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特開2022-80382卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法および調理用油脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080382
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法および調理用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A23D9/00 506
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191401
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】綾 恵弥
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 利佳
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DG11
4B026DH05
4B026DK01
4B026DL02
4B026DP01
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】
卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さを抑制する方法および卵風味を付与できる調理用油脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物に対して、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有せしめることを特徴とする、卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法および調理用油脂組成物。(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤、(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物に対して、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有せしめることを特徴とする、卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
【請求項2】
前記添加剤の含有量を、0.01質量%以上10質量%以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記卵黄油の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の前記方法。
【請求項4】
前記添加剤(1)の乳化剤が、ベヘン酸を30質量%以上70質量%以下含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項5】
前記添加剤(1)の乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項6】
前記添加剤(2)のn-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸が、アラキドン酸であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項7】
前記食用油脂が、コーン油、大豆油および菜種油からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項8】
食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物であって、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、調理用油脂組成物。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
【請求項9】
前記添加剤を、0.01質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする、請求項8に記載の前記組成物。
【請求項10】
前記卵黄油を、0.1質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の前記組成物。
【請求項11】
前記添加剤(1)の乳化剤が、ベヘン酸を30質量%以上70質量%以下含むことを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の前記組成物。
【請求項12】
前記添加剤(1)の乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の前記組成物。
【請求項13】
前記添加剤(2)のn-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸が、アラキドン酸であることを特徴とする、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の前記組成物。
【請求項14】
前記食用油脂が、コーン油、大豆油および菜種油からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵黄油を含む調理用油脂組成物によって卵風味を付与するに際し、卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
卵はその風味、旨味が調理において非常に重要な要素となるため、加工食品分野では多岐にわたって使用されている。卵は、例えば、チャーハンなどの炒め物や親子丼など、一般的なメニューにおける必須の材料となっている。
【0003】
しかし、卵を加熱した食品は卵風味が損なわれやすいため、卵そのものに代えて卵黄油を用いて卵風味を付与することが試みられている。
【0004】
特許文献1には、卵黄油を含む油脂組成物を焼き物、炒め物、煮物、あえ物などに使用することで、良好な卵風味を付与できることが記載されている。
【0005】
