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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081806
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】監視装置及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220525BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192979
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】居村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 勝美
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】自車が検出した物標同士の衝突リスクを低減できる車載用の監視装置及び監視方法を提供すること。
【解決手段】監視装置としてのECU10は、自車100の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出部31と、ターゲット情報検出部31により検出された物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測部32と、進路予測部32の予測に基づいて複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定部33と、危険判定部33により衝突危険性があると判定された物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理部34と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される監視装置であって、
自車の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出部と、
前記ターゲット情報検出部により検出された前記物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測部と、
前記進路予測部の予測に基づいて前記複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定部と、
前記危険判定部により衝突危険性があると判定された前記物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理部と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記危険判定部は、
前記物標の位置、相対速度及び向きの少なくとも1つに基づいて前記衝突危険性の程度を示す衝突危険度を算出し、前記衝突危険度が判定閾値外の場合に衝突危険性があると判定する請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記危険判定部は、
前記ターゲット情報検出部が前記物標を検出した検出時点における当該物標の位置から前記検出時点の前記自車の位置に基づく設定位置までの前記物標の到達時間に基づいて前記衝突危険性を判定する請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記進路予測部は、
道路の交差点に自車が進入した場合には、前記自車に近づく全ての物標のそれぞれの動きを予測し、
前記危険判定部は、
前記自車に近づく全ての物標から2個の組合せを選択し、当該組合せに対して衝突危険性があるか否かを判定する処理を、全ての組合せに対して実行する請求項1から3の何れかに記載の監視装置。
【請求項5】
前記進路予測部は、
対向車の前記自車側への旋回又は前記旋回の予兆を検出すると、前記自車に後方から近づく前記物標の動きを予測し、
前記危険判定部は、
前記自車の後方から近づく前記物標と前記対向車の衝突危険性があるか否かを判定する請求項1から3の何れかに記載の監視装置。
【請求項6】
前記進路予測部は、
前記自車の走行方向と同じ方向を向く前方車の旋回又は前記旋回の予兆を検出すると、前記自車に後方から近づく前記物標の動きを予測し、
前記危険判定部は、
前記自車の後方から近づく前記物標と前記前方車の衝突危険性があるか否かを判定する請求項1から3の何れかに記載の監視装置。
【請求項7】
車両に搭載される監視装置による監視方法であって、
自車の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出ステップと、
前記ターゲット情報検出ステップにより検出された前記物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測ステップと、
前記進路予測ステップの予測に基づいて前記複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定ステップと、
前記危険判定ステップにより衝突危険性があると判定された前記物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理ステップと、
を含む監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される監視装置において、他車との衝突リスクを低減する技術が知られている。この種の技術が記載されるものとして特許文献1~3がある。
【0003】
