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  • 特開-画像記録方法及びインクセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081707
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】画像記録方法及びインクセット
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220525BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20220525BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20220525BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 501
B41M5/00 134
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019065891
(22)【出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 竜児
(72)【発明者】
【氏名】河合 将晴
(72)【発明者】
【氏名】本郷 悠史
(72)【発明者】
【氏名】溝江 大我
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA04
2C056EC36
2C056EC37
2C056EE18
2C056FA13
2C056FB02
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA46
2C056HA47
2H186AA04
2H186AA05
2H186AA15
2H186AB03
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB10
2H186AB12
2H186AB23
2H186AB28
2H186AB29
2H186AB39
2H186AB54
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA01
2H186FA07
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB20
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB56
4J039AD21
4J039BA13
4J039BC07
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA10
4J039EA18
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】非浸透性基材上に、隠蔽性に優れ、かつ、ざらつきが抑制された画像を記録でき、画像記録の速度にも優れる画像記録方法、及び、この画像記録方法に好適なインクジェットを提供する。
【解決手段】記非浸透性基材上に、インクジェットヘッドAから白色インクAを吐出して付与し、白色インクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから白色インクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクBを吐出して付与することにより、白色インクAの液滴Aを着弾させ、次いで白色インクBの液滴Bを着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成することを含み、かつ、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間が、20ms~10000msである画像記録方法、並びに、インクジェット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非浸透性基材、白色インクジェットインクA、及び、前記白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBを、それぞれ準備する工程と、
前記非浸透性基材上に、インクジェットヘッドAから前記白色インクジェットインクAを吐出して付与し、前記非浸透性基材上の前記白色インクジェットインクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから前記白色インクジェットインクBを吐出して付与することにより、画像を記録する工程と、
を含み、
前記画像を記録する工程は、前記非浸透性基材上に、前記白色インクジェットインクAの液滴Aを着弾させ、次いで前記白色インクジェットインクBの液滴Bを着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成することを含み、かつ、前記液滴Aが着弾してから前記液滴Bが着弾するまでの時間が、20ms~10000msである画像記録方法。
【請求項2】
前記液滴Aが着弾してから前記液滴Bが着弾するまでの時間をTmsとし、白色インクジェットインクAのTms時の動的表面張力をγ(T)とし、白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力をγ(10)とした場合に、γ(T)とγ(10)との差の絶対値が、3.0mN/m以下である請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記白色インクジェットインクAの10ms時の動的表面張力から前記白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力を差し引いた値が、1.0mN/m~7.0mN/mである請求項1又は請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力が、25.0mN/m~40.0mN/mである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記画像を記録する工程は、前記非浸透性基材を搬送する搬送機構と、前記インクジェットヘッドAと、前記インクジェットヘッドAに対して前記非浸透性基材の搬送方向下流側に配置された前記インクジェットヘッドBと、を備える画像記録装置を用い、前記搬送機構によって前記非浸透性基材を搬送し、搬送されている前記非浸透性基材上に、前記インクジェットヘッドAから前記白色インクジェットインクAを吐出して付与し、前記非浸透性基材上の前記白色インクジェットインクAが付与された領域に、前記インクジェットヘッドBから前記白色インクジェットインクBを吐出して付与する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記白色インクジェットインクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、
前記白色インクジェットインクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤が5質量%以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記白色インクジェットインクAが白色顔料を含有し、前記白色インクジェットインクAの全量に対する前記白色顔料の含有量が6質量%~20質量%であり、
前記白色インクジェットインクBが白色顔料を含有し、前記白色インクジェットインクAの全量に対する前記白色顔料の含有量が6質量%~20質量%である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記白色インクジェットインクAが、水を含有し、
前記白色インクジェットインクBが、水を含有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項9】
前記白色インクジェットインクAは、重合性化合物を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクAの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満であり、
前記白色インクジェットインクBは、重合性化合物を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクBの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項10】
白色インクジェットインクAと、
前記白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBと、
を備えるインクセット。
【請求項11】
前記白色インクジェットインクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、
前記白色インクジェットインクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、前記白色インクジェットインクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤が5質量%以下である請求項10に記載のインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像記録方法及びインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白色インクジェットインクに関する検討がなされている。
例えば、特許文献1には、インク吸収性の無い透明な記録媒体や明度が低い記録媒体に対しても、良好な視認性を有する高精細な画像が得られるインクジェット用インクセットとして、少なくとも着色剤を含有するカラーインク及び白インクから構成されるインクジェット用インクセットにおいて、白インクの表面張力が、カラーインクの表面張力よりも低いことを特徴とするインクジェット用インクセットが開示されている。
特許文献2には、ホワイトインクによる下地層を平坦化することができる印刷装置として、第1ホワイトインクの噴射と第2ホワイトインクを噴射とを切り替えて、第1ホワイトインクと第2ホワイトインクを噴射するヘッドと、第1ホワイトインクを噴射させて当該第1ホワイトインクを媒体に着弾させた後に、第1ホワイトインク上に第2ホワイトインクを噴射させるようにヘッドを制御する制御部と、を備え、第2ホワイトインクの表面張力は第1ホワイトインクの表面張力よりも小さいことを特徴とする印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4877224号公報
【特許文献2】特開2013-215917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、白色インクジェットインクによって記録される画像に対し、光の透過性が低いこと(「隠蔽性」ともいう。)が求められる場合がある。
具体的には、文字画像上及び/又は基材上に、隠蔽性を有する画像を形成することにより、文字画像及び/又は基材を覆い隠し、文字画像及び/又は基材の色を視認できなくすることが求められる場合がある。
【0005】
白色インクジェットインクを用いて隠蔽性に優れた画像を記録する方法として、基材上に、まず、1滴目の白色インクジェットインクの液滴を着弾させ、次いで2滴目の白色インクジェットインクの液滴を着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットを形成することにより、画像を記録する方法が考えられる。この方法によれば、基材に対する画像の被覆率を向上させることができるので、画像の隠蔽性を向上させることができる。
しかし、この方法において、基材として非浸透性基材を用い、かつ、画像記録の速度の観点から、1滴目と2滴目との着弾間隔を短くした場合には、画像のざらつき(graininess)が生じる場合があることが判明した。
この理由は、基材として非浸透性基材を用い、かつ、1滴目と2滴目との着弾間隔を短くしたことにより、1滴目の液滴によるインクドットが十分に乾燥する前に2滴目の液滴が着弾することになり、その結果、1滴目と2滴目との間で着弾干渉が生じやすくなるためと考えられる。
特許文献1及び2では、1滴目と2滴目との着弾間隔を短くした場合の上記問題については、一切注目されていない。
【0006】
本開示の課題は、非浸透性基材上に、隠蔽性に優れ、かつ、ざらつきが抑制された画像を記録でき、画像記録の速度にも優れる画像記録方法、及び、この画像記録方法に好適なインクジェットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 非浸透性基材、白色インクジェットインクA、及び、白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBを、それぞれ準備する工程と、
非浸透性基材上に、インクジェットヘッドAから白色インクジェットインクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクジェットインクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから白色インクジェットインクBを吐出して付与することにより、画像を記録する工程と、
を含み、
画像を記録する工程は、非浸透性基材上に、白色インクジェットインクAの液滴Aを着弾させ、次いで白色インクジェットインクBの液滴Bを着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成することを含み、かつ、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間が、20ms~10000msである画像記録方法。
