(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082546
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ガス供給容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
G01N1/00 102D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030911
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2020545110の分割
【原出願日】2019-02-21
(31)【優先権主張番号】62/639,462
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デプレ、ジョセフ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ゼラー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ラ ボード、エドガー ダニエル
(57)【要約】
【課題】試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器を提供する。
【解決手段】試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、フィルタを含み、それにより、前記容器は、前記試薬ガスが濾過された後、高レベルの純度で前記試薬ガスを送達することができる。前記フィルタは、多孔質焼結体を含み、前記試薬ガスを、前記容器から送達する間に、低圧で、比較的低い流速で、かつ、前記フィルタ全体を通じて比較的低い圧力降下で、前記フィルタを通して流すことにより、供給される試薬ガスの望ましいレベルの純度を提供するのに効果的である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
内部容積と、
前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内の試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
前記内部容積と前記出口との間の流路内にあるフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記フィルタは、20標準立方センチメートル/分の流量で、特定のMPPSにおいて少なくとも4の対数減少値を有する、
ガス供給容器。
【請求項2】
大気圧より低い内部圧力を有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記フィルタが前記バルブ入口に配置されている、
請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記フィルタが、10標準立方センチメートル/分の流速で、特定のMPPSにおいて少なくとも7の対数減少値を有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記多孔質焼結体が55~65パーセントの気孔率を有する、
請求項1~4のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記多孔質焼結体が、0.8~1.2ミリメートルの範囲の厚さを有する、
請求項1~5のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記多孔質焼結体が、1グラムあたり0.15~0.30平方メートルの範囲の表面積(BET)を有する、
請求項1~6のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記吸着剤が、金属有機骨格、多孔性有機ポリマー、及び活性炭から選択される、
請求項1~7のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れか一項に記載の容器から試薬ガスを供給する方法であって、
前記容器から前記試薬ガスを送達することを含む、方法。
【請求項10】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
内部容積と、
前記内部容積内に配置された少なくとも1つの圧力調整器と、
前記内部容積と連通しているバルブであって、バルブ入口及びバルブ出口を有する、バルブと、
前記内部容積と前記出口との間の流路内にあるフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記フィルタは、20標準立方センチメートル/分の流量で、特定のMPPSにおいて少なくとも4の対数減少値を有する、
ガス供給容器。
【請求項11】
前記フィルタが前記バルブ入口に配置されている、
請求項10に記載の保管及び分配容器。
【請求項12】
前記フィルタが、10標準立方センチメートル/分の流速で、特定のMPPSにおいて少なくとも7の対数減少値を有する、
請求項10に記載の容器。
【請求項13】
前記多孔質焼結体が55~65パーセントの気孔率を有する、
請求項10~12のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項14】
前記多孔質焼結体が、0.8~1.2ミリメートルの範囲の厚さを有する、
請求項10~13のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項15】
前記多孔質焼結体が、1グラムあたり0.15~0.30平方メートルの範囲の表面積(BET)を有する、
請求項10~14のうち何れか一項に記載の容器。
【請求項16】
請求項10~15のうち何れか一項に記載の容器から試薬ガスを供給する方法であって、
前記容器から試薬ガスを送達することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載されている開示は、内部フィルタを含む容器、特に内部フィルタを含む吸着剤ベースの容器に収容される工業用試薬ガスの分野の技術、並びにそのような容器及びそのような試薬ガスを高純度の試薬ガスを必要とする用途で使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬ガスを、幅広い産業用途で使用するために、収容、保管、輸送、及び送達するのに有用な様々な包材または容器が一般に知られている。試薬ガスの様々な使用においては、多かれ少なかれ厳しい要求レベルの純度など、試薬ガスの供給のために様々な要件が必要になることがある。イオン注入法で使用するために供給される試薬ガスは、高レベルの純度が要求されるが、そのレベルは、試薬ガスによって生成されるプラズマを伴うプロセス、例えばプラズマ堆積プロセスで使用するために供給される試薬ガスに要求される純度レベルよりも低い場合がある。
