(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082514
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】インジェクターを伴う基材処理装置およびインジェクター
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20220526BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220526BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021188657
(22)【出願日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】63/117,034
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コーネリアス・ハーンストラ
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン・イディラ
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ジー・エム・デ・リーデル
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・ルーロフス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・クネペン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・テルホルスト
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030EA05
4K030EA06
4K030EA11
4K030GA02
4K030GA06
4K030KA10
4K030KA46
4K030LA15
5F045AA06
5F045AB02
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5F045AB33
5F045BB03
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
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5F045EN05
5F058BC08
5F058BF04
5F058BF36
5F058BG02
5F058BG04
(57)【要約】
【課題】チューブと、チューブの内部表面をライニングする閉じられたライナーと、ライナーの内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターと、内部空間からガスを除去するためのガス排気ダクトと、を有する、基材処理装置を開示する。
【解決手段】ライナーは、実質的に円筒形の壁であって、下端のライナー開口部によって区切られ、かつガスのためにライナー開口部の上方で実質的に閉じられた、壁を有し得る。装置は、ボートであって、ライナー開口部を介して内部空間内に対して移動可能に構築および配置され、かつ内部空間内で基材支持体の長さにわたって複数の基材を保持するための複数の基材ホルダーが設けられている、ボートを有し得る。ガスインジェクターの各々は、頂部に単一の出口開口部を有してもよく、複数のインジェクターの出口開口部は、基材支持体の長さにわたって実質的に均等に分配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブと、
前記チューブの内部表面をライニングするように構成され、下端にライナー開口部が設けられており、ガスのために前記ライナー開口部の上方で実質的に閉じられている閉じられたライナーと、
前記閉じられたライナーの内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターと、
前記内部空間からガスを除去するためのガス排気ダクトと、
前記ライナー開口部を介して前記内部空間内に対して移動可能に構築および配置され、かつ前記内部空間内で基材支持体の長さにわたって複数の基材を保持するための複数の基材ホルダーが設けられている、ボートであって、前記複数のガスインジェクターの各々は、頂部に単一の出口開口部を有し、前記複数のガスインジェクターの出口開口部は、前記基材支持体の長さにわたって実質的に均等に分配されている、ボートと、を備える、基材処理装置。
【請求項2】
