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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081265
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】透水評価装置、透水評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20220524BHJP
   G01N 3/24 20060101ALI20220524BHJP
   G01N 15/08 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01N3/00 D
G01N3/24
G01N15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192703
(22)【出願日】2020-11-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、経済産業省、高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(沿岸部処分システム評価確証技術開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 絵麻
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 保貴
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA03
2G061AA11
2G061CA06
2G061CB06
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EA03
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】任意のせん断状態における試料のせん断帯の透水性を評価する。
【解決手段】試料2の上面側を保持する第1保持部材3と、試料2の下面側を保持する第2保持部材4とを備え、せん断手段6により第1保持部材3と第2保持部材4とを相対的に移動させて試料2を変形させ、試料2の中に変位を生じさせてせん断帯5を形成し、通水手段7によりせん断帯5に対して面に沿う方向に通水を行い、通水の状態を通水検出手段8で検出し評価手段9で試料2のせん断帯5の部位の面に沿う方向の透水状況を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の一方面側を保持する第1保持部材と、
前記試料の他方面側を保持する第2保持部材と、
前記第1保持部材、前記第2保持部材を相対的に移動させて前記試料に変形を加えて前記試料にせん断帯を形成するせん断手段と、
前記試料に形成されたせん断帯に対し、面に沿う方向に通水を行う通水手段と、
前記通水手段による通水の状態を検出してせん断帯の透水状況を評価する評価手段とを備えた
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の透水評価装置において、
前記第1保持部材、前記第2保持部材の対向面に形成され前記試料を保持するための凹部と、
前記試料を保持した際に、前記第1保持部材、前記第2保持部材の対向面の前記凹部を除く周辺部位を面接触させる加圧手段と、
前記試料に変形を加えて前記試料に変位が付与される前に、前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させ、前記周辺部位に隙間を形成する離反手段とを備え、
前記通水手段は、
前記周辺部位に形成された隙間に対して通水することで、前記試料のせん断帯に水を通す手段である
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の透水評価装置において、
前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させる際に、前記試料の拘束状態を維持する拘束維持手段と備えた
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の透水評価装置において、
前記せん断手段は、
前記第1保持部材、及び、前記第2保持部材を、前記試料の保持面に交差する軸周りで相対的に回動させて前記試料を変形させる手段である
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項5】
請求項4に記載の透水評価装置において、
前記第1保持部材が前記試料の上面側を保持し、前記第2保持部材が前記試料の下面側を保持するものであり、
前記第1保持部材、前記第2保持部材は、対向部にそれぞれ円環状の凹部を有し、
前記第1保持部材の凹部と、前記第2保持部材の凹部とで、円環筒状の前記試料を収容するための収容空間が画成され、
前記収容空間に前記試料が収容された際に、円環筒状の前記試料の軸芯方向に前記第1保持部材を前記第2保持部材に押し付け、前記凹部以外の部位を面接触させる加圧手段と、
前記加圧手段により前記凹部以外の部位を面接触させた状態から、前記試料を拘束した状態で、前記凹部以外の部位の前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させ、所望の隙間を形成する離反手段と、
前記第2保持部材を円環筒状の前記試料の軸芯を中心に任意の角度まで回動させて前記試料を変形させる前記せん断手段と、