<2> 液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間をTmsとし、白色インクジェットインクAのTms時の動的表面張力をγ(T)とし、白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力をγ(10)とした場合に、γ(T)とγ(10)との差の絶対値が、3.0mN/m以下である<1>に記載の画像記録方法。
<3> 白色インクジェットインクAの10ms時の動的表面張力から白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力を差し引いた値が、1.0mN/m~7.0mN/mである<1>又は<2>に記載の画像記録方法。
<4> 白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力が、25.0mN/m~40.0mN/mである<1>~<3>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<5> 画像を記録する工程は、非浸透性基材を搬送する搬送機構と、インクジェットヘッドAと、インクジェットヘッドAに対して非浸透性基材の搬送方向下流側に配置されたインクジェットヘッドBと、を備える画像記録装置を用い、搬送機構によって非浸透性基材を搬送し、搬送されている非浸透性基材上に、インクジェットヘッドAから白色インクジェットインクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクジェットインクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから白色インクジェットインクBを吐出して付与する<1>~<4>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<6> 白色インクジェットインクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、
白色インクジェットインクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤が5質量%以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<7> 白色インクジェットインクAが白色顔料を含有し、白色インクジェットインクAの全量に対する白色顔料の含有量が6質量%~20質量%であり、
白色インクジェットインクBが白色顔料を含有し、白色インクジェットインクAの全量に対する白色顔料の含有量が6質量%~20質量%である<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<8> 白色インクジェットインクAが、水を含有し、
白色インクジェットインクBが、水を含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<9> 白色インクジェットインクAは、重合性化合物を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクAの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満であり、
白色インクジェットインクBは、重合性化合物を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクBの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満である<1>~<8>のいずれか1つに記載の画像記録方法。
<10> 白色インクジェットインクAと、
白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBと、
を備えるインクセット。
<11> 白色インクジェットインクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であり、
白色インクジェットインクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤が5質量%以下である<10>に記載のインクセット。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、非浸透性基材上に、隠蔽性に優れ、かつ、ざらつきが抑制された画像を記録でき、画像記録の速度にも優れる画像記録方法、及び、この画像記録方法に好適なインクジェットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の好ましい態様における、隣り合う2つのインクドットA及びインクドットBの一例を示す模式断面図である。
図2】本開示の画像記録方法に好適な画像記録装置の一例を示す概略構成図である。
図3】実施例における画像の隠蔽性の評価に用いた黒文字画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「画像の記録」とは、インクを用い、基材上に画像を描き、描いた画像を定着させることを意味する。「画像」とは、インクにより記録される像であればよく、文字、ベタ膜等を含むものとする。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0011】
〔画像記録方法〕
本開示の画像記録方法は、
非浸透性基材、白色インクジェットインクA、及び、白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBを、それぞれ準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、
非浸透性基材上に、白色インクジェットインクAをインクジェットヘッドAから吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクジェットインクAが付与された領域に、白色インクジェットインクBをインクジェットヘッドBから吐出して付与することにより、画像を記録する工程(以下、「画像記録工程」ともいう)と、
を含み、
画像記録工程は、非浸透性基材上に、白色インクジェットインクAの液滴Aを着弾させ、次いで白色インクジェットインクBの液滴Bを着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成することを含み、かつ、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間が、20ms~10000msである。
【0012】
本開示において、10ms(ミリ秒)時の動的表面張力は、23℃、55%RHの環境下、最大泡圧法によって測定される、10ms時の動的表面張力を意味する。
後述するT(着弾間隔)ms時の動的表面張力は、23℃、55%RHの環境下、最大泡圧法によって測定される、Tms時の動的表面張力を意味する。
10ms時の動的表面張力及びTms時の動的表面張力の各々は、例えば、最大泡圧法動的表面張力計BP100(KRUSS社製)を用いて測定する。
【0013】
本開示の画像記録方法によれば、非浸透性基材上に、隠蔽性に優れ、ざらつきが抑制された画像を効率よく記録できる。
かかる効果が奏される理由は、以下のように推測される。
【0014】
本開示の画像記録方法では、非浸透性基材上に、白色インクジェットインクA(以下、「白色インクA」ともいう)の液滴Aを着弾させ、次いで白色インクジェットインクB(以下、「白色インクB」ともいう)の液滴Bを着弾させて、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成する。ここで、インクドットAは液滴Aが着弾して形成されたインクドットであり、インクドットBは液滴Bが着弾して形成されたインクドットである。
これにより、インクドットAのみで被覆しきれない領域をインクドットBによって被覆できるので、液滴Aのみで画像を記録する場合、及び、液滴Aと液滴Bとを同じ位置に着弾させた場合と比較して、隠蔽性に優れた画像が得られる。
更に、本開示の画像記録方法では、白色インクA及び白色インクBを、別々のインクジェットヘッド(即ち、インクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドB)から吐出することで、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間(以下、「液滴Aと液滴Bとの着弾間隔T」又は単に「着弾間隔T」ともいう)を10000ms以下に制限することを実現する。これにより、画像記録の速度が向上する。
【0015】
一方、本発明者等の検討により、白色インクA及び白色インクBとして同一の白色インクを用い、この同一の白色インクをインクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドBの各々から吐出して液滴A(最初の液滴)及び液滴B(次の液滴)を非浸透性基材に順次着弾させ、かつ、液滴Aと液滴Bとの着弾間隔Tを10000ms以下とした場合には、記録された画像のざらつきが生じる場合があることが判明した。
この理由は、非浸透性基材を用い、かつ、液滴Aと液滴Bとの着弾間隔Tを10000ms以下とした場合には、液滴AによるインクドットAが完全に乾燥しきる前に液滴Bが着弾することになり易く、これにより、液滴Aと液滴Bとの間で着弾干渉(打滴干渉)が生じ易くなるためと考えられる。
より詳細には、インクジェットヘッドAから吐出されたインクA(液滴A)の表面張力(動的表面張力)は、吐出された瞬間から低下しはじめ、着弾した後も低下していき、やがて、インクAの静的表面張力の値に収束する。表面張力の低下率は、吐出された直後が最も大きく、吐出されてからの時間が経過するにつれ、次第に小さくなる(即ち、表面張力の低下が次第に緩やかになる)。
従って、白色インクA(即ち液滴A)及び白色インクB(即ち液滴B)を順次着弾させた場合、液滴Bが着弾する時点において、既に、白色インクA(即ちインクドットA)の動的表面張力が、液滴Aとして着弾した時点の動的表面張力と比較して低下していると考えられる。このため、液滴Bが着弾する時点において、インクドットAの表面張力が、液滴Bの表面張力よりも低くなっており、この表面張力の差に起因して、着弾干渉が生じると考えられる。詳細には、相対的に表面張力が低いインクドットAが、相対的に表面張力が高い液滴Bに引き寄せられることにより、画像の厚さのバラつきが生じると考えられる。この厚さのバラつきに起因し、画像のざらつきが発生すると考えられる。
【0016】
上述した問題に関し、本開示の画像記録方法では、白色インクA及び白色インクBとして同一の白色インクを用いるのではなく、白色インクAと、白色インクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクBと、を用いる。
ここで、10ms時の動的表面張力は、現時点の技術で実際に信頼性良く測定できる動的表面張力のうち、白色インクの液滴が非浸透性基材に着弾する瞬間の動的表面張力に最も近い値である。10ms時の動的表面張力は、近似的に、白色インクの液滴が非浸透性基材に着弾する時点の動的表面張力に対応する。
本開示の画像記録方法では、先に付与される白色インクAの動的表面張力が、後で付与される白色インクB(液滴B)の着弾時までに低下する低下分を見越し、白色インクAの10ms時の動的表面張力を白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも高くする。
これにより、白色インクB(液滴B)が着弾した時点において、既に付与されている白色インクA(インクドットA)の表面張力と、着弾した白色インクB(液滴B)の表面張力と、が近い値となり、その結果、上述した着弾干渉が抑制され、ひいては、着弾干渉に起因する画像のざらつきが抑制されると考えられる。
【0017】
上述したとおり、本開示の画像記録方法は、画像記録工程において、別個のヘッド(インクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドB)から白色インクA及び白色インクBを吐出して非浸透性基材上に順次付与し、この際の液滴Aと液滴Bとの着弾間隔を10000ms以下とする。これにより、画像記録の高速化が実現される。
本開示の画像記録方法は、かかる態様の画像記録であって非浸透性基材に対する画像記録に特有の問題である、着弾干渉に起因する画像のざらつきを抑制するための画像記録方法である。
本開示の画像記録方法は、これらの点で、同一のインクジェットヘッドから2種のインクを吐出する、前述した特許文献2(特開2013-215917号公報)の画像記録方法とは全く異なる。
【0018】
以下、本開示の画像記録方法の各工程について説明する。
【0019】
<準備工程>
準備工程は、非浸透性基材、白色インクA、及び、白色インクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクBを、それぞれ準備する工程である。
準備工程では、非浸透性基材、白色インクA、及び白色インクBとして、それぞれ、予め製造されたものを、後述の画像記録工程を実施するために単に準備するだけの工程であってもよいし、非浸透性基材、白色インクA、及び白色インクBのうちの少なくとも1つを製造する工程であってもよい。
また、白色インクA及び白色インクBの少なくとも一方の上記動的表面張力を調整する工程であってもよい。
【0020】
(非浸透性基材)
本開示において、非浸透性基材とは、ASTM試験法のASTM D570で吸水率(質量%、24hr.)が0.2未満である基材を指す。
非浸透性基材としては特に制限はないが、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材としては、特に制限はなく、例えば熱可塑性樹脂の基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、熱可塑性樹脂を、シート状又はフィルム状に成形した基材が挙げられる。