特許文献1は、ローカルエリア内において複数の移動体に対し接近してくる他の移動体の存在を認識させる交通監視システムに関するものである。特許文献1には、自車と相手側の位置情報を交通監視システムが共有し、相手側が接近していること等が警告情報として出力されることが記載されている。
【0004】
特許文献2は、自車及び他車からの複数の情報を運転者に表示するヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。特許文献2には、先頭の車両があるイベント情報(事故、障害物検知、道路・路面・信号情報等)を検知すると、車車間通信で後続の車両へリレー形式で情報を伝達することで、後続車の運転者は自車が現場に到着する前に、前方で発生したイベントを把握できることが記載されている。
【0005】
特許文献3は、車両に搭載され、通過した道路の注意すべき地点に係る注意喚起情報と、自車の走行状態を示す走行情報とを対向車両の通信装置に送信する注意喚起装置に関するものである。特許文献3には、走行情報の送信を間引いて注意喚起情報の送信に置き換えることにより、注意喚起情報及び走行情報を送信し、自車に対する対向車両の接近が検出された場合、走行情報の送信頻度に対する注意喚起情報の送信頻度の比を接近前に比べて小さくする処理を行う注意喚起装置が記載されている。この構成をとることにより、自車と対向車両とが接近している期間に、安全走行するための走行情報は優先して送信されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-48732号公報
【特許文献2】特開2018-165098号公報
【特許文献3】特許第6458521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建物や他車等の存在によって死角が生じ、衝突危険性がある物標の存在を検出できない場合がある。例えば、建物や前方を走行する他車に隠れ、交差点に進入するまで左右方向に移動する車両や人を検出できない場合がある。また、前方にいる車両は、後方に車両が存在する場合、当該後方の車両の横を通り抜けてくるようなバイク等の車両を検出することは難しい。
【0008】
死角に位置しない車両からであれば、他車同士の衝突危険性を予測できるものの、死角に位置しない車両が他車に衝突するわけではないため、他車同士は衝突危険性を認識することができない。この点、特許文献1の技術では、交通監視システムを介して衝突危険性が警告されるものの、交通監視システムと通信を行っていない車両や通信手段を有さない人等についてはそれぞれの位置を特定できないため、衝突危険性を検出することは難しかった。また、特許文献2や特許文献3の技術では、自車以外の他車同士の衝突を検出することが困難であった。
【0009】
本発明は、自車が検出した物標同士の衝突リスクを低減できる車載用の監視装置及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両に搭載される監視装置であって、自車の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出部と、前記ターゲット情報検出部により検出された前記物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測部と、前記進路予測部の予測に基づいて前記複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定部と、前記危険判定部により衝突危険性があると判定された前記物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理部と、を備える監視装置に関する。
【0011】
前記危険判定部は、前記物標の位置、相対速度及び向きの少なくとも1つに基づいて前記衝突危険性の程度を示す衝突危険度を算出し、前記衝突危険度が判定閾値外の場合に衝突危険性があると判定してもよい。
【0012】
前記危険判定部は、前記ターゲット情報検出部が前記物標を検出した検出時点における当該物標の位置から前記検出時点の前記自車の位置に基づく設定位置までの前記物標の到達時間に基づいて前記衝突危険性を判定してもよい。
【0013】
前記進路予測部は、道路の交差点に自車が進入した場合には、前記自車に近づく全ての物標のそれぞれの動きを予測し、前記危険判定部は、前記自車に近づく全ての物標から2個の組合せを選択し、当該組合せに対して衝突危険性があるか否かを判定する処理を、全ての組合せに対して実行してもよい。
【0014】
前記進路予測部は、対向車の前記自車側への旋回又は前記旋回の予兆を検出すると、前記自車に後方から近づく前記物標の動きを予測し、前記危険判定部は、前記自車の後方から近づく前記物標と前記対向車の衝突危険性があるか否かを判定してもよい。
【0015】
前記進路予測部は、前記自車の走行方向と同じ方向を向く前方車の旋回又は前記旋回の予兆を検出すると、前記自車に後方から近づく前記物標の動きを予測し、前記危険判定部は、前記自車の後方から近づく前記物標と前記前方車の衝突危険性があるか否かを判定してもよい。
【0016】
