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特開2022-80992測定装置、制御装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080992
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】測定装置、制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20220524BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192242
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
(72)【発明者】
【氏名】喜入 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】光谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白川 義徳
(72)【発明者】
【氏名】市村 努
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BS10
3C707KS07
3C707KS17
3C707KT01
3C707LS05
3C707LS15
3C707LT01
3C707LV12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワークを測定する際のティーチングの不要化又はティーチング時間の短縮を可能にする。
【解決手段】測定装置Sは、ワークを測定するセンサ2と、センサ2を三次元空間内で移動させる多軸のロボット1と、ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、複数の測定位置それぞれにおけるセンサ2の方向と、を決定する位置決定部153と、ロボット1を制御することにより、複数の測定位置にセンサを順次移動させる移動制御部152と、複数の測定位置それぞれにおいてセンサ2が測定した結果を示す測定データを複数の被測定位置に関連付けて出力する測定制御部154と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを測定するセンサと、
前記センサを三次元空間内で移動させる多軸のロボットと、
前記ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける前記センサの方向と、を決定する位置決定部と、
前記ロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させる移動制御部と、
前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力する測定制御部と、
を有する測定装置。
【請求項2】
前記位置決定部は、前記設計データに基づいて前記複数の被測定位置それぞれにおける暫定法線方向を特定し、前記撮像画像データに基づいて特定した前記ワークの状態に基づいて前記暫定法線方向を補正することにより前記法線方向を特定する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記ロボットは、前記撮像画像データを生成する撮像デバイスをさらに移動させ、
前記移動制御部は、前記ロボットを制御することにより、前記撮像画像データを生成する撮像デバイスを複数の撮像位置に順次移動させ、
前記位置決定部は、前記複数の撮像位置のうちの第1撮像位置において前記撮像デバイスが生成した第1撮像画像データに基づいて、前記第1撮像位置に対応する前記被測定位置における前記法線方向を特定することにより、前記第1撮像位置に対応する前記測定位置を決定する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記位置決定部は、前記第1撮像位置から、前記センサを移動させる方向において前記センサが測定可能な範囲に基づいて定められた長さだけ離れた第2撮像位置において前記撮像デバイスが生成した第2撮像画像データに基づいて、前記第2撮像位置に対応する前記被測定位置における前記法線方向を特定することにより、前記第2撮像位置に対応する前記測定位置を決定する、
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかと、前記測定装置の形状を示すデータとに基づいて、前記複数の測定位置を含み、かつ前記センサが前記ワークと接触しない経路を決定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて特定される前記被測定位置と、当該被測定位置に対応する前記測定位置との距離が前記センサの焦点距離になるように前記複数の測定位置を決定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの状態が変化するエッジの位置を特定し、特定した前記エッジの位置に基づいて前記複数の測定位置を決定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記移動制御部は、前記複数の測定位置に順次移動させる向きに基づいて決定した指示値を前記ロボットに通知することにより、前記複数の測定位置に前記センサを移動させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記ワークに光を照射する照明デバイスをさらに有し、
前記測定制御部は、前記複数の被測定位置に対応する複数の照射位置において前記照明デバイスに光を照射させる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定制御部は、前記設計データ又は前記撮像画像データが示す前記ワークの表面の材質又は表面の加工状態の少なくともいずれかに基づいて前記照明デバイスが光を照射する条件を決定する、
請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記照明デバイスは、前記センサと結合しており、前記センサが照射する光及び前記ワークから反射する光を通過させる開口を有する、
請求項9又は10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記照明デバイスは、前記センサが測定のために光を発射する向きに光を照射する、
請求項11に記載の測定装置。
【請求項13】
前記センサの位置を検出する位置検出部と、
