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特開2022-80731管理装置、管理方法、管理プログラム、及び管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080731
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】管理装置、管理方法、管理プログラム、及び管理システム
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/06 20060101AFI20220523BHJP
   C25C 1/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C25C7/06 301Z
C25C1/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191956
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 里司
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 和樹
【テーマコード(参考)】
4K058
【Fターム(参考)】
4K058AA13
4K058BA17
4K058BB04
4K058FB02
4K058FB04
(57)【要約】
【課題】絶縁物が付着した電着物の発生に基づくことなく、製造用母板の状態を示す情報を提示できる管理装置、管理方法、管理プログラム、及び管理システムを提供する。
【解決手段】電着物の製造用母板の画像を取得する取得部と、画像から製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する画像処理部と、識別した絶縁物の領域に基づき、製造用母板の状態を示す情報を提示する提示部と、を有する製造用母板の管理装置により上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着物の製造用母板の画像を取得する取得部と、
前記画像から前記製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する画像処理部と、
識別した前記絶縁物の領域に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を提示する提示部と、
を有する製造用母板の管理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記画像を複数の領域に分割し、分割した複数の領域のうちの少なくとも一つの領域について、前記絶縁物の領域を識別すること
を特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項3】
前記提示部は、前記画像処理部が分割した前記複数の領域のうちの一つの領域について識別した前記絶縁物の領域に基づいて前記製造用母板の状態を示す情報を提示するか、又は前記画像処理部が分割した前記複数の領域それぞれについて識別した前記絶縁物の領域に基づいて前記製造用母板の状態を示す情報を提示すること
を特徴とする請求項2記載の管理装置。
【請求項4】
前記提示部は、識別した前記絶縁物の領域の面積、又は前記製造用母板の面積に対する前記絶縁物の領域の占める割合に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を提示すること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記提示部は、前記製造用母板の状態を示す情報として、識別した前記絶縁物の領域の面積、前記製造用母板の面積に対する前記絶縁物の領域の占める割合、又は前記絶縁物の再塗布の要否を示す情報の少なくとも一つを提示すること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記画像に含まれる画素を画素値に基づき、前記絶縁物の領域の画素と前記絶縁物の領域以外の画素とに区分し、前記絶縁物の領域を識別すること
を特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の管理装置。
【請求項7】
電着物の製造用母板の管理装置が、
電着物の製造用母板の画像を取得する手順と、
前記画像から前記製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する手順と、
識別した前記絶縁物の領域に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を提示する手順と、
を行う製造用母板の管理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
電着物の製造用母板の画像を取得する取得部、
前記画像から前記製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する画像処理部、
識別した前記絶縁物の領域に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を提示する提示部、
として機能させるための製造用母板の管理プログラム。
【請求項9】
電着物の製造用母板に電着部の領域を残すように絶縁物を塗布する絶縁物塗布部と、
前記絶縁物を塗布した前記製造用母板をカソードとして電解製錬を行い、前記電着物を得る電解製錬部と、
前記電解製錬の後の前記製造用母板の画像を取得する取得部と、
前記画像から前記製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する画像処理部と、