樹脂基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、又はポリイミドを含む基材が好ましい。
【0021】
樹脂基材は、透明な樹脂基材であっても、着色された樹脂基材であってもよい。
ここで、透明とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上(好ましくは90%以上)であることを意味する。
【0022】
樹脂基材の形状は、特に限定されないが、シート状の樹脂基材であることが好ましく、被記録媒体の生産性の観点から、巻き取りによってロールを形成可能なシート状の樹脂基材であることがより好ましい。
樹脂基材の厚さとしては、10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
【0023】
樹脂基材は、表面エネルギーを向上させる観点から、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
(白色インクA)
白色インクAは、好ましくは白色顔料を少なくとも1種含有する。
【0025】
-白色顔料-
白色顔料としては、特に限定されず公知の白色顔料が用いられるが、例えば、二酸化チタン粒子(TiO)、酸化亜鉛粒子、硫酸バリウム粒子、酸化珪素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、カルシウムシリケート粒子、炭酸カルシウム粒子、カオリン粒子、タルク粒子、コロイダルシリカ粒子等の無機顔料粒子等が挙げられる。また、白色顔料としては、中空の樹脂粒子も挙げられる。
【0026】
白色顔料は、画像の隠蔽性の観点から、二酸化チタン粒子を含むことが特に好ましい。
二酸化チタン粒子は、屈折率が大きい粒子であるため、白色顔料が二酸化チタン粒子を含む場合には、画像の隠蔽性がより向上する。
二酸化チタン粒子としては、アナターゼ型二酸化チタン粒子、ルチル型二酸化チタン粒子、ブルッカイト型二酸化チタン粒子等が挙げられるが、屈折率の観点から、ルチル型二酸化チタン粒子が好ましい。また、ルチル型二酸化チタン粒子は、アナターゼ型二酸化チタン粒子及びブルッカイト型二酸化チタン粒子と比較して、光触媒作用が弱いため、白色インクA中の樹脂、樹脂基材等への影響が小さいという利点もある。
【0027】
白色顔料が二酸化チタン粒子を含む場合、白色顔料は、二酸化チタン粒子以外の白色顔料(例えば無機顔料粒子)を含んでいてもよい。
白色顔料が二酸化チタン粒子を含む場合、白色顔料全量に占める二酸化チタン粒子の割合は、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。白色顔料全量に占める二酸化チタン粒子の割合の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0028】
白色顔料の平均一次粒径としては、画像の隠蔽性をより向上させる観点から、100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましく、200nm以上が更に好ましい。
また、白色顔料の平均一次粒径としては、インクの分散安定性(例えば、インクをインクジェットインクとして用いた場合の吐出安定性)の観点から、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
【0029】
本開示における白色顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される値である。測定には、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡1200EXを用いることができる。
具体的には、カーボン膜を貼り付けたCu200メッシュ(日本電子(株)製)に、1,000倍に希釈したインクを滴下し乾燥させた後、TEMで10万倍に拡大した画像から、重なっていない独立した粒子300個の円相当径を測定し、測定値を平均して平均粒径として求める。
【0030】
また、画像の隠蔽性の観点から、白色顔料の屈折率は、2.0以上が好ましい。
本開示において「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0031】
白色インクA中における白色顔料の含有量は、白色インクAの全量に対し、1質量%~20質量%であることが好ましく、3質量%~20質量%であることがより好ましく、6質量%~20質量%であることが更に好ましく、7質量%~20質量%であることが更に好ましく、7質量%~15質量%であることが更に好ましい。
白色インクA中における白色顔料の含有量が、白色インクAの全量に対して1質量%以上である場合には、画像の隠蔽性がより向上する。
白色インクA中における白色顔料の含有量が、白色インクAの全量に対して20質量%以下である場合には、白色インクAの吐出性がより向上する。
【0032】
-他の色材-
白色インクAは、白色顔料以外の他の色材を更に含有してもよい。
他の色材としては、有機顔料粒子又は無機顔料粒子が挙げられ、特開2011-94112号公報の段落0029~0041に記載の顔料粒子が好ましく挙げられる。
白色インクAが、白色以外の色材を含有する場合、白色インクAにわずかに有彩色の色味が加わる場合があり得るが、この場合においても、JIS Z 8721:1993に規定される明度が9以上である場合には、本開示においては「白色インク」とみなす。
【0033】
白色インクAに含有される色材全体に占める白色顔料の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
特定インクに含有される色材全体に占める白色顔料の割合は、100質量%であってもよい。
【0034】
-水-
白色インクAは、好ましくは、水を含有する。
水の含有量は、白色インクAの全量に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよる。白色インクAの全量に対する水の含有量の上限としては、例えば、90質量%、80質量%等が挙げられる。
【0035】
-沸点が270℃以上である有機溶剤-
白色インクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下(より好ましくは2質量%以下)であることが好ましい。
要するに、白色インクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。
これにより、画像記録の速度が向上する。また、画像のベタツキがより抑制される。
【0036】
また、白色インクAが沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有しない場合には、白色インクAが吐出された直後からの10ms時の動的表面張力がより低下し易い場合がある。従って、白色インクAが沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有しない場合には、着弾干渉が生じ易い条件となる場合がある。
しかし、本開示の画像記録方法では、白色インクAが沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有しない場合であっても、白色インクAの10ms時の動的表面張力を、白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも大きくすることで、着弾干渉及び着弾干渉に起因する画像のざらつきを効果的に抑制できる。
従って、白色インクAが沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有しない場合には、白色インクAが沸点270℃以上の有機溶剤を実質的に含有する場合と比較して、白色インクAの10ms時の動的表面張力を白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも大きくしたことによる改善の幅(画像のざらつき抑制の幅)がより大きい。
【0037】
本開示において、沸点は、1気圧(101325Pa)下における沸点を意味する。
沸点は、沸点計により測定される値であり、例えばタイタンテクノロジーズ(株)製のDosaTherm300を用いて測定することができる。
【0038】
沸点が270℃以上である有機溶剤としては、例えば、グリセリン(沸点:290℃)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:276℃)、スルホラン(沸点:285℃)、チオジグリコール(沸点:282℃)等が挙げられる。
【0039】
-沸点が120℃以上270℃未満である有機溶剤-
白色インクAは、沸点が120℃以上270℃未満である有機溶剤から選ばれる少なくとも一種の低沸点有機溶剤を含有することができる。
これにより、画像記録の速度が向上する。また、画像のベタツキがより抑制される。
【0040】
沸点が120℃以上270℃未満である有機溶剤としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド化合物、アミン化合物、含硫黄化合物等が挙げられる。
【0041】
沸点120℃以上270℃未満の多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール(沸点:188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点:210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、1,4-ブタンジオール(沸点:230℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点:242℃)、エチレングリコール(沸点:197℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃)、1,3-プロパンジオール(沸点:210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点:203℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点:196℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点:223℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点:250℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点:178℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点:190℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点:175℃)、ペトリオール(沸点:216℃)等が挙げられる。
【0042】
沸点120℃以上270℃未満の多価アルコールアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルカルビトール)(沸点:230℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:227℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:122℃)、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル(沸点:160℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点243℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:158℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:133℃)等が挙げられる。
【0043】
沸点120℃以上270℃未満のアミド化合物としては、例えば、ホルムアミド(沸点:210℃)、N-メチルホルムアミド(沸点:199℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)等が挙げられる。
【0044】
沸点120℃以上270℃未満のアミン化合物としては、例えば、モノエタノ-ルアミン(沸点:170℃)、ジエタノールアミン(沸点:217℃)、トリエタノールアミン(沸点:208℃)等が挙げられる。
【0045】
沸点120℃以上270℃未満の含窒素複素環化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃)、2-ピロリドン(沸点:245℃)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(沸点:220℃)、ε-カプロラクタム(沸点:136℃)等が挙げられる。
【0046】
沸点120℃以上270℃未満の含硫黄化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)等が挙げられる。
【0047】
沸点が120℃以上270℃未満である低沸点有機溶剤としては、記録後の画像部分の乾燥性の点で、沸点が120℃以上270℃未満である多価アルコール、及び沸点が120℃以上270℃未満である多価アルコールアルキルエーテルからなる群より選択される低沸点有機溶剤を含有することが好ましい。
【0048】
