(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008158
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、電子部品用組成物、電子部品用材料
(51)【国際特許分類】
C08G 59/18 20060101AFI20220105BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220105BHJP
C08K 5/105 20060101ALI20220105BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20220105BHJP
C08K 5/315 20060101ALI20220105BHJP
C08L 63/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08G59/18
C08K3/013
C08K5/105
C08K5/13
C08K5/315
C08L63/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097293
(22)【出願日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020108309
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020175358
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃史
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 和宏
(72)【発明者】
【氏名】室本 和美
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD061
4J002CD06W
4J002CD071
4J002CD07W
4J002CD201
4J002CD20W
4J002DE147
4J002DK007
4J002EH146
4J002EJ036
4J002ET006
4J002FD017
4J002FD146
4J002FD207
4J002GQ05
4J036AC07
4J036AJ14
4J036DB08
4J036DB10
4J036DB23
4J036DC32
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、熱伝導性と耐熱性が高いエポキシ樹脂硬化物を提供することである。また該エポキシ樹脂硬化物を与える、組成物を提供することである。
【解決手段】エポキシ化合物と硬化剤を含有する組成物において、エポキシ化合物としてのA成分および硬化剤としてのB成分の、少なくとも一方を含有する組成物。
A成分;2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
B成分;2個以上のフェノール性水酸基、該水酸基がアシル化された基、または2個以上のシアネートエステルを有し、2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
【選択図】なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と硬化剤を含有する組成物において、
エポキシ化合物としてのA成分および硬化剤としてのB成分の、少なくとも一方を含有する組成物。
A成分;2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
B成分;2個以上のフェノール性水酸基、該水酸基がアシル化された基、または2個以上のシアネートエステルを有し、2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
【請求項2】
A成分またはB成分が、芳香環が直線状に連なった骨格を有する化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
A成分を含有し、A成分が式(A)で表される化合物である、請求項2に記載の組成物。
式(A)中、
R
epは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項4】
B成分を含有し、B成分が式(B-I)で表される化合物である、請求項2に記載の組成物。
式(B-I)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項5】
B成分を含有し、B成分が式(B-II)で表される化合物である、請求項2に記載の組成物。
式(B-II)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシで表される基であり、
R
3は独立して、炭素数1から6のアルキルまたはフェニルであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項6】
B成分を含有し、B成分が式(B-III)で表される化合物である、請求項2に記載の組成物。
式(B-III)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシで表される基であり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項7】
式(A)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
式(B-I)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
式(B-II)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
式(B-III)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1から10に記載の組成物。
【請求項12】
無機フィラーをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
無機フィラーが酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または窒化アルミニウムである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【請求項15】
請求項14の硬化物を使用した電子部品用材料。
【請求項16】
式(A1)で表される化合物。
式(A1)中、
R
epは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、
R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項17】
式(B1)で表される化合物。
式(B1)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
ただし、式(B1)で表される化合物が、式(B1-1)で表される化合物であることはない。
【請求項18】
式(B2)で表される化合物。
式(B2)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
R
3は独立して、炭素数1から6のアルキルまたはフェニルであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項19】
式(B3)で表される化合物。
式(B3)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【請求項20】
式(A1)で表される化合物において、Repは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
式(B1)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
式(B2)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、請求項18に記載の化合物。
【請求項23】
式(B3)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、請求項19に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に生じた熱を効率よく伝導する電子部品用組成物、およびこれに用いられる液晶性を有する重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効果的に外部に放出させる能力が重要になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法は、発熱部位に高熱伝導性材料(放熱部材)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。熱伝導性が高い材料は、金属や金属酸化物などの無機材料が挙げられる。しかし、このような無機材料は、加工性や絶縁性などに問題があり、単独で半導体パッケージの充填材への適用は非常に難しい。そのため、これら無機材料と樹脂を複合化し、高熱伝導化した放熱部材の開発が行われている。
【0004】
複合材の高熱伝導化は、一般的に、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂に、金属充填材などの無機充填材を多量に添加することにより行われてきた。しかし、無機充填材の熱伝導率は物質固有の値であり上限が決まっている。そのため、樹脂の熱伝導率を向上させることで、複合材のこれを行う方法が広く試みられている。これを実際に行う手段は、例えば、液晶性を有するエポキシ化合物を用いる方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、グリシジルオキシを2つ有するターフェニル化合物が開示されている。また特許文献2には、グリシジルオキシを3つ有するターフェニル化合物が開示されている。しかしながら該特許文献に開示されている化合物は、液晶温度が無く、融点も117℃以上の高い温度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/61473号
【特許文献2】国際公開第2016/6649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、熱伝導性と耐熱性が高いエポキシ樹脂を提供することである。また該エポキシ樹脂を与える、エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エポキシ化合物としてのA成分および硬化剤としてのB成分の、少なくとも一方を含有する組成物およびその硬化物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
A成分;2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
B成分;2個以上のフェノール性水酸基または2個以上のシアネートエステルを有し、2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
【発明の効果】
【0010】
上記組成物は、それ自体または該組成物を硬化する際に、液晶性を発現し易い。そのため、硬化物は高い熱伝導性を持つ。また該硬化物は耐熱性が高い。そこで、パワー半導体用などの放熱材料として、好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本発明は、実施の形態に制限されるものではない。
【0012】
本発明は下記の項などである。
【0013】
[1] エポキシ化合物と硬化剤を含有する組成物において、エポキシ化合物としてのA成分および硬化剤としてのB成分の、少なくとも一方を含有する組成物。
