(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081675
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】内径測定装置およびそれを用いた内径測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/12 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
G01B5/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046615
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2021002284の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100199842
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】岡部 聡志
(57)【要約】
【課題】
工作機械や専用機にボアゲージを取り付けて穴径を測定する際に、簡単な手段かつ簡単な方法で高精度に加工後の穴径を測定可能にする。
【解決手段】
工作機械に取り付けて用いられる、周方向に180°互いに離隔した2個の測定子を備える内径測定装置において、前記2個の測定子を測定対象穴内で90°ピッチで回転させたときの前記測定子の変位量から前記内径測定装置の中心線と、前記測定対象穴の中心線との芯ずれ量であって直交する2方向の芯ずれ量であるε
x、ε
yについて求める内径測定装置用制御部を備え、前記芯ずれ量ε
x、ε
yを前記工作機械の制御装置に格納する手段を有することにより、前記工作機械が前記芯ずれ量ε
x、ε
yを相殺するように、前記工作機械がX-Yテーブルを用いて前記内径測定装置と前記測定対象穴との位置調整を可能とする内径測定装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象穴に当接する2個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備える内径測定装置において、
2個の前記測定子は、前記内径測定装置の中心軸を通る直線にその中心線が交差し、かつ、周方向に180°互いに離隔して構成され、
2個の前記測定子はそれぞれ前記内径測定装置の中心軸に直交する方向の変位を測定可能であり、
2個の前記測定子を測定対象穴内で180°ピッチで回転させたときの前記測定子の変位量から前記内径測定装置の芯ずれ量を求める内径測定装置用制御部を備えることを特徴とする内径測定装置。
【請求項2】
前記内径測定装置用制御部は、2個の前記測定子を測定対象穴内で90°ピッチで回転させたときの前記測定子の変位量から前記内径測定装置の直交する2方向についての芯ずれ量を求めることを特徴とする、請求項1に記載の内径測定装置。
【請求項3】
測定対象穴に当接可能な2個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備える内径測定装置を用いる内径測定方法において、
2個の前記測定子は、その中心軸が前記内径測定装置の中心軸に交差し、内径測定装置の外周部から180°周方向に離隔した位置で外側に延在し、
2個の前記測定子を前記測定対象穴に当接させて各測定子の変位量を検出するステップと、
2個の前記測定子を前記内径測定装置の中心軸周りに互いに180°回転させたときの各測定子の変位量を検出するステップと、
前記変位量から前記測定対象穴の中心線と前記内径測定装置の中心線の芯ずれ量を求めるステップと、
2個の前記測定子によって前記測定対象穴の見掛けの内径を測定するステップと、
前記芯ずれ量と前記見掛けの内径と前記測定子の先端部半径から前記測定対象穴の真の内径を演算するステップと、を含むことを特徴とする内径測定方法。
【請求項4】
前記測定子を回転させて変位量を検出するステップが、2個の前記測定子を前記内径測定装置の中心軸周りに90°ピッチで回転させたときの各測定子の変位量を検出するステップであり、
前記芯ずれ量が、前記内径測定装置の直交する2方向についての芯ずれ量であることを特徴とする、請求項3に記載の内径測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ等の中空物の内径を測定する内径測定装置およびそれを用いた内径測定方法に係り、特に工作機械等に取り付けて自動測定するのに好適な内径測定装置およびそれを用いた内径測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工されたコンポーネントの寸法を正確に検査するためのタッチプローブの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のタッチプローブは、引張及び圧縮に感知する複数の圧電素子スタックを備える。複数の圧電素子スタックは、スタイラス支持部材が繰り返し静止位置から変位する前に、スタイラス支持部材に掛かる力を検知する。各圧電素子スタックは、引張及び圧縮に対して最大感度軸を有し、この感度軸はプローブに対して傾斜し、かつ圧電素子スタックの一方の最大感度軸に対して傾斜している。