低沸点有機溶剤の含有量としては、白色インクAの全量に対して、4質量%以上35質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下の範囲であることがより好ましく、15質量%以上30質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
低沸点有機溶剤の含有量が4質量%以上であると、白色無機顔料の分散性を良好に保持することができる。また、低沸点有機溶剤の含有量が35質量%以下であると、記録後の乾燥性がより良好になる。
【0049】
-樹脂-
白色インクAは、好ましくは、樹脂を少なくとも1種含有する。
ここでいう樹脂は、白色インクAに含有される全ての樹脂成分を意味する。
白色インクAに含有される樹脂の具体的な形態としては、樹脂からなる粒子である樹脂粒子;顔料の少なくとも一部を被覆して顔料を分散させるための樹脂分散剤;等が挙げられる。
【0050】
-樹脂粒子-
樹脂粒子は、中実形状であることが好ましい。
本開示において、中実形状とは中空形状の対義語として用いられる用語である。
具体的には、樹脂粒子の空隙率は、10%未満であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
なお、樹脂粒子が空隙を有する場合、上記空隙率は下記式により求めることができる。樹脂粒子が空隙を有しない場合、空隙率は0%とする。
空隙率(%)=(樹脂粒子の空隙の半径/樹脂粒子の半径)×100
また、樹脂粒子に空隙が一つではなく複数個ある場合には、
空隙率(%)=Σ(樹脂粒子の空隙の半径)/(樹脂粒子の半径(粒径の1/2)×100、より求められる。
上記樹脂粒子の半径及び樹脂粒子の空隙の半径は、透過型電子顕微鏡により樹脂粒子を観察することにより求められる。100個の樹脂粒子において求められた空隙率の算術平均値を樹脂粒子の空隙率とする。
【0051】
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)には特に制限はない。
画像の密着性をより向上させる観点から、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは140℃以上である。
樹脂粒子のTgの上限は特に限定されないが、樹脂粒子のTgは、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは200℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。
【0052】
本開示において、ガラス転移温度(Tg)としては、実測によって得られる測定Tgを適用する。
具体的には、測定Tgとしては、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、樹脂の分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)・・・(1)
ここで、計算対象となる樹脂はi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用する。上記文献に記載されていないモノマーの単独重合体ガラス転移温度の値は、モノマーの単独重合体を作製したのちに上述の測定方法により測定Tgとして得られる。この際、単独重合体の重量平均分子量を10,000以上とすることにより、重量平均分子量による重合体のTgに対する影響を無視することができる。
【0053】
樹脂粒子のガラス転移温度は、通常用いられる方法によって適宜制御することができる。例えば、樹脂粒子を構成するモノマー(重合性化合物)の種類、その構成比率、樹脂粒子を構成する樹脂の分子量等を適宜選択することで、樹脂粒子のガラス転移温度を所望の範囲に制御することができる。
【0054】
樹脂粒子における樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニル樹脂(例:塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等)、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂(例:フタル酸樹脂等)、アミノ材料(例:メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等)などが挙げられる。
【0055】
樹脂粒子としては、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂の粒子が好ましく、アクリル樹脂の粒子が更に好ましい。
【0056】
なお、本開示において、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位を含む樹脂を意味する。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0057】
また、樹脂粒子を形成する樹脂は、上記に例示された樹脂を構成する構成単位を2種以上含む共重合体であってもよく、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。また、樹脂粒子自体が2種以上の樹脂の混合物からなるもののみならず、2種以上の樹脂が例えば、コア/シェルのように積層されてなる複合樹脂粒子であってもよい。
【0058】
樹脂粒子としては、転相乳化法により得られた樹脂粒子であることが好ましく、自己分散性樹脂の粒子(自己分散性樹脂粒子)がより好ましい。
ここで、自己分散性樹脂とは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、樹脂自身が有する官能基(特に、カルボキシ基等の酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性樹脂をいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性樹脂が液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性樹脂が固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
また、「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部未満(好ましくは1.0質量部未満)であることを指す。
【0059】
転相乳化法としては、例えば、樹脂を溶媒(例えば、水溶性溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、樹脂が有する塩生成基(例えば、カルボキシ基などの酸性基)を中和した状態で、撹拌、混合し、溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
【0060】
自己分散性樹脂粒子としては、特開2010-64480号公報の段落0090~0121又は特開2011-068085号公報の段落0130~0167に記載されている自己分散性樹脂粒子の中から選択して用いることができる。
【0061】
自己分散性樹脂粒子としては、カルボキシ基を有する自己分散性樹脂粒子が好ましい。
カルボキシ基を有する自己分散性樹脂粒子のより好ましい形態は、不飽和カルボン酸(好ましくは(メタ)アクリル酸)に由来する構成単位を含む樹脂からなる形態である。
【0062】
カルボキシ基を有する自己分散性樹脂粒子の更に好ましい形態は、
脂環族基を有する構成単位と、
アルキル基を有する構成単位と、
不飽和カルボン酸(好ましくは(メタ)アクリル酸)に由来する構成単位と、
を含む樹脂からなる形態である。
上記樹脂中における、脂環族基を有する構成単位の含有量(2種以上存在する場合には総含有量)は、樹脂の全量に対し、3質量%~95質量%が好ましく、5質量%~75質量%がより好ましく、10質量%~50質量%が更に好ましい。
上記樹脂中における、アルキル基を有する構成単位の含有量(2種以上存在する場合には総含有量)は、樹脂の全量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~85質量%がより好ましく、20質量%~80質量%が更に好ましく、30質量%~75質量%が更に好ましく、40質量%~75質量%が更に好ましい。
上記樹脂中における不飽和カルボン酸(好ましくは(メタ)アクリル酸)に由来する構成単位の含有量(2種以上存在する場合には総含有量)は、樹脂の全量に対し、2質量%~30質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましく、5質量%~15質量%が更に好ましい。
【0063】
また、カルボキシ基を有する自己分散性樹脂粒子の形態としては、上述した「カルボキシ基を有する自己分散性樹脂粒子の更に好ましい形態」において、脂環族基を有する構成単位を、芳香族基を有する構成単位に変更した形態、又は、脂環族基を有する構成単位に加えて芳香族基を有する構成単位を含む形態も好ましい。
いずれの形態においても、脂環族基を有する構成単位及び芳香族基を有する構成単位の総含有量は、樹脂の全量に対し、3質量%~95質量%が好ましく、5質量%~75質量%がより好ましく、10質量%~50質量%が更に好ましい。
【0064】
上記脂環族基を有する構成単位は、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートとしては、単環式(メタ)アクリレート、2環式(メタ)アクリレート、及び3環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素原子数が3~10のシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、定着性、耐ブロッキング性、及び自己分散性樹脂粒子の分散安定性の観点から、2環式(メタ)アクリレート又は3環式以上の多環式(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0065】
芳香族基を有する構成単位は、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位であることが好ましい。
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー(例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、等)、スチレン化合物等が挙げられる。
中でも、樹脂鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又はフェニル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0066】
アルキル基を有する構成単位は、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位であることが好ましい。
アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
中でも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、又はブチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、メチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0067】
樹脂粒子(好ましくは自己分散性樹脂粒子。以下同じ。)を構成する樹脂の重量平均分子量は、3000~20万であることが好ましく、5000~15万であることがより好ましく、10000~10万であることが更に好ましい。
重量平均分子量が3000以上であると、水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0068】
樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定された値を意味する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0069】
樹脂粒子を構成する樹脂は、自己分散性、及び処理液が接触した場合の凝集速度の観点から、酸価が100mgKOH/g以下の樹脂であることが好ましく、酸価は25mgKOH/g~100mgKOH/gの樹脂がより好ましい。
【0070】
樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm~200nmの範囲が好ましく、1nm~150nmの範囲がより好ましく、1nm~100nmの範囲が更に好ましく、特に好ましくは1nm~10nmの範囲である。体積平均粒径が1nm以上であると製造適性が向上する。また、体積平均粒径が200nm以下であると保存安定性が向上する。また、樹脂粒子Aの粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、光散乱を用いた粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製のマイクロトラックUPA(登録商標) EX150)によって測定される。
【0071】
隠蔽性を向上する観点から、樹脂粒子の屈折率は、1.0~1.7が好ましい。
【0072】
樹脂粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子(好ましくは自己分散性樹脂粒子)のインク中における含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、インクの全量に対し、0.5質量%~11質量%が好ましく、0.5質量%~9質量%がより好ましく、2質量%~9質量%が更に好ましく、2質量%~7質量%が更に好ましい。
上記含有量が0.5質量%以上であると、画像の密着性がより向上する。
