(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081046
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】繊維集束剤、繊維束、成形材料、及び成形品
(51)【国際特許分類】
D06M 15/568 20060101AFI20220524BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20220524BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220524BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20220524BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20220524BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20220524BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
D06M15/568
C08J5/06 CER
C08J5/06 CEZ
C08G18/00 C
C08G18/65 023
C08G18/72 020
C08G18/80 074
C08G18/48 033
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192337
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 憲治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝史
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB09
4F072AC08
4F072AD44
4F072AG05
4F072AH04
4F072AH23
4F072AK02
4F072AK15
4F072AL02
4J034BA08
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4J034CA05
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4J034CA16
4J034CD01
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4J034DC02
4J034DG03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
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4J034HD04
4J034JA42
4J034QC05
4J034RA09
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC12
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】流動性に優れ、成形品に優れた強度を付与可能な繊維束の製造に使用可能で、保存安定性、配合安定性、及び繊維集束性に優れた繊維集束剤を提供する。
【解決手段】
ブロック化ポリウレタンが水中に分散したブロック化ポリウレタン水分散体を含有する繊維集束剤であって、前記ブロック化ポリウレタンが、ポリエーテルポリオ-ル(A)、ジイソシアネート(B)、ブロック化剤(C)、及びポリアミン(D)の反応物であり、前記ポリエ-テルポリオール(A)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むものであり、前記ジイソシアネート(B)が脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであることを特徴とする繊維集束剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック化ポリウレタンが水中に分散したブロック化ポリウレタン水分散体を含有する繊維集束剤であって、前記ブロック化ポリウレタンが、ポリエーテルポリオ-ル(A)、ジイソシアネート(B)、ブロック化剤(C)、及びポリアミン(D)の反応物であり、前記ポリエ-テルポリオール(A)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むものであり、前記ジイソシアネート(B)が脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであることを特徴とする繊維集束剤。
【請求項2】
前記ブロック化ポリウレタン中の前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来部が、5~20質量%である請求項1記載の繊維集束剤。
【請求項3】
前記ブロック化剤(C)が、ラクタム化合物である請求項1又は2記載の繊維集束剤。
【請求項4】
前記ポリエ-テルポリオール(A)が、ポリエチレングリコールを含むものである請求項1~3いずれか1記載の繊維集束剤。
【請求項5】
さらに、ブロックイソシアネート(E)を含有する請求項1~4いずれか1項記載の繊維集束剤。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項記載の繊維集束剤によって集束されたことを特徴とする繊維束。
【請求項7】
請求項6記載の繊維束及びマトリックス樹脂を含有することを特徴とする成形材料。
【請求項8】
請求項7記載の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維集束剤、繊維束、成形材料、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等のマトリックス樹脂の補強材として用いられ、ガラス繊維や炭素繊維とマトリックス樹脂とから得られる繊維強化プラスチックは、高強度で優れた耐久性の求められる自動車部材や航空機部材として使用されている。
【0003】
