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特開2022-8092重合性化合物、電子部品用組成物、電子部品用材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008092
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】重合性化合物、電子部品用組成物、電子部品用材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 303/12 20060101AFI20220105BHJP
   C07D 303/28 20060101ALI20220105BHJP
   C08G 59/02 20060101ALI20220105BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C07D303/12
C07D303/28 CSP
C08G59/02
C08G59/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083058
(22)【出願日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020089443
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020172543
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃史
【テーマコード(参考)】
4C048
4J036
【Fターム(参考)】
4C048AA01
4C048BB08
4C048BB11
4C048CC02
4C048UU10
4C048XX04
4J036AA00
4J036AJ01
4J036AJ14
4J036DA01
4J036DA02
4J036DB06
4J036DB15
4J036DC10
4J036DC32
4J036DC40
4J036DD02
4J036FA01
4J036FA03
4J036FA04
4J036FB07
4J036FB08
4J036JA01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、液晶性があり融点が低い、液晶性エポキシ化合物を提供する事である。また該エポキシ化合物を用いた、熱伝導率の高いエポキシ樹脂材料を提供する事である。
【解決手段】2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する液晶性エポキシ化合物において、該オキシラニルは該芳香環に結合し、少なくとも1つのオキシラニルが炭素を介して芳香環と結合した化合物を、熱伝導率の高いエポキシ樹脂材料として提供するものである。
【選択図】なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する液晶性エポキシ化合物において、該オキシラニルを有する基は該芳香環に結合し、少なくとも1つのオキシラニルが、炭素を介して芳香環と結合した、化合物。
【請求項2】
液晶性エポキシ化合物が棒状の分子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)で表される請求項2に記載の化合物。
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、少なくとも1つのオキシラニルが、炭素を介して芳香環と結合し、Xは独立して、単結合、-CHCH-、-CHO-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Rは独立して、水素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【請求項4】
式(1)で表される液晶性エポキシ化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物および硬化剤を含む組成物。
【請求項6】
硬化促進剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ脂肪族アミンである、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
硬化剤が、式(2-1)または(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である、請求項7に記載の組成物。
E-Z-(L-Z)n-E (2-1)
-Z-E (2-2)
式(2-1)および(2-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、又はカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【請求項9】
硬化剤が、分子骨格に-OHを2つ以上持つフェノール類、またはそのフェノール類中の-OHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなる化合物である、請求項5または6に記載の組成物。
短鎖のエステルとは、以下の(3-E)で表される基が、OH基のHに置換した構造である。
式中R13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基を表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基は、分岐鎖であっても良い。*はOとの結合位置を表す。
【請求項10】
硬化剤が、式(3-1)から(3-7)で表される少なくとも1つの化合物、またはその化合物中の-OHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなる化合物である、請求項9に記載の組成物。




式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルまたは炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、または1,3-シクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
31は独立して単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
式(3-7)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、R12は独立して水素またはメチルである。
短鎖のエステルとは、以下の(3-E)で表される基が、OH基のHに置換した構造である。
式中R13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基を表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基は、分岐鎖であっても良い。*はOとの結合位置を表す。
また、これら式(3-3)から式(3-7)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【請求項11】
硬化剤がシアネートエステルを含む化合物である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項12】
硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項13】
無機フィラーをさらに含む、請求項5から12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
無機フィラーが酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または窒化アルミニウムである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項5から14のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた電子部品用材料。
【請求項16】
式(1’)で表される化合物。
式(1’)中、Rep’は独立して、オキシラニルを有する炭素数4から12の基であり、Rは独立して水素またはメチルである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に生じた熱を効率よく伝導する放熱部材用組成物、およびこれに用いられる液晶性を有する重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効率よく外部に放出させる能力が重要になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法としては、発熱部位に高熱伝導性材料(放熱部材)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。熱伝導性が高い材料としては、金属や金属酸化物などの無機材料が挙げられる。しかし、このような無機材料は、加工性や絶縁性などに問題があり、単独で半導体パッケージの充填材に使用することは非常に難しい。そのため、これら無機材料と樹脂を複合化し、高熱伝導化した放熱部材の開発が行われている。
【0004】
複合材の高熱伝導化は、一般的に、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂に、金属充填材などの無機充填材を多量に添加することにより行われてきた。しかし、無機充填材の熱伝導率は物質固有の値であり上限が決まっている。そのため、樹脂の熱伝導率を向上させることで、複合材のこれを行う方法が広く試みられている。これを実際に行う手段としては、例えば、液晶性を有するエポキシ化合物を用いる方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、グリシジルオキシを2つ有するターフェニル化合物が開示されている。また特許文献2には、グリシジルオキシを3つ有するターフェニル化合物が開示されている。しかしながら該特許文献に開示されている化合物は、液晶温度が無く、融点も117℃以上の高い温度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/61473号
【特許文献2】国際公開第2016/6649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、液晶性があり融点が低い、液晶性エポキシ化合物を提供する事である。また該エポキシ化合物を用いた、熱伝導率の高いエポキシ樹脂材料を提供する事である。さらに本発明のもう一つの課題は、溶媒への溶解性が高い、液晶性エポキシ化合物を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、オキシラニルを2個以上および2から5個の芳香環を有する液晶性エポキシ化合物において、該オキシラニルを有する基は該芳香環に結合し、少なくとも1つのオキシラニルが、芳香環とメチレンで結合した、化合物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
上記化合物を原料とした組成物は、それ自体または該組成物を硬化する際に、液晶性を発現し易い。そのため、硬化物は高い熱伝導性を持つ。また該化合物は結晶性が低く、これを原料とした組成物は、ペースト化しやすい。そこで、パワー半導体用などの放熱材料として、好適に使用する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本発明は、実施の形態に制限されるものではない。
【0011】
本発明は下記の項などである。
【0012】
[1] 2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する液晶性エポキシ化合物において、該オキシラニルを有する基は該芳香環に結合し、少なくとも1つのオキシラニルが、炭素を介して芳香環と結合した、化合物。
