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特開2022-80420ターゲット供給装置、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080420
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ターゲット供給装置、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220523BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191478
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 浩司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 文男
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA17
4C092AB15
4C092AB19
4C092AB20
4C092AC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドロップレットが不安定な状態となる時間を短くすることで、EUV光生成装置の不具合を抑制し得るターゲット供給装置を提供する。
【解決手段】ターゲット供給装置40は、ターゲット物質を貯蔵するタンク41と、タンク内の圧力を調節する圧力調節器43と、タンク内のターゲット物質をろ過するフィルタ51aと、フィルタを通過したターゲット物質のドロップレットを吐出するノズル42とを備える。また、ターゲット供給装置は、ノズルからのドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、タンク内の圧力がターゲットセンサによってドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、タンク内の圧力の昇圧速度がドロップレットの吐出の検出前よりもドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器を制御するプロセッサ120とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を貯蔵するタンクと、
前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、
前記タンク内の前記ターゲット物質をろ過するフィルタと、
前記フィルタを通過した前記ターゲット物質のドロップレットを吐出するノズルと、
前記ノズルからの前記ドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、
前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、前記タンク内の前記圧力の昇圧速度が前記ドロップレットの吐出の検出前よりも前記ドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、前記圧力調節器を制御するプロセッサと、
を備える
ターゲット供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出されてから所定時間経過後に、前記昇圧速度を前記ドロップレットの吐出の検出前よりも速くする。
【請求項3】
請求項2に記載のターゲット供給装置であって、
前記所定時間は、1ms以上1s以下である。
【請求項4】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の前記圧力から前記目標圧力の概ね90%の圧力に昇圧するまでに、前記昇圧速度を前記ドロップレットの吐出の検出前よりも速くする。
【請求項5】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の前記圧力から当該圧力の概ね130%の圧力に昇圧するまでに、前記昇圧速度を前記ドロップレットの吐出の検出前よりも速くする。
【請求項6】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記ドロップレット検出器による前記ドロップレットの吐出の検出が前記ターゲット供給装置の設置から初めての検出ではない状態において、前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の前記圧力よりも低い圧力から昇圧させる場合に、前記昇圧速度を前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された後において速くした速度にする。
【請求項7】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が検出されず、前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出される際に想定される前記タンク内の前記圧力よりも大きい圧力以上である場合において、前記タンク内の前記圧力が降圧するように、前記圧力調節器を制御する。
【請求項8】
請求項7に記載のターゲット供給装置であって、
前記プロセッサは、前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出される際に想定される前記タンク内の前記圧力よりも降圧するように、前記圧力調節器を制御する。
【請求項9】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記ドロップレット検出器は、前記ドロップレットの撮像によって前記ドロップレットの吐出を検出する。
【請求項10】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記ドロップレット検出器は、前記ドロップレットの吐出によって前記タンク内から前記ノズルを介して放出されるガスの検出によって前記ドロップレットの吐出を検出する。
【請求項11】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記圧力調節器は、
ガス供給源及び前記タンクに連通し、前記ガス供給源から前記タンクにガスを供給する供給路と、
排気口を含み、前記供給路に連通し、前記排気口を介して前記タンク内の前記ガスを排気する排気路と、
前記供給路に設けられる加圧用バルブと、
前記排気路に設けられる減圧用バルブと、
前記供給路に設けられる圧力センサと、
を備える。
【請求項12】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記ドロップレットの吐出の検出後における前記昇圧速度は、0.2MPa/s以上1MPa/s以下である。
【請求項13】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記ドロップレットの吐出の検出前における前記昇圧速度は、0.002MPa/s以上0.0067MPa/s以下である。
【請求項14】
請求項1に記載のターゲット供給装置であって、
前記ドロップレットの吐出の検出前における前記昇圧速度は、前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出される直前の速度である。
【請求項15】
プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、
前記プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、
前記プラズマ生成領域において前記ドロップレットからプラズマが生成されるように前記ドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、
を備え、
前記ターゲット供給装置は、
前記ターゲット物質を貯蔵するタンクと、
前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、
前記タンク内の前記ターゲット物質をろ過するフィルタと、
前記フィルタを通過した前記ターゲット物質の前記ドロップレットを吐出するノズルと、
前記ノズルからの前記ドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、
前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、前記タンク内の前記圧力の昇圧速度が前記ドロップレットの吐出の検出前よりも前記ドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、前記圧力調節器を制御するプロセッサと、
を備える
極端紫外光生成装置。
【請求項16】
プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、
前記プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、
前記プラズマ生成領域において前記ドロップレットからプラズマが生成されるように前記ドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、
を備え、
前記ターゲット供給装置は、
前記ターゲット物質を貯蔵するタンクと、
前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、
前記タンク内の前記ターゲット物質をろ過するフィルタと、
前記フィルタを通過した前記ターゲット物質の前記ドロップレットを吐出するノズルと、
前記ノズルからの前記ドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、
前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、前記タンク内の前記圧力の昇圧速度が前記ドロップレットの吐出の検出前よりも前記ドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、前記圧力調節器を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成装置によって、前記ターゲット物質に前記レーザ光を照射することによって前記プラズマを生成し、前記プラズマから生成される極端紫外光を露光装置に出射し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置によって感光基板上に前記極端紫外光を露光すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、
前記プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、
前記プラズマ生成領域において前記ドロップレットからプラズマが生成されるように前記ドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、
を備え、