前記強化プラスチックに使用する炭素繊維やガラス繊維としては、通常、生産加工性を付与する観点から、繊維集束剤によって概ね数千~数万程度に集束された繊維材料を使用することが多く、種々の集束剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このガラス繊維集束剤は、ブロッキング剤を含む特定のポリウレタン、ポリウレタン-ポリウレアまたはポリウレアに基づく自己架橋性分散物であるが、この集束剤を使用して得られる繊維束をカットして得られたチョップドストランドの、安息角が大きく、マトリックス樹脂と混錬する際のフィーダーからの供給性に問題があった。そこで、流動性に優れ供給性に問題がなく、成形品に優れた強度を付与可能な繊維束の製造に使用可能で、保存安定性、配合安定性、及び繊維集束性に優れた材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、流動性に優れ、成形品に優れた強度を付与可能な繊維束の製造に使用可能で、保存安定性、配合安定性、及び繊維集束性に優れた繊維集束剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定のブロック化ポリウレタンが水中に分散したブロック化ポリウレタン水分散体を含有する繊維集束剤を使用することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ブロック化ポリウレタンが水中に分散したブロック化ポリウレタン水分散体を含有する繊維集束剤であって、前記ブロック化ポリウレタンが、ポリエ-テルポリオ-ル(A)と、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる1以上のジイソシアネート(B)と、ブロック化剤(C)と、鎖伸長剤(D)との反応物であり、前記ポリエ-テル系ポリオール(A)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むものであることを特徴とする繊維集束剤に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維集束剤は、流動性に優れ、成形品に優れた強度を付与可能な繊維束の製造に使用可能で、かつ、保存安定性、配合安定性、及び繊維集束性に優れることから、ガラス繊維や炭素繊維の集束剤に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維集束剤は、ブロック化ポリウレタンが水中に分散したブロック化ポリウレタン水分散体を含有する繊維集束剤であって、前記ブロック化ポリウレタンが、ポリエ-テルポリオ-ル(A)、ジイソシアネート(B)、ブロック化剤(C)、及び鎖伸長剤(D)の反応物であり、前記ポリエ-テルポリオール(A)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むものであり、前記ジイソシアネート(B)が脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるものである。
【0010】
前記ブロック化ウレタンについて説明する。前記ブロック化ウレタンは、ポリエ-テルポリオ-ル(A)と、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる1以上のジイソシアネート(B)と、ブロック化剤(C)と、鎖伸長剤(D)との反応物である。
【0011】
前記ポリエーテルポリオール(A)は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことで、流動性に優れるチョップドストランドが得られるが、さらに、集束性がより向上することから、アルキレンオキサイドが3~20モル付加したものが好ましく、エチレンオキサイドが3~10モル付加したものがより好ましい。
【0012】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の前記ポリエーテルポリオール(A)としては、ポリオキシエチレン構造を有するポリオールを含むことが好ましく、アミノシラン配合安定性がより向上することから、ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。また、成形品のPCT(プレッシャークッカー試験)後の強度低下を防ぐことから、ポリテトラメチレングリコールを含むことが好ましい。これらのポリエーテルポリオール(A)は単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0013】
前記ポリエーテルポリオール(A)中のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、得られたチョップドストランドの安息角を下げて優れた流動性を付与できることから、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0014】
前記ポリエーテルポリオール(A)中のポリオキシエチレン構造を有するポリオールの含有量は、集束剤の水分散性及び保存安定性の点から、10~50質量%が好ましい。
【0015】
前記ブロック化ウレタンのイソシアネート原料として、前記脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートを使用することで、得られたチョップドストランドを使用した成形品の黄変や着色などを抑制することができる。
【0016】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらの脂肪族ジイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
前記脂環式ジイソシアネートとしては、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらの脂環式ジイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
前記ブロック化剤(C)としては、イソシアネート基と反応し、イソシアネート基を保護し得る公知のブロック化剤を使用することができるが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール化合物;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、p-iso-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-iso-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール等のフェノール化合物;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム化合物;N-メチルアセトアミドやアセトアニリド等のN-置換アミド化合物; コハク酸イミド、フタルイミド等のイミド化合物;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等のピラゾール化合物、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン化合物;ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等の炭素原子数2~15の脂肪族第二級アミン化合物;メチルヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の炭素数4~15の脂環式第二級アミン化合物;アニリン、ジフェニルアミン等の芳香族第二級アミン化合物などが挙げられる。