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特開2022-81110インクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子
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  • 特開-インクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081110
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】インクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20220524BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220524BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220524BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C09D11/30
G02B5/20 101
G02B5/20
H05B33/14 A
H05B33/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192446
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
4J039
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA19
2H148BC21
2H148BE03
2H148BE15
2H148BE17
2H148BE22
2H148BF16
2H148BG06
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC07
3K107CC45
3K107EE22
3K107EE25
3K107GG08
4J039AD21
4J039BA07
4J039BA13
4J039BC03
4J039BD02
4J039BE22
4J039BE27
4J039EA27
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化性に優れたインクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子を提供する。
【解決手段】メタルハライドからなる半導体ナノ結晶粒子を含む発光性粒子と、光重合性化合物と、下記一般式(1)、又は(2)で表される光増感剤と、光重合開始剤と、を含有するインクジェット用インク組成物を提供する。

[Rは、炭素原子数2~3のアルキル基等を示し、mは1~4の整数を示す。]

[R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基等を示し、n及びoはそれぞれ独立に0~5の整数を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルハライドからなる半導体ナノ結晶粒子を含む発光性粒子と、光重合性化合物と、光増感剤と、光重合開始剤と、を含有し、
前記光増感剤が、下記一般式(1):
【化1】

[式(1)中、Rは、炭素原子数2~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はアルコキシカルボニル基を示し、mは1~4の整数を示し、mが2~4の整数である場合、複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるチオキサントン化合物、又は、下記一般式(2):
【化2】

[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、又はフェニル基を示し、n及びoはそれぞれ独立に0~5の整数を示し、nが2~5の整数である場合、複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、oが2~5の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるベンゾフェノン化合物である、インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
前記光増感剤が、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン及びベンゾフェノンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤の含有量が、前記インクジェット用インク組成物の全質量を基準として、2~10質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項5】
光散乱性粒子を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項6】
高分子分散剤を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物の硬化物。
【請求項8】
複数の画素部と、当該複数の画素部間に設けられた遮光部と、を備え、
前記複数の画素部は、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク組成物の硬化物を含む発光性画素部を有する、光変換層。
【請求項9】
請求項8に記載の光変換層を備える、カラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを備える、発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの高色域化が強く求められている。そのため、赤色有機顔料粒子又は緑色有機顔料粒子に代えて、量子ドット、量子ロッド、その他の無機蛍光体粒子等の発光性ナノ結晶粒子を用いた、赤色画素、緑色画素等の画素部を有するカラーフィルタの研究が活発化している。カラーフィルタは微細なパターンを有することが望まれる上に、フォトリソグラフィ方式では発光性ナノ結晶粒子の無駄な消費が生じることから、紫外線硬化型インク組成物を用いたインクジェット法(インクジェット方式)により、光変換層を形成することが検討されている。例えば、特許文献1には、コアシェル型の半導体ナノ結晶からなる発光性ナノ結晶粒子を含むインクジェット用インク組成物が開示されている。
【0003】
また、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶、特にペロブスカイト型の結晶構造を有する半導体ナノ結晶が見出され、注目を集めている(例えば、特許文献2参照)。ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶は、例えば、CsPbX(XはCl、BrまたはIを示す。)で表される化合物からなる。ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶は、コアシェル型の半導体ナノ結晶と比較して、粒子サイズ効果に加え、ハロゲン原子の存在割合の調整によっても発光波長を制御することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-76976号公報
【特許文献2】特表2018-506625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶粒子といったメタルハライドからなる半導体ナノ結晶粒子は、紫外領域での吸光度が大きい。そのため、特許文献1に開示のインクジェット用インク組成物において、コアシェル型量子ドットをペロブスカイト型の半導体ナノ結晶粒子に置き換えただけでは、当該インク組成物によって形成された塗膜を十分に硬化させるのが困難であるという不都合があった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、硬化性に優れたインクジェット用インク組成物及びその硬化物、光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶粒子を含む発光性粒子と、光重合性化合物と、光増感剤と、光重合開始剤と、を含有し、
前記光増感剤が、下記一般式(1):
【化1】

[式(1)中、Rは、炭素原子数2~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はアルコキシカルボニル基を示し、mは1~4の整数を示し、mが2~4の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるチオキサントン化合物、又は、下記一般式(2):
【化2】

[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、フェニル基を示し、n及びoはそれぞれ独立に0~5の整数を示し、nが2~5の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、oが2~5の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるベンゾフェノン化合物である、インクジェット用インク組成物に関する。
【0008】
本発明は、インクジェット用インク組成物の硬化物に関する。
【0009】
本発明は、複数の画素部と、当該複数の画素部間に設けられた遮光部と、を備え、複数の画素部は、上記インク組成物の硬化物を含む発光性画素部を有する、光変換層に関する。
【0010】
本発明は、上記光変換層を備えるカラーフィルタに関する。
【0011】
本発明は、上記カラーフィルタを備える発光素子に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することができる。本発明によれば、上記インクジェット用インク組成物の硬化物、当該硬化物を用いた光変換層、カラーフィルタ並びに発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0015】
<インク組成物>
本発明の一実施形態は、インクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)である。一実施形態に係るインク組成物は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶粒子(以下単に「ナノ結晶粒子」ともいう。)を含む発光性粒子と、光重合性化合物と、光増感剤と、光重合開始剤と、を含有する。
【0016】
インク組成物は、例えば、カラーフィルタ等が有する光変換層(光変換層の画素部)を形成するために用いられる、光変換層形成用(例えばカラーフィルタ画素部の形成用)のインク組成物であってよい。上記インク組成物は、インクジェット方式に用いられる組成物(インクジェットインク)である。一実施形態のインク組成物は、光増感剤として一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むことにより、光増感剤及び光重合開始剤の添加量が少なくても、優れた硬化性を確保することができ、光変換層の生産性を向上できる。また、当該インク組成物は、光増感剤として一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むことにより、光増感剤及び光重合開始剤の添加量を少なくすることができるため、粘度の上昇を抑制することができる。そして、上記光増感剤は硬化のために照射された紫外線を吸収するため、当該インク組成物は、当該光増感剤を含まない場合と比較して、ナノ結晶粒子自体の紫外線吸収を抑制することができる。さらに、当該インク組成物は、後述するように適正なインク粘度並びに優れた分散性を備えるために、インクジェットヘッドの詰まりが生じにくくインクジェットヘッドの交換頻度を減らすことができる。
【0017】
<<発光性粒子>>
発光性粒子は、ナノ結晶粒子を含む。ナノ結晶粒子は、メタルハライドからなり、励起光を吸収して、蛍光または燐光を発光するナノサイズの結晶体(ナノ結晶粒子)である。メタルハライドからなる発光性ナノ結晶としては、例えば、後述のペロブスカイト型結晶構造を有する量子ドットが好ましい。ナノ結晶粒子は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光エネルギー又は電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
【0018】
メタルハライドからなるナノ結晶粒子は、一般式:Aで表される化合物である。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲンを含む。
aは、1~7であり、bは、1~4であり、cは、3~16の整数である。
【0019】
一般式Aで表される化合物は、具体的にはAMX、AMX、AMX、AMX、AMX、AM、AMX、AMX、AMX、A、AMX、AMX、AM、AMX、A、AMX、A、A、A10、A16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M)、2種の金属カチオン(M α β)、3種の金属カチオン(M α β γ)、4種の金属カチオン(M α β γ δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X)、2種のハロゲンアニオン(X α β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲンを含む。
【0020】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、上記Mサイトに用いた金属カチオンとは異なる、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0021】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、その粒子サイズ、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、発光性ナノ結晶粒子として利用する上で特に好ましい。この調整操作は簡便に行えるので、ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶粒子は、従来のコアシェル型の半導体ナノ結晶粒子と比較して、発光波長の制御がより容易であり、よって生産性が高いという特徴を有している。具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMXで表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、上記Mサイトに用いた金属カチオンとは異なる、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0022】
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、さらに良好な発光特性を示すために、AはCs、Rb、K、Na、Liであり、Mは1種の金属カチオン(M)、または2種の金属カチオン(M α β)であり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。具体的には、Mは、Ag、Au、Bi、Cu、Eu、Fe、Ge、K、In、Na、Mn、Pb、Pd、Sb、Si、Sn、Yb、Zn、及びZrから選ばれることが好ましい。