また、本発明は、車両に搭載される監視装置による監視方法であって、自車の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出ステップと、前記ターゲット情報検出ステップにより検出された前記物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測ステップと、前記進路予測ステップの予測に基づいて前記複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定ステップと、前記危険判定ステップにより衝突危険性があると判定された前記物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理ステップと、を含む監視方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自車が検出した物標同士の衝突リスクを低減できる車載用の監視装置及び監視方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態のECUの機能的構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態のECUによる状況を取得する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態のECUによる交差点での他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。
図5】本実施形態のECUによる対向車が右折する場合の他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。
図6】本実施形態のECUによる前方車が左折する場合の他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。
図7】本実施形態のECUによる交差点進入時の危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態のECUによる右折対向車又は左折前方車検出時の危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<監視システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る監視システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す監視システム1は、車両に搭載される電子機器である。監視システム1は、ECU(Electric Control Unit)10、レーダ装置20-1~20-4、通信装置21、GPS装置22、撮像装置23及び表示装置24を備える。
【0021】
ECU10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及び記憶装置14等によって構成される。ECU10は、例えば、CAN(Control Area Network)等のネットワークによってレーダ装置20、レーダ装置20-1~20-4、通信装置21、GPS装置22、撮像装置23等の各部に電気的に接続される。ECU10は、ネットワークを介して監視システム1の各部と通信し、ROM及びRAMに記憶されているデータに基づいて監視システム1の各部を制御する。
【0022】
本実施形態では、ECU10が、他車同士の衝突リスクを低減する処理を実行する監視装置である。なお、監視装置としてのECU10はあくまで一例である。例えば、監視装置は、レーダ装置20-1~20-40の内部に組み込む構成としてもよい。また、監視装置は、ECU10やレーダ装置20-1~20-4とは独立したコンピュータ(電子部品)であってもよい。
【0023】
レーダ装置20-1~20-4は、自車(車両)100以外の物標をターゲットとして検出するターゲット検出装置である。例えば、レーダ装置20-1は車両の前方左側のバンパ内に配置され、レーダ装置20-2は車両の前方右側のバンパ内に配置される。また、レーダ装置20-13は車両の後方左側のバンパ内に配置され、レーダ装置20-4は車両の後方右側のバンパ内に配置される。レーダ装置20-1~20-4は、電磁波を送信し、物標によって反射された反射波を受信する。この受信した信号に基づいて物標に関する情報(位置、速度、及び、方位角等)が検出される。なお、以下の説明においてレーダ装置20とした場合は、レーダ装置20-1~20-4の何れか又はその組み合わせであるものとする。
【0024】
通信装置21は、自車100の外側にある外部装置との通信を行う。外部装置には、他車に搭載される通信装置、携帯電話等のモバイル機器、各種の情報を車両に提供するサーバ装置等が含まれる本実施形態では、通信装置21が、他の車両等に衝突リスクがあることを示すデータを送信したり、他の車両等からの衝突リスクに関するデータを受信したりする。
【0025】
GPS装置22は、地図上で指定された目的地までのルートを設定する機能を有するナビゲーション装置である。GPS装置22は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を取得し、取得した信号に基づいて車両の位置を検出する。
【0026】
撮像装置23は、車両のフロントガラス及び/又はリアガラスに設置される。撮像装置23は、車両の周辺の静止画又は動画を撮影する。撮影した静止画又は動画は、表示装置24に表示されたり、ドライブレコードとしてメモリカード等の記憶媒体に記録されたりする。
【0027】
<監視機能>
図2は、本実施形態のECU10の機能的構成を示すブロック図である。次に、ECU10によって実行される物標(他車)間の衝突リスクを低減する処理について説明する。
【0028】
図2に示すように、ECU10は、CPU11に実行される機能部として、ターゲット情報検出部31と、進路予測部32と、危険判定部33と、通信処理部34と、状況情報取得部35と、を備える。
【0029】