これらのブロッ化剤で安定化されたブロックイソシアネ-トは分解温度150℃以上が望ましく、通常の集束剤の乾燥温度、約130℃では分解せず、ナイロン樹脂などに混合して成型する時の温度で分解し活性なイソシアネート基を再生することが望ましいため、これらの中でも、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム及びγ-ブチロラクタム等の炭素数2~6のラクタム化合物が好ましく、ε-カプロラクタムがより好ましい。これらのブロック化剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
前記ポリアミン(D)としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジドプロピルカルバジン酸エステル、セミカルバジド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのポリアミンは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記ブロック化ポリウレタンは、前記ポリエーテルポリオ-ル(A)、前記ジイソシアネート(B)、前記ブロック化剤(C)、及び前記ポリアミン(D)を必須原料とする反応物であるが、その他の化合物を反応させることもできる。
【0021】
前記その他の化合物としては、前記ポリエーテルポリオール(A)以外のポリオール、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル等が挙げられるが、水分散性がより向上することから、カルボキシル基を有するポリオール、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルを使用することが好ましい。
【0022】
前記カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられるが、2,2-ジメチロールプロピオン酸が好ましい。これらは単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
前記ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルとしては、乳化分散性、保存安定性の観点から、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基であるものが好ましく、メチル基であるものがより好ましい。これらは単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記ブロック化ポリウレタン中の前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来部は、得られたチョップドストランドの安息角を下げて優れた流動性を付与できることから、5~20質量%が好ましい。
【0025】
前記ブロック化ポリウレタン中には、乳化分散性、保存安定性の点から、ポリオキシエチレン構造を1~15質量%有することが好ましく、3~10質量%有することがより好ましい。
【0026】
前記ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は、繊維束の集束性や、繊維束から得られたチョップドストランドの安息角を低下させる点から、5000~20000が好ましい。
【0027】
前記ブロック化ポリウレタンは、例えば、無溶剤下または有機溶剤の存在下で、ポリエーテルポリオ-ル(A)、ジイソシアネート(B)、ブロック化剤(C)、及びポリアミン(D)、必要に応じて、その他の化合物を、従来知られた方法でウレタン化反応させることによって製造することができる。具体的には、安全性を考慮し、50~120℃の反応温度で、1~15時間反応させることが好ましい。
【0028】
前記ポリアミン(D)は、例えば、ポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3~1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0029】
前記ウレタン化反応は、無触媒下で行うこともできるが、公知の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩等を使用してもよい。
【0030】
前記ブロック化ポリウレタン水分散体は、前記ブロック化ポリウレタンが水中に分散したものであるが、水以外の水と混和する有機溶剤を含有することもできる。前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール化合物;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル化合物;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム化合物、などが挙げられる。安全性や環境に対する負荷の点から、有機溶剤は含有しないことが好ましい。
【0031】
前記ブロック化ポリウレタンを水中に分散する方法としては、公知の水分散方法を利用できるが、乳化分散安定性に優れることから、前記ブロック化ポリウレタンに導入されたカルボキシル基を塩基性化合物で中和し、水を添加する方法が好ましい。
【0032】
前記塩基性化合物としては、例えば、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。
【0033】
前記塩基性化合物の有する塩基性基と前記ブロック化ポリウレタン中のカルボキシル基との当量比(塩基性基/カルボキシル基)は、乳化分散安定性及び貯蔵安定性の観点から、0.8~2.0が好ましい。
【0034】
本発明の繊維集束剤中の固形分の質量比率は、保存安定性及び塗工作業性がより向上することから、2~80質量%の範囲であることが好ましく、10~70質量%の範囲であることがより好ましい。
【0035】
また、本発明の繊維集束剤は、必要に応じて、ブロックイソシアネート化合物(E)、シランカップリング剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤を併用することができる。
【0036】