【0023】
ペロブスカイト型結晶構造を示すメタルハライドからなる発光性ナノ結晶粒子の具体的な組成として、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr等のMとしてPbを用いたナノ結晶粒子は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsSnBr、CsEuBr、CsYbI等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いた発光性ナノ結晶粒子は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
【0024】
ナノ結晶粒子は、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶であってよく、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶であってよく、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶であってもよい。また、一実施形態において、これらのナノ結晶粒子の組み合わせでもよい。
なお、ナノ結晶粒子の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することできる。
【0025】
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0026】
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0027】
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0028】
ナノ結晶粒子の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。ナノ結晶粒子の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、ナノ結晶粒子の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
【0029】
ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、ナノ結晶粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶粒子は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。
なお、ナノ結晶粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0030】
[表面層]
発光性粒子は、ナノ結晶粒子の表面に形成された表面層を更に含んでいてよい。表面層は、ナノ結晶粒子の表面に結合可能な結合性基及びシロキサン結合を有するシロキサン化合物を含んでいてよい。
【0031】
ナノ結晶粒子の表面に結合可能な結合性基は、ナノ結晶粒子に含まれるカチオンに結合(配位)する結合性基であってよい。結合性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、上述の反応性基よりもナノ結晶粒子に含まれるカチオンに対する親和性が高い。このため、シロキサン化合物は、結合性基をナノ結晶粒子側にして配位し、より容易かつ確実に表面層を有するナノ結晶粒子を形成することができる。
【0032】
シロキサン化合物は、結合性基とシロキサン結合を形成可能な反応性基とを有する前駆体化合物同士の反応によって形成される。反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
【0033】
前駆体化合物としては、結合性基及び反応性基を有する化合物を1種単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前駆体化合物は、カルボキシル基含有ケイ素化合物、アミノ基含有ケイ素化合物、及びメルカプト基含有ケイ素化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有してもよい。
【0035】
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピオン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸、2-、カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
【0036】
アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0037】
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
【0038】
表面層の厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの表面層を有する発光性粒子であれば、ナノ結晶粒子の熱に対する安定性を十分に高めることができる。
なお、表面層の厚さは、前駆体化合物の結合性基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調整することで変更することができる。
【0039】
表面層は、ナノ結晶粒子の原料化合物を含む溶液と、前駆体化合物を含む溶液とを混合した後に、析出したナノ結晶粒子の表面に配位子した反応性基を縮合させることを含む方法によって、形成することができる。
【0040】
[中空粒子]
発光性粒子は、ナノ結晶粒子を収容した内側空間、及び該内側空間に連通する細孔を有する中空粒子を更に備えるものであってもよい。中空粒子の内部にナノ結晶粒子が収容されていることにより、発光性粒子の酸素ガス、水分に対する安定性を更に向上させることができる。
【0041】
中空粒子は、球状(真球状)、細長い球状(楕円球状)または立方体状形態(直方体、立方体を含む)をなすものであってもよい。中空粒子は、バルーン構造を有する粒子と呼ぶこともできる。
【0042】
内側空間には、1個のナノ結晶粒子が存在していてもよく、複数個のナノ結晶粒子が存在していてもよい。また、内側空間は、1個または複数のナノ結晶粒子によって全体が占有されていてもよく、一部のみが占有されていてもよい。
【0043】
中空粒子としては、ナノ結晶粒子を保護できるものであれば、どのような材料であってもかまわない。合成の容易さ、透過率、コスト等の観点から、中空粒子としては、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子、中空酸化チタン粒子または中空ポリマー粒子であることが好ましく、中空シリカ粒子または中空アルミナ粒子であることがより好ましく、中空シリカ粒子であることがさらに好ましい。
【0044】
中空粒子の平均外径は、特に限定されないが、5~300nmであることが好ましく、6~100nmであることがより好ましく、8~50nmであることがさらに好ましく、10~25nmであることが特に好ましい。また、中空シリカ粒子の平均内径も、特に限定されないが、1~250nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましく、3~50nmであることがさらに好ましく、5~15nmであることが特に好ましい。かかるサイズの中空粒子であれば、ナノ結晶粒子の熱に対する安定性を十分に高めることができる。
【0045】
細孔のサイズは、特に限定されないが、0.5~10nmであることが好ましく、1~5nmであることがより好ましい。この場合、ナノ結晶粒子の原料化合物を含有する溶液を内側空間内に円滑かつ確実に充填することができる。
【0046】
中空シリカ粒子には、市販品を使用することもできる。かかる市販品としては、例えば、日鉄鉱業株式会社製の「SiliNax(登録商標) SP-PN(b)」等が挙げられる。中空粒子は、半導体ナノ結晶粒子の安定化に加えて、発光性及びインク等への分散特性の点から、中空シリカ粒子であることが好ましい。
【0047】
例えば、中空粒子に、ナノ結晶粒子の原料化合物を含む溶液を含侵し、乾燥することにより、中空粒子の内側空間内に、ナノ結晶粒子を析出させることによって中空粒子の内側空間にナノ結晶粒子が収容される。
【0048】
[ポリマー層]
発光性粒子は、疎水性ポリマーを含有するポリマー層を更に含んでいてよい。ポリマー層は、ナノ結晶粒子を含む発光性粒子の最外層に位置していてよい。例えば、発光性粒子が表面層を有する場合、ポリマー層は、表面層の少なくとも一部を被覆する層であってよい。発光性粒子が中空シリカを含む場合、ポリマー層は、中空シリカの少なくとも一部を被覆する層であってよい。ナノ結晶粒子がポリマー層を有する場合、酸素及び水分に対する高い安定性を発光性粒子に付与することができる。また、ポリマー層を有する発光性粒子を用いてインク組成物を調製した際には、発光性粒子の分散安定性も向上することができる。ポリマー層を有していると、インク組成物を調製した際に発光性粒子が凝集しにくくなり、凝集による発光特性の低下が生じ難くなる傾向がある。
【0049】
ポリマー層は、被覆対象の粒子(以下、「母粒子」ともいう。)の表面を疎水性ポリマーで被覆することによって形成される。ポリマー層は、母粒子、非水溶媒および重合体(P)の存在下で、単量体(M)を重合させることによって形成される。
【0050】
[非水溶媒]
非水溶媒は、疎水性ポリマーを溶解し得る有機溶媒が好ましく、母粒子を均一に分散可能であれば、さらに好ましい。このような非水溶媒を用いることにより、非常に簡便に疎水性ポリマーを母粒子に吸着させてポリマー層を被覆させることができる。さらに、好ましくは、非水溶媒は低誘電率溶媒である。低誘電率溶媒を用いることにより、疎水性ポリマーと母粒子とを当該非水溶媒中で混合するだけで、疎水性ポリマーが母粒子表面に強固に吸着し、ポリマー層を被覆させることができる。
このようにして得られたポリマー層は、発光性粒子を溶媒で洗浄しても、母粒子から除去され難い。さらに、非水溶媒の誘電率は低いほど好ましい。具体的には、非水溶媒の誘電率は、好ましくは10以下であり、さらに好ましくは6以下であり、特に好ましくは5以下である。好ましい非水溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒および脂環式炭化水素系溶媒であり、少なくとも一方を含む有機溶媒であることが好ましい。
【0051】
脂肪族炭化水素系溶媒または脂環式炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、非水溶媒として、脂肪族炭化水素系溶媒および脂環式炭化水素系溶媒の少なくとも一方に、他の有機溶媒を混合した混合溶媒を使用してもよい。かかる他の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アミルのようなエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノールのようなアルコール系溶媒等が挙げられる。
混合溶媒として使用する際には、脂肪族炭化水素系溶媒および脂環式炭化水素系溶媒の少なくとも一方の使用量を、50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上とすることがより好ましい。
【0052】
[重合体(P)]
重合体(P)は、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体である。重合体(P)として、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)または重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B、C)を主成分とする重合性不飽和単量体の共重合体に重合性不飽和基を導入したポリマー、あるいは、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)または重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B、C)を主成分とする重合性不飽和単量体の共重合体からなるマクロモノマー等を使用することができる。
【0053】
アルキル(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。ここで、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの双方を意味する。「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
【0054】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)としては、下記式(B1-1)~(B1-7)で表されるメタクリレート、下記(B1-8)~(B1-15)で表されるアクリレート等が挙げられる。なお、これらの化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
また、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖と、その両末端に重合性不飽和基とを有する化合物が挙げられる。
含フッ素化合物(C)の具体例としては、下記式(C-1)~(C-13)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(C-1)~(C-13)中の「-PFPE-」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
中でも、含フッ素化合物(C)としては、工業的製造が容易である点から、上記式(C-1)、(C-2)、(C-5)または(C-6)で表される化合物が好ましく、母粒子の表面への絡み易い重合体(P)を合成可能である点から、上記式(C-1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアクリロイル基を有する化合物、または上記式(C-2)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にメタクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
【0060】
また、重合体(P)として、上記アルキル(メタ)アクリレート(A)および含フッ素化合物(B、C)以外の化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニル系化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート系化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル系化合物、安息香酸ビニル、「ベオバ」(オランダ国シェル社製のビニルエステル)のようなビニルエステル系化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、アルキル(メタ)アクリレート(A)または含フッ素化合物(B、C)とのランダム共重合体として使用することが好ましい。これにより、得られる重合体(P)の非水溶媒への溶解性を十分に高めることができる。