【0003】
送達中に試薬ガスからサブミクロンサイズの粒子を除去するためにフィルタを使用することにより、高レベルの試薬ガスの純度を提供することができる。濾過された流体の純度のレベルは、「対数減少値」またはLRVの観点から、フィルタの除去効率の測定に基づいて言及されることがある。対数減少値は、指定された粒子サイズに対する、指定された流量(またはガス速度)での濾過効率の測定値である。LRV値が1の場合、(特定のサイズの)汚染物質の90%がフィルタに保持される。LRVが2の場合、(特定のサイズの)汚染物質の99%がフィルタに保持される。LRVが3の場合、(特定のサイズの)汚染物質の99.9%がフィルタなどに保持される。測定に使用される関連する粒子サイズは、「最も通過する粒子サイズ」(MPPS)として識別されるサイズであってもよく、これは、半導体処理で使用される試薬ガスの場合、通常30ミクロンまたは0.060ミクロンのようなミクロンまたはサブミクロンのスケールであるのが一般的である。テストで使用される粒子サイズは、試薬ガスのタイプ、流量、またはテストの別の変数、またはテストされたフィルタ及び試薬ガスシステムに基づいて選択できる。フィルタのMPPSを決定するための方法論と手法は、K.W.Lee及びB.Y.H.Liuの「On the Minimum Efficiency and the Most Penetrating Particle Size for Fibrous Filters」(Journal of the Air Pollution Control Association Vol.30, Iss. 4, 1980)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体材料で作られた製品が絶えず高速化及び小型化されるにつれて、半導体材料及び派生装置に使用されるプロセス及び原材料も継続的に改善されなければならない。これには、半導体処理及びマイクロエレクトロニクス装置製造などの商業用途に供給される試薬ガスの純度の改善を含む、試薬ガスの供給の改善の必要性が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、産業的に有用な試薬ガスを収容、輸送、保管、取り扱い、及び送達するのに有用な保管容器に関する。いくつかの実施形態では、容器は吸着剤ベースの容器であり、これは、容器が試薬ガスに対して親和性を有する吸着剤を含むとともに、蒸気(ガス状)の形態のガス状試薬ガスと平衡状態で吸着剤の表面に吸着形態で存在する吸着試薬ガスとして容器内に試薬ガスを含むことを意味する。容器は試薬ガスを含み、大気圧より低い圧力(またはほぼ大気圧より低い圧力)での試薬ガスの送達を可能にする。他の実施形態では、容器は圧力調節された容器である。
【0006】
本開示によれば、容器は、容器の内部にあるフィルタを含み、容器は、濾過された後の試薬ガスを高レベルの純度で送達することができる。容器から送達される高純度試薬ガスは、イオン注入プロセス、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ堆積、フォトリソグラフィ、洗浄、ドーピングなどの半導体プロセスで一般的に使用される様々なプロセスなど、高純度を必要とする用途で有用であり、これらの用途は、半導体、マイクロエレクトロニクス、光電池、及びフラットパネルディスプレイの装置及び製品の製造の一部である。
【0007】
例示的な容器は、容器内部にフィルタを含み、フィルタは、低流量及び低圧下で容器から試薬ガスを送達する間にフィルタを通過する試薬ガスを濾過するのに有効な多孔質焼結体を含むか、こうした多孔質焼結体からなるか、あるいは、本質的に多孔質焼結体からなる。フィルタは、ミクロンまたはサブミクロンのサイズの粒子を濾過して、様々な産業用途に必要なレベルの純度を有するガス状流体試薬の流れを生成する望ましい効果を提供するのに効果的である。説明したように容器から送達される試薬ガスの例は、例えば、毎分20、10、5、または2標準立方センチメートル(sccm)未満の流量といった低流量または非常に低い流量において、少なくとも3、4、5、7、または9の対数削減値の、ミクロンまたはサブミクロンスケールの粒子(例えば、30ミクロン、10、1、0.1、0.01、または0.003ミクロン、または特定のMPPS)の純度レベルを有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、試薬ガスを保管及び分配するための保管及び分配容器に関する。容器は、内部容積と、内部容積内の吸着剤と、内部容積内の試薬ガスとを含む。試薬ガスは、吸着剤に吸着された部分と、吸着された試薬ガスと平衡状態にある気体の試薬ガスとして存在する部分とを含む。容器は、内部容積と連通する出口と、内部容積と出口との間の流路内のフィルタとを含む。フィルタは多孔質焼結体を含む。
【0009】
本開示の他の実施形態は、本明細書の容器から試薬ガスを送達する方法に関する。
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態に係る以下の説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】容器から試薬ガスが供給される装置に記載されたように取り付けられた容器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、様々な修正形態及び代替形態への変更が可能であるが、その詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本開示の態様を、記載された特定の例示的な実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、本開示の思想及び範囲に含まれるすべての修正、同等物、及び代替物を網羅することを意図している。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、指示対象を単数で記載している場合、内容が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「または」は、概して、明確にそうでないとの記載がない限り、「及び/または」を含む意味で用いられる。
