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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080586
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220523BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220523BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220523BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/06 301D
H01L29/78 652K
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 652F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191731
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正和
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】アバランシェ耐量を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供すること。
【解決手段】活性領域10とエッジ終端領域30との間の中間領域20の全域において、p型ベース領域4と並列pn層60との間にp+型領域13が設けられている。p+型領域13は、活性領域10においてゲートトレンチ7の底面にかかる電界を緩和するp+型領域11,12と同時に形成され、p+型領域11,12に接する。p+型領域13は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61およびp型領域62にそれぞれ対向する部分にそれぞれ並列pn層60側へ突出する凸部13aを有する。n型電流拡散領域3は、活性領域10から中間領域20の全域に延在し、p+型領域13と並列pn層60との間においてp+型領域13の凸部13a間に存在する。n型電流拡散領域3の不純物濃度は、ゲート領域22の部分で他の部分よりも高くなっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板の内部に、活性領域から、前記活性領域の周囲を囲む終端領域にわたって設けられた、第1導電型領域と第2導電型領域とを前記半導体基板の第1主面に平行な第1方向に交互に繰り返し配置した並列pn層と、
前記半導体基板の第1主面の前記終端領域を除く部分である第1面と、
前記半導体基板の第1主面の前記終端領域の部分である第2面を前記半導体基板の第2主面側に凹ませてなる段差と、
前記半導体基板の第1面と前記並列pn層との間に設けられ、前記活性領域から、前記活性領域と前記終端領域との間の中間領域へ延在して前記段差に達する第2導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に、前記第1半導体領域および前記並列pn層に接して設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記活性領域において前記半導体基板の第1面と前記第1半導体領域との間に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第3半導体領域および前記第1半導体領域を貫通して前記第2半導体領域に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記トレンチの底面と前記並列pn層との間に設けられ、深さ方向に前記トレンチの底面に対向する、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第1高濃度領域と、
前記活性領域における前記第1半導体領域と前記並列pn層との間において前記第1半導体領域に接し、かつ前記トレンチおよび前記第1高濃度領域と離れて設けられた、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第2高濃度領域と、
前記中間領域における前記第1半導体領域と前記並列pn層との間において前記第1半導体領域に接して設けられ、かつ前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域に電気的に接続され、前記活性領域の周囲を囲む、前記第1半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第3高濃度領域と、
前記半導体基板の第2面と前記並列pn層との間に選択的に設けられ、前記中間領域を介して前記活性領域の周囲を囲み、前記第3高濃度領域を介して前記第1半導体領域に電気的に接続された、耐圧構造を構成する第2導電型の第4半導体領域と、
前記第3半導体領域および前記第1半導体領域に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に設けられた第2電極と、
を備え、
前記中間領域は、前記第1電極と前記第1半導体領域との電気的接触部が形成された第1中間領域と、前記第1中間領域と前記終端領域との間の第2中間領域と、を有し、
前記第3高濃度領域は、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域にそれぞれ対向する部分にそれぞれ前記並列pn層側へ突出する凸部を有し、
前記第2半導体領域は、前記活性領域から前記中間領域へ延在して前記段差に達し、前記第3高濃度領域と前記並列pn層との間において前記第3高濃度領域の前記凸部間に存在し、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域に隣接し、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第2中間領域の部分で他の部分よりも高くなっていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第2中間領域の部分で他の部分の1.3倍以上1.7倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第3高濃度領域の前記凸部は、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域にそれぞれ対向する部分にそれぞれ1つずつ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第3高濃度領域の前記凸部は、深さ方向に前記並列pn層の各々の前記第1導電型領域に対向する部分にそれぞれ複数ずつ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域は、それぞれ前記半導体基板の第1主面に平行で前記第1方向と直交する第2方向に直線状に延在し、
前記第3高濃度領域の前記凸部は、前記第2方向に直線状に延在することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域は、それぞれ前記半導体基板の第1主面に平行で前記第1方向と直交する第2方向に直線状に延在し、
前記第3高濃度領域の前記凸部は、前記第2方向に点在することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2中間領域において前記半導体基板の第1主面上に、絶縁層を介してポリシリコン層からなるゲートランナーが設けられ、
前記第2中間領域に、前記ゲート電極と前記ゲートランナーとの電気的接触部が形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリフト層を、n型領域とp型領域とを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し配置してなる並列pn層とした超接合(SJ:Super Junction)構造の半導体装置が公知である。並列pn層を形成する方法として、並列pn層の所定厚さで堆積したn型エピタキシャル層にトレンチ(以下、SJトレンチとする)を形成して並列pn層のn型領域となる部分を残し、SJトレンチを並列pn層のp型領域となるp型エピタキシャル層で埋め込むトレンチ埋め込みエピタキシャル方式が知られている。
【0003】
炭化珪素(SiC)を半導体材料とし、トレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いる場合、半導体基板(半導体チップ)の主面を(0001)面、いわゆるSi面とし、当該半導体基板を構成するエピタキシャル層に<11-20>に平行に延在するストライプ状にSJトレンチを形成する。並列pn層を構成するn型領域およびp型領域は、SJトレンチが延在する<11-20>に平行に直線状に延在し、半導体基板の中央(チップ中央)の活性領域から耐圧構造の外側(半導体基板の端部(チップ端部)側)に達している。
【0004】
図30は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図31,33は、図30の中間領域を拡大して示す断面図である。図32は、図31の矩形枠BB内を拡大して示す断面図である。図33には、n-型エピタキシャル層143内にn型電流拡散領域103を形成するためにn型不純物がイオン注入された領域をハッチングで示す。図33では、n型電流拡散領域103の終端位置を明確にするため、n-型エピタキシャル層143内にイオン注入により形成されたp+型領域111~113を輪郭のみで示す。
【0005】
図30に示す従来の炭化珪素半導体装置150は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)140の活性領域110に一般的なトレンチゲート構造を備えたSJ構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)である。半導体基板140は、炭化珪素からなるn+型出発基板141にエピタキシャル層142~144を順に積層させてなる。