前記ボートが、前記内部空間内へ垂直方向に延在するように構築され配置され、かつ前記内部空間内で垂直方向に前記基材支持体の長さ(L0)にわたって前記複数の基材を水平に保持するための複数の基材ホルダーが設けられており、前記基材処理装置がN個のインジェクターを有する、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項3】
前記N個のインジェクターのうちの最も長いインジェクターが、前記基材支持体の長さ(L0)の(1-1/N)~1倍の距離(L3)にわたって、前記内部空間内へ前記複数の基材に沿って延在する、請求項2に記載の基材処理装置。
【請求項4】
前記N個のインジェクターのうちの最も短いインジェクターが、前記基材支持体の長さ(L0)の0~1/N倍の距離(L1)にわたって、前記内部空間内へ前記複数の基材に沿って延在する、請求項2に記載の基材処理装置。
【請求項5】
前記N個のインジェクターのうちの最も長いものでもなく最も短いものでもないインジェクターは、前記基材支持体の長さ(L0)の1/N~(1-1/N)倍に等しい距離にわたって、前記内部空間内へ前記複数の基材に沿って延在する、請求項2に記載の基材処理装置。
【請求項6】
前記基材処理装置に、少なくとも前記ライナーを支持するためのフランジが設けられており、前記フランジが前記ライナー開口部を少なくとも部分的に封鎖するように構成され、前記ガス排気ダクトが、前記ライナー開口部の近くで前記フランジに設けられており、前記内部空間からガスを除去して前記内部空間に下降流を形成する、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項7】
前記フランジが、
前記ライナーの前記内部空間内にまたは前記ライナーの前記内部空間から前記複数の基材を搬送するように構成された前記ボートを挿入および除去するように構成された入口開口部、を備える、請求項6に記載の基材処理装置。
【請求項8】
前記基材処理装置が、前記フランジの入口開口部を封鎖するように構成されかつ前記ボートを支持するように構成された垂直に移動可能なドアが設けられている、請求項7に記載の基材処理装置。
【請求項9】
前記ガスインジェクター内部のガス伝導チャネルの水平方向の内側断面が、半径方向の寸法よりも大きく前記実質的に円筒形のライナーの円周に接する方向の寸法を備える形状を有する、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項10】
前記ガスインジェクター内部のガス伝導チャネルの水平方向の内側断面積が、100~1500mm2である、請求項9に記載の基材処理装置。
【請求項11】
シリコン前駆体を収容するための容器であって、前記ガスインジェクターに動作可能に接続されて前記シリコン前駆体をガスとして前記内部空間内に提供する容器をさらに備える、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項12】
前記複数のガスインジェクターの各々のガスの流速を調節するための複数の流量制御器を備える請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項13】
前記ガスインジェクターは、ケイ素、炭化ケイ素、または酸化ケイ素から構築されている、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項14】
前記複数のガスインジェクターが、3個のインジェクターを備える、請求項1に記載の基材処理装置。
【請求項15】
前記ガスインジェクターの単一の出口開口部は、前記ライナー開口部の上方に構築および配置され、前記ガス排気ダクトが、前記ライナー開口部の下方に構築され配置されている、請求項1に記載の基材処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材処理装置であって、
チューブと、
装置の内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターと、
内部空間からガスを除去するためのガス排気ダクトと、
内部空間内に対して移動可能に構築および配置され、かつ内部空間内で基材支持体の長さにわたって複数の基材を保持するための複数の基材ホルダーが設けられている、ボートと、を備える、基材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材、例えば半導体ウェーハを処理するための垂直処理炉などの基材処理装置は、ベルジャー形状のプロセスチューブの周りに配置されたヒーターを含み得る。プロセスチューブの上端は、例えばドーム形構造によって閉じられていてもよいが、プロセスチューブの下端面は開いていてもよい。