【0013】
「約」という用語は、概して、記載された値と同等であると考えられる(例えば、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入された数値が含まれる場合がある。
【0014】
終点(endpoints)を使用して表される数値の範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0015】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、異なる図面の同様の要素には同じ番号が付されている。必ずしも一定の縮尺ではない詳細な説明及び図面は、例示的な実施形態を示しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。描かれた例示的な実施形態は、例示としてのみ意図されている。反対のことが明確に述べられていない限り、任意の例示的な実施形態の選択された特徴を追加の実施形態に組み込むことができる。
【0016】
本開示は、試薬ガスを収容し、試薬ガスを容器から高純度レベルで送達するのに有用なガスを保管及び供給する容器に関する。いくつかの実施形態では、ガスを保管及び供給する容器は、試薬ガスを収容し、試薬ガスを容器から高純度レベルで送達するのに有用な吸着剤ベースの保管容器であり得る。他の実施形態では、ガスを保管及び供給する容器は、試薬ガスを収容し、試薬ガスを容器から高純度レベルで送達するのに有用な、圧力調整機能を有するガスを保管及び供給する容器であってもよい。本明細書において使用される用語「流体を保管及び分配する容器に関して圧力調整される」は、そのような容器が、少なくとも1つの圧力調整装置、設定圧力弁、または真空または圧力作動逆止弁を有することを意味し、それらは容器の内部容積に配置されるか、または容器及び/または容器のバルブヘッド内にあり、そのような各圧力調整に係る構成要素は、その圧力調整に係る構成要素のすぐ下流の流体流路内の流体圧力に応答するように適応されているとともに、圧力調整に係る構成要素の上流のより高い流体圧力に関連して、特定の下流において減圧状態で流体が流れることを可能にするために開くように適合されており、そのように開いたあとに、容器から排出された流体の圧力を特定の、すなわち「設定点」の圧力レベルに維持するように動作する。
【0017】
本明細書で説明される様々な実施形態によれば、ガスを保管及び供給する容器は、容器の内部に配置されたフィルタを含み、これにより、試薬ガスは容器の内部で様々な産業用途で有用な純度レベルで濾過された後、容器から送達されることが可能になり、そうした試薬ガスは、とりわけ、イオン注入プロセス、プラズマ堆積プロセスを含む半導体処理方法において使用することが可能である。場合によっては、この内部フィルタは、2次的な外部フィルタの使用を不要にする。換言すれば、容器は、外部フィルタを必要とせずに、その内部で試薬ガスを様々な産業用途で有用な純度レベルで濾過した後で、その試薬ガスを送達することができる。いくつかの実施形態では、容器は、大気圧以下、例えば、ほぼ大気圧以下であり得る内圧で試薬ガスを収容し、そのガスを、同じく大気圧以下の圧力またはほぼ大気圧以下となる圧力で送達することができる。
【0018】
本開示の様々な実施形態によれば、ガスを保管及び供給する容器は、試薬ガスを大気圧より低い圧力で保管することができる。大気圧より低い圧力で試薬ガスを保管するための容器は、様々な例が知られており、そうした例は本説明において有用であり得る。そのような例示的な容器は、容器の内部と出口を画定する概して剛性の側壁を含み、出口は、典型的には、容器の内部と外部との間の流れを制御するための弁を含む。容器の側壁は、容器に収容されるガスの推奨最大圧力を安全に超える圧力に耐えるように設計されている。内部は、試薬ガスを表面に吸着させることができる吸着剤材料を収容し、試薬ガスは、吸着された形態(吸着された試薬ガス、吸着剤表面に吸着されている)と、吸着されていない、ガス状(吸着された試薬ガスと平衡状態にある、容器内部に存在するガス状試薬ガス)の形態との両方の形態で、容器の内部に存在する。
【0019】
様々な実施形態に係るガスを保管及び供給する容器は、低圧、例えば、ほぼ大気圧(133322パスカル(1000トール)未満、特に101325パスカル(760トール)未満)、特に大気圧より低い圧力で試薬ガスを保管及び送達することができる。一般的に周囲温度を含む温度範囲(例えば、摂氏約0度から約30度または約40度の範囲)では、容器の内部はあまり加圧されない場合があり、好ましくは約1気圧を超えない圧力(絶対)、好ましくは、大気圧より低い圧力、例えば、101325パスカル(760トール)未満、例えば、66661.2パスカル(500トール)未満、または26664.5パスカル(200トール)、13332.2パスカル(100トール)、6666.12パスカル(50トール)、または1333.22パスカル(10トール)より低い圧力(絶対)である。容器が試薬ガスの取り扱い、保管、処理、輸送、または使用に用いられる場合の動作温度の例は、特定の関連する産業または用途において、ほぼ室温、例えば24℃であってもよく、例えば約20℃から約26℃の範囲であってもよく、この温度において、容器の内部圧力は大気圧より低いことが好ましい。しかしながら、本説明の容器及び方法は、必要に応じて、試薬ガスを著しく高い温度または著しく低い温度で使用、保持、保管、または処理する用途のために、より高い及びより低い操作温度でも有用であり得る。
【0020】
例示的な容器は、開閉可能なバルブを含み得る排出口など、試薬ガスを容器内部に選択的に追加または容器内部から除去することを可能にする開口部を含む。排出口でバルブに取り付けられるのは、圧力弁または流量測定装置などの流れまたは圧力を調節する機構であってもよい。例えば、容器は、開口部及び排出口において、試薬ガスが容器の内部から分配口及びバルブヘッドを通して分配されることを可能にするように開閉することができるバルブヘッドに連結されていてもよい。容器からの試薬ガスの流れを所望の圧力または流量にするために、圧力調整器、流量計、または他の流れを調整する装置が、容器内部に対して外側にあるバルブヘッドにあってもよい。これに変えて、またはこれに加えて、1つまたは複数の圧力調整器、流量計、または他の流量調整装置を、任意に、容器の開口部であるが容器の内側となる容器の内部に、接続してもよい。特定の実施形態によれば、容器の内部にある内部流量調節機構(圧力弁または流量計)は必須ではなく、本明細書の容器から省略してもよい。記載された容器及び方法の特定の例示的な実施形態によれば、流量調整機構は、1気圧未満の圧力で動作するように設計されてもよく、試薬ガスが大気圧より低い圧力で容器内部から除去されるように設計されてもよい。本明細書において一般に有用であり得るタイプのフローバルブ及び圧力バルブなどの流体供給容器及び付属品の例は、例えば、米国特許第6,132,492号及びPCT特許公開WO2017/008039(PCT/US2016/041578)に記載されており、これらの記載内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0021】
