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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083912
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】複合酸化物及び紫外線検出装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/44 20060101AFI20220530BHJP
   C01G 45/00 20060101ALI20220530BHJP
   C01F 7/16 20220101ALI20220530BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20220530BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220530BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220530BHJP
   C09K 11/55 20060101ALI20220530BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20220530BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220530BHJP
   G01J 1/58 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C04B35/44
C01G45/00
C01F7/16
C04B41/87 Z
C09K11/08 J
C09K11/64
C09K11/55
C09K11/78
G01J1/02 G
G01J1/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195546
(22)【出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 道夫
(72)【発明者】
【氏名】津野 将弥
【テーマコード(参考)】
2G065
4G048
4G076
4H001
【Fターム(参考)】
2G065AA13
2G065AB05
2G065BA29
2G065BA39
2G065CA08
2G065DA10
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC08
4G048AE05
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB02
4G076AB09
4G076AC06
4G076BA38
4G076BD02
4G076CA11
4G076DA30
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA25
4H001XA38
4H001XA57
4H001XA58
(57)【要約】
【課題】紫外線の波長域を区別して検出すること。
【解決手段】複合酸化物は、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物を含み、300nm以下の波長の第1の電磁波が照射される場合と300nmより長い波長の第2の電磁波が照射される場合とで発光態様が異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物を含み、300nm以下の波長の第1の電磁波が照射される場合と300nmより長い波長の第2の電磁波が照射される場合とで発光態様が異なる複合酸化物。
【請求項2】
前記酸化物又は炭酸化物の混合物を焼成することによって得られる請求項1記載の複合酸化物。
【請求項3】
結晶相においてSrAl1219を主相とする請求項1又は2記載の複合酸化物。
【請求項4】
前記第1の電磁波が照射される場合に発光し、前記第2の電磁波が照射される場合に発光しない請求項1記載の複合酸化物。
【請求項5】
前記第1の電磁波が照射される場合と、前記第2の電磁波が照射される場合とで発光波長が異なる請求項1記載の複合酸化物。
【請求項6】
グリーンシートを焼成して得られるセラミック基板と、
前記セラミック基板上に配置される複合酸化物であって、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物を含み、300nm以下の波長の第1の電磁波が照射される場合に発光し、300nmより長い波長の第2の電磁波が照射される場合に発光しない複合酸化物と
を有することを特徴とする紫外線検出装置。