【0061】
重合体(P)として使用可能な化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレートのような直鎖状または分岐状の炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)を使用することが好ましい。
【0062】
これらの化合物を常法によって重合することによって当該化合物の共重合体を得た後に、当該共重合体に重合性不飽和基を導入することにより、重合体(P)が得られる。
【0063】
重合性不飽和基の導入方法としては、例えば、予め共重合成分としてアクリル酸、メタクリル酸のようなカルボン酸基含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボン酸基またはアミノ基を有する共重合体を得た後、このカルボン酸基またはアミノ基にグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法を挙げることができる。
【0064】
[単量体(M)]
単量体(M)は、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体である。単量体(M)としては、例えば、反応性極性基(官能基)を有さないビニル系モノマー類、アミド結合含有ビニル系モノマー類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類、リン原子含有ビニル系モノマー類、水酸基含有重合性不飽和単量体類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ基含有重合性不飽和単量体類、イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類、アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類、カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類等が挙げられる。
【0065】
反応性極性基を有さないビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンのようなオレフィン類等が挙げられる。
アミド結合含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アルコキシ化N-メチロール化(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0066】
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類等が挙げられる。
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスファイト類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類等が挙げられる。
リン原子含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、上記(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類または(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類のアルキレンオキシド付加物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有ビニル系モノマーとリン酸、亜リン酸またはこれらの酸性エステル類とのエステル化合物、3-クロロ-2-アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
水酸基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価のアルコールとのモノエステル類のような重合性不飽和カルボン酸類;上記重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とポリカルボン酸の無水物(マレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸等)との付加物等の各種不飽和カルボン酸類と1価のカルボン酸のモノグリシジルエステル(やし油脂肪酸グリシジルエステル、オクチル酸グリシジルエステル等)、ブチルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のモノエポキシ化合物との付加物またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;ヒドロキシビニルエーテル等が挙げられる。
【0068】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類の具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、重合性不飽和カルボン酸類、水酸基含有ビニルモノマーと上記ポリカルボン酸の無水物との等モル付加物(モノ-2-(メタ)アクリロイルオキシモノエチルフタレート等)のような各種不飽和カルボン酸に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する各種ポリエポキシ化合物を等モル比で付加反応させて得られるエポキシ基含有重合性化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、(β-メチル)グルシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグルシジルエーテル等が挙げられる。
【0069】
イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの等モル付加物、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアネート基およびビニル基を有するモノマー等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、ビニルエトキシシラン、α-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートのようなシリコーン系モノマー類等が挙げられる。
【0070】
カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル類のようなα,β-エチレン性不飽和カルボン酸類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチル-モノブチルフマレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのようなα,β-不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル類とマレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸のようなポリカルボン酸の無水物との付加物等が挙げられる。
【0071】
中でも、単量体(M)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートのような炭素原子数3以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0072】
ポリマー層は、母粒子、非水溶媒および重合体(P)の存在下で、単量体(M)を重合させることで形成される。
母粒子と重合体(P)とは、重合を行う前に混合することが好ましい。混合には、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を使用することができる。
ポリマー層を形成する際に使用する母粒子の形態は、特に限定されず、スラリー、ウエットケーキ、粉体等のいずれであってもよい。
母粒子と重合体(P)との混合後に、単量体(M)および後述する重合開始剤をさらに混合し、重合を行うことにより、重合体(P)と単量体(M)との重合物で構成されるポリマー層が形成される。これにより、発光性粒子が得られる。
【0073】
この際、重合体(P)の数平均分子量は、1,000~500,000であることが好ましく、2,000~200,000であることがより好ましく、3,000~100,000であることがさらに好ましい。このような範囲の分子量を有する重合体(P)を用いることにより、母粒子の表面に良好にポリマー層を被覆し得る。
また、重合体(P)の使用量は、目的に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、通常、100質量部の母粒子に対して、0.5~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましく、2~35質量部であることがさらに好ましい。
また、単量体(M)の使用量も、目的に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、通常、100質量部の母粒子に対して、0.5~40質量部であることが好ましく、1~35質量部であることがより好ましく、2~30質量部であることがさらに好ましい。
【0074】
最終的に母粒子の表面を被覆する疎水性ポリマーの量は、100質量部の母粒子に対して、1~60質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~40質量部であることがさらに好ましい。
この場合、単量体(M)の量は、100質量部の重合体(P)に対して、通常、10~100質量部であることが好ましく、30~90質量部であることがより好ましく、50~80質量部であることがさらに好ましい。
ポリマー層の厚さは、0.5~100nmであることが好ましく、0.7~50nmであることがより好ましく、1~30nmであることがさらに好ましい。ポリマー層の厚さが0.5nm未満であると、分散安定性が得られない場合が多い。ポリマー層の厚さが100nmを超えると母粒子を高濃度で含有させることが困難となる場合が多い。かかる厚さのポリマー層で母粒子を被覆することにより、発光性粒子の酸素、水分に対する安定性をより向上させることができる。
【0075】
母粒子、非水溶媒および重合体(P)の存在下における単量体(M)の重合は、公知の重合方法によって行うことができるが、好ましくは重合開始剤の存在下で行われる。
かかる重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルハイドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒に難溶の重合開始剤は、単量体(M)に溶解した状態で、母粒子と重合体(P)とを含む混合液に添加することが好ましい。
【0076】
また、単量体(M)または重合開始剤を溶解した単量体(M)は、重合温度に達した混合液に滴下法により添加して重合させてもよいが、昇温前の常温の混合液に添加し、充分に混合した後に昇温して重合させるのが安定であり好ましい。
重合温度は、60~130℃の範囲であることが好ましく、70~100℃の範囲であることがより好ましい。かかる重合温度で単量体(M)の重合を行えば、ナノ結晶粒子の形態変化(例えば、変質、結晶成長等)を好適に防止することができる。
単量体(M)の重合後、母粒子表面に吸着しなかったポリマーを除去して発光性粒子を得る。吸着しなかったポリマーを除去する方法としては、遠心沈降、限外ろ過が挙げられる。遠心沈降では、母粒子と吸着されなかったポリマーとを含む分散液を高速で回転させ、当該分散液中の母粒子を沈降させて、吸着しなかったポリマーを分離する。限外ろ過では、母粒子と吸着されなかったポリマーとを含む分散液を適切な溶媒で希釈し、適切な孔サイズを有するろ過膜に当該希釈液を通して、吸着されなかったポリマーと母粒子とを分離する。以上のようにして、ポリマー層を有する発光性粒子が得られる。発光性粒子は、分散媒あるいは光重合性化合物に分散させた状態で(すなわち、分散液として)保存してもよく、分散媒を除去して粉体(発光性粒子単体の集合体)として保存してもよい。
【0077】
インク組成物中の発光性粒子の含有量は、好ましくは、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であり、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下である。発光性粒子の含有量を前記範囲に設定することにより、インク組成物をインクジェット印刷法により吐出する場合には、その吐出安定性をより向上させることができる。また、発光性粒子同士が凝集し難くなり、得られる発光層(光変換層)の外部量子効率を高めることもできる。
【0078】
インク組成物は、発光性粒子として、赤色発光性粒子、緑色発光性粒子及び青色発光性粒子のうちの2種以上を含んでいてもよいが、これらの粒子のうちの1種のみを含むことがより好ましい。インク組成物が赤色発光性粒子を含む場合、緑色発光性粒子の含有量及び青色発光性粒子の含有量は、発光性粒子の全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。インク組成物が緑色発光性粒子を含む場合、赤色発光性粒子の含有量及び青色発光性粒子の含有量は、発光性粒子の全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
【0079】
<<光重合性化合物>>
光重合性化合物は、重合性官能基を有し、光の照射によって重合する化合物である。光重合性化合物は、好ましくは光の照射によって重合する光ラジカル重合性化合物である。光重合性化合物は、光重合性のモノマー又はオリゴマーであってよい。これらは、光重合開始剤と共に用いられる。インク組成物は、光重合性化合物を1種含有してもよく、2種以上含有してもよく、好ましくは2種以上含有する。
【0080】
光重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー(以下、「エチレン性不飽和モノマー」ともいう。)等が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和結合(炭素-炭素二重結合)を有するモノマーを意味する。エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等のエチレン性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。これらの基を有するモノマーは、「ビニルモノマー」と称される場合がある。
【0081】