前記ブロックイソシアネート(E)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートもしくは4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートのような有機ジイソシアネート化合物、これら化合物と多価アルコール、低分子量水酸基含有ポリエステル樹脂、低分子量水酸基含有アルキド樹脂又は水等との付加物、前記した有機ジイソシアネート化合物同士の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、ウレトジオン化合物を含む。)などを、オキシム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、ジケトン化合物等の公知慣用のブロック化剤でブロック化して得られるブロックイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、ブロック化剤で安定化されたブロックイソシアネ-トの分解温度が150℃以上が望ましく、通常の集束剤の乾燥温度、約130℃では分解せず、ナイロン樹脂などに混合して成型する時の温度で分解し活性なイソシアネート基を再生させる点、更には、成形品のPCT処理後の強度低下を防ぐことから、前記した有機ジイソシアネート化合物同士の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、ウレトジオン化合物を含む。)をε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム化合物でブロック化したものが好ましい。なお、これらのブロックイソシアネートは単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
本発明の繊維集束剤を、ガラス繊維の集束剤に使用する場合には、前記ガラス繊維に対する集束剤の接着強さをより一層向上するうえでシランカップリング剤を組み合わせ使用することが好ましい。
【0038】
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N,N-ジ-2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトフェニルトリメトキシシラン等を使用することができる。
【0039】
前記シランカップリング剤は、前記ブロック化ポリウレタン100質量部に対して1~30質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0040】
また、本発明の繊維集束剤は、例えば、酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエマルジョン;スチレン-ブタジエン系、アクリロニトリル-ブタジエン系、アクリル-ブタジエン系等のラテックス、更には、ポバールやセルロース等の水溶性樹脂等と組み合わせ使用することもできる。
【0041】
本発明の繊維集束剤は、例えばガラス繊維や炭素繊維等の糸切れや毛羽立ち等を防止することを目的として、複数の繊維の集束や表面処理に使用できる。
【0042】
本発明の繊維集束剤を用いて処理可能な繊維材料としては、例えばガラス繊維や炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、パルプ、麻、綿、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリイミド、あるいはケブラー、ノーメックス等のアラミド等からなるポリアミド繊維等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維や炭素繊維は、高強度であることから使用することが好ましい。
【0043】
前記繊維集束剤を用いて処理可能なガラス繊維としては、例えば含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等を原料にして得られたものを使用することができるが、特に、経時劣化も少なく機械的特性が安定している無アルカリガラス(Eガラス)を使用することが好ましい。
【0044】
また、前記繊維集束剤を用いて処理可能な炭素繊維としては、一般にポリアクリロニトリル系、ピッチ系等の炭素繊維を使用することができる。なかでも、前記炭素繊維としては、優れた強度を付与する観点から、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維を使用することが好ましい。
【0045】
また、前記炭素繊維としては、より一層優れた強度等を付与する観点から、0.5~20μmの単糸径を有するものを使用することが好ましく、2~15μmのものを使用することがより好ましい。
【0046】
前記炭素繊維としては、例えば撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維としてはフィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー等のものを使用することができる。
【0047】
前記ガラス繊維や炭素繊維を、本発明の繊維集束剤を用いて集束化し、前記ガラス繊維束や炭素繊維束の表面に、皮膜を形成する方法としては、例えば、繊維集束剤をキスコーター法、ローラー法、浸漬法、スプレー法、刷毛などその他公知の方法で、繊維表面に繊維集束剤を均一に塗布する方法が挙げられる。前記繊維集束剤が溶媒として水性媒体や有機溶剤を含む場合には、前記塗布後に加熱ローラーや熱風、熱板等を用いて、加熱乾燥することが好ましい。
【0048】
前記繊維材料の表面に形成された皮膜の付着量は、集束化され表面処理の施された繊維束の全質量に対して0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~1.5質量%であることがより好ましい。
【0049】
前記方法で得られた集束化され表面処理の施された繊維材料、特にガラス繊維や炭素繊維は、後述するマトリックス樹脂(F)等と組み合わせ使用することによって、高強度な成形品を製造するための成形材料に使用することができる。
【0050】
特に、本発明の繊維集束剤によって表面処理の施された繊維材料は、マトリックス樹脂(F)と組み合わせ使用し成形品等を形成した際に、前記繊維とマトリックス樹脂(F)との界面の密着性を著しく向上できるため、成形品の強度を向上することが可能である。
【0051】
前記マトリックス樹脂(F)としては、例えば熱硬化性樹脂(F1)または熱可塑性樹脂(F2)を使用することができる。前記熱硬化性樹脂(F1)としてはフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等を使用することができる。前記熱可塑性樹脂(F2)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等を使用することができる。