【請求項7】
前記複合酸化物は、
前記セラミック基板に印刷され、焼成されることを特徴とする請求項6記載の紫外線検出装置。
【請求項8】
前記複合酸化物は、
前記グリーンシートに印刷され、焼成されることを特徴とする請求項6記載の紫外線検出装置。
【請求項9】
前記第2の電磁波が照射される場合に発光する他の複合酸化物をさらに有することを特徴とする請求項6記載の紫外線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物及び紫外線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光より短波長の紫外線を検出する方法としては、紫外線が照射されると変色するフィルム状のラベルを用いる方法などがある。このラベルによれば、電源を必要とせずに比較的安価に紫外線を検出することができる。ただし、ラベルによる紫外線の検出では、定量性がないとともに、ラベルが一度変色すると元には戻らないため、繰り返して紫外線を検出することができない。
【0003】
一方、紫外線の検出器としては、例えば光電子倍増管又はフォトダイオードを使用して、紫外線を含む電磁波の強度を測定する各種の測定器がある。このような測定器は、例えばバッテリーなどの電源を必要とするものの、定量性が高く、測定可能な最短波長が例えば190nm程度のものもある。
【0004】
最近では、紫外線の殺菌効果やウイルス不活化効果が注目されており、紫外線を照射する装置などが普及しつつある。これに伴って、人体にも影響を及ぼす紫外線を正確に検出することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-083044号公報
【特許文献2】特表2008-523254号公報
【特許文献3】特開2004-349683号公報
【特許文献4】特開2003-151579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の紫外線検出では、紫外線の波長域が区別されておらず、殺菌効果及びウイルス不活化効果が高い波長域や、人体への影響が大きい波長域の紫外線の有無を検出するのが困難であるという問題がある。
【0007】
具体的には、一般に、紫外線とは波長が400nm以下の電磁波のことを指すが、紫外線には、波長が315~400nmのUV-A、波長が280~315nmのUV-B、及び波長が280nm以下のUV-Cなどが含まれる。そして、殺菌効果及びウイルス不活化効果が高いのはUV-Cであり、人体への影響が大きいのもUV-Cである。すなわち、例えば図9に示すように、殺菌効果があるのは曲線10が示す波長200~300nmの紫外線であり、UV-Cの殺菌効果が最も高くなっている。同様に、人体への影響があるのは曲線20が示す波長200~310nmの紫外線であり、UV-Cが人体に与える影響が最も大きくなっている。
【0008】
このように、比較的短波長のUV-Cが生物及びウイルスに大きな影響を及ぼすにも関わらず、従来の紫外線検出では、紫外線の波長域が区別されていないため、例えばUV-AとUV-Cとが混同されて照射の有無が検出されている。
【0009】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、紫外線の波長域を区別して検出することができる複合酸化物及び紫外線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願が開示する複合酸化物は、1つの態様において、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物を含み、300nm以下の波長の第1の電磁波が照射される場合と300nmより長い波長の第2の電磁波が照射される場合とで発光態様が異なる。
【発明の効果】
【0011】
本願が開示する複合酸化物及び紫外線検出装置の1つの態様によれば、紫外線の波長域を区別して検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1に係る焼結体の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、実施例及び比較例に係る焼結体の材料を示す図である。
図3図3は、実施例及び比較例に係る焼結体の発光色を示す図である。
図4図4は、実施例及び比較例に係る焼結体の発光の具体例を示す図である。
図5図5は、実施の形態2に係る紫外線検出装置の具体例を示す平面図である。
図6図6は、実施の形態2に係る複合酸化物の発光の具体例を示す図である。
図7図7は、実施の形態3に係る紫外線検出装置の構成を示す図である。
図8図8は、紫外線検出の具体例を説明する図である。