容器内部の吸着剤(別名、固相物理的吸着媒体)は、1つまたは複数の試薬ガスに対して収着親和性を有する任意の吸着剤であってもよい。吸着剤は、選択的に、例えば、可逆的に、試薬ガスを吸着剤に吸着及び脱着して、試薬ガスを次のようにするのに有用であってもよい。まず、試薬ガスを吸着剤に吸着させるように容器に送達される。次に、吸着された試薬ガス(容器内部においても脱離されたガス状の試薬ガスの量と平衡状態にある)を、ほぼ大気圧で、好ましくは大気圧より低い圧力で、閉鎖された容器内部に保管する。そして最終的に、試薬ガスが吸着剤から脱着され(例えば、真空下で)、好ましくはほぼ大気圧で、例えば、大気圧より低い圧力で、ガス状試薬ガスとして容器の開口部を通して容器から除去される。
【0022】
吸着剤は、現在知られているまたは将来開発されるいかなる吸着剤材料であってもよく、容器の特定の吸着剤は、容器に収容される試薬ガスの種類及び量、容器の容量、容器内に収容されるかまたは容器内に供給される吸着剤の所望の圧力、及び他の要因に依拠してもよい。様々な吸着剤材料が試薬ガス及び試薬ガスの保管技術において知られており、記載されているような容器内の吸着剤として有用であると理解されるであろう。吸着剤材料の特定の例は、米国特許第5,704,967号(その全体は参照により本明細書に組み入れられる)、米国特許第6,132,492号(前述)、及びPCT特許公開WO2017/008039(前述)にも記載されている。
【0023】
既に知られている、本明細書に記載の容器での使用に適する可能性のある吸着剤材料の非限定的な例には、微孔質テフロン(登録商標)、マクロレティキュレートポリマー、ガラスドメインポリマーなどのポリマー系吸着剤、リンケイ酸アルミニウム(ALPOS)、粘土、ゼオライト、金属有機フレームワーク(MOF)、多孔質シリコン、ハニカムマトリックス材料、活性炭及びその他の炭素材料、並びに、その他の同様の材料、が含まれる。炭素吸着剤材料のいくつかの例には、ポリアクリロニトリル、スルホン化ポリスチレン-ジビニルベンゼンなどの合成炭化水素樹脂の熱分解によって形成される炭素、セルロース系チャー、木炭、また、ココナッツの殻、ピッチ、木材、石油、石炭などの天然資源から形成された活性炭などが含まれる。
【0024】
記載される例示的な容器は、適切な吸着剤材料の層で実質的に満たされてもよい。吸着剤は、試薬ガスを吸着剤に効率的かつ可逆的に吸着して、大気圧より低い圧力で容器に保管するために、任意の形状、形態、サイズなどであってよい。吸着剤のサイズ、形状、及びその他の物理的特性(気孔率など)は、試薬ガスを吸着する吸着剤の容量、及び吸着剤の充填密度と隙間(間隙)体積に影響を与える可能性がある。これらの要素は、とりわけ試薬ガスの種類、吸着剤の種類、容器の動作温度及び圧力を含む保管容器システムの要素のバランスに基づいて選択することができる。吸着剤材料は、任意の適切なサイズ、形状、気孔率、サイズの範囲、及びサイズ分布を有することができる。有用な形状と形態の例には、ビーズ、顆粒、ペレット、タブレット、シェル、サドル、粉末、不規則な形状の微粒子、プレスされたモノリス、任意の形状及びサイズの押出物、布またはウェブ形態の材料、ハニカムマトリックスモノリス、及び(吸着剤と他の構成要素との)混合物、並びに、前述のタイプの吸着剤材料の細かく砕かれた形態または粉砕された形態が含まれる。
【0025】
容器は、吸着剤とともに容器の内部に配置されたフィルタを含み、このフィルタは、容器の内部から容器の出口につながる流路に配置されている。フィルタは、試薬ガスが容器の内部から外部に向けて、例えば、バルブを含み得る出口を通過するときに、ミクロンスケールまたはサブミクロンスケールの粒子を含む粒子状物質を試薬ガスから除去するフィルタである。容器は、工業用途で使用される様々な試薬ガスのうちの何れかを収容及び送達することができ、試薬ガスは、試薬ガスの様々な工業用途に必要とされる望ましい高純度レベルで送達される。
【0026】
高純度レベルの試薬ガスの使用例には、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ堆積、フォトリソグラフィ、クリーニング、及びドーピングが含まれ、これらの使用は、半導体、マイクロエレクトロニクス、光電池、及びフラットパネルディスプレイの装置及び製品の製造の一部である。試薬ガスの特定の用途、例えばプラズマ堆積法では、特に高レベルの純度が必要になる場合がある。本開示によれば、内部フィルタを含む容器は、プラズマ堆積法のような特に高純度の試薬ガスを必要とする目的を含む、これら目的のうち何れかのために試薬ガスを保管し、必要な純度レベルで試薬ガスを送達するために使用することができる。
【0027】
様々な実施形態によれば、本明細書に記載されるように、容器はフィルタを含む。フィルタは、容器の内部に配置することができ、また、容器の内部と容器の外部との間の流路に配置することができる。より具体的には、フィルタは、流路のバルブ入口に配置される。あるいは、フィルタは、弁座とバルブ出口との間のフィルタ経路に配置される。フィルタは、ねじ込み接続によってバルブ入口に取り付けることができ、また、場合によっては、バルブ入口にスタブ溶接することもできる。フィルタはフィルタハウジングまたは外郭を必要としない。フィルタは、比較的小さいサイズで、かつ、容器の内部に収容するのに便利な形状であるのが好ましいが、その場合も、試薬ガスを送達の間に容器からフィルタを通して低圧かつ比較的低い流量で、また、フィルタ全体での圧力降下が比較的低い状態で流すことにより、供給される試薬ガスの望ましいレベルの純度を提供するのに効果的である。
【0028】