卵黄油は、栄養もあり卵風味が食品に味わいを与えるが、一方で、加熱せずに卵黄油を用いる際に、卵黄油由来の生卵の不快な生臭さが好まれない傾向があり汎用性に欠ける場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4088013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、硬化油を配合して油脂組成物中の卵黄油の分離および沈降を抑制することが記載されている。しかしながら、喫食時に食品に卵黄油を付与すると好ましくない生卵臭が感じられるという本発明の課題については開示も示唆もない。
【0008】
そこで、本発明においては、卵黄油を含む調理用油脂組成物について、卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さを抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本明細書において「生卵臭」とは、生卵の風味のうち「不快な生臭さ」を意味する。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の[1]乃至[11]に係る発明を提供する。
[1]
食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物に対して、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有せしめることを特徴とする、卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
[2]
前記添加剤の含有量を、0.01質量%以上10質量%以下とすることを特徴とする、前記方法。
[3]
前記卵黄油の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、前記方法。
[4]
前記添加剤(1)の乳化剤が、ベヘン酸を30質量%以上70質量%以下含むことを特徴とする、前記方法。
[5]
前記添加剤(1)の乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、前記方法。
[6]
前記添加剤(2)のn-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸が、アラキドン酸であることを特徴とする、前記方法。
[7]
前記食用油脂が、コーン油、大豆油および菜種油からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、前記方法。
[8]
食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物であって、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、調理用油脂組成物。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
[9]
前記添加剤を、0.01質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする、前記組成物。
[10]
前記卵黄油を、0.1質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする、前記組成物。
[11]
前記添加剤(1)の乳化剤が、ベヘン酸を30質量%以上70質量%以下含むことを特徴とする、前記組成物。
[12]
前記添加剤(1)の乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、前記組成物。
[13]
前記添加剤(2)のn-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸が、アラキドン酸であることを特徴とする、前記組成物。
[14]
前記食用油脂が、コーン油、大豆油および菜種油からなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、前記組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抑制方法によれば、卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さを効果的に抑制することを可能とする。
【0012】
また、本発明の調理用油脂組成物によれば、非加熱で用いた場合においても生卵の不快な生臭さが感じられず、食品に対して良好な卵風味を付与することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の卵黄油由来の生卵臭を抑制する方法(以降、単に「生卵臭抑制方法」と称することがある。)および調理用油脂組成物について詳しく説明する。なお、以降に述べる実施形態は、発明の一態様であり、発明を限定するものではない。
【0014】
[1.生卵臭抑制方法]
本発明の生卵臭抑制方法は、食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物に対して、以下の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含有せしめることを特徴とする。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
【0015】
[2.食用油脂]
食用油脂としては、食品に供される油脂であれば特に限定されないが、例えば、コーン油、菜種油、大豆油、パームオレイン、ごま油、米ぬか油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、クルミ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂などの植物油脂;牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚油などの動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられる。また、これらの油脂を、硬化、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理をした加工油脂を使用することができる。これらの食用油脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくはコーン油、菜種油、大豆油、ゴマ油、ひまわり油であり、より好ましくはコーン油、菜種油、大豆油であり、さらに好ましくはコーン油である。