前記凹部の外側と内側との間の前記隙間に対して通水することで、前記試料のせん断帯に水を通す前記通水手段と、
前記通水手段による通水の状態を検出してせん断帯の透水状況を評価する評価手段とを備えた
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載の透水評価装置において、
前記第2保持部材の円環状の凹部から、前記第1保持部材の円環状の凹部に向けて、もしくは、前記第1保持部材の円環状の凹部から、前記第2保持部材の円環状の凹部に向けて、通水することで、前記試料のせん断帯を交差して上下方向に水を通す上下通水手段を更に備え、
前記評価手段は、
前記上下通水手段による通水の状態を検出してせん断帯を跨ぐ透水状況を評価する機能を有している
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の透水評価装置において、
前記通水手段による通水の前に、前記試料に給水を行うことで前記試料を飽和させる飽和手段を備えた
ことを特徴とする透水評価装置。
【請求項8】
試料を変形させてせん断し、せん断帯に沿った方向に通水を行うことで、せん断面を含む部位の透水状況を評価することを特徴とする透水評価方法。
【請求項9】
請求項8に記載の透水評価方法において、
試料に対する変位は、回転方向であることを特徴とする透水評価方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を変形させて透水評価を行う透水評価装置、及び、透水評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射性廃棄物を地下に処分する場合、地下水の流れによる核種の移動を抑制するため、透水性が極めて低い材料を覆土等の緩衝材として用いることが考えられている。透水性が極めて低い材料としては、例えば、膨潤性を有するもの(ベントナイト、もしくは、ベントナイトと砂を混合したもの)が検討されている。
【0003】
緩衝材等の埋設施設を構成する材料の評価を行う場合、地下水の流れの状況を把握する必要がある。地下水の流れの状況を把握するためには、緩衝材等の材料の透水性を把握することが重要になっている。このため、透水性が極めて低い材料であっても極少量の水の移動を適切に検出することができる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、放射性廃棄物の処分に用いられる覆土等の緩衝材は、材料の強度を把握することが重要であり、緩衝材等の地盤を構成する材料の強度を把握するために、せん断強度を調べることが行われている。せん断強度を把握することで、周辺環境の変化に応じた覆土等の緩衝材の力学挙動を評価することが可能になる。
【0005】
緩衝材等の材料のおける地下水の流れの状況は、せん断を加味した状態で長期にわたる評価が必要であり、材料に局所的な変形(せん断変形)が生じた場合における水みちの発生に対する状況の把握が必要となっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-125078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、任意のせん断状態(過程)における材料のせん断帯の透水性を評価することができる透水評価装置、及び、透水評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の透水評価装置は、試料の一方面側を保持する第1保持部材と、前記試料の他方面側を保持する第2保持部材と、前記第1保持部材、前記第2保持部材を相対的に移動させて前記試料に変形を加えて前記試料にせん断帯を形成するせん断手段と、前記試料に形成されたせん断帯に対し、面に沿う方向に通水を行う通水手段と、前記通水手段による通水の状態を検出してせん断帯の透水状況を評価する評価手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、せん断手段により試料に変形を加えて試料の中に変位を生じさせ、試料にせん断帯を形成し、通水手段により試料のせん断帯に対して面に沿う方向に通水を行い、評価手段によりせん断帯の透水状況(透水割合)を評価する。これにより、せん断帯に水を通して透水状況を評価することができ、任意のせん断状態(過程)における試料のせん断帯の透水性を評価することが可能になる。
【0010】
因みに、非特許文献(片山遥平、許博晧、土田孝、村上博紀、中空ねじり試験機による地盤材料のせん断変形後の水平方向透水係数に関する研究、土木学会論文集B3(海洋開発)Vol.71、No.2、I_1143-I_1148、2015.)には、粘土試料に圧密、及び、せん断変形を与えた後、中空筒状の試料に対して、外周の筒面全体から中空部に対して通水し、透水状況を評価している技術が開示されている。
【0011】
しかし、非特許文献に示された技術は、せん断変形を与えた後の通水の状況を評価する技術ではあるが、ねじり変位により生じたせん断後、試料の外周の筒面の全体から通水を実施している。このため、非特許文献に示された技術では、せん断が生じている試料全体の透水性に関しては類推することはできるが、せん断帯に沿った通水が行われていない。
【0012】