【0052】
本発明の繊維集束剤を用いて集束化等された繊維は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンのマトリックス樹脂と組み合わせ使用することが、高強度な成形品を得る上でより好ましい。
【0053】
前記表面処理の施された繊維材料と前記マトリックス樹脂(F)と、必要に応じて重合性単量体等とを含む成形材料としては、例えばプリプレグやシートモールディングコンパウンド(SMC)等が挙げられる。
【0054】
前記プリプレグは、例えば前記マトリックス樹脂(F1)を離型紙上に塗布し、その塗布面に表面処理の施された繊維材料を載置し、必要に応じてローラー等を用いて押圧含浸することによって製造することができる。
【0055】
前記プリプレグを製造する際には、前記マトリックス樹脂(F1)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0056】
また、前記シートモールディングコンパウンドは、例えば前記マトリックス樹脂(F1)と、スチレン等の重合性不飽和単量体との混合物を、前記表面処理の施された繊維材料に十分含浸し、シート状に加工等することによって製造することができる。前記シートモールディングコンパウンドを製造する際には、前記マトリックス樹脂(D1)として、不飽和ポリエステル樹脂や、ビニルエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0057】
前記成形材料の硬化は、例えば加圧または常圧下、加熱または光照射によってラジカル重合させることによって進行する。かかる場合には、公知の熱硬化剤や光硬化剤等を組み合わせ使用することができる。
【0058】
また、前記成形材料としては、例えば前記熱可塑性樹脂(F2)と前記表面処理の施された繊維材料とを加熱下で混練等したものが挙げられる。かかる成形材料は、例えば射出成形法等による二次加工に使用することができる。
【0059】
また、前記熱可塑性樹脂(F2)によるプリプレグは、例えば表面処理の施された繊維材料をシート状に載置し、溶融した前記熱可塑性樹脂(F2)を含浸することによって製造することができる。
【0060】
前記熱可塑性樹脂(F2)によるプリプレグは、例えば1枚以上積層し、次いで加圧または常圧下、加熱し成形すること等による二次加工に使用することができる。
【0061】
前記成形材料を用いて得られた成形品は、高強度であることから、例えば自動車部材や航空機部材、産業用部材等に使用することができる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0063】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0064】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0065】
(合成例1:ブロックイソシアネ-ト(E-1)の合成)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレ-ト(東ソー株式会社製「コロネ-トHX」、NCO当量199.2g/当量)1000質量部、ε-カプロラクタム(関東化学株式会社製;以下、「ブロック化剤(C-1)」と略記する。)575.0質量部を加え、80℃で均一に溶融させた、その後、80℃で赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認するまで反応した。その後、メチルエチルケトン1050質量部を加え均一に溶解して、固形分60質量%のブロックイソシアネ-ト(E-1)を得た。
【0066】
(実施例1:繊維集束剤(1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコ-ル(水酸基価110.2KOHmg/g、三菱ケミカル株式会社製;以下、「ポリエーテルポリオール(A-2)」と略記する。)350質量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド7.5モル付加物(日本乳化剤株式会社製「BA-4JU」;以下、「ポリエーテルポリオール(A-1)」と略記する。)68質量部、ポリエチレングリコ-ル(分子量1000、日油株式会社製;以下、「ポリエーテルポリオール(A-3)」と略記する。)28質量部、トリメチロ-ルプロパン(関東化学株式会社製)17質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)22質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)22質量部、メチルエチルケトン400質量部を加え均一に溶解し、次いで、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート(コベストロ株式会社製「デイスモジュ-ルW」;以下、「ジイソシアネート(B-1)」と略記する。)、320質量部、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(コベストロ株式会社製「デイスモジュ-ルH」;以下、「ジイソシアネート(B-2)」と略記する。)90質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ε-カプロラクタム(関東化学株式会社製;以下、「ブロック化剤(C-1)」と略記する。)98質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、イソフォロンジアミン(コベストロ社製、以下「鎖伸長剤(D-1)」と略記する。)60質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)19質量部をイオン交換水3000質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタン水分散体からなる繊維集束剤(1)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は11,220であった。
【0067】