【0006】
半導体基板140のp型エピタキシャル層144側の主面をおもて面とし、n+型ドレイン領域101であるn+型出発基板141側の主面を裏面とする。エピタキシャル層142はドリフト領域となるドリフト層102であり、並列pn層160を含む。並列pn層160は、トレンチ埋め込みエピタキシャル方式によって形成され、n型領域161とp型領域162とを半導体基板140のおもて面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し配置したSJ構造である。符号102aはドリフト層102のSJ構造でない部分である。
【0007】
活性領域110は、半導体基板140の中央(チップ中央)に設けられている。活性領域110においてn-型エピタキシャル層143の内部に、キャリアの広がり抵抗を低減させる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)であるn型電流拡散領域103と、ゲートトレンチ107の底面にかかる電界を緩和するp+型領域111,112と、がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域103およびp+型領域111,112は、イオン注入により形成された拡散領域である。
【0008】
活性領域110の周囲は、中間領域120を介してエッジ終端領域130に囲まれている。エッジ終端領域130には、接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造132等の耐圧構造が配置される。図30には、JTE構造132の複数のp型領域を一つのp-型領域133で示す。p型エピタキシャル層144の、エッジ終端領域130の部分はエッチングにより除去され、半導体基板140のおもて面に段差131が形成されている。
【0009】
半導体基板140のおもて面は、段差131を境にして、活性領域110側の部分(以下、第1面とする)140aよりもエッジ終端領域130の部分(以下、第2面とする)140bでn+型ドレイン領域101側に凹んでいる。半導体基板140のおもて面の、第1面140aと第2面140bとをつなぐ部分(段差131のメサエッジ:以下、第3面とする)140cで、活性領域110、および、活性領域110とエッジ終端領域130との間の中間領域120と、がエッジ終端領域130と素子分離される。
【0010】
エッジ終端領域130において、半導体基板140のおもて面の第2面140bに、n-型エピタキシャル層143が露出されている。半導体基板140のおもて面の第2面140bの表面領域においてn-型エピタキシャル層143の内部に、JTE構造132を構成する複数のp型領域(p-型領域133)が選択的に設けられている。JTE構造132を構成する複数のp型領域は、イオン注入により形成された拡散領域であり、p+型領域113によりp型ベース領域104と電気的に接続されている。
【0011】
p型ベース領域104は、p型エピタキシャル層144の、段差131の形成後に残る部分である。p型ベース領域104は、活性領域110から外側(チップ端部側)へ延在して半導体基板140のおもて面の第3面140cに達し、中間領域120の全域に設けられている。p+型領域113は、中間領域120においてn-型エピタキシャル層143の内部にp+型領域112と同時にイオン注入により形成された拡散領域であり、並列pn層160とp型ベース領域104との間に設けられ、活性領域110の周囲を囲む。
【0012】
+型領域113は、深さ方向Zに並列pn層160のn型領域161およびp型領域162とp型ベース領域104とに隣接する。p+型領域113は、内側(チップ中央側)へ延在して活性領域110に達し、n型電流拡散領域103およびp+型領域111,112に接する。p+型領域113は、中間領域120の全域にわたって一様な厚さで延在し、半導体基板140のおもて面の第3面140cに達する(図30)。厚さが一様とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ厚さであることを意味する。
【0013】
中間領域120の内側の部分(以下、外周コンタクト領域とする)121には、活性領域110からソース電極115が延在し、ソース電極115とp+型外周コンタクト領域121bとのコンタクト部(電気的接触部:以下、外周コンタクト部とする)121aが形成されている。MOSFETのオフ時にエッジ終端領域130におけるドリフト層102内の少数キャリア(正孔)は、p型ベース領域104および外周コンタクト部121aを介してソース電極115に吐き出される。
【0014】
外周コンタクト領域121は、活性領域110と、後述するゲート領域122に配置されるゲートランナー(不図示)の内周端部と、の間の部分である。外周コンタクト領域121の全域に、活性領域110からn型電流拡散領域103が延在している。n型電流拡散領域103は、p型領域113に重なるように形成され、p+型領域113と同じ深さか、またはp型領域113よりもn+型ドレイン領域101側に深く、p+型領域113と並列pn層160のn型領域161との間に極薄い厚さで存在する(図33)。
【0015】
中間領域120の外側の部分(以下、ゲート領域とする)122において、フィールド酸化膜136上にポリシリコン(poly-Si)層からなるゲートランナー122aが設けられている。ゲート領域122には、活性領域110から延在するゲート電極109と、ゲートランナー122aと、のコンタクト(電気的接触部)が形成されている。符号114,117,135は、それぞれ層間絶縁膜、ドレイン電極およびパッシベーション膜である。図31~33ではゲートランナー122aおよびフィールド酸化膜136を図示省略する。
【0016】
従来のSJ構造の半導体装置として、活性領域よりも外側において並列pn層のp型領域にかからないように、並列pn層のn型領域の表面領域のみに選択的にp型リサーフ領域を設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、並列pn層のp型領域とp型リサーフ領域とが重なって形成されること(オーバーラップ)によって並列pn層のp型領域の不純物濃度が高くなることを抑制し、当該オーバーラップに起因して空乏化条件がずれることを回避している。
【0017】
また、従来のSJ構造の別の半導体装置として、半導体基板の端部(側面)の表面領域に、半導体基板の端部の傾斜に沿って所定のドーズ量のn型表面領域を形成した装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、半導体基板の端部のn型表面領域により、半導体基板の端部ではなく、活性領域におけるドリフト層とドレイン領域との界面の臨界電界強度で耐圧が決まるように、半導体基板の端部での空乏層の広がりを抑制して、活性領域よりも外側でアバランシェ降伏の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2010-040973号公報
【特許文献2】特開2007-208075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、発明者が鋭意研究を重ねた結果、従来の炭化珪素半導体装置150(図30~33参照)では、次のことが判明した。オフ時に中間領域120の並列pn層160でインパクトイオン現象が生じ、アバランシェ降伏する(図23参照)。これにより、急激に増加した正孔電流(以下、アバランシェ電流とする)が中間領域120のp+型領域113を介してp+型外周コンタクト領域121bからソース電極115へ吐き出される際に、p+型領域113および外周コンタクト部121aに集中する(図25参照)。
【0020】
中間領域120のp+型領域113および外周コンタクト部121aにアバランシェ電流が集中することで、活性領域110よりも外側で炭化珪素半導体装置150が破壊される。このため、活性領域110におけるアバランシェ耐量よりも、中間領域120およびエッジ終端領域130におけるアバランシェ耐量が小さくなってしまう。これによって、サージ電流やサージ電圧による破壊が中間領域120およびエッジ終端領域130の能力に左右され、活性領域110の電流能力を最大まで発揮することができない。
【0021】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、アバランシェ耐量を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板の内部に、活性領域から、前記活性領域の周囲を囲む終端領域にわたって、第1導電型領域と第2導電型領域とを前記半導体基板の第1主面に平行な第1方向に交互に繰り返し配置した並列pn層が設けられている。前記半導体基板の第1主面は、前記終端領域を除く部分である第1面と、前記終端領域の部分である第2面と、前記第2面を前記半導体基板の第2主面側に凹ませてなる段差と、を有する。前記半導体基板の第1面と前記並列pn層との間に、前記活性領域から、前記活性領域と前記終端領域との間の中間領域へ延在して前記段差に達する第2導電型の第1半導体領域が設けられている。
【0023】
前記活性領域において前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に、前記第1半導体領域および前記並列pn層に接して、第1導電型の第2半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記半導体基板の第1面と前記第1半導体領域との間に、第1導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。トレンチは、前記第3半導体領域および前記第1半導体領域を貫通して前記第2半導体領域に達する。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている。前記トレンチの底面と前記並列pn層との間に、深さ方向に前記トレンチの底面に対向して第2導電型の第1高濃度領域が設けられている。前記第1高濃度領域は、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い。前記活性領域における前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に、前記第1半導体領域に接し、かつ前記トレンチおよび前記第1高濃度領域と離れて第2導電型の第2高濃度領域が設けられている。前記第2高濃度領域は、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い。