前記ターゲット供給装置は、
前記ターゲット物質を貯蔵するタンクと、
前記タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、
前記タンク内の前記ターゲット物質をろ過するフィルタと、
前記フィルタを通過した前記ターゲット物質の前記ドロップレットを吐出するノズルと、
前記ノズルからの前記ドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、
前記タンク内の前記圧力が前記ドロップレット検出器によって前記ドロップレットの吐出が前記ターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、前記タンク内の前記圧力の昇圧速度が前記ドロップレットの吐出の検出前よりも前記ドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、前記圧力調節器を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成装置によって、前記ターゲット物質に前記レーザ光を照射することによって前記プラズマを生成し、前記プラズマから生成される極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給装置、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme UltraViolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8841639号明細書
【特許文献2】米国特許第10225917号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるターゲット供給装置は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンク内のターゲット物質をろ過するフィルタと、フィルタを通過したターゲット物質のドロップレットを吐出するノズルと、ノズルからのドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、タンク内の圧力がドロップレット検出器によってドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、タンク内の圧力の昇圧速度がドロップレットの吐出の検出前よりもドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器を制御するプロセッサと、を備えてもよい。
【0006】
本開示の一態様による極端紫外光生成装置は、プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、プラズマ生成領域においてドロップレットからプラズマが生成されるようにドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、を備え、ターゲット供給装置は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンク内のターゲット物質をろ過するフィルタと、フィルタを通過したターゲット物質のドロップレットを吐出するノズルと、ノズルからのドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、タンク内の圧力がドロップレット検出器によってドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、タンク内の圧力の昇圧速度がドロップレットの吐出の検出前よりもドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器を制御するプロセッサと、を備えてもよい。
【0007】
本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、プラズマ生成領域においてドロップレットからプラズマが生成されるようにドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、を備え、ターゲット供給装置は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンク内のターゲット物質をろ過するフィルタと、フィルタを通過したターゲット物質のドロップレットを吐出するノズルと、ノズルからのドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、タンク内の圧力がドロップレット検出器によってドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、タンク内の圧力の昇圧速度がドロップレットの吐出の検出前よりもドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成装置によって、ターゲット物質にレーザ光を照射することによってプラズマを生成し、プラズマから生成される極端紫外光を露光装置に出射し、電子デバイスを製造するために、露光装置によって感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0008】
本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、プラズマ生成領域を含むチャンバ装置と、プラズマ生成領域にターゲット物質のドロップレットを供給するターゲット供給装置と、プラズマ生成領域においてドロップレットからプラズマが生成されるようにドロップレットにレーザ光を照射するレーザ装置と、を備え、ターゲット供給装置は、ターゲット物質を貯蔵するタンクと、タンク内の圧力を調節する圧力調節器と、タンク内のターゲット物質をろ過するフィルタと、フィルタを通過したターゲット物質のドロップレットを吐出するノズルと、ノズルからのドロップレットの吐出を検出するドロップレット検出器と、タンク内の圧力がドロップレット検出器によってドロップレットの吐出がターゲット供給装置の設置から初めて検出された際の圧力から目標圧力に昇圧する前までの間において、タンク内の圧力の昇圧速度がドロップレットの吐出の検出前よりもドロップレットの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成装置によって、ターゲット物質にレーザ光を照射することによってプラズマを生成し、プラズマから生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す電子デバイスの製造装置とは別の電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3図3は、極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図4図4は、圧力調節器の概略構成例を示す模式図である。
図5図5は、比較例におけるタンク内の圧力と、当該圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。
図6図6は、ノズルから吐出したドロップレットが不安定な状態であることの一例を示す図である。
図7図7は、ノズルから吐出したドロップレットが不安定な状態であることの別の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
図9図9は、実施形態1におけるタンク内の圧力と、当該圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。
図10図10は、実施形態2のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
図11図11は、ドロップレットが再吐出する場合におけるタンク内の圧力と、当該圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。
図12図12は、実施形態3における極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図13図13は、実施形態3のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
【実施形態】
【0010】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3の極端紫外光生成装置の説明
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0013】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0014】
図2は、図1に示す電子デバイス製造装置とは別の電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。図2に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び検査装置300を含む。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0015】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、図1に示すように外部装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、図2に示すように外部装置としての検査装置300にEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100と同様の作用・効果を得ることができる。
【0016】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。図3に示すように、EUV光生成装置100は、レーザ装置LD、チャンバ装置10、プロセッサ120、及びレーザ光デリバリ光学系30を主な構成として含む。
【0017】
チャンバ装置10は、密閉可能な容器である。チャンバ装置10は、低圧雰囲気の内部空間を囲う内壁10bを含む。チャンバ装置10はサブチャンバ15を含み、サブチャンバ15にターゲット供給装置40が配置されている。ターゲット供給装置40は、サブチャンバ15の壁を貫通するように取り付けられている。ターゲット供給装置40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットDLをチャンバ装置10の内部空間に供給している。ドロップレットDLは、ターゲットとも呼ばれる。
【0018】
タンク41は、その内部にドロップレットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、プロセッサ120に電気的に接続されている。
【0019】
また、タンク41は、タンク41内及びノズル42に連通する連通部を含む。連通部は、タンク41内からノズル42に向かってターゲット物質が流れる流路である。連通部は連通部の他の部分よりも径が大きい拡径部を含み、拡径部にはフィルタ部51が隙間なく収容されている。