A成分;2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
B成分;2個以上のフェノール性水酸基、該水酸基がアシル化された基、または2個以上のシアネートエステルを有し、2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
【0014】
[2] A成分またはB成分が、芳香環が直線状に連なった骨格を有する化合物である、項[1]に記載の組成物。
【0015】
[3] A成分を含有し、A成分が式(A)で表される化合物である、項[2]に記載の組成物。
式(A)中、
R
epは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0016】
[4] B成分を含有し、B成分が式(B-I)で表される化合物である、項[2]に記載の組成物。
式(B-I)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0017】
[5] B成分を含有し、B成分が式(B-II)で表される化合物である、項[2]に記載の組成物。
式(B-II)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシで表される基であり、
R
3は独立して、炭素数1から6のアルキルまたはフェニルであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0018】
[6] B成分を含有し、B成分が式(B-III)で表される化合物である、[2]に記載の組成物。
式(B-III)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシで表される基であり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0019】
[7] 式(A)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[3]に記載の組成物。
【0020】
[8] 式(B-I)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[4]に記載の組成物。
【0021】
[9] 式(B-II)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[5]に記載の組成物。
【0022】
[10] 式(B-III)で表される化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、項[6]に記載の組成物。
【0023】
[11] 硬化促進剤をさらに含む、項[1]から[10]に記載の組成物。
【0024】
[12] 無機フィラーをさらに含む、項[11]に記載の組成物。
【0025】
[13] 無機フィラーが酸化アルミニウム、窒化ホウ素、または窒化アルミニウムである、項[12]に記載の組成物。
【0026】
[14] 項[1]から[13]のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【0027】
[15] 項[14]の硬化物を使用した電子部品用材料。
【0028】
[16] 式(A1)で表される化合物。
式(A1)中、
R
epは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、
R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0029】
[17] 式(B1)で表される化合物。
式(B1)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
ただし、式(B1)で表される化合物が、式(B1-1)で表される化合物であることはない。
【0030】
[18] 式(B2)で表される化合物。
式(B2)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
R
3は独立して、炭素数1から6のアルキルまたはフェニルであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0031】
[19] 式(B3)で表される化合物。
式(B3)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、
nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0032】
[20] 式(A1)で表される化合物において、Repは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、項[16]に記載の化合物。
【0033】
[21] 式(B1)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、項[17]に記載の化合物。
【0034】
[22] 式(B2)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、項[18]に記載の化合物。
【0035】
[23] 式(B3)で表される化合物において、Xは単結合であり、R1の1つは式(1)で表される基であり、他のR1は水素であり、nは0または1の整数である、項[19]に記載の化合物。
【0036】
「環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく」の句は、例えば1,4-フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがフッ素やメチル等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味する。
「化合物(1)」は、式(1)で表される化合物を意味し、また、式(1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。
【0037】
[A成分およびB成分]
上記したように、エポキシ化合物としてのA成分および硬化剤として下のB成分の、少なくとも一方を含有する組成物を用いることで、本願の課題を解決できる。
【0038】
A成分;2個以上のオキシラニルおよび2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
B成分;2個以上のフェノール性水酸基または2個以上のシアネートエステルを有し、2から5個の芳香環を有する化合物であって、該芳香環の1から3個の水素がビニル由来の基に置き換えられた化合物。
【0039】
上記ビニル由来の基とは、ビニルまたはビニルのHが一価の有機基で置き換えられた基である。このとき、ビニルの置換数に制限は無いが、耐熱性を向上するためには、無置換または一置換であることが好ましい。またビニルの置換位置にも制限は無い。
【0040】
A成分またはB成分の化合物における上記ビニル由来の基の数は、1から3個であるが、組成物の液晶性を向上させるためには、1から2個が好ましく、1個が最も好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂硬化物の耐熱性をより向上させるためには、本発明のA成分とB成分の両方を含む組成物とすることが好ましい。一方で、線膨張係数の調整など、硬化物の物性値を調節するために、本発明のA成分とB成分のどちらか一方を含む組成物とすることも好ましい。さらに同目的のため、本発明の組成物に他の公知のエポキシ樹脂組成物を加えても良い。
【0042】
硬化した際の熱伝導性を向上するためには、エポキシ樹脂硬化物中における分子骨格を秩序高く配置することが好ましい。そのため、エポキシ樹脂組成物やその硬化途中において、液晶性を高めることが好ましい。液晶性を高めるには、A成分またはB成分の化合物の構造において、芳香環が連なった構造であることが好ましい。
【0043】
A成分およびB成分の化合物自体に液晶性を付与することも、エポキシ樹脂組成物やその硬化途中の状態での、液晶性を高めるために、好ましい。このとき、化合物に液晶性を付与するためには、コアとして、芳香環が直線状に連なり、そのコアの両端にアルキル等の柔軟性のある置換基が結合した構造であることが、好ましい。液晶性を有する化合物のコアとは、芳香環や脂環が、比較的コンフォメーションが定まった結合基で連結された構造を示す。このとき、該結合基の例は単結合、エチレン、オキシメチレン、二重結合、または三重結合等が挙げられる。このとき上記直線状とは、厳密な直線である必要はなく、45度程度の角度まで屈曲してもよい。
【0044】
上記の液晶性を有する化合物に関しては、液晶温度範囲を拡大するために、コアが芳香環を2から5個有することが好ましい。成分同士の相溶性を向上するため、もしくは材料コストを下げるためには、芳香環2から4個を有することがより好ましい。また上記液晶性と相溶性の特性を両方満足するためには、芳香環は3個であることが、最も好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂硬化物に高い熱伝導性および耐熱性を付与するためには、本発明のA成分は、式(A)で表される化合物であることが、好ましい。
式(A)中、R
epは独立して、オキシラニルを含む炭素数3から12の基である。Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-である。R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0046】
式(A)の構造において、液晶性や耐熱性の向上、および製造上の容易さから、Xは単結合、-(CH2)2-、-(CH2)4-、-(CH2)6-、-(CH2)8-、-(CH2)10-、-(CH2)12-、または-C≡C-であることが好ましく、単結合、-(CH2)2-、-(CH2)4-、または-C≡C-であることがさらに好ましく、単結合であることが最も好ましい。このような式(A)の好ましい例は、式(A-1)~(A-11)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【0048】
式(A-1)から式(A-11)中、Repはオキシラニルを含む炭素数3から12の基であり、R10およびR11は独立して、水素、炭素数1から6のアルキルであり、これらR10およびR11の少なくとも1つは水素である。
【0049】
上記(A-1)から式(A-11)において、高い液晶性を与え、かつ製造コストを下げられるため、Repはグリシジルでが好ましく、R10およびR11は水素、炭素数1から3のアルキルが好ましい。
【0050】
B成分は、コアの両端に柔軟性のある置換基が結合した構造にすることが、合成上やや難しい。このような化合物は、液晶性を示し難い。しかしながら本発明B成分の化合物は、芳香環を有する他の化合物と混合した場合、該化合物と相互作用し易い。そのため、A成分の化合物やその他の公知のエポキシ化合物が液晶性を示す場合、エポキシ化合物の液晶性を損なうことが無い。結果として本発明の組成物は高い液晶性を示す。
【0051】
エポキシ樹脂硬化物に高い熱伝導性および耐熱性を付与するためには、本発明のB成分は、式(B-I)で表される構造の化合物であることが、好ましい。
式(B-I)中、Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-である。R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、nは0から2の整数である。
式(1)中、R
2は独立して、水素または炭素数1から12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
【0052】
または、本発明のB成分は、式(B-II)で表される構造の化合物であることが、好ましい。
式(B-II)中、
Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-であり、