【0016】
[3.卵黄油]
卵黄油は、卵の卵黄から有機溶媒で抽出し、蛋白質等の水溶性成分を除去して得た卵黄中の脂質分から構成された卵の風味を有しているものである。卵黄油の抽出については、種々の方法が知られているが、食用用途においてはエタノールによる溶媒抽出法が一般的である。
【0017】
前記調理用油脂組成物中における卵黄油の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。卵黄油の含有量を上記範囲内とすることにより、食品に対して良好な卵風味を付与することを可能とする。
【0018】
[4.添加剤(1)]
添加剤(1)は、構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤である。構成脂肪酸中のベヘン酸の含有量は、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また、添加剤(1)の乳化剤は、特に限定するものではないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン有機酸脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることがより好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびモノグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることがさらに好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが特に好ましい。
【0020】
乳化剤(1)の乳化剤のHLBは、1以上7以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
【0021】
[5.添加剤(2)]
添加剤(2)は、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸である。n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸とは、炭素数が18以上の脂肪酸であり、末端のメチル基から6番目の炭素に最初の二重結合があるもので、このうち特に、炭素数が20以上24以下かつ二重結合を4以上6以下有する長鎖高度不飽和脂肪酸が好ましい。n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸としては、例えば、アラキドン酸およびドコサテトラエン酸が挙げられ、アラキドン酸を用いることが好ましい。
【0022】
n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸の原料は特に限定されないが、例えば、各種動植物、微生物、藻類が挙げられる。より具体的には、特開平10-070992号公報および特開平10-191886号公報に記載されたアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂を使用することができる。
【0023】
また、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸は、当該脂肪酸、当該脂肪酸を構成脂肪酸として含むトリグリセリド、ジグリセリンのいずれか1種以上を酸化処理した物であることが好ましい。酸化処理の方法は特に限定しないが、例えば、加熱処理が挙げられる。酸化処理のより具体的な方法としては、40℃以上200℃以下の温度にて、0.1時間以上240時間以下加熱する方法を採用することができる。加熱温度は、80℃以上180℃以下とすることが好ましい。また、加熱時間は、0.5時間以上72時間以下とすることが好ましい。また、酸化処理においては、空気、酸素および窒素からなる群から選ばれる1種または2種以上を吹き込みながら加熱してもよい。
【0024】
本発明の生卵臭抑制方法によれば、食用油脂および卵黄油を含む調理用油脂組成物に対して、既述の添加剤の含有量を、0.01質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.02質量%以上8質量%以下とすることがより好ましく、0.02質量%以上5質量%以下とすることがさらに好ましい。添加剤の含有量を上記範囲内とすることにより、前記調理用油脂組成物の卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さを抑制することを可能とする。
【0025】
[6.調理用油脂組成物]
本発明の調理用油脂組成物は、食用油脂および卵黄油を含み、既述の(1)および(2)からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を含むことを特徴とする。
(1) 構成脂肪酸としてベヘン酸を含む乳化剤
(2) n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸
【0026】
本発明の調理用油脂組成物における食用油脂、卵黄油および添加剤の説明は、[2.食用油脂]、[3.卵黄油]、「4.添加剤(1)」および[5.添加剤(2)]と同じであるため省略する。
【0027】
本発明の調理用油脂組成物は、既述の添加剤を0.01質量%以上10質量%以下含むことが好ましく、0.02質量%以上8質量%以下含むことがより好ましく、0.02質量%以上5質量%以下含むことがさらに好ましい。添加剤の含有量を上記範囲内とすることにより、卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さが抑制された調理用油脂組成物を得ることができる。このような本発明の調理用油脂組成物によれば、非加熱で用いた場合においても、食品に対して良好な卵風味を付与することを可能とする。
【0028】
本発明の調理用油脂組成物中における卵黄油の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。卵黄油の含有量を上記範囲内とすることにより、食品に対して良好な卵風味を付与することを可能とする。
【0029】