【0020】
フィルタ部51は、フィルタ51a及びフィルタホルダ51bを含む。
【0021】
フィルタ51aは、フィルタ51aを通過したターゲット物質をろ過し、ターゲット物質からパーティクルを除去する。パーティクルは、酸化スズといった金属酸化物である。このようなフィルタ51aは、例えば、パーティクルを捕集するために、多孔質部材で構成されている。従って、フィルタ51aには無数の貫通孔が位置しており、例えば貫通孔の口径は概ね3μm以上10μm以下である。フィルタ51aの厚みは、概ね5mmである。フィルタ51aは、多孔質ガラスであってもよい。或いは、フィルタ51aは、複数の多孔質の板状部材が積層された構造を有してもよいし、複数の多孔質のセラミックスであってもよい。
【0022】
フィルタ51aは筒状のフィルタホルダ51bの中空部に配置され、フィルタ51aの外周面はフィルタホルダ51bの内周面に隙間なく密着しており、当該外周面及び当該内周面の間は封止されている。また、フィルタホルダ51bの外面は拡径部における内面に隙間なく密着しており、当該外面及び当該内面の間は封止されている。
【0023】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、フィルタ51aを通過したターゲット物質を吐出する。ノズル42には、ピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ120に電気的に接続されている。ピエゾ素子47の動作により、ノズル42から吐出するターゲット物質はドロップレットDLにされる。
【0024】
タンク41、ノズル42、及びフィルタホルダ51bのそれぞれの材質は、ターゲット物質であるスズとの反応性が低い材質である。このような材質には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、またはタンタル(Ta)が挙げられる。
【0025】
図4は、圧力調節器43の概略構成例を示す模式図である。
【0026】
圧力調節器43は、ガス供給源53及びタンク41内と連通する配管43aと、配管43aに設けられるバルブ43bと、配管43aに連通する配管43cと、配管43cに設けられるバルブ43dと、配管43aにおいてバルブ43bとタンク41との間に設けられる圧力センサ43eとを含む。
【0027】
ガス供給源53は、アルゴン(Ar)ガス、及びヘリウム(He)ガス等の不活性ガスが充填されているボンベである。配管43aは、ガス供給源53からタンク41内に不活性ガスを供給する供給路である。配管43aは配管43cの一端に連通し、配管43cの他端には排気口43fが設けられている。配管43cは、排気口43fを介してタンク41内の不活性ガスを排気する排気路である。
【0028】
バルブ43b,43dは、配管43a,43cを開閉する調節弁である。図4では、バルブ43bは配管43aにおいて配管43a及び配管43cの連通部とガス供給源53との間に設けられている例を示している。バルブ43bは、圧力センサ43eよりも供給路における上流側に設けられていればよい。それぞれのバルブ43b,43dには、不図示のアクチュエータが取り付けられている。それぞれのアクチュエータは、プロセッサ120に電気的に接続されている。それぞれのアクチュエータはプロセッサ120から入力される信号に基づいてバルブ43b,43dを開閉し、開閉によってタンク41内は加圧或いは減圧される。加圧の場合、バルブ43dのアクチュエータはバルブ43dを閉じ、バルブ43bのアクチュエータはバルブ43bの開き具合を調節する。また、減圧の場合、バルブ43bのアクチュエータはバルブ43bを閉じ、バルブ43dのアクチュエータはバルブ43dの開き具合を調節する。バルブ43bの開き具合によって加圧によるタンク41内の圧力の昇圧速度が調節され、バルブ43dの開き具合によって減圧によるタンク41内の圧力の降圧速度が調節される。なお、バルブ43bがバルブ43dよりも大きく開くことでタンク41内が加圧されてもよいし、バルブ43dがバルブ43bよりも大きく開くことで、タンク41内が減圧されてもよい。また、圧力調節器43の構成は、ガス供給源53からの不活性ガスの供給によってタンク41内を加圧し、タンク41内からの不活性ガスの排気によってタンク41内を減圧すれば特に限定されない。従って、圧力調節器43では、バルブ43b,43dではなく、三方弁が配管43a及び配管43cの連通部に設けられてもよい。
【0029】
圧力センサ43eは、配管43aを介してタンク41内の圧力を計測する。圧力センサ43eは、プロセッサ120に電気的に接続されている。なお、圧力センサ43eは、タンク41に設けられてもよい。
【0030】
図3に戻り、チャンバ装置10の説明を続ける。チャンバ装置10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ装置10の内壁10bに取り付けられる箱体である。ターゲット回収部14は、チャンバ装置10の内壁10bに連続する開口10aを介してチャンバ装置10の内部空間に連通している。ターゲット回収部14及び開口10aは、ノズル42の直下に配置される。ターゲット回収部14は、開口10aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットDLを回収し、この不要なドロップレットDLが溜まるドレインタンクである。
【0031】
チャンバ装置10の内壁10bには、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、ウィンドウ12によって塞がれ、ウィンドウ12をレーザ装置LDから出射されるパルス状のレーザ光90が透過する。
【0032】
また、チャンバ装置10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光90を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光する光を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ装置10の内部空間でのレーザ光90の集光位置がプロセッサ120から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光90が当該集光位置においてドロップレットDLを構成するターゲット物質を照射すると、照射によってプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が放射される。以下においては、プラズマが生成される領域を、プラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。
【0033】
チャンバ装置10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面75aを含むEUV光集光ミラー75が配置される。反射面75aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面75aは、第1焦点及び第2焦点を有する。反射面75aは、例えば、その第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、その第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。図3では、第1焦点及び第2焦点を通る直線が焦点直線L0として示されている。
【0034】
また、EUV光生成装置100は、チャンバ装置10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部19を含む。接続部19の内部には、アパーチャが形成された壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部19はEUV光生成装置100におけるEUV光101の出射口であり、EUV光101は接続部19から出射されて露光装置200に入射する。
【0035】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26及びターゲットセンサ27を含む。圧力センサ26及びターゲットセンサ27は、チャンバ装置10に取り付けられ、プロセッサ120に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ装置10の内部空間の圧力を計測する。ターゲットセンサ27は、例えば撮像機能を含み、プロセッサ120からの指示によってノズル42のノズル孔から吐出するドロップレットDLの存在、軌跡、位置、流速等を検出する。ターゲットセンサ27は、チャンバ装置10の内部に配置されてもよいし、チャンバ装置10の外部に配置されチャンバ装置10の壁に設けられる不図示のウィンドウを介してドロップレットDLを検出してもよい。ターゲットセンサ27は、不図示の受光光学系と、例えばCCD(Charge-Coupled Device)またはフォトダイオード等の不図示の撮像部とを含む。受光光学系は、ドロップレットDLの検出精度を向上させるために、ドロップレットDLの軌跡及びその周囲における像を撮像部の受光面に結像する。ドロップレットDLがターゲットセンサ27の視野を確保するために配置されるターゲットセンサ27の不図示の光源部による光の集光領域を通過するときに、撮像部はドロップレットDLの軌跡及びその周囲を通る光の変化を検出する。撮像部は、検出した光の変化を、ドロップレットDLのイメージデータに関わる信号としての電気信号に変換する。撮像部は、この電気信号をプロセッサ120に出力する。
【0036】
レーザ装置LDは、バースト動作する光源であるマスターオシレータを含む。マスターオシレータは、バーストオンでパルス状のレーザ光90を出射する。マスターオシレータは、例えば、ヘリウムや窒素等が炭酸ガス中に混合された気体を放電によって励起することで、レーザ光90を出射するレーザ装置である。或いは、マスターオシレータは、量子カスケードレーザ装置でもよい。また、マスターオシレータは、Qスイッチ方式により、パルス状のレーザ光90を出射してもよい。また、マスターオシレータは、光スイッチや偏光子等を含んでもよい。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続したパルス状のレーザ光90を所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にレーザ光90の出射を抑制する動作である。
【0037】
レーザ装置LDから出射するレーザ光90の進行方向は、レーザ光デリバリ光学系30によって調節される。レーザ光デリバリ光学系30は、レーザ光90の進行方向を調節する複数のミラー30A,30Bを含む。これらミラー30A,30Bの少なくとも1つの位置は、不図示のアクチュエータで調節される。ミラー30A,30Bの少なくとも1つの位置が調節されることで、レーザ光90がウィンドウ12から適切にチャンバ装置10の内部空間に伝搬し得る。
【0038】