R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシで表される基であり、
R
3は独立して、炭素数1から6のアルキルまたはフェニルであり、
nは0から2の整数である。
【0053】
さらには、本発明のB成分は、式(B-III)で表される構造の化合物であることが、好ましい。
式(B-III)中、Xは独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、-CH
2O-、-CH=CH-、または-C≡C-である。R
1の少なくとも1つは式(1)で表される基であり、他のR
1は独立して、水素、炭素数1から5のアルキル、または炭素数1から5のアルコキシであり、nは0から2の整数である。
【0054】
式(B-I)、式(B-II)、および式(B-III)で表される化合物において、液晶性や耐熱性の向上、および製造上の容易さから、Xは単結合、-(CH2)2-、-(CH2)4-、-(CH2)6-、-(CH2)8-、-(CH2)10-、-(CH2)12-、または-C≡C-であることが好ましく、単結合、-(CH2)2-、-(CH2)4-、または-C≡C-であることがさらに好ましく、単結合であることが最も好ましい。このような化合物(B-I)、(B-II)および(B-III)の好ましい例は、以下の式(B-1)~(B-13)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【0056】
式(B-1)から式(B-13)中、R12は独立して、水酸基、該水酸基がアシル化された基、またはシアナトであり、R10およびR11は独立して、水素、炭素数1から6のアルキルであり、これらR10およびR11の少なくとも1つは水素である。
【0057】
上記(B-1)から式(B-13)において、高い液晶性を与え、かつ製造コストを下げられるため、R10およびR11は水素、炭素数1から3のアルキルが好ましい。
【0058】
本発明組成物に使用されるA成分またはB成分の化合物は、1種類または複数を使用しても、所望の特性を得られる。また組成物の液晶性を喪失させない限りにおいては、その他の公知のエポキシ化合物や硬化剤を併用できる。これらの成分を併用する際に、該A成分またはB成分の化合物の含有量には特に制限は無い。しかしながら本発明の効果を発揮するためには、A成分またはB成分の含有量は、エポキシ化合物または硬化剤のそれぞれの総量に対し、それぞれ30重量%から100重量%が好ましく、50重量%から100重量%がより好ましい。
【0059】
[A成分以外のエポキシ化合物]
このようなエポキシ化合物は、式(LC-1)から式(LC-12)で表される液晶性エポキシ化合物を好ましく用いることができる。
【0060】
【0061】
また上記他のエポキシ化合物は、式(o-1)から式(o-15)で表される非液晶性エポキシ化合物が好ましく用いられる。
【0062】
【0063】
式(o-6)において、Z10は単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-である。
【0064】
【0065】
式(o-7)および式(o-8)において、Z11は>CH-または>CCH3-である。
【0066】
【0067】
また上記他のエポキシ化合物は、式(o-20)~式(o-24)で表される化合物からなる樹脂も好ましく用いられる。
【0068】
【0069】
式(o-20)中、Z12およびZ13は独立して、単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-であり、n21は1以上5000以下の整数である。
式(o-21)および式(o-22)中、n21は1以上5000以下の整数である。n22およびn23は独立して、0または1であり、n21が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよい。
R10およびR11は1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンである。
またこれら式(o-20)から式(o-22)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0070】
【0071】
式(o-23)および式(o-24)中、Z14は独立して、単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n21は1以上5000以下の整数である。
またこれら式(o-23)および式(o-24)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0072】
本発明組成物中の、このような公知のエポキシ化合物の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現する限りにおいて、特に制限は無い。すなわちエポキシ化合物の全重量に対し、0.1重量%から70重量%の間で使用できる。このとき本発明の効果を発現させるためには、0.1重量%から60重量%の間で使用することが好ましく、0.1重量%から55重量%の間で使用することがさらに好ましく、0.1重量%から50重量%の間で使用することが最も好ましい。
【0073】
[その他の硬化剤]
本発明組成物に併用できる、B成分以外の硬化剤は、公知の全てのフェノール、フェノールエステル、シアネートエステル、アミン、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールなどの化合物を使用できる。このとき、組成物の室温での硬化を抑え、保存安定性を向上させるためには、フェノール系またはシアネートエステル系の硬化剤を使用することが好ましい。
【0074】
フェノール系硬化剤は、組成物の液晶性を大きく損なうことがなく、容易に入手できることから、下記式(p-1)から(p-6)で表される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0075】
【0076】
式(p-1)中、n31は2以上4以下の整数であり;
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよい。
式(p-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
Z30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-O-、-S-、-SO2-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルで置き換えられてもよい。
式(p-3)および式(p-4)中、n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよい。
式(p-4)中、R10およびR11は1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、シクロペンタジエニレンであり、
式(p-5)中、n34は1以上5000以下の整数であり、
式(p-6)中、n34は1以上5000以下の整数であり、
Z31は独立して、単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
またこれら式(p-3)から式(p-6)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0077】
アミン系硬化剤は、組成物の液晶性を大きく損なうことがなく、容易に入手できることから、下記式(a-1)または(a-2)で表される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
E1-Z-(L-Z)n-E1 (a-1)
L1-Z-E (a-2)
【0078】
式(a-1)および(a-2)中
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、-CO2-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
式(a-1)中、
E1は独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、又はカルボキシであり、少なくとも1つのEは、アミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、または炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
nは、0~7の整数である。
式(2-2)中、
L1は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、または炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Eは、アミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノである。
【0079】
このような式(a-1)で表される化合物は、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミンなどの炭素数2~12の脂肪族多価アミン、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、m-トリジン、o-トリジンなどの芳香族多価アミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの、脂環式多価アミンが挙げられる。
【0080】
これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れることから、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好適である。
【0081】
式(a-2)で表される化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミンなどの炭素数2~12の脂肪族アミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリン、1-ナフチルアミン、1-アミノ-2-メチルナフタレンなどの芳香族アミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミンが挙げられる。これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れることから、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリンが特に好適である。
【0082】
好ましいカルボキシ含有硬化剤は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0083】
本発明組成物中の、このような公知の硬化剤の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現する限りにおいて、特に制限は無い。すなわち硬化剤の全重量に対し、0.1重量%から70重量%の間で使用できる。このとき本発明の効果を発現させるためには、0.1重量%から60重量%の間で使用することが好ましく、0.1重量%から55重量%の間で使用することがさらに好ましく、0.1重量%から50重量%の間で使用することが最も好ましい。
【0084】
本発明組成物において、A成分を含むエポキシ化合物とB成分を含む硬化剤の比は、特に制限は無い。このとき耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、該エポキシ化合物と該硬化剤との反応基を当量とすることが好ましい。例えば、エポキシ:フェノールの場合は、1:1であり、エポキシ:アミンの場合は2:1である。
【0085】
[硬化促進剤]