従って、非特許文献に示された技術からは、任意のせん断状態(過程)における材料のせん断帯の透水性を評価することができる、といった請求項1に係る本願発明の特徴を得ることは当然不可能である。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の透水評価装置は、請求項1に記載の透水評価装置において、前記第1保持部材、前記第2保持部材の対向面に形成され前記試料を保持するための凹部と、前記試料を保持した際に、前記第1保持部材、前記第2保持部材の対向面の前記凹部を除く周辺部位を面接触させる加圧手段と、前記試料に変形を加えて前記試料に変位が付与される前に、前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させ、前記周辺部位に隙間を形成する離反手段とを備え、前記通水手段は、前記周辺部位に形成された隙間に対して通水することで、前記試料のせん断帯に水を通す手段であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、加圧手段により第1保持部材と第2保持部材の凹部以外の対向面を接触させてから、離反手段により第1保持部材と第2保持部材を離して隙間を設け、試料に変位を与え、隙間に通水を行うことで試料のせん断帯に水を通すことができる。このため、所定の隙間に水を通すことで、せん断面近傍に対して通水することができ、せん断帯の透水状況を適切に評価することができる。
【0015】
また、請求項3に係る本発明の透水評価装置は、請求項2に記載の透水評価装置において、前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させる際に、前記試料の拘束状態を維持する拘束維持手段と備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、拘束維持手段により試料の拘束状態を維持した状態でせん断帯近傍に対して通水することができ、せん断後の試料の状態を変化させることなく、せん断帯に対して的確に通水することができる。
【0017】
また、請求項4に係る本発明の透水評価装置は、請求項3に記載の透水評価装置において、前記せん断手段は、前記第1保持部材、及び、前記第2保持部材を、前記試料の保持面に交差する軸周りで相対的に回動させて前記試料を変形させる手段であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の本発明では、回動方向の変位によりせん断を実施するため、変位量の制約を受けることがない。このため、任意の変位の状態でせん断を行うことができ、ピーク強度後の残留強度の状態まで変形させたせん断状態での透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【0019】
また、請求項5に係る本発明の透水評価装置は、請求項4に記載の透水評価装置において、前記第1保持部材が前記試料の上面側を保持し、前記第2保持部材が前記試料の下面側を保持するものであり、前記第1保持部材、前記第2保持部材は、対向部にそれぞれ円環状の凹部を有し、前記第1保持部材の凹部と、前記第2保持部材の凹部とで、円環筒状の試料を収容するための収容空間が画成され、前記収容空間に前記試料が収容された際に、円環筒状の前記試料の軸芯方向に前記第1保持部材を前記第2保持部材に押し付け、前記凹部以外の部位を面接触させる加圧手段と、前記加圧手段により前記凹部以外の部位を面接触させた状態から、前記試料を拘束した状態で、前記凹部以外の部位の前記第1保持部材、前記第2保持部材を離反させ、所望の隙間を形成する離反手段と、前記第2保持部材を円環筒状の前記試料の軸芯を中心に任意の角度まで回動させて前記試料を変形させる前記せん断手段と、前記凹部の外側と内側との間の前記隙間に対して通水することで、前記試料のせん断帯に水を通す前記通水手段と、前記通水手段による通水の状態を検出してせん断帯の透水状況を評価する評価手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明では、収容空間に円環筒状の試料を収容し、加圧手段により円環筒状の試料の軸芯方向に第1保持部材を第2保持部材に押し付けて凹部以外の部位を面接触させる。試料を拘束した状態で、離反手段により凹部以外の部位の第1保持部材、第2保持部材を離反させ、第1保持部材と第2保持部材の間に所望の隙間を形成する。せん断手段により第2保持部材を円環筒状の試料の軸芯を中心に任意の角度まで回動させて試料を変形させる。通水手段により凹部の外側と内側との間の隙間に対して通水することで、試料のせん断帯に水を通し、評価手段により通水の状態を検出してせん断帯の透水状況を評価する。
【0021】
これにより、回動方向の変形によりせん断を実施して試料の変位量の制約を減らし、所定の隙間に水を通すことで、せん断面近傍に対して通水し、試料の拘束状態を維持した状態でせん断面近傍に対して通水することができる。従って、ピーク強度後の残留強度の状態まで変形させてせん断することができ、せん断後の試料の状態を変化させることなく、せん断帯に対して通水することにより、せん断帯を流れる水の状況(通水状況)を的確に把握することができる。このため、任意のせん断状態(過程)における材料のせん断帯の透水性を評価することが可能になる。即ち、ピーク強度後の残留強度の状態まで変位させたせん断状態での透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【0022】
また、請求項6に係る本発明の透水評価装置は、請求項5に記載の透水評価装置において、前記第2保持部材の円環状の凹部から、前記第1保持部材の円環状の凹部に向けて、もしくは、前記第1保持部材の円環状の凹部から、前記第2保持部材の円環状の凹部に向けて、通水することで、前記試料のせん断帯を交差して上下方向に水を通す上下通水手段を更に備え、前記評価手段は、前記上下通水手段による通水の状態を検出してせん断帯を跨ぐ透水状況を評価する機能を有していることを特徴とする。