有用なフィルタの例には、多孔質金属焼結体(多孔質焼結体とも呼ばれることもある)を含むか、または、多孔質金属焼結体からなるか、あるいは、本質的に多孔質金属焼結体からなるフィルタが含まれる。試薬ガスの濾過に効果的な多孔質焼結体の例は、容器の内部に配置された場合、比較的薄い外形(薄い厚さ)で、高い気孔率を有し、容器内部及び試薬ガスの流路内に配置するのに望ましい形状に形成できる。有用な形状の例は、平面状か、または、例えば、カップ、コーン、円柱、チューブ、または端部が閉じたチューブなどの三次元的な丸い形状のシート状膜の形態を含むが、これらに限定されない。多孔質焼結体は、厚さ、気孔率、表面積(BET)、及び正面面積の所望の組み合わせなど、本明細書に記載される使用と一致する物理的特性の組み合わせを示すことができる。
【0029】
一般的な事項として、記載されているような容器の内部でフィルタとして使用する多孔質焼結体は、比較的薄い外形(すなわち、薄い厚さ)で非常に多孔質であり得るが、その場合も、有用な流量及び圧力での試薬ガスの流れに対して望ましい除去効率で、濾過機能を発揮するのに効果的である。比較的薄いフィルタ本体は、他の点では同様であるもののより大きな厚さを有するフィルタの圧力降下と比較して、濾過中に本体全体で生じる圧力降下が比較的低いために、好ましい場合がある。圧力降下は、フィルタ本体の厚さに直接比例する。圧力降下も気孔率に指数関数的に比例するため、気孔率の高い焼結体は、気孔率の低い焼結体よりも好ましい(同等の除去効率が得られる場合)。
【0030】
より詳細には、記載されるように、フィルタ膜として使用するための多孔質焼結体は、比較的薄く、例えば、比較的小さい圧力降下で流れがフィルタを通ることができるように、大きさが比較的小さい厚さを有することができる。有用なまたは好ましい多孔質焼結体の例は、3ミリメートル未満、例えば2ミリメートル未満または1ミリメートル未満など、約0.2~約1.5または1.7ミリメートルの範囲のような厚さ(使用中にフィルタ膜を通過する試薬ガスの流れ方向における寸法)を有することができる。
【0031】
記載される多孔質焼結体は、記載されるような低圧かつ低流量で圧力降下が低い試薬ガスの流れを濾過するために、多孔質焼結体が本明細書に記載されるように有効になる任意の気孔率を有してもよい。例示的な多孔質焼結体は、比較的高い気孔率、例えば、少なくとも70パーセントの気孔率、例えば55~70パーセント、より特定的には55~65パーセント、さらにより特定的には550~60パーセントの範囲の気孔率を有することができる。本明細書で使用する場合、及び多孔質焼結体の技術分野において、多孔質焼結体の「気孔率」(空隙率とも呼ばれる)は、本体の総体積のパーセントとしての本体内の空隙(すなわち「空の」)空間の尺度であり、本体の総体積に対する本体の空隙の体積の割合として計算される。気孔率が0%の本体は完全に固体である。
【0032】
多孔質焼結体は、焼結体が記載されたようなフィルタとして効果的に使用することができる任意の表面積を有することができ、例えば、低流量で、低い圧力損失で、ほぼ大気圧かそれより低い圧力で、かつ、本明細書に記載されるような濾過効率で、試薬ガスの流れを濾過することができるような、任意の表面積を有することができる。多孔質体の技術で知られているように、表面積(BET)は、ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)、及びテラー(Teller)によって定義された理論を使用して計算された、本体の質量あたりの多孔質体の表面積を指し、これは、固体表面へのガス分子の物理的吸着を伴う。現在説明されている多孔質体に対する制限なしに、説明されている多孔質焼結体の現段階での好ましい表面積(BET)は、0.15~0.60平方メートル/グラムの範囲、0.15~0.50平方メートル/グラムの範囲のであってもよく、より具体的には0.15~0.25平方メートル/グラムであってもよい。これらの範囲とは異なる表面積(BET)の値も、特定の多孔質焼結体の他の構造的特徴、濾過されるガス流の特徴、望ましい粒子除去効率(LRVで測定される)の条件次第では有用であり得る。
【0033】
記載された多孔質焼結体で作られたフィルタ膜は、有用な前面領域を含むことができ、これは、容器からの試薬ガスの送達中に試薬ガスの流れが通過するフィルタ膜の領域のことを指す。フィルタの前面面積は、記載されているような他の性能の機能を実現するのに十分なほど高くなってもよく、こうした機能には、記載したような圧力降下の低さ、フィルタを通過する流体の低い流量(面積あたり)、及び望ましい除去効率(LRVにより測定される)が含まれる。例示的な多孔質焼結体は、平らなシートの形態か、あるいは、カップ、コーン、円柱、チューブ、または端部が閉じたチューブの形態などの三次元形状のフィルタ膜として構築することができる。有用なフィルタ本体の一例は円筒の形態を含むことができ、この円筒は、長さが2~5センチメートル(例えば、3~4.5センチメートル)の範囲であり、外径が0.5~1.1センチメートル(例えば、0.7~1.0センチメートル)の範囲であり、内径が0.3~0.8センチメートル(例えば、0.4~0.7センチメートル)の範囲であり、厚さが0.6~1.4ミリメートルの範囲、例えば、0.8~1.2ミリメートルの範囲であってもよい。
【0034】
多孔質焼結体の様々な例は、概して、フィルタ用途での使用のためにここまで記載されてきた。例えば、米国特許番号第5,814,272号、第6,964,8177号、第195,735号、第8,673,065号、及び米国特許出願公開第2012/0079940号及び第2013/0305673号を参照されたい。これらの各文書の全体は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載の多孔質焼結体の例は、これらの文書で特定された方法及び材料を含む方法及び材料から準備することができる。
【0035】
非常に一般的に、多孔質焼結体は、金属粉末粒子を混ぜたものを準備し、その金属粒子を混ぜたものを、必要に応じて金型内で、焼結して多孔質焼結体を形成することによって、準備することができる。粒子の特性は、気孔率、表面積などのような焼結体の所望の特性を得るために選択することができる。焼結とは、粒子の集まりが、その粒子の表面が互いに接触しながら、凝集によって粒子同士が機械的に結合できるが、それら粒子が液化しないような、温度と時間で加熱するプロセスを指す。必要に応じて、例えば有機バインダーなどの他の非金属材料を、例えば処理のために金属粉末粒子と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