エチレン性不飽和モノマーにおけるエチレン性不飽和結合の数(例えばエチレン性不飽和基の数)は、例えば、1~3である。エチレン性不飽和モノマーは1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。光重合性化合物は、エチレン性不飽和基を1個有するモノマー(単官能モノマー)と、エチレン性不飽和基を2個以上有するモノマー(多官能モノマー)とを含んでいてよく、単官能モノマーと、エチレン性不飽和基を2個有するモノマー(二官能モノマー)及びエチレン性不飽和基を3個有するモノマー(三官能モノマー)からなる群より選択される少なくとも1種とを含んでいてよい。光重合性化合物は、2種以上の単官能モノマーを含んでいてよく、2種以上の単官能モノマーと、1種又は2種の多官能モノマーとを含んでいてよく、2種の単官能モノマーと、二官能モノマー及び三官能モノマーからなる群より選択される少なくとも1種とを含んでいてよい。
【0082】
エチレン性不飽和基は、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等であってよく、好ましくは(メタ)アクリロイル基である。但し、特許文献1に開示のインク組成物で使用されている(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーは、水溶性を示すことから、メタルハライドからなるナノ結晶粒子を溶解しやすく、経時にて著しく発光特性を低下させるため、本発明のインク組成物中に用いることは好ましくない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」との表現についても同様である。「(メタ)アクリルアミド基」とは、「アクリルアミド基」及び「メタクリルアミド基」を意味する。
【0083】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートであってよく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレートであってもよい。インク組成物を調製した際の流動性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光性粒子塗膜製造時における硬化収縮に起因する平滑性の低下を抑制し得る観点から、光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含むことが好ましい。
【0084】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0085】
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等であってよく、例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等であってよい。
【0086】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0087】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0089】
インク組成物において、硬化可能成分を、光重合性化合物のみまたはそれを主成分として構成する場合には、上記したような光重合性化合物としては、重合性官能基を1分子中に2以上有する2官能以上の多官能の光重合性化合物を必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
【0090】
また、該インク組成物を調製した際の粘度安定性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光性粒子塗膜の製造時における硬化収縮に起因する塗膜の平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0091】
光重合性化合物の分子量は、例えば、50以上であり、100以上又は150以上であってもよい。光重合性化合物の分子量は、例えば、500以下であり、400以下又は300以下であってもよい。インクジェットインクとしての粘度と、吐出後のインクの揮発性を両立しやすい観点から、好ましくは50~500であり、より好ましくは100~400である。
【0092】
インク組成物の硬化物の表面のべたつき(タック)を低減する観点では、光重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。環状構造は、芳香環構造であっても非芳香環構造であってもよい。環状構造の数(芳香環及び非芳香環の数の合計)は、1又は2以上であるが、3以下であることが好ましい。環状構造を構成する炭素原子の数は、例えば、4以上であり、5以上又は6以上であることが好ましい。炭素原子の数は、例えば20以下であり、18以下であることが好ましい。
【0093】
芳香環構造は、炭素数6~18の芳香環を有する構造であることが好ましい。炭素数6~18の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環構造は、芳香族複素環を有する構造であってもよい。芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、ピラン環、ピリジン環等が挙げられる。芳香環の数は、1であっても、2以上であってもよいが3以下であることが好ましい。有機基は、2以上の芳香環が単結合により結合した構造(例えば、ビフェニル構造)を有していてもよい。
【0094】
非芳香環構造は、例えば、炭素数5~20の脂環を有する構造であることが好ましい。炭素数5~20の脂環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環等のシクロアルケン環などが挙げられる。脂環は、ビシクロウンデカン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、イソボルニル環等の縮合環であってもよい。非芳香環構造は、非芳香族複素環を有する構造であってもよい。非芳香族複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、テトラヒドロピラン環、ピぺリジン環等が挙げられる。
【0095】
環状構造を有するラジカル重合性化合物は、好ましくは、環状構造を有する単官能又は多官能(メタ)アクリレートであり、より好ましくは環状構造を有する単官能(メタ)アクリレートである。具体的には、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく用いられる。
【0096】
環状構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、インク組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、優れた吐出性が得られやすい観点から、インク組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、3~85質量%であることが好ましく、5~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、15~35質量%であることが特に好ましい。
【0097】
優れた吐出性が得られやすい観点では、インク組成物として、炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、炭素数が4以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物を用いることがより好ましい。該直鎖構造とは、炭素数3以上の炭化水素鎖を表す。直鎖構造を有するラジカル重合性化合物は、直鎖構造を構成する炭素原子に直結した水素原子がメチル基又はエチル基に置換されていてもよいが、置換される数は3以下であることが好ましい。炭素数が4以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物は、該直鎖構造が水素原子以外の原子が枝分かれせずに連なっている構造であることが好ましく、炭素原子及び水素原子の他に、酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。すなわち、直鎖構造は、炭素原子が直鎖状に3つ以上連続する構造に限られず、3つ以上の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子を介して結直鎖状に連なる構造であってもよい。直鎖構造は、不飽和結合を有していてもよいが、好ましくは飽和結合のみからなる。直鎖構造を構成する炭素原子の数は、好ましくは5以上であり、より好ましくは6以上であり、更に好ましくは7以上である。直鎖構造を構成する炭素原子の数は、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは15以下である。なお、炭素数の合計が3以上である直鎖構造(直鎖構造を形成する炭素原子に直結した水素原子が置換されたメチル基又はエチル基の炭素原子は数に含まない)を有するラジカル重合性化合物は、吐出性の観点から、環状構造を有しないことが好ましい。
【0098】
直鎖構造は、例えば、炭素数が4以上の直鎖アルキル基を有する構造であることが好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に上記直鎖アルキル基が直接結合してなるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0099】
直鎖構造は、例えば、炭素数が4以上の直鎖アルキレン基を有する構造であることが好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基等が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基が上記直鎖アルキレン基で結合されてなるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0100】
直鎖構造は、例えば、直鎖アルキル基と1以上の直鎖アルキレン基が酸素原子を介して結合した構造(アルキル(ポリ)オキシアルキレン基を有する構造)であることが好ましい。直鎖アルキレン基の数は2以上であり、6以下であることが好ましい。直鎖アルキレン基の数が2以上である場合、2以上のアルキレン基は、同一であっても異なっていてもよい。直鎖アルキル基及び直鎖アルキレン基の炭素数は、1以上であればよく、2以上又は3以上であってもよいが、4以下であることが好ましい。直鎖アルキル基としては、上述した炭素数が4以上の直鎖アルキル基の他、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。直鎖アルキレン基としては、上述した炭素数が4以上の直鎖アルキレン基の他、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に上記アルキル(ポリ)オキシアルキレン基が直接結合してなるアルキル(ポリ)オキシアルキレン(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0101】
炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、優れた吐出性が得られやすい観点、インク組成物の硬化性に優れる観点、インク組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点から、インク組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、10~90質量%であることが好ましく、15~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。
【0102】
光重合性化合物としては、画素部の表面の均一性に優れる観点から、2種以上のラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、上述した環状構造を有するラジカル重合性化合物と、上述した炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物と、を組み合わせて用いることがより好ましい。外部量子効率を向上させるために、発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の量を増やした場合には、画素部の表面の均一性が低下することがあるが、このような場合にも、上記光重合性化合物の組み合わせによれば、表面の均一性に優れた画素部が得られる傾向がある。
【0103】
インク組成物中に含まれる光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、インク組成物の全質量を基準として、70~95質量%であることが好ましく、75~94質量%であることがより好ましく、80~93質量%であることがさらに好ましい。
【0104】
<<光重合開始剤>>
光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤である。光重合開始剤は、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物およびオキシムエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてよい。
【0105】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、式(b-1)で表される化合物が挙げられる。
【化7】

(式中、R1aは、下記式(R1a-1)~式(R1a-6)から選ばれる基を表し、R2a、R2bおよびR2cは、それぞれ独立して、下記式(R-1)~式(R-8)から選ばれる基を表す。)
【0106】
【化8】

【化9】
【0107】
上記式(b-1)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-1-1)~式(b-1-7)で表される化合物であってよく、下記式(b-1-1)、または式(b-1-7)で表される化合物が好ましい。
【化10】
【0108】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、式(b-2)で表される化合物が挙げられる。
【化11】

(式中、R24はアルキル基、アリール基または複素環基を表し、R25およびR26は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、複素環基またはアルカノイル基を表すが、これらの基は、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールチオ基で置換されてもよい。)
【0109】
上記式(b-2)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-2-1)~式(b-2-5)で表される化合物が好ましく、下記式(b-2-1)または式(b-2-5)で表される化合物がより好ましい。
【化12】
【0110】
オキシムエステル化合物としては、例えば、下記式(b-3-1)または式(b-3-2)で表される化合物が挙げられる。
【化13】

(式中、R27~R31は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~12の環状、直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、またはフェニル基を表し、各アルキル基およびフェニル基は、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシル基およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子または窒素原子を表し、Xは、酸素原子またはNRを表し、Rは炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0111】