識別した前記絶縁物の領域に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を出力する出力部と、
出力された前記製造用母板の状態を示す情報に従って、前記製造用母板を再利用して前記電解製錬を行う工程、又は前記製造用母板に前記絶縁物の再塗布を行う工程に、前記製造用母板を送る制御部と、
を有する製造用母板の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、管理方法、管理プログラム、及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エッジやコーナーの無い半球状又は円盤状のボタン型をなす電気ニッケルは従来から製造されている。電気ニッケルは、円形電着面を有する母板を用いて、電解採取により製造される。円形電着面を有する母板は、ステンレス材などを用いた電極板上に絶縁塗料を塗布して形成される。母板上に電着した電気ニッケルは、主として振動や衝撃を母板に対して与えることにより、母板から剥ぎ取られる。母板は繰り返し使用される。母板上に電着した電気ニッケルを母板から剥ぎ取る作業は電気ニッケルだけでなく、母板表面に塗布された絶縁塗料の一部を徐々に剥がす。
【0003】
従来、絶縁塗料が付着した不良電気ニッケルの発生が所定量を超えた場合、母板に形成された絶縁層の寿命が到来したものと判定していた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、母板に形成された絶縁層の寿命が到来しているか否かの判定基準に、発生した不良電気ニッケルの量を用いるため、不良電気ニッケルの発生を避けることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-108592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、絶縁物が付着した電着物の発生に基づくことなく、製造用母板の状態を示す情報を提示できる管理装置、管理方法、管理プログラム、及び管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電着物の製造用母板の画像を取得する取得部と、前記画像から前記製造用母板に塗布されている絶縁物の領域を識別する画像処理部と、識別した前記絶縁物の領域に基づき、前記製造用母板の状態を示す情報を提示する提示部と、を有する製造用母板の管理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、絶縁物が付着した電着物の発生に基づくことなく、製造用母板の状態を示す情報を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る管理システムの一例の構成図である。
図2】本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図3】本実施形態に係る管理システムの一例の機能構成図である。
図4】電気ニッケルの製造工程の一例を説明する図である。
図5】電気ニッケルの製造工程で利用するカソードの一例を説明する図である。
図6】母板の状態を示す情報の一例の説明図である。
図7】本実施形態に係る電着物の製造工程の一例を示したフローチャートである。
図8】ステップS16の処理の一例を示すフローチャートである。
図9】ステップS16の処理の一例を示すフローチャートである。
図10】母板の画像に少なくとも一つの領域を設定するUI画面の一例のイメージ図である。
図11】母板の画像に少なくとも一つの領域を設定するUI画面の一例のイメージ図である。
図12】母板の状態を示す情報を提示するUI画面の一例のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0010】
電着部を有する母板を用いて、電解採取により電着物を製造する管理システムは、例えば図1に示すように構成される。図1は、本実施形態に係る管理システムの一例の構成図である。図1の管理システム1は、管理装置2、カメラ3、画像保持装置4、及び製造設備5を備える。
【0011】
製造設備5は、シーケンサなどの制御装置6の制御により電解製錬工程、剥取工程、撮像工程、マスキング工程、及び絶縁物除去工程を後述のように実現する。制御装置6は作業者などのユーザから受け付ける操作内容や管理装置2から出力される情報に従い、製造設備5における電着物の製造プロセスを制御する。
【0012】
管理装置2は製造設備5における電着物の製造プロセスを管理する。管理装置2が行う管理には、母板に塗布されている絶縁物の寿命が到来しているか否か(母板に塗布されている絶縁物の再塗布が必要か否か)の管理が含まれる。管理装置2はネットワーク7を介して製造設備5の制御装置6とデータ通信を行うことができる。
【0013】
ネットワーク7は、様々な情報を伝送するための通信資源を意味しており、有線接続又は無線接続される様々な伝送路を含む。ネットワーク7は、一般的に広く普及しているインターネット網などの通信路や、PHS(Personal Handyphone System)をはじめ4G(4th Generation)・5G(5th Generation)・LTE(Long Term Evolution)といった携帯機器向けの通信路、地上放送網、衛星放送網、ケーブル伝送網、電波通信、ミリ波通信、レーダー通信などのあらゆる伝送路を指す。
【0014】
管理装置2はカメラ3が撮影した画像を取得する。カメラ3は製造設備5で利用している母板などの画像を撮影できる撮像する撮像装置の一例である。カメラ3は母板などの画像を撮像又はキャプチャすることが可能なセンサを用いるものであればよい。