【0024】
前記中間領域における前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に、前記第1半導体領域に接して第2導電型の第3高濃度領域が設けられている。前記第3高濃度領域は、前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域に電気的に接続されている。前記第3高濃度領域は、前記活性領域の周囲を囲む。前記第3高濃度領域は、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い。前記半導体基板の第2面と前記並列pn層との間に、耐圧構造を構成する第2導電型の第4半導体領域が選択的に設けられている。前記第4半導体領域は、前記中間領域を介して前記活性領域の周囲を囲み、前記第3高濃度領域を介して前記第1半導体領域に電気的に接続されている。第1電極は、前記第3半導体領域および前記第1半導体領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられている。
【0025】
前記中間領域は、前記第1電極と前記第1半導体領域との電気的接触部が形成された第1中間領域と、前記第1中間領域と前記終端領域との間の第2中間領域と、を有する。前記第3高濃度領域は、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域にそれぞれ対向する部分にそれぞれ前記並列pn層側へ突出する凸部を有する。前記第2半導体領域は、前記活性領域から前記中間領域へ延在して前記段差に達し、前記第3高濃度領域と前記並列pn層との間において前記第3高濃度領域の前記凸部間に存在し、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域に隣接する。前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第2中間領域の部分で他の部分よりも高くなっている。
【0026】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第2中間領域の部分で他の部分の1.3倍以上1.7倍以下であることを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3高濃度領域の前記凸部は、深さ方向に前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域にそれぞれ対向する部分にそれぞれ1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3高濃度領域の前記凸部は、深さ方向に前記並列pn層の各々の前記第1導電型領域に対向する部分にそれぞれ複数ずつ設けられていることを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域は、それぞれ前記半導体基板の第1主面に平行で前記第1方向と直交する第2方向に直線状に延在する。前記第3高濃度領域の前記凸部は、前記第2方向に直線状に延在することを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記並列pn層の前記第1導電型領域および前記第2導電型領域は、それぞれ前記半導体基板の第1主面に平行で前記第1方向と直交する第2方向に直線状に延在する。前記第3高濃度領域の前記凸部は、前記第2方向に点在することを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2中間領域において前記半導体基板の第1主面上に、絶縁層を介してポリシリコン層からなるゲートランナーが設けられている。前記第2中間領域に、前記ゲート電極と前記ゲートランナーとの電気的接触部が形成されていることを特徴とする。
【0032】
上述した発明によれば、並列pn層の、半導体基板のおもて面側において、中間領域の電界強度分布を活性領域の電界強度分布とほぼ同じにすることができ、かつ活性領域での電界強度を中間領域での電界強度よりも大きくすることができる。これにより、活性領域でアバランシェ降伏しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、アバランシェ耐量を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図3図2の一部を拡大して示す断面図である。
図4図2の一部を拡大して示す説明図である。
図5図4の矩形枠B内を拡大して示す断面図である。
図6図2の一部を拡大して示す断面図である。
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図11】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図12】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態の別の一例を示す断面図である。
図13】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態の別の一例を示す断面図である。
図14】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図15】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図16】実施例1の深さ方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図17】従来例の深さ方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図18】実施例1の第1方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図19図18の矩形枠C1内を拡大して示す拡大図である。
図20図18の矩形枠C2内を拡大して示す拡大図である。
図21】従来例の第1方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図22】実施例2のアバランシェ降伏時のキャリア密度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図23】従来例のアバランシェ降伏時のキャリア密度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図24】実施例2のアバランシェ降伏時の正孔電流量のシミュレーション結果を示す分布図である。
図25】従来例のアバランシェ降伏時の正孔電流量のシミュレーション結果を示す分布図である。
図26】実施例2の外周コンタクト部付近の正孔電流密度のシミュレーション結果を示す分布図である。
図27】実施例2の外周コンタクト部付近の不純物濃度を示す分布図である。
図28】従来例の外周コンタクト部付近の不純物濃度を示す分布図である。
図29】実施例2の電圧-電流特性のシミュレーション結果を示す特性図である。
図30】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図31図30の中間領域を拡大して示す断面図である。
図32図31の矩形枠BB内を拡大して示す断面図である。
図33図30の中間領域を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数を表している。
【0036】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面(第1主面)側から見たレイアウトを示す平面図である。図1では、ゲートランナー22aを示す太線の矩形枠の内周が外周コンタクト領域(第1中間領域)21とゲート領域(第2中間領域)22との境界である。図2は、図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。図2には、活性領域10と中間領域20との境界付近から半導体基板40の端部(チップ端部)までを示す。
【0037】
図3,6は、図2の一部を拡大して示す断面図である。図4は、図2の一部を拡大して示す説明図である。図5は、図4の矩形枠B内を拡大して示す断面図である。図3には、活性領域10に配置される複数の単位セル(素子の構成単位)のうちの1つの単位セルを示すが、活性領域10に配置される単位セルはすべて同じ構造を有する。図4には中間領域20のp+型領域13の一部を示すが、p+型領域13は中間領域20の全域にわたって同じ構成となっている。
【0038】
図4の上図は中間領域20のp+型領域13を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図であり、図4の下図は中間領域20のp+型領域13の断面構造を示す断面図である。p+型領域13の平面的なレイアウト(図4の上図)および断面構造(図4の下図)は中間領域20の全域にわたって同じである。図6には、n-型エピタキシャル層43の内部にn型電流拡散領域3を形成するためにn型不純物がイオン注入された領域をハッチングで示す(図10~13においても同様)。
【0039】
図6では、ハッチングで示すn型電流拡散領域3の終端位置を明確にするため、n-型エピタキシャル層43の内部にイオン注入により形成されるn型電流拡散領域3およびp+型領域11~13のうち、p+型領域11~13は輪郭のみで示し、導電型を示す「p+」を図示省略する(図10~13においても同様)。図4~6では、ゲートランナー22a、ゲート金属配線層22bおよびフィールド酸化膜36を図示省略する(図16~18,22,24,27においても同様)。
【0040】