【0023】
請求項6に係る本発明では、試料に対して上下方向の透水状況を評価することができる。
【0024】
また、請求項7に係る本発明の透水評価装置は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の透水評価装置において、前記通水手段による通水の前に、前記試料に給水を行うことで前記試料を(水で)飽和させる飽和手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項7に係る本発明では、通水を行う前に試料に給水を行って試料を飽和させる(空気を排出する)ことができ、気泡などの影響を受けずに試料に対する通水の状態を的確に評価することができる。
【0026】
上記目的を達成するための請求項8に係る本発明の透水評価方法は、試料をせん断して変形させ、せん断帯に沿った方向に通水を行うことで、せん断面を含む部位の透水状況を評価することを特徴とする。
【0027】
請求項8に係る本発明では、任意のせん断状態(過程)における材料のせん断帯の透水性を評価することができる。つまり、せん断力を与えた結果による変位により生じたせん断帯の透水性を評価することができる。
【0028】
また、請求項9に係る本発明の透水評価方法は、請求項8に記載の透水評価方法において、試料に対する変形は、回転方向であることを特徴とする。
【0029】
請求項9に記載の本発明では、回動方向にせん断して変形させるため、変位量の制約を受けることがない。このため、任意の変形の状態でせん断を行うことができ、試料にせん断力を与えて変形させ、ピーク強度後の残留強度の状態まで試料を変形させて透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の透水評価装置、及び、透水評価方法は、任意のせん断状態(過程)における材料のせん断帯の透水性を評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の透水評価装置の概念構成図である。
図2】本発明の一実施例に係る透水評価装置の概念構成図である。
図3】本発明の一実施例に係る透水評価装置の全体構成図である。
図4】本発明の一実施例に係る透水評価装置の全体構成図である。
図5】本発明の一実施例に係る透水評価装置の要部の分解斜視図である。
図6】第2保持部の構成を説明する外観図である。
図7】第1保持部材の構成を説明する外観図である。
図8】通水状況の評価処理のフローチャートである。
図9】本発明の一実施例に係る透水評価装置の動作説明図である。
図10】本発明の一実施例に係る透水評価装置の動作説明図である。
図11】通水状態を説明する断面図である。
図12】せん断変位とせん断応力との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には本発明の透水評価装置を説明するために装置を概念的に表した概念構成状況を示してあり、図1(a)は試料を変形させる前(試料に変位が生じる前)の状態、図1(b)は試料を変形させた後(試料に変位が生じた後)の状態である。
【0033】
図に示すように、本発明の透水評価装置1には、試料(低透水性材料:例えばベントナイトを含む材料)2の上面側(一方面側)を保持する第1保持部材3と、試料2の下面側(他方面側)を保持する第2保持部材4とが備えられている。そして、第1保持部材3と第2保持部材4とを相対的に移動させて試料2を変形させて試料2に変位を与え、試料2にせん断帯5を形成するせん断手段6が備えられている。
【0034】
更に、試料2のせん断帯5に対して面に沿う方向に通水を行う通水手段7が備えられ、通水手段7で通水の状態が通水検出手段8で検出される。通水検出手段8で検出された通水の状態は評価手段9に入力され、評価手段9では試料2のせん断帯5の部位の面に沿う方向の透水状況(透水係数に基づいた透水の割合等)が評価される。
【0035】
このため、せん断帯5に水を通して(加圧状態で通水して)透水状況を評価することができ、せん断手段6による変位の状態を任意に設定することにより、任意のせん断状態(過程:任意のせん断過程)における試料2のせん断帯5の透水性を評価することが可能になる。
【0036】
図2には本発明の一実施例に係る透水評価装置を説明するために装置を概念的に表した概念構成状況を示してある。
【0037】
図に示すように、透水評価装置11には、円環状の試料(低透水性材料:例えば、ベントナイトを含む材料)12の上面側(一方面側)を保持する第1保持部材13と、試料12の下面側(他方面側)を保持する第2保持部材14とが備えられている。第1保持部材13、第2保持部材14の対向面には、円環状の試料12を保持するための凹部13aと凹部14aがそれぞれ形成されている。凹部13aと凹部14aにより収容空間が形成されるようになっている。
【0038】
第1保持部材13を第2保持部材14側に向けて(下方に向けて)下降させる加圧手段15が備えられ、加圧手段により第1保持部材13を下降させることで、第1保持部材13、第2保持部材14の対向面の凹部13a、14aを除く周辺部位(面13b、14b)を面接触させるようになっている。
【0039】
第1保持部材13と第2保持部材14の周辺部位(面13b、14b)を面接触させた状態から第1保持部材13と第2保持部材14を離反させ、第2保持部材14を円環筒状の試料12の軸芯(図中上下方向に延びる中心軸)を中心に任意の角度まで回動させて試料12に変位を生じさせるせん断手段としての回動駆動手段16が備えられている。回動駆動手段16により第2保持部材14を任意の角度まで回動させることで試料12に変位が生じて試料12がせん断され、第1保持部材13と第2保持部材14の周辺部位(面13b、14b)と平行なせん断帯17が試料12に形成される。