【0015】
例えばカメラ3はUSB(Universal Serial Bus)接続可能なWebカメラなどでもよい。また、カメラ3は、デジタルカメラなどで利用されるイメージセンサを用いるものであってもよい。また、カメラ3は赤外線センサやレーザセンサなどの特殊なセンサを用いてもよい。特殊なセンサはセンシングしたデータをイメージ化できる機能を有している。
【0016】
カメラ3と管理装置2の接続は、有線又は無線により直接接続される形態であってもよいし、ネットワーク7を介して接続される形態であってもよい。カメラ3と管理装置2とがネットワーク7を介して接続される場合、カメラ3はIPカメラとして機能する。
【0017】
画像保持装置4はカメラ3が撮影した例えば母板の画像を保持する。なお、画像保持装置4はカメラ3が撮影した画像の他、管理装置2の処理に必要な画像や情報を保持することもできる。画像保持装置4は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はUSBメモリなどのストレージデバイスである。
【0018】
本実施形態の管理装置2及び制御装置6は、例えば、一般的なコンピュータを構成するハードウェアと、コンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)との協働により実現することができる。例えば管理装置2及び制御装置6は図2のコンピュータ20が所定のプログラムを実行することによって、後述の各処理部を実現できる。また、管理装置2はコンピュータ20が備えるストレージデバイスを用いて、上述した画像保持装置4を実現できる。
【0019】
図2は、本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。図2に示したコンピュータ20は、例えば図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)21などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)22やRAM(Random Access Memory)23などのメモリと、HDD(Hard Disk Drive)24などのストレージデバイスと、処理結果をユーザに提示する表示デバイスなどの出力装置25と、ユーザからの操作を受け付ける入力デバイス等の入力装置27、表示デバイスや入力デバイス等の機器又はネットワーク7を接続するためのI/F部26と、これら各部を接続するバスとを備えた一般的なコンピュータとしてのハードウェア構成を有する。
【0020】
上記のプログラムは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録されて提供され、HDD24などに格納される。プログラムを記録する記録媒体は、コンピュータ20が読み取り可能な記録媒体であれば、何れの記憶形式の形態であってもよい。また、プログラムはコンピュータ20に予めインストールされた構成であってもよい。プログラムはネットワーク7を介して配布され、コンピュータ20に適宜インストールされる構成であってもよい。
【0021】
上記のコンピュータ20で実行されるプログラムは、例えば後述の管理装置2の各処理部を含むモジュール構成となっている。CPU21がプログラムを適宜読み出して実行することにより、後述する各処理部はRAM23などのメモリ上に生成されるようになっている。また、上記のコンピュータ20で実行されるプログラムは、例えば後述の制御装置6の各処理部を含むモジュール構成となっている。CPU21がプログラムを適宜読み出して実行することにより、後述する各処理部はRAM23などのメモリ上に生成されるようになっている。
【0022】
本実施形態の管理装置2及び制御装置6の少なくとも一方は、複数台のコンピュータ20を通信可能に接続したシステムとして構成し、後述の各処理部を複数台のコンピュータ20に分散して実現する構成であってもよい。また、本実施形態の管理装置2及び制御装置6の少なくとも一方は、クラウドシステム上で動作する仮想マシンであってもよい。
【0023】
図3は本実施形態に係る管理システムの一例の機能構成図である。図3に示した管理装置2は、取得部51、画像処理部52、提示部53、管理装置側制御部54、及び出力部55を備える。なお、本実施形態に係る管理システム1の説明に不要な機能構成については図示を適宜省略する。
【0024】
カメラ3は後述の撮像工程において母板の絶縁物が塗布された面の画像が撮影可能な位置に設置されている。取得部51はカメラ3が撮影した母板の画像を取得する。カメラ3と取得部51は有線又は無線により直接接続される形態であってもよいし、ネットワーク7を介して接続される形態であってもよい。カメラ3と取得部51とがネットワーク7を介して接続される形態の場合、カメラ3はIPカメラとして機能する。
【0025】
取得部51は、接続されたカメラ3から母板の画像(原画像)を取得して画像処理部52に入力する。例えば、カメラ3がIPカメラであれば、取得部51は予め設定されているエンドポイントから原画像を取得する。取得部51は、例えば予め決められたタイミングに従って原画像を取得する機能や、取得する原画像の画像サイズや画像フォーマットを指定できる機能を有するものとする。これらの取得部51の機能は、管理装置側制御部54から出力される制御信号によって制御される。取得部51が出力する原画像は、カメラ3から取得した原画像と同じ画像サイズであってもよいし、カメラ3から取得した原画像に対して画像サイズの変更を行ったものであってもよい。
【0026】
画像処理部52は、取得部51から得た母板の画像に対する画像処理を行う。画像処理部52が行う画像処理とは、少なくとも、母板(電着物の製造用母板)の金属板上に形成された絶縁層部分(絶縁物が塗布された領域)と、それ以外の部分と、に母板の画像を分類する処理である。