ターゲット情報検出部31は、レーダ装置20-1~20-4が検出した情報から自車100の周囲に存在する物標の位置、相対速度、向き等の情報を取得する処理を実行する。自車100の周囲に複数の物標が存在する場合、ターゲット情報検出部31は、複数の物標のそれぞれの位置、相対速度、向き等の情報を取得する。物標は、例えば、四輪自動車やバイク等の車両や人等の移動体である。
【0030】
進路予測部32は、ターゲット情報検出部31によって取得された物標の位置、相対速度、向き等の情報に基づいて、当該物標の動きを予測する処理を実行する。複数の物標のそれぞれの位置、相対速度、向き等の情報が取得された場合は、複数の物標のそれぞれの動きを予測する。
【0031】
本実施形態の進路予測部32は、物標を検出した時点の自車100の位置に当該物標が到達するまでの到達時間を予測する。ここでいう自車100の位置は、物標を検出した時点での自車100の位置に基づく設定位置である。当該設定位置は、点や直線で示される位置でもよいし、自車100の位置に対応する領域でもよいし、その領域の一部でもよい。また、設定位置は、自車100の領域だけでなく、自車100の周囲や近傍(例えば、自車100の前方)の全部又は一部であってもよい。
【0032】
危険判定部33は、進路予測部32の予測に基づいて物標同士の衝突危険性を判定する処理を実行する。危険判定部33は、衝突危険性の程度を示す衝突危険度を算出し、当該衝突危険度に基づいて他の物標に報知すべき危険性があるか否かを判定する。
【0033】
通信処理部34は、危険判定部33によって報知すべき危険性があると判定された物標に対し危険情報を送信する処理を実行する。報知すべき危険性があるか否かは、判定閾値を基準として判定される。本実施形態では、通信装置21の車々間通信又は路車間通信により、検出した物標(車両)に衝突危険性があることを示す危険情報が報知される。報知処理では、危険情報に衝突危険性の程度を含めてもよい。
【0034】
状況情報取得部35は、自車100の状況を取得する処理を実行する。状況情報取得部35が取得した状況に基づいて危険を判定するための処理が実行される。
【0035】
<危険判定処理が実行される状況>
ここで、状況情報取得部35による自車100の状況を取得する処理について説明する。図3は、本実施形態のECU10による状況を取得する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4は、本実施形態のECU10による交差点での他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。図5は、本実施形態のECU10による対向車100cが右折する場合の他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。図6は、本実施形態のECU10による前方車100eが左折する場合の他車同士の衝突危険性を検出する処理を説明する模式図である。なお、以下の説明において、処理の順番は任意であり、適宜入れ替えることができるものとする。
【0036】
図3に示すように、状況情報取得部35は、自車100が交差点に入っているか否かを判定する(ステップS1)。状況情報取得部35は、例えば、GPS装置22の位置情報を利用して交差点に自車100が進入したか否かを判定する。GPS装置22は、複数の人工衛星300から取得する測位情報と予め記憶される地図情報から位置情報を取得することができる。なお、位置情報は、WiFi(登録商標)等によって取得される構成であってもよい。
【0037】
状況情報取得部35は、ステップS1で交差点に入ったことを検出すると、ステップS100の交差点進入時の衝突危険性を判定するための処理に移行する(ステップS1;Yes)。ステップS1で自車100が交差点に入ったことを検出しない場合は、状況情報取得部35は処理をステップS2に移行する(ステップS1;No)。なお、ステップS100の衝突危険性を判定するための処理の詳細については後述する。
【0038】
ステップS2では、状況情報取得部35は、右折する対向車100cがいるか否かを判定する(ステップS2)。右折する対向車100cは、自車100側への旋回する物標である。図5は、対向車100cがロードサイドのコンビニエンスストアの駐車場に入ろうとするような場面を想定している。図5に示すように、状況情報取得部35は、撮像装置23が取得する画像から対向車100cの右折を示すウインカーを検出すると、右折する対向車100cがいると判定する。ここで右折を示すウインカーは自車100側への旋回の予兆である。
【0039】
なお、対向車100cの旋回をレーダ装置20によって直接検出してよい。例えば、対向車100cの走行方向が、自車100の走行方向に対して角度θc傾いており、当該角度θcが予め設定される角度閾値α以上の場合に対向車100cが右折すると判定してもよい。
【0040】
状況情報取得部35は、ステップS2で右折する対向車100cがいることを検出すると、ステップS200の右折する対向車100cを検出したときの衝突危険性を判定するための処理に移行する(ステップS2;Yes)。ステップS2で右折する対向車100cを検出しない場合は、状況情報取得部35は処理をステップS3に移行する(ステップS2;No)。なお、ステップS200の衝突危険性を判定するための処理の詳細については後述する。
【0041】
ステップS3では、状況情報取得部35は、左折する前方車100eがいるか否かを判定する(ステップS3)。図6に示すように、状況情報取得部35は、撮像装置23が取得する画像から前方車100eの左折を示すウインカーを検出すると、左折する前方車100eがいると判定する。ここで左折を示すウインカーは前方車100eの旋回の予兆である。なお、前方車100eの旋回をレーダ装置20によって直接検出してよい。