(実施例2:繊維集束剤(1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(A-2)350質量部、ポリエーテルポリオール(A-1)68質量部、ポリエーテルポリオール(A-3)28質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)18質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)18質量部、メチルエチルケトン400質量部を加え均一に溶解し、次いで、ジイソシアネート(B-1)250質量部、ジイソシアネート(B-2)75質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ブロック化剤(C-1)100質量部、イソホロンジイソシアネート系イソシアヌレート(エボニック社製「VESTNAT T1890/100、NCO当量245.7g/当量」65質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、ブロックイソシアネ-ト(E-1)を、159.2質量部添加して均一に溶解混合した。その後、鎖伸長剤(D-1)45質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)17質量部をイオン交換水3000質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタンの水分散体からなる繊維集束剤(2)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は11,000であった。
【0068】
(実施例3:繊維集束剤(3)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(A-2)350質量部、ポリエーテルポリオール(A-1)68質量部、ポリエチレングリコ-ル(分子量2000、日油株式会社製;以下、「ポリエーテルポリオール(A-4)」と略記する。)28質量部、トリメチロ-ルプロパン(関東化学株式会社製)16質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)22質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)22質量部、メチルエチルケトン400質量部を加え均一に溶解し、次いで、イソフォロンジイソシアネ-ト(エボニック社製「VESTNAT IPDI」;以下、「ジイソシアネート(B-3))と略記する。)270質量部、ジイソシアネート(B-2)90質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ブロック化剤(C-1)98質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、ピペラジン(東ソ-株式会社製;以下、「鎖伸長剤(D-2)」と略記する。)35質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)19質量部をイオン交換水3000質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタン水分散体からなる繊維集束剤(3)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は10,200であった。
【0069】
(実施例4:繊維集束剤(4)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(A-4)350質量部、ポリエーテルポリオール(A-1)68質量部、ポリエーテルポリオール(A-2)30質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)20質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)20質量部、メチルエチルケトン400質量部を加え均一に溶解し、次いで、ジイソシアネート(B-3)220質量部、ジイソシアネート(B-2)70質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ブロック化剤(C-1)100質量部、イソホロンジイソシアネート系イソシアヌレート(エボニック社製「VESTNAT T1890/100、NCO当量245.7g/当量」65質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、IPDIのε-カプロラクタムのブロックイソシアネ-ト(エボニックジャパン株式会社製、VESTAGON B-1530(以下、ブロックイソシアネ-トE-2と記す))135.0質量部添加して均一に溶解混合した。
その後、鎖伸長剤(D-2)30質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)15質量部をイオン交換水3000質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタンの水分散体からなる繊維集束剤(4)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は10,800であった。
【0070】
(実施例5:繊維集束剤(5)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(A-2)350質量部、ポリエーテルポリオール(A-1)75質量部、ポリエーテルポリオール(A-4)64質量部、トリメチロ-ルプロパン(関東化学株式会社製)17質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)22質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)22質量部、メチルエチルケトン450質量部を加え均一に溶解し、次いで、ジイソシアネート(B-1)340質量部、ジイソシアネート(B-2)95質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ブロック化剤(C-1)110質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、鎖伸長剤(D-1)70質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)21質量部をイオン交換水3500質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタン水分散体からなる繊維集束剤(5)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は13,000であった。
【0071】