【0027】
例えば画像処理部52は、ステンレス材などを用いた電極板上に絶縁物が塗布されている領域と、絶縁物が塗布されていない電極板上の領域(電着部)とを識別するため、画像処理を行う。例えば画像処理部52は、母板の画像に含まれる画素を濃度で量子化し、予め決められた画素値(閾値)以下である場合に、絶縁物が塗布されている領域の画素に区分し、予め決められた画素値以下でない場合に、絶縁物が塗布されていない領域の画素に区分する。
【0028】
画像にRGBデータがある場合、画像処理部52は、母板の画像に含まれる画素のRGBデータが予め決められた画素値(閾値)以上である場合に、絶縁物が塗布されている領域の画素に区分し、予め決められた画素値以上でない場合に、絶縁物が塗布されていない領域の画素に区分する。以下では、説明を簡単にするため、母板の画像に含まれる画素を2階調データに変換する処理(以下、2値化処理と称する)を例として説明する。
【0029】
画像処理部52は、母板の絶縁物が塗布されている領域の画素と、絶縁物が塗布されていない領域の画素と、を識別できる画素の画素値を閾値として設定する。例えば画像処理部52は設定された閾値に基づいて2値化処理を行い、設定した閾値より画素値が小さい画素の数の合計を、母板の絶縁物が塗布されている領域の面積として算出する。
【0030】
例えば、ユーザはカメラ3から取得した原画像の絶縁層部分を指定することで、指定された画素が絶縁層部分として識別できる画素値を閾値として設定してもよいし、2値化処理後の画像の、絶縁層部分を指定することで、指定された画素が絶縁層部分として識別できる画素値を閾値として設定してもよい。
【0031】
なお、本実施形態では、2値化後の処理画像において、絶縁層部分を白色であるとして説明しているが、黒色でもよい。この場合、画像処理部52は閾値以上の画素値の画素の数の合計を面積として算出する。
【0032】
提示部53は、画像処理部52から得た母板の絶縁物が塗布されている領域の面積などの母板の状態を示す情報をユーザに提示する。提示部53は、母板の状態を示す情報の一例として、2値化処理後の画像出力と共に、母板の絶縁物が塗布されている領域の面積を画面に表示してもよい。提示部53は母板の状態を示す情報の一例として2値化処理後の画像出力と共に、母板への絶縁物の再塗布の要否を示す情報を画面に表示してもよい。提示部53は母板の状態を示す情報の一例として設定した閾値より画素値が小さい画素の数の合計を画面に表示してもよい。
【0033】
また、提示部53はカメラ3の設置情報(例えば撮影時間、設置場所、明度などの設置場所を示すテキストなど)や、カメラ3の製造メーカ、カメラ型番、カメラ設定情報などの付随情報を画面に表示してもよい。さらに、提示部53はカメラ3の設置場所の天気情報や製造情報などの付随情報を、ネットワーク7に接続された外部装置などから取得して画面に表示してもよい。
【0034】
出力部55は画像処理部52から得た母板の絶縁物が塗布されている領域の面積などの母板の状態を示す情報を制御装置6の製造設備側制御部61に出力する。出力部55は母板の状態を示す情報の一例として、2値化処理後の画像出力と共に、母板の絶縁物が塗布されている領域の面積を情報として出力してもよい。出力部55は母板の状態を示す情報の一例として2値化処理後の画像出力と共に、母板への絶縁物の再塗布の要否を示す情報を出力してもよい。出力部55は母板の状態を示す情報の一例として設定した閾値より画素値が小さい画素の数の合計を情報として出力してもよい。
【0035】
出力部55は、例えば母板の状態を示す情報を管理装置側制御部54から指定される送信タイミングに従って制御装置6の製造設備側制御部61に出力してもよい。出力部55は例えば管理装置側制御部54からの制御信号に含まれる送信タイミングにより、母板の状態を示す情報の送信タイミングを指定される。
【0036】
また、提示部53により提示した母板の状態を示す情報、及び出力部55により出力した母板の状態を示す情報は、画像保持装置4に保持させる構成としてもよい。母板の状態を示す情報を画像保持装置4に保持させる構成では、例えばネットワーク7に接続された外部装置からのリクエストに応じて、母板の状態を示す情報を提供し、ユーザへの提示や各種設備への出力を行う構成を実現できる。送信タイミングは、例えばネットワーク7に接続された外部装置から入力し、管理装置側制御部54に設定されることによって反映されてもよい。
【0037】
画像保持装置4は、カメラ3で撮影した原画像を保持してもよいし、画像処理部52で画像処理された後の画像を保持してもよい。例えば、画像保持装置4はネットワーク7に接続された外部装置から通信を介して取得した画像を保持してもよい。画像保持装置4は原画像を格納したUSBメモリなどの外部記憶装置やDVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体から原画像を読み出して保持する構成であってもよい。
【0038】
また、提示部53が表示する画像や出力部55が出力する画像のデータは圧縮されていてもよい。例えば提示部53が表示する画像や出力部55が出力する画像のデータはJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式、PNG(Portable Network Graphics)方式、GIF(Graphics Interchange Format)方式などの非可逆な画像圧縮方式により圧縮されてもよい。また、圧縮データは、母板の絶縁物が塗布されている領域の面積などの情報と合わせて多重化されていてもよい。
【0039】