上記含有量が11質量%以下であると、インクの分散安定性をより向上させることができる。このため、例えば、インクをインクジェットインクとして用いた場合には、インクジェットヘッドからの吐出安定性(以下、単に「吐出安定性」ともいう)をより向上させることができる。
【0073】
以下に、樹脂粒子の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸ナトリウム共重合体(70/20/5/5)、Tg:150℃
・Joncryl(登録商標) JDX-C3080(ジョンソンポリマー社製)、Tg:130℃
・トレパール(登録商標)EP、東レ(株)製、Tg:190℃
・トレパール(登録商標)PES、東レ(株)製、Tg:225℃
【0074】
-樹脂分散剤-
白色インクAは、樹脂として、顔料の少なくとも一部を被覆して顔料を分散させるための樹脂分散剤を含有してもよい。
ここでいう顔料は、後述する白色顔料に代表される、白色インクA中に含有される顔料を意味する。
【0075】
樹脂分散剤としては、アクリル樹脂が好ましい。
樹脂分散剤としては、例えば、特開2016-145312号公報の段落0080~0096に記載の分散剤が好ましく挙げられる。
【0076】
白色インクAに含有される全ての顔料の含有量に対する分散剤の含有量は、3質量%~20質量%であることが好ましく、4質量%~18質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることが更に好ましい。
また、白色インクAの全量に対する分散剤の含有量(後述するz質量%)は、0.1質量%~2.4質量%であることが好ましく、0.5質量%~2.0質量%であることがより好ましく、0.8質量%~1.5質量%であることが更に好ましい。
【0077】
-樹脂の好ましい含有量-
白色インクA中における樹脂(例えば、樹脂粒子及び樹脂分散剤)の含有量(例えば、樹脂粒子及び樹脂分散剤の総含有量)は、白色インクAの全量に対し、1質量%~12質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましく、3質量%~10質量%が更に好ましく、3質量%~8質量%が更に好ましい。
【0078】
-界面活性剤-
白色インクAは、界面活性剤を少なくとも1種含有していてもよい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
中でも、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0079】
界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0080】
ノニオン性界面活性剤として、特に好ましくは、アセチレングリコール系界面活性剤である。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール等のアルキレンオキシド付加物(好ましくはエチレンオキシド付加物)が挙げられる。特に、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキシド付加物(3≦x+y≦30、より好ましくは5≦x+y≦30)が好ましい。
【0081】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、上市された市販品を使用してもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、エアープロダクツ社製又は日信化学工業(株)製のサーフィノールシリーズ(例えば、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、オルフィンシリーズ(例えば、オルフィンE1010、オルフィンE1020)、ダイノールシリーズ(例えばダイノール604)等、また川研ファインケミカル(株)製のアセチレノール等、などが挙げられる。
【0082】
白色インクA及び白色インクBの10ms時の動的表面張力は、それぞれ、界面活性剤の種類及び/又は含有量を調整することによって調整できる。
白色インクA及び白色インクBの10ms時の動的表面張力は、有機溶剤等の他の成分の種類及び/又は含有量を調整することによって調整しても構わないが、界面活性剤の種類及び/又は含有量によって調整した場合には、白色インクA及び白色インクBの粘度の差をより少なくすることができる。
【0083】
また、界面活性剤は、消泡剤としても使用することができる。
界面活性剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)に代表されるキレート剤等、も使用することができる。
【0084】
界面活性剤の含有量は、白色インクAの全量に対し、好ましくは0.01質量%~10質量%であり、0.1質量%~5質量%であり、更に好ましくは0.3質量~3質量%である。
【0085】
-その他の添加剤-
白色インクAは、上記成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、コロイダルシリカ、無機塩、固体湿潤剤(尿素等)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤、水溶性高分子化合物等の公知の添加剤が挙げられる。
【0086】
白色インクAは、重合性化合物(例えば、(メタ)アクリレート化合物等)を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクAの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満であってもよい。
要するに、白色インクAは、実質的に重合性化合物を含有しなくてもよい。
白色インクAが実質的に重合性化合物を含有しない場合には、ピニング露光等によってインクドットを積極的に硬化させることができない。このため、着弾干渉が生じ易い条件となる。
しかし、本開示の画像記録方法では、白色インクAが実質的に重合性化合物を含有しない場合であっても、白色インクAの10ms時の動的表面張力を、白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも大きくすることで、着弾干渉及び着弾干渉に起因する画像のざらつきを効果的に抑制できる。
従って、白色インクAが実質的に重合性化合物を含有しない場合には、白色インクAが実質的に重合性化合物を含有する場合と比較して、白色インクAの10ms時の動的表面張力を白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも大きくしたことによる改善の幅(画像のざらつき抑制の幅)がより大きい。
【0087】
-10ms時の動的表面張力-
白色インクAの10ms時の動的表面張力は、白色インクBの10ms時の動的表面張力よりも大きければよく、その他には特に制限はない。
10ms時の動的表面張力の測定方法については前述したとおりである。
白色インクAの10ms時の動的表面張力は、例えば、10.0mN/m~60.0mN/mであり、好ましくは20.0mN/m~50.0mN/mであり、より好ましくは25.0mN/m~50.0mN/mであり、更に好ましくは25.0mN/m~40.0mN/mである。
【0088】
-粘度-
白色インクAの粘度には特に制限はないが、1.2mPa・s~15mPa・sが好ましく、2mPa・s~13mPa・sがより好ましく、2.5mPa・s~10mPa・sが更に好ましい。
本開示における粘度は、25℃で測定される値である。
粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業(株)製)を用いる。
【0089】
-pH-
白色インクAのpHには特に制限はないが、pH6~11が好ましく、pH7~10がより好ましく、pH7~9が更に好ましい。
本開示におけるpHは、25℃で測定される値である。
pHは、市販のpHメーターを用いて測定する。
【0090】
(白色インクB)
白色インクBは、10ms時の動的表面張力が白色インクAの10ms時の動的表面張力よりも小さければよく、その他には特に制限はない。
白色インクBの好ましい態様は、10ms時の動的表面張力が白色インクAの10ms時の動的表面張力よりも小さい限りにおいて、白色インクAの好ましい態様と同様である。
着弾干渉に起因する画像のざらつきをより効果的に抑制する観点から、白色インクBの組成は、界面活性剤の種類及び含有量を除き、白色インクAと同様の組成であることが好ましい。
また、白色インクBの好ましい物性(10ms時の動的表面張力、静的表面張力、粘度、pH等)も、白色インクBの10ms時の動的表面張力が白色インクAの10ms時の動的表面張力よりも小さいことを除き、白色インクAの好ましい物性と同様である。
【0091】
例えば、白色インクBは、好ましくは白色顔料を含有する。
白色インクBの全量に対する白色顔料の含有量の好ましい範囲は、白色インクAの全量に対する白色顔料の含有量の好ましい範囲と同様である。
また、白色インクBは、好ましくは水を含有する。
白色インクBの全量に対する水の含有量の好ましい範囲は、白色インクAの全量に対する水の含有量の好ましい範囲と同様である。
また、白色インクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であってもよい。
また、白色インクBは、重合性化合物を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクBの全量に対する重合性化合物の含有量が1質量%未満であってもよい。
【0092】
白色インクAの粘度と白色インクBの粘度との差(以下、粘度差|A-B|ともいう)は、好ましくは2.0mPa・s以下である。
粘度差|A-B|が2.0mPa・s以下である場合には、着弾干渉に起因する画像のざらつきがより抑制される。
粘度差|A-B|は、好ましくは1.0mPa・s以下であり、より好ましくは0.5mPa・s以下である。粘度差|A-B|は、理想的には0mPa・sである。
【0093】
白色インクBの10ms時の動的表面張力は、好ましくは20.0mN/m~50.0mN/mであり、より好ましくは25.0mN/m~50.0mN/mであり、更に好ましくは25.0mN/m~40.0mN/mである。
白色インクBの10ms時の動的表面張力が50.0mN/m以下である場合、着弾干渉に起因する画像のざらつきがより抑制される。
白色インクBの10ms時の動的表面張力が20.0mN/m以上である場合、白色インクBの吐出性により優れる。
【0094】
白色インクAの10ms時の動的表面張力(以下、「γ(10)」ともいう)から白色インクBの10ms時の動的表面張力(以下、「γ(10)」ともいう)を差し引いた値(以下、「γ(10)-γ(10)」ともいう)は、0mN/m超である。
これにより、着弾干渉に起因する画像のざらつきを抑制する効果が得られる。
γ(10)-γ(10)は、好ましくは0.5mN/m~8.0mN/mであり、より好ましくは1.0mN/m~7.0mN/mであり、更に好ましくは1.0mN/m~5.0mN/mであり、更に好ましくは1.0mN/m~3.0mN/mである。
γ(10)-γ(10)が上記好ましい範囲である場合には、着弾干渉に起因する画像のざらつきがより抑制される。
【0095】
<画像記録工程>
画像記録工程は、非浸透性基材上に、インクジェットヘッドA(以下、「ヘッドA」ともいう)から白色インクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクAが付与された領域に、インクジェットヘッドB(以下、「ヘッドB」ともいう)から白色インクBを吐出して付与することにより、画像を記録する工程である。
この画像記録工程は、非浸透性基材上に、白色インクAの液滴Aを着弾させ、次いで白色インクBの液滴Bを着弾させることにより、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成することを含む。
この際の液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間(着弾間隔T)は、20ms~10000msである。
【0096】
画像記録工程において、非浸透性基材上の「白色インクAが付与された領域」とは、インクドットAが形成された領域を意味する。
画像記録工程において複数のインクドットAを網点状に形成した場合、「非浸透性基材上の白色インクAが付与された領域」とは、複数のインクドットAが網点状に形成されている領域全体(即ち、複数のインクドットAと、インクドットAが形成されていない場所と、を含む全体)を意味する。この場合、白色インクBは、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBが形成される限り、複数のインクドットAが網点状に形成されている領域全体のうちのどこに付与されてもよい。例えば、この領域内であれば、インクドットAが形成されていない場所に付与されても構わない。
【0097】
(着弾間隔T)
画像記録工程において、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間(着弾間隔T)は、20ms~10000msである。
着弾間隔Tが20ms以上であることにより、画像記録の容易性及び安定性が確保される。
また、着弾間隔Tが20ms以上である場合には、液滴Bが着弾した時点における、インクドットAと着弾する液滴Bとの表面張力の差が生じ得るので、この場合において、γ(10)-γ(10)(即ち、白色インクAの10ms時の動的表面張力から白色インクBの10ms時の動的表面張力を差し引いた値)を0mN/m超としたことによる効果が有効に発揮される。
これらの観点から、着弾間隔Tは20ms以上であればよいが、好ましくは30ms以上であり、更に好ましくは50msである。
【0098】
着弾間隔Tが10000ms以下であることにより、画像記録の高速化が実現される。