【0003】
さらに、チューブをライニングするライナーが、設けられてもよい。ライナーとプロセスチューブとの間に、小さな円周方向空間があってもよい。ライナーは、閉じられたライナーであってもよく、当該閉じられたライナーは、その上端で閉じられており、下端は、フランジによって部分的に閉じられてもよい。ライナーおよびフランジによって区切られた内部空間は、処理されるウェーハがその中で処理され得るプロセスチャンバーを形成する。フランジは、ウェーハを搬送するウェーハボートを内部空間内に挿入するための入口開口部を備え得る。ウェーハボートは、ドアであって、垂直方向に移動可能に配置され、フランジの入口開口部を封鎖するように構成されている、ドア上に配置されることができる。
【0004】
フランジは、内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターを支持してもよい。さらに、ガス排気ダクトが、設けられてもよい。このガス排気口は、内部空間からガスを排出するために真空ポンプに接続され得る。内部空間内のインジェクターによって提供されるガスは、ウェーハ上の堆積反応のための反応(プロセス)ガスであってもよい。この反応ガスはまた、ウェーハ以外のその他の表面上に堆積されてもよく、例えば、その反応ガスは、垂直炉内でインジェクター内またはインジェクター上に堆積され得る。これらの堆積によって形成される層は、インジェクターのクロッキングおよびさらには破損を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
改良された基材処理装置であって、
チューブと、
チューブの内部表面をライニングするように構成され、下端にライナー開口部が設けられており、ガスのためにライナー開口部の上方で実質的に閉じられている閉じられたライナーと、
閉じられたライナーの内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターと、
内部空間からガスを除去するためのガス排気ダクトと、
ライナー開口部を介して内部空間内に対して移動可能に構築および配置され、かつ内部空間内で基材支持体の長さにわたって複数の基材を保持するための複数の基材ホルダーが設けられている、ボートと、を備える、基材処理装置。ガスインジェクターは、頂部に単一の出口開口部を有してもよい。複数のインジェクターの出口開口部は、基材支持体の長さにわたって実質的に均等に分配されていてもよい。
【0006】
本発明の様々な実施形態を、互いに別々に適用してもよく、または組み合わせてもよい。本発明の実施形態は、図面に示されるいくつかの例を参照して、詳細な説明においてさらに明らかにされるであろう。
【0007】
当然のことながら、図内の要素は、単純化および明瞭化のために例示されていて、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、図内の要素のうちのいくつかの寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素と相対的に誇張されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態による基材処理装置の一部の断面図である。
【
図2】
図2は、さらなる実施形態による基材処理装置の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願において、類似のまたは対応する形体は、類似のまたは対応する参照符号によって示される。様々な実施形態の説明は、図に示される例に限定されず、発明を実施するための形態および特許請求の範囲で使用される参照番号は、図に示される例について記述されるものを限定することを意図していない。
【0010】
図1は、一実施形態による基材処理装置の一部の断面図を示す。基材処理装置は、
チューブTBと、
チューブTBの内部表面をライニングするように構成されており、下端にライナー開口部LOが設けられており、ガスのためにライナー開口部の上方で実質的に閉じられている閉じられたライナーCLと、
ライナー開口部を介して内部空間内に対して移動可能に構築および配置され、かつ内部空間内で基材支持体の長さL0にわたって複数の基材Wを保持するための複数の基材ホルダーが設けられている、ボートBTと、
閉じられたライナーCLの内部空間にガスを提供するための複数のガスインジェクターI1~I3と、
内部空間からガスを除去するためのガス排気口GXダクトと、を含み得る。閉じられたライナーCLは、下端のライナー開口部LOおよび上端の頂部閉鎖部によって区切られた実質的に円筒形の壁CWを含み得る。閉じられたライナーCLは、ガスのためのライナー開口部LOの上方で実質的に閉じられていてもよい。