【0042】
状況情報取得部35は、ステップS3で左折する前方車100eがいることを検出すると、処理をステップS200の左折する前方車100eを検出したときの衝突危険性を判定するための処理に移行する(ステップS3;Yes)。なお、ステップS3で左折する前方車100eを検出しない場合は、状況情報取得部35は処理をステップS1に戻す(ステップS3;No)。
【0043】
<交差点進入時の危険判定処理>
次に、ステップS100の交差点進入時の危険判定処理について説明する。図7は、本実施形態のECU10による交差点進入時の危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0044】
図3のフローのステップS1において状況情報取得部35が交差点進入を検出し、処理がステップS100に移行すると、図7のフローが開始される。
【0045】
まず、ターゲット情報検出部31は、自車100に接近する全ての物標の位置、相対速度、向きを取得する処理を実行する(ステップS101)。
【0046】
図4の例では、ターゲット情報検出部31は、レーダ装置20から受信する信号に基づいて物標として他車100aと後続車100bを検出する。他車100aの走行方向(向き)は、自車100の走行方向に直交する方向であって自車100に近づく方向である。後続車100bの走行方向(向き)は、自車100の走行方向と同じ方向である。そして、ターゲット情報検出部31は、他車100aの位置、相対速度、向きを取得するとともに、後続車100bの位置、相対速度、向きを取得する。
【0047】
ステップS101の後、進路予測部32は、物標の進路を予測する処理を実行する(ステップS102)。図4の例では、進路予測部32は、検出時点での自車100と他車100aの間の距離raと、他車100aの相対速度vaと、に基づいて他車100aの到達時間taを算出する。なお、検出時点は、レーダ装置20によって対象の物標が検出された時点である。以下の式(1)に到達時間taの算出方法を示す。

ta=ra/va・・・式(1)
ta:他車100aの到達時間
ra:検出時点の自車100と他車100aの間の距離
va:他車100aの相対速度
【0048】
同様に、進路予測部32は、検出時点での自車100と後続車100bの間の距離rbと、後続車100bの相対速度vbと、に基づいて算出する。以下の式(2)に到達時間tbの算出方法を示す。

tb=rb/vb・・・式(2)
tb:後続車100bの到達時間
rb:検出時点の自車100と後続車100bの間の距離
vb:後続車100bの相対速度
【0049】
ステップS102の後、危険判定部33は、進路予測部32が予測した物標の動きに基づいて衝突の危険性があるか否かを判定する(ステップS103)。複数の物標の中から任意に2つの物標の到達時間の差分を算出する。
【0050】
図4の例では、検出時点での自車100の位置への他車100aの到達時間taと後続車100bの到達時間tbの差の絶対値を以下の式(3)に基づいて衝突危険度tとして算出する。次に、危険判定部33は、式(4)に示すように、算出した衝突危険度tを予め設定される判定閾値Sと比較する。衝突危険度tが小さければ小さい程、同じタイミングで同じ位置に到達する可能性が高くなり、危険度が高くなる。危険判定部33は、衝突危険度tが判定閾値S未満となった場合に衝突危険性があると判定する。

t=|ta-tb|・・・式(3)
t≦S・・・式(4)

t:衝突危険度(到達時間の差の絶対値)
ta:他車100aの到達時間
tb:後続車100bの到達時間
S:判定閾値
【0051】
ステップS103において衝突危険性があると危険判定部33が判定した場合は、処理がステップS104に進む(ステップS103;Yes)。一方、ステップS103において衝突危険性がない又は低いと危険判定部33が判定した場合は、処理はステップS105に進むことなくステップS1に戻る。
【0052】
ステップS103において衝突危険性があると判定されると、通信処理部34は衝突危険性があると判定された物標に衝突危険があることを示す危険情報を送信する処理を実行する(ステップS104)。
【0053】
図4の例において他車100aと後続車100bの衝突危険度tが判定閾値S未満の場合には、通信処理部34は他車100aと後続車100bのそれぞれに対して衝突危険性あることを示す情報を送信する処理を実行する。これによって建物200によって他車100aが死角に位置していたとしても、後続車100bの運転者は自車100から送信される危険情報により、衝突危険性を認識することができる。この送信処理の後、処理はステップS1に戻る。
【0054】
なお、図4の例では、検出された物標は2個であったが3個以上の場合は、任意に2個を選択し、危険判定処理を実行する。次に、異なる組み合わせの2個を選択し、危険判定処理を実行する。この危険判定処理が、全ての組合せに対して実行されることになる。
【0055】
<対向車の右折又は前方車の左折検出時の危険判定処理>
対向車100c(図5)の右折検出時の危険判定処理と、前方車100e(図6)の左折検出時の危険判定処理と、の処理の流れは共通である。次に、ステップS200の対向車100cの右折又は前方車100eの左折検出時の危険判定処理について説明する。
【0056】
図8は、本実施形態のECUによる右折する対向車100c又は左折する前方車100eの検出時の危険判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3のフローのステップS2において状況情報取得部35が右折する対向車100cを検出する又はステップS3において左折する前方車100eを検出すると処理がステップS200に移行し、図8のフローが開始される。