上記式(b-3-1)および式(b-3-2)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-3-1-1)~式(b-3-1-2)および下記式(b-3-2-1)~(b-3-2-2)で表される化合物が好ましく、下記式(b-3-1-1)、式(b-3-2-1)または式(b-3-2-2)で表される化合物がより好ましい。
【化14】

【化15】
【0112】
光重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0113】
光重合開始剤は、硬化に使用する紫外線波長領域に対応した紫外線吸収帯を有する化合物を用いる。例えば、UVB(300~350nm)の場合には、Omnirad907、等を用いることができ、UVA(350~400nm)の場合には、OmniradTPO-H等を用いることができる。例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(式(b-2-1)で表される化合物)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(式(b-1-1)で表される化合物)、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノン(式(b-1-3)で表される化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。さらに、光照射後の開裂によって長波長域の吸収が短波長側にシフトするフォトブリーチ性を有することによって塗膜の黄変を抑制できる観点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドがより好ましい。
【0114】
光重合開始剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、2質量%以上であってよい。光重合開始剤の含有量は、インク組成物が更に劣化しにくくなる観点から、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下であってよい。光重合開始剤の含有量が2質量%以上である場合、光変換層となった場合の発光特性がより一層優れたものとなる。光重合開始剤の含有量が10質量%以下である場合、インク粘度を低く保ちつつ、インクの硬化性がより一層優れたものとなる。
【0115】
インク組成物中に光重合開始剤を溶解する際には、予め光重合性化合物中に溶解してから使用することが好ましい。光重合性化合物に溶解させるには、熱による反応が開始されないように、光重合性化合物を攪拌しながら光重合開始剤を添加することにより均一溶解させることが好ましい。
光重合開始剤の溶解温度は、用いる光重合開始剤の光重合性化合物に対する溶解性、および光重合性化合物の熱による重合性を考慮して適宜調節すればよいが、光重合性化合物の重合を開始させない観点から10~50℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましく、10~30℃であることがさらに好ましい。
【0116】
<<光増感剤>>
インク組成物は、光増感剤を含有することによって、塗膜の硬化性を向上することができる。光増感剤は、光重合開始剤の励起三重項エネルギーと同等以上のものを使用する。光増感剤は、下記一般式(1):
【化16】

[式(1)中、Rは、炭素原子数2~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はアルコキシカルボニル基を示し、mは1~4の整数を示し、mが2~4の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるチオキサントン化合物、又は、下記一般式(2):
【化17】

[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、フェニル基を示し、n及びoはそれぞれ独立に0~5の整数を示し、nが2~5の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、oが2~5の整数である場合複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。]
で表されるベンゾフェノン化合物である。
【0117】
チオキサントン化合物において、Rとしての炭素原子数2~3のアルキル基は、例えば、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。Rとしてのアルコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基等が挙げられる。mは、1~2であってよく、1であってもよい。
【0118】
チオキサントン化合物は、例えば、下記式(1a)で表される化合物であってよい。
【化18】
【0119】
式(1a)中、R1a及びR1bは、Rと同意義を示し、m1は、0~3の整数を示す。R1a及びR1bは、互いに同一であっても異なっていてもよい。m1が2~3の整数である場合、複数存在するR1bは互いに同一であっても異なっていてもよい。m1は、0又は1であってよい。
【0120】
チオキサントン化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン(DETX)、2-イソプロピルチオキサントン(2-ITX)、2,4-ジイソプロピルチオキサントン(DITX)、2-エトキシカルボニルチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン等が挙げられる。
【0121】
ベンゾフェノン化合物において、R及びRは、例えば、メチル基、ヒドロキシ基、ジエチルアミノ基、フェニル基等が挙げられる。
【0122】
n及びoはそれぞれ独立に0~4、0~3、0~2又は0~1の整数であってもよく、0であってもよい。
【0123】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4-’ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0124】
光増感剤は、例えば、
2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン及びベンゾフェノンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてよい。
【0125】
光増感剤の含有量は、硬化性により一層優れる観点から、インク組成物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、又は0.8質量%以上であってよい。光増感剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、5質量%以下、3質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。光増感剤は、単独で使用してもよく、または2種類以上を併用してしてもよい。
【0126】
本実施形態に係るインク組成物は、光増感剤として上記チオキサントン化合物及び/又は上記ベンゾフェノン化合物を含むために、コアシェル型量子ドットと比較して紫外線領域の光吸光度が大きいメタルハライドからなる発光性ナノ結晶粒子を含むにも関わらず、光増感剤及び光重合開始剤の添加量が少なくても、優れた硬化性を得ることができる。そして、上記チオキサントン化合物及び上記ベンゾフェノン化合物は、光重合性化合物に対する溶解性に優れる上に、添加量が少なくても光増感作用に優れるため、使用量を減らすことが可能となり、それに伴って光重合開始剤の使用量をも減らすことが可能となるため、インク組成物の粘度上昇を抑制することができる。さらに、上記チオキサントン化合物及び上記ベンゾフェノン化合物は、塗膜の黄変度が小さいインク組成物が得られやすいため、発光性粒子を含む光変換層に好適に用いることができる。
【0127】
また、上記チオキサントン化合物の中でも、2-イソプロピルチオキサントンは、黄変度が極めて小さい塗膜が得られやすいため、発光性粒子を含む光変換層において、特に好適に用いることができる。
【0128】
本発明のインク組成物中に用いる光増感剤の励起三重項状態最低エネルギー(E(S))は、光重合開始剤の励起三重項状態最低エネルギー(E(PI))と互いに略等しいか、もしくはE(S)>E(PI)の関係を満たす。
【0129】
メタルハライドからなる発光性ナノ結晶粒子による紫外線吸収の影響を抑えながら、より優れた硬化性を得るために、インク組成物中に用いる光増感剤として、硬化のために照射する紫外線波長領域に対して分子吸光係数が大きい化合物を用いることが好ましい。さらには、光増感剤は、光重合開始剤よりも分子吸光係数が高い化合物であることがより好ましい。表1に、光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノンと、光重合開始剤であるベンゾフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2-イソプロピルチオキサントンの励起三重項エネルギーと波長350~400nmの紫外線に対する平均分子吸光係数を示す。
【0130】
【表1】
【0131】
なお、表1に記載の平均分子吸光係数は、以下の数式(1)により算出されたものである。
【数1】

(数式(1)中、Δεは波長350~400nmにおける平均分子吸光係数を表し、ε(λ)は波長λにおける分子吸光係数を表し、Δλは波長幅(50nm)を表す。
【0132】
表1から、例えば、光重合開始剤として2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンを用いる場合には、光増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン又は2-イソプロピルチオキサントンを用いることが好ましく、光重合開始剤として2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンを用いる場合には、光増感剤としてベンゾフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン又は2-イソプロピルチオキサントンを用いることが好ましい。光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノンを用いる場合には、光増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン又は2-イソプロピルチオキサントンを用いることが好ましい。
【0133】
また、本発明で用いる光増感剤は、光重合性化合物に対する溶解性に優れるとともに、黄変度が極めて小さく、かつ、極めて優れた硬化性を有するインク組成物が得られやすいため、光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、光増感剤として、2-イソプロピルチオキサントンを用いることが特に好ましい。
【0134】
<<光散乱性粒子>>
インク組成物は、光散乱性粒子を更に含有してよい。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子であることが好ましい。インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、光散乱性粒子は、発光層(光変換層)に照射された光源部からの光を散乱させることができる。
【0135】
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。
【0136】
中でも、光散乱性粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、酸化チタンであることが特に好ましい。
【0137】
酸化チタンを用いる場合には、分散性の観点から、表面処理がなされた酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンの表面処理方法としては公知の方法があるが、少なくともアルミナを含んだ表面処理がなされていることがより好ましい。
【0138】
アルミナを含んだ表面処理がなされた酸化チタンとは、酸化チタン粒子表面に少なくともアルミナを析出させる処理をいい、アルミナの他にシリカ等を用いることができる。また、アルミナあるいはシリカには、それらの水和物も含まれる。
【0139】
この様に、酸化チタン粒子にアルミナを含んだ表面処理を行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆処理され、少なくともアルミナにより表面処理された酸化チタン粒子を用いると、酸化チタン粒子の分散性が良好となる。
【0140】
また、シリカによる処理とアルミナによる処理を酸化チタン粒子に施す場合には、アルミナ及びシリカ処理は同時に行っても良く、特にアルミナ処理を最初に行い、次いでシリカ処理を行うこともできる。また、アルミナとシリカの処理をそれぞれ行う場合には、アルミナ及びシリカの処理量は、アルミナよりもシリカの多いものが好ましい。
【0141】
前記酸化チタンのアルミナ、シリカ等の金属酸化物による表面処理は湿式法により行うことができる。例えば、アルミナ、又はシリカの表面処理を行った酸化チタン粒子は以下のように作製することができる。
【0142】
酸化チタン粒子(数平均一次粒子径:200~400nm)を50~350g/Lの濃度で水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩又は水溶性のアルミニウム化合物を添加する。その後、アルカリ又は酸を添加して中和し、酸化チタン粒子の表面にシリカ、又はアルミナを析出させる。続いて濾過、洗浄、乾燥を行い目的の表面処理酸化チタンを得る。前記水溶性のケイ酸塩としてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
【0143】
光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上又は2質量%以上であってよく、10質量%以下、9質量%以下又は8質量%以下であってもよい。
【0144】
<<高分子分散剤>>
インク組成物は、高分子分散剤を更に含有してよい。高分子分散剤は、重量平均分子量(Mw)が5,000超の分子であり、光散乱性粒子のインク組成物中での分散安定性を向上させ得る化合物である。該高分子分散剤は、発光性粒子の分散安定性にも寄与する。
【0145】
「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用することができる。
【0146】