前記移動制御部が前記ロボットに通知した、前記複数の測定位置に前記センサを移動させるための指示値と、前記位置検出部が検出した前記センサの位置との関係に基づいて前記指示値を補正するための補正値を決定する補正部と、
をさらに有し、
前記移動制御部は、前記補正値に基づいて前記指示値を補正した値を用いて前記ロボットを移動させる、
請求項1から12のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項14】
ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定する位置決定部と、
前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させる移動制御部と、
前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを、前記複数の被測定位置に関連付けて出力する測定制御部と、
を有する制御装置。
【請求項15】
コンピュータが実行する、
ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定するステップと、
前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させるステップと、
前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力するステップと、
を有する制御方法。
【請求項16】
コンピュータに、
ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定するステップと、
前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させるステップと、
前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを測定するための測定装置、制御装置、制御方法及びプログラム関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの形状を測定する3次元測定方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-329903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の測定方法においては、ワークの形状を測定するためのプローブを移動させる経路のティーチングを行う必要があった。ワークの向きが変わったりワークの種類が変わったりするたびにティーチングを行うと、測定時間においてティーチングに要する時間が占める割合が大きくなり測定効率が低下するため、ティーチング時間を短縮するための方法が求められていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ワークを測定する際のティーチングの不要化又はティーチング時間の短縮が可能な測定装置、制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の測定装置は、ワークを測定するセンサと、前記センサを三次元空間内で移動させる多軸のロボットと、前記ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける前記センサの方向と、を決定する位置決定部と、前記ロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させる移動制御部と、前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力する測定制御部と、を有する。
【0007】
前記位置決定部は、前記設計データに基づいて前記複数の被測定位置それぞれにおける暫定法線方向を特定し、前記撮像画像データに基づいて特定した前記ワークの状態に基づいて前記暫定法線方向を補正することにより前記法線方向を特定してもよい。
【0008】
前記ロボットは、前記撮像画像データを生成する撮像デバイスをさらに移動させ、前記移動制御部は、前記ロボットを制御することにより、前記撮像画像データを生成する撮像デバイスを複数の撮像位置に順次移動させ、前記位置決定部は、前記複数の撮像位置のうちの第1撮像位置において前記撮像デバイスが生成した第1撮像画像データに基づいて、前記第1撮像位置に対応する前記被測定位置における前記法線方向を特定することにより、前記第1撮像位置に対応する前記測定位置を決定してもよい。
【0009】
前記位置決定部は、前記第1撮像位置から、前記センサを移動させる方向において前記センサが測定可能な範囲に基づいて定められた長さだけ離れた第2撮像位置において前記撮像デバイスが生成した第2撮像画像データに基づいて、前記第2撮像位置に対応する前記被測定位置における前記法線方向を特定することにより、前記第2撮像位置に対応する前記測定位置を決定してもよい。
【0010】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかと、前記測定装置の形状を示すデータとに基づいて、前記複数の測定位置を含み、かつ前記センサが前記ワークと接触しない経路を決定してもよい。なお、前記測定装置は、測定を開始する前に、前記位置決定部が決定した経路の良否を、コンピュータシミュレーションにより確認できるようにしてもよい。
【0011】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて特定される前記被測定位置と、当該被測定位置に対応する前記測定位置との距離が前記センサの焦点距離になるように前記複数の測定位置を決定してもよい。
【0012】
前記位置決定部は、前記設計データ又は前記撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの状態が変化するエッジの位置を特定し、特定した前記エッジの位置に基づいて前記複数の測定位置を決定してもよい。
【0013】
前記移動制御部は、前記複数の測定位置に順次移動させる向きに基づいて決定した指示値を前記ロボットに通知することにより、前記複数の測定位置に前記センサを移動させてもよい。
【0014】
前記測定装置は、前記ワークに光を照射する照明デバイスをさらに有し、前記測定制御部は、前記複数の被測定位置に対応する複数の照射位置において前記照明デバイスに光を照射させてもよい。
【0015】
前記測定制御部は、前記設計データ又は前記撮像画像データが示す前記ワークの表面の材質又は表面の加工状態の少なくともいずれかに基づいて前記照明デバイスが光を照射する条件を決定してもよい。
【0016】