また、着弾間隔Tが10000ms以下である場合には、着弾干渉に起因する画像のざらつきの問題が生じ得るので、この場合において、γ(10)-γ(10)(即ち、白色インクAの10ms時の動的表面張力から白色インクBの10ms時の動的表面張力を差し引いた値)を0mN/m超としたことによる効果が有効に発揮される。
これらの観点から、着弾間隔Tは、10000ms以下であればよいが、好ましくは1000ms以下であり、更に好ましくは150ms以下であり、更に好ましくは120ms以下である。
【0099】
本開示において、着弾間隔Tは、NIP25:International Conference on Digital Printing Technologies and Digital Fabrication 2009、2009年9月20日、p.71-74に記載された「Velocity of Drops in Full flight」の方法に準拠し、ストロボ写真撮影によって測定された値を指す。
【0100】
(動的表面張力の好ましい態様)
画像記録工程では、前述したとおり、白色インクB(液滴B)が着弾した時点において、既に付与されている白色インクA(インクドットA)の表面張力と、着弾した時点の白色インクB(液滴B)の表面張力と、が近い値となり、その結果、着弾干渉が抑制され、ひいては、着弾干渉に起因する画像のざらつきが抑制される。
白色インクB(液滴B)が着弾した時点における、既に付与されている白色インクA(インクドットA)の表面張力は、言い換えれば、着弾間隔Tms(Tミリ秒)時の白色インクAの動的表面張力(以下、「γ(T)」ともいう)である。
一方、着弾した時点の白色インクB(液滴B)の表面張力は、前述のとおり、近似的に、白色インクBの10ms時の動的表面張力(即ち、γ(10))に対応する。
従って、着弾干渉に起因する画像のざらつきを抑制する観点から、画像形成工程におけるγ(T)とγ(10)との差の絶対値(以下、「|γ(T)-γ(10)|」ともいう)は、小さいことが好ましい。
【0101】
本開示において、|γ(T)-γ(10)|は、好ましくは4.5mN/m以下であり、より好ましくは3.0mN/m以下であり、更に好ましくは2.5mN/m以下であり、更に好ましくは2.0mN/m以下である。
|γ(T)-γ(10)|が4.5mN/m以下である場合には、着弾干渉に起因する画像のざらつきがより抑制される。
|γ(T)-γ(10)|は、0mN/mであってもよい。
【0102】
(インクドットA及びインクドットB)
画像記録工程では、ヘッドAから吐出された白色インクAの液滴Aを、非浸透性基材上に着弾させてインクドットAを形成し、ヘッドBから吐出された白色インクBの液滴Bを、非浸透性基材上に着弾させてインクドットBを形成する。
この際、液滴A及び液滴Bは、それぞれ、形成されるインクドットA及びインクドットBが互いに重なる部分を有するように着弾させる。
非浸透性基材上に、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBが形成されることにより、非浸透性基材上の、インクドットA単独では被覆できなかった領域がインクドットBによって被覆され、その結果、隠蔽性に優れた画像が記録される。かかる効果をより効果的に得る観点から、インクドットA及びインクドットBは、互いの一部が重なっていることが好ましい。
なお、インクドットA及びインクドットBは、インクドットBが形成された後に合一してもよい。
【0103】
画像記録工程は、好ましくは、複数のインクドットAのうちの隣り合う2つのインクドットAと、隣り合う2つのインクドットA間に跨るインクドットBを形成することを含む。
この態様によれば、画像の隠蔽率がより向上する。
また、この態様によれば、γ(10)-γ(10)(即ち、白色インクAの10ms時の動的表面張力から白色インクBの10ms時の動的表面張力を差し引いた値)を0mN/m超としたことによる効果がより効果的に発揮される。
【0104】
上記好ましい態様において、より好ましくは、隣り合う2つのインクドットAの中心間の中点XAと、インクドットBの中心XBと、の距離が、隣り合う2つのインクドットAの中心間の距離Dの1/4以下であることである。
【0105】
図1は、本開示の上記好ましい態様における、隣り合う2つのインクドットA及びインクドットBの一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、この一例では、隣り合う2つのインクドットAとしての2つのドットIDAと、2つのドットIDA間に跨るインクドットBとしてのドットIDBと、が形成されている。
この一例では、2つのドットIDAの中心である中心XA1及び中心XA2間の中点XAと、ドットIDBの中心XBと、が重なっている。即ち、中点XAと中心XBとの距離は0である。この一例のように、中点XAと中心XBとの距離は、(1/4)D以下であることが好ましい。
但し、言うまでもないが、本開示の画像記録方法は、上記一例に限定されることはない。
また、この一例における2つのドットIDA及びドットIDBの組み合わせは、形成される画像全体の中の一部であってもよい。例えば、ドットIDA及びドットIDBが交互に配置され、連続的な画像を形成していてもよい。
【0106】
上記一例における2つのドットIDA及びドットIDBは、後述する画像記録装置の具体例における、フルラインヘッドであるヘッドA及びフルラインヘッドであるヘッドBを用いて好適に形成できる。この場合、2つのドットIDAは、ヘッドAから吐出された白色インクAによって形成される複数のインクドットAのうちの2つに対応し、ドットIDBは、ヘッドBから吐出された白色インクBによって形成される複数のインクドットBのうちの1つに対応する。
【0107】
(ヘッドA、ヘッドBほか)
ヘッドAから白色インクAを吐出させる方式、及び、ヘッドBから白色インクBを吐出させる方式としては、それぞれ、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等を適用できる。
また、例えば、特開昭54-59936号公報に記載、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式;特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方式;等を利用してもよい。
【0108】
ヘッドA及びヘッドBの方式としては、短尺のシリアルヘッドを、基材の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式と、がある。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面に画像記録を行うことができる。ライン方式では、シャトル方式における、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、シャトル方式と比較して、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動する。このため、ライン方式によれば、シャトル方式と比較して、画像記録の高速化が実現される。
【0109】
ヘッドAのノズルから吐出される白色インクAの液滴量及びヘッドBのノズルから吐出される白色インクBの液滴量としては、それぞれ、例えば、1pL(ピコリットル)~10pLが好ましく、1.5pL~6pLがより好ましい。
また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
【0110】
また、ヘッドA及びヘッドBは、それぞれ、白色インクが吐出される面(インク吐出面)に撥液膜を備えていてもよい。
撥液膜としては、特開2016-193980号公報の段落0178~0184に記載のものが挙げられる。
【0111】
画像記録工程においては、形成されたインクドットA及びインクドットBを加熱乾燥させてもよい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インクドットA及びインクドットBの加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
非浸透性基材のインクドットA及びインクドットBが形成された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
非浸透性基材のインクドットA及びインクドットBが形成された面に温風又は熱風をあてる方法、
非浸透性基材のインクドットA及びインクドットBが形成された面の側から、又は、この面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0112】
インクドットA及びインクドットBの加熱乾燥時の加熱温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が特に好ましい。
インクドットA及びインクドットBの加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、100℃が好ましく、90℃がより好ましい。
インクドットA及びインクドットBの加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒~60秒が好ましく、5秒~60秒がより好ましく、10秒~45秒が特に好ましい。
【0113】
(画像記録装置の好ましい態様)
画像記録工程の好ましい態様は、非浸透性基材を搬送する搬送機構と、ヘッドAと、ヘッドAに対して非浸透性基材の搬送方向下流側(以下、単に「下流側」とも称する)に配置されたヘッドBと、を備える画像記録装置を用い、搬送機構によって非浸透性基材を搬送し、搬送されている非浸透性基材上に、ヘッドAから白色インクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクAが付与された領域に、ヘッドBから白色インクBを吐出して付与する態様である。
この態様によれば、非浸透性基材の搬送速度を調整することにより、着弾間隔Tを調整し易い。
【0114】
上述した好ましい態様に用いる画像記録装置としては、ヘッドA及びヘッドBが、いずれも固定配置されたラインヘッドである画像記録装置がより好ましい。
ラインヘッドとしては、好ましくは、非浸透性基材の搬送方向に対して交差する方向であって非浸透性基材の表面に対して平行な方向に、記録素子及びノズルが配列されている)ラインヘッドである。
この場合には、非浸透性基材を搬送させ、搬送されている非浸透性基材に対し、ラインヘッドであるヘッドA及びラインヘッドであるヘッドBから、それぞれ、白色インクA及び白色インクBを吐出することにより、上述したインクドットA及びインクドットBを形成できる。
【0115】
インクドットA及びインクドットBの重なり具合は、ヘッドAにおけるノズルの配置とヘッドBにおけるノズルの配置とのズレ具合を調整することによって調整できる。
ヘッドAにおけるノズルの配置とヘッドBにおけるノズルの配置とのズレ具合を調整する技術については、例えば、特開2005-81642号公報を参照できる。
【0116】
(画像記録装置の具体例)
本開示の画像記録方法は、例えば、公知のインクジェット記録装置を用いて実施できる。
公知のインクジェット記録装置としては、例えば、特開2010-83021号公報、特開2009-234221号公報、特開平10-175315号公報等に記載の公知のインクジェット記録装置が挙げられる。
【0117】
以下、本開示の画像記録方法に用いることができる画像記録装置の一例について、図2を参照して説明する。
【0118】
図2は、本開示の画像記録方法に用いることができる画像記録装置の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、本一例に係る画像記録装置は、非浸透性基材(以下、単に「基材」ともいう)を図中の矢印方向に搬送させる搬送機構と、インクジェットヘッドAとしてのインク吐出用ヘッド30WAと、インク吐出用ヘッド30WAに対し基材の搬送方向(図中の矢印方向)の下流側に配置された、インクジェットヘッドBとしてのインク吐出用ヘッド30WBと、を備える。
より詳細には、本一例に係る画像記録装置には、基材の供給部11から基材の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、各種インクを吐出するインク吐出部14(白色インクAを吐出するインク吐出用ヘッド30WA及び白色インクBを吐出するインク吐出用ヘッド30WBを含む)と、吐出されたインク(即ち、画像)を乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、が配設されている。
【0119】
この画像記録装置における基材の供給部11は、基材が装填されたケースから基材を供給する供給部であってもよいし、基材がロール状に巻きつけられたロールから基材を供給する供給部であってもよい。
基材は、供給部11から、搬送機構としての、搬送ローラ41,42,43,44,45,46によって、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15の順に送られて、集積部16に集積される。
集積部16においては、基材をロール状に巻き取ってもよい。
基材の搬送は、図2に示すような搬送ローラによる方式のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式、ベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式等を採用してもよい。
【0120】
複数配置された搬送ローラ41,42,43,44,45,46のうち、少なくとも1つの搬送ローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。
モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、基材は所定の方向に所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0121】
インク吐出部14には、白色インクA(WA)、白色インクB(WB)、ブラックインク(K)、シアンインク(C)、マゼンダインク(M)、及びイエローインク(Y)の各々を貯留する各インク貯留部(不図示)と繋がる、インク吐出用ヘッド30WA、30WB、30K、30C、30M、及び30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色のインクが貯留されており、これら各色のインクが、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッドに供給されるようになっている。
図2に示した例では、インク吐出用ヘッド30WA及び30WBが、他のインク吐出用ヘッドに対して下流側に配置されているが、インク吐出用ヘッド30WA及び30WBは、他のインク吐出用ヘッドに対して上流側に配置されていてもよい。
いずれの場合においても、インク吐出用ヘッド30WA及び30WBは、基材の搬送方向に対してこの順に配置される。これにより、搬送される基材に対し、インク吐出用ヘッド30WAから白色インクAを吐出し、インク吐出用ヘッド30WBから白色インクBを吐出することにより、基材上の白色インクAが付与された領域に、白色インクBを付与することができる。
【0122】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの配置順は、適宜変更できる。
また、図示は省略したが、画像記録装置は、上述した各インク吐出用ヘッドに加え、特色インク(例えば、オレンジ、グリーン、パープル、ライトシアン、ライトマゼンタ等の色のインク)を吐出するためのインク吐出用ヘッドを備えていてもよい。
また、画像記録装置は、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yを備えていなくてもよい。この場合の画像記録装置は、白色画像専用の画像記録装置となる。
【0123】
インク吐出用ヘッド30WA、30WB、30K、30C、30M、及び30Yは、基材の画像記録面と対向配置された吐出ノズルから、対応する各インクを吐出する。
【0124】
インク吐出用ヘッド30WA、30WB、30K、30C、30M、及び30Yは、いずれも、基材の表面上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。これにより、基材の幅方向(基材の搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行うシリアル型のものに比べて、基材に高速に画像記録を行うことができる。
本開示においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば、1回の走査で1ラインを形成するシングルパス方式での記録のいずれを採用してもよいが、シングルパス方式での記録を採用した場合に、本開示の画像記録方法による効果がより効果的に発揮される。
【0125】
この一例では、インク吐出用ヘッド30WA、30WB、30K、30C、30M、及び30Yは、全て同一構造になっている。
【0126】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の基材の搬送方向の下流側に配置されている。
インク乾燥ゾーン15は、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ、エアナイフ等の送風を利用した送風手段、或いはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。
加熱手段は、基材のインク付与面(即ち、画像記録面)とは反対側(例えば、基材を自動搬送する場合は基材を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法、基材のインク付与面(即ち、画像記録面)に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられる。また、加熱手段は、上記の方法を複数組み合わせてもよい。
インク乾燥ゾーン15では、溶媒除去ローラ等を用いてインクから溶媒を除去してもよい。
【0127】
画像記録装置は、供給部11から集積部16までの搬送路に、基材に加熱処理を施す加熱手段を更に備えていてもよい。
例えば、インク吐出部14の上流側、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、基材を所望の温度に昇温させることにより、インクの乾燥、インクの定着等を効果的に行うようにすることが可能になる。
【0128】
また、画像記録装置は、基材の種類(材質、厚み等)、環境温度等によって、基材の表面温度は変化するため、基材の表面温度を計測する計測部と、加熱条件を制御する加熱制御部と、計測部で計測された基材の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御部と、を有する加熱制御機構を備えることが好ましい。
画像記録装置が加熱制御機構を備えることで、基材の温度を制御しながら、インクの付与を行うことができる。
基材の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
【0129】
上記一例に係る画像記録装置は、非浸透性基材を搬送させる搬送機構と、インクジェットヘッドAとしてのインク吐出用ヘッド30WAと、インク吐出用ヘッド30WAに対し基材の搬送方向の下流側に配置された、インクジェットヘッドBとしてのインク吐出用ヘッド30WBと、を備えるので、本開示の画像記録方法の実施に好適である。
例えば、非浸透性基材の搬送速度を調整することにより、着弾間隔Tを調整できる。
【0130】
<その他工程>
本開示の画像記録方法は、上記準備工程及び上記画像記録工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
例えば、本開示の画像記録方法は、活性エネルギー線(紫外線等)の照射によってインクを硬化させる工程を含んでも構わない。但し、一般的には、上記インクを硬化させる工程を含まない画像記録において、上述した着弾干渉及び画像のざらつきの問題が発生し易い。このため、本開示の画像記録方法が、上記インクを硬化させる工程を含まない場合には、γ(10)-γ(10)を0mN/m超としたことによる本開示の画像記録方法の効果(画像のざらつきを抑制する効果)が一層効果的に発揮される。
また、本開示の画像記録方法は、例えば国際公開第2019/004485号に記載されている、非浸透性基材に対して前処理液(詳しくは、多価金属化合物、有機酸等の凝集剤を含有する前処理液)を付与する前処理工程を含んでいても構わない。但し、一般的には、上記前処理液工程を含まない画像記録において、上述した着弾干渉及び画像のざらつきの問題が発生し易い。このため、本開示の画像記録方法が、上記前処理工程を含まない場合には、γ(10)-γ(10)を0mN/m超としたことによる本開示の画像記録方法の効果(画像のざらつきを抑制する効果)が一層効果的に発揮される。
【0131】
〔インクセット〕
本開示のインクセットは、
白色インクジェットインクAと、
白色インクジェットインクAよりも10ms時の動的表面張力が小さい白色インクジェットインクBと、
を備える。
本開示のインクセットは、上述した本開示の画像記録方法に好適である。
【0132】
白色インクジェットインクA及び白色インクジェットインクBの各々については、上述した画像記録方法の準備工程の項で説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。
例えば、白色インクジェットインクAは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクAの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましく、白色インクジェットインクBは、沸点270℃以上の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合には、白色インクジェットインクBの全量に対する沸点270℃以上の有機溶剤が5質量%以下であることが好ましい。
【0133】
本開示のインクセットは、白色インクジェットインクA及び白色インクジェットインクB以外のその他のインクを備えていてもよい。
その他のインクとしては、白色以外の色のインクジェットインク(例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク等)の少なくとも1種が挙げられる。
【実施例0134】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0135】
<ベースとなる白色インクの調製>
以下のようにして、後述する白色インクA及び白色インクBのベースとなる白色インクを調製した。
【0136】
(分散樹脂P-1の作製)
以下のようにして、白色インク中における、白色顔料に対する分散剤としての分散樹脂P-1を作製した。
撹拌機、冷却管を備えた三口フラスコにジプロピレングリコールを後述するモノマーの全量と同質量を加え、窒素雰囲気下で85℃に加熱した。
ステアリルメタクリレート9.1モル当量、ベンジルメタクリレート34.0モル当量、ヒドロキシエチルメタクリレート31.9モル当量、メタクリル酸25.0モル当量、及び、2-メルカプトプロピオン酸0.8モル当量を混合した溶液Iと、モノマーの全質量に対し1質量%のt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製パーブチルO)を、モノマーの全質量に対し20質量%のジプロピレングリコールに溶解させて得られた溶液IIと、をそれぞれ調製した。上記三口フラスコに溶液Iを4時間、溶液IIを5時間かけて滴下した。
滴下終了後、更に2時間反応させた後、95℃に昇温し、3時間加熱撹拌して未反応モノマーをすべて反応させた。モノマーの消失は核磁気共鳴(H-NMR)法で確認した。
得られた反応溶液を70℃に加熱し、アミン化合物としてジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン)を20.0モル当量添加した後、プロピレングリコールを加えて撹拌し、分散樹脂P-1の30質量%溶液を得た。
得られたポリマーの構成成分は、H-NMRにより確認した。また、GPCにより求めた重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
なお、分散樹脂P-1における各構成単位の質量比は、ステアリルメタクリレート由来の構成単位/ベンジルメタクリレート由来の構成単位/ヒドロキシエチルメタクリレート由来の構成単位/メタクリル酸由来の構成単位=20/39/27/14であった。ただし、上記質量比は、ジメチルアミノエタノールは含まない値である。
【0137】
(樹脂粒子Aの作製)
以下のようにして、白色インク中の一成分である樹脂粒子Aを作製した。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコ(以下、「反応容器」ともいう)に、メチルエチルケトン293gを仕込んで80℃まで昇温した。次に、この反応容器内の温度を80℃に保ちながら、ここに、メチルメタクリレート(三菱ガス化学社製)165.7g、イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製)63.7g、メタクリル酸(三菱ガス化学社製)25.5g、メチルエチルケトン48g、及び「V-601」(富士フイルム和光純薬社製、重合開始剤)1.25gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、(1)「V-601」0.60g及びメチルエチルケトン5.0gを混合した溶液を加え、さらに2時間撹拌した。その後、(1)の工程を4回繰り返し、さらに「V-601」0.60g及びメチルエチルケトン5.0gを混合した溶液を加え、3時間撹拌した。
以上により、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=65/25/10[質量比])共重合体の溶液である重合体溶液を得た。
重合体溶液中の共重合体の重量平均分子量(Mw)は72,000であり、酸価は62.9mgKOH/gであった。
なお、酸価は、日本工業規格(JIS K0070:1992)に記載の方法に準拠して測定した。重量平均分子量は、GPCにより既述の方法で測定した。
【0138】
次に、反応容器に重合体溶液588.2gを秤量し、イソプロパノール165g及び1mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液120.8mlを加え、反応容器内の温度を80℃に昇温した。次に、反応容器内に蒸留水718.0gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化を行った。その後、大気圧下にて反応容器内の温度を80℃として2時間、85℃として2時間、90℃として2時間保った後、反応容器内を減圧し、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計量で913.7g留去した。このようにして、固形分濃度23.2質量%の樹脂粒子Aの水分散物(エマルジョン)を得た。
樹脂粒子Aを構成する樹脂は、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=65/25/10[質量比])共重合体の中和物である。
【0139】
(TiO分散液の調製)
以下のようにして、二酸化チタン(TiO)(白色顔料)の分散液を調製した。