【0003】
また、筒状部材に棒状部材を嵌合させる際に、両部材間の相対位置関係が少々不正確でも正確な嵌合が可能なように、挿入側でそのずれを保証して良好な挿入作業を保証することが特許文献2に記載されている。この公報に記載の挿入装置では、部材の端部を把持する把持機構を移動機構に対して、挿入方向に直交する面内で移動可能でかつ揺動可能にフローティング支持するフローティング機構と、把持機構に係合してロックするロック機構とを備える。
【0004】
さらに、特許文献3には内径測定用のボアゲージを用いて内径を測定する際に、たとえボアゲージの中心軸と円筒穴の中心軸がずれていても、測子を損傷することなく、測子が自動的に円筒穴の中心を通る直線上に位置するよう自動芯出しさせることが開示されている。具体的には、開閉位置が可変なガイド部材の開閉位置を測定内面に接触させない状態にする工程と、ボアゲージの軸を測定内面の中心軸に相対移動する工程と、複数のガイド部材を所定位置まで開閉する工程と、複数のガイド部材を所定量戻す工程を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-258008号公報
【特許文献2】特開平7-964268号公報
【特許文献3】特開平11-201704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリンダ等の中空円筒の内面を測定可能なボアゲージを用いて内径を測定する場合には、ゲージの先端部に周方向にほぼ180°間隔を置いて配置された2つの測定子(コンタクタ)を半径方向に伸展させて円筒内面に接触させ、円筒内面の直径を計測している。
【0007】
このとき、2つの測定子の接触点を含み中心軸に直角な平面内で、2つの接触点のいずれかが中心軸を含む直線から外れると、接触点の情報に基づく円筒内面の内径測定には芯ずれ誤差と呼ばれる誤差が生じる。この芯ずれ誤差は測定誤差の要因となり得るのでその誤差を低減することが望まれている。
【0008】
上記特許文献3では、この芯ずれ誤差を低減または抑制するために、測定対象穴(円筒内面)の径よりもわずかに小さいガイドを測定器の先端部に配設し、ガイドの中心と複数の測定子の中の2個が同一直線上に位置するようにガイドを配置している。
【0009】
そしてこの状態で測定対象穴内にガイドごと測定器の先端部を挿入し、物理的に芯ずれが生じないようにしている。そのため、ガイドと測定対象穴の中心がずれないように、ガイドの他にフローティング機構を設ける必要があり、構造が複雑になるとともに部品点数が増加する。またガイドを測定対象の内面よりごく僅かだけ小径に構成して、芯ずれ誤差を生じないようにしている。そのため、測定器と測定対象の内面間の隙間が数十μmしかなく、隙間が小さ過ぎて測定器を挿入する作業に時間を要する。
【0010】
一方、特許文献2に記載の嵌合方法では、穴径測定方法ではないけれども、嵌合の際に筒状部材への棒部材の接触をできる限り防止できるよう、フローティング機構を設けている。そのため、フローティング機構の構造が複雑になり小型化が難しく、かつ部品点数が増加し、コスト増や信頼性の低下を招く恐れがある。
【0011】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑み成されたものであり、その目的は、工作機械や専用機にボアゲージを取り付けて自動で高精度に加工後の穴径を容易に測定可能にすることにある。そして本発明の他の目的は、穴径測定に用いるボアゲージに、フローティング機構のような複雑な位置調整手段を設けることなく、簡単な手段かつ簡単な方法で高精度に加工後の穴径を測定可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の特徴は、以下のとおりである。
【0013】
[1] 測定対象穴に当接する2個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備える内径測定装置において、2個の上記測定子は、上記内径測定装置の中心軸を通る直線にその中心線が交差し、かつ、周方向に180°互いに離隔して構成され、2個の上記測定子はそれぞれ上記内径測定装置の中心軸に直交する方向の変位を測定可能であり、2個の上記測定子を測定対象穴内で180°ピッチで回転させたときの上記測定子の変位量から上記内径測定装置の芯ずれ量を求める内径測定装置用制御部を備えることを特徴とする内径測定装置。
[2] 上記内径測定装置用制御部は、2個の上記測定子を測定対象穴内で90°ピッチで回転させたときの上記測定子の変位量から上記内径測定装置の直交する2方向についての芯ずれ量を求めることを特徴とする、[1]に記載の内径測定装置。
[3] 測定対象穴に当接可能な2個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備える内径測定装置を用いる内径測定方法において、2個の上記測定子は、その中心軸が上記内径測定装置の中心軸に交差し、内径測定装置の外周部から180°周方向に離隔した位置で外側に延在し、2個の上記測定子を上記測定対象穴に当接させて各測定子の変位量を検出するステップと、2個の上記測定子を上記内径測定装置の中心軸周りに互いに180°回転させたときの各測定子の変位量を検出するステップと、上記変位量から上記測定対象穴の中心線と上記内径測定装置の中心線の芯ずれ量を求めるステップと、2個の上記測定子によって上記測定対象穴の見掛けの内径を測定するステップと、上記芯ずれ量と上記見掛けの内径と上記測定子の先端部半径から上記測定対象穴の真の内径を演算するステップと、を含むことを特徴とする内径測定方法。