前記照明デバイスは、前記センサと結合しており、前記センサが照射する光及び前記ワークから反射する光を通過させる開口を有してもよい。
【0017】
前記照明デバイスは、前記センサが測定のために光を発射する向きに光を照射してもよい。
【0018】
前記測定装置は、前記センサの位置を検出する位置検出部と、前記移動制御部が前記ロボットに通知した、前記複数の測定位置に前記センサを移動させるための指示値と、前記位置検出部が検出した前記センサの位置との関係に基づいて前記指示値を補正するための補正値を決定する補正部と、をさらに有し、前記移動制御部は、前記補正値に基づいて前記指示値を補正した値を用いて前記ロボットを移動させてもよい。
【0019】
本発明の第2の態様の制御装置は、ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定する位置決定部と、前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させる移動制御部と、前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを、前記複数の被測定位置に関連付けて出力する測定制御部と、を有する。
【0020】
本発明の第3の態様の制御方法は、コンピュータが実行する、ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定するステップと、前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させるステップと、前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力するステップと、を有する。
【0021】
本発明の第4の態様のプログラムは、コンピュータに、ワークの形状を示す設計データ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、前記ワークの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置と、前記複数の測定位置それぞれにおける、前記ワークを測定するセンサの方向と、を決定するステップと、前記センサを三次元空間内で移動させるロボットを制御することにより、前記複数の測定位置に前記センサを順次移動させるステップと、前記複数の測定位置それぞれにおいて前記センサが測定した結果を示す測定データを前記複数の被測定位置に関連付けて出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワークを測定する際のティーチングの不要化又はティーチング時間の短縮が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】測定装置の概要を示す図である。
図2】センサが撮像素子である場合のセンサ及び照明デバイスの構成例の模式図である。
図3】撮像デバイスの動作の概要を説明するための図である。
図4】被測定位置と測定位置との関係を示す図である。
図5】制御装置の構成を示す図である。
図6】位置決定部が法線方向を特定する動作の一例を説明するための図である。
図7】制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図8】変形例に係る制御装置の構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[測定装置Sの概要]
図1は、測定装置Sの概要を示す図である。測定装置Sは、ワークWを測定するための装置である。ワークWの測定には、ワークWの複数の位置の座標を測定すること、ワークWにおける複数の位置の間の距離を測定すること、又はワークWの色を測定することのように、ワークWの性質に関する任意の測定が含まれる。
【0025】
測定装置Sは、ロボット1と、センサ2と、ライト3と、カメラ4と、制御装置10と、を備える。測定装置Sは、ロボット1を用いて三次元空間内の任意の位置にセンサ2を移動させることによりワークWを測定する。ロボット1は、センサ2を三次元空間内で移動させる多軸(例えば6軸)のロボットであり、例えば、ワークWが載置される載置台Bに固定されている。ロボット1が固定されている位置は任意であり、測定中のワークWの位置とロボット1の固定位置との関係が一定であれば、ロボット1は載置台B以外の位置に固定されていてもよい。ロボット1は、センサ2を三次元空間内で移動させるための移動機構又は駆動機構、並びに制御装置10との間でデータを送受信する機能を有する装置であれば任意の構成及び形状を有してよい。
【0026】
図1に示すロボット1には、センサ2、ライト3及びカメラ4が取り付けられている。ロボット1は、制御装置10から入力される制御情報に基づいてアームを動かすことで、アームに装着されたセンサ2、ライト3及びカメラ4の位置を任意の位置に移動させることができる。ロボット1には、複数種類のセンサ2が設けられていてもよく、複数種類のセンサ2を入れ替えることができるように、センサ2が着脱可能に構成されていてもよい。
【0027】
センサ2は、ワークWを測定するために使用可能なワークWの測定データを取得するためのデバイスである。センサ2は、ワークWの複数の被測定位置におけるワークWの面の法線Lの方向上の複数の測定位置において測定動作を実行することにより、複数の測定データを取得する。センサ2は、例えば、撮像素子、干渉計センサ、レーザスキャナー、レーザ距離計又は共焦点クロマティックセンサである。被測定位置は、例えば制御装置10により決定される。
【0028】
ライト3は、センサ2が測定する際にワークWの表面が適切な明るさになるように、ワークWに向けて光を発する照明デバイスである。ライト3は、例えばセンサ2が撮像素子である場合のように、測定結果がワークWの表面の明るさの影響を受ける場合に使用される。
【0029】
図2は、センサ2が撮像素子である場合のセンサ2及びライト3の構成例の模式図である。ライト3は、センサ2と結合しており、センサ2が照射する光及びワークWから反射する光を通過させる開口31を有する。ライト3は、センサ2が測定のために光を発射する向きに光を照射する。ライト3は、例えば円環形状をしており、斜線で示す領域からワークWの表面に向けて光を発する。
【0030】
センサ2は、ワークWの被測定位置における法線Lに撮像方向(例えば光軸の方向)が重なる位置でワークWの表面を撮像する。また、センサ2は、ワークWの表面との距離Dがセンサ2の焦点距離と一致する位置でワークWの表面を撮像する。
【0031】