管理装置側制御部54は、管理装置2の各処理部の動作を統合的に制御する。例えば管理装置側制御部54は、制御信号によって取得部51が原画像を取得するタイミングを制御したり、提示部53がユーザに母板の状態を示す情報を提示するタイミングを制御したり、出力部55が製造設備5の制御装置6に母板の状態を示す情報を出力するタイミングを制御したりする。
【0040】
また、管理装置側制御部54による制御は、各処理部の設定変更なども含まれる。例えば管理装置側制御部54は、提示部53が画面に表示する付随情報を変更する制御を行うことができる。この場合、管理装置側制御部54は、ネットワーク7に接続された外部装置から制御命令を受け取り、受け取った制御命令に応じて各処理部の設定を変更することもできる。
【0041】
図3に示した制御装置6は製造設備側制御部61を備える。なお、本実施形態に係る管理システム1の説明に不要な機能構成については図示を適宜省略する。製造設備側制御部61は製造設備5を制御することにより、例えば図4に示す電解製錬工程、剥取工程、撮像工程、マスキング工程、及び絶縁物除去工程を実現する。
【0042】
なお、以下では電解採取により電着物を製造する管理システム1の一例として電解採取により電着物の一例である電気ニッケルを製造する管理システム1を例に説明する。図4は電気ニッケルの製造工程の一例を説明する図である。図5は電気ニッケルの製造工程で利用するカソードの一例を説明する図である。
【0043】
電気ニッケルの製造方法は、図4に示すように、マスキング工程、電解製錬工程、剥取工程、撮像工程、絶縁物除去工程を経る。図4(a)は電気ニッケルの製造工程で利用するカソード100を示している。図5に示すようにカソード100は、ステンレス製またはチタン製の四角形の母板101と、銅製のビーム102と、母板101とビーム102とを接続するリボン103とを含む構成である。リボン103と母板101およびビーム102とは溶接で固定されている。図4(b)はカソード100に対するブラスト(表面処理)工程を示している。
【0044】
(マスキング工程)
図4(c)はカソード100に対するマスキング工程を示している。マスキング工程では電解製錬に用いるカソード100に対して、母板101の表面を絶縁物でマスキングする。図5に示すように、カソード100は、スクリーン印刷等を用いて、母板101の表裏両面に絶縁物(絶縁性樹脂)104が塗布される。絶縁物104は、母板101の表面に複数の所定形状の電着部105を残すように塗布される。本実施形態に係る電気ニッケルの製造方法では電解製錬工程において電着部105にニッケルが電着することで、特殊形状の電着物の一例である電気ニッケルを得ることができる。
【0045】
図5に示すように、マスキング工程では多数の円形の電着部105が千鳥状に配置されたパターンで母板101を絶縁物104でマスキングする。千鳥状とは、互い違いの状態であって、ジグザグ状などを呼ばれることもある。円形の電着部105の直径φは、例えば13~15mmである。また、隣接する電着部105の最短距離(絶縁物104部分の距離)は例えば5~6mmである。
【0046】
電着部105の形状は円形でなくてもよく、楕円形、矩形など他の形状でもよい。電着部105の形状は目的とする電着物の一例である電気ニッケルの形状に合わせて種々の形状が採用される。以下では半球上または円盤状の形状を例に説明する。
【0047】
(電解製錬工程)
図4(d)は電解製錬工程を示している。電解製錬工程では、マスキング工程でマスキングされたカソード100を用いて電解製錬を行い、電気ニッケルを得る。具体的には電解液で満たされた電解槽140に、複数のカソード100と複数のアノード120とを交互に挿入し、通電することで電解を行う。
【0048】
例えばニッケルの電解採取の場合は、アノード120としてアノードボックスを備えた不溶性電極を用いる。また、ニッケルの電解採取の場合は、電解液として塩化ニッケル水溶液を用い、電解槽140に連続供給する。所定時間(例えば、数日~2週間)の通電により、特殊形状の電気ニッケルはカソード100の電着部105に電着する。
【0049】
電着部105に電着する電気ニッケルは絶縁物104の厚さまで成長した後、母板101に対して垂直な方向と平行な方向との両方向に成長する。すなわち、電気ニッケルは電着部105の範囲を越えて、絶縁物104が塗布された領域にまで成長する。電着部105の形状が円形の場合、電気ニッケルは中央部が平らであり、周縁部が盛り上がったボタン形に成長する。
【0050】
電解製錬工程は電気ニッケルが目標とする寸法に成長する条件で操業される。具体的には電気ニッケルが目標とする寸法に成長するように、電解液の組成、アノード-カソード間の電流値、通電時間などの操業条件が設定される。電気ニッケルの目標寸法は隣り合う電気ニッケル同士が接触しないように設定されればよい。
【0051】
なお、本実施形態に係る管理システム1はニッケルに限定されず、コバルトなど他の金属の電着物を得てもよい。また、本実施形態に係る管理システム1は電解採取に限定されず電解精製でもよい。
【0052】
(剥取工程)
図4(e)は剥取工程を示している。所定時間の通電の後、カソード100は電解槽140から抜き取られる。剥取工程では、ハンマリングなどの方法によりカソード100に振動を与えて、カソード100に電着した電気ニッケルを剥ぎ取る。カソード100から剥ぎ取られた電気ニッケルは研磨、洗浄、乾燥を経て製品となる。
【0053】
(撮像工程)
図4(f)は撮像工程を示している。電気ニッケルが剥ぎ取られたカソード100は所定位置にて、少なくとも絶縁物104部分が含まれるようにカメラ3等の撮像装置を用いて撮像される。本実施形態に係る管理システム1は、電気ニッケルの剥ぎ取りが済んだ後にカソード100の画像を撮影する例を示したが、ユーザが設定により決めたタイミングでカソード100の画像を撮影するようにしてもよい。画像はRGBなどのカラー画像であっても、グレースケールであってもよい。