【0013】
[2] 液晶性エポキシ化合物が棒状の分子である、項[1]に記載の化合物。
【0014】
[3] 式(1)で表される項[2]に記載の化合物。
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、少なくとも1つのオキシラニルが、炭素を介して芳香環と結合し、Xは独立して、単結合、-CHCH-、-CHO-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Rは独立して、水素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【0015】
[4] 式(1)で表される液晶性エポキシ化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[3]に記載の化合物。
【0016】
[5] 項[1]から[4]のいずれか1項に記載の化合物および硬化剤を含む組成物。
【0017】
[6] 硬化促進剤をさらに含む、項[5]に記載の組成物。
【0018】
[7] 硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ脂肪族アミンである、項[5]または[6]に記載の組成物。
【0019】
[8] 硬化剤が、式(2-1)又は(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である、項[7]に記載の組成物。
E-Z-(L-Z)n-E (2-1)
-Z-E (2-2)
式(2-1)および(2-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノ、または炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【0020】
[9] 硬化剤が、分子骨格に-OHを2つ以上持つフェノール類、またはそのフェノール類中の-OHの少なくとも1つが短鎖のエステルとなる化合物である、項[5]または[6]に記載の組成物。
(短鎖のエステルとは、以下の(3-E)で表される基が、OH基のHに置換した構造である。
式中R13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基を表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基は、分岐鎖であっても良い。)
【0021】
[10] 硬化剤が、式(3-1)から(3-7)で表される少なくとも1つの化合物、またはその短鎖のエステルである、項[9]に記載の組成物。




式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルまたは炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;

式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
31は独立して単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
式(3-7)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、R12は水素またはメチルである。
短鎖のエステルとは、以下の(3-E)で表される基が、OH基のHに置換した構造である。
式中R13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基を表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基は、分岐鎖であっても良い。
また、これら式(3-3)から式(3-7)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0022】
[11] 硬化剤がシアネートエステルを含む化合物である、項[5]または[6]に記載の組成物。
【0023】
[12] 硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、項[5]または[6]に記載の組成物。
【0024】
[13] 無機フィラーをさらに含む、項[5]から[12]のいずれか1項に記載の組成物。
【0025】
[14] 無機フィラーが酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である、項[13]に記載の組成物。
【0026】
[15] 項[5]から[14]のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた電子部品用材料。
【0027】
[16] 式(1’)で表される化合物。
式(1’)中、Rep’は独立して、オキシラニルを有する炭素数4から12の基であり、Rは独立して水素またはメチルである。
【0028】
「環の少なくとも1つの水素は、又は炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく」の句は、例えば1,4-フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがフッ素やメチル等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味する。
「化合物(1)」は、式(1)で表される化合物を意味し、また、式(1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。
【0029】
[液晶性エポキシ化合物]
上記したように、2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する液晶性エポキシ化合物において、該オキシラニルを有する基は該芳香環に結合し、少なくとも1つのオキシラニルが、炭素を介して芳香環と結合した化合物を用いる事により、本願の課題を解決する事ができる。このとき上記炭素を介してとは、芳香環に直結する位置の原子が置換されていてもよいメチレンや、オキシラニルを構成する炭素等である事を示す。
【0030】
より結晶性を抑えペースト化しやすい事から、該液晶性エポキシ化合物は、棒状である事が好ましい。このような棒状の液晶性化合物に関しては、液晶温度範囲を拡大するために、液晶のコアが芳香環を3から5個有する事が、好ましい。
【0031】
上記液晶のコアとは、芳香環や脂環が、比較的コンフォメーションが定まった結合基で連結された構造を示す。このとき、該結合基の例としては単結合、エチレン、オキシメチレン、二重結合、三重結合、またはエステル等が挙げられる。
【0032】
上記の棒状の液晶性化合物とは、液晶のコアとして、芳香環や脂環が直線状に連なり、そのコアの両端にアルキル等の柔軟性のある置換基が結合した構造である。このとき上記直線は、厳密な直線である必要はなく、45度程度の角度まで屈曲してもよい。
【0033】
このような棒状の液晶性化合物においては、200℃以上の温度での分解を防ぐために、その分子構造中にエステルを含有しない事が好ましい。
【0034】
上記の棒状の液晶化合物としては、液晶性を示す温度範囲が広く、製造が容易であり、これを硬化物とした際の耐熱性が高い事から、式(1)で表される化合物を選択する事が、より好ましい。
【0035】
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、Xは、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-CHO-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、Rは独立して、水素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【0036】
式(1)の化合物において、Repは、それぞれ独立して、オキシラニルを含む炭素数2から12の基である。このとき、Repのオキシラニル以外の構造は特に制限が無いが、硬化物としたときに高い耐熱性を与えるためには、炭素数2から10のオキシラニルを含む基である事が好ましく、炭素数2から8のオキシラニルを含む基である事が特に好ましい。またこれらのオキシラニルを含む基の-CH-は-O-で置換されてもよい。芳香環に-O-が直接結合する構造の化合物は、合成が特に容易である。しかしながら、化合物の結晶性を抑え液晶性を向上するためには、少なくとも一つのRepは、炭素を介して芳香環に結合する必要がある。一方で両方のRepが炭素を介して芳香環に結合すると、液晶性が低下する傾向がある。そのため、少なくとも一つのRepは-O-を介して芳香環に結合する事が好ましい。
【0037】
式(1)の化合物において、連結基Xは、それぞれ独立して、単結合、-CHCH-、-CHO-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。これらの連結基において、結合の方向は任意である。このとき、硬化物の耐熱性を向上させるためには、Xとして単結合、-CHCH-、-CHO-、または-C≡C-を選択する事が好ましく、化合物に広い液晶温度範囲を付与するため、単結合、または-C≡C-を選択する事が特に好ましい。また合成上の容易さから、単結合を選択する事が最も好ましい。
【0038】
式(1)の化合物において、Rはそれぞれ独立して、水素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepである。またこれらのアルキルおよびアルコキシの1つの-CH-は-CO-で置換されてもよい。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大する事が出来る事から、これらのRとして、アルキルまたはアルコキシを選択する事が好ましく、アルキルを選択する事が特に好ましい。またRepやXが同一の基でない場合、同様な理由から、水素を選択する事も好ましい。化合物の液晶温度範囲を拡大するためには、Rとしてメチルを選択する事が最も好ましい。さらに硬化物の耐熱性を向上させるためには、RとしてRepを選択する事が好ましい。
【0039】
式(1)の化合物において、nは0から2である。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大する事が出来る事から、nは1または2が好ましい。
【0040】
式(1)で表される液晶性エポキシ化合物の好適な例としては、式(1-1)から式(1-48)の化合物が挙げられる。
【0041】







【0042】
式(1-1)から式(1-48)中、Rep1およびRep2は、オキシラニル以外はそれぞれ独立して、全て炭素-炭素単結合および炭素に結合する水素からなる、炭素数2から12の基を表す。
【0043】
上記式(1-1)から式(1-48)で表される化合物において、本発明の課題を解決するためには、式(1-11)から式(1-18)および式(1-20)から式(1-23)で表される化合物の1つを選択する事が、最も好ましい。これらの化合物は、液晶温度範囲が広く、またそれが硬化に適した温度領域にある。
【0044】
本発明の式(1’)で表される化合物は、溶媒への溶解性が高い。従ってこれらの化合物を含む組成物を印刷に使用した場合、結晶の発生を抑制する事が出来るため、印刷性に優れる。
【0045】
式(1’)中、Rep’は独立して、オキシラニルを有する炭素数4から12の基であり、Rは独立して水素またはメチルである。
【0046】
式(1’)において、Rep’は独立して、オキシラニルを有する炭素数4から12の基である。オキシラニルは2つのCと1つのOから成るので、Rep’はオキシラニル以外に2から10の炭化水素を持つ。このとき、溶媒への溶解性を高めるためには、オキシラニル以外に3から10の炭化水素を持つ事が好ましい。また同様な目的には、Rep’は分岐鎖を持つ事が好ましい。一方で炭化水素基および分岐鎖が多くなると、液晶性が低下し、硬化物としたときの耐熱性が低下する。これを防ぐためには、オキシラニル以外に3から5の炭化水素を持つ事が好ましい。