[4] 上記測定子を回転させて変位量を検出するステップが、2個の上記測定子を上記内径測定装置の中心軸周りに90°ピッチで回転させたときの各測定子の変位量を検出するステップであり、上記芯ずれ量が、上記内径測定装置の直交する2方向についての芯ずれ量であることを特徴とする、[3]に記載の内径測定方法。
【0014】
本発明の他の形態は、工作機械に取り付けて用いられる、測定対象穴に当接する複数個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備える内径測定装置において、前記複数個の測定子は、前記内径測定装置の中心軸を通る直線にその中心線が交差し、周方向に180°互いに離隔した2個の測定子を含み、前記2個の測定子はそれぞれ前記内径測定装置の中心軸に直交する方向の変位を測定可能であり、前記2個の測定子を測定対象穴内で90°ピッチで回転させたときの前記測定子の変位量から前記内径測定装置の中心線と、前記測定対象穴の中心線との芯ずれ量であって直交する2方向の芯ずれ量であるεx、εyについて求める内径測定装置用制御部を備え、前記芯ずれ量εx、εyを前記工作機械の制御装置に格納する手段を有することにより、前記工作機械が前記芯ずれ量εx、εyを相殺するように、前記工作機械がX-Yテーブルを用いて前記内径測定装置と前記測定対象穴との位置調整を可能とすることにある。
【0015】
そしてこの特徴において、前記工作機械に取り付ける取り付け部を上部に有し、前記測定子を下部に配置し、前記取付け部と前記測定子間に、前記内径測定装置の中心軸周りに、前記取付け部に対して前記測定子を含む部分を所定角度回転可能な回転機構を設けてもよい。
また、前記工作機械に取り付ける取り付け部が上部に、前記測定子が下部に配置されており、前記内径測定装置をその取付け軸周りに所定角度だけ回転させる工作機械の制御装置を設けてもよい。
【0016】
上記目的を達成する本発明の多の特徴は、測定対象穴に当接可能な複数個の測定子と、該測定子のそれぞれに設けられ該測定子に接続された検出器とを備え、工作機械に取り付けられて使用される内径測定装置を用いる内径測定方法において、前記測定対象穴内に前記複数の測定子を挿入したのち、前記複数個の測定子の中でその中心軸が前記内径測定装置の中心軸に交差し、内径測定装置の外周部から180°周方向に離隔した位置で外側に延在する2個の測定子を前記測定対象穴に当接させて各測定子の変位量を検出するステップと、前記2個の測定子を測定対象穴内で90°ピッチで回転させたときの前記測定子の変位量から前記内径測定装置の中心線と、前記測定対象穴の中心線との芯ずれ量であって直交する2方向の芯ずれ量であるεx、εyについて求めるステップと、前記芯ずれ量εx、εyを前記工作機械の制御装置に格納するステップと、前記工作機械が前記芯ずれ量εx、εyを相殺するように前記工作機械のX-Yテーブルを用いて前記内径測定装置と前記測定対象穴との位置調整を行うステップと、前記測定子により内径を測定するステップと、を含むことにある。
【0017】
そしてこの特徴において、前記測定対象穴の測定の前に、内径が既知の穴を有するマスタを用いて内径を測定して前記内径測定装置を校正することを含む内径測定方法であって、既知の前記穴に前記内径測定装置を挿入した後に、前記測定子を前記穴に当接させて前記2個の測定子の変位量を測定し、その後前記内径測定装置を90°ピッチで回転させてその回転ごとに前記測定子の変位を測定し、180°回転したもの同士の測定値から、直交する2方向についての、マスタが有する前記穴と前記内径測定装置間の芯ずれ量を求めるステップと、求めた直交する2方向の芯ずれ量を相殺するように前記マスタを移動させるステップと、前記芯ずれ量を相殺した状態で前記測定子を用いて前記マスタの前記穴の内径を測定するステップと、を含んでも良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、工作機械や専用機における加工後のワークの測定工程が促進され、作業効率が向上する。また、穴径測定に用いるボアゲージに、フローティング機構のような複雑な位置調整手段を設ける必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る工作機械の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1に示した工作機械に取り付けるボアゲージの一例を示す縦部分断面図(同図(a)及び横断面図(同図(b))である。
【
図3】
図2に示したボアゲージの動作を説明する図である。
【
図4】計測値から内径を演算する方法を説明するための図である。
【
図5】ボアゲージによる測定を説明する縦断面図である。
【
図6】ボアゲージによる測定を説明する縦断面図であり、周方向位相を変えた図である。
【
図7】本発明に係る内径測定方法を説明するための図である。
【