図9図9は、紫外放射による生物への影響度合いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願が開示する複合酸化物及び紫外線検出装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る焼結体の製造方法を示すフロー図である。この焼結体は、複数種類の酸化物が複合した複合酸化物であり、波長が300nmより長い電磁波が照射されても励起しないが、波長が300nm以下の電磁波が照射されると励起し、可視光領域(概ね400nm以上)の波長で発光する。すなわち、焼結体は、UV-Aが照射されても励起しないが、UV-Cが照射されると励起して発光する。
【0015】
焼結体を得るには、まず、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物又は炭酸化物が乾式混合される(ステップS101)。すなわち、例えば、酸化アルミニウム粉末、炭酸ストロンチウム粉末、酸化セリウム粉末及びランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末が乾式混合される。
【0016】
そして、乾式混合により得られた混合物が、例えば一軸加圧成形法により、柱状圧粉体に成形される(ステップS102)。この柱状圧粉体が焼成されることにより(ステップS103)、上述した焼結体が得られる。この焼結体の結晶相において主相となっているのは、SrAl1219である。
【0017】
以下に、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物を材料とする焼結体の実施例1、2と、その他の酸化物を材料とする焼結体の比較例1、2とを挙げて、焼結体の発光について具体的に説明する。
【0018】
[実施例1]
酸化アルミニウム粉末100重量部、炭酸ストロンチウム粉末12重量部、酸化セリウム粉末2.3重量部及びランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末2.3重量部を乾式混合して得られる混合物を、一軸加圧成形法により、径約5mmの柱状圧粉体に成形する。各酸化物成分のモル濃度はAl23が89.4モルパーセント、SrOが7.6モルパーセント、CeO2が1.2モルパーセント、La23が0.8モルパーセント、MnO2が1.0モルパーセントである。この柱状圧粉体を大気中1500℃で10時間焼成することにより、実施例1に係る焼結体が得られる。
【0019】
[実施例2]
実施例1と同様の柱状圧粉体をH2-N2還元雰囲気中1500℃で10時間焼成することにより、実施例2に係る焼結体が得られる。
【0020】
[比較例1]
酸化アルミニウム粉末100重量部、炭酸ストロンチウム粉末12重量部及び酸化セリウム粉末6.9重量部を乾式混合して得られる混合物を、一軸加圧成形法により、径約5mmの複数の柱状圧粉体に成形する。各酸化物成分のモル濃度はAl23が89.0モルパーセント、SrOが7.4モルパーセント、CeO2が3.6モルパーセントである。これらの柱状圧粉体の一部を大気中、残りをH2-N2還元雰囲気中、1500℃で10時間焼成することにより、比較例1に係る焼結体が得られる。
【0021】
[比較例2]
酸化アルミニウム100重量部、炭酸ストロンチウム41.2重量部及び酸化ユーロピウム7.4重量部を乾式混合して得られる混合物を、一軸加圧成形法により、径約5mmの複数の柱状圧粉体に成形する。各酸化物成分のモル濃度はAl23が76.6モルパーセント、SrOが21.8モルパーセント、Eu23が1.6モルパーセントである。これらの柱状圧粉体の一部を大気中、残りをH2-N2還元雰囲気中、1500℃で10時間焼成することにより、比較例2に係る焼結体が得られる。
【0022】
以上の実施例1、2及び比較例1、2に係る焼結体の材料について、図2に示す。実施例1、2に係る焼結体は、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物又は炭酸化物を材料とする。これに対して、比較例1に係る焼結体は、ランタン及びマンガンを含むランタンストロンチウムマンガン酸化物を材料に含まない。また、比較例2に係る焼結体は、セリウムを含む酸化セリウムと、ランタン及びマンガンを含むランタンストロンチウムマンガン酸化物とを材料に含まない代わりに、ユーロピウムの酸化物を材料に含む。
【0023】
これらの焼結体に、水銀ランプを光源とする紫外線照射を行った。照射される紫外線の波長は、UV-Aに属する365nmと、UV-Cに属する254nmとの2種類である。この結果、図3に示すように、各焼結体が異なる発光色で発光した。
【0024】