カメラ4は、センサ2の測定位置と測定方向を決定するために、ワークWの概略形状を特定するために用いられる撮像デバイスであり、例えば静止画カメラ又はビデオカメラである。カメラ4は、例えば、センサ2を用いた測定を開始する前に複数の撮像位置においてワークWを撮像することにより、複数の撮像画像データを生成する。カメラ4は、生成した撮像画像データを制御装置10に送信する。
【0032】
図3は、カメラ4の動作の概要を説明するための図である。図3は、ワークWの断面と、カメラ4の経路と、センサ2の経路とを示している。図3において長方形で示すカメラ4は、ワークWの表面Hからほぼ一定の距離の経路上を移動しながらワークWの表面Hを撮影することにより複数の撮像画像データを順次生成する。カメラ4は、ワークWの表面Hから一定の距離を維持した状態で、複数の経路に沿って移動し、ワークWにおいて載置台Bに接していない全ての領域の表面Hの状態を示す複数の撮像画像データを生成する。このようにして生成された複数の撮像画像データは、センサ2が測定をする際の経路の決定に用いられる。
【0033】
制御装置10は、ロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4を制御することにより、複数の測定位置においてワークWの複数の被測定位置を対象とする測定を実行し、得られた複数の測定データに基づいてワークWの形状を特定する。制御装置10の詳細については後述するが、以下に概要を説明する。
【0034】
センサ2は、複数の測定位置においてワークWを測定することにより測定データを生成する。センサ2が生成した測定データに基づいて、制御装置10はワークWの状態(例えば面の方向、材質、色)が変化するエッジの位置を検出し、検出したエッジの位置に基づいてワークWの形状を特定する。制御装置10は、例えば円形の領域のエッジを検出した場合に、円形の領域の内径又は外径等を算出することによりワークWの形状を測定する。エッジは、ワークWの状態が変化する境界位置に相当する。センサ2が撮像素子である場合、エッジは、例えばセンサ2により生成された撮像画像データにおいて、隣接する複数の画素の間での輝度の変化量が閾値以上である複数の位置を結んだ線分により特定される。
【0035】
センサ2がレーザスキャナーである場合、センサ2は、法線Lの方向からワークWに対してライン状のレーザ光線を投影し、投影されたレーザ光線のワークWの表面での反射光を撮影した測定画像データを生成する。制御装置10は、測定画像データに基づいてワークWの断面形状を特定する。
【0036】
センサ2がレーザ距離計又は共焦点クロマティックセンサである場合、センサ2は、複数の測定位置においてセンサ2とワークWの表面との距離を測定し、測定した距離を示す距離データを生成する。制御装置10は、複数の測定位置に対応する複数の距離データに基づいて、ワークWの凹凸形状を特定する。
【0037】
センサ2が干渉計センサである場合、制御装置10は、測定データに基づいて被測定位置の周辺における凹凸形状を特定する。制御装置10は、複数の被測定位置に対応する凹凸形状を合成することにより、ワークWの表面の凹凸形状を特定する。
【0038】
図4は、被測定位置と測定位置との関係を示す図である。制御装置10は、ワークWの表面の複数の被測定位置a1、a2、a3、a4を対象とする測定をするために、それぞれの被測定位置の法線方向で、それぞれの被測定位置から所定の距離(例えばセンサ2の焦点距離)だけ離れた位置の測定位置A1、A2、A3、A4にセンサ2を順次移動させる。同様に、制御装置10は、ワークWの表面の複数の被測定位置b1、b2、b3、b4を対象とする測定をするために、測定位置B1、B2、B3、B4にセンサ2を順次移動させる。制御装置10は、これらの複数の測定位置を特定するためのデータ(例えば座標データ)と、それぞれの測定位置における測定値とが関連付けられた測定データを出力する。
【0039】
[制御装置10の構成]
図5は、制御装置10の構成を示す図である。制御装置10は、通信部11と、表示部12と、操作部13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。制御部15は、主制御部151と、移動制御部152と、位置決定部153と、測定制御部154と、を有する。
【0040】
通信部11は、ロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4との間で各種のデータを送受信するための通信インターフェースを有する。通信インターフェースは、例えば、Ethernet、無線LAN(Local Area Network)、GPIB(General Purpose Interface Bus)又はUSB(Universal Serial Bus)である。通信部11は、ロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4のそれぞれに対応する複数の異なる通信インターフェースを有してもよく、1つの通信インターフェースを用いてロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4との間でデータを送受信してもよい。
【0041】
通信部11は、ロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4以外の外部装置との間でデータを送受信してもよい。通信部11は、例えばワークWの設計データを記憶しているコンピュータに対して設計データを要求するメッセージを送信し、当該コンピュータから設計データを受信する。通信部11は、受信した設計データを、例えば主制御部151を介して記憶部14に記憶させる。以下の説明においては、設計データがCAD(Computer Aided Design)データである場合を例示するが、設計データはCADデータ以外のデータであってもよい。
【0042】
通信部11は、例えば、移動制御部152からの指示に基づいて、ロボット1の位置を制御するための位置情報をロボット1に送信する。また、通信部11は、位置決定部153からの指示に基づいて、センサ2に撮影をさせるための撮影制御情報を送信し、センサ2が生成した撮像画像データを受信する。センサ2は、受信した撮像画像データを位置決定部153に入力する。
【0043】
また、通信部11は、測定制御部154からの指示に基づいて、センサ2に測定をさせるための測定制御情報をセンサ2に送信し、センサ2が生成した測定データを受信する。測定制御情報には、測定を実行することを指示するデータが含まれている。測定制御情報には、測定位置又は被測定位置を特定するための情報(例えば座標データ)が含まれていてもよい。通信部11は、受信した測定データを測定制御部154に入力する。また、通信部11は、測定制御部154からの指示に基づいて、ライト3の発光量を制御するための発光制御情報をライト3に送信する。