【0054】
撮像されたカソード100の画像は、例えば2値化処理を行い、絶縁物104が塗布されている部分と、それ以外の部分とに区分される。撮像されたカソード100の画像は少なくとも絶縁物104が塗布されている部分が他の部分(絶縁物104が塗布されていない部分)と区分できればよく、ユーザが個々に閾値を設定してもよい。
【0055】
例えば電着部105は黒く映りやすいので、電着部105部分の画素値を別途ユーザが指定して、指定された画素値の部分と、それ以外の部分とを区分してもよい。また、絶縁物104が母板101からはがれた部分の画素値を別途ユーザが指定して、絶縁物104の部分と、電着部105の部分と、ユーザが指定した絶縁物104が母板101からはがれた部分と、の3区分にしてもよい。
【0056】
ここで、管理装置2は、取得した画像における絶縁物104の画素領域を合算した結果を算出し、母板101の状態を示す情報の一例としてユーザに提示する。例えば、図6に示すように、カソード100の母板101の状態を示す情報を表示してもよい。図6は母板の状態を示す情報の一例の説明図である。
【0057】
図6では電解製錬工程の前のカソード100に塗布されている絶縁物104の領域を100%とした場合の比率を、母板101の画像と共に表示している。なお、電解製錬工程の前のカソード100に塗布されている絶縁物104の領域を100%とした場合の比率に変えて、又は比率と共に、カソード100に塗布されている絶縁物104の面積を表示してもよい。さらに、母板101の状態を示す情報は、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)の判定結果、絶縁物104の再塗布を行うことなくカソード100を繰り返し使用した回数などの情報を含んでいてもよい。
【0058】
母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否かの判定には、予め再生が必要と判定されたカソード100の画像を教師データとして、機械学習により生成された学習済モデルを用いてもよい。学習済モデルは、例えば重回帰分析、ニューラルネットワーク、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、サポートベクターマシーンなど、予測モデルが構築できるものであればよい。
【0059】
例えば教師あり学習を用いるパターン認識モデルの一つのサポートベクターマシーンを用いる場合は撮像した母板101の画像情報を特徴量として用いる。サポートベクターマシーンは、学習データ(サポートベクトル)から絶縁物104の再塗布が必要なクラスと電解製錬工程で再利用できるクラスとの決定境界との距離が最大となるよう決定して構築する。このように、パターン認識モデルを用いたパターン認識を行い、画像に対応するカソード100が絶縁物104の再塗布が必要な場合(結果:1)と再利用可能な場合(結果:0)とに分類してもよい。
【0060】
撮像工程において、良好(絶縁物104の再塗布が不要)と示されたカソード100は再び電解槽140に挿入され、電解製錬に供される。一方、母板101に塗布されている絶縁物104が剥離しており、不良(絶縁物104の再塗布が必要)と示されたカソード100は絶縁物104を再塗布する(塗布し直す)ため、図4(g)の絶縁物除去工程に送られる。なお、絶縁物104の再塗布(再生)が必要であることを単にユーザに示すことによって、ユーザが対象のカソード100を製造工程から抜きとり、ユーザの目視によるチェックに回すような運用も可能である。
【0061】
絶縁物104の再塗布(再生)が必要である情報のユーザへの提示は、再生を必要とする言語情報であってもよいし、ランプや警報などのような情報提示であってもよい。再生を必要とする言語情報の提示、及びランプや警報などによる情報の提示は、母板101の状態を示す情報の提示の一例である。
【0062】
(絶縁物除去工程)
図4(g)はカソード100に対する絶縁物除去工程を示している。絶縁物除去工程では電解製錬工程で繰り返し使用された後のカソード100に対して、母板101から絶縁物104を除去する処理を行なう。絶縁物14の除去は、例えばブラスト(樹脂剥離)処理により行われる。絶縁物104が除去されたカソード100は図4(c)に示したマスキング工程により再びマスキングされ、電解製錬に供される。
【0063】
図7は本実施形態に係る電着物の製造工程の一例を示したフローチャートである。制御装置6の製造設備側制御部61はステップS10において図4(c)に示したマスキング工程によりカソード100の母板101に電着部105を残すように絶縁物104を塗布する。
【0064】
ステップS12において製造設備側制御部61は図4(d)に示した電解製錬工程により電気ニッケルなどの電着物をカソード100に電着させ、電解槽140から抜き取ったあと、図4(e)に示した剥取工程によりカソード100から電着物を剥ぎ取る。
【0065】
ステップS14において製造設備側制御部61は図4(f)に示した撮像工程を実行するため、製造設備5を制御して、カメラ3等の撮像装置により撮影可能な所定位置に剥取工程後のカソード100を移動させる。管理装置2の取得部51は、所定位置にてカメラ3等の撮像装置により撮像された剥取工程後のカソード100の母板101の画像を取得する。なお、カメラ3等の撮像装置による撮影は、製造設備側制御部61の制御により行うようにしてもよいし、カメラ3等の撮像装置により撮影可能な所定位置へのカソード100の移動が終了したタイミングでUIを表示して、ユーザからシャッター操作を受け付けるようにしてもよい。
【0066】