【0047】
2つのRep’がどちらも-O-を介して芳香環と結合した化合物を含め、式(1’)に記載した化合物は、溶媒への溶解性が高い。しかしながら、少なくとも1つのRep’が炭素を介して芳香環に結合した化合物の方が、より溶解性や液晶性が高く、好適である。
【0048】
式(1’)において、Rは独立して、水素またはメチルである。このとき、液晶性を向上させるためには、Rとして、CHを選択しないまたは1つ選択する事が好ましく、溶媒への溶解性を高めるためには1つ選択する事が好ましい。
【0049】
式(1’)で表される化合物の好適な例としては、上記式(1-1)から式(1-48)で表される化合物において、Rep1およびRep2がオキシラニルを有する炭素数4から12の基である化合物が挙げられる。これらの化合物において、さらに本発明の課題を解決するためには、式(1-11)から式(1-18)および式(1-20)から式(1-23)で表される化合物の1つを選択する事が、最も好ましい。これらの化合物は、液晶温度範囲が広く、またそれが硬化に適した温度領域にある。
【0050】
式(1’)で表される化合物の好適な別の例としては、以下の式(1’-1)から式(1‘-24)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
これらの化合物は、溶媒への溶解性が高く、安価に製造出来る。これらの化合物においても、液晶温度範囲が広い事から、式(1’-1)から式(1’-16)で表される化合物が、より好適である。
【0055】
本発明の組成物は、本発明重合性化合物、硬化剤、および必要に応じて添加される硬化促進剤を含む事を特徴とする。このような本発明の組成物は液晶性を呈し易い。さらにこの状態を保ったまま硬化させる事により、硬化物中の分子骨格同士の絡みが緩和される。結果として、熱を効率よく伝導させる材料を与える。
【0056】
本発明の組成物は、上記式(1)で表される化合物を含む事を特徴とする。式(1)の化合物は1種類または複数を使用してもよい。また組成物の液晶性を喪失させない限りにおいては、その他の公知のエポキシ化合物を併用する事が出来る。このような化合物としては、式(o-1)から式(o-6)で表す液晶性エポキシ化合物を好ましく用いる事が出来る。
【0057】
【0058】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-7)から式(o-21)で表される非液晶性エポキシ化合物も好ましく用いられる。
【0059】
【0060】
式(o-12)において、Z10は単結合、-CH-、-O-、-S-、-CH(CH)-、-C(CH-、-SO-、または-C(CF-を表す。
【0061】
【0062】
式(o-13)および式(o-14)において、Z11はCHまたはCCHを表す。
【0063】
【0064】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-23)から式(o-27)で表される構造の樹脂も好ましく用いられる。
【0065】
【0066】
式(o-23)中、Z12およびZ13は独立して、単結合、-CH-、-O-、-S-、-CH(CH)-、-C(CH-、-SO-、または-C(CF-であり、n21は1以上5000以下の整数である。
式(o-24)および式(o-25)中、n21は1以上5000以下の整数であり、n22およびn23は独立して、0または1であり、n21が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
またこれら式(o-24)から式(o-25)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0067】

【0068】
式(o-26)および式(o-27)中、Z14は独立して、単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-であり、n21は1以上5000以下の整数を表す。
またこれら式(o-26)および式(o-27)中の芳香環上の水素はメチルで置換されてもよい。
【0069】
式(1)の化合物に対する、このような公知のエポキシ化合物の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現する限りにおいて、特に制限は無い。すなわちエポキシ化合物の全重量に対し、0.1重量%から99.9重量%の間で使用する事が出来る。このとき本発明の効果を発現させるためには、0.1重量%から90重量%の間で使用する事が好ましく、0.1重量%から80重量%の間で使用する事がさらに好ましい。
【0070】
[硬化剤]
本発明の組成物に併用できる、硬化剤としては、全ての公知のアミン、フェノール、シアネートエステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールなどの化合物を使用する事が出来る。
【0071】
アミン系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(2-1)または(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である事が好ましい。
E-Z-(L-Z)n-E (2-1)
-Z-E (2-2)
式(2-1)および(2-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノ、または炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【0072】
このような式(2-1)で表される化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミンなどの炭素数2~12の脂肪族多価アミン、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、m-トリジン、o-トリジンなどの芳香族多価アミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの、脂環式多価アミンが挙げられる。
【0073】
これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れる事から、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好適である。
【0074】
式(2-2)で表される化合物としては、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミンなどの炭素数2~12の脂肪族アミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリン、1-ナフチルアミン、1-アミノ-2-メチルナフタレンなどの芳香族アミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミンが挙げられる。これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れる事から、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリンが特に好適である。
【0075】
フェノール系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(3-1)から(3-7)で表される少なくとも1つのフェノール化合物、またはその短鎖のエステルである事が好ましい。
【0076】



【0077】
式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
【0078】
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
【0079】
式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
31は独立して単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
式(3-7)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、R12は水素またはメチルである。
また、これら式(3-3)から式(3-7)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0080】
上記式(3-1)から(3-7)で表されるフェノール化合物の短鎖のエステルとは、以下の(3-E)で表される基が、OH基のHに置換した構造である。
【0081】
式中R13は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基を表し、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基は、分岐鎖であっても良い。これらR13のうち、メチルを選択すると、化合物の結晶性が増大するため、組成物の液晶性を損なう場合がある。そのような場合には、より長鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。一方長鎖アルキルの場合、硬化物とした際の耐熱性が低下する場合がある。そのような場合には、より短鎖のアルキルを有する(3-E)を選択する事が好ましい。
【0082】
好ましいカルボキシ含有硬化剤としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0083】
本発明組成物に使用出来る硬化剤としては、上記したアミン、フェノール、シアネートエステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールなどの公知化合物に限らない。例えば、半硬化シートなどを作成するため、より高温で組成物を硬化する目的には、ジシアンジアミドなどを添加する事も好ましい。
【0084】
本発明組成物において、式(1)の化合物と硬化剤の比は、特に制限は無い。このとき耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、式(1)の化合物と硬化剤との反応基を当量とする事が好ましい。例えば、エポキシ:アミンの場合は2:1、エポキシ:フェノールの場合は、1:1である。
【0085】
上記硬化剤は一種類を用いても、複数の種類を用いても良い。
【0086】
[硬化促進剤]
本発明組成物において、特にフェノール系の硬化剤を使用する場合、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、硬化促進剤を組成物に添加する事が好ましい。このような硬化促進剤として、2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルフォスフィンなどのリン系硬化促進剤、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、などのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。このような硬化促進剤のうち、硬化温度が200℃以下であり硬化性が高い事から、イミダゾール系の硬化促進剤を使用する事が好ましい。
【0087】
本発明の組成物における硬化促進剤の濃度は、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、本発明重合性化合物の重量に対し、0.1重量%以上である事が好ましく、0.5重量%以上である事がさらに好ましい。また硬化促進剤の昇華などによる信頼性などの悪化を避けるために、本発明重合性化合物の重量に対し、5重量%以下である事が好ましく、3重量%以下である事がさらに好ましい。
