1~4の整数である。Arはそれぞれ独立にベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、これらの芳香環上に炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を一つないし複数有する構造部位である。Rは炭素原子数2~6のアルキレン基、又は下記一般式(R-1)~(R-5)の何れかで表される構造部位である。qが2~4の整数である場合、複数のRは同一構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。]
【0072】
【化9】
(式中hは0又は1である。R
3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1~4の整数である。R
4は水素原子又はメチル基である。Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1~4の整数である。)
【0073】
前記芳香ジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(e3)は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸や、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を併用しても良い。その他のエポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0075】
本発明のエポキシ樹脂、前記硬化剤、及び前記その他のエポキシ樹脂の配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。配合の一例としては、硬化性樹脂組成物中のエポキシ基の合計1モルに対して、硬化剤中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合であることが好ましい。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0077】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0078】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0079】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0080】
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0081】
以上詳述した通り、本発明のエポキシ樹脂は、硬化物における可撓性に優れ、かつ、誘電正接が極めて低い特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や、各種硬化剤との硬化性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものであり、プリント配線基板や半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性樹脂組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が25~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が25~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0083】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性樹脂組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性樹脂組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~200℃の温度条件下で2~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例0085】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
<GPCの測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8320」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0087】
<13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30質量%
積算回数 :4000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0088】
<FD-MSの測定>
FD-MSは日本電子株式会社製の二重収束型質量分析装置AX505H(FD505H)を用いて測定した。
【0089】
合成例1 エポキシ樹脂(A1)の製造
<中間体(1)の合成>
撹拌機、ディーンスターク装置と冷却管、窒素封入口が備わったフラスコに、窒素ガスを吹き込みながら、2,6-キシレノール377.4質量部、m-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン300.0質量部、トルエン677.4質量部、p-トルエンスルホン酸1水和物3.77質量部を仕込み、加熱した。途中、ディーンスターク装置を使用して反応で生じた水を除去しながら、120℃まで昇温し、同温度で15時間反応させた。反応混合液を冷却した後、49%水酸化ナトリウム水溶液を使用して中和した。減圧条件下で加熱して揮発分を留去し、中間体(1)を得た。得られた中間体(1)の水酸基当量は329g/当量、重量平均分子量(Mw)は994、軟化点は69℃であった。中間体(1)のGPCチャートを
図1に、
13C-NMRチャートを
図2に、FD-MSチャートを
図3に示す。
【0090】
<中間体(1)のエポキシ化反応>
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、先で得た中間体(1)250.0質量部、エピクロルヒドリン281.2質量部、イソプロピルアルコール75.9質量部を仕込み、溶解させた。40℃まで昇温し、49重量%水酸化ナトリウム水溶液9.30質量部を4時間かけて添加した。更に、40℃から60℃まで昇温しながら、49重量%水酸化ナトリウム溶液62.0質量部を4時間かけて添加して反応させた。反応終了後、減圧条件下で150℃まで加熱し、未反応エピクロルヒドリンを留去して、粗生成物を得た。得られた粗生成物にメチルイソブチルケトン438.8質量部とベンジルトリブチルアンモニウムクロリド1.46質量部を加え溶解させた。更に、5重量%水酸化ナトリウム水溶液50.9質量部を加え、80℃で1時間反応させた。その後、洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返し、共沸させて系内を脱水した。精密濾過後、溶媒を減圧条件下で留去して、エポキシ樹脂(A1)を得た。得られたエポキシ樹脂(A1)の軟化点は63℃、エポキシ基当量は465g/当量、重量平均分子量(Mw)は1,138であった。エポキシ樹脂(A1)のGPCチャートを
図4に、
13C-NMRチャートを
図5に、FD-MSチャートを
図6に示す。また、重量平均分子量から算出した前記一般式(1)におけるkの値は5.4であった。
【0091】
実施例1 エポキシ樹脂(1)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、ビスフェノールAとを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70質量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビスフェノールAとの合計質量に対し1000ppm仕込み、8.5時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分29.6質量%のエポキシ樹脂(1)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートを
図7に示す。エポキシ樹脂(1)のエポキシ基当量は30,930g/当量、重量平均分子量(Mw)は482,319であった。
【0092】
実施例2 エポキシ樹脂(2)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、ビスフェノールアセトフェノンとを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70重量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビスフェノールアセトフェノンとの合計質量に対し1000ppm仕込み、3時間反応させた。更にシクロヘキサノンを加えて不揮発分を50質量%に調整し、7時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分31.1質量%のエポキシ樹脂(2)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(2)のGPCチャートを
図8に示す。エポキシ樹脂(2)のエポキシ基当量は15,677g/当量、重量平均分子量(Mw)は481,765であった。
【0093】
実施例3 エポキシ樹脂(3)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、ビフェノールとを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70重量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビフェノールとの合計質量に対し1000ppm仕込み、4時間反応させた。更にシクロヘキサノンを加えて不揮発分を50質量%に調整し、6時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分30.4質量%のエポキシ樹脂(3)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(3)のGPCチャートを
図9に示す。エポキシ樹脂(3)のエポキシ基当量は18,443g/当量、重量平均分子量(Mw)は25,880であった。
【0094】
実施例4 エポキシ樹脂(4)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、下記構造式で表されるビスフェノール化合物(本州化学工業社製「S-BOC」)とを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70重量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビフェノール化合物との合計質量に対し1000ppm仕込み、4時間反応させた。更にシクロヘキサノンを加えて不揮発分を50質量%に調整し、6時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分31.2質量%のエポキシ樹脂(4)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(4)のGPCチャートを
図10に示す。エポキシ樹脂(4)のエポキシ基当量は13,193g/当量、重量平均分子量(Mw)は21,265であった。
【0095】
【0096】
実施例5 エポキシ樹脂(5)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、下記構造式で表されるビスフェノール化合物(本州化学工業社製「BisP-HTG」)とを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70重量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビフェノール化合物との合計質量に対し1000ppm仕込み、4時間反応させた。更にシクロヘキサノンを加えて不揮発分を50質量%に調整し、6時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分31.7質量%のエポキシ樹脂(5)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(5)のGPCチャートを
図11に示す。エポキシ樹脂(5)のエポキシ基当量は27,028g/当量、重量平均分子量(Mw)は154,901であった。
【0097】
【0098】
実施例6 エポキシ樹脂(6)の製造
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに合成例1で得たエポキシ樹脂(A1)と、下記構造式で表される2,6-ジヒドロキシナフタレンとを、エポキシ基当量と水酸基当量との比(エポキシ基当量)/(水酸基当量)が1.03となる割合で仕込み、不揮発分が70重量%になるようにシクロヘキサノンを加えて、150℃まで加熱して溶解させた。1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製「Curezol 1B2MZ」)を、エポキシ樹脂(A1)とビフェノール化合物との合計質量に対し1000ppm仕込み、4時間反応させた。更にシクロヘキサノンを加えて不揮発分を50質量%に調整し、7時間反応させた。シクロヘキサノンを追加で加え、不揮発分31.4質量%のエポキシ樹脂(6)溶液を得た。得られたエポキシ樹脂(6)のGPCチャートを
図12に示す。エポキシ樹脂(6)のエポキシ基当量は26,699g/当量、重量平均分子量(Mw)は44,349であった。
【0099】
比較製造例1 エポキシ樹脂(1’)の製造
攪拌機を取り付けたフラスコに3,3’、5,5’-テトラメチル-4、4’-ビフェノールジグリシジルエーテル(三菱ケミカル社製「YX4000」)100質量部、ビスフェノールアセトフェノン77.2質量部、50%テトラメチルアンモニウムクロライド水溶液0.4質量部、及びシクロヘキサノン55質量部を入れ、窒素ガス雰囲気下、180℃で5時間反応させ、シクロヘキサノンを追加で添加し、不揮発分30.9質量%のエポキシ樹脂(1’)溶液を得た。エポキシ樹脂(1’)のエポキシ基当量は17,698g/当量であった。
【0100】
実施例7~12及び比較例1
<硬化性樹脂組成物の製造>
実施例1~6及び比較製造例で得たエポキシ樹脂(1)~(6)又は(1’)のいずれかを樹脂固形分換算で50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON850-S」)23質量部、活性エステル樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HPC-8000-65T」)を樹脂固形分換算で27質量部、4-(ジメチルアミノ)ピリジン0.25質量部を配合し、混合して、トルエンを加えて不揮発分30質量%に希釈し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0101】
<硬化物の製造>
先で得た硬化性樹脂組成物を、アプリケータを用いて鏡面アルミ基板上に塗布した。80℃で1時間、100℃で30分、120℃で30分、180℃で1時間硬化させて、膜厚約30μmの硬化塗膜を得た。
【0102】
<誘電正接の測定>
先で得た硬化塗膜をアルミ基板から剥離し、加熱真空乾燥した後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した。その後、JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用いて、エポキシ樹脂フィルムの誘電正接を測定した。測定条件は1GHzと10GHzとの2点とした。また、両測定値の差の絶対値を周波数依存性として評価した。
【0103】
<可撓性の評価>
先で得た硬化塗膜をアルミ基板から剥離し、株式会社 島津製作所社製「AGS-X」を用いて、10mm/分の速度で引張試験を行い、硬化塗膜の伸び率を判定した。以下に判定基準を示す。
3%以上:A
3%未満:B
【0104】