ステップS16において管理装置2の画像処理部52は画像処理により絶縁物104が塗布されている部分(領域)と、他の部分(絶縁物104が塗布されていない部分)とを識別する。画像処理部52は絶縁物104が塗布されている部分(領域)の識別結果に基づいて、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)を判定する。
【0067】
母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が不要と判定されたカソード100はステップS12において再び電解槽140に挿入され、電解製錬に供される。母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要と判定されたカソード100はステップS18において図4(g)に示した絶縁物除去工程で母板101から絶縁物104が除去されたあと、ステップS10においてマスキング工程が行われる。そして、絶縁物104が再塗布されたカソード100はステップS12において再び電解槽140に挿入され、電解製錬に供される。
【0068】
画像処理部52は、ステップS16の処理を、例えば図8に示すフローチャートの手順で行う。図8はステップS16の処理の一例を示すフローチャートである。なお、図8のフローチャートは画素値が閾値より大きい画素を、絶縁物104が塗布されている領域と識別する例である。
【0069】
ステップS20において、画像処理部52は母板101の画像に含まれる画素ごとに画素値を読み出す。ステップS22において、画像処理部52は画素値が閾値より大きい画素の数を算出する。画素値が閾値より大きい画素は絶縁物104が塗布されている領域に含まれる画素と識別している。
【0070】
ステップS24において、画像処理部52は画素値が閾値より大きい画素の数から母板101に塗布されている絶縁物104の領域を識別し、絶縁物104の領域の面積、母板101の全体の面積に対する絶縁物104の面積の比率、電解製錬工程の前の母板101に塗布されていた絶縁物104の面積を100%とした場合の現在の母板101に塗布されている絶縁物104の面積の比率など、算出する。
【0071】
また、画像処理部52は、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)の判定を、以下のように行うことができる。まず、ユーザが目視により絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)の判定を行った母板101の画像と、その判定結果との複数の組み合わせを取得する。
【0072】
ユーザが目視により絶縁物104の再塗布が必要(再生が必要)と判定を行った母板101の画像に対してステップS20~S24の処理を行うことで、再塗布が必要(再生が必要)と判定すべき母板101の絶縁物104の領域の面積、母板101の全体の面積に対する絶縁物104の面積の比率、電解製錬工程の前の母板101に塗布されていた絶縁物104の面積を100%とした場合の現在の母板101に塗布されている絶縁物104の面積の比率など、を再塗布が必要(再生が必要)と判定すべき母板101の基準情報として算出できる。
【0073】
また、ユーザが目視により絶縁物104の再塗布が不要(再生が不要)と判定を行った母板101の画像に対してステップS20~S24に示した処理を行うことで、再塗布が不要(再生が不要)と判定すべき母板101の絶縁物104の領域の面積、母板101の全体の面積に対する絶縁物104の面積の比率、電解製錬工程の前の母板101に塗布されていた絶縁物104の面積を100%とした場合の現在の母板101に塗布されている絶縁物104の面積の比率など、を再塗布が不要(再生が不要)と判定すべき母板101の基準情報として算出できる。
【0074】
算出した再塗布が必要(再生が必要)と判定すべき母板101の基準情報及び再塗布が不要(再生が不要)と判定すべき母板101の基準情報を利用することで、画像処理部52は、撮像工程において画像を取得したカソード100に対して、絶縁物104の再塗布が必要(再生が必要)か否かを、母板101の状態を示す情報の一例として判定できる。
【0075】
そして、ステップS26において、提示部53は画像処理部52から得た母板101の状態を示す情報をユーザに提示する。また、出力部55は画像処理部52から得た母板101の状態を示す情報を制御装置6の製造設備側制御部61に出力する。
【0076】
図7のステップS16の処理は、例えば図9に示すように、母板101の画像に少なくとも一つの領域を設定し、設定した領域ごとに行ってもよい。図9はステップS16の処理の一例を示すフローチャートである。なお、図9のフローチャートは画素値が閾値より大きい画素を、絶縁物104が塗布されている領域と識別する例である。
【0077】
ステップS30において、ユーザは管理装置2を操作して、母板101の画像に少なくとも一つの領域を設定する。図10及び図11は母板の画像に少なくとも一つの領域を設定するUI(ユーザインタフェース)画面の一例のイメージ図である。
【0078】
図10はユーザから分割数の設定を受け付け、分割数の設定に基づいて母板101の画像を複数の領域に分割する例を示している。図10(a)はユーザから母板101の画像の分割数の設定を受け付ける画面例である。図10(a)の画面はユーザから縦及び横の分割数の設定を受け付ける。図10(a)は縦及び横の分割数が同一である例を示しているが、縦及び横の分割数が異なっていてもよい。図10(a)の縦及び横の分割数の設定を受け付けることにより、母板101の画像は図10(b)のように複数の領域に分割される。
【0079】