図8】本発明に係る内径測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る内径測定装置のいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る内径測定装置を組み込んだ工作機械または専用機50の一実施例の正面図である。基礎10上に本体12が固定設置された工作機械50では、スピンドル部16にシャンクが取り付けられ、シャンクには本発明に係る内径測定手段であるボアゲージ80が取り付けられている。
【0021】
ボアゲージ80は、本体12の上部に取り付けられたモータを含むZ軸駆動手段によりスピンドル部16とともに上下方向に移動可能になっている。ボアゲージ80の下方には測定対象のワーク40が配置されており、ワーク保持手段36によりX-Yテーブル30上に固定保持されている。
【0022】
X-Yテーブル30は、本実施例では上側にあるX軸テーブル32がモータを含むX軸駆動手段22により、下側にあるY軸テーブル34がモータを含むY軸駆動手段24により、それぞれX方向(本図では左右方向)及びY方向(本図では紙面垂直方向)に直線駆動される。したがってボアゲージ80を取り付けたスピンドル部16をZ軸駆動手段20でZ方向に、ワーク40をX-Yテーブル30でX、Y方向にそれぞれ駆動することにより、ボアゲージ80とワーク40の相対位置が位置決めされる。または図示しないが、さらにΘテーブルを備えて、回転移動も可能にする。
【0023】
ここで、工作機械50の適宜個所(図では左側上部)に、工作機械50を制御する制御装置14が配設されている。制御装置14は、制御部26と表示部28を備え、制御部26は工作機械50の始動/停止やワーク40とボアゲージ80の相対位置決め等を制御する。
【0024】
表示部28は、ワーク40に対するボアゲージ80の中心の相対位置等を表示する。制御部26は、後述するボアゲージ80の測定に関する制御を実行する内径測定装置用制御部70を含み、この内径測定装置用制御部70とボアゲージ80とが組み合わされて内径測定装置100を構成する。
【0025】
次に、
図1に示した工作機械50で使用するボアゲージ80の一例を、
図2に示す。
図2(a)は、ボアゲージ80の一部断面正面図であり、上部を省略した図である。
図2(b)は同図(a)におけるII-II線断面視図である。
【0026】
このボアゲージ80は、内径測定用である。
図2(a)では、左側の部分のみを断面図で示しているが右側の部分も同様であるので、右側の部分については説明を省略する。したがって、右側の部分については、左側の部品の説明における各部品の添え字aをbに置き換えればよい。
【0027】
ボアゲージ80は、測定対象であるワーク40の穴または中空部42の内径に応じた径を有し、下側に長く延びる測定部78と、測定部78の上方に位置し測定部78よりは大径の検出部79を備える。測定用アーム82aがボアゲージ80の軸に沿って下方に長く延びており、大径の検出部79に配設された支点83aで回動可能に支持されている。
【0028】
測定用アーム82aの一方の先端部近傍には、円柱形であってその先端が半球面状に形成された測定子(コンタクタ)81aが、測定子81aの軸が測定用アーム82aの延在方向に対して直角になるように、取り付けられている。ただし、ボアゲージ80の中心軸に直交する方向の変位が測定できるのであれば、斜めに取り付けてもよい。測定用アーム82aの他端側は検出用腕84aとなっており、検出用腕84aは測定子81aの変位を拡大するために、測定用アーム82aの軸線方向にほぼ直角な方向に延びている。
【0029】
検出用腕84aのほぼ先端に対向しかつ上方に、変位部材85aを先端部に有するリニアセンサ等の変位検出器86aが配設されている。検出用腕84aの支点83a部の上方には、支柱93aが配設されている。支柱93aは、ボアゲージ80の検出部79の外形を構成するベース87の横方向に延びる円板部87eの下面側に設けた支柱94aに、ばね88を介して接続されている。
【0030】
ここで、ベース87は外周円筒部87sとこの円筒部87sの上面を覆う上記円板部87eとを有しており、円板部87eの下面には、支柱94aの一端部の他に変位検出器86aが取り付けられている。
【0031】
ベース87の下方には、測定用アーム82aを保護するために、下端部近傍に周方向180°ピッチで2個の穴が形成された段付き円筒状の保護部材92が配設されている。
【0032】
保護部材92の上部の大径部である検出部79の外径は、ほぼベース87の外径に一致し、下部の小径部である測定部78の外径は、測定用アーム82a、82bが保護部材92内で動けるよう、2個の測定用アーム82a、82bの厚さ(軸方向に直角方向の長さ)の和よりも大きな径となっている。そして下端部近傍に形成した上記穴の一方には測定用アーム82aに取り付けた測定子81aが抵抗なく嵌合し、他方には測定子81bが抵抗なく嵌合する。
【0033】
このように構成したボアゲージ80を用いたワーク40の穴42の内径測定では、従来、保護部材92に対応するガイド部材を測定対象穴または中空部42に、
図1に示したX-Yテーブル30やΘテーブルを駆動して、精密に位置決めしていた。そして精密な位置決め後にガイド部材をワーク40の穴42内へ挿入し、穴42内の所定深さまでガイド部材を挿入したら、測定子81a、81bを穴42に当接させる。このとき、検出用腕84aに当接していて、検出用腕84aに対向配置された検出器86aの変位部材85aは、検出用腕84aが支点83aを中心に回動したので、上側に変位する。