【0040】
回動駆動手段16により第2保持部材14を任意の角度まで回動させて試料12を変形させて試料12に変位を与える前に、試料12を拘束した状態で(後述する拘束手段)、第1保持部材13の一部を上昇させて、第1保持部材13と第2保持部材14の周辺部位(面13b、14b)を離反させる離反手段としての昇降手段18が備えられている。昇降手段18により第1保持部材13の一部を上昇させることにより、第1保持部材13と第2保持部材14の周辺部位(面13b、14b)に所定の隙間Sが形成される。
【0041】
第1保持部材13と第2保持部材14の間の周辺部位(面13b、14b)の隙間に対して所定の圧力で加圧した水を通水する通水手段19が備えられている。また、通水手段19による通水の前に、試料12に給水を行うことで試料12を水で飽和させる飽和手段が備えられている。
【0042】
即ち、第2保持部材14に飽和用の給水を行う給水手段24が設けられ、第2保持部材14には、給水手段24が接続されて試料12の下面に連通する下流路25が形成されている。第1保持部材13には試料12の上面に連通する上流路26が形成され、上流路26は排出路27が接続されている。排出路27にはバルブ28が設けられている。
【0043】
通水手段19による通水の前に、バルブ28を開いて給水手段24から給水を行う。下流路25から試料12に給水が行われ、試料12に溜まっている空気と共に上流路26に水が送られる。送られた水は、気泡と共に排出路27から排出され、試料12から空気が排出され試料12が水で飽和される。
【0044】
試料12を飽和させた状態で、通水手段19により第1保持部材13と第2保持部材14の周辺部位(面13b、14b)の隙間に加圧した水を通水することで、試料12のせん断帯17に所定の圧力で加圧された水が通水される。
【0045】
通水手段19による通水の状態(通水量等)を検出する検出手段20が備えられ、検出手段20で検出された通水の状態は、評価手段21に入力される。評価手段21では、せん断帯17に沿った通水の状態からせん断帯17の透水状況(例えば、透水係数に基づいた透水の割合)が評価される。
【0046】
上述した透水評価装置11では、第1保持部材13と第2保持部材14の凹部13aと凹部14aで形成される収容空間に円環筒状の試料12を収容し、加圧手段15により試料12の軸芯方向に第1保持部材13を第2保持部材14に押し付けて凹部13a、14aを除く周辺部位(面13b、14b)を面接触させる。
【0047】
試料12を変位させる前に、試料12を拘束した状態で(後述する拘束手段)、昇降手段18により凹部13a、14aを除く周辺部位(面13b、14b)の第1保持部材13、第2保持部材14を離反させ、凹部13a、14aを除く周辺部位(面13b、14b)に、せん断帯17と平行な隙間Sを形成する。隙間Sは所望の寸法で任意に形成することができる。
【0048】
回動駆動手段16により第2保持部材14を任意の角度まで回動させて試料12を変形させる。試料12を変形させることで、試料12の中に変位が生じ、試料12にせん断帯17が形成される。
【0049】
試料12を水で飽和させ、通水手段19により第1保持部材13と第2保持部材14の凹部13aと凹部14aの外側と内側との間の隙間に対して所定の圧力で加圧された水を通水する。通水手段19により通水を行うことで、試料12のせん断帯17の面に沿う方向に沿って、加圧された水が通水され、通水の状態(通水量等)が検出手段20で検出される。
【0050】
検出手段20の検出情報は評価手段21に入力され、せん断帯17に沿った通水の状態からせん断帯17の透水状況(例えば、透水係数)が評価手段21で評価される。
【0051】
これにより、回動方向の変形によりせん断を実施する、即ち、試料12に回動方向の変位を生じさせることで、変位量の制約を減らし、所定の隙間Sに加圧された水を通すことで、飽和状態にある試料12のせん断帯17の近傍に対してせん断帯17の面に沿う方向に通水し、試料12の拘束状態を維持した状態でせん断帯17の近傍に対して通水することができる。
【0052】
従って、ピーク強度後の残留強度の状態まで試料12を変形させてせん断することができ、せん断後の試料12の状態を変化させることなく、せん断帯に対して通水することにより、せん断帯17を流れる水の状況(通水状況)を的確に把握することができる。このため、任意のせん断状態(過程)における試料12のせん断帯の透水性を評価することが可能になる。即ち、ピーク強度後の残留強度の状態まで変位を生じさせたせん断状態での透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【0053】
即ち、回転方向のせん断により試料12を変形させることでせん断量(変位量)に制約を受けることがなく、ピーク強度後の残留強度の状態まで試料12を変形させた状態(せん断状態)での透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【0054】
図3から図7に基づいて透水評価装置11の構成を具体的に説明する。
【0055】
図3には透水評価装置11の全体の状況を表す概略断面視の状況、図4には透水評価装置11の第1保持部材13が上昇している状況、図5には透水評価装置11の要部の構成部材を分解して表した斜視状況、図6には第2保持部材14の外観視の状況、図7には第1保持部材13の外観視の状況を示してある。