本発明の調理用油脂組成物は、既述の食用油脂、卵黄油および添加剤(1)および添加剤(2)以外にも、通常、食用の油脂組成物に含有せしめる物質を添加してもよい。具体的には、添加剤(1)以外の乳化剤、香料、酸化防止剤、シリコーンなどが挙げられる。
【0030】
本発明の調理用油脂組成物によれば、卵黄油に由来する生卵の不快な生臭さが抑制されているため、非加熱で用いた場合においても、食品に対して良好な卵風味を付与することを可能とする。
【0031】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【実施例0032】
本実施例に用いた食用油脂、卵黄油および添加剤を説明する。

1.食用油脂
コーン油:Jコーン油、株式会社J-オイルミルズ製
大豆油:J大豆白絞油、株式会社J-オイルミルズ製
菜種油:Jキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製

2.卵黄油
卵黄油:ヨークオイル、太陽化学株式会社製

3.添加剤
乳化剤(1):ポリグリセリン脂肪酸エステル、TAISET AD、太陽化学株式会社製、ベヘン酸含有量43質量%、HLB3
乳化剤(2):ポリグリセリン脂肪酸エステル、DO-100V、理研ビタミン株式会社製、ベヘン酸含有量0質量%、HLB7.4
乳化剤(3):ポリグリセリン脂肪酸エステル、A-143E、太陽化学株式会社製、ベヘン酸含有量0質量%、HLB8
乳化剤(4):ポリグリセリン脂肪酸エステル、CV-1L、坂本薬品工業株式会社製、ベヘン酸含有量57.7質量%、HLB2.7
n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸:アラキドン酸:AA-4W、株式会社J-オイルミルズ製
【0033】
乳化剤(1)乃至(4)の脂肪酸組成の分析結果を表1に示す。なお、脂肪酸組成の分析は、社団法人日本油化学会制定の基準油脂分析試験法(2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に準じて行った。表1において、空欄は対象の脂肪酸が検出されなかったことを示す。
【0034】
【表1】
【0035】
比較例および実施例の評価は、下記の評価指標について意識合わせを行った専門パネラー3名の官能評価により行った。評価結果は、専門パネラーの合議にて決定し、点数が低いほど生卵臭の抑制効果が高いことを示す。評価指標を以下に示す。
<「生卵臭」の評価指標>
0点:生卵臭を感じない
1点:生卵臭をわずかに感じるが、不快感なく喫食できる
2点:生卵臭をやや感じるが、不快感なく喫食できる
3点:生卵臭を感じ、喫食時に不快感がある
4点:生卵臭をやや強く感じ、喫食時に不快感がある
5点:生卵臭を強く感じ、喫食時に不快感がある
【0036】
<実施例1>
実施例1においては、表2に示す配合にて調理用油脂組成物を調製し、スクランブルエッグに添加して喫食し、「生卵臭」について官能評価を行った。評価手順を以下に説明する。評価結果を表2に示す。
<評価手順>
(1)とき卵50g、牛乳7.5gおよび塩0.25gを混ぜ合わせて卵液を得た。
(2)表2に記載の配合にて食用油脂、卵黄油および添加剤を混合して比較例および実施例の調理用油脂組成物を得た。
(3)フライパンに、菜種油1.5gを入れ、30秒間強火で熱した。
(4)(3)のフライパンに卵液を入れて1分間強火で炒めてスクランブルエッグを得た。
(5)スクランブルエッグに(2)の調理用油脂組成物5gを添加して官能評価を行った。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示すように、乳化剤(1)または乳化剤(4)を含む調理用油脂組成物を添加した実施例1-1乃至1-9においては、いずれも喫食時に生卵臭を感じなかった。これに対して、コーン油および卵黄油を混合した比較例1-1においては生卵臭を強く感じ、喫食時に不快感があった。さらに、構成脂肪酸中のベヘン酸含有量が0質量%の乳化剤(2)または乳化剤(3)を含む調理用油脂組成物を添加した比較例1-2および1-3においては、いずれも生卵臭を感じ、喫食時に不快感があった。なお、参照例1においては、生卵臭は感じられなかった。これらの結果から、生卵臭は卵黄油に由来することを確認した。そして、卵黄油に由来する生卵臭は、調理用油脂組成物に対して、構成脂肪酸中にベヘン酸を含有する乳化剤を添加することにより抑制できることが明らかとなった。卵黄油を3質量%含有する調理用油脂組成物においては、乳化剤(1)または乳化剤(4)を0.05質量%以上8質量%含有させることにより生卵臭抑制効果が得られた。また、生卵臭抑制効果は、乳化剤の構成脂肪酸中のベヘン酸含有量43.0質量%以上57.7質量%以下において得られた。
【0039】
実施例1-1乃至1-9の調理用油脂性組成物においては、スクランブルエッグを喫食する際に添加することにより、好ましい甘い卵風味が感じられた。食用油脂は、コーン油、大豆油および菜種油のいずれを含む調理用油脂組成物においても、好ましい卵風味が感じられた。
【0040】
<実施例2>
実施例2においては、表3に示す配合の調理用油脂組成物を用いた以外は、実施例1と同じ方法にてスクランブルエッグを調製し「生卵臭」について官能評価を行った。また、専門パネラー3名にて、対照例2を「対照」とし、比較例および実施例の調理用油脂組成物を添加したスクランブルエッグを喫食した際の「加熱した卵風味の強さ」について官能評価した。評価結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示すように、アラキドン酸のみ、アラキドン酸と乳化剤(1)、またはアラキドン酸と乳化剤(4)をそれぞれ含む調理用油脂組成物を添加した実施例2-1乃至2-3においては、いずれも卵黄油に由来する生卵臭の抑制効果が得られた。また、アラキドン酸を含む調理用油脂組成物を添加したスクランブルエッグにおいては、対照のスクランブルエッグに比べて、加熱した卵風味が向上した。
【0043】
アラキドン酸のみ、アラキドン酸と乳化剤(1)、またはアラキドン酸と乳化剤(4)をそれぞれ含む本発明の調理用油脂組成物は、加熱した卵食品に対して好ましい卵風味を付与することができるとともに、加熱した卵風味を向上できることが明らかとなった。
【0044】
なお、本発明の生卵臭抑制方法および調理用油脂組成物は、上述の実施形態および実施例に限定するものではなく、発明の特徴および効果を損ねない範囲で種々の変更が可能である。