【0044】
表示部12は、各種の情報を表示するためのディスプレイを有する。表示部12は、制御装置10を使用する測定者が各種の操作を行うための画面を表示したり、測定結果を表示したりする。
操作部13は、測定者が操作をするためのデバイスであり、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネルである。
【0045】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部14は、ロボット1、センサ2、ライト3及びカメラ4の動作に必要な各種のデータを記憶する。記憶部14は、例えば、外部のコンピュータから取得したCADデータ、カメラ4から受信した撮像画像データ、及びセンサ2から受信した測定データを記憶する。
【0046】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、主制御部151、移動制御部152、位置決定部153及び測定制御部154として機能する。
【0047】
主制御部151は、表示部12、操作部13及び記憶部14との間でデータを送受信する。主制御部151は、測定者が行った操作に応じてワークWの測定を開始し、位置決定部153、移動制御部152及び測定制御部154を制御する。主制御部151は、例えば、ロボット1を撮像位置又は測定位置に移動させるための移動指示を移動制御部152に入力する。また、主制御部151は、記憶部14に記憶されたCADデータを読み出して、CADデータを位置決定部153に入力することにより、位置決定部153に撮像位置及び測定位置を決定させる。さらに、主制御部151は、測定を実行するための制御情報を測定制御部154に入力し、測定制御部154から取得した測定データを記憶部14に記憶させる。
【0048】
移動制御部152は、ロボット1を制御することにより、ロボット1に装着されたセンサ2、ライト3及びカメラ4を移動させる。移動制御部152は、例えば、ロボット1を制御することにより、複数の撮像位置にカメラ4を順次移動させる。また、移動制御部152は、ロボット1を制御することにより、複数の被測定位置に対応する複数の測定位置にセンサ2を順次移動させる。
【0049】
移動制御部152は、センサ2を測定位置に移動させたり、カメラ4を撮像位置に移動させたりするために、ロボット1に対して、予め設定された位置を原点とする測定位置又は撮像位置の座標データを指示値として含む位置制御情報を送信する。移動制御部152は、ロボット1を動かすタイミングで1つの座標データを含む位置制御情報を送信してもよく、複数のタイミングと複数の座標データとを関連付けた位置制御情報を送信してもよい。
【0050】
移動制御部152は、予め記憶部14に記憶された複数の座標データを読み出すことにより位置制御情報を生成してもよく、操作部13を介して測定者により入力された複数の座標データを含む位置制御情報を生成してもよいが、本実施形態においては、位置決定部153から通知された経路情報が示す複数の座標データを含む位置制御情報を生成する。
【0051】
移動制御部152は、カメラ4を移動させる際には、予め記憶部14に記憶された複数の座標データ又は測定者により入力された複数の座標データを含む位置制御情報を使用し、センサ2を移動させる際には、より高い精度でセンサ2の位置を制御するために、位置決定部153から通知された経路情報に基づいて位置制御情報を生成してもよい。この場合、移動制御部152は、位置決定部153から通知された経路情報が示す複数の被測定位置(すなわち、後述する位置決定部153が法線方向を特定した被測定位置)においてワークWを測定するための複数の測定位置にセンサ2を順次移動させる。
【0052】
ところで、ロボット1のアームを移動させる場合、アームに加わる慣性の影響等により、どの向きで測定位置に近づくかによって適切な指示値が異なるということが想定される。そこで、移動制御部152は、複数の測定位置に順次移動させる向きに基づいて決定した指示値を含む位置制御情報をロボット1に通知することにより、複数の測定位置にセンサを移動させてもよい。
【0053】
位置決定部153は、ワークWの形状を示すCADデータ、又はカメラ4が生成した撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、複数の撮像位置、複数の被測定位置及び複数の測定位置を決定する。位置決定部153は、複数の測定位置それぞれにおけるセンサ2の方向をさらに決定してもよい。
【0054】
位置決定部153は、例えば所定の位置においてカメラ4がワークWの全体を撮影して生成された撮像画像データに基づいてワークWが載置台Bに載置された向きを特定し、特定した結果に基づいてカメラ4の撮影経路を決定する。位置決定部153は、例えば、ワークWの表面からカメラ4の焦点距離に対応する距離だけ離れた複数の位置を複数の撮像位置に決定し、決定した複数の撮像位置を含む経路を撮影経路に決定する。位置決定部153は、撮影経路を示す経路情報を移動制御部152に通知する。位置決定部153は、例えば、決定した複数の撮像位置を経路情報として移動制御部152に通知する。
【0055】
位置決定部153は、複数の異なる位置でカメラ4がワークWを撮影した複数の撮像画像データに基づいて距離画像データを生成し、生成した距離画像データに基づいてワークWの三次元形状を特定することにより、複数の被測定位置及び複数の測定位置を決定してもよい。また、カメラ4が距離画像データを撮像画像データとして生成できるステレオカメラであり、位置決定部153は、カメラ4が生成した距離画像データに基づいてワークWの三次元形状を特定することにより、複数の被測定位置及び複数の測定位置を決定してもよい。
【0056】
位置決定部153は、センサ2が測定可能な範囲に基づいて複数の撮像位置の間隔を決定してもよい。位置決定部153は、例えば、第1撮像位置から、センサ2を移動させる方向においてセンサ2が測定可能な範囲に基づいて定められた長さだけ離れた位置を第2撮像位置に決定する。センサ2が測定可能な範囲に基づいて定められた長さは、例えば、センサ2が測定可能な範囲が四角形である場合、当該四角形の一辺の長さ、又は四角形の一辺の長さ未満である。位置決定部153がこのように動作することで、センサ2が測定する全領域に対応する複数の撮像画像データをカメラ4が生成することが可能になる。
【0057】