本開示のプロセッサ120は、制御プログラムが記憶された記憶装置120aと、制御プログラムを実行するCPU120bとを含む処理装置である。プロセッサ120は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。プロセッサ120は、EUV光生成装置100の幾つかの構成を制御する。また、プロセッサ120は、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ120には、圧力センサ26で計測されたチャンバ装置10の内部空間の圧力に係る信号や、ターゲットセンサ27によって撮像されたドロップレットDLのイメージデータに係る信号や、露光装置200からのバースト信号や、圧力センサ43eで計測されたタンク41内の圧力に係る信号等が入力される。プロセッサ120は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットDLが出力されるタイミング、ドロップレットDLの出力方向等を制御してもよい。さらに、プロセッサ120は、レーザ装置LDの発振タイミング、レーザ光90の進行方向、レーザ光90の集光位置等を制御してもよい。さらに、プロセッサ120は、圧力センサ43eからの信号を基に、バルブ43b,43dの開閉及びバルブ43b,43dの開き具合等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0039】
チャンバ装置10には、エッチングガスをチャンバ装置10の内部空間に供給する中心側ガス供給部81が配置されている。上記のように、ターゲット物質はスズを含むため、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が100%と見做せる水素含有ガスである。或いは、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよい。バランスガスには、窒素(N)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれている。ところで、ドロップレットDLを構成するターゲット物質がプラズマ生成領域ARでレーザ光90を照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。これら微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、チャンバ装置10の内部空間に供給されたエッチングガスに含まれる水素と反応する。スズが水素と反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH)になる。
【0040】
中心側ガス供給部81は、円錐台の側面状の形状をしており、コーンと呼ばれる場合がある。中心側ガス供給部81は、EUV光集光ミラー75の中央部に形成された貫通孔75cを挿通している。
【0041】
中心側ガス供給部81は、ノズルである中心側ガス供給口81aを含む。中心側ガス供給口81aは、反射面75aの第1焦点及び第2焦点を通る焦点直線L0上に設けられる。焦点直線L0は、反射面75aの中心軸方向に沿って設けられている。
【0042】
中心側ガス供給口81aは、反射面75aの中心側からプラズマ生成領域ARに向かってエッチングガスを供給する。中心側ガス供給口81aは、焦点直線L0に沿って反射面75aの中心側から反射面75aから離れる方向にエッチングガスを供給することが好ましい。中心側ガス供給口81aは、中心側ガス供給部81の不図示の配管を介してタンクである不図示のガス供給装置に接続されており、ガス供給装置からエッチングガスを供給される。ガス供給装置は、プロセッサ120によって駆動を制御される。不図示の配管には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が配置されてもよい。
【0043】
中心側ガス供給口81aは、エッチングガスをチャンバ装置10の内部空間に供給するガス供給口であると共に、レーザ光90がチャンバ装置10の内部空間に出射する出射口でもある。レーザ光90は、ウィンドウ12と中心側ガス供給口81aとを通過してチャンバ装置10の内部空間に向かって進行する。
【0044】
チャンバ装置10の内壁10bには、排気口10Eが連続している。焦点直線L0上には露光装置200が配置されるため、排気口10Eは、焦点直線L0上ではなく焦点直線L0の側方における内壁10bに設けられている。排気口10Eの中心軸に沿う方向は、焦点直線L0に直交している。また、排気口10Eは、焦点直線L0に垂直な方向から見る場合において、プラズマ生成領域ARを基準として反射面75aとは反対側に設けられている。排気口10Eは、チャンバ装置10の内部空間の後述する残留ガスを排気する。排気口10Eは排気管10Pに接続されており、排気管10Pは排気ポンプ60に接続されている。
【0045】
上記のようにターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスがチャンバ装置10の内部空間に生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部はチャンバ装置10の内部空間で中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。残留ガスは、排気口10Eと排気管10Pとを介して排気ポンプ60に吸引される。
【0046】
3.2 動作
次に、比較例のEUV光生成装置100の動作について説明する。EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、チャンバ装置10の内部空間の大気が排気される。その際、大気成分の排気のために、チャンバ装置10の内部空間のパージと排気とを繰り返してもよい。パージガスには、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが用いられることが好ましい。その後、チャンバ装置10の内部空間の圧力が所定の圧力以下になると、プロセッサ120は、ガス供給装置から中心側ガス供給部81を介してチャンバ装置10の内部空間へのエッチングガスの導入を開始させる。このときプロセッサ120は、チャンバ装置10の内部空間の圧力が所定の圧力に維持されるように、不図示の供給ガス流量調節部や排気ポンプ60を制御してもよい。その後、プロセッサ120は、エッチングガスの導入開始から所定時間が経過するまで待機する。
【0047】
また、プロセッサ120は、排気ポンプ60により、チャンバ装置10の内部空間の気体を排気口10Eから排気させ、圧力センサ26で計測されたチャンバ装置10の内部空間の圧力の信号に基づいて、チャンバ装置10の内部空間の圧力を略一定に保つ。
【0048】
また、プロセッサ120は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を印加させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ120は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ印加される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231.93℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下である。
【0049】
また、プロセッサ120は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の流速で吐出するように、圧力調節器43によってガス供給源53から不活性ガスをタンク41内に供給し、圧力調節器43によってタンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、フィルタ51aによってパーティクルを除去されたうえでノズル42のノズル孔から吐出される。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ120は、ドロップレットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加させる。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加させる。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットDLとなる。
【0050】
ターゲットセンサ27は、チャンバ装置10の内部空間の所定位置を通過するドロップレットDLの通過タイミングを検出する。プロセッサ120は、ターゲットセンサ27からの信号に同期した発光トリガ信号をレーザ装置LDに出力する。発光トリガ信号が入力されると、レーザ装置LDは、パルス状のレーザ光90を出射する。出射されたレーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30とウィンドウ12とを経由して、レーザ集光光学系13に入射する。また、レーザ光90は、レーザ集光光学系13から出射部である中心側ガス供給部81に進行する。レーザ光90は、中心側ガス供給部81における出射口である中心側ガス供給口81aからプラズマ生成領域ARに向かって焦点直線L0に沿って出射され、プラズマ生成領域ARでドロップレットDLを照射する。このとき、プロセッサ120は、レーザ光90がプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。また、プロセッサ120は、ドロップレットDLをレーザ光90が照射するように、ターゲットセンサ27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90を出射するタイミングを制御する。これにより、レーザ光集光ミラー13Aによって集光するレーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットDLを照射する。この照射により生成されたプラズマから、EUV光を含む光が放射される。
【0051】
プラズマ生成領域ARで発生したEUV光を含む光のうち、EUV光101は、EUV光集光ミラー75によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0052】
ターゲット物質がプラズマ化する際、上記のようにスズの微粒子が生じる。この微粒子は、チャンバ装置10の内部空間に拡散する。チャンバ装置10の内部空間に拡散する微粒子は、中心側ガス供給部81から供給される水素を含むエッチングガスと反応してスタンナンになる。エッチングガスとの反応により得られたスタンナンの多くは、未反応のエッチングガスの流れに乗って、排気口10Eに流入する。また、未反応の荷電粒子、微粒子、及びエッチングガスの少なくとも一部は、排気口10Eに流入する。
【0053】
排気口10Eに流入した未反応のエッチングガス、微粒子、荷電粒子、及びスタンナン等は、残留ガスとして排気管10Pから排気ポンプ60内に流入し無害化等の所定の排気処理が施される。
【0054】