図1,2に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40に活性領域10、中間領域20およびエッジ終端領域30を備え、活性領域10からエッジ終端領域30にわたってドリフト層2を並列pn層60としたSJ構造でトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。図1に示すように、活性領域10は、半導体基板40の中央(チップ中央)に配置されている。活性領域10は、MOSFETがオン状態のときに主電流が流れる領域である。
【0041】
中間領域20は、活性領域10とエッジ終端領域30との間の領域であり、活性領域10に隣接して、活性領域10の周囲を囲む。エッジ終端領域30は、中間領域20と半導体基板40の端部との間の領域であり、中間領域20を介して活性領域10の周囲を囲む。エッジ終端領域30は、活性領域10および中間領域20におけるドリフト層2の、半導体基板40のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、リーク電流が過度に増大せず、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0042】
エッジ終端領域30には、半導体基板40のおもて面側に、接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造32や、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)等の耐圧構造が配置される。ここでは、エッジ終端領域30において半導体基板40のおもて面側にJTE構造32(図2参照)が配置された場合を例に説明する。この耐圧構造により、活性領域10よりも外側の電界集中が緩和され、所定電圧印加まで素子破壊が起きない。
【0043】
図2に示すように、活性領域10には、半導体基板40のおもて面側にトレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、p型ベース領域(第1半導体領域)4、n+型ソース領域(第3半導体領域)5、p++型コンタクト領域6、ゲートトレンチ7、ゲート絶縁膜8およびゲート電極9で構成される。半導体基板40は、炭化珪素からなるn+型出発基板41のおもて面上にドリフト層2、n型電流拡散領域(第2半導体領域)3およびp型ベース領域4となる各エピタキシャル層42~44を順に堆積してなる。
【0044】
半導体基板40のp型エピタキシャル層44側の主面をおもて面として、n+型出発基板41側の主面(n+型出発基板41の裏面)を裏面(第2主面)とする。半導体基板40のおもて面の結晶面方位は、例えば(0001)面である。n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域1である。ゲートトレンチ7は、深さ方向Zに半導体基板40のおもて面からp型エピタキシャル層44を貫通してn-型エピタキシャル層43内に達し、かつ半導体基板40のおもて面に平行な方向(ここでは後述する第2方向Y)にストライプ状に延在する。
【0045】
p型エピタキシャル層44の、エッジ終端領域30の部分はエッチングにより除去され、半導体基板40のおもて面に段差31が形成されている。半導体基板40のおもて面は、段差31を境にして、活性領域10側の部分(第1面)40aよりもエッジ終端領域30の部分(第2面)40bでn+型ドレイン領域1側に凹んでいる。半導体基板40のおもて面の、第1面40aと第2面40bとをつなぐ部分(第3面)40cで、活性領域10および中間領域20と、がエッジ終端領域30と素子分離される。
【0046】
ゲートトレンチ7の内部に、ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9が設けられている。p型ベース領域4、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間にそれぞれ選択的に設けられ、例えばゲートトレンチ7が延在する方向と同じ第2方向Yにそれぞれ直線状に延在する。p型ベース領域4は、p型エピタキシャル層44の、半導体基板40のおもて面の段差31の形成後に残る部分のうち、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6を除く部分である。
【0047】
p型ベース領域4は、活性領域10から外側(チップ端部側)へ延在して半導体基板40のおもて面の第3面40cに達し、中間領域20の全域に設けられている。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、半導体基板40のおもて面とp型ベース領域4との間に、p型ベース領域4に接して設けられている。また、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、半導体基板40のおもて面の第1面40aに露出され、層間絶縁膜14のコンタクトホールにおいてソース電極(第1電極)15に接する。
【0048】
+型ソース領域5は、ゲートトレンチ7の側壁のゲート絶縁膜8を介してゲート電極9に対向する。p++型コンタクト領域6は、n+型ソース領域5よりもゲートトレンチ7から離れた位置に配置されている。p型ベース領域4と半導体基板40の裏面との間にエピタキシャル層42が設けられている。エピタキシャル層42はドリフト領域となるドリフト層2であり、並列pn層60を含む。ドリフト層2の、並列pn層60とn+型出発基板41との間の部分2aがSJ構造でない通常のn型ドリフト領域であってもよい。
【0049】
並列pn層60は、n型領域(第1導電型領域)61とp型領域(第2導電型領域)62とを半導体基板40のおもて面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し配置したSJ構造のエピタキシャル層である。並列pn層60は、例えば、トレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いて、1段(1回)のエピタキシャル成長で形成したn型領域61となるn型エピタキシャル層に、深さ方向Zに当該n型エピタキシャル層を貫通するSJトレンチを形成し、当該SJトレンチをp型領域62となるp型エピタキシャル層で埋め込むことで形成される。
【0050】
並列pn層60のn型領域61およびp型領域62は、それぞれ半導体基板40のおもて面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yに直線状に延在する。第2方向Yは、例えば<11-20>である。互いに隣接するn型領域61およびp型領域62は概ねチャージバランスである。並列pn層60の最も外側に、チップ端部に沿ってn型領域61aが配置される。並列pn層60の最も外側のn型領域61aは、半導体基板40の中央側部分の周囲を囲み、並列pn層60のすべてのn型領域61を連結する。
【0051】
活性領域10においてp型ベース領域4とドリフト層2との間に、n型電流拡散領域3およびp+型領域(第1,2高濃度領域)11,12がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域3およびp+型領域11,12は、n-型エピタキシャル層43の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。また、n型電流拡散領域3は、p型ベース領域4とドリフト層2との間を、活性領域10から外側へ延在して半導体基板40のおもて面の第3面40cに達して、中間領域20の全域に設けられている(図6参照)。
【0052】
n型電流拡散領域3は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL)である。n型電流拡散領域3は、活性領域10において互いに隣り合うゲートトレンチ7間に配置され、ゲートトレンチ7に隣接する。n型電流拡散領域3は、ゲートトレンチ7よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に達する。n型電流拡散領域3は、活性領域10において、ゲートトレンチ7およびp+型領域11とp+型領域12との間に存在して、深さ方向Zにp型ベース領域4と並列pn層60のn型領域61とに隣接する。
【0053】
n型電流拡散領域3は、活性領域10から外側へ延在して半導体基板40のおもて面の第3面40cに達する。これにより、n型電流拡散領域3は、活性領域10および中間領域20の全域に設けられている。n型電流拡散領域3は、中間領域20において、p+型領域13と並列pn層60との間に設けられ、かつ後述するようにp+型領域(第3高濃度領域)13の凸部13a間に存在し、深さ方向Zにp+型領域13と並列pn層60のn型領域61とに隣接する。
【0054】
n型電流拡散領域3は、活性領域10におけるp+型領域11,12および中間領域20におけるp+型領域13の凸部13aよりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に達して、p+型領域11~13と並列pn層60のn型領域61との間に存在してもよい。図6にハッチングで示すn型電流拡散領域3のうち、p+型領域11~13と重なる部分は、n-型エピタキシャル層43の内部にp型領域11~13を形成するためのp型不純物のイオン注入によりp型領域11~13となっている部分である。
【0055】
n型電流拡散領域3の不純物濃度は、後述するゲート領域22の部分で他の部分(活性領域10および後述する外周コンタクト領域21の部分)よりも高く、好ましくはゲート領域22の部分で他の部分の例えば1.3倍以上1.7倍以下程度に高いことがよい。n型電流拡散領域3のゲート領域22の部分の不純物濃度が高いほど、ドリフト領域の実効的な厚さを活性領域10よりも中間領域20で厚くすることができる。これにより、中間領域20の電界強度を相対的に小さくすることができる。
【0056】