図11は設定する領域の大きさを手動で変更できる枠を設け、その枠を用いて母板101の画像に少なくとも一つの領域を設定する例を示している。図11(a)は設定する領域の大きさを手動で変更できる枠が表示された画面例である。図11(b)はユーザがドラックにより枠の大きさを変更した画面例である。なお、枠の大きさは、二つの電着部105の間を見ることが大切であることから、最小単位を二つの電着部105が入る領域の大きさに仮設定するようにしてもよい。図11(c)は設定した大きさの枠で母板101に複数の領域を設定する画面例である。
【0080】
ステップS32において、画像処理部52はステップS30で設定された領域ごとに母板101の画像に含まれる画素ごとに画素値を読み出す。ステップS34において、画像処理部52はステップS30で設定された領域ごとに画素値が閾値より大きい画素の数を算出する。画素値が閾値より大きい画素は絶縁物104が塗布されている領域に含まれる画素と識別している。
【0081】
ステップS36において、画像処理部52はステップS30で設定された領域ごとに画素値が閾値より大きい画素の数から母板101に塗布されている絶縁物104の領域を識別し、ステップS30で設定された領域ごとに、絶縁物104の領域の面積、母板101の全体の面積に対する絶縁物104の面積の比率、電解製錬工程の前の母板101に塗布されていた絶縁物104の面積を100%とした場合の現在の母板101に塗布されている絶縁物104の面積の比率など、算出する。
【0082】
また、画像処理部52は、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)の判定を、以下のように行うことができる。再塗布が必要(再生が必要)と判定すべき母板101の基準情報、及び再塗布が不要(再生が不要)と判定すべき母板101の基準情報は、図8で説明したように算出すればよい。
【0083】
算出した再塗布が必要(再生が必要)と判定すべき母板101の基準情報及び再塗布が不要(再生が不要)と判定すべき母板101の基準情報を利用することで、画像処理部52は、撮像工程において画像を取得したカソード100に対して、絶縁物104の再塗布が必要(再生が必要)か否かを、母板101の状態を示す情報の一例として判定できる。
【0084】
そして、ステップS38において、提示部53は画像処理部52から得た母板101の状態を示す情報を、例えば図12に示すようにユーザに提示する。また、出力部55は画像処理部52から得た母板101の状態を示す情報を制御装置6の製造設備側制御部61に出力する。図12は、母板の状態を示す情報を提示するUI画面の一例のイメージ図である。
【0085】
図12(a)は母板101の画像を取得後、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否か(再生が必要か否か)の判定中の画面イメージである。例えば母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要と判定した場合、提示部53は図12(b)に示したように、母板101の画像と、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要であることを示す情報「NG」とを表示する。
【0086】
例えば母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要と判定した場合、提示部53は図12(c)に示すように、母板101の元画像(又は2値化画像)と、設定された少なくとも一つの領域を示す区切り線や枠と共に、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要であることを示す情報「NG」を表示してもよい。
【0087】
また、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要であるとの判定の原因となった領域が分かるように母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要であることを示す情報「NG」を表示してもよい。
【0088】
図9のフローチャートでは、複数の領域を設定し、設定した領域ごとに絶縁物104の再塗布が必要であるか否かを判定することで、複数の領域ごとに判定結果を得ることができるため、精度が良くなる。なお、上記では、2値化処理を行い、絶縁物104が塗布されている部分と、それ以外の部分とに区分することで、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否かの判定を行っているが、ニューラルネットワークなどの機械学習手法を用いて、母板101の画像から直接、判定してもよい。また、機械学習手法はニューラルネットワーク以外のロジスティック回帰やランダムフォレストなどを用いてもよい。また、2値化処理を行い、絶縁物104が塗布されている部分と、それ以外の部分とに区分することで、母板101に塗布されている絶縁物104の再塗布が必要か否かの判定を行う処理の一部に機械学習手法を用いてもよい。予測モデルは、予め再生が必要と判定されたカソード100の画像を正解ラベルとして、機械学習により生成することができる。また、予測モデルは予め再生が必要と判定されたカソード100の画像の一部の領域を正解ラベルとして、機械学習により生成することもできる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 管理システム
2 管理装置
3 カメラ
4 画像保持装置
5 製造設備
6 制御装置
7 ネットワーク
51 取得部
52 画像処理部
53 提示部
54 管理装置側制御部
55 出力部
61 製造設備側制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12