【0011】
複数のインジェクターのガスインジェクターI1~I3は、頂部に単一の出口開口部O1~O3を有してもよい。複数のインジェクターのガスインジェクターI1~I3は、ガス出口として機能する頂部の単一の出口開口部O1~O3を除いて、インジェクターの長さに沿って実質的に閉じられていてもよい。複数のインジェクターのガスインジェクターI1~I3には、ガス入口が設けられていてもよく、当該ガス入口のうち、インジェクターI3のガス入口GE3のみが、図示されている。ガス出口として機能する頂部の単一の出口開口部が設けられたガスインジェクターは、ガス出口として機能する複数の開口部をインジェクターの長さに沿って有するインジェクターよりも強くてもよい。
【0012】
ガスインジェクターI1~I3は、異なる長さL1~L3を有してもよい。複数のインジェクターのうちの最も長いインジェクターI3は、閉じられたライナーCLの頂部閉鎖部TCの近くへ延在してもよい。複数のインジェクターのうちの最も長いものは、ライナーCLの頂部閉鎖部TCから1~20cm以内へ延在してもよい。複数のガスインジェクターのうちのガスインジェクターI1~I3の各々は、各インジェクターの単一の出口開口部が異なる高さで内部空間へガスを排出するように、異なる長さを有してもよい。
【0013】
基材処理装置には、少なくともライナーCLを支持するためのフランジFLであって、ライナー開口部LOを少なくとも部分的に封鎖するように構成されている、フランジFLが設けられていてもよい。排気口EXは、ライナー開口部LOの近くに設けられてもよく、例えば、排気口EXは、ライナー開口部LOの近くでフランジFLに設けられて、内部空間からガスを除去して内部空間に下降流を形成してもよい。
【0014】
フランジFLは、閉じられたライナーCLの内部空間へまたは閉じられたライナーCLの内部空間から、基材支持体の長さにわたって複数の基材Wを保持するように構成されたボートBTを移送するように構成された入口開口部IOを含み得る。複数のインジェクターI1~I3の一部の開口部は、ボートBTの基材支持体の長さL0にわたって実質的に均等に分配されていてもよい。したがって、各インジェクターI1、I2、I3の単一の出口開口部は、異なる高さで内部空間へボートBT内の基材Wに対してガスを排出する。
【0015】
ボートBTは、反応チャンバー内へ垂直方向に延在するように構築および配置されていてもよく、かつ反応チャンバー内へ垂直方向に基材支持体の長さL0にわたって複数の基材を水平に保持するための複数の基材ホルダーが設けられていてもよい。装置は、N個のインジェクター、例えば2個、3個、4個、5個、または6個のインジェクターを有してもよい。
【0016】
N個のインジェクターのうちの最も長いインジェクターL3は、基材支持体の長さL0の0.6~1倍に等しい距離L3にわたって、反応チャンバー内へ複数の基材Wに沿って延在してもよい。N個のインジェクターのうちの最も短いインジェクターI1は、基材支持体の長さL0の0.1~0.4倍に等しい距離L1にわたって、反応チャンバー内へ複数の基材に沿って延在してもよい。N個のインジェクターのうちの最も長いものでもなく最も短いものでもないインジェクターI2は、基材支持体の長さL0の0.3~0.7倍に等しい距離L2にわたって、反応チャンバー内へ複数の基材に沿って延在してもよい。したがって、各インジェクターの単一の出口開口部は、異なる高さで内部空間へ、ボートBT内の基材Wに対してガスを排出する。したがって、複数のインジェクターの出口開口部は、基材支持体の長さL0にわたって実質的に均等に分配されていてもよく、このことは、プロセスガスをボートBTにわたって均一に広げるために役立つ。これは、ボートBTによって基材支持体の長さL0にわたって支持される基材に実質的に均一に層を堆積するのに役立つ。個々のインジェクターを通って流れるプロセスガスの流れの小さな調節が、均一性をさらに最適化するために使用され得る。
【0017】
200mm直径のウェーハを処理するための基材処理装置については、基材支持体の長さH0は、40~90cm、好ましくは50~80cm、最も好ましくは約60cmであり得る。300mm直径のウェーハを処理するための基材処理装置については、基材支持体の長さH0は、60~150cm、好ましくは80~130cm、好ましくは約90または120cmであり得る。
【0018】
図2は、さらなる実施形態による基材処理装置の一部の概略図を示す。