【0088】
[無機フィラー]
本発明の電子部品用組成物は、無機フィラーを含有してもよい。
電子部品用組成物が含有する無機フィラーとしては、高熱伝導性の充填材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材や金属充填材であってもよい。好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムである。窒化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率が低く、絶縁性が高いため好ましい。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や窒化アルミニウムが好ましい。
【0089】
無機フィラーの形状としては、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状、四脚状などが挙げられる。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。例えば、電子部品用組成物から形成された硬化物(電子部品用材料)が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。
【0090】
無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~200μmであることが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げられる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論及びミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
【0091】
無機フィラーの添加量は、例えば、放熱部材に用いる場合は、20~95重量%であることが好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると放熱部材が脆くならず好ましい。
【0092】
無機フィラーは、未修飾のものをそのまま使用してもよい。又は、その表面をカップリング剤で処理したものを用いてもよい。例えば、窒化ホウ素(h-BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、電子部品用組成物中の重合性化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。そのため、カップリング剤は、オキシラニル、オキセタニル、又は硬化剤の有する基と反応するものが好ましい。例えば、アミン系、又はオキシラニル、オキセタニルを有するものが好ましい。具体的には、JNC(株)製では、サイラエースS310,S320,S330,S360,S510,S530などが挙げられる。
【0093】
無機フィラーは、カップリング剤で処理した後さらにエポキシなどの重合性の基を持つ化合物(重合性化合物)で表面修飾したものを用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h-BN)を重合性化合物で表面修飾する。重合性化合物で表面修飾された窒化ホウ素が、電子部品用組成物中の重合性化合物や硬化剤と結合を形成できると、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。例えば、重合性化合物は、式(1)で示す本発明重合性化合物であってもよく、それ以外の重合性化合物であってもよい。
【0094】
[その他の構成要素]
本発明の組成物において、含有する事の出来るその他の構成要素としては、特に限定されない。例えばエポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物、非重合性化合物、重合開始剤、溶媒などが挙げられる。
【0095】
エポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物としては、本発明の電子材料の特性を低下させない限りにおいて、特に制限は無く、公知の重合性化合物を使用する事が出来る。その中でも、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物が好ましく使用出来、液晶性を持つようなこれら化合物が、より好適に使用する事が出来る。
重合開始剤としては、例えば熱重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および光アニオン重合開始剤などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としてはスルホニウム塩系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンアジド、有機酸ヒドラジド、トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。また光カチオン開始剤としては、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などが知られている。さらに光アニオン開始剤としては、オキシム系、カーバメート系、グアニジウム-カルボン酸塩系、ニフェジピン系などが知られている。
【0096】
本発明組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0097】
本発明の組成物は溶媒を含有してもよい。好ましい溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-エチルヘキサノール、1-プロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、2-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。溶媒は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
本発明の組成物は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤としては、公知のものを制限なく使用できる。例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。
【0099】
さらに、電子部品用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために、例えば、ガラス、カーボンファイバーなどの無機繊維や、それらのクロス、又は、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの合成繊維、超分子などを添加してもよい。
【0100】
材料の熱伝導率は、液晶の配向を制御する事で、より向上する事が知られている。このような目的で、液晶の配向を制御する、いわゆる配向制御剤を、本発明の組成物に添加する事も好ましい。液晶性を持つ組成物を基板平面に対し垂直に配向させるような、垂直配向剤としての一例としては、例えば炭素数10以上50以下の炭化水素構造を持ち、構造の片末端に水酸基、アミノ、またはカルボキシルを持つ化合物が挙げられる。
【0101】
[電子部品用材料]
本発明の電子部品用材料は、上記第2の実施の形態に係る電子部品用組成物を硬化させた硬化物を用途に応じて成形したものである。例えば、電子部品用材料を放熱部材として適用できる。
【0102】
電子部品用材料は、本発明の組成物を重合(硬化)させることによって得られる重合体である。この重合体は、高い熱伝導性を有するとともに、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
【0103】
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、原料となる組成物を加熱する事で、組成物に含まれるモノマーを高分子化させ、さらに三次元架橋させる事等により、硬化する。この際の加熱温度は、本発明の組成物が液晶相を示す温度範囲である事が好ましい。また本発明の組成物は、硬化をある程度進める事により、液晶温度範囲が上昇する場合もある。このような場合は、上昇した液晶温度範囲において硬化させてもよい。
【0104】
硬化させる温度は、一定であってもよく、段階的に上昇または降下させてもよい。後者の場合、最初の硬化温度は、材料の放熱特性を向上させるため、組成物またはその硬化物が液晶相を示す温度が好ましい。また耐熱性を向上させるため、最初の硬化温度より高い温度で加熱する事が好ましい。
【0105】
熱重合による熱硬化温度は、20℃~350℃、好ましくは20℃~250℃、より好ましくは50℃~200℃の範囲である。硬化時間は、5秒~10時間、好ましくは1分~8時間、より好ましくは5分~5時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなどを抑制するために徐冷することが好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0106】
より架橋させるために架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性及び耐熱性に極めて優れた重合体(硬化物)を得られる。このような架橋剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0107】
本発明の電子部品用材料は、シート、フィルム、薄膜、繊維、成形体などの形状で使用できる。好ましい形状は、フィルム及び薄膜である。フィルム及び薄膜は、電子部品用組成物を基板に塗布した状態又は基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する電子部品用組成物を、基板に塗布し溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体をプレス成形することによっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は1mm以上であり、フィルムの膜厚は5μm以上、好ましくは10~900μmであり、より好ましくは20~800μmであり、薄膜の膜厚は5μm未満である。膜厚は用途に応じて適宜変更すればよい。
【0108】
本発明の電子部品用材料は、高熱伝導性に加え、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などの優れた特性をも有する。よって、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱塗膜、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。
【0109】
本発明の重合性化合物から形成された電子部品用材料を上記では放熱材料として用いることを説明したが、電子部品用材料の用途は放熱材料に限られない。例えば、封止材や接着材料として用いてもよい。
【0110】
[電子部品用組成物の製造方法]
電子部品用組成物とは、本発明の組成物である放熱材料を指し、熱伝導性を高めるため無機フィラーを含有してもよく、無機フィラーに対するカップリング処理の実施は問わない。電子部品用組成物の製造例として、無機フィラーにカップリング処理を施す場合の製造方法を以下に説明する。カップリング処理は公知の方法を適用できる。
【0111】
一例として、まず無機フィラー粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒乾燥後に真空乾燥機等を用いて真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラー粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の無機フィラー粒子を乾燥させる。
【0112】