【0034】
このように、測定子81a、81bがワーク40の穴42の内面に当接すると、検出器86aは、測定子81aの変位に応じた信号を穴42の内径として出力する。このとき、測定用アーム82aは支点83aを中心にして回動するので、検出用腕84a上に配設された支柱93aに取り付けたばね88は、伸ばされた状態になる。
【0035】
一方、穴42の内径測定が終了して、ボアゲージ80が穴42から取り出されると、支柱93aと支柱94a間のばね88が初期状態へ収縮し、測定子81aを初期位置へ戻す。ここで、ボアゲージ80のガイド部材の外径は、測定穴42の穴径よりもわずかに小さいだけなので、ガイド部材が穴42に挿入された時点で、ボアゲージの中心軸と測定穴42の中心軸はほぼ一致しており、ボアゲージ80の中心軸と測定穴42の中心軸の芯ずれ誤差が抑制される。
【0036】
これに対し本発明の測定方法では、保護部材92を用いた測定穴42へのボアゲージ80の中心位置決めを不要としながら、
図2に示したと同様の構造のボアゲージ80を用いて内径測定を可能にする。つまり本方法では、
図2に示した測定用アーム82a、82bに取り付けた測定子81a、81bを、初期状態では保護部材92から最も突き出た状態に設定する。
【0037】
そして、測定穴42の壁面に測定子81a、81bが接触した状態で、保護部材92の内側に測定子81a、81bが移動するように、ばね88および変位検出器86a、変位部材85aの押圧関係を調整する。これにより、ボアゲージ80の保護部材92の外径をもはや測定穴42の外径に近づける必要がなく、保護部材92を測定対象の穴42の径に比べて非常に小さく設定でき、保護部材92の外径と穴42の間にわずかな隙間しかない状態から広い隙間のある状態まで、広範な測定穴42の穴径範囲を計測できる。
【0038】
図3ないし
図6を用いて、本発明に係る内径測定方法の詳細を説明する。
図5は、
図2(b)と同様の図であり、説明のために
図2(b)を模式化した図である。
図4は、ワーク40とボアゲージ80が有する測定子81a(81b)の関係を説明するための図であり、軸直角断面における図である。
図5及び
図6は、ボアゲージ80とワーク40の穴42の関係を説明するための模式図であり、ワーク40を縦断面で示した図である。
【0039】
図3において、ボアゲージ80の中心軸45から放射方向に2個の測定子81a、81bが延在している。2個の測定子81a、81bが測定対象穴42の内面に接触するときの接触点81c、81dを結ぶ線81xは、2個の測定子81a、81bの中心線の延長線であり、ボアゲージ80の回転中心軸45またはスピンドル部16の回転軸を通る線になっている。
【0040】
そして外力が加わらない初期状態では、その接触点81c、81d間の距離はm0であり、測定対象穴42の内壁に当接したときの測定距離はmになっている。ここで、測定子81a、81bは保護部材92の外径m2程度まで内側に変位可能であるので、穴42の内径がほぼm0~m2の範囲にある内径測定が可能になる。
【0041】
このように構成したボアゲージ80を
図1に示したような工作機械50に設置する。ボアゲージ80の保護部材92または測定子81a、81bをワーク40の測定穴42に挿入できる程度まで、ボアゲージ80とワーク40の相対位置をX-Yテーブル30やΘテーブルを用いて粗調整する。その後、ボアゲージ80を下降させてワーク40の測定穴42に保護部材92と測定子81a、81bからなる測定部を挿入する。
【0042】
このときボアゲージ80の中心軸45と測定穴42の中心軸43は、一般的には一致せず芯ずれ状態にある。なお保護部材92と測定子81a、81bからなるボアゲージ80の測定部自体は測定対象穴42内に挿入されているので、上記芯ずれ量は測定範囲内にある。ボアゲージ80の測定子81a、81bを、スピンドル部16を用いて測定位置である所定高さに位置決めし、測定子81a、81bのそれぞれの初期位置からの変位量を計測する。
【0043】
すなわちボアゲージ80の測定部とワーク40の穴42が
図5に示すような位置関係にあるときに、ボアゲージ80を測定高さ位置まで降下させる。そのとき一方の測定子または第1の測定子81aは変位量A
1だけ所定位置(または解放長)から変位して測定穴42の内径測定面41である内壁に接触点81cで当接する。
【0044】
保護部材92の周方向に180°位相を変えた他方の測定子または第2の測定子81bは、同様に所定位置(または解放長)から変位量A2だけ変位して測定穴42の内径測定面41の他の位置に接触点81dで当接する。この時のボアゲージ80の中心線45とワーク40の測定穴42の中心線43の芯ずれ量はε1である。
【0045】
次に、他の関係はすべて上記測定と同じにして、工作機械50が備えるボアゲージ80に設けた図示しない回転機構(θ方向駆動機構)を用いて、ボアゲージ80だけ180°回転させる。そして
図5に示したのと同様の計測を実施する。すなわち、
図6に示すように、第1の測定子81aは変位量B
1だけ所定位置(または解放長)から変位して測定穴42の内壁に接触点81cで当接する。