【0056】
主に、図3から図6に示すように、透水評価装置11の下部のフレーム31には回動駆動手段16が設けられ、回動駆動手段16の駆動部には駆動ベース32が固定されている(せん断手段)。駆動ベース32には第2保持部材14を構成するベース33が取り付けられて保持ベース34を構成している。
【0057】
ベース33の上面には円環状の下保持部35が形成されている。保持ベース34は、ベース33の外側に配される下筒部36、及び、ベース33の内側に配される下柱部37が設けられている。下保持部35の上面の高さに対し、下筒部36、下柱部37の上面の高さが高く形成され、下筒部36、下柱部37は同一の高さに形成されている。下保持部35の上面により円環状の凹部14aの下側の底面が形成される。
【0058】
ベース33には水平方向に延びる横通水路38(通水手段19)が形成され、横通水路38には所定の圧力に調整された加圧水が供給される。下柱部37には、下端が横通水路38に連通し上端が下柱部37の上面に開口する縦通水路39が形成されている。横通水路38に送られた加圧水は、縦通水路39から下柱部37の上面に送られる。
【0059】
主に、図3から図5図7に示すように、フレーム31には上下方向に延びるねじ軸41が設けられ、ねじ軸41は連動して回転駆動される。ねじ軸41にはナット部材42が螺合して設けられ、ナット部材42には載荷フレーム43が取り付けられている(加圧手段)。載荷フレーム43の下側にはロードセル44を介して昇降ベース45が設けられている。
【0060】
図4に示すように、昇降ベース45には押圧部材46(第1保持部材13)が設けられている。押圧部材46は、筒状の本体の中心部分が径方向に所定の幅を形成して切り欠かれた切欠き筒部47と、切欠き筒部47の下端に設けられた押圧リング48(第1保持部材13)とで構成されている。
【0061】
図5に示すように、押圧部材46の切欠き筒部47の切欠きスペース47aには、上保持部49(第1保持部材13)が設けられている。上保持部49は切欠きスペース47aに配される板状の上フレーム材51と、上フレーム材51の下面に設けられる筒状の上柱部52とで構成されている。上フレーム材51の両端部は、切欠きスペース47aの外側(切欠き筒部47の径方向外側)に配されるフランジ部53が形成されている。
【0062】
上保持部49は切欠き筒部47に対して切欠きスペース47aの内部で昇降自在に設けられている。一方、下筒部36の上面には上筒部54が配され、上筒部54にはフランジ部53に対向し、フランジ部53に締結可能なフランジ55が形成されている。
【0063】
そして、図4に示すように、下筒部36と上筒部54は外周縁がリングフランジ58で連結され、リングフランジ58には排水路59が接続されている。リングフランジ58の内側には周溝58aが形成され、周溝58aが排水路59に連通している。つまり、試料12を放射状に通水された水は周溝58aから排水路59に導かれて排出される。
【0064】
図5に示すように、上保持部49が下側に押圧されることで、上筒部54の下面が下筒部36の上面に接触し(金属面同士で接触)、上柱部52の下面と下柱部37の上面とが接触する(金属面同士で接触する)。
【0065】
図3に示すように、ねじ軸41の回転によりナット部材42を介して載荷フレーム43を下降させることで、ロードセル44、昇降ベース45、押圧部材46、押圧リング48で構成される上保持部49が下側に押圧される。
【0066】
上保持部49が下側に押圧された状態で、上柱部52の下面の高さ方向の位置が押圧リング48の高さ方向の位置よりも下側に位置するようになっている。これにより、下保持部35の上面と押圧リング48の下面との間に円環状の凹部13aが形成される。凹部13aと前述した円環状の凹部14aにより、円環筒状の試料12を収容するための収容空間が画成される。収容空間には上下に多孔部材40(試料12の面に均等に水を通水させるための部材)を介在させて試料12が収容される。
【0067】
下筒部36と上筒部54の間、及び、下柱部37と上柱部52の接触面に隙間を形成した状態で、横通水路38、縦通水路39に加圧水を通水することで、隙間を通して(試料12を通して)リングフランジ58の排水路59に加圧水が排水される。つまり、収容空間に円環筒状の試料12が収容された状態で、試料12の径方向の内側から外側に加圧水が通水される(通水手段19)。
【0068】
一方、上柱部52、上フレーム材51、フランジ部53に亘り空気抜き通用の流路61が形成され、流路61は縦通水路39に連通しバルブ62(後述する図9参照)により開放可能となっている。また、図示は省略したが、第2保持部材14から第1保持部材13にかけて(もしくはその逆)、収容空間の上下(試料12の上下:後述するせん断帯を交差して)に所定の加圧水を通水する上下通水手段が備えられている。
【0069】
昇降ベース45(第1保持部材13)の昇降位置を検出する位置検出手段65が備えられている。即ち、フレーム31にはセンサーロッド66が設けられ、昇降ベース45にはセンサーロッド66に対する位置を検出する検出アーム67が設けられている。ロードセル44の検出結果、及び、位置検出手段65の検出結果により、第1保持部材13の昇降位置が所望の加圧状態で行われているか否かが評価される。
【0070】
フレーム31の上部にはねじジャッキ71が備えられ、ねじジャッキ71の操作により昇降する昇降プレート72が備えられている。昇降プレート72は載荷フレーム43とは独立して昇降自在となっている。昇降プレート72には連結バー73の上端が取り付けられ、連結バー73の下端は上保持部49のフランジ部53に取り付けられている。図中74は荷重検出器である。