より詳細には、金属粉末粒子は、強度(例えば、剛性)、気孔率、及び表面積などの焼結体に所望の特性を提供するように選択することができる。記載された多孔質焼結体を形成するのに有用であり得る金属粒子の組成及び特性の例は、上記特定された複数の米国特許文献に記載されている。特定の例には、プラチナ、クロム、ニッケルなどの金属または金属合金、またはステンレス鋼合金などそれらの合金を含む、高度に異方性の樹枝状金属粒子が含まれる(米国特許第5,814,272号を参照)。
【0037】
使用中に、容器から送達され、内部フィルタを通って流れる試薬ガスの量は、特定のプロセスでの使用(例えば、特定の半導体処理の装置またはプロセスでの使用)に望ましい量にすることができ、その場合にも、内部フィルタの望ましい効果(例えば、粒子保持)を提供される。半導体または派生製品(例えば、マイクロエレクトロニクス装置またはその前駆体)の処理に使用する試薬ガスの濾過における様々な用途では、フィルタを通る流体の流れ(時間あたりの流れの体積で表される)は約20または10標準立方センチメートル/分(sccm)未満にすることができ、例えば、5、2、1、または0.5sccm未満にすることができる。
【0038】
容器からの試薬ガスの送達中にフィルタを通って流れる試薬ガスは、比較的低い流量、望ましくは高いフィルタの気孔率、及び望ましくは小さなフィルタの厚さを含む要因に基づいて、圧力降下が比較的低いことが好ましい。説明されているフィルタの厚さ全体を通じた(フィルタの上流側とフィルタの下流側との間での)フィルタ使用時の圧力差(または「圧力降下」)は、濾過中に(例えば、流体の所与の流量で)望ましい有効性(例えば、粒子保持)が得られ、かつ、商業的に実現可能であれば、任意の圧力差にすることができる。本明細書の好ましい方法は、試薬ガスの流量を比較的低くして薄い厚さの多孔性の高いフィルタを使用することにより、比較的低い圧力差を実現することができる。半導体またはマイクロエレクトロニクス装置の処理に使用する試薬ガスの濾過と送達の様々な用途のために、フィルタ膜全体を通じた圧力差は、約13332.2パスカル(100トール)(差圧)未満、好ましくは約6666.12パスカル(50トール)、3999.67パスカル(30トール)、2666.45パスカル(20トール)、1333.22パスカル(10トール)未満、または約666.612パスカル(5トール)未満(差圧)であってもよく、その場合にも、フィルタを通る流体の有効な流れが実現される。
【0039】
送達中にフィルタを通る試薬ガスの流れの温度は、商業的に効果的な濾過及び試薬ガスの効果的な使用を可能にする任意の温度にすることができる。半導体またはマイクロエレクトロニクス装置の処理に使用するための化学試薬ガスの濾過の様々な用途では、温度はほぼ室温(例えば、摂氏30度)かそれより高くてもよく、例えば、少なくとも摂氏100、150、または200度であってもよい。
【0040】
記載したような、多孔質焼結体を含むか、本質的に多孔質焼結体からなるか、あるいは多孔質焼結体からなる例示的なフィルタは、ミクロンまたはサブミクロンサイズの粒子の所望のレベルの濾過を、様々な産業用途に必要な純度レベルで提供するのに効果的であり、こうした産業用途には、イオン注入やプラズマ堆積などの半導体製造プロセスに試薬ガスを提供する用途が含まれる。本明細書に記載されるように、フィルタは、ミクロンまたはサブミクロンスケールの粒子(例えば、30ミクロン、10、1、0.1、0.01、または0.003ミクロン、または特定の(MPPS))の高純度レベルで、純度レベルが少なくとも3、4、5、7、または9の対数減少値で、例えば、20、10、5、2、1、または0.5標準立方センチメートル/分(sccm)未満の流量などの低い流量、または非常に低い流量で、容器から送達される試薬ガスを供給することができる。本明細書で前述したように、対数減少値は、指定された粒子サイズに対する、指定された流量(またはガス速度)での濾過効率の尺度である。フィルタの最大浸透粒子径またはMPPSを決定するための方法論と手法は、K.W.Lee及びB.Y.H.Liuの「On the Minimum Efficiency and the Most Penetrating Particle Size for Fibrous Filters」(Journal of the Air Pollution Control Association Vol.30, Iss. 4, 1980)に記載されている。
【0041】
容器に収容され得る試薬ガスは、工業プロセスにおいて有用な任意のタイプの試薬ガスであり得る。多くの例は、有害、有毒、またはその他の安全上のリスクがあることが知られている危険な試薬ガスである。有毒及びその他の有害な特殊ガスは、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、プラズマ堆積、化学蒸着、フォトリソグラフィ、クリーニング、及びドーピングなど、様々な産業用途で使用されており、これらの用途は、半導体、マイクロエレクトロニクス、光電池、及びフラットパネルディスプレイの装置及び製品の製造の一部である。さらに、記載されたような容器または方法の使用は、他の用途及び他の産業で使用されるまたは有用な試薬ガスに適用することができ、特に高レベルの純度で提供されることが望ましい試薬ガスに適用することができる。
【0042】
記述された容器によって濾過され、都合よくかつ有用に収容されかつ供給される、危険、有毒、またはその他の危険な試薬ガスの非限定的な例には、シラン、メチルシラン、トリメチルシラン、水素、メタン、窒素、一酸化炭素、ジボラン、BP3、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、塩素、BCl3、BF3、B2D6、六フッ化タングステン、フッ化水素、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、シアン化水素、セレン化水素、テルル化水素、重水素化水素、トリメチルスチビン、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、及びフッ素)、NF3、ClF3、GeF4、SiF4、AsF5、AsH3、PH3、有機化合物、有機金属化合物、炭化水素などのガス状化合物、及び(CH3)3Sbなどの有機金属グループV化合物が含まれる。これらの化合物のそれぞれについて、すべての同位体が考慮される。
【0043】