【0046】
保護部材92の周方向に180°位相を変えた第2の測定子81bは、同様に所定位置(または解放長)から変位量B2だけ変位して測定穴42の内径測定面41の他の位置に接触点81dで当接する。この時のボアゲージ80の中心線45とワーク40の測定穴42の中心線43の芯ずれ量はε2である。
【0047】
ここで、ボアゲージ80を180°回転させているだけなので、前後2回の第1の測定子81aと第2の測定子81bの変位量A1~B2の計測では、ボアゲージ80の中心線45と測定穴42の中心線43の相対位置は変化しない。したがって、前後2回の測定における測定方向の芯ずれ量ε1とε2は同じ値である。
【0048】
一般的に、第1、第2の測定子81a、81bが厳密に同一には製作及び組み立てられてはいないので、その個体差を相殺する必要がある。そこで、それぞれの測定子81a、81bについて、前後の測定値A1~B2の差を求め、その差を用いてボアゲージ80の中心線45と穴42の中心線43の芯ずれ量を求める。すなわち、計測方向の芯ずれ量εXは、εX={(B1-A1)/2+(B2-A2)/2}/2となる。
【0049】
次に、ボアゲージ80に設けた図示しない回転機構を用いて、ボアゲージを90°および270°回転させて、前回測定方向(X方向とする)に直角な方向(Y方向とする)の芯ずれ量を測定する。第1、第2の測定子81a、81bによるY方向の測定値をA3~B4とすると、Y方向の芯ずれ量εyは、X方向と同様にして、εy={(B3-A3)/2+(B4-A4)/2}/2で求められる。以上の演算は工作機械50の制御装置14に設けた内径測定装置用制御部70が実行する。これらの演算は、工作機械50の制御装置14が備える内径測定装置用制御部70で実行されるが、この演算を実行する制御部は、工作機械50と独立に設けても同様に実行できる。
【0050】
このように、第1、第2の測定子81a、81b、すなわち測定子の中心線81xとボアゲージ80の中心線45を同一直線上に配置した(
図3参照)ので、ボアゲージ80の中心線45と穴42の中心線43のずれ量は、穴42の中心線43と第1、第2の測定子81a、81bの芯ずれ量ε
x、ε
yと同じになる。
【0051】
したがって、ボアゲージ80を90°ごとに回転させて第1、第2の測定子81a、81bの変位量を求めるだけで、ボアゲージ80の中心線45と穴42の中心線43の相対位置ずれ量を、直交する2方向について簡単に求めることができる。
【0052】
この直交する2方向についての芯ずれ量εx、εyは、工作機械50が備える制御装置14に格納される。工作機械50のX-Yテーブル30により、芯ずれ量εx、εyを相殺するようにボアゲージ80を移動させて、再度、内径測定を実行することもできる。
【0053】
次に、工作機械50のX-Yテーブル30により芯ずれ量ε
x、ε
yを補正せずに穴42の内径測定を続行する場合について、
図4を用いて説明する。第1、第2の測定子81a、81bの測定値A
1~B
2を用いて、測定穴42の内径を求め方法である。
【0054】
説明の便のために、X方向にだけずれている場合について説明する。Y方向にもずれている場合は、第1、第2の測定子81a、81bのY方向の測定値A3~B4を用いて同様の演算を制御装置14が備える内径測定装置用制御部70が実行する。
【0055】
芯ずれがない状態では、第1、第2の測定子81a、81bがワーク40の測定穴42に点81c、81dで当接している。この状態をPとする。一方、実際にはボアゲージ80はX方向に芯ずれして測定穴42の内面に当接している。
【0056】
この状態をQとする。Qの状態におけるX方向の芯ずれ量は、上記芯ずれ量測定の結果εxであり、その時ボアゲージ80の第1、第2の測定子81a、81bにより計測されたワーク40の直径はmyである。ここで、第1、第2の測定子81a、81bは、先端部が半球状の球状部81eと球状部81eに続いて軸方向に延びる円柱部81fを有している。
【0057】
真のワーク内径をφD=2R、第1の測定子81aの球状部81eの半径をrとすると、測定穴42の中心から第1の測定子81aの球状部中心までのY方向長さL1は、L1
2=(R-r)2-εx
2となる。
【0058】
ここでボアゲージ80が測定した測定穴42の内径はmyであり、測定穴42の真の半径はRであるから、芯ずれによる測定誤差L2は、その差分であり、L2=R-my/2となる。測定穴42の測定値myはボアゲージ80の第1の測定子81aの球状部81eの半径rと上記L1を用いて幾何学的関係から、my/2=L1+rと表される。
【0059】
これらの関係から、測定穴42の真の半径Rは、
R=L2+my/2=(R-r)-SQRT((R-r)2-εx
2)+my/2となり、
R=SQRT((my/2-r)2+εx
2)+r、D=2R
が得られる。ここでSQRT( )は、平方根を示す。
【0060】
したがって、測定穴42の測定値myとX方向芯ずれ量εxと第1の測定子81aの先端の球状部81eの半径rが既知であれば、測定穴42の真の半径Rおよび直径Dが求められる。Y方向のずれ量εyから測定穴42の真の穴径を求めるときは、同様にして測定穴42のX方向の内径測定値mxを用いればよい。
【0061】