次にカップリング処理された無機フィラー粒子と重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理及び遠心分離によって分離精製する。
【0113】
さらにアミン系硬化剤を加え、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない電子部品用組成物を得られる。
【0114】
[電子部品用材料の製造方法]
一例として、溶媒を含有しない電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0115】
溶媒を含有しない電子部品用組成物を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形により成形する。重合性化合物が所定の温度、時間で重合し重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50~500kgf/cmが好ましく、より好ましくは70~250kgf/cmである。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
【0116】
なお、電子部品用組成物は一部を硬化させた状態(半硬化状態)とすると、扱い易くなる。例えば、半硬化状態の組成物をシート状に形成し、好みの形に切り取り、これを好適な部材と部材の間に配置し貼りあわせてもよい。
【0117】
溶媒を含有する電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0118】
基板上に電子部品用組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法としては、例えば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート法などが挙げられる。
【0119】
溶媒の乾燥除去は、例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどにより実施できる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。
【0120】
[電子部品]
電子部品としては、例えば発熱部を有する電子デバイスが挙げられる。本発明の電子部品用材料を放熱部材として用いる場合は、放熱部材を前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置する。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。このように、放熱部材により電子デバイスに生じた熱を放熱させ、熱による故障を回避することで、電子デバイスを備える電子機器の寿命を延ばせる。
【0121】
電子デバイスとしては、半導体素子を挙げることができる。放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のためより効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【0122】
[式(1)で表される化合物の合成方法]
式(1)の化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の重合性基及び環構造を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。
【実施例0123】
以下に、本発明に対して実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、実施例に記載された内容に限定されるものではない。なお温度の記載がない場合は、23℃で測定を行った。
【0124】
[化合物の相転移点測定および液晶相の同定]
偏光顕微鏡および示差走査熱量計を使用して、測定した。偏光顕微鏡はニコン社製、およびVHX5000デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社)に、偏光板を取り付けた構成であった。これにホットステージシステムHS1(メトラー トレド社製)を用い、温度を調節した。偏光顕微鏡測定は、クロスニコル下で観察した。接眼および対物レンズの倍率は、それぞれ10x20倍であった。示差走査熱量計はPerkin Elmer社製、Diamond DSCを用いた。測定時、昇温または降温速度は、どちらも測定においても、3℃/minであった。実施例中、Cは結晶、Sはスメクチック相、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示し、()はモノトロピック液晶相を示す。
【0125】
[組成物の液晶性の確認]
組成物を数滴、スライドガラスに滴下し、80℃で10分維持して溶媒を蒸発させた。このサンプル上にカバーガラスを乗せ、ガラスプレートに挟み、該組成物を一度等方性液体以上の温度で溶融させてから急冷し、ガラスの間にまんべんなく密着させた。該サンプルは上記偏光顕微鏡を用い、クロスニコル下で観察した。液晶相特有の配向欠陥の有無、相転移温度範囲、サンプルの流動性、および散乱現象による光抜けが目視で観察領域の半分程度以上にみられる場合、液晶性があると判断した。または、組成物が垂直配向している場合、暗視野の領域が大部分を占めたが、液晶状態に特徴的な配向欠陥が存在する領域で観察し、その欠陥が存在する場合、液晶性があると判断した。
【0126】
[NMR測定]
NMRは、VARIAN社製のVARIAN NMR SYSTEMで計測した。H NMR測定での磁場強度は500MHzであり、試料はCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は室温で行った。この際、積算回数は8回である。内部標準は、テトラメチルシランである。NMRの符号のうち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0127】
[熱伝導率の測定]
・樹脂のみから成るサンプル;NETZSCH(株)製、LFA467 HyperFlashを用い、サンプルの熱拡散率(α、m/s)を求めた。熱拡散率は、サンプルの面内方向と厚み方向に対して、それぞれ測定した。サンプルの比熱(c、J/(Kg))と密度(ρ、g/m)から、以下の式に従い、熱伝導率(W/(Km))を求めた。
κ=αxcxρ
このとき、比熱は(株)リガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231で測定した。比重は、新光電子(株)製比電子はかり式比重計DME-220により測定した。
・フィラー入りサンプル;(株)アイフェイズ製、ai-Phase Mobile 1u熱拡散率測定装置により、サンプルの厚み方向の熱拡散率を測定した。また上記と同様にして、サンプルの比熱と密度を測定した。これらの値から、上記と同様にして、熱伝導率を求めた。
【0128】
[エポキシ化合物]
式(1)で表される重合性化合物として、下記式(1-2-1)、式(1-10-1)、式(1-11-1)、式(1-13-1)、式(1-14-1)から式(1-14-4)、および式(1’-21)で表される化合物を実施例に使用した。この化合物は以下の実施例に記載の通り合成した。また比較化合物として、国際特許公報2005/061473号に記載の式(ref.1)で表される化合物を用いた。さらに上記式(o-1)で表される化合物も使用した。化合物(o-1)は特許5862479号公報に従い、合成した。化合物(o-1)の相転移点は、C・51.1・N・64.6・I(℃)であった。







【0129】
[硬化剤]
1,3-フェニレンジアミン(PDA)および3,5-ジメチルアニリン(DMA)は、東京化成工業(株)製を、精製せずにそのまま使用した。またフェノール系硬化剤として、ビスフェノールEおよび以下の式(3-2-1)で表される化合物を用いた。ビスフェノールEは、東京化成工業(株)製を、精製せずにそのまま使用した。

【0130】
[垂直配向剤]
以下の式(p-1)を用いた。この化合物は後述する実施例中に記載の通り合成した。
【0131】
[実施例1] 式(1-2-1)で表される化合物の合成
【0132】
市販の2,5-ジブロモトルエン1.29g(5.16mmol)、4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸2.00g(11.3mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)0.238g(0.206mmol)、およびNaCO1.44g(13.6mmol)の混合物を、ジメトキシエタン(20ml)中、窒素気流下、3時間還流した。4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸は、特開2014-31322号公報に従い合成した。反応終了後、反応液を冷却し、純水及びルエン各100mlを加えた。有機層を分離後、同量の純水で2回洗浄し、MgSOで乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/トルエン=1/1)で精製することにより、化合物(1-2-1-a)を得た。収量946mg(収率52%)。
【0133】
化合物(1-2-1-a)1.00g(2.83mmol)のCHCl(10ml)溶液に、3-クロロ過安息香酸1.50g(mCPBA、65%、5.65mmol)を、10℃以下で加え、そのまま室温で一晩撹拌した。反応液を氷浴で冷却後、チオ硫酸ナトリウム5水和物の10%水溶液(5ml)および10%重曹水溶液(5ml)を加え、室温で30分撹拌した。この反応液から有機層を分離し、10%重曹水溶液(5ml)および純水(5ml)で洗浄した。有機層を分離後、MgSOで乾燥した。ろ過および溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(エタノール)で精製することにより、化合物(1-2-1)を得た。収量680mg(収率62%)。
【0134】
相転移点(℃);C・67.3・N・76.4・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.59-7.28(m,11H),3.07-2.97,2.93-2.78(m,8H),2.56-2.51(m,2H),2.36-2.35(m,3H),1.99-1.82(m,4H).
【0135】
[実施例2] 式(1-10-1)で表される化合物の合成
Synlett,No.14,p.2295(2007).と同様な方法で合成した、4-ブロモ-4’-(3-ブテニルオキシ)ビフェニル2.00g(6.60mmol)を用い、実施例1と同様な方法で、4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸とのカップリング反応を行った。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(トルエン)で精製することにより、化合物(1-10-1-a)を得た。収量2.02g(収率86%)。
【0136】
式(1-10-1-a)で表される化合物を、実施例1と同様な方法で、mCPBAを用いて酸化した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(トルエン-エタノール)で精製することにより、化合物(1-10-1)を得た。収量0.58g(収率25%)。
【0137】
相転移点(℃);C・250.2・S
H―NMR(ppm,CDCl);7.64-7.61(m,4H),7.59-7.56(m,4H),7.31-7.25(m,2H),7.02-6.98(m,2H),4.21-4.15(m,2H),3.19-3.17(m,1H),3.02-2.98(m,1H),2.91-2.77(m,4H),2.62-2.60(m,1H),2.53-2.50(m,1H),2.18-2.11(m,1H),2.01-1.36(m,3H).