図2は、インジェクターI1、I2、およびI3の長さL1、L2、およびL3と、ボートBTにおける基材支持体の長さL0と、の関係を示す。ガスインジェクターI1、I2、およびI3の各々は、頂部に単一の出口開口部O1、O2、およびO3を有する。N個である複数のインジェクターの出口開口部O1、O2、およびO3は、基材支持体の長さL0にわたって実質的に均等に分配されていてもよい。ボートBTは、ライナーCLの内部空間へ垂直方向に延在するように構築および配置されてもよい。ボートには、内部空間および装置内で垂直方向に基材支持体の長さL0にわたって複数の基材を水平に保持するための複数(40~180)の基材ホルダーが設けられていてもよい。
【0019】
N個のインジェクターのうちの最も長いインジェクターは、基材支持体の長さL0の(1-1/N)~1倍の距離L3にわたって、複数の基材に沿って延在してもよい。nが3である
図2の例では、これは、インジェクターI3が、L0基材支持体の長さの2/3~1倍、好ましくはL0基材支持体の長さの約5/6の長さL3を有することにつながる。
【0020】
N個のインジェクターのうちの最も短いインジェクターは、基材支持体の長さL0の0~1/N倍の距離L1にわたって、複数の基材に沿って延在してもよい。nが3である
図2の例では、これは、インジェクターI1が、L0基材支持体の長さの0~1/3倍、好ましくはL0基材支持体の長さの約1/6の長さL1を有することにつながる。
【0021】
N個のインジェクターのうちの最も長いものでもなく最も短いものでもないインジェクターは、基材支持体の長さL0の1/N~(1-1/N)倍に等しい距離にわたって、複数の基材に沿って延在してもよい。nが3である
図2の例では、これは、インジェクターI2が、L0基材支持体の長さの1/3~2/3倍、好ましくはL0基材支持体の長さの約3/6の長さL2を有することにつながる。
【0022】
インジェクターI1が基材支持体の長さL0の0~1/3倍の長さL1を有し、インジェクターI2が基材支持体の長さL0の1/3~2/3倍の長さL2を有し、インジェクターI3が基材支持体の長さL0の2/3~1倍の長さL3を有することによって、複数のインジェクターの出口開口部が基材支持体の長さL0にわたって実質的に均等に分配され得ることが確実となり得る。したがって、プロセスガスをボートBTにわたって実質的に均一に広げることができる。プロセスガスをボートBTにわたって均一に広げることは、ボートBTによって基材支持体の長さL0にわたって支持される基材に均一に堆積するのに役立つ。個々のインジェクターを通って流れるプロセスガスの流れの小さな調節が、均一性をさらに最適化するために使用され得る。
【0023】
図1に戻ると、基材処理装置には、フランジFLの入口開口部IOを封鎖するように構成された垂直に移動可能なドアDRが設けられていてもよい。ドアDRは、ボートBTを支持するように構成されてもよい。インジェクターI1~I3のうちの1つの内部のガス伝導チャネルの水平方向の内側断面積は、100~1500mm
2であってもよい。
【0024】
インジェクターI1~I3内部のガス伝導チャネルの水平方向の内側断面は、半径方向の寸法よりも大きい、実質的に円筒形のライナーCLの円周に接する方向の寸法を備える形状を有することができる。基材処理装置は、シリコン前駆体を収容するための容器であって、インジェクターI1~I3に動作可能に接続されてシリコン前駆体をガスとして内部空間内に提供する、容器をさらに含んでもよい。装置は、均一性を向上するために複数のガスインジェクターI1~I3の各々のガスの流速を調節するための流量制御器を含み得る。例えば、より短いインジェクターに対して、より長いインジェクターよりも高い流量を与えるためである。
【0025】
基材処理装置は、チューブTBを囲み、チューブの内部を加熱するように構成されている、ヒーターを含み得る。チューブTBは、低圧プロセスチューブであってもよい。
【0026】
低いチューブTBの開口部を少なくとも部分的に閉じるために、フランジFLを設けることができる。垂直方向に移動可能に配置されるドアDRは、フランジ3の中央の入口開口部IOを封鎖するように構成されることができ、基材Wを保持するように構成されるウェーハボートBを支持するように構成されることができる。フランジ3は、プロセスチューブTBの開放端を部分的に閉じていてもよい。ドアDRには、台座PDが設けられていてもよい。ウェーハボートBTを内部空間内で回転させるために、台座PDが回転させられてもよい。ボートBT内の最も低い基材の下には、ボートBT内の基材Wの間の反応ガスの流れを防止するために流れ空間が提供され得る。
【0027】