これらの演算は、工作機械50の制御装置14が備える内径測定装置用制御部70で実行されるが、この演算を実行する制御部は、工作機械50と独立に設けても同様に実行できる。
【0062】
次に上記ボアゲージ80を工作機械50の一つであるマシニングセンタに取り付けて、ワーク40の測定穴42を連続的に測定する方法を、
図7に示したマシニングセンタの測定部58の斜視図および
図8に示したフローチャートを用いて説明する。
図7に示すように、測定部58では、1個のマスタ54がマスタ保持具52を介してマシニングセンタが備えるΘテーブル56の上面に取り付けられている。Θテーブル56の外周部近傍であって上面には、複数のワーク40もワーク保持手段36を介して取り付けられている。
【0063】
Θテーブル56は、鉛直軸であるZ軸周りに(Θ方向に)回転可能であり、各ワーク40はΘテーブル56の回転中心からほぼ等距離の位置に保持されている。マスタ54には、内径が既知の穴55が形成されている。図示を省略したが、Θテーブル56の下方にはX-Yテーブル30が配置されており、Θテーブル56の位置決め、すなわちマスタ54とワーク40の位置決めに使用される。
【0064】
ボアゲージ80はインクリメンタル式の検出器86a、86bを有し、ボアゲージ80の中心軸45に対して対称配置された2個の測定子81a、81bはそれぞれ基準位置からの変位を測定可能である。また、ボアゲージ80を取り付けたスピンドル部16周りに、すなわちθ方向にボアゲージ80は回転可能になっており、特に90°ピッチでの回転が可能なように、図示しない回転補助手段がボアゲージ80または工作機械50に備えられている。
【0065】
図8を参照して、上記構成の内径測定装置を用いた内径測定方法を説明する。ボアゲージ80を用いてワーク40に形成された穴42の内径を測定する場合には、初めにマスタ54を用いてボアゲージ80が備える測定子81a、81bに接続された検出器86a、86bのそれぞれの基準点を設定する。
【0066】
そのため、工作機械50のスピンドル部16にボアゲージ80を取り付けた後、ステップS810において、工作機械のX-Yテーブル30およびΘテーブル56を駆動して、ボアゲージ80の真下の位置にマスタ54を移動させる。ここで、従来とは異なり、ボアゲージ80の中心線45とマスタ54の中心線57は、完全には一致しておらず、芯ずれが生じている。
【0067】
この状態で、マスタ54の内径が既知の穴55内にボアゲージ80の測定子81a、81bの部分を挿入する。マスタ54内にボアゲージ80の測定子81a、81bが挿入されていて、まだ穴55の内壁に当接していなければ、測定子81a、81bをばね88の力でその軸方向に伸展させ、穴55の内壁に測定子81a、81bを当接させる。この時の測定子81a、81bの測定値からの変位量A1、A2を測定する。
【0068】
次に、ボアゲージ80をスピンドル部16軸周りにθ方向に180°回転、すなわち反転させる。そして測定子81a、81bの先に用いたのと同じ基準点からの変位量B1、B2を測定する。同様にボアゲージ80をθ方向に、90°および270°回転させた位置で測定子81a、81bの変位量A3、A4、B3、B4を測定する(ステップS820)。
【0069】
測定された測定子81a、81bの変位量A1、A2、B1、B2から、工作機械50の制御装置14に設けた内径測定装置用制御部70が、仮にX方向とする方向の、マスタ54の穴55の中心軸57とボアゲージ80の中心線45との芯ずれ量εx0を演算する。
【0070】
同様に、測定子81a、81bの変位量A3、A4、B3、B4から内径測定装置用制御部70が、X方向に直交するY方向の、マスタ54の穴55の中心軸57とボアゲージ80の中心線45との芯ずれ量εy0を演算する(ステップS830)。
【0071】
工作機械50の制御装置14が、X-Yテーブル30を用いて演算された芯ずれ量εx0、εy0だけマスタの位置を移動させ、ボアゲージ80の中心線45とマスタ54の中心軸57の芯ずれを相殺した状態に位置決めする(ステップS840)。ボアゲージ80が完全に芯ずれが無い状態に位置決めされているので、この座標を工作機械50の制御装置14に記憶させる。それとともに測定子81a、81bをマスタ54の穴55に当接させ、各測定子81a、81bに連結された検出器86a、86bの読みから穴径my0を得る。
【0072】
ここで、マスタ54の穴55の内径my0は既知であるから、各検出器86a、86bの絶対値、すなわち測定のための基準点(0点)を設定できる(ステップS850)。この時の変位量の基準点は、測定子81a、81bの最大解放点等、任意に選ぶことができる。例えば内径50mmを示すのは検出器86aの出力が23の時であり、検出器86bの出力が185であるというように検出器86a、86bを校正できる。なお、実際の検出器86a、86bの校正では、測定子81a、81bの外径方向の変位と検出器86a、86bの測定値の変位が合うように感度を補正しておく。この感度補正をすることにより、基準径が異なる場合(例えばφ50とφ52の穴)にも容易に内径測定が可能になる。この操作はインクリメンタル式の検出器86a、86bを使用する場合に必須であるが、アブソリュート式の検出器86a、86bを用いる場合には、必ずしも必要ではない。
【0073】