図1は、例示的な保管及び分配システム100、並びに処理機器200を示す。処理機器200は、半導体またはマイクロエレクトロニクス装置を処理するためのシステム、例えば、イオン注入装置、プラズマ堆積装置、またはプラズマ発生器などの任意の有用なタイプの装置であってもよい。システム100は、導管220を介して容器102から機器200に試薬ガスを供給することができる。任意の構成として、流量測定装置、圧力弁、または圧力調整装置210は、システム100から機器200への試薬ガスの流れに影響を及ぼし、制御し、または測定するために導管220を備えてもよい。
【0044】
図1によって例示される実施形態では、保管及び分配システム100は容器102を含み、容器102は、その容器の内部106内に吸着剤材料108を含む。しかしながら、いくつかの代替となる実施形態では、容器102は、マサチューセッツ州ビレリカのエンテグリス社によって製造及び販売されているVAC(登録商標)真空作動シリンダなどの圧力調整容器であり得ることが一般的に理解される。
図1に示すように、側壁104は、外部に対して内部空間を画定する。上端112は、バルブ組立体114に開口部を含み、バルブ組立体114は、ねじ継手116、バルブ120、及びバルブ120を開閉するためのノブ118を含むことにより、容器102の内部と外部との間で試薬ガスの移動を可能にする。
【0045】
ガス状試薬ガス(具体的に番号は付していない)は、内部106にガス状試薬として存在し、吸着剤材料108の表面に物理的に吸着されている、吸着された試薬ガスと平衡状態にある。中空導管130は、バルブ120をフィルタ132に接続することにより、フィルタ132を通じて内部106との間に試薬ガスのための閉じた流路を提供し、容器102から分配するためのバルブ120に接続する。フィルタ132は、本明細書に記載されるように、記載されるような焼結体を含むか、本質的に焼結体からなるか、あるいは、焼結体からなる。導管130は、長さに沿って閉じられており、バルブ120の端部にある第1開口部と、フィルタ132の第2端部にある第2開口部とを含む。容器の内部106からの外部へ通過するために、試薬ガスは、フィルタ132、並びに導管130及びバルブ120を通過しなければならない。
【0046】
フィルタ132は、例えば、以下の表に挙げられた仕様を有してもよい。
【0047】
【表1】
使用中、試薬ガス(例えば、ガス状試薬ガス及び吸着された試薬ガス)は、圧力差脱着によって、すなわち、継手116を減圧源に接続してガス状試薬ガスをバルブ組立体114を通じて内部106の外側となる場所へ流すことによって、例示的な容器102から除去することができる。収容された試薬ガスは、任意の産業、特に半導体、マイクロエレクトロニクス、光電池、またはフラットパネルディスプレイの装置及び製品の製造で使用される、または有用な、任意の試薬ガス、特に危険な試薬ガスであってもよい。
【0048】
システム100は、半導体装置または材料、マイクロエレクトロニクス装置、光電池、フラットパネルディスプレイの装置、あるいは構成要素またはそれらの前駆体を処理するための原料として試薬ガスを使用する任意のシステムまたは機器(200)に接続されてもよく、システム、装置または器具は、例えば、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、フォトリソグラフィ、クリーニング、またはドーピングに使用される。
【0049】
説明したような容器の特定の例示的な使用方法によれば、容器は、プラズマ堆積法に有用な試薬ガスを収容することができ、機器200は、プラズマ発生器を含むプラズマ堆積を実行するための機器であってもよい。プラズマ堆積法は、一般的に、プラズマを使用して基板の表面改質または基板表面への材料の薄膜堆積を行うことを含むプロセスを指す。例示的なプラズマ堆積技術によれば、プラズマ発生器は、プラズマイオンを準備するために使用される。本記載によれば、プラズマ発生器は、プラズマを発生させるために、記載されたような容器から試薬ガスを供給されてもよい。例示的な方法では、本開示の容器によって(例えば、
図1に示されるように)供給される試薬ガスは、プラズマ堆積プロセスに試薬ガスを供給することができ、例えば、プラズマ発生器(例えば、
図1の機器200)に試薬ガスを送達することができる。また、例示的な方法によれば、プラズマ発生器によって生成されるプラズマは、例えば、イオン抽出及び加速を使用して、基板(ターゲット)を含む反応チャンバ(別名、プラズマ反応器)に向けられる。基板(ターゲット)はプラズマに暴露され、基板は(電気のような)バイアスをかけられて、プラズマのイオン成分が基板の表面に堆積するようになる。基板の例としては、シリコンウェハ及びインプロセスマイクロエレクトロニクス装置が含まれる。
【0050】
プラズマ堆積法の特定の例には、プラズマベースのイオン注入(PBII)、プラズマベースのイオン注入及び蒸着(PBIID)技術、プラズマ浸漬ドーピング、プラズマ支援ドーピングなどと呼ばれるものが含まれ、他にも、プラズマソースイオン注入(PSII)、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)、プラズマイオン注入(PII)、プラズマイオンプレーティング(PIP)などが含まれる。
【0051】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成及び使用できることを容易に理解するであろう。この文書によってカバーされる開示の多数の利点は、前述の説明で述べられている。しかしながら、この開示は、多くの点で、単なる例示であることが理解されるであろう。本開示の範囲を超えることなく、詳細、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関して変更を加えることができる。もちろん、開示の範囲は、添付のクレームが表現されている言語で定義されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
大気圧より低い内部圧力を有する内部容積を画定する容器壁と、
前記容器壁によって画定される前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内に収容される試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
ねじ込み接続によって前記バルブ入口に取り付けられたフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含む、ガス供給容器。
【請求項2】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
大気圧より低い内部圧力を有する内部容積を画定する容器壁と、