本発明の組成物は、A成分のエポキシ化合物またはB成分の硬化剤を含む。本発明の組成物は、耐熱性を向上させるため、さらに硬化促進剤を含むことが好ましい。このような硬化促進剤として、2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルフォスフィンなどのリン系硬化促進剤、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、4-ジメチルアミノピリジンなどのアミン系硬化促進剤、テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。このような硬化促進剤のうち、硬化温度が200℃以下であり硬化性が高いことから、イミダゾール系の硬化促進剤を使用することが好ましい。
【0086】
本発明の組成物における硬化促進剤の濃度は、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、本発明重合性化合物の重量に対し、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましい。また硬化促進剤の昇華などによる信頼性などの悪化を避けるために、本発明重合性化合物の重量に対し、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
[無機フィラー]
本発明の電子部品用組成物は、無機フィラーを含有してもよい。
電子部品用組成物が含有する無機フィラーは、高熱伝導性の充填材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材や金属充填材であってもよい。好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムである。窒化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率が低く、絶縁性が高いため好ましい。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や窒化アルミニウムが好ましい。
【0088】
無機フィラーの形状は、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状、四脚状などが挙げられる。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。例えば、電子部品用組成物から形成された硬化物(電子部品用材料)が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。
【0089】
無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~200μmが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げられる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論及びミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
【0090】
無機フィラーの添加量は、例えば放熱部材に用いる場合は、電子部品用組成物中の不揮発分の総量に対し、20~95重量%が好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると放熱部材が脆くならず好ましい。
【0091】
無機フィラーは、未修飾のものをそのまま使用してもよい。又は、その表面をカップリング剤で処理したものを用いてもよい。例えば、窒化ホウ素(h-BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、電子部品用組成物中の重合性化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。そのため、カップリング剤は、オキシラニル、オキセタニル、又は硬化剤の有する基と反応するものが好ましい。例えば、アミン系、又はオキシラニル、オキセタニルを有するものが好ましい。具体的には、JNC(株)製では、サイラエースS310,S320,S330,S360,S510,S530などが挙げられる。
【0092】
無機フィラーは、カップリング剤で処理した後、さらにエポキシなどの重合性の基を持つ化合物(重合性化合物)で表面修飾したものを用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h-BN)を重合性化合物で表面修飾する。重合性化合物で表面修飾された窒化ホウ素が、電子部品用組成物中の重合性化合物や硬化剤と結合を形成できると、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。例えば、重合性化合物は、式(1)で示す本発明重合性化合物であってもよく、それ以外の重合性化合物であってもよい。
【0093】
[その他の構成要素]
本発明の組成物において、含有することのできるその他の構成要素は、特に限定されない。例えばエポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物、非重合性化合物、重合開始剤、及び溶媒などが挙げられる。
【0094】
エポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物は、本発明の電子材料の特性を低下させない限りにおいて、特に制限は無く、公知の重合性化合物を使用できる。その中でも、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物が好ましく使用出来、液晶性を持つようなこれら化合物が、より好適に使用できる。
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および光アニオン重合開始剤などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤はスルホニウム塩系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンアジド、有機酸ヒドラジド、トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。また光カチオン開始剤は、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などが知られている。さらに光アニオン開始剤は、オキシム系、カーバメート系、グアニジウム-カルボン酸塩系、ニフェジピン系などが知られている。
【0095】
本発明組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0096】
本発明の組成物は溶媒を含有してもよい。該組成物の重合は溶媒中で行っても、無溶媒で行ってもよい。好ましい溶媒は、例えば、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-エチルヘキサノール、1-プロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、2-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールが挙げられる。溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0097】
本発明の組成物は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤は、公知のものを制限なく使用できる。例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノール、及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。
【0098】
さらに、電子部品用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために、例えば、ガラス、カーボンファイバーなどの無機繊維や、それらのクロス、又は、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの合成繊維、又は、超分子を添加してもよい。
【0099】
[電子部品用材料]
本発明の電子部品用材料は、上記第2の実施の形態に係る電子部品用組成物を硬化させた硬化物を用途に応じて成形したものである。例えば、電子部品用材料を放熱部材として適用できる。
【0100】
電子部品用材料は、本発明の組成物を重合(硬化)させることによって得られる重合体である。この重合体は、高い熱伝導性を有するとともに、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
【0101】
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、原料となる組成物を加熱することで、組成物に含まれるモノマーを高分子化させ、さらに三次元架橋させること等により、硬化する。この際の加熱温度は、本発明の組成物が液晶相を示す温度範囲であることが好ましい。また本発明の組成物は、硬化をある程度進めることにより、液晶温度範囲が上昇する場合もある。このような場合は、上昇した液晶温度範囲において硬化させてもよい。
【0102】
硬化させる温度は、一定であってもよく、段階的に上昇または降下させてもよい。後者の場合、最初の硬化温度は、材料の放熱特性を向上させるため、組成物またはその硬化物が液晶相を示す温度が好ましい。また耐熱性を向上させるため、最初の硬化温度より高い温度で加熱することが好ましい。異なる温度で段階的に硬化させる場合、硬化物の製造時間を短縮するため、一定かつ異なる温度にした複数の加熱装置を用い、硬化させることが好ましい。
【0103】
熱重合による熱硬化温度は、20℃~350℃、好ましくは20℃~250℃、より好ましくは50℃~200℃の範囲である。硬化時間は、5秒~10時間、好ましくは1分~8時間、より好ましくは5分~5時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなどを抑制するために徐冷が好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0104】
より架橋させるために架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性及び耐熱性に極めて優れた重合体(硬化物)を得られる。このような架橋剤は、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0105】
本発明の電子部品用材料は、シート、フィルム、薄膜、繊維、成形体などの形状で使用できる。好ましい形状は、フィルム及び薄膜である。フィルム及び薄膜は、電子部品用組成物を基板に塗布した状態又は基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する電子部品用組成物を、基板に塗布し溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体のプレス成形によっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は1mm以上であり、フィルムの膜厚は5μm以上、好ましくは10~900μmであり、より好ましくは20~800μmであり、薄膜の膜厚は5μm未満である。膜厚は用途に応じて適宜変更してよい。
【0106】
本発明の電子部品用材料は、高熱伝導性に加え、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などの優れた特性をも有する。よって、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱塗膜、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。
【0107】