位置決定部153は、CADデータ、又はカメラ4が生成した撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、複数の被測定位置を決定する。位置決定部153は、例えば、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて特定したワークWのエッジ上の複数の位置を複数の被測定位置に決定したり、エッジで囲まれた領域内における一定間隔の複数の位置を複数の被測定位置に決定したりする。位置決定部153は、測定者により設定された測定内容にさらに基づいて複数の被測定位置を決定してもよい。
【0058】
さらに、位置決定部153は、複数の被測定位置に対応する複数の測定位置を決定する。位置決定部153は、被測定位置に対応する撮像画像データに基づいて、被測定位置における法線方向を特定することにより、法線方向上に測定位置を決定する。位置決定部153は、ワークWの形状を示すCADデータ、又はカメラ4が生成した撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、ワークWの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置を決定する。
【0059】
また、位置決定部153は、複数の測定位置それぞれにおけるセンサ2の方向を決定する。位置決定部153は、例えば、センサ2がワークWを測定する際に得られる精度が相対的に高くなる方向にセンサ2の方向を決定する。センサ2が撮像素子である場合、位置決定部153は、センサ2の光軸の方向が、測定位置に対応する被測定位置における法線方向と一致するようにセンサ2の方向を決定する。位置決定部153は、決定した測定位置及び測定方向を移動制御部152に通知することにより、移動制御部152にロボット1の調整機構を制御させて測定位置及び測定方向を調整させる。
【0060】
位置決定部153は、複数の撮像位置のうちの第1撮像位置において撮像デバイスが生成した第1撮像画像データに基づいて、第1撮像位置に対応する被測定位置における法線方向を特定する。また、位置決定部153は、第2撮像位置においてカメラ4が生成した第2撮像画像データに基づいて、第2撮像位置に対応する被測定位置における法線方向を特定する。位置決定部153は、それぞれの被測定位置における法線方向上に測定位置を決定する。
【0061】
位置決定部153は、被測定位置における法線方向上で、被測定位置からセンサ2の焦点距離に相当する位置を測定位置に決定する。すなわち、位置決定部153は、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて特定される被測定位置と、当該被測定位置に対応する測定位置との距離がセンサ2の焦点距離になるように複数の測定位置を決定する。位置決定部153は、第1被測定位置における法線方向上において第1被測定位置からセンサ2の焦点距離だけ離れた位置を第1測定位置に決定する。位置決定部153は、第2被測定位置における法線方向上において第2被測定位置からセンサ2の焦点距離だけ離れた位置を第2測定位置に決定する。
【0062】
位置決定部153は、CADデータ及び撮像画像データの両方を用いる場合、CADデータに基づいて複数の被測定位置それぞれにおける暫定法線方向を特定し、被測定位置に対応する撮像画像データに基づいて特定したワークWの状態に基づいて暫定法線方向を補正することにより法線方向を特定する。
【0063】
図6は、位置決定部153が法線方向を特定する動作の一例を説明するための図である。図6(a)は、第1の向きで載置台Bに載置されている状態のワークWを上方から見た図であり、図6(b)は、第1の向きで載置台Bに載置されている状態のワークWを側方から見た図である。図6(c)は、第2の向きで載置台Bに載置されている状態のワークWを上方から見た図であり、図6(d)は、第2の向きで載置台Bに載置されている状態のワークWを側方から見た図である。第1の向きは、CADデータが示すワークWの向きと同一の向きであり、第2の向きは、CADデータが示すワークWの向きと異なる向きである。ここでは、カメラ4がワークWを撮影した時には、図6(c)及び図6(d)の状態になっていたものとする。
【0064】
位置決定部153は、CADデータに基づいて、図6(a)及び図6(b)に示す被測定位置Xにおける暫定法線L1の方向を特定する。位置決定部153は、撮像画像データに基づいて、ワークWが図6(c)及び図6(d)に示すように第2の向きに載置されており、CADデータが示すワークWの向きとの間に角度差があることを特定する。位置決定部153は、特定した角度差に基づいて、暫定法線L1の方向と異なる法線L2の方向を特定する。このように、位置決定部153がCADデータ及び撮像画像データを用いることで、ワークWが載置台Bに載置された向きによらず、位置決定部153は、被測定位置における法線方向を正確に特定することができる。
【0065】
位置決定部153は、CADデータのみを用いて法線方向を特定してもよい。例えばワークWが載置台Bに載置される向きが定められている場合、位置決定部153は、図6(b)に示す暫定法線L1の方向を被測定位置における法線方向として特定することができる。
【0066】
位置決定部153は、撮像画像データのみを用いて法線方向を特定してもよい。位置決定部153は、例えば撮像画像データの撮像領域内の位置による輝度値の分布状況に基づいてワークWの表面の角度を特定することにより、法線方向を特定することができる。位置決定部153は、複数の異なる撮像デバイスでワークWの表面の同じ領域が撮影されて生成された複数の撮像画像データに基づいて距離画像を生成し、距離画像に基づいて法線方向を特定してもよい。
【0067】
位置決定部153は、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、複数の測定位置を含み、かつセンサ2がワークWと接触しない経路を決定してもよい。位置決定部153は、決定した経路における複数の測定位置の座標と、複数の測定位置以外の複数の位置の座標を含む経路情報を生成し、経路情報を移動制御部152に通知する。
【0068】
位置決定部153は、ワークWの設計データ又は記撮像画像データの少なくともいずれかと、測定装置Sの形状を示すデータとに基づいて経路を決定してもよい。具体的には、位置決定部153は、経路を決定する際に、測定装置Sが有するロボット1、センサ2、ライト3、カメラ4及び載置台B等の構成部材の設計データ(例えばCADデータ)の少なくとも一部をさらに使用してもよい。そして、位置決定部153は、ワークWのCADデータと測定装置Sの設計データとを用いて複数の測定位置、複数の測定位置での測定順序、又はロボット1の移動経路を決定してもよい。位置決定部153が測定装置Sの設計データを用いることで、測定装置Sの構成部材とワークWが衝突する確率を下げることができる。
【0069】