【0138】
[実施例3] 式(1-11-1)で表される化合物の合成
【0139】
市販の4-ブロモ-3-メチルフェノール1.00g(5.35mmol)、4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸1.27g(7.21mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)0.127g(0.110mmol)、およびNaCO1.33g(12.5mmol)の混合物を、ジメトキシエタン(12ml)、水(4ml)中、窒素気流下、6時間還流した。反応終了後、反応液を冷却し、純水及びルエン各100mlを加えた。有機層を分離後、同量の純水で2回洗浄し、MgSOで乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、化合物(1-11-1-a)を得た。収量1.01g(収率79.3%)。
【0140】
化合物(1-11-1-a)1.01g(4.24mmol)およびピリジン1.5mlの塩化メチレン(10ml)溶液中に、無水トリフルオロメタンスルホン酸0.8ml(4.89mmol)を室温以下で加えた。反応液を一晩撹拌後、純水(50ml)にあけ、トルエン(50ml)で抽出した。有機層を、希塩酸、純水、および重曹水(各50ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層をろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製する事により、化合物(1-11-1-b)を得た。収量1.39g(収率87%)。
【0141】
4-(3-ブテニルオキシ)-フェニルボロン酸 940mg(4.90mmol)、化合物(1-9-1-b) 1.39g(3.75mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(II) 66mg(0.094mmol)、およびNaCO 1.05g(9.91mmol)の混合物を、THF/純水=10/5ml混合溶媒中、窒素気流下で、2時間還流した。反応液を冷却後、純水(50ml)およびトルエン(50ml)を加え、分液操作を行った。有機層を無水MgSOで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(エタノール)で精製することにより、化合物(1-11-1-c)を得た。収量1.12g(収率81%)。
【0142】
式(1-11-1-c)で表される化合物を、実施例1と同様な方法で、mCPBAを用いて酸化した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=50/1)および再結晶(エタノール)で精製することにより、化合物(1-11-1)を得た。収量585mg(収率48%)。
【0143】
相転移点(℃);C・67.3・N・100.1・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.58-7.55(m,2H),7.46-7.42(m,2H),7.33-7.29(m,5H),7.01-6.98(m,2H),4.21-4.14(m,2H),3.20-3.17(m,1H),3.03-2.99(m,1H),2.96-2.79(m,4H),2.63-2.60(m,1H),2.54-2.50(m,1H),2.35(s,1H)2.18-2.11(m,1H),2.01-1.85(m,3H).
【0144】
[実施例4] 式(1-13-1)で表される化合物の合成
市販の4-ブロモ-3-メチルフェノール 2.50g(13.4mmol)、4-ブロモ-1-ブテン 2.34g(17.3mmol)、およびKCO 2.77g(20.0mmol)の混合物を、メチルエチルケトン(20ml)中、20時間還流した。反応液を冷却後、純水(50ml)およびトルエン(50ml)を加え、分液操作を行った。有機層を無水MgSOで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルブロモベンゼンを得た。収量2.51g(収率78%)。
【0145】
第5版実験化学講座18 有機化合物の合成VI、101ページ、丸善株式会社等に記載の方法に従い、上記4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルブロモベンゼンを用い、4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸を合成した。収量2.51g(収率78%)。この化合物は精製せずにそのまま次の反応に用いた。収量1.97g(収率92%)。
【0146】
4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸 930mg(4.51mmol)、化合物(1-13-1-a) 1.00g(3.48mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(II) 61mg、およびNaCO 960mg(9.06mmol)の混合物を、THF/純水=20/20ml混合溶媒中、窒素気流下で、4時間還流した。反応液を冷却後、純水(50ml)およびトルエン(50ml)を加え、分液操作を行った。有機層を無水MgSOで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/トルエン=10/1→5/1)および再結晶(ヘプタン)で精製することにより、化合物(1-13-1-b)を得た。収量0.87g(収率68%)。なお上記化合物(1-13-1-a)はEP1013649Aと同様な方法で合成した。
【0147】
式(1-13-1-b)で表される化合物を、実施例1と同様な方法で、mCPBAを用いて酸化した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=20/1)および再結晶(エタノール)で精製することにより、化合物(1-13-1)を得た。収量0.41g(収率90%)。
【0148】
相転移点(℃);C・65.8・N・105.8・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.61,7.58,7.37,7.30(AA’BB’,8H),7.20(d,1H,J=8.50Hz),6.85(d,1H,J=3.00Hz),6.81(dd,1H,J=8.00,2.50Hz),4.20-4.13,3.20-3.16,3.01-3.00,2.86-2.77,2.62-2.60,2.53-2,50(m,10H),2.31(s,3H),2.14-2.10,2.00-1.88(m,4H).
【0149】
[実施例5] 式(1-14-1)で表される化合物の合成
【0150】
実施例4の4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸と同様にして合成した、4-(3-ブテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(1-13-1-a)を用い、上記実施例4と同様な方法で、化合物(1-14-1-b)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン:トルエン=1:1)および再結晶(ヘプタン)で精製した。収量0.82g(収率64%)。
【0151】
化合物(1-14-1-b)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(1-14-1)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン→トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量0.55g(収率62%)。
【0152】
相転移点(℃);C・144.1・N・183.4・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.64-7.62(m,4H),7.57,7.43(AA’BB’,4H),7.31-7.25(m,2H),4.20-4.16(m,2H),3.21-3.19,3.01-3.00,2.93-2.77,2.64-2.60,2.55-2.51(m,8H),2.30(s,3H),2.18-1.83(m,4H).
【0153】
[実施例6] 式(1-14-2)で表される化合物の合成
【0154】
実施例4の4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸と同様にして合成した、4-(4-ペンテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(1-13-1-a)を用い、上記実施例4と同様な方法で、化合物(1-14-2-a)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(ヘプタン)で精製した。収量9.5g(収率82%)。
【0155】
化合物(1-14-2-a)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(1-14-2)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量6.4g(収率62%)。
【0156】
相転移点(℃);C・126.6・N・184.0・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.64-7.60(m,4H),7.57,7.43(AA’BB’,4H),7.31-7.25(m,2H),6.89(d,1H,J=8.00Hz),4.11-4.04(m,2H),3.04-2.99,2.93-2.78,2.53-2.51,1.90-1.86,1.78-1.67(m,16H)2.30(s,3H).
【0157】
[実施例7] 式(1-14-3)で表される化合物の合成
【0158】
実施例4の4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸と同様にして合成した、4-(3-メチル-3-ブテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(1-13-1-a)を用い、上記実施例4と同様な方法で、化合物(1-14-3-a)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(ヘプタン)で精製した。収量6.5g(収率86%)。
【0159】
化合物(1-14-2-a)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(1-14-3)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン:酢酸エチル=10:1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量6.9g(収率85%)。
【0160】
相転移点(℃);C・122.0・N・153.3・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.63-7.62(m,4H),7.57,7.29(AA’BB’,4H),7.45-7.42(m,2H),6.90(d,1H,J=9.00Hz),3.00-2.77,2.67-2.66,2.51-2.50(m,7H),2.29(s,3H),2.17-1.83(m,4H),1.55(s,3H).