本発明の重合性化合物から形成された電子部品用材料を上記では放熱材料として用いることを説明したが、電子部品用材料の用途は放熱材料に限られない。例えば、封止材や接着材料として用いてもよい。
【0108】
[電子部品用組成物の製造方法]
電子部品用組成物とは、本発明の組成物である放熱材料を指し、熱伝導性を高めるため無機フィラーを含有してもよく、無機フィラーに対するカップリング処理の実施は問わない。電子部品用組成物の製造例として、無機フィラーにカップリング処理を施す場合の製造方法を説明する。カップリング処理は公知の方法を適用できる。
【0109】
一例として、まず無機フィラー粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒乾燥後に真空乾燥機等を用いて真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラー粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の無機フィラー粒子を乾燥させる。
【0110】
次にカップリング処理された無機フィラー粒子と重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理及び遠心分離によって分離精製する。
【0111】
さらにアミン系硬化剤を加え、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない電子部品用組成物が得られる。
【0112】
[電子部品用材料の製造方法]
一例として、溶媒を含有しない電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を説明する。
【0113】
溶媒を含有しない電子部品用組成物を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形により成形する。重合性化合物が所定の温度、時間で重合し重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50~500kgf/cm2が好ましく、より好ましくは70~250kgf/cm2である。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
【0114】
なお、電子部品用組成物は一部を硬化させた状態(半硬化状態)とすると、扱い易くなる。例えば、半硬化状態の組成物をシート状に形成し、好みの形に切り取り、これを好適な部材と部材の間に配置し貼りあわせてもよい。
【0115】
溶媒を含有する電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を説明する。
【0116】
基板上に電子部品用組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法は、例えば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、スリットコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート法などが挙げられる。
【0117】
溶媒の乾燥除去は、例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどにより実施できる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。
【0118】
[電子部品]
電子部品は、例えば発熱部を有する電子デバイスが挙げられる。本発明の電子部品用材料を放熱部材として用いる場合は、放熱部材を前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置する。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。このように、放熱部材により電子デバイスに生じた熱を放熱させ、熱による故障を回避し、電子デバイスを備える電子機器の寿命を延ばせる。
【0119】
電子デバイスの一例として、半導体素子が挙げられる。放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のためより効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【0120】
[式(A1)、式(B1)、および式(B2)で表される化合物の合成方法]
式(A1)、式(B1)、および式(B2)で表される化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の重合性基及び環構造を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。さらに実施例でも一部を開示する。
【実施例0121】
以下に、本発明に対して実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、実施例に記載された内容に限定されるものではない。なお温度の記載がない場合は、23℃で測定を行った。
【0122】
[化合物の相転移点測定および液晶相の同定]
ホットステージ(メトラー トレド社製)付き偏光顕微鏡(ニコン社製)および示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて行った。偏光顕微鏡測定は、クロスニコル下で観察した。昇温速度はどちらも3℃/minで測定した。Cは結晶、Sはスメクチック相、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示し、()はモノトロピック液晶相を示す。
【0123】
[NMR測定]
NMRは、VARIAN社製のVARIAN NMR SYSTEMで計測した。1H NMR測定での磁場強度は500MHzであり、試料はCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は室温で行った。この際、積算回数は8回である。内部標準は、テトラメチルシランである。NMRの符号のうち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0124】
[組成物の液晶性の確認]
組成物をガラスプレートに挟み、該組成物を一度溶融させてから急冷し、ガラスの間にまんべんなく密着させた。得られたサンプルを5℃/minの昇温速度で、200℃まで加熱後、室温まで急冷した。該サンプルは上記偏光顕微鏡を用い、クロスニコル下で観察した。接眼および対物レンズの倍率は、それぞれ10x10倍であった。散乱現象による光抜けが観察領域の50%以上にみられる場合、組成物に液晶性があると判断した。または、組成物が垂直配向した硬化物を与える場合、顕微鏡観察では暗視野となる。そこでクロスニコル下、サンプルを煽ることで生ずる光抜けを、目視で確認した。
【0125】
[ガラス転移点(Tg)の測定による耐熱性の評価]
リガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231で測定した。アルミパンに入れた組成物を、10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱し、そのままの温度を30分維持した。その後10℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、再度、10℃/分の昇温速度で、200℃まで加熱した。2回目の昇温過程で得られたDSC曲線から、ガラス転移温度を求めた。
【0126】
[熱伝導率の測定]
・樹脂のみから成るサンプル;NETZSCH(株)製、LFA467 HyperFlashを用い、サンプルの熱拡散率(α、m2/s)を求めた。熱拡散率は、サンプルの面内方向と厚み方向に対して、それぞれ測定した。サンプルの比熱(c、J/(Kg))と密度(ρ、g/m3)から、以下の式に従い、熱伝導率(W/(Km))を求めた。
κ=αxcxρ
このとき、比熱は(株)リガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231で測定した。比重は、新光電子(株)製比電子はかり式比重計DME-220により測定した。
・フィラー入りサンプル;(株)アイフェイズ製、ai-Phase Mobile 1u熱拡散率測定装置により、サンプルの厚み方向の熱拡散率を測定した。また上記と同様にして、サンプルの比熱と密度を測定した。これらの値から、上記と同様にして、熱伝導率を求めた。
【0127】
[エポキシ化合物および硬化剤]
式(A)で表されるエポキシ化合物として、下記(A-1-1)、式(A-7-1)、式(A-7-2)および式(A-10-1)で表される化合物を実施例に使用した。これらの化合物は後述に記載した通り合成した。
またA成分以外のエポキシ化合物として、YX4000H(三菱化学社製)で表されるエポキシ化合物を用いた。さらに、下記式(LC-6)および化合物(LC-10)で表されるエポキシ化合物も使用した。これらの化合物は特願2021-083058号に従い、合成した。
式(B-I)で表される硬化剤として、下記式(B-1-1)、式(B-1-2)、式(B-1-3)、式(B-1-4)、式(B-9-1)、式(B-9-2)、および式(B-12-1)で表される化合物を使用した。またB成分以外の硬化剤として、特開2015-209529号に記載の硬化剤であるDHTP-M(本州化学工業社製)を使用した。
【0128】
【0129】
[市販の硬化剤]
アミン系硬化剤として、1,3-フェニレンジアミン(PDA)および3,5-ジメチルアニリン(DMA)は、東京化成工業(株)製を、精製せずにそのまま使用した。またフェノール系硬化剤として、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BPOH)を、精製せずにそのまま使用した。
【0130】
[硬化促進剤]
イミダゾール系の硬化促進剤であるキュアゾール2PZ-PW(四国化成工業株式会社製)は、精製せずにそのまま使用した。
【0131】
[参考例1]
式(B-9-1)で表される化合物の合成
上記式において、THPOはテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシであり、PPTSはp-トルエンスルホン酸ピリジニウムを表す。
【0132】
2,5-ジブロモスチレン1.00g(3.81mmol)、4-(Tetrahydro-2H-pyran-2-yloxy)phenylboronic Acid1.86g(8.38mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)0.220g(0.190mmol)、およびNa2CO31.62g(15.3mmol)の混合物を、ジメトキシエタン(20ml)中、窒素気流下、3時間還流した。2,5-ジブロモスチレンはJourrnal of American Chemical Society,vol.134,p16131(2012).に従い合成した。反応終了後、反応液を冷却し、純水及びトルエン各60mlを加えた。有機層を分離後、同量の純水で2回洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、化合物(B-9-1-a)を得た。収量1.26g(収率72%)。
【0133】
化合物(B-9-1-a)1.57g(3.43mmol)およびp-トルエンスルホン酸ピリジニウム346mg(1.38mmol)の混合物を、テトラヒドロフラン(THF)/メタノール(10ml/10ml)混合溶媒中、室温で2日撹拌した。酢酸エチル(30ml)と純水(30ml)を加え、分液を行った。有機層を純水(20ml)で洗浄後、無水MgSO4で乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物を再結晶(エタノール/トルエン)で精製することにより、化合物(B-9-1)を得た。収量833mg(収率84%)。
【0134】
融点(℃);191-194.