具体的には、実施例1に係る焼結体では、照射波長を365nmとするとほぼ発光がない一方で、照射波長を254nmとすると緑白色の強い発光が確認された。実施例2に係る焼結体では、照射波長を365nmとすると青白色の発光が確認された一方で、照射波長を254nmとすると緑白色の強い発光が確認された。
【0025】
このように、実施例1、2に係る焼結体は、UV-A及びUV-Cの照射下でそれぞれ異なる発光態様で発光した。つまり、実施例1、2に係る焼結体は、300nm以下の照射波長と300nmより長い照射波長とで発光態様が異なり、UV-Cが照射された場合に他の紫外線が照射された場合とは異なる可視光領域の波長で発光する。特に、大気焼成された実施例1に係る焼結体は、UV-A照射下ではほぼ発光しないにも関わらず、UV-C照射下では強く発光した。したがって、実施例1、2に係る焼結体を用いることにより、UV-Cの照射の有無を検出することが可能となる。
【0026】
これに対して、比較例1に係る大気焼成された焼結体では、照射波長を365nmとすると暗い赤色の発光が確認され、照射波長を254nmとしても同様に暗い赤色の発光が確認された。また、比較例1に係る還元焼成された焼結体では、照射波長を365nmとすると青白色の発光が確認され、照射波長を254nmとしても同様に青白色の発光が確認された。
【0027】
さらに、比較例2に係る大気焼成された焼結体では、照射波長を365nmとすると赤色の発光が確認され、照射波長を254nmとしても同様に赤色の発光が確認された。また、比較例2に係る還元焼成された焼結体では、照射波長を365nmとすると青白色の発光が確認され、照射波長を254nmとすると暗い青白色の発光が確認された。
【0028】
このように、比較例1、2に係る焼結体は、UV-A及びUV-Cの照射下で同様又は類似する発光色を示し、照射される紫外線の波長を区別して発光することはない。
【0029】
図4に、実施例1、2に係る焼結体及び比較例1、2に係る焼結体の発光の具体例を示す。図4(a)は、365nmの波長のUV-Aを照射する場合の焼結体の発光を示し、図4(b)は、254nmの波長のUV-Cを照射する場合の焼結体の発光を示す。また、図4(a)、(b)において、上段はそれぞれ大気焼成された焼結体の発光の状態を示し、下段はそれぞれ還元焼成された焼結体の発光の状態を示す。
【0030】
図4に示す通り、実施例1に係る大気焼成された焼結体は、UV-Aの照射下(図4(a))では発光しないが、UV-Cの照射下(図4(b))では強く発光する。また、実施例2に係る還元焼成された焼結体は、UV-Aの照射下(図4(a))よりもUV-Cの照射下(図4(b))でより強く発光する。このため、これらの焼結体によれば、UV-Cの照射の有無を可視光領域の波長の発光によって特異的に確認することが可能となる。一方、比較例1、2に係る焼結体は、大気焼成及び還元焼成の焼成方法に関わらず、UV-Aの照射下(図4(a))でもUV-Cの照射下(図4(b))でも発光の強度が類似しており、UV-Cの照射の有無を特異的に確認することは困難である。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物又は炭酸化物を材料とする複合酸化物であり、300nm以下の波長の紫外線が照射された場合に300nmより長い波長の紫外線が照射される場合と異なる発光態様で発光する焼結体が得られる。このため、生物及びウイルスへの影響が大きいUV-Cの照射の有無を可視光領域の波長の発光により目視で確認することができ、紫外線の波長域を区別して検出することができる。
【0032】
なお、上記実施の形態1の実施例1、2に示した複合酸化物の各酸化物成分のモル濃度は、一例に過ぎない。各酸化物成分のモル濃度は適宜変更することが可能であり、例えば酸化アルミニウムのモル濃度を84.9以上93.8以下モルパーセント、酸化ストロンチウムのモル濃度を7.2以上8.0以下モルパーセント、酸化セリウムのモル濃度を1.1以上1.3以下モルパーセント、酸化ランタンのモル濃度を0.8以上0.9以下モルパーセント、酸化マンガンのモル濃度を1.0以上1.1以下モルパーセントの範囲でそれぞれ変更しても良い。
【0033】
(実施の形態2)
上記実施の形態1においては、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物の混合物を焼成して得られる焼結体を用いてUV-Cを検出するものとしたが、この複合酸化物をペースト状にして、通常のセラミック等に印刷することも可能である。そこで、実施の形態2においては、複合酸化物が印刷された焼結体を用いてUV-Cを検出する場合について説明する。
【0034】