高分子分散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アミノ系樹脂、ポリアミン系樹脂(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等)、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンのような天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジンのような変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノールのようなロジン誘導体等が挙げられる。
なお、高分子分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYK(登録商標)シリーズ、エボニック社製のTEGO(登録商標) Dispersシリーズ、BASF社製のEFKA(登録商標)シリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパー(登録商標)シリーズ、楠本化成製のDISPARLON(登録商標)シリーズ、共栄社化学社製のフローレンシリーズ等を使用することができる。
【0147】
また、該高分子分散剤としては、ブロック共重合体であることが特に好ましい。該高分子分散剤がブロック共重合体を適用することによる効果としては、ブロック共重合体は親水性領域と顔料吸着領域により構成されることにより、高い分散性を得ることができ、ランダム共重合体や交差共重合体よりも優れた分散性を得ることができる。
【0148】
具体的には、ランダム共重合体等では、共重合体を構成する単量体モノマーは、重合体形成時に立体的あるいは電気的に共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。単量体モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的あるいは電気的に安定しているため、顔料表面に吸着する際に障害となる場合が多い。これに対し、分子配列が制御されたブロック共重合体タイプの高分子分散剤では、顔料に対する分散剤の吸着を妨げる部分を、顔料と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。すなわち、顔料と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を配置し、溶媒親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することにより、特に、結晶サイズが小さな顔料を含有する系のインクジェットインクの分散においては、このブロック共重合体で構成される分子配列により良好な分散性を実現することができるものと推測される。
【0149】
本発明に係る高分子分散剤としては、上記特性を備えていれば制限はなく、公知のエチレン性不飽和モノマーを用いて合成されたブロック共重合体を適用でき、エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0150】
スチレン及びスチレン誘導体、例えば、α-メチルスチレン又はビニルトルエン;カルボン酸のビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル;ハロゲン化ビニル;エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸、及び上記したジカルボン酸のアルカノール(好ましくは1~4個の炭素原子を有するもの)とのモノアルキルエステル、及び上記したモノアルキルエステルの誘導体、及びそのN-置換誘導体、アリールエステル、及びそれらの誘導体;不飽和カルボン酸のアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド若しくはメタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド;スルホン酸基を含むエチレン性モノマー及びそのアンモニウム又はアルカリ金属塩、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、α-アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチレンメタクリレート;ビニルアミンのアミド、例えば、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド;第2、第3若しくは第4級アミノ基又は窒素含有ヘテロ環基を含む不飽和エチレン性モノマー、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸若しくはメタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸若しくはメタクリル酸ジ-t-ブチルアミノエチル、又はジメチルアミノメチルアクリルアミド若しくはメタクリルアミド;ツビッターイオン性モノマー、例えば、スルホプロピル(ジメチル)アミノプロピルアクリレート;ジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルニトリル類;ビニルホスホン酸及びその誘導体を挙げることができる。
【0151】
このようなエチレン性不飽和モノマーを用いて、公知の方法、例えば、特開2005-60669号公報や特開2007-314617号公報などの合成方法に従って、ブロック共重合体を合成することができる。
【0152】
その中でも、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を用いることが好ましく、例えば、特開昭60-89452号公報、特開平9-62002号公報、P.Lutz,P.Massonetal,Polym.Bull.12,79(1984)、B.C.Anderson,G.D.Andrewsetal,Macromolecules,14,1601(1981)、K.Hatada,K.Ute,etal,Polym.J.17,977(1985)、K.Hatada,K.Ute,etal,Polym.J.18,1037(1986)、右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987)、東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989)、M.Kuroki,T.Aida,J.Am.Chem.Sic,109,4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985)、D.Y.Sogoh,W.R.Hertleretal,Macromolecules,20,1473(1987)、K.Matyaszewskietal,Chem.Rev.2001,101,2921-2990などに記載されている公知の方法を参照して合成可能である。
【0153】
本発明で用いる高分子分散剤は、塩基性の極性基を有し、塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。該高分子分散剤のアミン価は6~90mgKOH/gであることが好ましく、7~70mgKOH/gであることがより好ましく、8~50mgKOH/gであることがさらに好ましい。該高分子分散剤のアミン価が6mgKOH/gより小さいと、光拡散粒子への高分子分散剤の吸着性が低く、またアミン価が90mgKOH/gより大きいと極性が高くなり、凝集、保存性劣化の原因となりやすく、その影響により発光性粒子の分散性も悪化することになる。
【0154】
高分子分散剤のアミン価は、以下のように測定することができる。高分子分散剤xg及びブロモフェノールブルー試液1mLを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mLに溶解させた試料液を準備し、0.5mol/L塩酸にて試料液が緑色を呈するまで滴定を行い、次式によりアミン価を算出できる。
アミン価=y/x×28.05
式中、yは滴定に要した0.5mol/L塩酸の滴定量(mL)を示し、xは高分子分散剤の質量(g)を示す。
【0155】
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子100質量%に対して、0.5~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量部であることが特に好ましい。
【0156】
<<他の成分>>
インク組成物は、上述した成分以外の他の成分を更に含有してもよい。他の成分としては、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、連鎖移動剤、熱可塑性樹脂、等が挙げられる。
【0157】
[酸化防止剤]
インク組成物は、酸化防止剤を更に含有してもよい。酸化防止剤は、例えば、フェノール化合物又はリン系化合物であってよい。酸化防止剤の含有量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01~2.0質量%であることが好ましく、0.02~1.0質量%であることがより好ましい。
【0158】
[重合禁止剤]
インク組成物は、重合禁止剤を更に含有しても良い。重合禁止剤は、例えば、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物、チオエーテル系化合物、N-オキシル化合物、ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0159】
重合禁止剤の含有量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01~1.0質量%であることが好ましく、0.02~0.5質量%であることがより好ましい。
【0160】
[レベリング剤]
レベリング剤としては、特に限定はないが、発光性粒子の薄膜を形成する場合に、膜厚ムラを低減させ得る化合物が好ましい。
かかるレベリング剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類等が挙げられる。
【0161】
レベリング剤の含有量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.005~2質量%、又は0.01~0.5質量%であってよい。
【0162】
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、インク組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。
【0163】
連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン化合物、スルフィド化合物等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5質量%であることがより好ましい。
【0164】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
【0165】
<<インク組成物の粘度>>
インク組成物の30℃における粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2~20mPa・sの範囲であることが好ましく、5~15mPa・sの範囲であることがより好ましく、7~12mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。この場合、吐出ヘッドのインク吐出孔におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。また、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。なお、インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定することができる。
【0166】
インク組成物の粘度上昇率は、5%以下、1%以下、又は0.5%以下であってよく、0.01%以上であってもよい。インク組成物の粘度上昇率は、下記式で算出される値である。
式:(η-η)/η×100
ここで、ηは40℃で1週間保管後のインク組成物を30℃で測定したときの粘度を示し、ηは、保管前のインク組成物のインク組成物の粘度を示す。
【0167】
<<インク組成物の表面張力>>
インク組成物の表面張力は、インクジェット印刷法に適した表面張力であることが好ましい。表面張力の具体的な値は、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mの範囲であることがより好ましい。表面張力を前記範囲に設定することにより、インク組成物の液滴の飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のズレることをいう。
【0168】
<<インク組成物の製造方法>>
以上のようなインク組成物は、発光性粒子を、光重合性化合物、光重合開始剤、光増感剤、並びに、必要に応じて、その他の成分等を混合した溶液中に分散させて調製することができる。発光性粒子の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。
【0169】
<インク組成物セット>
本発明の他の一実施形態は、インク組成物セットである。一実施形態のインク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物を備える。インク組成物セットは、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)に加えて、発光性粒子を含有しないインク組成物(非発光性インク組成物)を備えていてよい。非発光性インク組成物は、例えば、硬化性のインク組成物である。非発光性インク組成物は、従来公知のインク組成物であってよく、発光性粒子を含まないこと以外は、上述した実施形態のインク組成物(発光性インク組成物)と同様の組成であってもよい。
【0170】
非発光性インク組成物は、発光性粒子を含有しないため、非発光性インク組成物により形成される画素部(非発光性インク組成物の硬化物を含む画素部)に光を入射させた場合に画素部から出射する光は、入射光と略同一の波長を有する。したがって、非発光性インク組成物は、光源からの光と同色の画素部を形成するために好適に用いられる。例えば、光源からの光が420~480nmの範囲の波長を有する光(青色光)である場合、非発光性インク組成物により形成される画素部は青色画素部となり得る。
【0171】
非発光性インク組成物は、好ましくは光散乱性粒子を含有する。非発光性インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、当該非発光性インク組成物により形成される画素部によれば、画素部に入射した光を散乱させることができ、これにより、画素部からの出射光の、視野角における光強度差を低減することができる。
【0172】
<光変換層、カラーフィルタ及び発光素子>
本発明の他の一実施形態は、光変換層、カラーフィルタ及び発光素子である。以下、上述した実施形態のインク組成物又はインク組成物セットを用いて得られる光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。ただし、以下の実施形態は、インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合の実施形態である。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0173】