【0071】
上保持部49が下側に押圧された状態で、フランジ部53と上筒部54のフランジ55を結合し、ねじジャッキ71の操作により昇降する昇降プレート72を上昇させることができる。これにより、押圧部材46の押圧リング48で試料12を下保持部35に押し付けた状態で(試料12を拘束した状態で:拘束手段)、上保持部49(上柱部52)と上筒部54を上昇させて、下筒部36、下柱部37との接触面に所定の隙間を形成することができる(離反手段)。
【0072】
また、フレーム31の上部から下向きに隙間検出手段(ダイヤルゲージ)75が設けられ、ダイヤルゲージ75の検出部76の先端は昇降プレート72の上面に接触している。つまり、ダイヤルゲージ75によりフレーム31に対する昇降プレート72(上保持部49、上柱部52、上筒部54)の昇降位置、即ち、上柱部52と下柱部37、上筒部54と下筒部36との接触面の隙間が検出される。
【0073】
第1保持部材13の凹部13a、第2保持部材14の凹部14aにより画成される収容空間に多孔部材40を介在させて試料12が収容される。加圧手段により円環筒状の試料12の軸芯方向に第1保持部材13を第2保持部材14に押し付けて凹部13a、凹部14a以外の部位を面接触させる。
【0074】
昇降ベース45の押圧リング48で試料12を拘束した状態で、昇降プレート72を上昇させて、凹部13a、凹部14a以外の部位の第1保持部材13、第2保持部材14を離反させて、上柱部52と下柱部37、上筒部54と下筒部36との接触面に隙間を形成する。回動駆動手段16により第2保持部材14を円環筒状の試料12の軸芯を中心に任意の角度まで回動させて試料12を変形させる。これにより、試料12が変形してせん断され、水平な面のせん断帯17が形成される。
【0075】
試料12を水で飽和させた後、横通水路38、縦通水路39に加圧水を供給し(通水手段)、第1保持部材13の凹部13a、第2保持部材14の凹部14aの内側から外側の隙間に対して通水を行う。これにより、試料12のせん断帯17に水が直接通され、せん断帯17に沿った通水が実施される。排水路59から排水された通水の状態(通水量等)が検出手段20で検出され、検出手段20の情報が評価手段21に送られてせん断帯17の透水状況が評価される。
【0076】
従って、せん断手段により試料12に変形が与えられ、通水手段により試料12のせん断帯17に対して面に沿う方向に通水が行われ、評価手段21によりせん断帯17を通った加圧水の透水状況(透水割合)が評価される。このため、せん断帯17に水を通して透水状況を評価することができ、任意のせん断状態(過程)における試料12のせん断帯17の透水性を評価することが可能になる。
【0077】
図8から図12に基づいて上述した透水評価装置による作用を更に具体的に説明する。
【0078】
図8には通水状況を評価する処理の動作を表したフローチャート、図9(a)には試料12をセットする状態の側面視の状況、図9(b)には上柱部52と下柱部37、上筒部54と下筒部36との接触面に隙間(上下の隙間)の幅をゼロにした状態の側面視の状況、図10(a)には上下の隅間の幅を所定幅に調整した状態の側面視の状況、図10(b)には水平方向に加圧水を通水している状態の側面視の状況、図11には加圧水の流れの状態を説明する平面視の状況、図12にはせん断変位とせん断応力との関係を表すグラフを示してある。
【0079】
図8に示すように、ステップS1で試料12の設置、及び、装置の準備が実施される。即ち、図9(a)に示すように、下筒部36に対して上筒部54を配置し、上筒部54の下面と下筒部36の上面を面接触させて(隙間をゼロにして)リングフランジ58により周縁同士を連結する。
【0080】
上筒部54が固定された状態で、下保持部35、下筒部36で形成される円環状の凹部13a(収容空間)に試料12を載せる。この状態で、載荷フレーム43(図3参照)を下降させ、押圧部材46、上保持部49を下降させ、上柱部52の下面と下柱部37の下面を面接触させる。これにより、試料12が収容空間に拘束される。
【0081】
図9(b)に示すように、上保持部49のフランジ部53と上筒部54のフランジ55をボルトにより締結して一体化する。必要に応じて載荷フレーム43(図3参照)を下降させ、試料12を収容空間で圧密する。流路61のバルブ62を開き、通水手段19により横通水路38、縦通水路39、流路61に給水を行い、横通水路38、縦通水路39、流路61内の空気抜きを行い、流路内を水で飽和させてバルブ62を閉じる。
【0082】
図8に示すように、ステップS2で隙間の調整が実施される。即ち、図10(a)に示すように、押圧部材46で試料12を下保持部35に押し付けた状態で(試料12を拘束した状態で)、上保持部49(上柱部52)と上筒部54を上昇させる。これにより、図10(b)に示すように、下筒部36と下柱部37との接触面に所定の隙間が形成される。
【0083】
図8に示すように、ステップS3で横通水路38、縦通水路39に通水を行い、試料12に給水を行う(図10に示したバルブ30を開く)。合わせて(もしくは、横通水路38、縦通水路39への通水とは別に)、図10(a)に示すように、バルブ28を開いて給水手段24から給水を行い、下流路25から試料12に給水を行い、試料12に溜まっている空気と共に上流路26に水を送る。これにより、水が試料12の下から上に送られ、気泡と共に排出路27から水が排出され、試料12から空気が排出され試料12が水で飽和される(飽和手段)。
【0084】