ガス排気口GXが、内部空間からガスを除去するために構築および配置されてもよく、かつインジェクターの下方に構築および配置されてもよい。ガスのためにライナー開口部LOの上方でライナーCLを閉じ、インジェクターI1~I3を用いて内部空間の上端のインジェクター開口部O1~O3を通して内部空間にガスを供給し、内部空間の下端のガス排気口GXにより内部空間からガスを除去することにより、閉じられたライナーCLの内部空間に下降流を形成することができる。この下降流は、汚染物または反応副生成物、基材W、ボートB、ライナーCLおよび/または支持フランジFLからの粒子を、処理された基材Wから離れてガス排気口GXに向かって下方に移動させることができる。
【0028】
閉じられたライナーCLの開放端の下方に、内部空間Iからガスを除去するためのガス排気口GXを設けてもよい。これは、プロセスチャンバーの汚染源が、閉じられたライナーCLとフランジFLとの間の接触によって形成され得るので、有益であり得る。より具体的には、開放端での閉じられたライナーCLの下端面がフランジFLと接触する位置に、汚染源が存在し得る。基材Wの処理中、および特に処理後のボートBTの取り出し中に、閉じられたライナーCLおよびフランジFLは、閉じられたライナーCLおよびフランジFL両方の温度を上昇させる熱に曝され得る。温度上昇のため、閉じられたライナーCLおよびフランジFLは、熱膨張を経験してもよく、これによってこれらは半径方向に膨張する。例えば閉じられたライナーCLは炭化ケイ素から作られ、フランジFLは金属から作られ得るため、閉じられたライナーCLおよびフランジFLは異なる熱膨張係数を有し得、閉じられたライナーCLとフランジFLは熱膨張中、互いに対して動くことができる。これにより、閉じられたライナーCLの下端面とフランジFLの上面との間の摩擦をもたらす可能性があり、これは汚染物質、例えば閉じられたライナーCLおよび/またはフランジFLから剥離する微細粒子をもたらす可能性がある。粒子はプロセスチャンバー内に移動する可能性があり、プロセスチャンバーおよび処理される基材を汚染する可能性がある。
【0029】
閉じられたライナーをガスのためにライナー開口部の上方で実質的に閉じ、ライナー開口部の上方でインジェクターの単一の出口開口部を用いて内部空間にプロセスガスを供給し、ライナー開口部の下方でガス排気口GXによって内部空間からガスを除去することにより、内部空間に下降流を形成することができる。この下降流は、ライナーとフランジの境界面からの粒子を、処理された基材Wから離れる方向で下方に、排気口へ輸送することができる。
【0030】
チューブTBは、チューブTBの内側の低圧に対して大気圧を補償しなければならない場合があるので、かなり厚く、比較的強い圧縮強度の材料で作ることができる。例えば、低圧プロセスチューブTBは5~8、好ましくは約6mmの厚さの石英で作ることができる。石英は、0.59×10-6K-1の非常に低い熱膨張係数(CTE)(表1参照)を有し、それにより装置内の熱変動に容易に対応することができる。堆積する材料のCTEはより高い場合がある(例えば、Si3N4のCTE=3×10-6K-1であり、SiのCTE=2.3×10-6K-1である)が、その差は比較的小さい可能性がある。石英製のチューブに膜を堆積させると、チューブが多数の大きな熱サイクルを受けても付着する可能性があるが、汚染のリスクが高まる可能性がある。
【0031】
閉じられたライナーCLは、チューブTBの内側へのいかなる堆積を回避することができ、したがって、チューブTBへの堆積が脱落するリスクを軽減することができる。したがって、チューブTBは石英から作られ得る。
【0032】
炭化ケイ素の閉じられたライナーCL(SiCのCTE=4×10-6K-1)は堆積膜と閉じられたライナーの間でCTEにおいて良い一致度を提供し得、その結果、ライナーからの堆積膜の除去を必要とし得る前の累積厚さがより大きくなる。CTEの不一致は、堆積膜のクラックおよび剥がれ落ち、ならびに対応して高い粒子数をもたらし、これは望ましくなく、SICライナーCLを使用することによって軽減され得る。同じ機構がインジェクターI1~I3について作用し得、異なる熱膨張を有するあまりに多くの材料が堆積すると、それらのインジェクターが破損し得る。したがって、炭化ケイ素またはケイ素からインジェクターI1~I3を製造することが有利であり得る。あるいは、インジェクターは石英から作られてもよい。
【0033】
【0034】