ところで、比較例のEUV光生成装置100では、プロセッサ120は以下の手順で圧力調節器43によってタンク41内を加圧してドロップレットDLを吐出する。図5は、タンク41内の圧力と、当該圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。以下において、タンク41内の圧力を、圧力Pと呼ぶ場合がある。図5に示す実線L1は、圧力センサ43eで計測された圧力値、すなわち時間の経過に伴う圧力Pの変化の様子を示す。以下において、時刻とは加圧が開始されてからの時刻を意味する。図5に示す時刻t0,t1,t2,t3は、0分,10分,20分,30分であることを示す。
【0055】
加圧の開始時刻である時刻t0においては、ヒータ44はヒータ電源46から供給される電流によりタンク41をすでに加熱しており、タンク41内のターゲット物質は溶融している状態である。また、バルブ43b,43dは、閉状態である。
【0056】
時刻t0においては、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが所定圧P1に所定の昇圧速度で昇圧するようにアクチュエータを介してバルブ43bの開き具合を制御する。所定の昇圧速度は、時刻t11における圧力Pが所定圧P1となる速度である。バルブ43bが開くと、ガス供給源53から配管43aを介して不活性ガスがタンク41内に供給される。従って、圧力調節器43は、時刻t11までタンク41内を所定の昇圧速度で所定圧P1に加圧している。例えば、時刻t11は1分であり、所定圧P1は1MPaである。なお、プロセッサ120には、圧力センサ43eで計測された圧力Pに係る信号が入力されている。このため、プロセッサ120がバルブ43bを制御する際、プロセッサ120は圧力Pが所定圧P1となるように圧力センサ43eからの信号に基づいてフィードバック制御をする。こうして、時刻t11において、圧力Pは昇圧して所定圧P1になる。
【0057】
圧力Pが所定圧P1であることを示す信号が圧力センサ43eからプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、時刻t11から時刻t12までアクチュエータを介してバルブ43bを開状態のままに制御する。これにより、圧力Pは、時刻t11から時刻t12まで所定圧P1のままとなる。例えば、時刻t12は、8分である。時刻t0から時刻t12において、タンク41内のターゲット物質は、昇圧によってタンク41内においてフィルタ51aに浸透すると共に、フィルタ51aからノズル孔までの空間に充填される。また、プロセッサ120は、上記したフィードバック制御によってバルブ43bの開き具合を制御する。これにより、圧力Pの低下が抑制される。
【0058】
時刻t12において、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが所定圧P1から第1目標圧力P2に第1昇圧速度で昇圧するように、アクチュエータを介してバルブ43bの開き具合を制御する。第1昇圧速度は、時刻t13における圧力Pが第1目標圧力P2となる速度である。バルブ43bが再び開くと、不活性ガスがガス供給源53から配管43aを介してタンク41内に再び供給される。従って、圧力調節器43は、時刻t12から時刻t13においてタンク41内を第1昇圧速度で第1目標圧力P2にまで加圧している。例えば、第1目標圧力P2は10MPaであり、時刻t13は32分である。第1昇圧速度は、バルブ43bの開き具合によって調節される。開き具合は、圧力センサ43eからの信号を基にプロセッサ120によって制御される。こうして、時刻t13において、昇圧した圧力Pは第1目標圧力P2になる。
【0059】
圧力Pが第1目標圧力P2であることを示す信号が圧力センサ43eからプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は、上記したフィードバック制御によってバルブ43bの開き具合を制御する。これにより、圧力Pの低下が抑制され、圧力Pは第1目標圧力P2のままとなる。圧力Pが第1目標圧力P2となる時刻t13以降において、ターゲット供給装置40は、第1目標圧力P2を維持する。
【0060】
ところで、時刻t12以降において第1昇圧速度で昇圧している圧力Pがある圧力以上となると、ターゲット物質は当該圧力による加圧によってノズル42のノズル孔から吐出する。ピエゾ素子47は時刻t0から駆動しており、ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。従って、ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットDLとしてノズル42のノズル孔から吐出する。図5では、ドロップレットDLが吐出された時刻を、時刻t12及び時刻t13の間の時刻t14としている。従って、時刻t0から時刻t14においてドロップレットDLは吐出しておらず、時刻t14はドロップレットDLの吐出開始時刻であり、時刻t14以降においてドロップレットDLは吐出し続けることとなる。例えば、時刻t14は、13分である。吐出するドロップレットDLは、プラズマ生成領域ARに向かって進行する。また、ドロップレットDLの軌道は、円形のノズル孔の中心軸に沿う傾向にある。
【0061】
3.3 課題
比較例のターゲット供給装置40では、昇圧速度は、ドロップレットDLの吐出の前後で変わらず第1昇圧速度のままである。タンク41内の圧力Pが時刻t14から時刻t13において第1昇圧速度で昇圧している際に、ノズル孔から吐出するドロップレットDLは不安定な状態となることがある。不安定な状態として、図6に示すように、ドロップレットDLの軌道は、破線で示すようにノズル孔の中心軸に沿う安定状態からずれ、ドロップレットDLが進行するほど安定状態から一点鎖線で示すようにずれてしまうことが挙げられる。或いは、図7に示すように、ドロップレットDLは、ノズル孔から噴霧状態で吐出してしまい、細かな飛沫400として飛散してしまうことが挙げられる。飛沫400の形状を円で図示しているが、形状は特に限定されない。図7においても、安定状態におけるドロップレットDLの軌道を破線で示している。
【0062】
不安定な状態は、時刻t14以降において常に発生し続けているのではなく、時間の経過と共に徐々に解消される傾向にある。従って、ドロップレットDLが時刻t14にて吐出された後の過程において、図6に示すドロップレットDLの軌道のずれや図7に示すドロップレットDLの飛散は徐々に解消され、ドロップレットDLは不安定な状態からドロップレットDLの軌道がノズル孔の中心軸に沿う安定状態に移行する傾向となる。上記を鑑みて、不安定な状態は、時刻t14からの所定時間の間に発生すると推測される。
【0063】
不安定な状態では、上記のようにドロップレットDLの軌道がノズル孔の中心軸からずれてしまう、或いはドロップレットDLが飛散してしまう。これにより、ドロップレットDLは、EUV光集光ミラー75の反射面75aやターゲットセンサ27における不図示のウィンドウに付着しこれらを汚染してしまうことがある。これにより、反射面75aの反射率が低下したり、ターゲットセンサ27における検出感度が低下したりしてしまうことがある。このようにチャンバ装置10の内部空間の構造物の汚染等は、チャンバ装置10の不具合となり得る。また、ドロップレットDLが不安定な状態である時間が長いほど、汚染が広がり得る。
【0064】
そこで、以下の実施形態では、ドロップレットDLが不安定な状態となる時間を短くすることで、ドロップレットDLの不安定な状態によるEUV光生成装置100の不具合を抑制し得るターゲット供給装置40が例示される。
【0065】
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態1のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0066】
4.1 構成
本実施形態のEUV光生成装置100の構成は、比較例のEUV光生成装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
4.2 動作
次に、本実施形態におけるタンク41内の圧力Pを制御するプロセッサ120の動作について説明する。
【0068】
図8は、本実施形態のプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。図8に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP11~ステップSP17を含んでいる。本実施形態の制御フローは、ターゲット供給装置40がEUV光生成装置100に初めて設置されて、EUV光生成装置100においてターゲット物質がタンク41内に初めて充填されてフィルタ51aに浸透し、ターゲット供給装置40の設置からノズル42が初めてドロップレットDLを吐出する場合に用いられる。
【0069】
また、図9は、ステップSP11~ステップSP15における圧力Pと、圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。図9に示す実線L2は、ステップSP11~ステップSP15における圧力Pの変化の様子を示す。図9では、本実施形態と比較例とを比較するため、図5において実線L1で示した圧力Pの変化を破線L1として示している。
【0070】
図8に示すスタートの状態は、比較例における時刻t0と同じである。また、本実施形態のスタートの状態では、プロセッサ120には、ターゲットセンサ27から信号が入力されている。
【0071】
(ステップSP11)
本ステップでは、プロセッサ120は、時刻t0から時刻t12における圧力Pの変化が比較例における変化と同じとなるように、圧力調節器43を制御する。従って、圧力Pは、時刻t0から時刻t11において昇圧して所定圧P1になり、時刻t11から時刻t12まで所定圧P1のままとなる。プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローをステップSP12に進める。
【0072】
(ステップSP12)
本ステップでは、時刻t12において、比較例と同様に、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが所定圧P1から第1目標圧力P2まで第1昇圧速度で昇圧するように、アクチュエータを介してバルブ43bの開き具合を制御する。従って、圧力調節器43は、時刻t12からタンク41内を第1昇圧速度で加圧する。本実施形態のターゲット供給装置40では、第1昇圧速度は、概ね0.002MPa/s以上0.0067MPa/s以下であることが好ましいが、0.002MPa/s未満であってもよい。第1昇圧速度は予め記憶装置120aに記憶されており、プロセッサ120は記憶装置120aから第1昇圧速度を読み出せばよい。第1昇圧速度が0.002MPa/s以上0.0067MPa/s以下であることによって、タンク41内のターゲット物質において気泡の発生が抑制され、当該抑制によってタンク41内のターゲット物質におけるパーティクルの生成が抑制される。また、パーティクルの生成が抑制されると、フィルタ51aを通過してしまったパーティクルによるノズル孔の詰まりが抑制される。プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローをステップSP13に進める。