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.77(d,1H,J=2.50Hz),7.56-7.54(m,2H),7.49(dd,1H,J=8.00,2.50Hz),7.32(d,1H,J=8.00Hz),7.28-7.25(m,2H),6.95-6.88(m,4H),6.80-6.75(m,1H),5.76(dd,1H,J=17.50,1.50Hz),5.23(dd,1H,J=11.0,1.00Hz),4.82(brs,2H)
【0135】
[実施例1]
式(A-7-1)で表される化合物の合成
式(B-9-1)で表される化合物1.00g(3.47mmol)、エピブロモヒドリン4.73g(34.5mmol)、K
2CO
31.92g(13.9mmol)の混合物を、メチルエチルケトン(10ml)中、10時間還流した。冷却後、反応液にトルエン(30ml)と純水(30ml)を加え、分液を行った。有機層を純水(20ml)で洗浄後、無水MgSO
4で乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、化合物(A-7-1)を得た。収量1.03g(収率74%)。
相転移点(℃);C・130.6・I
1H―NMR(ppm,CDCl
3);7.79(d,1H,J=2.00Hz),7.59-7.57(m,2H),7.49(dd,1H,J=8.00,2.00Hz),7.33-7.29(m,3H),7.03-7.95(m,4H),6.78-6.72(m,1H),5.75(dd,1H,J=17.50,1.50Hz),5.22(dd,1H,J=10.5,1.00Hz),4.29-4.25(m,2H),4.03-3.99(m,2H),3.40-3.38(m,2H),2.94-2.91(m,2H),2.79-2.77(m,2H).
【0136】
[実施例2] 式(B-9-2)で表される化合物の合成
上記式において、THPOおよびPPTSは上記と同様な意味を表す。
【0137】
2,5-ジブロモスチレンの代わりに、1,4-ジブロモ-2-イソプロぺニルベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様な方法で、式(B-9-2-a)で表される化合物を合成した。原料である1,4-ジブロモ-2-イソプロぺニルベンゼンは、DE2431144に従い合成した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、化合物(B-9-2-a)を得た。収率67%。
【0138】
化合物(B-9-2-a)を用い、参考例1と同様な方法で、脱THP化した。得られた生成物を再結晶(酢酸エチル/ヘプタン)で精製することにより、化合物(B-9-2)を得た。収率90%。
【0139】
融点(℃);140.5
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.55-7.52(m,2H),7.50-7.48(m,1H),7.60(d,1H,J=2.00Hz),7.36-7.31(m,3H),6.93-6.90(m,2H),6.87-6.84(m,2H),5.11(dd,1H,J=1.50,1.50Hz),5.07(brs,1H),4.84(brs,1H),4.80(brs,1H),1.70(s,3H).
【0140】
[実施例3] 式(A-7-2)で表される化合物の合成
式(B-9-2)で表される化合物を用い、実施例1と同様な方法で合成した。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=40:1)で精製することにより、化合物(A-7-2)を得た。収率85%。
【0141】
相転移点(℃);C・131.9・I
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.59-7.56(m,2H),7.51-7.49(m,2H),7.47(d,1H,J=2.00Hz),7.40-7.38(m,2H),7.33(d,2H,J=8.00Hz),7.02-6.99(m,2H),6.95-6.92(m,2H),5.11(dd,1H,J=1.50,1.50Hz),5.07(brs,1H),4.29-4.25(m,2H),4.04-3.99(m,2H),3.41-3.38(m,2H),2.94(t,2H,J=4.50Hz),2.80-2.78(m,2H),1.70(s,3H).