+型領域11,12は、ゲートトレンチ7の底面にかかる電界を緩和する機能を有する。p+型領域11は、深さ方向Zに、ゲートトレンチ7の底面および並列pn層60のn型領域61に対向する。p+型領域11は、半導体基板40のおもて面から、p型ベース領域4とn型電流拡散領域3との界面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に、p型ベース領域4および並列pn層60のp型領域62と離れて配置されている。p+型領域11は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61に接していてもよい。
【0057】
+型領域12は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間に、p+型領域11およびゲートトレンチ7と離れて設けられている。p+型領域12は、深さ方向Zにp型ベース領域4および並列pn層60のp型領域62に接する。層間絶縁膜14は、活性領域10のコンタクト部および後述する外周コンタクト部21aを除いて、半導体基板40のおもて面の全面を覆う。活性領域10のコンタクト部は、ソース電極15とn+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6とのオーミックコンタクト部である。
【0058】
中間領域20は、第1方向Xに最も外側のゲートトレンチ7の中心よりも外側で、かつ第2方向Yにn+型ソース領域5の端部よりも外側で、段差31までの領域である。中間領域20の内側(チップ中央側)の部分(外周コンタクト領域)21に、活性領域10からソース電極15が延在し、ソース電極15とp+型外周コンタクト領域21b(p+型外周コンタクト領域21bを設けていない場合はp型ベース領域4)とのオーミックコンタクト部(電気的接触部:以下、外周コンタクト部とする)21aが形成されている。
【0059】
外周コンタクト領域21は、活性領域10と、後述するゲート領域22に配置されるゲートランナー22aの内周端部と、の間の部分である。外周コンタクト部21aは、中間領域20およびエッジ終端領域30における半導体基板40のおもて面を覆う後述する絶縁層(層間絶縁膜14等)を深さ方向Zに貫通するコンタクトホール14aに形成される。p+型外周コンタクト領域21bは、外周コンタクト領域21において半導体基板40のおもて面の第1面40aとp型ベース領域4との間に選択的に設けられている。
【0060】
MOSFETのオフ時にエッジ終端領域30におけるドリフト層2内に発生する少数キャリア(正孔)は、p型ベース領域4および外周コンタクト部21aを介してソース電極15に吐き出される。中間領域20およびエッジ終端領域30における半導体基板40のおもて面(半導体基板40のおもて面の、外周コンタクト部21aよりも外側の部分)は、フィールド酸化膜36および層間絶縁膜14を順に積層した絶縁層で覆われている。
【0061】
中間領域20の、外周コンタクト領域21よりも外側の部分(ゲート領域)22において、フィールド酸化膜36上に、ポリシリコン(poly-Si)層からなるゲートランナー22aが設けられている。ゲートランナー22aは、層間絶縁膜14で覆われている。ゲートランナー22a上に、層間絶縁膜14のコンタクトホールを介してゲート金属配線層22bが設けられている。ゲートランナー22aおよびゲート金属配線層22bはゲートパッド16に電気的に接続される(図1参照)。
【0062】
ゲート領域22は、外周コンタクト領域21を介して活性領域10の周囲を囲む。ゲート領域22には、活性領域10からゲート電極9が延在しており、ゲートランナー22aとゲート電極9とのコンタクト部(電気的接触部:不図示)が形成されている。ゲートランナー22aは、ゲート領域22の内周に沿って延在し、活性領域10の周囲を囲む。ゲート金属配線層22bは、ゲートランナー22aに沿って延在し、活性領域10の周囲を囲む。
【0063】
また、中間領域20の全域にわたって、p型ベース領域4と並列pn層60(ドリフト層2)との間に、p+型領域13が設けられている。p+型領域13は、中間領域20においてn-型エピタキシャル層43の内部にp+型領域11,12と同時にイオン注入により形成された拡散領域である。p+型領域13は、活性領域10の周囲を囲む。p+型領域13は、内側へ延在して活性領域10に達し、p+型領域11,12に接して電気的に接続されている。
【0064】
+型領域13は、外側へ延在して半導体基板40のおもて面の第3面40cに達し、後述するJTE構造32の最も内側のp型領域に接する。p+型領域13の、p型ベース領域4側の全面がp型ベース領域4に接する。また、p+型領域13は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61およびp型領域62にそれぞれ対向する部分にそれぞれ並列pn層60側へ突出する凸部13aを有する。p+型領域13の厚さは、凸部13a間の部分で凸部13aの部分よりも薄くなっている(図4の下図および図5参照)。
【0065】
+型領域13の凸部13aは、中間領域20における並列pn層60のn型領域61およびp型領域62の個数と同数存在し、第1方向Xに所定間隔で離れて設けられている。p+型領域13の凸部13aは、並列pn層60のn型領域61およびp型領域62が延在する方向と同じ第2方向Yにストライプ状に延在する(図4の上図参照)。図4の上図に、p+型領域13の、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61に対向する凸部13aと、並列pn層60のn型領域61およびp型領域62と、のレイアウトを示す。
【0066】
+型領域13の、深さ方向Zにn型領域61に対向する凸部13aは、当該n型領域61に接するか、または深さ方向Zにn型電流拡散領域3を介して当該n型領域61に対向する。p+型領域13の、深さ方向Zにn型領域61に対向する凸部13aは、p型領域62と離れて配置されている。p+型領域13の、深さ方向Zにp型領域62に対向する凸部13aは、当該p型領域62に接する。p+型領域13の凸部13a間には、深さ方向Zにn型領域61に隣接してn型電流拡散領域3が存在する。
【0067】
+型領域13の凸部13a間のn型電流拡散領域3により、中間領域20のドリフト領域の実質的な厚さ(ドリフト層2、および、p+型領域13の凸部13a間のn型電流拡散領域3の総厚さ)t1(図5)は、従来構造の中間領域120のドリフト領域(ドリフト層102)の実質的な厚さt101(図32)よりも厚くなる。このため、従来構造と比べて、中間領域20のドリフト領域の実質的な厚さt1が活性領域10のドリフト領域の実質的な厚さ(ドリフト層2およびn型電流拡散領域3の総厚さ)に近づく。
【0068】
これによって、並列pn層60の、半導体基板40のおもて面側において、中間領域20の電界強度分布が活性領域10の電界強度分布とほぼ同じになる(図16,18~20参照)。上述したようにn型電流拡散領域3の不純物濃度をゲート領域22の部分で相対的に高くすることで中間領域20での電界強度が相対的に小さくなっているため、活性領域10および中間領域20の電界強度分布がほぼ同じになることで、活性領域10の電界強度を中間領域20の電界強度よりも大きくすることができる。
【0069】
エッジ終端領域30において、半導体基板40のおもて面の第2面40bに、n-型エピタキシャル層43が露出されている。半導体基板40のおもて面の第2面40bの表面領域においてn-型エピタキシャル層43の内部に、JTE構造32を構成する複数のp型領域が選択的に設けられている。JTE構造32は、不純物濃度の異なる複数のp型領域を、内側から外側へ離れるにしたがって不純物濃度の低いp型領域が配置されるように、活性領域10の周囲を囲む同心円状に隣接して配置した構造である。
【0070】
JTE構造32を構成する複数のp型領域は、n-型エピタキシャル層43の内部にイオン注入により形成された拡散領域であり、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。また、JTE構造32を構成する複数のp型領域は、深さ方向Zにn-型エピタキシャル層43を貫通して並列pn層60に達し、並列pn層60のn型領域61およびp型領域62に接する。半導体基板40のおもて面の第3面40cには、p型ベース領域4およびp+型領域13が露出されている。
【0071】
JTE構造32を構成する複数のp型領域は、半導体基板40のおもて面の第3面40c付近でp+型領域13によりp型ベース領域4と電気的に接続されている。図2には、JTE構造32の複数のp型領域を一つのp-型領域(第4半導体領域)33で示す。半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cに露出とは、半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cの表面領域に設けられ、半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40c上の層間絶縁膜14に接することである。
【0072】
また、半導体基板40のおもて面の第2面40bの表面領域には、JTE構造32よりも外側に、JTE構造32と離れて、n+型ストッパ領域34が選択的に設けられている。半導体基板40のおもて面の第2面40bには、JTE構造32とn+型ストッパ領域34との間に、n-型エピタキシャル層43が露出される。n+型ストッパ領域34は、半導体基板40のおもて面の第2面40bおよび半導体基板40の端部に露出される。n+型ストッパ領域34は、深さ方向Zに並列pn層60に対向していてもよい。
【0073】
半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cは、上述したようにフィールド酸化膜および層間絶縁膜14を順に積層した絶縁層で覆われている。パッシベーション膜35は、半導体基板40のおもて面の全面を覆って、半導体基板40のおもて面を保護する。ソース電極15の、パッシベーション膜35の開口部から露出する部分はソースパッドとなる。半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)の全面に、ドレイン電極(第2電極)17が設けられている。
【0074】