図5は、実施の形態2に係る紫外線検出装置の具体例を示す平面図である。図5に示すように、紫外線検出装置は、セラミック基板110の表面に、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンを含む複合酸化物120が印刷された構成を有する。
【0035】
セラミック基板110は、例えば酸化アルミニウムを主成分とするグリーンシートを焼成して得られるセラミックの基板である。セラミック基板110としては、可能な限り純度が高い酸化アルミニウムセラミックとするのが望ましい。
【0036】
複合酸化物120は、セラミック基板110と同様に、例えば酸化アルミニウムを主成分とし、酸化アルミニウムの他に、炭酸ストロンチウム、酸化セリウム及びランタンストロンチウムマンガン酸化物を成分として含む。複合酸化物120は、概ね300nm以下の波長の電磁波によって励起され、UV-C以下の波長の紫外線照射下で例えば緑白色に強く発光する。
【0037】
図5に示す紫外線検出装置の製造方法としては、セラミック基板110の材料であるグリーンシートに複合酸化物120のペーストを印刷して焼成する第1の方法と、焼成されて得られるセラミック基板110に複合酸化物120のペーストを印刷して再度焼成する第2の方法とがある。
【0038】
具体的に、第1の方法では、酸化アルミニウム粉末100重量部、炭酸ストロンチウム粉末12重量部、酸化セリウム粉末2.3重量部及びランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末2.3重量部を乾式混合し、ペースト用ビークルを添加及び混錬して複合酸化物120のペーストを得る。このペーストを酸化アルミニウムが99.9重量パーセント以上の無機組成のグリーンシート上に、例えば約15mm径のパッド状に印刷して乾燥させる。そして、ペーストが印刷されたグリーンシートを大気中1500℃で10時間焼成することにより、図5に示したような紫外線検出装置が得られる。
【0039】
また、第2の方法では、第1の方法と同様に複合酸化物120のペーストを得る。そして、酸化アルミニウムが99.9重量パーセント以上の無機組成のグリーンシートを焼成して得られるセラミック基板110上に、上記のペーストを例えば約15mm径のパッド状に印刷して乾燥させる。そして、ペーストが印刷されたセラミック基板110を大気中1500℃で10時間焼成することにより、図5に示したような紫外線検出装置が得られる。
【0040】
このようにして得られる紫外線検出装置に、水銀ランプを光源とする紫外線照射を行った。照射される紫外線の波長は、UV-Aに属する365nmと、UV-Cに属する254nmとの2種類である。この結果、図6に示すように、第1の方法で得られた紫外線検出装置の複合酸化物120aと、第2の方法で得られた紫外線検出装置の複合酸化物120bとは、UV-A及びUV-Cの照射下で異なる発光態様で発光した。図6(a)は、365nmの波長のUV-Aを照射する場合の複合酸化物120a、120bの発光を示し、図6(b)は、254nmの波長のUV-Cを照射する場合の複合酸化物120a、120bの発光を示す。
【0041】
図6に示す通り、第1の方法で得られた紫外線検出装置の複合酸化物120aは、UV-Aの照射下(図6(a))では発光しないが、UV-Cの照射下(図6(b))では強く発光する。また、第2の方法で得られた紫外線検出装置の複合酸化物120bも同様に、UV-Aの照射下(図6(a))では発光しないが、UV-Cの照射下(図6(b))では強く発光する。なお、当然ながら、UV-A及びUV-Cいずれの照射下においても、セラミック基板110は発光しない。このように、これらの紫外線検出装置によれば、UV-Cの照射の有無を複合酸化物120における可視光領域の波長の発光によって特異的に確認することが可能となる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物又は炭酸化物を材料とする複合酸化物のペーストがセラミック基板に印刷された紫外線検出装置が得られる。そして、複合酸化物の印刷部分が、300nm以下の波長の紫外線が照射された場合に300nmより長い波長の紫外線が照射される場合と異なる発光態様で発光する。このため、生物及びウイルスへの影響が大きいUV-Cの照射の有無を可視光領域の波長の発光により目視で確認することができ、紫外線の波長域を区別して検出することができる。
【0043】
(実施の形態3)
上記実施の形態2においては、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンを成分とする複合酸化物のペーストをセラミック基板に印刷してUV-Cの照射の有無を検出した。実施の形態3においては、このセラミック基板にさらに他の複合酸化物のペーストを印刷することにより、可視光及びUV-Aの照射の有無を検出する場合について説明する。