【0142】
[実施例4] 式(B-12-1)で表される化合物の合成
上記式において、Tfはトリフルオロメタンスルホニルであり、THPおよびPPTSは上記と同様な意味を表す。
【0143】
3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル 2.00g(9.34mmol)およびピリジン6.6mlの塩化メチレン(20ml)溶液中に、無水トリフルオロメタンスルホン酸3.4ml(20.7mmol)を室温以下で加えた。反応液を一晩撹拌後、純水(50ml)にあけ、トルエン(50ml)で抽出した。有機層を、希塩酸、純水、および重曹水(各50ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層をろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することにより、化合物(B-12-1-a)を得た。収量3.66g(収率82%)。上記反応において、3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルは、Journal of Medicinal Chemistry, vol.52, p.858(2009).に従って合成した。
【0144】
化合物(B-12-1-a)2.00g(4.18mmol)を用い、参考例1と同様な方法で、4-(Tetrahydro-2H-pyran-2-yloxy)phenylboronic Acidと反応させた。得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、化合物(B-12-1-b)を得た。収量1.45g(収率65%)。
【0145】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド868mg(2.43mmol)のTHF(10ml)溶液に、t-BuOK294mg(2.62mmol)のTHF(10ml)溶液を、0℃以下で加えた。0℃で30分撹拌後、-20℃に冷却し、化合物(B-12-1-b)1.00g(1.87mmol)を加えた。室温で2時間撹拌後、純水(50ml)にあけ、トルエン(50ml)で抽出した。有機層を純水(50ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層をろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製することにより、化合物(B-12-1-c)を得た。収量857mg(収率86%)。
【0146】
化合物(B-12-1-c)850mg(1.60mmol)を用い、参考例1と同様な方法で、(B-12-1)を合成した。生成物を再結晶(エタノール/トルエン)で精製することにより、化合物(B-12-1)を得た。収量512mg(収率88%)。
【0147】
融点;250℃以上
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.87(d,1H,J=1.50Hz),7.73-7.70(m,2H),7.66-7.62(m,2H),7.58(dd,1H,J=7.50,2.00Hz),7.57-7.54(m,2H),7.37(d,1H,J=8.00Hz),7.30-7.27(m,2H),6.95-6.89(m,4H),6.79(dd,1H,J=17.0,11.0Hz),5.79(d,1H,J=17.0Hz),5.26(d,1H,J=11.5Hz)、4.80(brs,2H).
【0148】
[実施例5] 式(A-10-1)で表される化合物の合成
実施例1と同様な方法により、式(B-12-1)で表される化合物から合成した。収率78%。
【0149】
相転移点(℃);C・169.2・S・>300・I
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.87(d,1H,J=1.50Hz),7.73-7.70(m,2H),7.66-7.64(m,2H),7.61-7.57(m,3H),7.37(d,1H,J=8.00Hz),7.34-7.32(m,2H),7.05-6.98(m,4H),6.79(dd,1H,J=17.0,11.0Hz),5.79(d,1H,J=17.0Hz),5.25(d,1H,J=11.0Hz),4.31-4.27(m,2H),4.05-4.01(m,2H),3.43-3.38(m,2H),2.96-2.93(m,2H),2.81-2.79(m,2H).
【0150】
[実施例6] 式(B-1-1)で表される化合物の合成
3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル 2.00g(9.34mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン 4.7g(56mmol)、およびPPTS0.47g(1.9mmol)の混合物を、CH
2Cl
2 20ml中、室温で一晩撹拌した。反応液に飽和重曹水30mlを加え、有機層を分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後ろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、化合物(B-1-1-a)を得た。収量244mg(収率7.9%)。
【0151】
化合物(B-1-1-a)は、上記実施例5と同様な方法で、化合物(B-1-1-b)に誘導した。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=1:1→トルエン)で精製した。収率86%。
【0152】
化合物(B-1-1-b)は、上記実施例5と同様な方法で、化合物(B-1-1)に誘導した。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で精製した。収率100%。
【0153】
融点(℃);138.0-145.7.
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.54(d,1H,J=2.50Hz),7.44-7.41(AA’BB’,2H),7.31(dd,1H,J=8.00,2.50Hz),6.97(dd,1H,J=17.50,10.50Hz),6.91-6.87(AA’BB’,2H),6.85(d,1H,J=8.50Hz),5.80(d,1H,J=18.00Hz),5.41(d,1H,J=11.00Hz),4.99(s,1H),4.76(s,1H).
【0154】
[実施例7]
式(A-1-1)で表される化合物の合成
式(B-1-1)で表される化合物320mg(1.51mmol)、エピブロモヒドリン4.18g(30.2mmol)、K
2CO
31.25g(9.05mmol)の混合物を、DMF(10ml)中、2時間還流した。冷却後、反応液に酢酸エチル(40ml)と純水(40ml)を加え、分液を行った。有機層を飽和食塩水(40ml)で洗浄後、無水MgSO
4で乾燥した。ろ過及び溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製することにより、化合物(A-1-1)を得た。収量440mg(収率90%)。
融点(℃); 60.0-77.1.
1H―NMR(ppm,CDCl
3);7.65(d,1H,J=2.00Hz),7.50-7.47(m,2H),7.39(dd,1H,J=8.50,2.50Hz),7.11(dd,1H,J=18.0,11.0Hz),7.00-6.97(m,2H),6.92(d,1H,J=8.50Hz),5.82(dd,1H,J=17.50,1.50Hz),5.32(dd,1H,J=11.0,1.50Hz),4.30-4.25(m,2H),4.05-3.99(m,2H),3.42-3.37(m,2H),2.93(t,2H,J=4.50Hz),2.80-2.78(m,2H).
【0155】
[実施例8] 式(B-1-2)で表される化合物の合成
化合物(B-1-1)1.00g(4.71mmol)およびピリジン0.96g(12.1mmol)を溶解させたCH
2Cl
2溶媒(20ml)中に、無水酢酸1.16g(11.4mmol)を、室温で加えた。反応液はそのまま一晩撹拌した。反応液に純水(20ml)を加え、有機層を分離した。有機層は、純水(10ml)で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し後、溶媒を減圧留去し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、化合物(B-1-2)を得た。収量1.21g(収率87%)。
【0156】
融点(℃);95.0-98.1.
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.72(d,1H,J=2.00Hz),7.60-7.56(AA’BB’,2H),7.45(dd,1H,J=9.00,2.50Hz),7.18-7.15(AA’BB’,2H),7.12(d,1H,J=8.00Hz),6.79(dd,1H,J=17.5,11.0Hz),5.82(d,1H,J=18.0Hz),5.38(d,1H,J=10Hz)
2.36(s,3H),2.34(s,3H).
【0157】
[実施例9] 式(B-1-3)で表される化合物の合成
化合物(B-1-1)3.00g(14.1mmol)およびトリエチルアミン3.5ml(43.4mmol)のCH
2Cl
2(30ml)溶液中に、塩化プロピオン酸2.7ml(30.9mmol)のCH
2Cl
2(10ml)溶液を、10℃以下で加えた。反応液を、室温で7時間撹拌後、トルエン(70ml)および純水(50ml)を加えた。有機層を分離後、純水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた生成物はカラムクロマトグラフィー(トルエン→トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、化合物(B-1-3)を得た。収量4.26g(収率93%)。化合物(B-1-3)は、室温で液体であった。
【0158】
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.72(d,1H,J=2.50Hz),7.58-7.55(AA’BB’,2H),7.46(dd,1H,J=9.00,2.50Hz),7.17-7.15(AA’BB’,2H),7.11(d,1H,J=9.00Hz),6.78(dd,1H,J=17.0,10.5Hz),5.81(d,1H,J=17.5Hz),5.37(d,1H,J=11.5Hz),2.68-2.60(m,4H),1.33-1.27(m,6H).