材料がライナーCLおよび/またはインジェクターI1~I3に好適であるか否かは、堆積する材料に依存し得る。したがって、堆積する材料の熱膨張がライナーCLおよび/またはインジェクターI1~I3の熱膨張と実質的に同一である材料を使用できることが有利である。したがって、ライナーCLおよび/またはインジェクターI1~I3に、石英の熱膨張よりも熱膨張が比較的高い材料を使用できることが有利であり得る。例えば、炭化ケイ素SiCを使用することができる。炭化ケイ素ライナーは、大気圧を補償する必要がないため、4~6、好ましくは5mmの厚さとすることができる。圧力補償はチューブTBで行うことができる。
【0035】
約4×10-6K-1~6×10-6K-1のCTEを有する金属および金属化合物材料、例えばTaN、HfO2、およびTaO5を堆積させるシステムでは、例えば炭化ケイ素を含むライナーおよびインジェクター材料は、好ましくは約4×10-6K-1~9×10-6K-1のCTEを有し得る。
【0036】
さらに高いCTEを有する材料の堆積のために、例えば表2に示される閉じられたライナーCLおよび/またはインジェクターI1~I3のための材料を選択することができる。
【0037】
【0038】
フランジFLは、フランジFLとチューブTBとの間の良好な封止を提供するように、その中にOリングORなどのシールを提供するために構築および配置された溝が設けられていてもよい。フランジFL、チューブTBおよびOリングORが、外気圧とチューブTB内の低圧との間で圧力バリアの一部を形成し得るため、この良好な封止が必要である。OリングORは、石英が比較的低い熱膨張を有し、OリングORの摩耗を引き起こし得るOリングORに対する石英の動きがあまりないため、石英の境界面に設けられてもよい。異なるOリングが、フランジFL間およびフランジFLとドアDRとの間に使用され得る。
【0039】
反応速度は典型的には圧力の増加と共に増加するので、インジェクターで圧力を減少させると、インジェクター内の反応速度が減少する可能性がある。インジェクター内の圧力が低いことの更なる利点は、インジェクターを通るガス量が低圧で膨張することであり、原料ガスの流れが一定の場合、インジェクター内の原料ガスの滞留時間はそれに対応して短くなる。両方の組み合わせのために、原料ガスの分解を減らすことができ、それによってインジェクター内の堆積も減らすことができる。
【0040】
インジェクター内に堆積すると、インジェクター内に引張強度が生じ、温度が変化した場合にインジェクターが破損する可能性がある。したがって、インジェクター内の堆積が少ないと、インジェクターの寿命が延びる。インジェクターは、プロセスガスで堆積される材料の熱膨張係数を有する材料から作られてもよい。例えば、ガスインジェクターは、窒化ケイ素が堆積される場合には窒化ケイ素から、またはプロセスガスによってシリコンが堆積される場合にはシリコンから作られてもよい。それによりインジェクター内の堆積層の熱膨張は、インジェクターの熱膨張と一致する可能性があり、ガスインジェクターが温度変化中に破損する可能性を低減する。炭化ケイ素は、多くの堆積する材料と一致する可能性がある熱膨張を有するので、インジェクターに好適な材料となり得る。
【0041】
インジェクターの長さ方向に沿ってインジェクター内で原料ガスが容易に流れるように、インジェクターは大きな内側断面を備えることができる。本発明によるインジェクターを反応空間内に収容することができるようにするために、インジェクターの接線方向の大きさは半径方向の大きさよりも大きくてもよく、反応空間を区切るライナーはインジェクターを収容するために外側に延在する膨張部を備えることができる。
【0042】
一実施形態では、2成分膜の2つの構成成分を供給する2つの原料ガスは、インジェクターに入る前にガス供給システム内で混合される。これは、ボートBTの長さにわたって注入ガスの均一な組成を保証するための最も簡単な方法であり得る。しかし、これは必須ではない。あるいは、2つの異なる原料ガスを別々のインジェクターを用いて注入し、注入後に反応空間内で混合することができる。
【0043】
複数のインジェクターIのための複数の流量制御器を使用することによって、ガス流についての何らかの調整可能性が与えられる。後者は、ボートBTにわたる基材W上の堆積速度における均一性を微調整するために必要であり得る。流量は、50~1000sccmの値に調節されてもよい。
【0044】
特定の実施形態を上述したが、記載した以外の方法で本発明を実施できることが理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではないことが意図されている。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、前述のように本発明に修正を加えることができることは当業者には明らかであろう。様々な実施形態を組み合わせて適用してもよく、または互いに独立して適用してもよい。
【外国語明細書】