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法について、図1~11を参照しながら説明する。図7~11は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図12,13は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態の別の一例を示す断面図である。図7~9には、活性領域10のみを示す。図10~13には、中間領域20を示す。
【0075】
まず、図7に示すように、n+型ドレイン領域1となるn+型出発基板41を用意する。n+型出発基板41は、例えば結晶構造を炭化珪素の四層周期六方晶構造(4H-SiC)とし、おもて面を(0001)面、いわゆるSi面としてもよい。次に、n+型出発基板41のおもて面上に、ドリフト層2となるn型のエピタキシャル層42をエピタキシャル成長(形成)させる。
【0076】
次に、例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、エピタキシャル層42の表面に、並列pn層60のp型領域62の形成領域に対応する部分が開口した例えば酸化膜等によるエッチング用マスク(不図示)を形成する。次に、このエッチング用マスクを用いてエピタキシャル層42を例えばドライエッチングし、第2方向Yにストライプ状に延在するトレンチ(SJトレンチ)63を形成する。
【0077】
エピタキシャル層42の、互いに隣り合うSJトレンチ63間に残る部分が並列pn層60のn型領域61となる。エピタキシャル層42の、SJトレンチ63の底面よりもn+型出発基板41側の部分は、SJ構造でない通常のn型ドリフト領域(ドリフト層2の、並列pn層60とn+型出発基板41との間の部分2a)となる。そして、SJトレンチ63の形成に用いたエッチング用マスクを除去する。
【0078】
エピタキシャル層42の形成前に、n+型出発基板41のおもて面上にn型バッファ領域(不図示)となる他のn型エピタキシャル層をエピタキシャル成長させてもよい。この場合、n型バッファ領域となる他のn型エピタキシャル層上にエピタキシャル成長させたエピタキシャル層42を深さ方向Zに貫通してn型バッファ領域に達するSJトレンチ63を形成してもよい。
【0079】
次に、p型エピタキシャル層をエピタキシャル成長(形成)させて、当該p型エピタキシャル層でSJトレンチ63の内部を埋め込む。次に、エピタキシャル層42の表面上の余分なp型エピタキシャル層を除去して、SJトレンチ63の内部にのみ並列pn層60のp型領域62となるp型エピタキシャル層を残す。ここまでの工程により、ドリフト層2となる、並列pn層60を含むエピタキシャル層42が形成される。
【0080】
+型出発基板41上にp型のエピタキシャル層42を形成し、深さ方向Zに当該エピタキシャル層42を貫通するSJトレンチ63を形成してp型領域62となる部分を残し、SJトレンチ63をn型領域61となるn型エピタキシャル層で埋め込むことで並列pn層60を形成してもよい。この場合、n+型出発基板41と並列pn層60との間にp型領域が残らないように、エピタキシャル層42の全体を並列pn層60とする。
【0081】
トレンチ埋め込みエピタキシャル方式に代えて、多段エピタキシャル方式により並列pn層60を形成してもよい。多段エピタキシャル方式では、n型領域61となるn型エピタキシャル層を所定厚さになるまで複数段のエピタキシャル成長で段階的に厚くし、エピタキシャル成長を1段行うごとにp型領域62(もしくはn型領域61およびp型領域62)を選択的に形成するためのイオン注入を繰り返し行えばよい。
【0082】
次に、並列pn層60の上に、n-型エピタキシャル層43をエピタキシャル成長(形成)させる。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、活性領域10においてn-型エピタキシャル層43の表面領域に、p+型領域11,12aをそれぞれ選択的に形成する。p+型領域11とp+型領域12aとは第1方向X(図2参照)に交互に繰り返し配置する。
【0083】
また、p+型領域11,12aの形成と同時に、中間領域20においてn-型エピタキシャル層43の表面領域に、p+型領域13のうちの凸部13a(図5参照)となるp+型領域を選択的に形成する。p+型領域13のうちの凸部13aとなるp+型領域は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61およびp型領域62にそれぞれ対向する位置に第1方向Xに所定間隔で離れて配置される。
【0084】
次に、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層43の表面領域にn型領域3aを形成する。n型領域3aは、活性領域10および中間領域20の全体に形成する(図10参照)。n型領域3aは、活性領域10のp+型領域11,12a間と、中間領域20のp+型領域13の凸部13a間と、に形成する。n型領域3aと、p+型領域11,12a,13(13a)と、の形成順序を入れ替えてもよい。
【0085】
次に、図8に示すように、エピタキシャル成長によりn-型エピタキシャル層43の厚さを厚くする。次に、フォトリソグラフィおよびp型不純物のイオン注入により、活性領域10においてn-型エピタキシャル層43の厚さを増した部分43aにp+型領域12bを選択的に形成し、深さ方向Zに互いに隣接するp+型領域12aとp+型領域12bとを連結させてp+型領域12を形成する。
【0086】
また、p+型領域12bの形成と同時に、中間領域20においてn-型エピタキシャル層43の厚さを増した部分43aの全域にp+型領域13の残りの部分を形成する。この中間領域20においてn-型エピタキシャル層43の厚さを増した部分43aの全域に形成されたp+型領域13で、n-型エピタキシャル層43の内部にすでに形成されているp+型領域13の凸部13aとなる部分をすべて連結する(図5参照)。
【0087】
次に、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層43の厚さを増した部分43aにn型領域3bを形成し、深さ方向Zに互いに隣接するn型領域3aとn型領域3bとを連結させてn型電流拡散領域3を形成する。n型領域3bは、活性領域10および中間領域20の全体に形成する(図10参照)。図10において、符号71は、n型領域3a,3bを形成するためのイオン注入である。
【0088】
次に、n-型エピタキシャル層43の表面に、中間領域20のゲート領域22が開口したイオン注入用マスク72を形成する。次に、イオン注入用マスク72を用いてn型電流拡散領域3のゲート領域22の部分に再度n型不純物をイオン注入73することで、n型電流拡散領域3の不純物濃度をゲート領域22の部分で他の部分(活性領域10および外周コンタクト領域21の部分)よりも高くする(図11参照)。
【0089】
このイオン注入73のドーズ量をイオン注入71のドーズ量の例えば0.3倍以上0.7倍以下程度のドーズ量とすることで、n型電流拡散領域3のゲート領域22の部分の不純物濃度を上述した好適な不純物濃度(n型電流拡散領域3の活性領域10および外周コンタクト領域21の部分の不純物濃度の1.3倍以上1.7倍以下程度の不純物濃度)にすることができる。
【0090】
イオン注入用マスク72の形成およびイオン注入73をn型領域3a,3bを形成するごとに行ってもよい。このため、n型領域3aのゲート領域22の部分の不純物濃度を高くするためのイオン注入73と、p+型領域12b,13の形成と、n型領域3bの形成と、n型領域3bのゲート領域22の部分の不純物濃度を高くするためのイオン注入73と、の順序を入れ替え可能である。
【0091】
または、n型領域3a,3bを活性領域10および中間領域20の外周コンタクト領域21のみに形成した後に(図12参照)、1回のイオン注入77でn型領域3a,3bのゲート領域22の部分をn型電流拡散領域3のゲート領域22の部分の上述した好適な不純物濃度で形成してもよい(図13参照)。すなわち、イオン注入77のドーズ量をイオン注入71のドーズ量の例えば1.3倍以上1.7倍以下程度のドーズ量とすればよい。
【0092】
図12,13に示す別の一例において、n型領域3a,3bを活性領域10および外周コンタクト領域21のみに形成するためのイオン注入用マスク74の形成およびイオン注入75をn型領域3a,3bを形成するごとに行ってもよい。n型領域3a,3bのゲート領域22の部分を形成するためのイオン注入用マスク76の形成およびイオン注入77をn型領域3a,3bを形成するごとに行ってもよい。
【0093】
次に、図9に示すように、n-型エピタキシャル層43の上に、p型ベース領域4となるp型エピタキシャル層44をエピタキシャル成長させる。これによって、n+型出発基板41のおもて面上にエピタキシャル層42、n-型エピタキシャル層43およびp型エピタキシャル層44が順に積層され、かつドリフト層2となるエピタキシャル層42に並列pn層60を含む半導体基板(半導体ウエハ)40が作製される。
【0094】
次に、p型エピタキシャル層44の、エッジ終端領域30の部分をエッチングにより除去して、半導体基板40のおもて面に、活性領域10側の部分(第1面40a)よりもエッジ終端領域30の部分(第2面40b)で低くした段差31を形成する(図2参照)。エッジ終端領域30において新たに半導体基板40のおもて面となった第2面40bに、n-型エピタキシャル層43を露出させる。
【0095】
半導体基板40のおもて面の、第1面40aと第2面40bとの間の部分(第3面40c)は例えば第1,2面40a,40bに対して鈍角をなしてもよい。半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cには、p型ベース領域4およびn+型領域13が露出される。この段差31を形成するエッチングにより、n-型エピタキシャル層43の、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出される部分が若干除去されてもよい。