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
【0174】
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
【0175】
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む発光性の画素部(発光性画素部)である。図1に示す硬化物は、発光性粒子と、硬化成分と、光散乱性粒子とを含有する。第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。硬化成分は、光重合性化合物の重合によって得られる成分であり、光重合性化合物の重合体を含む。硬化成分には、上記重合体の他、インク組成物に含まれていた有機溶剤以外の成分が含まれていてよい。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
第1の発光性粒子11aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性粒子11bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
【0177】
発光性画素部における発光性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上である。発光性粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは、15質量%以下、10質量%以下、又は7質量%以下である。
【0178】
発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上又は3質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、20質量部%以下、15質量部%以下又は10質量%以下であってもよい。
【0179】
第3の画素部10cは、上述した非発光性インク組成物の硬化物を含む非発光性の画素部(非発光性画素部)である。硬化物は、発光性粒子を含有せず、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cと、第3の硬化成分13c中に分散された第3の光散乱性粒子12cとを含む。第3の硬化成分13cは、例えば、重合性化合物の重合によって得られる成分であり、重合性化合物の重合体を含む。第3の光散乱性粒子12cは、第1の光散乱性粒子12a及び第2の光散乱性粒子12bと同一であっても異なっていてもよい。
【0180】
第3の画素部10cは、例えば、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
【0181】
非発光性画素部における光散乱性粒子の含有量は、視野角における光強度差をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、光反射をより低減することができる観点から、非発光性インク組成物の硬化物の全質量を基準として、80質量%以下であってよく、75質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0182】
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
【0183】
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光の漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
【0184】
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
【0185】
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
【0186】
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に画素部10を形成することにより製造できる。画素部10は、インク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により基材40上の画素部形成領域に選択的に付着させる工程と、インク組成物に対して活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射し、インク組成物を硬化させて発光性画素部を得る工程と、を備える方法により形成することができる。インク組成物として上述した発光性インク組成物を用いることで発光性画素部が得られ、非発光性インク組成物を用いることで非発光性画素部が得られる。
【0187】
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
【0188】
画素部10を形成する際のインクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
【0189】
本発明のインク組成物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射により硬化させることができる。照射源(光源)としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用されるが、塗膜への熱負荷の低減、低消費電力の観点からLEDが好ましい。
【0190】
照射する光の波長は、250nm~440nmであることが好ましく、300nm~400nmであることがより好ましい。LEDを用いる場合には、10μm以上の膜厚を十分に硬化させる観点から、例えば、350nm以上400nm以下であることが好ましい。また、光の強度は、0.2~2kW/cmであることが好ましく、0.4~1kW/cmであることがより好ましい。0.2kW/cm未満の光の強度では十分に塗膜を硬化できず、2kW/cm以上の光の強度では塗膜表面と内部の硬化度にムラが発生し、塗膜表面の平滑性が劣るため好ましくない。光の照射量(露光量)は、10mJ/cm以上であることが好ましく、4000mJ/cm以下であることがより好ましい。
塗膜の硬化は、空気中あるいは不活性ガス中で行うことができるが、塗膜表面の酸素阻害及び塗膜の酸化を抑制するために、不活性ガス中で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。このような条件で塗膜を硬化させることにより、塗膜が完全に硬化できることから、得られる光変換層9の外部量子効率をより向上させることができる。
【0191】
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて又は第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有する発光性インク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
【0192】
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
【0193】
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、当該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0194】
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等を含むインク受容層を備えていてもよい。
【0195】
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化すると共に、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
【0196】
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性粒子に加えて、発光性粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
【0197】
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種の発光性画素部を、発光性粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシアニン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1~5質量%であることが好ましい。
【0198】
上記カラーフィルタは、発光素子である有機EL素子(OLED)、液晶表示素子等のカラーフィルタに用いることができる。本発明では、とりわけ、有機EL素子(OLED)として有用であり、以下、有機EL素子の構成について簡単に説明する。
【0199】
有機EL素子である発光素子は、基板上に画素毎に区画された有機EL光源部を有し、かつ、該有機EL光源部の上部に該有機EL光源部から発せられる青色光を赤色(R)、緑色(G)へ変換するカラーフィルタを配設してなる発光素子である。画素毎に区画された有機EL光源部は、有機EL発光部材と共に、充填層と、保護層とを有していてもよい。
【0200】
かかる発光素子は、有機EL光源部(EL層)から発せられた光を前記カラーフィルタによって吸収及び再放出するか或いは透過させ、上基板側から外部に赤色光、緑色光、青色光として取り出すことができる。
【実施例0201】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0202】
光増感剤(A)として次に示す化合物を準備した。
(A-1)2-イソプロピルチオキサントン(ITX):E(S)=62kcal/mol
(A-2)ベンゾフェノン:E(S)=69kcal/mol
(A-3):1,2-ベンズアントラセン:E(S)=47kcal/mol
【0203】
光重合開始剤(B)として次に示す化合物を準備した。
(B-1)2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド:E(PI)=62kcal/mol、製品名:Omnirad(登録商標) TPO-H、IGM Resins B.V.社製
(B-2)2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン:E(PI)=61kcal/mol、製品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.社製
(B-3)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノン:E(PI)=60kcal/mol、製品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社製
【0204】
酸化防止剤(C)として次に示す化合物を準備した。
(C-1)Irganox(登録商標)1010(フェノール系):BASFジャパン株式会社製
(C-2)HOSTANOX(登録商標) P-EPQ(次亜リン酸ジエステル):クラリアントケミカルズ株式会社製
【0205】
光重合性化合物(D)として次に示す化合物を準備した。
(D-1)イソボルニルメタクリレート:商品名 ライトエステルIB-X、共栄社化学株式会社製、
(D-2)ドデシルメタクリレート:商品名 ライトエステルL、共栄社化学株式会社製、
(D-3)フェノキシエチルメタクリレート:商品名 ライトエステルPO、共栄社化学株式会社製
(D-4)1.6-ヘキサンジオールジメタクリレート:商品名 ライトエステル1.6HX、共栄社化学株式会社製
(D-5)ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート:商品名 ライトアクリレートDCP-A、共栄社化学株式会社製
(D-6)グリセリンプロポキシトリアクリレート:商品名 OTA-480、ダイセル・オルネクス株式会社製
【0206】
光散乱性粒子(E)として次に示す酸化チタンを準備した。
(E-1)酸化チタン(商品名:CR-60-2、石原産業株式会社製)
【0207】
高分子分散剤(F)として次に示す化合物を準備した。
(F-1)Efka PX-4701(BASFジャパン株式会社製)
【0208】
<発光性粒子(X)分散液の調製>
(発光性粒子分散液1の調製)
まず、0.81gの炭酸セシウムと、40mLの1-オクタデセンと、2.5mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に150℃で加熱した。これにより、セシウム-オレイン酸溶液を得た。
一方、138.0mgの臭化鉛(II)と10mLの1-オクタデセンとを混合して混合液をえた。次に、この混合液を120℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に混合液に1mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加した。その後、上記混合液に140℃で1.3mLのセシウム-オレイン酸溶液を添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。
【0209】
次いで、反応液を大気下(23℃、湿度45%)で60分間撹拌した後、20mLのエタノールを添加した。
得られた懸濁液を遠心分離(3,000回転/分、5分間)して固形物を回収し、発光性粒子X-1を得た。
この発光性粒子X-1は、表面層を備えたペロブスカイト型の三臭化鉛セシウム結晶であり、透過型電子顕微鏡観察により平均粒子径は10nmであった。また、表面層は3-アミノプロピルトリエトキシシランで構成される層であり、その厚さは1nmであった。すなわち、発光性粒子X-1は、シリカで被覆された粒子であった。
さらに、発光性粒子X-1を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光性粒子X-1が分散した発光性粒子分散液1を得た。
【0210】
(発光性粒子分散液2の調製)
イソボルニルメタクリレートに代えてラウリルメタクリレートを用いたこと以外は、発光性粒子分散液1と同様にして、発光性粒子分散液2を得た。
【0211】
(発光性粒子分散液3の調製)
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、190質量部のヘプタンを供給し、85℃に昇温した。同温度に到達した後、66.5質量部のラウリルメタクリレート、3.5質量部のジメチルアミノエチルメタクリレートおよび0.5質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を20質量部のヘプタンに溶解した混合物を、上記四つ口フラスコのへプタンに3.5時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持し、反応を継続した。その後、反応液の温度を50℃に降温した後、0.01質量部のt-ブチルピロカテコールを1.0質量部のヘプタンに溶解した溶液を添加し、さらに1.0質量部のグリシジルメタクリレートを添加した後、85℃まで昇温し、同温度で5時間反応を継続した。これにより、重合体(P)を含有する溶液を得た。なお、溶液中に含まれる不揮発分(NV)の量は25.1質量%であり、重合体(P)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