【0057】
まず、ターゲット情報検出部31は、自車100の後方から接近する全ての後続車100dの位置、相対速度、向きを取得する処理を実行する(ステップS201)。
【0058】
ステップS201の後、進路予測部32は、後続車100dの動きを予測する処理を実行する(ステップS202)。進路予測部32は、以下の式(5)に示すように、検出時点での後続車100dから自車100付近の位置の付近までの距離rdと、後続車100dの相対速度vdと、に基づいて後続車100dの到達時間tdを算出する。

td=rd/vd・・・式(5)
td:後続車100dの到達時間
rd:検出時点の自車100付近の位置と後続車100dの間の距離
vd:他車100aの相対速度
【0059】
ステップS202の後、危険判定部33は、進路予測部32が予測した物標の進路に基づいて衝突の危険性があるか否かを判定する(ステップS203)。図5の例では、危険判定部33は、式(6)に示すように、到達時間tdを衝突危険度tdとして予め設定される判定閾値Saと比較する。危険判定部33は、衝突危険度tdが判定閾値Sa未満となった場合に衝突危険性があると判定する。

td≦Sa・・・式(6)
td:衝突危険度(到達時間)
Sa:判定閾値
【0060】
ステップS203において衝突危険性があると危険判定部33が判定した場合は、処理がステップS204に進む(ステップS203;Yes)。一方、ステップS204において衝突危険性がない又は低いと危険判定部33が判定した場合は、処理はステップS204に進むことなくステップS1に戻る(ステップS203;No)。
【0061】
ステップS203において衝突危険性があると判定されると、通信処理部34は衝突危険性があると判定された物標に衝突の危険性があることを示す危険情報を送信する処理を実行する(ステップS204)。衝突危険度tdが判定閾値Sa未満の場合には、通信処理部34は対向車100cと後続車100dのそれぞれに対して衝突危険性あることを示す危険情報を送信する処理を実行する。この送信処理の後、処理はステップS1に戻る。
【0062】
図5及び図6の例では検出される物標は1個であるが、検出される物標が複数の場合は全ての物標に対してステップS200の危険判定処理が実行されることになる。
【0063】
なお、危険判定部33は、衝突危険性を段階的に判定する構成としてもよい。例えば、交差点進入時の危険判定処理において、危険判定部33は、異なる数値の判定閾値S1、S2(S1>S2)を複数設け、衝突危険度tと判定閾値Sとの関係から衝突危険性を小、中、大のように段階的に分けてもよい。この場合、通信処理部34によって送信される危険情報に、衝突危険性の程度を示す情報(例えば、小、中、大等)が付加されることになる。対向車の右折又は前方車の左折検出時の危険判定処理も同様である。対向車100cの右折検出時と前方車100eの左折検出時の危険判定処理についても同様に、判定閾値を複数設け、段階的に衝突危険性を示す処理を追加してもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のECU10は、監視装置として自車100に搭載される。ECU10は、自車100の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出部31と、ターゲット情報検出部31により検出された物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測部32と、進路予測部32の予測に基づいて複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定部33と、危険判定部33により衝突危険性があると判定された物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理部34と、を備える。
【0065】
また、車両に搭載されるECU10の監視方法は、自車100の周囲に存在する複数の物標の位置、相対速度及び向きを検出するターゲット情報検出ステップ(ステップS101、ステップS201)と、ターゲット情報検出ステップにより検出された物標の位置、相対速度及び向きに基づいて当該物標の動きを予測する進路予測ステップ(ステップS102、ステップS202)と、進路予測ステップの予測に基づいて複数の物標同士の衝突危険性を判定する危険判定ステップ(ステップS103、ステップS203)と、危険判定ステップにより衝突危険性があると判定された前記物標に対して危険情報を報知する処理を実行する通信処理ステップ(ステップS104、ステップS204)と、を含む。
【0066】
以上の構成及び方法により、物標同士が互いに検出できない死角に存在するため衝突危険性を予見できない場合であっても、これらの物標を検出できる自車100から衝突危険性を示す危険情報が送信されるので、物標同士の衝突リスクを低減できる。
【0067】
本実施形態の危険判定部33は、物標の位置、相対速度及び向きの少なくとも1つに基づいて衝突危険性の程度を示す衝突危険度を算出し、衝突危険度が判定閾値外(判定閾値未満)の場合に衝突危険性があると判定する。
【0068】
これにより、衝突危険度が判定閾値外になった場合にのみ衝突危険性があると判定されるので、周囲の報知する必要がない物標に対しては危険情報が送信されない。不要な通信の発生を低減できる。
【0069】
本実施形態の危険判定部33は、ターゲット情報検出部31が物標を検出した検出時点における当該物標の位置から検出時点の自車100の位置に基づく設定位置までの物標の到達時間に基づいて衝突危険性を判定する。