【0096】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行い、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6、p+型外周コンタクト領域21b、JTE構造32のp型領域(p-型領域33)、およびn+型ストッパ領域34をそれぞれ選択的に形成する。n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp+型外周コンタクト領域21bは、p型エピタキシャル層44の表面領域にそれぞれ形成する。
【0097】
p型エピタキシャル層44の、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp+型外周コンタクト領域21bを除く部分がp型ベース領域4となる。JTE構造32のp型領域およびn+型ストッパ領域34は、エッジ終端領域30における半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出するn-型エピタキシャル層43の表面領域にそれぞれ選択的に形成する。
【0098】
次に、エピタキシャル層43,44にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理(以下、活性化アニールとする)を行う。次に、活性領域10において半導体基板40のおもて面からn+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通して、n型電流拡散領域3の内部のp+型領域11に達するゲートトレンチ7を形成する。次に、半導体基板40のおもて面およびゲートトレンチ7の内壁に沿ってゲート絶縁膜8を形成する。
【0099】
次に、ゲートトレンチ7の内部に埋め込むように半導体基板40のおもて面上に堆積したポリシリコン層をエッチバックして、ゲート電極9となる部分をゲートトレンチ7の内部に残す。中間領域20およびエッジ終端領域30において半導体基板40のおもて面にフィールド酸化膜(不図示)を形成する。中間領域20においてフィールド酸化膜上にポリシリコン層からなるゲートランナー22a(図1,2参照)を形成する。
【0100】
次に、半導体基板40のおもて面の全面に層間絶縁膜14を形成する。次に、一般的な方法により半導体基板40の両面にそれぞれ表面電極(ソース電極15、ゲートパッド16(図1参照)、ゲート金属配線層22b(図1,2参照)およびドレイン電極17)を形成する。ゲートパッド16には、ゲートランナー22aおよびゲート金属配線層22bを介してすべてのゲート電極9が電気的に接続される。
【0101】
次に、半導体基板40のおもて面の、ソース電極15の一部(ソースパッドとなる部分)と、ゲートパッド16と、ゲート金属配線層22bと、を除く部分をパッシベーション膜35で覆って保護する。その後、半導体ウエハ(半導体基板40)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、図1~6に示す炭化珪素半導体装置50が完成する。
【0102】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、中間領域における並列pn層とp型ベース領域との間に設けられたp+型領域に並列pn層側へ突出する凸部を形成することで、並列pn層の、半導体基板のおもて面側において、中間領域の電界強度分布を活性領域の電界強度分布とほぼ同じにする。これに加えて、n型電流拡散領域を活性領域および中間領域の全体に設け、かつn型電流拡散領域の不純物濃度を中間領域のゲート領域の部分で他の部分(活性領域および中間領域の外周コンタクト領域)よりも高くする。
【0103】
これによって、活性領域での電界強度を中間領域での電界強度よりも大きくすることができ、活性領域でアバランシェ降伏しやすくなる。活性領域でアバランシェ降伏することで、活性領域の全体に正孔電流(アバランシェ電流)が流れるため、外周コンタクト領域での正孔電流密度を小さくすることができ、外周コンタクト領域での電流集中を抑制することができる。これにより、中間領域でのアバランシェ耐量が向上するため、炭化珪素半導体装置全体のアバランシェ耐量を向上させることができる。
【0104】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図14,15は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80,80’は、p+型領域13の凸部81,81’のレイアウトが実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(図4の上図参照)と異なる。
【0105】
図14に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80において、p+型領域13は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61およびp型領域62にそれぞれ対向する部分にそれぞれ並列pn層60側へ突出する凸部81を有する。p+型領域13の凸部81は、実施の形態1と同様に、並列pn層60のn型領域61およびp型領域62が延在する方向と同じ第2方向Yに延在するストライプ状に配置されている。
【0106】
+型領域13の、深さ方向Zにn型領域61に対向する凸部81は、p+型領域13の、深さ方向Zにp型領域62に対向し互いに隣り合う凸部81間に、互いに離れて複数(図14では2本)配置されている。このため、各々のn型領域61に、深さ方向Zにp+型領域13の直線状の複数の凸部81が対向する。p+型領域13の凸部81は、中間領域20における並列pn層60のn型領域61およびp型領域62の個数よりも多い。
【0107】
図15に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80’において、p+型領域13は、深さ方向Zに並列pn層60のn型領域61およびp型領域62にそれぞれ対向する部分にそれぞれ並列pn層60側へ突出する凸部81’を有する。p+型領域13の、深さ方向Zにn型領域61に対向する凸部81’は、例えば略矩形状の平面形状を有し、第2方向Yに所定間隔で点在してマトリクス状に配置されている。
【0108】
図14に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80に図15に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80’を適用し、並列pn層60の深さ方向Zに各々のn型領域61にそれぞれ対向する複数の凸部をそれぞれ第2方向Yに点在させてもよい。すなわち、並列pn層60の深さ方向Zに各々のn型領域61にそれぞれ対向してマトリクス状に複数の凸部が配置されてもよい。
【0109】
+型領域13の、深さ方向Zにp型領域62に対向する凸部81,81’を図示省略するが、図14においてp+型領域13の、深さ方向Zに1つのp型領域62に対向する凸部81は実施の形態1と同様に第2方向Yに直線状に延在する。図15においてp+型領域13の、深さ方向Zに1つのp型領域62に対向する凸部81’は、実施の形態1と同様に第2方向Yに直線状に延在する。
【0110】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80,80’の製造方法は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法において、中間領域のp+型領域13の凸部81,81’を形成するためのイオン注入に用いるイオン注入用マスクパターンを変更すればよい。
【0111】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、中間領域において並列pn層とp型ベース領域との間に設けられたp+型領域(p型ベース領域とJTE構造のp型領域とを電気的に接続するp+型領域)の、深さ方向に並列pn層のn型領域に対向する凸部のレイアウト(ストライプ状またはマトリクス状)を種々変更した場合においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0112】
また、実施の形態2によれば、中間領域における並列pn層とp型ベース領域との間に設けられたp+型領域に、深さ方向に並列pn層の1つのn型領域に対向して複数の凸部を設けることで、中間領域において並列pn層とp型ベース領域との間にn型電流拡散領域が占める比率を増やすことができる。これにより、中間領域のドリフト領域の実効的な厚さがさらに厚くなり、中間領域よりも活性領域で電界強度がさらに高くなるため、活性領域でさらにアバランシェ降伏しやすくすることができる。
【0113】
(実施例1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(図1~6参照)の中間領域20の電界強度について検証した。図16,17は、それぞれ実施例1および従来例の深さ方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。図18,21は、それぞれ実施例1および従来例の第1方向の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。図19は、図18の矩形枠C1内を拡大して示す拡大図である。図20は、図18の矩形枠C2内を拡大して示す拡大図である。
【0114】
上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(以下、実施例1とする)の活性領域10および中間領域20について、深さ方向Zの電界強度分布を図16に示し、第1方向Xの電界強度分布を図18~20に示す。実施例1では、p+型領域13の、ドリフト領域との界面に設けた凸部13aによって得られる電界強度分布を得るために、n型電流拡散領域3の不純物濃度を活性領域10および中間領域20の全域(外周コンタクト領域21およびゲート領域22)にわたって同じ不純物濃度としている。
【0115】
比較として、従来の炭化珪素半導体装置150(以下、従来例とする:図30~33参照)について、活性領域110および中間領域120の深さ方向Zの電界強度分布を図17に示し、中間領域120の第1方向Xの電界強度分布を図21に示す。従来例の活性領域110の第1方向Xの電界強度分布は実施例1の活性領域10の第1方向Xの電界強度分布と同じであり、図19の符号を100番台にしたものである。従来例が実施例2と異なる点は、次の2点である。