【0212】
次いで、温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、26質量部のヘプタンと、3質量部の上述の発光性粒子X-1と、3.6質量部の上述の重合体(P)を含有する溶液を供給した。さらに上記四つ口フラスコに、0.2質量部のエチレングリコールジメタクリレートと、0.4質量部のメチルメタクリレートと、0.12質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)とを供給した。その後、上記四つ口フラスコ内の混合液を、室温で30分間攪拌した後、80℃に昇温し、同温度で15時間反応を継続した。反応終了後、反応溶液内の発光性粒子X-1に吸着しなかったポリマーを遠心分離により分離し、次いで、沈降した粒子を室温で2時間真空乾燥することにより、母粒子としての発光性粒子X-1の表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光性粒子X-2を得た。
【0213】
得られたポリマー被覆発光性粒子X-2を透過型電子顕微鏡で観察したところ、発光性粒子X-2の表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光性粒子X-2を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光性粒子分散液3を得た。
【0214】
(発光性粒子分散液4の調製)
まず、発光性粒子分散液1に用いたものと同一の中空シリカ粒子(日鉄鉱業株式会社製、「SiliNax SP-PN(b)」)を150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、200.0質量部の乾燥させた中空シリカ粒子を桐山ロートに秤取した。
【0215】
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに63.9質量部の臭化セシウム、110.1質量部の臭化鉛(II)および3000質量部のN-メチルホルムアミドを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。
【0216】
次に、前記三つ口フラスコに中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を120℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子に内包した発光性粒子X-3を得た。発光性粒子X-3は、中空粒子内包発光性粒子である。
【0217】
得られた発光性粒子X-3を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光性粒子X-3が分散した発光性粒子分散液4を得た。
【0218】
(発光性粒子分散液5の調製)
まず、発光性粒子X-1に代えて発光性粒子X-3を用いたこと以外は、ポリマー被覆発光性粒子X-2と同様にして、母粒子としての発光性粒子X-3が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光性粒子X-4を得た。そして、発光性粒子として、ポリマー被覆発光性粒子X-2に代えてポリマー被覆発光性粒子X-4を用いた以外は発光性粒子分散液2と同様にして、発光性粒子分散液5を得た。
【0219】
(発光性粒子分散液6の調製)
発光性粒子X-1の固形分濃度を2.5質量%に代えて固形分濃度が5質量%となるように用いたこと以外は、発光性粒子分散液1と同様にして、発光性粒子X-1が分散した発光性粒子分散液6を得た。
【0220】
(発光性粒子分散液7の調製)
まず、温度計、攪拌機、セプタムおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、0.814質量部の炭酸セシウムと、40質量部のオクタデセンと、2.5質量部のオレイン酸とを供給し、窒素雰囲気下、150℃で均一な溶液になるまで加熱撹拌した。全て溶解させた後、100℃まで冷却することによって、オレイン酸セシウム溶液を得た。
【0221】
次に、温度計、攪拌機、セプタムおよび窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、0.069質量部の臭化鉛(II)と、5質量部のオクタデセンとを供給し、窒素雰囲気下、120℃で1時間加熱撹拌した。続いて前記四つ口フラスコに、0.5質量部のオレイルアミンと0.5質量部のオレイン酸とを供給し、窒素雰囲気下、160℃で均一な溶液になるまで加熱撹拌した。さらに前記四つ口フラスコに、0.4重量部のオレイン酸セシウム溶液を供給し、160℃で5秒間撹拌した後、当該四つ口フラスコを氷冷した。得られた反応液を遠心分離によって分離し、上澄み液を除去することによって、発光性粒子X-5として、オレイン酸およびオレイルアミンが配位したペロブスカイト型の三臭化鉛セシウム結晶0.45質量部を得た。その後、得られた発光性粒子X-5を、固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散させることによって発光性粒子分散液7を得た。
【0222】
<光散乱性粒子分散体の調製>
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン(石原産業株式会社製「CR60-2」)10.0質量部と、高分子分散剤「Efka PX4701」(アミン価:40.0mgKOH/g、BASFジャパン株式会社製)1.0質量部と、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO;共栄社化学株式会社製)14.0質量部とを混合した。さらに、得られた配合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm) を加え、前記容器を密栓しペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせて配合物の分散処理を行うことにより、光拡散粒子分散体1を得た。分散処理後の光拡散粒子の平均粒子径は、NANOTRAC WAVE IIを用いて測定したところ、0.245μmであった。
【0223】
<インク組成物の調製>
(インク組成物(1)の調製)
実施例1のインク組成物として、発光性粒子分散液1(発光性粒子濃度2.5質量%)6.0質量部と、光散乱性粒子分散体1(酸化チタン含有量40.0質量%)0.75質量部と、光重合性化合物として「ラウリルメタクリレート」(製品名:ライトエステルLM、共栄社化学株式会社製)0.75質量部及び「1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート」(製品名:ライトエステル1,6-HX、共栄社化学株式会社製)2.0質量部と、光重合開始剤として「ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」(製品名:Omnirad TPO-H、BASFジャパン株式会社製)0.3質量部、光増感剤として「2-イソプロピルチオキサントン」(製品名:SPEEDCURE(登録商標) 2-ITX、LAMBSON社製)0.1質量部と、酸化防止剤として「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」(製品名:Irganox1010、BASFジャパン株式会社製)0.05質量部と、「テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト」(製品名:HOSTANOX P-EPQ、クラリアントケミカルズ株式会社製)0.05質量部を、アルゴンガスで満たした容器内で混合、均一に溶解した後、グローブボックス内で、溶解物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、得られたろ過物を入れた容器内にアルゴンガスを導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、インク組成物(1)を得た。発光性粒子の含有量は1.5質量%であり、IB-Xの含有量は58.5質量%であり、LMの含有量は6.5質量%であり、POの含有量は4.2質量%であり、1,6-HXの含有量は20.0質量%であり、TPO-Hの含有量は3.0質量%であり、2-ITXの含有量は1.0質量%であり、Irganox1010の含有量は0.5質量%であり、P-EPQの含有量は0.5質量%であり、光散乱性粒子の含有量は3.0質量%であり、高分子分散剤の含有量は、0.3質量%であった。なお、上記含有量はインク組成物の全質量を基準とする含有量である。
【0224】
(インク組成物(2)~(13)及び(C1)~(C3)の調製)
発光性粒子分散液1~7、光散乱性粒子分散液、光重合性化合物D-2~D-6、光重合開始剤B-1~B-3、光増感剤A-1~A-3、酸化防止剤C-1及びC-2の添加量を、下記表1及び表2に示す添加量に変更した以外は、インク組成物(1)の調製と同一条件で、実施例2~13のインク組成物(2)~(13)及び比較例1~3のインク組成物(C1)~(C3)を得た。
【0225】
<光変換層の作製>
(光変換層1の作製)
インク組成物(1)を、ガラス基板(コーニング社製、「EagleXG(登録商標)」)上に、乾燥後の膜厚が15μmとなるように、スピンコーターにて塗布した。
得られた膜に窒素雰囲気下でLEDランプ波長395nmの紫外光を10J/cmの露光量で照射した。これにより、インク組成物を硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層を形成し、これを光変換層とした。
【0226】
<インク組成物及び光変換層の評価>
(実施例1)
(インク粘度の安定性)
インク組成物(1)の粘度の安定性を以下の方法で評価した。調製直後のインク組成物の粘度と、調製後に40℃の恒温槽に1週間保管したインク組成物の粘度を比較し、粘度の上昇率を算出した。具体的には、調製直後のインク組成物の粘度をηとし、調製後に40℃の恒温槽に1週間保管したインク組成物の粘度をηとして以下の式で算出したところ、0.22%であった。
粘度上昇率(%)=(η―η)/η×100
【0227】
(分散安定性)
インク組成物(1)を大気下かつ室温で10日間放置した後、容器底面の沈殿物の有無を目視にて確認した。以下の評価基準に基づいて分散安定性を評価した。
〔評価基準〕
A:沈殿物が全く生じていない。
B:沈殿物がごくわずかに生じている。振とうすることにより沈殿物が溶解する。
C:沈殿物がやや多く生じている。振とうしても沈殿物が残る。
【0228】
結果を表2~表4に示す。
【0229】
(塗膜硬化性)
得られた光変換層1の表面を、綿棒を用いた触診にて、以下の基準で評価したところ、塗膜表面に傷が付かず、タック感もなかった。
〔評価基準〕
◎:塗膜表面に傷が付かず、タック感もない。
○:塗膜表面に傷は付かず、僅かなタック感があるものの、実用上問題ないレベル。
△:塗膜表面に僅かに傷が付き、タック感がある。
×:塗膜表面に傷が付き、硬化膜の一部が綿棒に付着する。
【0230】
(表面平滑性評価)
得られた光変換層1の表面粗さ(Sa値;単位μm)を、菱化システムのVertScan3.0R4300を用いて測定したところ、0.07μmであった。
【0231】
(外部量子効率(EQE)の評価)
面発光光源としてのシーシーエス株式会社社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)の上方に積分球を設置し、この積分球に大塚電子株式会社製の放射分光光度計(商品名「MCPD-9800」)を接続した。次に、青色LEDと積分球との間に上述の評価用試料を挿入して、青色LEDを点灯させ、観測されるスペクトル及び各波長における照度を放射分光光度計によって測定した。得られたスペクトル及び照度から、以下のようにして外部量子効率(EQE)を求めた。
【0232】
外部量子効率は、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。従って、この値が大きければ光変換層が発光特性に優れていることを示しており、重要な評価指標である。外部量子効率(EQE)は、以下の式(a)で算出される。
EQE[%]=P2/E(Blue)×100…(a)
式中、E(Blue)は、380~490nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表し、P2は、500~650nmの波長域における「照度×波長÷hc」の合計値を表し、これらは観測した光子数に相当する値である。なお、hは、プランク定数、cは光速を表す。
ここで、EQEは、数値が大きいほど、塗膜の硬化工程における紫外線による半導体ナノ結晶粒子の劣化が小さい、すなわち、紫外線に対する安定性に優れることを意味する。光変換層として使用するためには、EQEは20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、優れることを意味する。
上記光変換層1を作製した直後に測定したEQEを初期の外部量子効率EQEとし、EQEを測定したところ、32%であった。
【0233】
(外部量子効率保持率の評価)
その後、光変換層1を室温かつ大気下で10日保管した。保管後の外部量子効率をEQEとし、以下の式(b)によって、光変換層の外部量子保持率[%]を算出したところ、89%であった。
外部量子保持率[%]=EQE/EQE×100…(b)
光変換層は、EQEに加えて、さらにEQEが高いことが望ましく、外部量子効率保持率が高いほど、発光性粒子を含む光変換層の酸素ガスおよび水蒸気に対する安定性が高いことを意味する。
【0234】
(実施例2~13)
インク組成物(1)の代わりに本発明のインク組成物(2)~(13)を用いた以外は、実施例1と同様に、インク組成物(2)~(13)の粘度安定性、分散安定性の評価を行った。また、インク組成物(1)の代わりに本発明のインク組成物(2)~(13)を用いた以外は、実施例1と同様に、光変換層2~13を作製し、硬化性、表面粗さSa(μm)、外部量子効率EQE(%)、外部量子効率保持率(%)の評価を行った。
【0235】
(比較例1~3)
インク組成物(1)の代わりに比較用インク組成物(C1)~(C3)を用いた以外は、実施例1と同様に、比較用インク組成物(C1)~(C3)の粘度安定性、分散安定性の評価を行った。また、インク組成物(1)の代わりに比較用インク組成物(C1)~(C3)を用いた以外は、実施例1と同様に、光変換層C1~C3を作製し、硬化性、表面粗さSa(μm)、外部量子効率EQE(%)、外部量子効率保持率(%)の評価を行った。
【0236】
結果を表2~表4に示す。
【0237】
【表2】
【0238】
【表3】
【0239】
【表4】
【符号の説明】
【0240】
10…画素部、10a…第1の画素部、10b…第2の画素部、10c…第3の画素部、11a…第1の発光性粒子、11b…第2の発光性粒子、12a…第1の光散乱性粒子、12b…第2の光散乱性粒子、12c…第3の光散乱性粒子、20…遮光部、30…光変換層、40…基材、100…カラーフィルタ。
図1