【0044】
図7は、実施の形態3に係る紫外線検出装置の構成を示す図である。図7において、図5と同じ部分には同じ符号を付す。図7に示すように、紫外線検出装置は、セラミック基板110の表面に、複合酸化物120、130、140が印刷された構成を有する。
【0045】
セラミック基板110は、例えば酸化アルミニウムを主成分とするグリーンシートを焼成して得られるセラミックの基板である。セラミック基板110としては、可能な限り純度が高い酸化アルミニウムセラミックとするのが望ましい。
【0046】
複合酸化物120は、セラミック基板110と同様に、例えば酸化アルミニウムを主成分とし、酸化アルミニウムの他に、炭酸ストロンチウム、酸化セリウム及びランタンストロンチウムマンガン酸化物を成分として含む。複合酸化物120は、概ね300nm以下の波長の電磁波によって励起され、UV-C以下の波長の紫外線照射下で例えば緑白色に強く発光する。
【0047】
複合酸化物130は、セラミック基板110と同様に、例えば酸化アルミニウムを主成分とし、酸化アルミニウムの他に、酸化セリウムを成分として含む。複合酸化物130は、概ね400nm以下の波長の電磁波によって励起され、UV-A以下の波長の紫外線照射下で例えば青白色に発光する。
【0048】
複合酸化物140は、セラミック基板110と同様に、例えば酸化アルミニウムを主成分とし、酸化アルミニウムの他に、酸化イットリウム及び酸化セリウムを成分として含む。複合酸化物140は、概ね450nm以下の波長の電磁波によって励起され、可視光及びUV-A以下の波長の紫外線照射下で例えば黄色に発光する。
【0049】
次いで、上記のように構成された紫外線検出装置による紫外線検出について、図8を参照しながら説明する。
【0050】
紫外線検出装置には、それぞれ異なる波長の電磁波によって励起され発光する複合酸化物120、130、140が印刷されている。そして、例えば図8(a)に示すように、いずれの複合酸化物120、130、140も発光していない場合には、波長が450nm未満の可視光及び紫外線が紫外線検出装置に照射されていないと判断することが可能である。
【0051】
また、例えば図8(b)に示すように、複合酸化物140のみが発光し、複合酸化物120、130が発光していない場合には、波長が450nm未満の可視光が紫外線検出装置に照射されているものの、UV-A以下の波長の紫外線は紫外線検出装置に照射されていないと判断することが可能である。
【0052】
また、例えば図8(c)に示すように、複合酸化物130、140が発光し、複合酸化物120のみが発光していない場合には、UV-Aが紫外線検出装置に照射されているものの、UV-C以下の波長の紫外線は紫外線検出装置に照射されていないと判断することが可能である。
【0053】
また、例えば図8(d)に示すように、複合酸化物120、130、140すべてが発光している場合には、UV-C以下の波長の紫外線が紫外線検出装置に照射されていると判断することが可能である。
【0054】
このように、紫外線検出装置は、3つの複合酸化物120、130、140の発光状態により、可視光、UV-A及びUV-Cを区別して照射の有無を検出することができる。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン及びマンガンの酸化物又は炭酸化物を材料とする複合酸化物を含む励起波長がそれぞれ異なる複数の複合酸化物をセラミック基板に印刷して紫外線検出装置を構成する。そして、紫外線検出装置に照射される電磁波の波長に応じてそれぞれの複合酸化物が発光する。このため、生物及びウイルスへの影響が大きいUV-Cを含む紫外線の照射の有無を可視光領域の波長の発光により目視で確認することができ、紫外線の波長域を区別して検出することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態3においては、セラミック基板110に複合酸化物120、130、140のペーストを印刷することにより紫外線検出装置を構成するものとした。しかし、複合酸化物120、130、140それぞれを焼成して焼結体とし、各焼結体を例えば樹脂によって接着することにより、紫外線検出装置を構成しても良い。
【符号の説明】
【0057】
110 セラミック基板
120、120a、120b、130、140 複合酸化物
図1
図2
図3
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図7
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図9