【0116】
1つ目の相違点は、p+型領域113の、ドリフト領域との界面が半導体基板140のおもて面に平行な平坦面である点である。2つ目の相違点は、n型電流拡散領域103が活性領域110および中間領域120の外周コンタクト領域121のみに設けられ、中間領域120のゲート領域122に設けられていない点である。n型電流拡散領域103の不純物濃度は、活性領域110および中間領域120の外周コンタクト領域121の全域にわたって同じ不純物濃度である。
【0117】
従来例では、並列pn層160の、半導体基板140のおもて面側において、中間領域120の電界強度分布が深さ方向Zおよび第1方向Xともに活性領域110の電界強度分布と異なり、活性領域110よりも中間領域120で電界強度が大きくなることが確認された(図17,19,21)。一方、実施例1においては、並列pn層60の、半導体基板40のおもて面側において、中間領域20の電界強度分布が深さ方向Zおよび第1方向Xともに活性領域10の電界強度分布とほぼ同じになることが確認された(図16,18~20)。
【0118】
第2方向Yの電界強度分布については図示省略するが、実施例1においては、並列pn層60の、半導体基板40のおもて面側において、第2方向Yの電界強度分布についても、中間領域20の電界強度分布は活性領域10の電界強度分布とほぼ同じになる。したがって、実施例1のように中間領域20のp+型領域13に凸部13aを形成することで、並列pn層60の、半導体基板40のおもて面側において、中間領域20の電界強度分布を活性領域10の電界強度分布とほぼ同じにすることができることが確認された。
【0119】
(実施例2)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(図1~6参照)のアバランシェ降伏時における中間領域20での少数キャリア(正孔)電流量について検証した。図22,23は、それぞれ実施例2および従来例のアバランシェ降伏時(インパクトイオン現象発生時)のキャリア密度のシミュレーション結果を示す分布図である。図24,25は、それぞれ実施例2および従来例のアバランシェ降伏時の正孔電流量のシミュレーション結果を示す分布図である。
【0120】
上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(以下、実施例2とする)のアバランシェ降伏時のキャリア密度分布および正孔電流量分布をそれぞれ図22,24に示す。実施例2が実施例1と異なる点は、n型電流拡散領域3の不純物濃度を、ゲート領域22の部分で活性領域10および外周コンタクト領域21の部分の1.5倍とした点である。比較として、上記従来例のアバランシェ降伏時のキャリア密度分布および正孔電流量分布をそれぞれ図23,25に示す。
【0121】
従来例では、活性領域110よりも中間領域120でインパクトイオン現象によるキャリア密度の増加が大きく、ゲート領域122でアバランシェ降伏する(図23)。このアバランシェ降伏によりゲート領域122で急激に正孔電流(アバランシェ電流)が増加し、大量の正孔電流が中間領域120のp+型領域113を介してp+型外周コンタクト領域121bからソース電極115へ吐き出されることで、p+型領域113および外周コンタクト部121aに正孔電流が集中することが確認された(図25)。
【0122】
一方、実施例2においては、中間領域20よりも活性領域10でインパクトイオン現象によるキャリア密度の増加が大きく、活性領域10でアバランシェ降伏しやすいことが確認された(図22)。アバランシェ降伏により主に活性領域10で急激に正孔電流(アバランシェ電流)が増加し、正孔電流が活性領域10のコンタクト部と中間領域20の外周コンタクト部21aとに分散されてソース電極15へ吐き出されることで、中間領域20の外周コンタクト部21aへの正孔電流集中が抑制されることが確認された(図24)。
【0123】
実施例2が活性領域10でアバランシェ降伏しやすい理由は、次の通りである。n型電流拡散領域3の不純物濃度がゲート領域22の部分で相対的に高くなっていることで、ドリフト領域の実効的な厚さが活性領域10よりも中間領域20で厚くなり、中間領域20の電界強度を相対的に小さくすることができる。そして、活性領域10および中間領域20の電界強度分布がほぼ同じになっていることで(図16,18~20参照)、活性領域10の電界強度を中間領域20の電界強度よりも大きくすることができるからである。
【0124】
また、実施例2および従来例ともに、SJ構造とする(ドリフト層2を並列pn層60とする)ことで、JTE構造32,132の外側端部(JTE構造32を構成する最も外側のp型領域の外側端部)D1,D101でのアバランシェ降伏が抑制されていることが確認された。また、SJ構造が深さ方向ZにJTE構造32に対向していればよく、SJ構造が半導体基板40の端部まで設けられていない場合においても実施例2の上記結果(図22,24)が得られることが本発明者により確認されている。
【0125】
実施例2および従来例の外周コンタクト部21a,121a付近の正孔電流密度分布を図26に示す。図26は、実施例2の外周コンタクト部付近の正孔電流密度のシミュレーション結果を示す分布図である。図27,28は、それぞれ実施例2および従来例の外周コンタクト部付近の不純物濃度を示す分布図である。図26~28の横軸はともに第1方向Xの距離であり、第1方向Xの同じ位置を示している。図26の縦軸は正孔電流密度である。図27,28の縦軸は深さ方向Zの距離(深さ)である。
【0126】
図26に示す結果から、実施例2においては、従来例と比べて、外周コンタクト部21aでの正孔電流密度を小さくすることができることが確認された。このように、オフ時に活性領域10でアバランシェ降伏させて、主に活性領域10に正孔電流(アバランシェ電流)を多く流すことで、外周コンタクト部21aでの正孔電流密度を小さくすることができ、中間領域20でのアバランシェ耐量を向上させることができる。これにより、実施例2全体のアバランシェ耐量を向上させることができる。
【0127】
また、実施例2の耐圧(静耐圧)について検証した。実施例2および従来例の電圧-電流特性を図29に示す。図29は、実施例2の電圧-電流特性のシミュレーション結果を示す特性図である。図29の横軸はドレイン・ソース間電圧Vdであり、縦軸はドレイン・ソース間電流Idである。図29に示す結果から、実施例2は、SJ構造のチャージバランスにより、従来例と同程度の耐圧が得られることが確認された。したがって、実施例2は、耐圧を維持したまま、アバランシェ耐量(動耐圧)を向上させることができる。
【0128】
図示省略するが、n型電流拡散領域3の不純物濃度を、ゲート領域22の部分で他の部分(活性領域10および外周コンタクト領域21の部分)よりも高くすることで、実施例2と同様の効果が得られ、特にゲート領域22の部分を他の部分の1.3倍以上1.7倍以下としたときに効果が高いことが本発明者により確認されている。また、図示省略するが、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置80,80’においても実施例1,2と同様の効果を得ることができることが本発明者により確認されている。
【0129】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態において、イオン注入用マスク(図11の符号72、図12の符号74、図13の符号76に相当)の位置ずれ等により、n型電流拡散領域のゲート領域の部分だけでなく、ゲート領域の部分から若干外周コンタクト領域の側にずれた部分まで相対的に不純物濃度が高くなっていてもよい。また、並列pn層とn+型出発基板との間のSJ構造でない通常のn型ドリフト領域の不純物濃度が並列pn層のn型領域の不純物濃度よりも高くてもよい。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるSJ構造のパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0131】
1 n+型ドレイン領域
2 ドリフト層
2a 並列pn層とn+型出発基板との間のSJ構造でない通常のn型ドリフト領域
3 n型電流拡散領域
3a,3b n型領域
4 p型ベース領域
5 n+型ソース領域
6 p++型コンタクト領域
7 ゲートトレンチ
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10 活性領域
11,12,12a,12b,13 p+型領域
13a,81,81’ p+型領域の凸部
14 層間絶縁膜
14a コンタクトホール
15 ソース電極
16 ゲートパッド
17 ドレイン電極
20 中間領域
21 外周コンタクト領域
21a 外周コンタクト部
21b p++型外周コンタクト領域
22 ゲート領域
22a ゲートランナー
22b ゲート金属配線層
30 エッジ終端領域
31 半導体基板のおもて面の段差
32 JTE構造
33 JTE構造のp-型領域
34 n+型ストッパ領域
35 パッシベーション膜
36 フィールド酸化膜
40 半導体基板
40a 半導体基板のおもて面の活性領域側の部分(第1面)
40b 半導体基板のおもて面のエッジ終端領域の部分(第2面)
40c 半導体基板のおもて面の、第1面と第2面とをつなぐ部分(第3面)
41 n+型出発基板
42 エピタキシャル層
43 n-型エピタキシャル層
43a n-型エピタキシャル層の厚さを増した部分
44 p型エピタキシャル層
50,80,80' 炭化珪素半導体装置
60 並列pn層
61,61a 並列pn層のn型領域
62 並列pn層のp型領域
63 SJトレンチ
71,73,75,77 イオン注入
72,74,76 イオン注入用マスク
t1 ドリフト領域の厚さ
X 半導体基板のおもて面に平行な方向(第1方向)
Y 半導体基板のおもて面に平行で第1方向と直交する方向(第2方向)
Z 深さ方向
図1
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