【0073】
(ステップSP13)
本ステップでは、ドロップレットDLの吐出の検出を示す信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は制御フローをステップSP14に進める。時刻t14において、ターゲット供給装置40の設置からドロップレットDLが初めて吐出されると、本実施形態のターゲット供給装置40では、ドロップレットDLがターゲットセンサ27によって初めて検出される。ターゲットセンサ27の検出領域はノズル孔の直下に位置しており、ターゲットセンサ27はプロセッサ120からの指示によって吐出直後のドロップレットDLを撮像によって検出するドロップレット検出器である。従って、時刻t14は、ターゲット供給装置40の設置からターゲットセンサ27がドロップレットDLを初めて検出した時刻とみなせる。図5では時刻t14におけるタンク41内の圧力を圧力P3としており、圧力P3でドロップレットDLは初めて吐出し、圧力P3以上でドロップレットDLは吐出し続けることとなる。例えば、圧力P3は3MPaである。
【0074】
また、本ステップでは、ドロップレットDLの吐出の検出を示さない信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は制御フローをステップSP16に進める。時刻t12から時刻t14においてドロップレットDLが吐出されないため、プロセッサ120は時刻t12から時刻t14において制御フローをステップSP16に進める。なお、ドロップレットDLは液滴であり、液滴は間隔をあけて吐出する。間隔は、概ね0.5mm以上1mm以下である。ドロップレットDLが当該間隔よりも十分に大きいターゲットセンサ27の検出領域に侵入すると、ターゲットセンサ27は、少なくとも1つのドロップレットDLを検出する。従って、ターゲットセンサ27がドロップレットDLを検出していない状態は、ドロップレットDLがノズル孔から吐出する前、或いは吐出したドロップレットDLがターゲットセンサ27の検出領域に侵入する前の状態であることを示す。
【0075】
(ステップSP14)
本ステップでは、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが時刻t14の後において時刻t14における圧力P3から第1目標圧力P2まで第2昇圧速度で昇圧するように、アクチュエータを介してバルブ43bの開き具合を制御する。従って、圧力調節器43は、時刻t14の後からタンク41内を第2昇圧速度で加圧している。第2昇圧速度は、第1昇圧速度よりも速く、時刻t13よりも早い時刻t15で圧力Pが第1目標圧力P2となる速度である。第2昇圧速度は、概ね0.2MPa/s以上1MPa/s以下であることが好ましいが、1MPa/sを超えてもよい。第2昇圧速度は予め記憶装置120aに記憶されており、プロセッサ120は記憶装置120aから第2昇圧速度を読み出せばよい。例えば、時刻t15は、16分である。本実施形態のプロセッサ120は、ドロップレットDLの吐出の検出を示す信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されてから所定時間経過後に圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりも速くする。所定時間は、概ね1ms以上1s以下である。所定時間は第1昇圧速度及び第2昇圧速度で圧力Pが昇圧している時間よりも非常に短いため、図9において昇圧速度の切り替えのタイミングは時刻t14と重ねている。また、本実施形態の昇圧速度が切り替わった際の圧力は、上記したように所定時間が非常に短く、所定時間における昇圧が小さいため、概ね圧力P3とみなせる。上記のように、本実施形態のターゲット供給装置40では、ターゲット供給装置40の設置から初めてターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出が検出された際の圧力P3から第1目標圧力P2に圧力Pを昇圧する前までの間において、圧力Pの昇圧速度はドロップレットDLの吐出の検出前よりもドロップレットDLの吐出の検出後において速くなり、圧力Pは検出前に比べて検出後において速く昇圧する。
【0076】
ドロップレットDLが初めて吐出する時刻t14における圧力P3の下限値は、フィルタ51aの入口からノズル孔までのコンダクタンスに依存する。下限値は、概ね2.83MPaであるが、ターゲット供給装置40によって異なる。このため、昇圧速度の切り替えのタイミングの指標は、下限値を用いるよりも、上記のようにドロップレットDLの吐出の検出を用いることが好ましい。
【0077】
次に、第2昇圧速度の前に第1昇圧速度を用いる理由について説明する。
【0078】
フィルタ51aとノズル孔との間には、空間が設けられている。ドロップレットDLの吐出の検出前において第1昇圧速度が用いられずに第2昇圧速度が用いられてしまうと、第1昇圧速度が用いられる場合に比べて、圧力Pが急に昇圧し、ターゲット物質が空間に勢いよく侵入してしまうことがある。この侵入によって、空間における大気の一部はノズル孔から吐出されるが、大気の残りの一部は気泡としてターゲット物質内に侵入してしまうことがある。これにより、吐出するドロップレットDLは、不安定な状態となる懸念がある。しかしながら、第1昇圧速度が用いられると、第2昇圧速度が用いられる場合に比べてターゲット物質はゆっくりと空間に侵入し、タンク41内においてフィルタ51aに浸透すると共に、フィルタ51aからノズル孔までの空間に充填される。これにより、空間における大気はノズル孔から吐出され、ターゲット物質への気泡の侵入が抑制される。従って、ドロップレットDLの不安定な状態の発生が抑制される。
【0079】
また、ドロップレットDLの吐出の検出前において第1昇圧速度が用いられずに第2昇圧速度が用いられてしまうと、第1昇圧速度が用いられる場合に比べて、圧力Pが急に昇圧してしまう。昇圧によってフィルタ51aの上流と下流とで圧力差が発生してしまい、当該圧力差によってフィルタ51aに衝撃が急に加わってしまうことがある。しかしながら、第1昇圧速度が用いられると、圧力差の発生が抑制され、フィルタ51aへの急な衝撃が抑制される。
【0080】
プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローをステップSP15に進める。
【0081】
(ステップSP15)
本ステップでは、プロセッサ120は、圧力センサ43eから入力される信号によって示される圧力Pが第1目標圧力P2未満である場合には、制御フローをステップSP15に戻す。従って、圧力調節器43は、タンク41内を引き続き第2昇圧速度で第1目標圧力P2まで加圧する。一方、圧力Pが第1目標圧力P2になると、プロセッサ120は、上記したフィードバック制御によってバルブ43bの開き具合を制御する。これにより、圧力Pの低下が抑制され、圧力Pは第1目標圧力P2のままとなる。圧力Pが第1目標圧力P2となる時刻t15以降において、ターゲット供給装置40は、第1目標圧力P2を維持する。プロセッサ120は、上記のようにバルブ43bを制御すると、制御フローを終了する。
【0082】
(ステップSP16)
本ステップでは、プロセッサ120は、圧力センサ43eから入力される信号によって示される圧力Pが第2目標圧力P4未満である場合には、制御フローをステップSP13に戻す。第2目標圧力P4は、ターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出される際に想定される圧力P3よりも大きく、第1目標圧力P2以下である。第2目標圧力P4は、例えば5MPaである。第2目標圧力P4は記憶装置120aに記憶されており、プロセッサ120は第2目標圧力P4を読み出す。圧力Pが第2目標圧力P4以上となっても、ドロップレットDLが吐出されない場合、例えばノズル孔がパーティクルによって詰まっていることが想定される。
【0083】
本ステップでは、プロセッサ120は、圧力センサ43eから入力される信号によって示される圧力Pが第2目標圧力P4以上である場合には、制御フローをステップSP17に進める。
【0084】
(ステップSP17)
本ステップでは、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、アクチュエータを介してバルブ43bを閉じる。また、プロセッサ120は、バルブ43dのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが降圧するように、アクチュエータを介してバルブ43dの開き具合を制御する。バルブ43bが閉じると、ガス供給源53から配管43aを介してタンク41内への不活性ガスの供給が停止する。また、バルブ43dが開くと、タンク41内の不活性ガスは配管43a,43cを介して排気される。従って、圧力調節器43は、タンク41内を減圧している。例えば、ノズル孔がパーティクルによって詰まっている等してドロップレットDLが吐出されない状態で、圧力Pが第2目標圧力P4以上となると、ターゲット供給装置40は動作不良を起こしている懸念がある。この場合において、ノズル孔の閉塞がオーバーホールによってしか解消しない可能性がある。他の可能性として、ドロップレットDLは、第2目標圧力P4以上の圧力Pによってパーティクルと共にノズル孔から押し出されてパーティクルと共に吐出するが、ドロップレットDLが飛散してしまう可能性がある。ドロップレットDLが飛散すると、チャンバ装置10の内部空間の構造物が汚染されてしまう懸念がある。いずれの可能性にしても、ドロップレットDLが吐出されない状態で、圧力Pを第2目標圧力P4以上とするのは好ましくない。そこで、本ステップでは、プロセッサ120は、圧力Pがターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出される際に想定される圧力P3よりも降圧するように、バルブ43dのアクチュエータを介してバルブ43dの開き具合を制御する。当該圧力P3は記憶装置120aに記憶されており、プロセッサ120は当該圧力P3を読み出す。上記によって、昇圧動作が停止される。プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローを終了する。
【0085】
4.3 作用・効果
本実施形態のターゲット供給装置40は、ターゲット物質を貯蔵するタンク41と、タンク41内の圧力Pを調節する圧力調節器43と、タンク41内のターゲット物質をろ過するフィルタ51aと、フィルタ51aを通過したターゲット物質のドロップレットDLを吐出するノズル42とを備える。また、ターゲット供給装置40は、ノズル42からのドロップレットDLの吐出を検出するターゲットセンサ27と、圧力Pがターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出された際の圧力P3から第1目標圧力P2に昇圧するまでの間において、圧力Pの昇圧速度がドロップレットDLの吐出の検出前よりもドロップレットDLの吐出の検出後において速くなるように、圧力調節器43を制御するプロセッサ120とを備える。