尚、飽和手段としては、横通水路38、縦通水路39からの通水だけで空気を排出できれば、給水手段24、下流路25、上流路26、排出路27、バルブ28を省略することも可能である。また、横通水路38、縦通水路39から通水し、試料12を通した水を負の圧力で引く構成を採用することも可能である。
【0085】
図8に戻り、ステップS4で駆動ベース32を旋回させ、円環筒状の試料12の軸芯を中心に任意の所望角度(0度を超えた角度から360度以上の任意の角度までの間)まで回動させる。例えば、ピーク強度後の残留強度の状態になる角度まで回動させる。ステップS5で駆動ベース32を停止させる。これにより、軸芯に交差する(水平な)せん断帯17が試料12に形成される。
【0086】
ステップS6で横通水路38、縦通水路39に通水を行う(加圧水を供給する)。即ち、図10に示したバルブ30を開き、横通水路38、縦通水路39に加圧水を供給する。これにより、図11(a)に示すように、試料12の中心から外側に向けて(第1保持部材13の凹部13a、第2保持部材14の凹部14aの内側から外側の隙間に対して)通水が行われ、排水路59から排水される。尚、通水の方向は、図11(b)に示すように、試料12の外側から中心に向けて(第1保持部材13の凹部13a、第2保持部材14の凹部14aの外側から内側の隙間に対して)行うことも可能である(排水路59側から通水を行うことも可能である)。
【0087】
図10(b)に示すように、試料12のせん断帯17の面に沿う方向に沿って、加圧された水が通水され、通水の状態(通水量等)が検出手段20で検出される。検出手段20の検出情報は評価手段21に入力され、せん断帯17に沿った通水の状態からせん断帯17の透水状況(例えば、透水係数)が評価手段21で評価される。
【0088】
従って、試料12のせん断帯17で水を直接通すことができ、せん断帯17に沿った通水を実施することができる。排水路59から排水された通水の状態(通水量等)が検出手段20で検出される。
【0089】
例えば、残留強度の状態での透水状況を評価する場合、ステップS7で試料12がピーク強度後の残留強度の状態になっているか否かが判断され、残留強度の状態になっていると判断された場合、エンドとなり、検出手段20の情報が評価手段21に送られて評価される。ステップS7で残留強度の状態になっていないと判断された場合、ステップS4に移行して駆動ベース32の旋回が継続される(例えば、残留強度の状態になるまで継続される)。
【0090】
図12に示すように、せん断変位に対するせん断応力は、せん断前の状態(1)から、ピーク強度発現前(2)、ピーク強度発現後(3)、残留強度の状態(4)と変化する。ステップS7では残留強度の状態(4)になっているか否かが判断される。このため、残留強度の状態でのせん断帯17の透水状況を評価することができる。
【0091】
尚、ピーク強度発現前(2)、ピーク強度発現後(3)等の任意の状態でのせん断帯17の透水状況を評価することも可能である。
【0092】
上述したように、回動方向に生じる変位により試料12のせん断を実施して変位量の制約を減らし、所定の隙間に加圧水を通すことで、せん断帯17の近傍に対してせん断帯17の面に沿って通水することができ、試料12の拘束状態を維持した状態でせん断帯17の近傍に対して通水することができる。
【0093】
従って、ピーク強度後の残留強度の状態まで試料12を変形させてせん断し、試料12に変位を生じさせることができ、せん断後の試料12の状態を変化させることなく、せん断帯17のせん断面に対して通水し、せん断帯17に水を通して透水状況を的確に評価することができ、任意のせん断状態(過程)における試料12のせん断帯17の透水性を評価することが可能になる。つまり、試料12にせん断力を与えた結果による変位により生じたせん断帯17の透水性を評価することができる。
【0094】
即ち、ピーク強度後の残留強度の状態まで試料12を変形させたせん断状態(過程)での透水性の評価ができると共に、せん断の進行に伴う透水性の変化を評価することができる。
【0095】
上述した透水評価装置11では、任意のせん断状態(過程)における試料12のせん断帯17の透水性を評価することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、透水評価装置、透水評価方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1、11 透水評価装置
2、12 試料
3、13 第1保持部材
4、14 第2保持部材
5、17 せん断帯
6 せん断手段
7 通水手段
8 通水検出手段
9 評価手段
15 加圧手段
16 回動駆動手段
18 昇降手段
19 通水手段
20 検出手段
21 評価手段
24 給水手段
25 下流路
26 上流路
27 排出路
28、30、62 バルブ
31 フレーム
32 駆動ベース
33 ベース
34 保持ベース
35 下保持部
36 下筒部
37 下柱部
38 横通水路
39 縦通水路
40 多孔部材
41 ねじ軸
42 ナット部材
43 載荷フレーム
44 ロードセル
45 昇降ベース
46 押圧部材
47 切欠き筒部
48 押圧リング
49 上保持部
51 上フレーム材
52 上柱部
53 フランジ部
54 上筒部
55 フランジ
58 リングフランジ
59 排水路
61 流路
65 位置検出手段
66 センサーロッド
67 検出アーム
71 ねじジャッキ
72 昇降プレート
73 連結バー
74 荷重検出器
75 隙間検出手段(ダイヤルゲージ)
76 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12