なお、測定装置Sは、測定を開始する前に、位置決定部153が決定した経路の良否を、コンピュータシミュレーションにより確認できるようにしてもよい。例えば、主制御部151は、ワークW及び測定装置Sの設計データに基づいて、位置決定部153が決定した経路に基づいてセンサ2を移動させるようにロボット1が動作した場合の測定装置Sの各部の位置とワークWの位置との関係をシミュレーションし、測定装置SとワークWとが衝突する可能性の有無を判定することにより、経路の良否を確認する。主制御部151は、衝突が発生する可能性がないと判定した場合に、測定制御部154に測定を開始させる。主制御部151は、衝突が発生する可能性があると判定した場合に測定制御部154に測定を開始させず、位置決定部153に他の経路を探索させてもよい。
【0070】
主制御部151は、位置決定部153が決定した経路を示す情報を外部のコンピュータに送信し、外部のコンピュータが、ワークW及び測定装置Sの設計データに基づいて衝突が発生する可能性の有無を判定した結果を取得してもよい。主制御部151は、衝突が発生する可能性がないという判定結果を得た場合に、測定制御部154に測定を開始させる。主制御部151は、衝突が発生する可能性があるという判定結果を得た場合に測定制御部154に測定を開始させず、位置決定部153に他の経路を探索させてもよい。
【0071】
位置決定部153は、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいてワークWに含まれるエッジの位置を特定し、特定したエッジの位置に基づいて複数の測定位置を決定してもよい。位置決定部153は、例えば、検出した複数のエッジに含まれる複数の位置を複数の測定位置にしたり、エッジで囲まれた領域内の複数の位置を複数の測定位置を含む領域にしたりする。
【0072】
位置決定部153は、センサ2が実行可能な測定内容とエッジの位置とに基づいて複数の被測定位置を決定してもよい。位置決定部153は、例えばセンサ2が複数の位置の間の距離を測定可能である場合、複数のエッジ間の距離をセンサ2が測定できるように、複数のエッジに含まれる複数の位置を複数の測定位置に決定する。位置決定部153は、センサ2がワークWの表面までの距離を測定可能である場合、エッジで囲まれた領域の凹凸形状をセンサ2が測定できるように、エッジで囲まれた領域に含まれる複数の位置を複数の測定位置に決定する。
【0073】
測定制御部154は、主制御部151から入力された制御情報に基づいてセンサ2を制御することにより、ロボット1がセンサ2を移動させる動作に同期して、被測定位置の法線方向上の測定位置においてセンサ2に測定動作を実行させる。そして、測定制御部154は、複数の測定位置それぞれにおいてセンサ2が測定した結果を示す測定データを複数の被測定位置に関連付けて出力する。測定制御部154は、例えば被測定位置を示す座標データと被測定位置における測定データとを関連付けて表示部12に表示させたり、通信部11を介して外部装置に送信したりする。
【0074】
測定制御部154は、複数の被測定位置に対応する複数の照射位置においてライト3に光を照射させてもよい。測定制御部154は、例えばセンサ2が測定を実行する際のワークWの表面の照度が所定の照度であることが要求される場合に、被測定位置に向けてライト3に光を照射させる。測定制御部154は、CADデータ又は撮像画像データが示すワークWの表面の材質又は表面の加工状態の少なくともいずれかに基づいてライト3が光を照射する条件を決定してもよい。当該条件は、例えば光の強度、色又は照射方向である。
【0075】
測定制御部154は、例えば、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、ワークWの被測定位置付近の表面における光の反射率が閾値未満であると判定した場合、第1強度の光をライト3に照射させる。一方、測定制御部154は、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて、ワークWの被測定位置付近の表面における光の反射率が閾値以上であると判定した場合、第1強度よりも小さな第2強度の光をライト3に照射させる。測定制御部154は、複数の被測定位置それぞれにおける表面の状態によってライト3が照射する光の強度を変化させることにより、複数の被測定位置における照度が一定になるようにしてもよい。測定制御部154がこのようにライト3が発する光の強度を制御することで、被測定位置によらず同一の測定条件でセンサ2がワークWを測定することができるので、測定精度が向上する。
【0076】
測定制御部154は、被測定位置を視認したときの色が一定の範囲になるように、ワークWの被測定位置の色に基づいてライト3が発する光を制御してもよい。測定制御部154は、被測定位置の近傍の領域を視認したときの色が一定の範囲になるように、ライト3が光を照射する方向を制御してもよい。
【0077】
[制御装置10における処理の流れ]
図7は、制御装置10における処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、ワークWの測定を開始する指示を制御装置10が取得した時点から開始している。
【0078】
主制御部151は、設計データを格納している外部のコンピュータからCADデータを取得する(S11)。続いて、主制御部151は、移動制御部152にロボット1を制御させ、位置決定部153にカメラ4を制御させることにより、複数の撮像画像データを生成させる(S12)。続いて、位置決定部153は、CADデータ又は複数の撮像画像データの少なくともいずれかを用いることにより、複数の被測定位置それぞれにおける法線方向を特定し(S13)、法線方向に基づいて複数の測定位置及びセンサ2の方向を決定する(S14)。
【0079】
続いて、主制御部151はセンサ2による測定を行うために、移動制御部152に対して、複数の測定位置にロボット1を移動させるように指示するとともに、測定を開始するように測定制御部154に指示する。移動制御部152は、位置決定部153から入力された経路情報に基づいて、最初の測定位置にセンサ2を移動させる(S15)。また、移動制御部152は、最初の測定位置において、センサ2の方向が被測定位置における法線の方向になるようにロボット1のアクチュエータを調整する(S16)。続いて、測定制御部154は、最初の測定位置においてセンサ2に測定を実行させる(S17)。測定制御部154は、測定を実行したことを主制御部151に通知する。
【0080】