(実施例6:繊維集束剤(6)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(A-2)350質量部、ポリエーテルポリオール(A-1)70質量部、ポリエチレングリコ-ル(分子量4000、日油株式会社製;以下、「ポリエーテルポリオール(A-5)」と略記する。)40質量部、トリメチロ-ルプロパン(関東化学株式会社製)16質量部、ジメチロ-ルプロピオン酸(パースト-プ株式会社製)22質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数46、日油株式会社製)22質量部、メチルエチルケトン480質量部を加え均一に溶解し、次いで、ジイソシアネート(B-1)320質量部、ジイソシアネート(B-2)90質量部を加え、80℃で理論NCO価が得られるまで反応させた。次に、ブロック化剤(C-1)100質量部をウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで更に80℃で反応させた。その後、鎖伸長剤(D-1)68質量部、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)20質量部をイオン交換水3500質量部に均一に溶解した水溶液を、30分をかけて滴下分散させた。その後、40℃でホ-ルドし赤外線吸収スペクトルにより、反応液中のイソシアネート基の消失を確認した。その後、この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分35質量%のブロック化ポリウレタン水分散体からなる繊維集束剤(6)を得た。ブロック化ポリウレタンの重量平均分子量は13,000であった。
【0072】
(比較例1:繊維集束剤(R1)の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた10Lの4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(AGC株式会社製「エクセノ-ル2020」、水酸基価112.2KOHm/g)1170質量部、ポリエーテル(コベスロ社製「Polyether LB25」、エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能ポリエーテル)135質量部、およびエトキシル化トリメチロールプロパン(日本乳化剤株式会社製「TMP-30」、分子量270、EO付加モル数3.1)122.4質量部を、攪拌、冷却および加熱装置付きの6リットルの反応器に入れ、60℃で均質化し、次に、理論NCO価が得られるまでイソホロンジイソシアネート(コベストロ社製)759質量部と反応させた。次に、ε-カプロラクタム(関東化学株式会社製)94.8質量部をNCO官能性ポリウレタンプレポリマーに添加し、理論NCO分が得られるまで80℃で攪拌し、混合物をアセトン1500質量部で希釈し、赤外線分光分析法によってNCO基が検出されなくなるまで、ヒドラジン23.5質量部および1モルのアクリル酸と1モルのイソフォロンジアミンとの反応生成物125.3質量部の25%水溶液と反応させた。24質量部のIrganox 245(Ciba-Geigy製)を添加した後、44質量部の4,4 '-メチレン-ビス-シクロヘキサンアミンおよび6質量部のトリエチルアミンを水3000質量部で分散させた。アセトンを留去した後、固形分43%を有し、ブロックイソシアネート基および反応性ジアミンを含有する自己架橋性の繊維集束剤(R1)を得た。
【0073】
[保存安定性の評価]
上記で得た繊維集束剤を40℃で30日間静置し、沈殿物の発生や液の固化現象の有無を観察し、保存安定性を評価した。
○:変化なし
△:若干の沈殿物が発生
×:多量の沈殿物が発生、又は固化
【0074】
[アミノシラン配合安定性の評価]
上記で得た繊維集束剤の固形分100質量部に対し、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン10質量部を添加した後、不揮発分が20質量%となるように調製した水希釈液を40℃で3日間静置し、沈殿物の発生や液の固化現象の有無を観察し、アミノシラン配合安定性を評価した。
◎:変化なし
〇:若干の沈殿物が発生
△:やや多めの沈殿物が発生
×:多量の沈殿物が発生、又は固化
【0075】
[チョップドストランドの作製]
上記で得た繊維集束剤8.8質量部(固形分として3質量部)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.3質量部、及びイオン交換水90.9質量部を混合し、ガラス繊維集束剤を調製した。このガラス繊維集束剤を、13μm径のガラス繊維表面に、繊維質量に対し1質量%均一に塗布し、繊維を集束させた後、長さ3mmに切断し、乾燥してチョップドストランドを作製した。
【0076】
[集束性の評価]
上記で得たチョップドストランド50gと、ポリアミド66(ナイロン)樹脂100gとを容積1Lのタンブラーに投入し、10分間混合した後、発生した毛羽を採取してその質量を測定し、下記の基準で評価した。
○:0.15g未満
△:0.15g以上1.5g未満
×:1.5g以上
【0077】
[流動性(安息角)の評価]
上記で得たチョップドストランド50gを用いて,JIS R 9301-2-2の規定に準じ、内径14mmのノズルを有する粉末ロートを使用して安息角を測定し、下記の基準により、流動性を評価した。なお、ロートの足の先端から基盤までの距離については、100mmに設定した。安息角が小さいほどよく滑り、流動性に優れる。
◎:20°未満
〇:20°以上30°未満
△:30°以上50°未満
×:50°以上
【0078】
[成形品の作製]
上記で得たチョップドストランド30質量%、ポリアミド66(ナイロン66)樹脂70質量%からなる混合物を、270℃で加熱しながらエクストル-ダ-によりガラス繊維強化材入りのペレットとした後、このペレットを射出成形することによってFRTP成形品を作製した。
【0079】
[引張強度の評価]
上記で得たFRTP成形品の引張強度をASTM D638に準じ測定した。また、上記で得たFRTP成形品を135℃の条件下、24時間PCT(プレッシャークッカー試験)を実施した後のサンプルについても同様に引張強度を測定し、下記の基準により、成形品の引張強度を評価した。なお、試験片としては、ダンベル型試験片(Type I)を使用した。
◎:100MPa以上
○:90MPa以上100MPa未満
△:70MPa以上90MPa未満
×:70MPa以下
【0080】
上記の実施例1~6及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
本発明の繊維集束剤である実施例1~6は、保存安定性、配合安定性、及び集束性に優れ、流動性に優れる繊維束、引張強度に優れる成形品が得られることが確認された。
【0083】
一方、比較例1は、本発明の要件を満たさないブロック化ポリウレタン水分散体を使用した繊維集束剤の例であるが、得られる繊維束の流動性に劣ることが確認された。