【0159】
[実施例10] 式(B-1-4)で表される化合物の合成
臭化シアン526mg(4.96mmol)のジエチルエーテル(3ml)溶液に、化合物(B-1-1)500mg(2.36mmol)およびトリエチルアミン0.7mlのジエチルエーテル溶液を、-30℃にて、15分かけて加えた。室温で1.5時間撹拌した後、反応液に酢酸エチル(40ml)、純水(40ml)を加え、有機層を分離した。有機層は、飽和食塩水(40ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧留去し、得られた生成物を、再結晶(トルエン:エタノール=4:1)で精製することにより、化合物(B-1-4)を得た。収量300mg(収率49%)。
【0160】
融点(℃);157(分解)
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.72(d,1H,J=2.50Hz),7.66-7.62(AA’BB’,2H),7.57(d,1H,J=8.50Hz),7.52(dd,1H,J=8.5,2.5Hz)7.43-7.40(AA’BB’,2H),6.91(dd,1H,J=17.5,11.0Hz),5.91(d,1H,J=18.0Hz),5.54(d,1H,J=11Hz).
【0161】
[実施例11]
組成物の調製とガラス転移点(Tg)の測定
式(B-9-1)で表される化合物;29.30mg(0.1016mmol)、エポキシ化合物として、YX4000H;36.09mg(0.1018mmol)、および硬化促進剤として2PZ-PW;0.89mgを混合し、THF(1ml)を加え、完全に溶解した。この溶液から溶媒を真空除去し、組成物11を得た。この組成物26.7mgを計量し、ガラス転移点を測定した結果、>200℃であった。
【0162】
[比較例1]
式(B-9-1)で表される化合物をDHTP-Mに変えた以外は、実施例11と同様にして、組成物ref1を得た。この組成物25.4mgを計量し、ガラス転移点を測定した結果、115℃であった。
【0163】
[実施例12から17、および比較例2]
実施例11と同様に、表1に示す組成物12から17およびref2を調製し、Tgを測定した。表1には、実施例11および比較例1を再掲する。表中の実施例16における()内の値は、硬化剤全体に占める各硬化剤のモル比である。
表1.組成物のガラス転移点(Tg)
【0164】
上記実施例と比較例との比較から、本願技術による組成物は、高いガラス転移点をもち、耐熱性が高いことが分かる。
【0165】
[実施例18]
実施例2で合成した式(A-7-1)で表される化合物0.500g(1.249mmol)、PDA 0.0675g(0.625mmol)をサンプル瓶に入れ、テトラヒドロフラン(5mml)を加え、固形分を溶解した。この溶液を室温で2時間真空乾燥することにより、本発明の組成物(組成物18)を、粘稠性液体として得た。この組成物をホットプレート上で偏光顕微鏡観察したところ、観察領域のほぼ全面で、散乱による光抜けが観察された。また、このサンプルのガラス転移点を測定した結果、200℃以上であった。
【0166】
[実施例19]
実施例2で合成した式(A-7-1)で表される化合物0.500g(1.249mmol)、PDA 0.0545g(0.504mmol)、およびDMA 0.0303g(0.250mmol)をサンプル瓶に入れ、テトラヒドロフラン(5mml)を加え、固形分を溶解した。この溶液を室温で2時間真空乾燥することにより、本発明の組成物(組成物19)を、粘稠性液体として得た。この組成物をホットプレート上で偏光顕微鏡観察したところ、観察領域のほぼ全面で、散乱による光抜けが観察された。またこのサンプルのガラス転移点を測定した結果、200℃以上であった。
【0167】
[実施例20]
実施例15から実施例17で調製した、組成物15から組成物17の液晶性と配向を確認した。その結果、いずれの硬化物も、組成物が液晶性を持ち、垂直配向した状態で硬化したことが確認された。
【0168】
[比較例3]
比較例2で調製した組成物ref.2の液晶性を確認した。顕微鏡観察の結果、硬化物は、結晶と考えられる領域とアモルファスと考えられる領域が混在した。この硬化物サンプルを、温度を変えて測定したところ、アモルファスと考えられる領域において、110℃以上の温度で、液晶性を示す部分が確認された。このことから、この組成物ref.2では、硬化剤がエポキシ化合物と相溶しなかったため、硬化が不十分であることが示唆された。
【0169】
実施例20と比較例3との比較により、本発明の組成物は相溶性が高いことが分かる。
【0170】
[実施例21]
組成物11から調製した硬化物の熱伝導率の測定
上記組成物11を、φ2.4cmのアルミ製容器に入れ、150℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間保持し、厚みが1.5mmの円形片を取り出した。この硬化物(硬化物11)の熱伝導率は、サンプルの面内方向と厚み方向で、それぞれ0.73W/m・Kおよび0.30W/m・Kであった。
【0171】
[実施例22]から[実施例29]
上記実施例21と同様な方法で、表2中の組成物12から組成物19の熱伝導率を測定した。なお、表中の実施例26および実施例28における()内の値は、硬化剤全体に占める各硬化剤のモル比である。また実施例21を再掲する。
【0172】
【0173】
[実施例30]
フィラー入りサンプルの作製
組成物11の0.100g、および窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製PolarTherm PTX-25)0.9000gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、ステンレス製板中に挟み、150℃の温度に加温した圧縮成形機((株)井元製作所製IMC-19EC)にて20MPaの圧力をかけて45分間保持し、放熱部材としての厚みが768μmの四角片を取り出した。このサンプル(フィラー入りサンプル11)の熱伝導率は、8.9W/m・Kであった。
【0174】
[実施例31]から[実施例38]
組成物11の代わりに、組成物12から19を使用した以外は、上記実施例30に記載の方法と同様にして、フィラー入り組成物12から19を成形した。これらのサンプルの熱伝導率を測定した結果を、表3に示す。なお、表には実施例30を再掲する。
【0175】
【0176】
[実施例39]および[実施例40]
組成物15または組成物16の0.1g、および酸化アルミニウム粒子(デンカ製DAW-10)0.90gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、上記実施例30に記載の方法と同様にして、フィラー入りサンプル15AOと16AOを調製し、熱伝導率を測定した。結果を表4に示す。
【0177】
表4.フィラー入りサンプルの熱伝導率2
上記のように、本発明の組成物は、高い熱伝導率を与えることが分かる。