次にX-Yテーブル30およびΘテーブル56を駆動して、ボアゲージ80の中心軸45近傍にワーク40を移動させる(ステップS860)。その際、ボアゲージ80とワーク40の相対位置は、ボアゲージ80の測定子81a、81bをワーク40内に形成される穴42内に挿入できるところであればよく、特に一致させる必要はない。
【0074】
ワーク40の芯ずれ量εxを測定するため、ワーク40の測定穴42内に測定子81a、81bを当接させ、各測定子81a、81bの変位量A1、A2を測定し、次いで180°ボアゲージ80を反転させて測定子81a、81bの変位量B1、B2を測定する(ステップS870)。内径測定装置用制御部70は、得られた変位量A1~B2を用いて、ワーク40の仮にX方向とする方向の芯ずれ量εxを演算する(ステップS880)。
【0075】
次にボアゲージ80をθ方向に90°または270°回転させ、ワーク40の測定穴42を測定し、見掛けの内径myを得る(ステップS890)。上述したようにこの時点で得られた内径myは、X方向の芯ずれ量εxのため真の内径φDより小さくなっている。
【0076】
そこで、内径測定装置用制御部70が、見掛けの内径myを上述式のように補正演算し、記憶する(ステップS900)。他に測定対象ワークがあればステップS860に戻り、ステップS900までを繰り返す。測定対象のワーク40が無ければ、一連の測定を終了する(ステップS910)。
【0077】
なお、測定対象の内径が異なったワークについて連続的に計測する場合や、測定するワーク数が規定数を超えた場合には、マスタを用いてボアゲージを校正することが望ましい。その場合には、工作機械50の制御装置14にマスタ54の位置が記憶されているので、記憶されたマスタの位置にマスタ54を戻すことで、マスタ54とボアゲージ80の芯ずれが無いか極力低減した位置を再現できるので、作業効率を向上できる。
【0078】
上記実施例においては、ボアゲージ80の90°ピッチでの回転、または180°回転を、ボアゲージ80に設けた回転機構で実行しているが、上述したとおり工作機械の機能を使用してもよい。工作機械の機能を使用してスピンドル部16を回転させる場合は、ボアゲージを回転させるように工作機械を制御する制御装置をボアゲージ80側かあるいは工作機械側に設けることができる。
【0079】
ボアゲージ側に設ける場合には、ボアゲージ80のシャンク取付け部と変位検出器91の間に回転機構を設けることで実現できる。回転機構としては、例えば、外周部に90°ピッチで半球状の凹部を形成し、その凹部に嵌合する球状の突起が内周面に形成された円筒を組み合わせる。
【0080】
また上記実施例では、ボアゲージ80が保護部材92を有しているが、保護部材92は必須ではない。本発明では従来のボアゲージと異なり、芯ずれした状態で測定を実行できるので、芯ずれを許容しない従来のボアゲージで必須となっているガイド部材のガイドがなくともボアゲージの測定子を測定穴内に挿入することが可能である。
【0081】
ただし、測定子の挿入の際に、ワークの内面に測定子先端部が衝突的に接触して測定子や測定用アームが損傷するのを防止するために、挿入時に測定子を保護部材内部にまたは保護部材側へ引き込むようにするのが良い。
【0082】
さらに上記実施例では、ばねの解放状態で測定子が最大径位置にあり、測定のために測定穴内で測定子を引き込んだり伸展させたりしているが、解放状態でばねが最短でボアゲージ内に設けた可動機構で測定子を最大径から当接位置まで伸展させるようにしてもよい。その他、測定子は測定穴に対して可動であればよく、測定子の可動機構は実施例に限定されるものではない。
【0083】
また上記実施例では測定子2個の場合について説明したが、測定子が4個や6個等の複数個であってもよい。ただし、小径穴の内径測定の場合には、測定子が多いと穴への挿入が困難になるので、2個または4個が適切である。4個の場合には1回の180°回転、すなわち2回の測定でX方向とY方向の双方の芯ずれを簡単に求めることができる利点もある。
【符号の説明】
【0084】
10…基礎、12…本体、14…制御装置、16…スピンドル部(シャンク)、20…Z軸駆動手段、22…X軸駆動手段、24…Y軸駆動手段、26…制御部、28…表示部、30…X-Yテーブル、32…X軸テーブル、34…Y軸テーブル、36…ワーク保持手段、40…ワーク(測定対象)、41…ワーク内径測定面、42…穴、43…ワーク中心線(軸)、45…ボアゲージ中心線(軸)、50…工作機械(専用機)、52…マスタ保持具、54…マスタ、55…穴、56…Θテーブル、57…マスタ中心線(軸)、58…測定部、70…内径測定装置用制御部、78…測定部、79…検出部、80、80c、80e…ボアゲージ(内径測定手段)、81a、81b…測定子(コンタクタ)、81c、81d…接触点、81e…球状部、81f…円柱部、81x…測定子中心線、82a、82b…測定用アーム、83a…支点、84a…検出用腕、85a…変位部材、86a、86b…検出器、87…ベース、87e…円板部、87s…円筒部、88…ばね、91…変位検出器、92…保護部材、93a、94a…支柱、100…内径測定装置、A1~B2…測定子変位量、D…ワーク直径、L2…芯ずれ誤差、m0…初期長さ、m、my…測定長さ、m2…ガイド部材外径、P…ボアゲージの芯ずれがない状態、Q…ボアゲージの芯ずれがある状態、r…球状部半径、R…ワーク内半径、ε1、ε2、εx…芯ずれ量