レディーミル モデルLSG-4U-08(アイメックス社製)を使用し、下記のようにTiO分散液を調製した。即ち、
ジルコニア製の容器に、白色顔料としての二酸化チタン(TiO;平均一次粒子径:210nm、商品名:PF-690、石原産業株式会社製;白色無機顔料)45質量部、合成例1で得た分散樹脂P-1の30質量%溶液15質量部、及び超純水40質量部を加えた。更に、0.5mmφジルコニアビーズ(TORAY製、トレセラムビーズ)40質量部を加えて、スパチュラで軽く混合した。混合物をジルコニア製の容器をボールミルに入れ、回転数1000rpm(revolutions per minute)で5時間分散した。分散終了後、ろ布でろ過してビーズを取り除き、TiO濃度が45質量%の水性顔料分散物であるTiO分散液を調製した。
【0140】
(白色インク)
表1に示す各成分を混合し、ベースとなる白色インクを調製した。
【0141】
【表1】
【0142】
表1中、水の含有量である「残量」とは、全成分の合計が100質量%となるための残量を意味する。
また、表1に記載の成分の詳細は以下の通りである。
・PVP K15:ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製)
・オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
・オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
・スノーテックスXS:コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製);固形分濃度20.0質量%)
・BYK-024:シリコーン系消泡剤(ビックケミー・ジャパン社製、固形分濃度15.0質量%)
【0143】
〔実施例1~11、比較例1~3〕
<白色インクA及び白色インクBの準備>
実施例3以外の例では、オルフィンE1020の含有量を、0.1質量%~2.0質量%の範囲で変更したこと以外はベースとなる白色インクの調製と同様にして、表2に示す10ms時の動的表面張力(γ(10)及びγ(10))を有する白色インクA及び白色インクBをそれぞれ調製した。オルフィンE1020の含有量が多い程、10ms時の動的表面張力が小さくなる。
実施例3では、ベースとなる白色インクに対し、更に、界面活性剤としてBYK-3450(BYK社製)を加えることにより、表2に示すγ(10)及びγ(10)を有する白色インクA及び白色インクBをそれぞれ調製した。
ベースとなる白色インクは、実施例1における白色インクAである。
【0144】
実施例9の白色インクA及び白色インクBの各々には、更に、インク全量に対して3質量%のグリセリン(GL)(沸点290℃の有機溶剤)を含有させた(表2参照)。
実施例10の白色インクA及び白色インクBの各々では、インク全量に対する白色顔料の含有量を、6質量%に変更した(表2参照)。
実施例11の白色インクA及び白色インクBの各々では、インク全量に対する白色顔料の含有量を、17質量%に変更した(表2参照)。
比較例1の白色インクA及び白色インクBは、同一の白色インクである。即ち、比較例1は、同一の白色インクを、インクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドBの各々から吐出した例である。
【0145】
<非浸透性基材の準備>
後述する画像を記録するための非浸透性基材として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚さ40μm、表面処理:コロナ放電処理、フタムラ化学株式会社製、略称:OPP)を準備した。
【0146】
<画像記録装置の準備>
非浸透性基材を搬送するための搬送機構、固定配置されたインクジェットヘッドA、及び、インクジェットヘッドAに対して下流側に固定配置されたインクジェットヘッドBを備える画像記録装置を準備した。
インクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドBは、いずれも、1200dpi/20inch幅ピエゾフルラインヘッドとした。ここで、dpiは、dot per inchの略である。
インクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドBの配置は、いずれも、非浸透性基材の搬送方向に対して直交する方向(即ち、非浸透性基材の幅方向)に対し、ノズルの配列方向が75.7°傾斜する配置とした。
また、インクジェットヘッドAのノズルとインクジェットヘッドBのノズルとの相対的な位置関係は、各ノズルからのインクの吐出によって形成されるインクドットA及びインクドットBが、互いに重なる部分を有しつつ、交互に配置されるように調整した。
【0147】
<画像記録>
上記画像記録装置を用い、搬送されている非浸透性基材上(詳細には、OPPフィルムのコロナ放電処理面)に、インクジェットヘッドAから白色インクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから白色インクBを吐出して付与することにより、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成し、形成されたインクドットA及びインクドットBを、80℃で30秒間乾燥させて白色ベタ画像を得た。
白色インクA及び白色インクBの吐出量は、いずれも4.0pLとした。
非浸透性基材の搬送速度は、5m/分~300m/分の範囲で、着弾間隔T(ms)(即ち、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間)が表2に示す値となるように調整した。
以下、白色ベタ画像が記録された非浸透性基材を、「白色ベタ画像付き基材」ともいう。
【0148】
なお、比較例2の画像記録では、白色インクBを用いず、白色インクAのみで白色画像を記録し、比較例3の画像記録では、白色インクAを用いず、白色インクBのみで白色画像を記録した。
【0149】
<評価>
白色ベタ画像付き基材及び各白色インクを用い、以下の測定及び評価を実施した。
結果を表2に示す。
【0150】
(白色ベタ画像の隠蔽性)
白色ベタ画像付き基材における白色ベタ画像の隠蔽性を、以下のようにして評価した。
白色ベタ画像付き基材とは別に、非浸透性基材(上記OPPフィルム)のコロナ放電処理面に対し、市販品のブラックインクジェットインクを用い、2pt(ポイント)、4pt、6pt及び8ptの各々のサイズの黒文字画像(計4個)を記録した。4個の黒文字画像は、いずれも、図3に示す黒文字画像とした。以上により、黒文字画像付き基材を得た。
白色ベタ画像付き基材と黒文字画像付き基材とを、互いの非画像記録面(画像が記録されていない面)が接する向きに重ねて積層物とした。得られた積層物を、白色ベタ画像が評価者の側に向くようにして30Wの蛍光灯にかざし、白色ベタ画像を通して、各黒文字画像の細部を視認できるかどうかを確認し、下記評価基準に従い、白色ベタ画像の隠蔽性を評価した。この際、評価者の目と積層物との距離は20cmとし、積層物から蛍光灯までの距離は2mとした。
下記評価基準において、白色ベタ画像の隠蔽性に最も優れるランクは、「5」である。
【0151】
-白色ベタ画像の隠蔽性の評価基準-
5:2pt、4pt、6pt及び8ptの黒文字画像について、細部を視認できなかった。
4:8ptの黒文字画像の細部を視認できたが、2pt、4pt、及び6ptの黒文字画像の細部については、細部を視認できなかった。
3:6pt及び8ptの黒文字画像の細部を視認できたが、2pt及び4ptの黒文字画像については、細部を視認できなかった。
2:4pt、6pt及び8ptの黒文字画像の細部を視認できたが、2ptの黒文字画像については、細部を視認できなかった。
1:2pt、4pt、6pt及び8ptの黒文字画像について、細部を視認できた。
【0152】
(白色ベタ画像のざらつき)
白色ベタ画像付き基材における白色ベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に従い、白色ベタ画像のざらつきを評価した。
下記評価基準において、白色ベタ画像のざらつきが最も抑制されているランクは、「5」である。
【0153】
-白色ベタ画像のざらつきの評価基準-
5:白色ベタ画像の全体にざらつきが見られず均一である。
4:白色ベタ画像にわずかに微小なざらつきが見られるが、全体としてはほぼ均一である。
3:白色ベタ画像に微小なざらつきが見られるが、実用上許容される範囲である。
2:白色ベタ画像にざらつきが目立ち、実用上許容されない範囲である。
1:白色ベタ画像に強い濃淡のある「ざらつき」が多く発生し、均一とはいえず、実用上許容されない範囲である。
【0154】
(白色ベタ画像の乾燥性)
上記画像記録における白色ベタ画像の記録(即ち、80℃での30秒間の乾燥)から5分経過後の白色ベタ画像上に、上述したOPPフィルムを重ねて密着させ、次いでこのOPPフィルムを剥がした。この際の白色ベタ画像のOPPフィルムへの転写の具合を目視で観察し、下記評価基準に従い、白色ベタ画像の乾燥性を評価した。
下記評価基準において、白色ベタ画像の乾燥性に最も優れるランクは、「5」である。
【0155】
-画像の乾燥性の評価基準-
5:白色ベタ画像の転写が全く見られない。
4:白色ベタ画像の転写が白色ベタ画像全体の5%未満である。
3:白色ベタ画像の転写が白色ベタ画像全体の5%以上10%未満である。
2:白色ベタ画像の転写が白色ベタ画像全体の10%以上15%未満である。
1:白色ベタ画像の転写が白色ベタ画像全体の15%以上である。
【0156】
(白色インクAの吐出性(吐出性A))
A2サイズの記録紙(インクジェット用印画紙、画彩、富士フイルム社製)を用い、インクジェットBからの白色インクBの吐出を省略したこと以外は上記画像記録と同様の条件で、上記記録紙40枚に対し連続して白色ベタ画像を記録した。以下、白色ベタ画像が形成された記録紙を、「吐出性評価用サンプルA」とする。
40枚の吐出性評価用サンプルAを目視で観察し、ノズル抜け(即ち、ノズルの吐出不良に起因する画像欠陥)が確認される吐出性評価用サンプルの枚数を調べた。この結果に基づき、下記評価基準に従い、白色インクAの吐出性(以下、吐出性Aともいう)を評価した。
以下の評価基準において、吐出性Aに最も優れるランクは、「5」である。
【0157】
-白色インクAの吐出性(吐出性A)の評価基準-
5: ノズル抜けが確認されるサンプルが0枚又は1枚である。
4: ノズル抜けが確認されるサンプルが2枚又は3枚である。
3: ノズル抜けが確認されるサンプルが4枚又は5枚である。
2: ノズル抜けが確認されるサンプルが6枚又は7枚である。
1: ノズル抜けが確認されるサンプルが8枚以上である。
【0158】
(白色インクBの吐出性(吐出性B))
インクジェットBからの白色インクBの吐出を省略したことに代えて、インクジェットAからの白色インクAの吐出を省略したこと以外は白色インクAの吐出性(吐出性A)の評価と同様にして、上記記録紙40枚に対し連続して白色ベタ画像を記録し、「吐出性評価用サンプルB」とする。
40枚の吐出性評価用サンプルBを用い、白色インクAの吐出性(吐出性A)の評価基準と同様の基準により、白色インクBの吐出性(吐出性B)を評価した。
【0159】
【表2】
【0160】
-表2の説明-
「量(%)」は、該当成分の、白色インクA又は白色インクBの全体に対する含有量(質量%)である。
γ(10)は、白色インクジェットインクAの10ms時の動的表面張力(単位:mN/m)であり、γ(10)は、白色インクジェットインクBの10ms時の動的表面張力(単位:mN/m)であり、γ(T)は、白色インクジェットインクAのT(着弾間隔)ms時の動的表面張力(単位:mN/m)である。γ(10)、γ(10)及びγ(T)は、それぞれ、前述した方法によって測定した。
着弾間隔T(ms)は、白色インクAの液滴Aが着弾してから白色インクBの液滴Bが着弾するまでの時間である。着弾間隔T(ms)は、前述した方法によって測定した。
【0161】
表2に示すように、γ(10)-γ(10)が0mN/m超である白色インクA及び白色インクBを用い、非浸透性基材上に、インクジェットヘッドAから白色インクAを吐出して付与し、非浸透性基材上の白色インクAが付与された領域に、インクジェットヘッドBから白色インクBを吐出して、互いに重なる部分を有するインクドットA及びインクドットBを形成させ、液滴Aが着弾してから液滴Bが着弾するまでの時間(着弾間隔T(ms))を20ms~10000msとした実施例1~11では、隠蔽性に優れ、ざらつきが抑制され、乾燥性に優れる白色ベタ画像を記録することができた。
【0162】
各実施例に対し、γ(10)-γ(10)が0mN/mである(即ち、同一の白色インクをインクジェットヘッドA及びインクジェットヘッドBの各々から吐出した)比較例1では、画像のざらつきが顕著となった。
また、白色インクBを用いず白色インクAのみを用いて白色ベタ画像を記録した比較例2、及び、白色インクAを用いず白色インクBのみを用いて白色ベタ画像を記録した比較例3では、いずれも画像の隠蔽性が低下した。
【0163】
実施例1~3及び5の結果から、γ(10)が25.0mN/m~40.0mN/mである場合(実施例1)、画像のざらつきがより抑制されることがわかる。
【0164】
実施例1、4及び6の結果から、|γ(T)-γ(10)|が3.0mN/m以下である場合(実施例1及び6)、画像のざらつきがより抑制されることがわかる。
【符号の説明】
【0165】
IDA インクドットA
IDB インクドットB
XA1 インクドットAの中心
XA2 インクドットAの中心
XA インクドットAの中心間の中点
D インクドットAの中心間の距離
XB インクドットBの中心
11 供給部
14 インク吐出部
15 インク乾燥ゾーン
16 集積部
30WA、30WB、30K、30C、30M、30Y インク吐出用ヘッド
41、42、43、44、45、46 搬送ローラ
図1
図2
図3