【0161】
[実施例8] 式(1-14-4)で表される化合物の合成

【0162】
実施例4の4-(3-ブテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸と同様にして合成した、4-(4-ヘキセニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(1-13-1-a)を用い、上記実施例4と同様な方法で、化合物(1-14-4-a)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/トルエン=1/1)および再結晶(トルエン/エタノール)で精製した。収量1.7g(収率88%)。
【0163】
化合物(1-14-4-a)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(1-14-4)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン:酢酸エチル=10:1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量0.96g(収率52%)。
【0164】
相転移点(℃);C・108.3・N・174.0・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.63-7.60(m,4H),7.57,7.29(AA’BB’,4H),7.44-7.40(m,2H),6.89(d,1H,J=8.00Hz),4.04(t,2H,J=6.00Hz),3.05-3.00,2.82-2.77,2.52-2.50(m,8H),2.29(s,3H),2.05-1.83,1.80-1.60(m,8H).
【0165】
[実施例9] 式(1’-21)で表される化合物の合成
【0166】
化合物(1’-21-a)3.00g(10.9mmol)、4-ブロモ-2-メチルブト-1-エン3.56g(23.9mmol)、およびKCO3.6g(26mmol)の混合物を、DMF(20ml)中、N2雰囲気下、80℃で8時間反応させた。反応液を冷却後、トルエン(100ml)を加え、純水(100ml)で洗浄した。有機層を分離後、無水MgSOで乾燥後、ろ過した。溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、化合物(1’-21-b)を得た。収量2.85g(収率64%)。
【0167】
化合物(1’-21-b)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(1’-21)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン:酢酸エチル=10:1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量0.95g(収率69%)。
【0168】
相転移点(℃);C・151.8・I
H―NMR(ppm,CDCl);7.63-7.59(m,4H),7.56(AA’XX’,2H),7.43-7.41(m,2H),6.98(AA’XX’,2H),6.89(d,1H,J=9.00Hz),4.15-4.09,2.80-2.76,2.68-2.65,2.23-2.13,2.10-2.03(m,12H),2.29,1.44,1.43(s,9H).
【0169】
[比較例1]
式(ref.1)で表される化合物の相転移点を測定した結果、以下であった。
相転移点(℃);C・176.9・I
【0170】
上記実施例と比較例との比較から、本発明の化合物は液晶性を持ちやす事が分かる。特に、実施例3から実施例8の化合物は、エポキシの硬化に適した温度範囲である80℃から180℃までの温度領域に、広く液晶相を有する。
【0171】
[合成例1] 式(3-2-1)で表される化合物の合成
【0172】
3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル 2.00g(9.34mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン 4.7g(56mmol)、およびPPTS0.47g(1.9mmol)の混合物を、CHCl 20ml中、室温で一晩撹拌した。上記反応において、3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルは、Journal of Medicinal Chemistry, vol.52, p.858(2009).に従って合成した。反応液に飽和重曹水30mlを加え、有機層を分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後ろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1)で精製する事により、化合物(3-2-1-a)を得た。収量244mg(収率7.9%)。
【0173】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド868mg(2.43mmol)のTHF(10ml)溶液に、t-BuOK294mg(2.62mmol)のTHF(10ml)溶液を、0℃以下で加えた。0℃で30分撹拌後、-20℃に冷却し、化合物(3-2-1-a)1.00g(1.87mmol)を加えた。室温で2時間撹拌後、純水(50ml)にあけ、トルエン(50ml)で抽出した。有機層を純水(50ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層をろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン=1/1→トルエン)で精製し、化合物(3-2-1-b)を得た。収量766mg、収率77%。
【0174】
化合物(3-2-1-b)1.61g(4.21mmol)のTHF(10ml)-MeOH(10ml)混合溶液に、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム425mg(16.9mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液にブラインおよび酢酸エチル(それぞれ30ml)を加え、有機層を分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物(3-2-1)を得た。収率100%。
【0175】
融点(℃);138.0-145.7.
H―NMR(ppm,CDCl);7.54(d,1H,J=2.50Hz),7.44-7.41(AA’BB’,2H),7.31(dd,1H,J=8.00,2.50Hz),6.97(dd,1H,J=17.50,10.50Hz),6.91-6.87(AA’BB’,2H),6.85(d,1H,J=8.50Hz),5.80(d,1H,J=18.00Hz),5.41(d,1H,J=11.00Hz),4.99(s,1H),4.76(s,1H).
【0176】
[合成例2] 式(p-1)で表される化合物の合成
1-ヨード-4―トランス(4-n-ペンチル)シクロヘキシルベンゼン3.30g(9.26mmol)、4-エチニル-1,2-ジメトキシベンゼン1.50g(9.25mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(II)130mg(0.185mmol)、およびCuI 35.2mg(0.185mmol)の混合物を、EtN(30ml)中、N気流下4時間還流した。反応液を冷却後、トルエン(60ml)および純水(50ml)を反応液に加え、有機層を分離した。有機層は、MgSOで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(EtOH)で精製することにより、化合物(p-1-a)を得た。収量2.72g(収率75%)。
【0177】
上記の、1-ヨード-4―トランス(4-n-ペンチル)シクロヘキシルベンゼンおよび4-エチニル-1,2-ジメトキシベンゼンは、それぞれ、J.Am.Chem.Soc.,131,6763(2009).およびJ.Org.Chem.,73,4241(2008).に従って合成した。
【0178】
化合物(p-1-a)の2.20g(5.75mmol)を、トルエン/エタノール=20/20ml中、Pd/C 320mを触媒として、オートクレーブ中で水素添加反応した。このとき、水素圧は0.7MPaであった。反応後、触媒をろ別し、溶媒を減圧留去した。残さを再結晶(EtOH)で精製することにより、化合物(p-1-b)を得た。収量1.70g(収率75%)。
【0179】
化合物(p-1-b)の1.10g(2.79mmol)のCHCl(10ml)溶液に、-10℃で、BBrのCHCl溶液(1M)を5.8mlを加えた。室温で一晩撹拌後、反応液を純水中(30ml)に加えた。この混合物に、AcOEt(40ml)を加え、抽出した。有機層を純水(15ml)で2回洗浄後、MgSOで乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=1/1)および再結晶(トルエン)で精製することにより、化合物(p-1)を得た。収量870mg(収率85%)。
【0180】
相転移点(℃);C・147.4・N・161.4・I.
H―NMR(ppm,CDCl);7.14-7.09(AA‘BB’,4H),6.78(d,1H,J=8.00Hz),6.72(d,1H,J=2.00Hz),6.64(dd,1H,J=8.00,2.00Hz),4.98,4.86(s,1H),2.84-2.79,2.48-2.39,1.89-1.84,1.49-0.88(m,25H).