主制御部151は、測定を実行したという通知を測定制御部154から受けると、全ての測定位置での測定が終了したか否かを判定する(S18)。主制御部151は、全ての測定位置での測定が終了していないと判定した場合(S18においてNO)、次の測定位置にセンサ2を移動させるように移動制御部152に指示する(S19)。移動制御部152は、指示された測定位置にセンサ2を移動させた後に、移動させた後の測定位置における法線の方向にセンサ2の方向を調整し(S16)、測定制御部154はセンサ2に測定を実行させる(S17)。制御装置10は、全ての測定位置における測定が終了するまで、S16からS19までの処理を繰り返す。
【0081】
全ての測定位置における測定が終了すると(S18においてYES)、主制御部151は、測定データを出力する(S20)。主制御部151は、例えば表示部12に測定データを表示させたり、通信部11を介して外部装置に測定データを送信したりする。
【0082】
[第1変形例]
ロボット1にセンサ2、ライト3又はカメラ4を移動させるために、移動制御部152は、撮像位置又は測定位置を示す座標データを指示値として含む位置制御情報をロボット1に送信する。各種の誤差に起因して、指示値に基づいてロボット1が移動させた後のセンサ2、ライト3又はカメラ4の位置が、指示値が示す位置と一致していないという場合が想定される。このような問題に対応するために、制御装置10は、位置検出部5と補正部155とをさらに有してもよい。
【0083】
図8は、変形例に係る制御装置10の構成の一部を示す図である。位置検出部5は、センサ2、ライト3又はカメラ4の位置を検出するためのデバイスを含んでおり、例えばロボット1の可動範囲内のワークWを撮影することができる位置に固定されたカメラである。補正部155は、位置検出部5が検出したセンサ2、ライト3又はカメラ4の位置に基づいて指示値を補正するための補正情報を移動制御部152に通知する。
【0084】
具体的には、補正部155は、移動制御部152がロボット1に通知した、複数の測定位置にセンサを移動させるための指示値が示す位置と、位置検出部5が検出したセンサの位置との関係に基づいて、指示値を補正するための補正値を算出する。補正部155は、例えば、移動制御部152がロボット1に対して出力した位置制御情報を取得することにより指示値を特定する。補正部155は、特定した指示値が示す座標と位置検出部5から入力された位置検出情報が示すセンサ2の位置の座標との差分値を補正値として算出する。
【0085】
補正部155は、算出した補正値を移動制御部152に通知する。その後、移動制御部152は、経路情報に基づいて決定した指示値を補正値によって補正した値を用いてロボット1に移動させる。制御装置10が、位置検出部5及び補正部155を有することで、測定位置の精度を向上させることができる。
【0086】
[第2変形例]
以上の説明においては、カメラ4により複数の撮像画像データを生成した後に、移動制御部152が複数の撮像画像データに基づいて複数の測定位置を決定し、測定制御部154が複数の測定位置でセンサ2に測定させるという場合を例示した。カメラ4による撮影とセンサ2による測定の順序はこれに限らず、他の順序であってもよい。例えば、カメラ4が1つの第1被測定位置に対応する第1撮像位置で第1撮像画像データを生成した後に、第1被測定位置に対応する第1測定位置でセンサ2が測定する。その後、カメラ4が次の第2被測定位置に対応する第2撮像位置で第2撮像画像データを生成した後に、第2被測定位置に対応する第2測定位置でセンサ2が測定する。
【0087】
[第3変形例]
以上の説明においては、測定装置Sが1つのロボット1によりセンサ2、ライト3及びカメラ4を移動させるという場合を例示したが、測定装置Sは複数のロボット1を用いてセンサ2、ライト3及びカメラ4を移動させてもよい。例えば、第1のロボット1によりカメラ4を用いてワークWを撮影し、第2のロボット1によりセンサ2を用いてワークWを測定してもよい。このように測定装置Sが複数のロボット1を用いることにより、カメラ4がワークWを撮影している間にセンサ2が測定を実行することができるので、測定時間を短縮することができる。
【0088】
[第4変形例]
以上の説明においては、センサ2とライト3とが一体に構成されている場合を例示したが、センサ2とライト3の構造は任意である。例えばライト3は光を照射する向きを変化できるようにロボット1に装着されており、測定制御部154は、センサ2が測定する位置に対応する被測定位置のワークWの形状に基づいてライト3の向きを変化させてもよい。測定制御部154がこのように動作することで、ワークWの形状に応じて最適な向きから光を照射することができるので、測定精度が向上する。
【0089】
[測定装置Sによる効果]
以上説明したように、測定装置Sは、センサ2を三次元空間内で移動させる多軸のロボット1を有しており、制御装置10は、CADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいてワークWの複数の被測定位置それぞれにおける法線方向上の位置である複数の測定位置、及び複数の測定位置それぞれにおける測定方向(すなわちセンサ2の方向)を決定する位置決定部153を有する。
【0090】
位置決定部153がCADデータ又は撮像画像データの少なくともいずれかに基づいて複数の測定位置と、複数の測定位置それぞれにおける測定方向を決定するので、測定装置Sは、測定位置及び測定方向をティーチングすることなく、又は従来の測定装置よりもティーチングする量を削減して測定を実行することができ、測定時間を短縮することができる。そして、測定装置Sが多軸のロボット1を用いてセンサ2を移動させることで、ワークWの形状又はワークWが載置台Bに載置された位置によらず、センサ2は、三次元空間内の任意の測定位置で、被測定位置における法線方向からワークWを測定することができる。その結果、測定装置Sは測定精度を向上させることができる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、以上の説明においては、ティーチングをしないで測定をする場合を例示したが、経路の一部(例えば測定開始位置と終了位置)をティーチングして指定し、指定した位置からカメラ4による撮影を開始したり、センサ2による測定を開始したりしてもよい。装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0092】
1 ロボット
2 センサ
3 ライト
4 カメラ
5 位置検出部
10 制御装置
11 通信部
12 表示部
13 操作部
14 記憶部
15 制御部
31 開口
151 主制御部
152 移動制御部
153 位置決定部
154 測定制御部
155 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8