【0086】
上記の構成によって、昇圧速度がドロップレットDLの吐出の検出前とドロップレットDLの吐出の検出後とにおいて同じ場合、或いは昇圧速度がドロップレットDLの吐出の検出前とドロップレットDLの吐出の検出後において遅くなる場合に比べて、圧力PはドロップレットDLの吐出の検出前に比べてドロップレットDLの吐出の検出後において速く昇圧する。圧力Pが速く昇圧すると、ドロップレットDLがノズル孔から勢いよく吐出され、ドロップレットDLの軌道がノズル孔の中心軸に沿い、ドロップレットDLが不安定な状態となる時間が短くなり得る。不安定な時間が短くなると、チャンバ装置10の内部空間の構造物の汚染が抑制され得、チャンバ装置10の不具合の発生が抑制され得る。
【0087】
上記の不安定な状態はノズル孔の縁におけるターゲット物質の濡れ状態等に起因することが考えられるが、不安定な状態の発生の予測は困難である。このため、上記のように、ターゲットセンサ27がノズル42からのドロップレットDLの吐出を検出し、検出した後において昇圧速度が切り替わることで、予測が不要となり得る。
【0088】
また、ドロップレットDLの吐出の検出直前までに第1昇圧速度が用いられても、フィルタ51aからノズル孔までの空間における大気は気泡としてターゲット物質に侵入してしまい、吐出するドロップレットDLの軌道は気泡によって乱れてしまう懸念がある。特に、気泡がターゲット物質に侵入している状態でドロップレットDLが第2昇圧速度で昇圧する圧力Pによって吐出する場合、気泡がターゲット物質に侵入していない場合に比べて、吐出するドロップレットDLの軌道は大きく乱れてしまい、チャンバ装置10の内部空間の構造物の汚染が広がる懸念がある。しかしながら、本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、ターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出されてから所定時間経過後に、圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりも速くしている。所定時間が確保されることで、空間における大気はノズル孔から吐出され、ターゲット物質への気泡の侵入が抑制される。侵入が抑制されると、ドロップレットDLが第2昇圧速度で昇圧する圧力Pによって吐出する場合であっても、軌道の乱れが抑制され得、チャンバ装置10の内部空間の構造物の汚染の広がりが抑制され得る。
【0089】
また、本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、ターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出が検出されず、圧力Pが第2目標圧力P4以上である場合において、圧力Pが降圧するように、圧力調節器43を制御している。ドロップレットDLが吐出されない状態で、圧力Pが第2目標圧力P4以上となると、ターゲット供給装置40は動作不良を起こしている可能性がある。しかしながら、本実施形態のターゲット供給装置40では、上記の構成によって、昇圧動作が停止され、チャンバ装置10の動作不良の発生が抑制され得る。
【0090】
また、本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、圧力Pがターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出される際に想定される圧力P3よりも降圧するように、圧力調節器43を制御する。この構成によって、チャンバ装置10の動作不良の発生がより抑制され得る。
【0091】
本実施形態のターゲット供給装置40では、上記したように、ターゲットセンサ27がターゲット供給装置40設置後初めてのドロップレットDLの吐出の検出を示す信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されてから所定時間経過後に、プロセッサ120は、昇圧速度が切り替えているが、これに限定される必要はない。
【0092】
以下に、切り替えのタイミングについて、説明する。
【0093】
本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、圧力Pが圧力P3から遅くとも第1目標圧力P2の概ね90%の圧力に昇圧するまでに、圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりも速くしてもよい。このような構成によっても、圧力Pが第1昇圧速度で第1目標圧力P2に昇圧する場合に比べて、ドロップレットDLが不安定な状態となる時間が短くなり得る。なお、昇圧速度が切り替わる場合の圧力は第1目標圧力P2の90%としているが、この数値は特に限定されない。
【0094】
或いは、本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、圧力Pが圧力P3から圧力P3の概ね130%の圧力に昇圧するまでに、圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりも速くしてもよい。このような構成によっても、圧力Pが第1昇圧速度で第1目標圧力P2に昇圧する場合に比べて、ドロップレットDLが不安定な状態となる時間が短くなり得る。なお、プロセッサ120は、圧力Pが圧力P3の概ね130%の圧力以上に昇圧した際に、圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりも速くしてもよい。上記において、昇圧速度が切り替わる場合の圧力は圧力P3の130%としているが、この数値は特に限定されない。
【0095】
上記した、昇圧速度が切り替わる場合の圧力は、圧力P3の100%以上第1目標圧力P2の100%未満の圧力であればよい。従って、プロセッサ120は、圧力Pがターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出される際の圧力P3から第1目標圧力P2に昇圧する前に、圧力Pの昇圧速度をドロップレットDLの吐出の検出前よりもドロップレットDLの吐出の検出後において速くすればよい。
【0096】
また、本実施形態のターゲット供給装置40では、時刻t12から時刻t14においてタンク41内の圧力が昇圧する速度を第1昇圧速度として説明したが、これに限定はされない。第1昇圧速度は、ターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出される直前の速度であればよい。従って、圧力Pが時刻t0から時刻t14において徐々に昇圧するのであれば、時刻t0から時刻t14に昇圧する圧力Pの昇圧速度が第1昇圧速度となる。また、圧力Pが第1目標圧力P2となる時刻t15以降において、ターゲット供給装置40は、第1目標圧力P2を必ずしも維持する必要はない。
【0097】
また、本実施形態のターゲット供給装置40では、上記した制御フローは、ターゲット供給装置40の吐出状態を確認するために、ターゲット供給装置40の設置からノズル42が初めてドロップレットDLを吐出する場合において用いられてもよいし、EUV光101を生成するためにドロップレットDLを吐出する場合に用いられてもよい。
【0098】
また、本実施形態のターゲット供給装置40では、ターゲットセンサ27の撮像部は、ノズル孔を向いてドロップレットDLを撮像するよりも、ノズル孔から吐出するドロップレットDLの進行方向に向いてドロップレットDLを撮像する、或いはドロップレットDLの軌道に概ね直交する方向に向いてドロップレットDLを撮像することが好ましい。撮像部を含むターゲットセンサ27は、拡大レンズ系やレーザカーテンなどをさらに含んでもよい。撮像部は、CCDやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の画像センサを含んで構成されてもよいが、ラインセンサ等の受光素子を含んで構成されてもよい。ドロップレット検出器としてのターゲットセンサ27は、受光光学系及び撮像部の代わりに、非接触近接スイッチを含んでもよい。また、ドロップレット検出器としてターゲットセンサ27を用いて説明したが、ターゲットセンサ27とは別にドロップレット検出器が配置されていてもよい。
【0099】
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0100】
5.1 構成
本実施形態のEUV光生成装置100では、記憶装置120aの構成が、実施形態1の記憶装置120aの構成とは異なる。
【0101】
記憶装置120aは、ターゲット供給装置40の吐出情報を記憶する。吐出情報には、ターゲット供給装置40の設置からの吐出回数が含まれる。1回の吐出は、タンク41内の圧力Pが時刻t0において昇圧してからステップSP15にて説明したように第1目標圧力P2に到達したことを示す。ドロップレットDLの吐出が1回行われると、記憶装置120aは、現在の吐出回数を1つ加算する。吐出回数が0であればドロップレットDLがターゲット供給装置40の設置から初めて吐出することとなり、吐出回数が1以上であればドロップレットDLが再吐出することとなる。ドロップレットDLの再吐出は、タンク41が空となった後に貯蔵されるターゲット物質が吐出する状況ではない。ドロップレットDLの再吐出では、タンク41が空となる前において、圧力Pは、上記したように第1目標圧力P2に到達した後に圧力P3未満に降圧し、降圧した後に圧力P3よりも低い圧力から圧力P3以上に昇圧する状況である。なお、ドロップレットDLの再吐出では、タンク41が空となる前において、圧力Pは、圧力P3以上に昇圧した後に圧力P3未満に降圧し、降圧した後に圧力P3よりも低い圧力から圧力P3以上に昇圧する状況でもよい。なお、吐出情報には、吐出回数ではなく、過去のドロップレットDLの吐出の有無を示す情報が含まれていてもよい。また、吐出情報には、チャンバ装置10へのターゲット供給装置40の設置日時、及び、タンク41内への圧力調節器43による吐出開始日時がさらに記憶されてもよい。
【0102】
5.2 動作
次に、本実施形態におけるタンク41内の圧力Pを制御するプロセッサ120の動作について説明する。
【0103】
図10は、本実施形態のプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。図10に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP31~ステップSP34を含んでいる。また、後述するが、本実施形態の制御フローは、実施形態1で説明したステップSP11~ステップSP17をさらに含んでいる。図11は、ステップSP31~ステップSP34における圧力Pと、圧力が昇圧する時刻との関係を示す図である。図11に示す実線L3は、ステップSP31~ステップSP34における圧力Pの変化の様子を示す。図11では、本実施形態と実施形態1とで比較するため、図9において実線L2で示した圧力Pの変化を破線L2として示している。