【0070】
これにより、衝突危険性の程度を示す衝突危険度の算出をシンプルな処理で実現することができる。
【0071】
本実施形態の進路予測部32は、道路の交差点に自車100が進入した場合には、自車100に近づく全ての物標(他車100a、後続車100b)のそれぞれの動きを予測し、危険判定部33は、自車100に近づく全ての物標から2個の組合せを選択し、当該組合せに対して衝突危険性があるか否かを判定する処理を、全ての組合せに対して実行する。
【0072】
これにより、図4に示すように、他車100aと後続車100bが交差点進入時まで互いの存在を認識できなかったとしても、他車100aと後続車100bの両方を検出できる自車100から送信される危険情報により、他車100aと後続車100bのそれぞれが衝突リスクを認識できる。なお、他車100aが通信装置をもっていない場合や人等の場合であっても、後続車100bには衝突リスクを報知できるので、衝突リスクを低減することが可能である。
【0073】
本実施形態の進路予測部32は、対向車100cの自車100側への旋回(右折)又は旋回(右折)の予兆を検出すると、自車100の後方から近づく物標(後続車100d)の動きを予測し、危険判定部33は、自車100の後方から近づく物標と対向車の衝突危険性があるか否かを判定する。
【0074】
これにより、図5に示すように、対向車100cと後続車100dが自車100の存在により、互いの存在を認識できなかったとしても、対向車100cと後続車100dの両方を検出できる自車100から送信される危険情報により、対向車100cと後続車100dのそれぞれが衝突リスクを認識できる。即ち、右折する対向車100cと自車100の横を通り抜ける後続車100dの接触事故を回避できる。
【0075】
進路予測部32は、自車100の走行方向と同じ方向を向く前方車100eの旋回(左折)又は旋回(左折)の予兆を検出すると、自車100に後方から近づく前記物標の動きを予測し、危険判定部33は、自車100の後方から近づく物標と前方車100eの衝突危険性があるか否かを判定する。
【0076】
これにより、図6に示すように、前方車100eと後続車100dが自車100の存在により、互いの存在を認識できなかったとしても、前方車100eと後続車100dの両方を検出できる自車100から送信される危険情報により、対向車100cと後続車100dのそれぞれが衝突リスクを認識できる。即ち、左折する前方車100eと自車100の横を通り抜ける後続車100dの巻込事故を回避できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0078】
例えば、図3のフローにおいて、ステップS2又はステップS3からステップS200に移行する条件として、自車100が徐行又は停止していることを示す走行情報を状況情報取得部35が取得していることを追加してもよい。
【0079】
また、状況情報取得部35は、車々間通信から取得される走行情報に基づいて対向車100cの右折や前方車100eの左折を判定してもよい。また、状況情報取得部35は、対向車100cの位置、相対速度及び向き等に基づいて対向車100cの右折や前方車の左折を判定対向車が右折すると判定してもよい。
【0080】
また、進路予測部32は、位置、相対速度、向きを用いて検出時の自車100の位置への到達時間を算出しているが、この構成に限定される訳ではない。例えば、自車100から遠ざかる相対速度を有した物標については、危険判定の対象外としてもよい。
【0081】
また、進路予測部32は、検出後の数秒間の物標の移動軌跡を推定し、第1の物標の移動軌跡と第2の物標の移動軌跡が重なる場合は、衝突の危険性があると判定してもよい。また、各物標の軌跡が同じタイミングで他の物標の一定距離に接近すると推定した場合は、その距離や速度に応じて衝突危険度を算出してもよい。
【0082】
また、危険判定部33は、到達時間に基づいて衝突危険度を算出しているが、この構成に限定されるわけではない。物標の位置、相対速度及び向きを衝突危険度に重みをつけて反映させてもよい。
【0083】
また、通信処理部34は、危険情報にそれぞれの物標の位置を示す情報を付加してもよい。
【0084】
上記実施形態では、ターゲット情報検出部31が、レーダ装置20-1~20-4から送信される情報から自車の周囲に存在する物標の位置、相対速度、向き等の情報を取得する処理を実行しているが、この方式に限定される訳ではない。例えば、ターゲット情報検出部31は、通信装置21によって他車と通信する車々間通信又は路車間通信によって他車から位置、速度及び向きを含む情報を取得する構成としてもよい。
【0085】
また、図4図6の例では、何れも自動車道路が左側通行の場合を説明したが、右側通行の場合においても本発明を適用できる。例えば、右側通行の場合において、対向車の左折を対向車の自車側の旋回として検出し、ステップS200の危険判定処理に処理が移行する構成としてもよい。
【0086】
また、上述した上記実施形態及び変形例における一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。そして、コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 ECU(監視装置)
31 ターゲット情報検出部
32 進路予測部
33 危険判定部
34 通信処理部
100 自車
100a 他車
100b 後続車
100c 対向車
100d 後続車
100e 前方車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8