前記容器壁によって画定される前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内に収容される試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
前記バルブ入口に固定されたフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記フィルタは、三次元形状のカップ、コーン、円柱、チューブ、または端部が閉じたチューブである、フィルタと、
を備える、ガス供給容器。
【請求項3】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
大気圧より低い内部圧力を有する内部容積を画定する容器壁と、
前記容器壁によって画定される前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内に収容される試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
前記バルブ入口に固定されたフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記多孔質焼結体は長さが2~5センチメートルの円筒の形態を含む、ガス供給容器。
【請求項4】
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
大気圧より低い内部圧力を有する内部容積を画定する容器壁と、
前記容器壁によって画定される前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内に収容される試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している弁座を有する少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
前記弁座と前記バルブ出口との間に配置されるフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含む、ガス供給容器。
【請求項5】
前記フィルタは、20標準立方センチメートル/分の流量で、特定のMPPSにおいて少なくとも4の対数減少値を有し、13332.2パスカル(100トール)未満の圧力差を提供する、
請求項1~4のうち何れか一項に記載のガス供給容器。
【請求項6】
前記多孔質焼結体は、55~70パーセントの範囲の気孔率と、3ミリメートル未満の流体流れの方向における厚さとを有する、
請求項1~5のうち何れか一項に記載のガス供給容器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成及び使用できることを容易に理解するであろう。この文書によってカバーされる開示の多数の利点は、前述の説明で述べられている。しかしながら、この開示は、多くの点で、単なる例示であることが理解されるであろう。本開示の範囲を超えることなく、詳細、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関して変更を加えることができる。もちろん、開示の範囲は、添付のクレームが表現されている言語で定義されている。
<例1>
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
内部容積と、
前記内部容積内の吸着剤と、
前記内部容積内の試薬ガスであって、前記試薬ガスは、前記吸着剤に吸着された部分と、前記吸着された試薬ガスと平衡状態にあるガス状試薬ガスとして存在する部分とを含む、試薬ガスと、
バルブ入口及びバルブ出口を有して、前記内部容積と連通している少なくとも1つのバルブと、
前記内部容積と連通している出口と、
前記内部容積と前記出口との間の流路内にあるフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記フィルタは、20標準立方センチメートル/分の流量で、特定のMPPSにおいて少なくとも4の対数減少値を有する、
ガス供給容器。
<例2>
大気圧より低い内部圧力を有する、
例1に記載の容器。
<例3>
前記フィルタが前記バルブ入口に配置されている、
例1に記載の容器。
<例4>
前記フィルタが、10標準立方センチメートル/分の流速で、特定のMPPSにおいて少なくとも7の対数減少値を有する、
例1に記載の容器。
<例5>
前記多孔質焼結体が55~65パーセントの気孔率を有する、
例1~4のうち何れか1つに記載の容器。
<例6>
前記多孔質焼結体が、0.8~1.2ミリメートルの範囲の厚さを有する、
例1~5のうち何れか1つに記載の容器。
<例7>
前記多孔質焼結体が、1グラムあたり0.15~0.30平方メートルの範囲の表面積(BET)を有する、
例1~6のうち何れか1つに記載の容器。
<例8>
前記吸着剤が、金属有機骨格、多孔性有機ポリマー、及び活性炭から選択される、
例1~7のうち何れか1つに記載の容器。
<例9>
例1~8のうち何れか1つに記載の容器から試薬ガスを供給する方法であって、
前記容器から前記試薬ガスを送達することを含む、方法。
<例10>
試薬ガスを保管及び分配するためのガス供給容器であって、
内部容積と、
前記内部容積内に配置された少なくとも1つの圧力調整器と、
前記内部容積と連通しているバルブであって、バルブ入口及びバルブ出口を有する、バルブと、
前記内部容積と前記出口との間の流路内にあるフィルタであって、前記フィルタは多孔質焼結体を含み、前記フィルタは、20標準立方センチメートル/分の流量で、特定のMPPSにおいて少なくとも4の対数減少値を有する、
ガス供給容器。
<例11>
前記フィルタが前記バルブ入口に配置されている、
例10に記載の保管及び分配容器。
<例12>
前記フィルタが、10標準立方センチメートル/分の流速で、特定のMPPSにおいて少なくとも7の対数減少値を有する、
例10に記載の容器。
<例13>
前記多孔質焼結体が55~65パーセントの気孔率を有する、
例10~12のうち何れか1つに記載の容器。
<例14>
前記多孔質焼結体が、0.8~1.2ミリメートルの範囲の厚さを有する、
例10~13のうち何れか1つに記載の容器。
<例15>
前記多孔質焼結体が、1グラムあたり0.15~0.30平方メートルの範囲の表面積(BET)を有する、
例10~14のうち何れか1つに記載の容器。
<例16>
例10~15のうち何れか1つに記載の容器から試薬ガスを供給する方法であって、
前記容器から試薬ガスを送達することを含む、
方法。
【外国語明細書】