【0181】
[実施例10] 組成物の調製および溶解性の確認
実施例1で合成した式(1-2-1)で表される化合物0.5000g(1.300mmol)、およびビスフェノールE 0.2786g(1.300mmol)をサンプル瓶に入れ、シクロペンタノン(2.80ml)を加え、固形分を溶解し、固形分濃度約20%の組成物(組成物12)を得た。この組成物10を0℃に設定した冷蔵庫に一晩静置したところ、沈殿は発生せず、そのままの状態を保っていた。
【0182】
[実施例11]から[実施例30]
エポキシ化合物および硬化剤を以下の表1に示すように変更した以外は、実施例10と同様な方法で、以下に示す固形分濃度20重量%の組成物溶液を調製し、溶解性を確認した。表1において、エポキシ化合物または硬化剤が2種類記載されている欄は、これらが混合されている事を示し、後ろにその割合を、それぞれの化合物のモル比で示した。また、各組成物中のエポキシ化合物と硬化剤とのモル比は、等しくした。
【0183】
表1 組成物およびその溶解性(溶媒シクロペンタノン)
【0184】
[実施例31]
式(1-14-3)で表される化合物0.5000g(1.206mmol)、式(3-2-1)で表される化合物0.1794g(0.8452mmol)、および式(p-1)で表される化合物0.1330g(0.3628mmol)をサンプル瓶に入れ、シクロペンタノン(3.14ml)を加え、固形分を溶解し、固形分濃度約20%の組成物(組成物31)を得た。この組成物31を0℃に設定した冷蔵庫に一晩静置したところ、沈殿は発生せず、そのままの状態を保っていた。
【0185】
[比較例2]
式(ref.1)で表される化合物を用い、上記実施例10と同様な方法で、溶解性を確認した。その結果、シクロペンタノンに溶解しなかった。
【0186】
上記実施例10から実施例31と、比較例2との比較から、本発明の化合物は、溶媒への溶解性が高い事が分かる。
【0187】
[実施例32] 組成物の調製、液晶性確認、および保存安定性の確認
実施例1で合成した式(1-2-1)で表される化合物1.000g(2.601mmol)、PDA 0.1406g(1.300mmol)をサンプル瓶に入れ、テトラヒドロフラン(10ml)を加え、固形分を溶解した(組成物32)。この組成物をホットプレート上で偏光顕微鏡観察したところ、液晶性を確認した。
次に、この溶液を室温で2時間真空乾燥する事により、溶媒なし組成物(組成物32’)を、粘稠性液体として得た。
上記の組成物34’を、0℃の冷蔵庫中に一晩放置したところ、粘稠性液体を保っていた。
【0188】
[比較例3]
式(ref.1)で表される化合物1.000g(2.574mmol)、PDA 0.1392g(1.287mmol)をサンプル瓶に入れ、テトラヒドロフラン(100ml)を加え、固形分を溶解した(組成物ref.3)。この組成物を偏光顕微鏡観察したところ、一部に液晶性を示す領域を確認したが、その他の領域では結晶が確認された。さらにこの溶液から溶媒エバポレータで減圧留去した後、室温で2時間真空乾燥する事により、溶媒なし組成物(組成物ref.3’)を得た。この組成物ref.3’は、一部が結晶化していた。
【0189】
上記実施例32と比較例3との比較により、本発明の液晶性エポキシ化合物を用いた組成物は、結晶化しにくい事が分かる。このような組成物は、ペースト状のサンプルを調製する際に、非常に有用である。
【0190】
[実施例33]から[実施例54] 組成物の液晶性確認
上記実施例10から実施例31で調製した組成物の、液晶性を確認した。結果を表2に示す。
表2 組成物の液晶性確認
【0191】
上記実施例33から実施例54に記載の組成物は、実施例39に記載の組成物を除き、その液晶温度領域において、均一なネマチック相を示した。一方比較例3の組成物ref.3は、均一な液晶相とならなかった。この事は、本発明液晶性エポキシ化合物を用いた組成物は、硬化剤との相溶性が高い事を示唆している。このような組成物を硬化させた硬化物は、成分の偏りが無く、熱伝導性や信頼性などが優れた材料となる。
【0192】
[実施例55]
組成物32から調整した硬化物の熱伝導率の測定
上記組成物32を、φ2.4cmのアルミ製容器に入れ、150℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間保持し、厚みが1.5mmの円形片を取り出した。この硬化物(硬化物32)の熱伝導率は、サンプルの面内方向と厚み方向で、それぞれ0.95W/m・Kおよび0.45W/m・Kであった。
【0193】
[実施例56]から[実施例57]
上記実施例55と同様な方法で、表3に記載の組成物、または該組成物から調製した硬化物の放熱特性を確認した。表中において、カッコ内には各構成要素におけるそれぞれの成分化合物のモル%を示した。また液晶性に関しては、ある場合を〇、無い場合を×とした。
【0194】
表3.組成物の液晶性と熱伝導率
【0195】
[実施例58] 硬化物の熱伝導率の測定2
実施例10で調製した組成物10に、イミダゾール0.0400g(0.588mmol)を加え溶解させ、組成物10Cを得た。該組成物10Cを、φ2.4cmのアルミ製容器に入れ、150℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間保持し、厚みが約1.0mmの円形片を取り出した。この硬化物(硬化物10C)の熱伝導率は、サンプルの面内方向と厚み方向で、それぞれ0.90W/m・Kおよび0.41W/m・Kであった。
【0196】
[実施例59]から[実施例78]
実施例58と同様な方法で、上記組成物11から組成物31(元組成物、組成物16を除く)にイミダゾールを加え、組成物11Cから組成物31Cを調製した。さらに該組成物を加熱し、硬化物を得た。これら硬化物の熱伝導率を測定した結果を、表4に示す。
表4.組成物の熱伝導率

【0197】
[実施例79] フィラー入りサンプルの作製
組成物32の1.0g、および窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製PolarTherm PTX-25)0.90gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、80℃の温度に加温したホットプレート上にて5分間静置した後、このサンプルをステンレス製板中に挟み、150℃の温度に加温した圧縮成形機((株)井元製作所製IMC-19EC)にて20MPaの圧力をかけて45分間保持し、放熱部材としての厚みが768μmの四角片を取り出した。このサンプル(フィラー入りサンプル32)の熱伝導率は、10.8W/m・Kであった。
【0198】
[実施例80]および[実施例81]
組成物32に代え組成物33および34を使用した以外は、上記実施例79に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル33および34を調製し、熱伝導率を測定した。結果を表5に示す。
【0199】
表5.フィラー入りサンプルの熱伝導率1
【0200】
[実施例82] フィラー入りサンプルの作製2
組成物22Cの0.5gを用いた以外は実施例79と同様な方法で、サンプル(フィラー入りサンプル22C)を調製した。このフィラー入りサンプル22Cの熱伝導率は、12.0W/m・Kであった。
【0201】
[実施例83]から[実施例90]
組成物22Cに代え、組成物23Cから組成物31Cを使用した以外は、上記実施例82に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル23Cから31Cを調製し、熱伝導率を測定した。結果を表6に示す。
【0202】
表6.フィラー入りサンプルの熱伝導率2
【0203】
[実施例91]および[実施例92]
組成物24Cまたは組成物26Cの0.5g、および酸化アルミニウム粒子(デンカ製DAW-10)0.90gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、上記実施例84に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル24CAOと26CAOを調製し、熱伝導率を測定した。結果を表7に示す。
【0204】
表7.フィラー入りサンプルの熱伝導率3


上記のように、本発明に開示された技術は、高い熱伝導率を与える事が分かる。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明の技術は、半導体素子のパッケージ用材料に好適に使用する事が出来る。また接着剤などその他のエポキシ樹脂に対する代替用途にも、使用する事が出来る。