【0104】
図10に示すスタートの状態は、実施形態1におけるスタートの状態であり、加圧開始直後である時刻t0である。
【0105】
(ステップSP31)
本ステップでは、プロセッサ120は、記憶装置120aから吐出情報を読み出す。吐出情報において、吐出回数が0であれば、ターゲット供給装置40はドロップレットDLをターゲット供給装置40の設置から初めて吐出することになり、プロセッサ120は制御フローを実施形態1にて説明したステップSP11に進める。ステップSP11以降の制御フローは、実施形態1にて説明したステップSP12~ステップSP17を含み、図8にて図示しているため、図10では図示を省略していると共に、以下においても説明を省略する。吐出回数が1以上であれば、ターゲット供給装置40はドロップレットDLを再吐出することになり、プロセッサ120は制御フローをステップSP32に進める。
【0106】
(ステップSP32)
本ステップでは、プロセッサ120は、バルブ43bのアクチュエータに信号を出力し、圧力Pが時刻t0以降において第1目標圧力P2まで第2昇圧速度で昇圧するように、アクチュエータを介してバルブ43bの開き具合を制御する。従って、ターゲット供給装置40がドロップレットDLを再吐出する場合、ターゲット供給装置40がドロップレットDLをターゲット供給装置40の設置から初めて吐出する場合とは異なり、ターゲットセンサ27によるドロップレットDLの吐出の検出の有無に関わらず、圧力調節器43は時刻t0からタンク41内を第2昇圧速度で加圧する。従って、プロセッサ120は、圧力Pが圧力P3よりも低い圧力から昇圧させる場合に、昇圧速度を第2昇圧速度にしている。
【0107】
本ステップでは、ターゲット供給装置40はドロップレットDLを再吐出する状態であるため、フィルタ51aにはターゲット物質が浸透していると共に、フィルタ51aとノズル孔との間の空間には既にターゲット物質が充填されている。従って、圧力Pが時刻t0以降において第2昇圧速度で昇圧しても、タンク41内のターゲット物質において気泡の発生が抑制され、当該抑制によってタンク41内のターゲット物質におけるパーティクルの生成が抑制される。また、パーティクルの生成が抑制されると、パーティクルによるノズル孔の詰まりが抑制される。また、上記のようにターゲット物質がフィルタ51aからノズル孔までの空間に充填されているため、ターゲット物質への空間における大気の一部である気泡の侵入が抑制され、吐出するドロップレットDLの軌道の乱れが抑制される。また、上記のようにターゲット物質が空間に充填されているため、第2昇圧速度が用いられても、フィルタ51aの上流と下流とにおける圧力差の発生が抑制され、フィルタ51aへの急な衝撃が抑制される。
【0108】
プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローをステップSP33に進める。
【0109】
(ステップSP33)
本ステップでは、圧力Pの昇圧によってドロップレットDLが吐出され、ドロップレットDLの吐出の検出を示す信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は制御フローをステップSP34に進める。図11ではドロップレットDLを検出した時刻を、時刻t21としている。時刻t21は、第2昇圧速度が用いられているため、時刻t14よりも早く、例えば0.4分である。
【0110】
(ステップSP34)
本ステップでは、プロセッサ120は、圧力センサ43eから入力される信号によって示される圧力Pが第1目標圧力P2未満である場合には、制御フローをステップSP34に戻す。従って、圧力調節器43は、タンク41内を引き続き第2昇圧速度で第1目標圧力P2まで加圧する。一方、圧力Pが第1目標圧力P2になると、プロセッサ120は、上記したフィードバック制御によってバルブ43bの開き具合を制御する。これにより、圧力Pの低下が抑制され、圧力Pは第1目標圧力P2のままとなる。図11では、圧力Pが第2昇圧速度で第1目標圧力P2に到達した時刻を時刻t22としている。時刻t22は、時刻t15よりも早く、例えば0.8分である。従って、圧力Pは時刻t22以降において第1目標圧力P2のままとなる。プロセッサ120は、上記のようにバルブ43bの制御により第1目標圧力P2を維持する。プロセッサ120は、上記のように圧力調節器43を制御すると、制御フローを終了する。
【0111】
また、ステップSP33では、ドロップレットDLの吐出の検出を示さない信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力されると、プロセッサ120は制御フローをステップSP16に進める。ステップSP16以降の制御フローは、実施形態1にて説明したステップSP17を含み、上記にて説明しているためここでは説明を省略する。
【0112】
5.3 作用・効果
本実施形態のターゲット供給装置40では、プロセッサ120は、ターゲットセンサ27によるドロップレットDLの吐出の検出がターゲット供給装置40の設置から初めての検出ではない状態において、タンク41内の圧力Pがターゲットセンサ27によってドロップレットDLの吐出がターゲット供給装置40の設置から初めて検出された際の圧力よりも低い圧力から昇圧させる場合に、昇圧速度を第2昇圧速度にしている。
【0113】
上記のように、ドロップレットDLの不安定な状態は、ノズル孔の縁における濡れ状態等に起因することが考えられる。ドロップレットDLが再吐出する場合、ノズル孔の縁は、前回の吐出時に比べてさらに濡れた状態として形成されている。従って、ドロップレットDLが再吐出する場合においては、ドロップレットDLの不安定な状態は、ドロップレットDLがターゲット供給装置40の設置から初めて吐出する場合に比べて抑制され得る。また、ドロップレットDLが一度吐出していれば、フィルタ51aからノズル孔までの空間における気泡はノズル孔から吐出されてしまい、ドロップレットDLの再吐出時におけるターゲット物質への気泡の侵入が抑制される。このような状態で、圧力Pの昇圧速度が加圧開始直後から第2昇圧速度となることで、ターゲットセンサ27によるドロップレットDLの吐出の検出に関わらず、圧力Pは第1目標圧力P2まで昇圧し得る。また、本実施形態のターゲット供給装置40では、圧力Pは、第1昇圧速度及び第2昇圧速度によって昇圧する場合に比べて、第1目標圧力P2まで短時間に昇圧し得る。従って、本実施形態のターゲット供給装置40では、ドロップレットDLの再吐出時において、ドロップレットDLをすぐにプラズマ生成領域ARに供給できる。
【0114】
なお、吐出回数が1回以上である場合において、プロセッサ120は、圧力Pの昇圧速度を圧力調節器43による加圧開始直後から第2昇圧速度にしているがこれに限定される必要はない。プロセッサ120は、ドロップレットDLの吐出の検出を示す信号がターゲットセンサ27からプロセッサ120に入力される前から圧力Pの昇圧速度を第2昇圧速度にしていればよい。
【0115】
また、吐出情報を記憶する記憶装置としてプロセッサ120の記憶装置120aを用いて説明したが、記憶装置は記憶装置120aとは別の装置としてプロセッサ120の外部に設けられてもよい。この場合、記憶装置は、プロセッサ120に電気的に接続されている。記憶装置は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
【0116】
6.実施形態3の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態3のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0117】
6.1 構成
図12は、実施形態3におけるEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のEUV光生成装置100では、ドロップレット検出器の構成が、実施形態1のドロップレット検出器の構成とは異なる。
【0118】
本実施形態のドロップレット検出器は、ターゲットセンサ27ではなく、ノズル孔からチャンバ装置10の内部空間に放出される不活性ガスを検出するガス検出器55である。不活性ガスは、ターゲット物質がフィルタ51aからノズル孔までの空間に充填される前に当該空間に滞留しており、ドロップレットDLの吐出によってノズル孔からチャンバ装置10の内部空間に押し出されて、ドロップレットDLと共に放出される。ガス検出器55は、チャンバ装置10の内部空間に配置されており、チャンバ装置10の内部空間における不活性ガスを検出し、不活性ガスの検出によってドロップレットDLの吐出を検出する。ガス検出器55は、プロセッサ120に電気的に接続されている。プロセッサ120は、ガス検出器55からの信号を基にチャンバ装置10の内部空間における不活性ガスの増加を検出する。
【0119】
ガス検出器55は、例えば、ガス分析計、或いは真空ゲージである。真空ゲージは、例えば、ピラニ真空計、或いはイオンゲージである。
【0120】
6.2 動作
次に、本実施形態におけるタンク41内の圧力Pを制御するプロセッサ120の動作について説明する。
【0121】
図13は、本実施形態のプロセッサ120の制御フローチャートの一例を示す図である。本実施形態の制御フローは、実施形態1における制御フローチャートにおけるステップSP13に代わって、ステップSP41を含む点で、第1実施形態における制御フローチャートと異なる。また、本実施形態のスタート状態では、実施形態1とは異なり、プロセッサ120にはガス検出器55から信号が入力されている。
【0122】
(ステップSP41)
本ステップでは、ガス検出器55からプロセッサ120に信号が入力され、チャンバ装置10の内部空間における不活性ガスが増加している場合、プロセッサ120は制御フローをステップSP14に進める。
【0123】
また、本ステップでは、チャンバ装置10の内部空間における不活性ガスが増加していない場合、プロセッサ120は制御フローをステップSP16に進める。
【0124】
6.3 作用・効果
本実施形態のターゲット供給装置40では、ドロップレット検出器であるガス検出器55は、チャンバ装置10の内部空間の不活性ガスを検出する。ドロップレットDLの吐出によってタンク41内から不活性ガスがチャンバ装置10の内部空間に放出されると、チャンバ装置10の内部空間における不活性ガスは増加する。従って、ガス検出器55が用いられても、ドロップレットDLの吐出が検出され得る。また、チャンバ装置10の内部空間が低圧に保たれている場合、ノズル42から微量の不活性ガスが放出されても、不活性ガスは瞬時にチャンバ装置10の内部空間に拡散する傾向にある。この場合、ガス検出器55は、不活性ガスを検出できればチャンバ装置10の内部空間のどこに配置されていてもよい。従って、ドロップレット検出器の配置場所が1か所に決められている場合に比べて、配置の自由度が高まり得る。
【0125】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
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図12
図13