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特開2022-83995ガラス板用合紙、ガラス板積層体およびガラス板梱包体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022083995
(43)【公開日】2022-06-06
(54)【発明の名称】ガラス板用合紙、ガラス板積層体およびガラス板梱包体
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/30 20060101AFI20220530BHJP
   B65D 57/00 20060101ALI20220530BHJP
   B65D 85/48 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
D21H27/30 Z
B65D57/00 B
B65D85/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187432
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020195392
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 剛直
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真之
(72)【発明者】
【氏名】細野 恵嗣
(72)【発明者】
【氏名】石田 渉
【テーマコード(参考)】
3E066
3E096
4L055
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066CA03
3E066HA05
3E066JA13
3E066KA20
3E066MA01
3E066NA30
3E096AA06
3E096AA15
3E096BA24
3E096BB05
3E096CA21
3E096DA03
3E096EA06X
3E096FA10
3E096GA11
4L055AA02
4L055AC06
4L055CB15
4L055CD01
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA15
4L055EA16
4L055EA27
4L055EA34
4L055EA40
4L055FA11
4L055GA05
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】ディスプレイの高精細化に対応して、ガラス板へのパーティクルの付着を低減し、かつガラス板表面の傷の発生を抑制できるガラス板用合紙の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、厚さが30μm以上150μm以下であり、ガラス板用合紙の少なくとも一方の主面の平滑度が20秒以上であり、圧縮弾性率Kが1.0MPa以上8.5MPa以下であることを特徴とするガラス板用合紙、ガラス板積層体およびガラス板梱包体に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが30μm以上150μm以下のガラス板用合紙であって、
前記ガラス板用合紙の少なくとも一方の主面の平滑度は20秒以上であり、
前記主面で測定した圧縮弾性率Kが1.0MPa以上8.5MPa以下である、ガラス板用合紙。
【請求項2】
前記主面の算術平均高さSaは2.5μm以上である、請求項1に記載のガラス板用合紙。
【請求項3】
前記主面の最大高さSzは45μm以上である、請求項1または2に記載のガラス板用合紙。
【請求項4】
前記ガラス板用合紙の密度が0.4(g/cm)以上1.6(g/cm)以下であり、
前記主面の平滑度が20秒以上400秒以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項5】
前記ガラス板用合紙のシート抵抗が5.0×1010(Ω/□)以上5.0×1013(Ω/□)以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項6】
前記圧縮弾性率K(MPa)と、前記ガラス板用合紙に含まれる平均径が10μm以上50μm以下であり粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)との積である、硬質異物耐性値KNが35.0以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項7】
前記圧縮弾性率K(MPa)と、前記ガラス板用合紙に含まれる平均径が10μm以上50μm以下であり粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)との積である、硬質異物耐性値KNが15.0以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項8】
前記主面はガラス板の電子回路形成面と接する面である、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラス板用合紙。
【請求項9】
少なくとも2枚以上のガラス板が積層されたガラス板積層体であって、前記ガラス板積層体はガラス板とガラス板との間に、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラス板用合紙を有するガラス板積層体。
【請求項10】
請求項9に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を載置するパレットとを有するガラス板梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板用合紙、ガラス板積層体、およびガラス板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light-Emitting Diode)等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス板では、ガラス板表面に対して微細な電子部材等が形成されるため、表面の僅かな傷や汚れが、断線等の不良の原因となる。そのため、ガラス板の表面には高い清浄度が求められている。
【0003】
ガラス板は、輸送効率を高める目的で、ガラス板を複数重ねた状態で輸送される。この時、ガラス板とガラス板の間にガラス板用合紙(以下、「合紙」ともいう)を介在させ、輸送中にガラス板表面に傷等がつくことを防止している。
【0004】
しかし、ガラス板は、その表面が合紙に圧接された状態で積層されるため、ガラス板の表面に、合紙から発生した紙粉や異物等のパーティクルが付着したり、主に合紙中の無機異物によってガラス板の表面に傷が付くおそれがある。そのため、ガラス板の表面にパーティクルが付着しにくく、ガラス板に生じる傷を抑制できるガラス板用合紙が求められる。
【0005】
特許文献1では、硬化処理部と非硬化処理部とを有するガラス板用合紙が開示されており、硬化処理部の平滑度を20秒以上とすることによってパーティクルの発生を抑制しようとしている。また、特許文献2では、平滑度を70秒以上とすることで、ガラス板に対する傷付けを低減しようとしている。
【0006】
しかし、近年ディスプレイの高精細化に伴い、従来よりもガラス板の表面に形成される配線の幅やピッチが微細化しており、ガラス板の表面に要求される品質が高くなっている。そのため、例えば特許文献1や2のガラス板用合紙を用いても、ガラス板へのパーティクルの付着や、ガラス板表面に生じた傷によって、ガラス板上の配線が断線する等の問題が生じるようになってきており、ガラス板用合紙の品質を向上させる必要があった。
そこで、上記従来技術以外にも、ガラス板表面に生じる傷を抑制するガラス板用合紙が多々提案されている。その一例として、特許文献3に開示された所定のモース硬度以上の鉱物の含有量を規定したガラス板用合紙が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-034843号公報
【特許文献2】特開2016-035125号公報
【特許文献3】特開2016-006240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、高精細なディスプレイに用いるガラス板である場合、所定のモース硬度以下の異物のみが存在している合紙を使用したとしても問題となるおそれがあった。発明者らが鋭意研究したところ、たとえ所定のモース硬度以下の異物のみが存在している場合であっても、それらの異物の粒子強度が大きいためにガラス板に傷が生じる場合があり得ることを見出した。
【0009】
本発明は、ディスプレイの高精細化に対応して、ガラス板へのパーティクルの付着を低減し、かつガラス板表面の傷の発生を抑制できるガラス板用合紙の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明にかかるガラス板用合紙は、厚さが30μm以上150μm以下であり、前記ガラス板用合紙の少なくとも一方の主面の平滑度が20秒以上であり、前記主面で測定した圧縮弾性率Kが1.0MPa以上8.5MPa以下であることを特徴とする。
(2)前記主面の算術平均高さSaは2.5μm以上である、(1)に記載のガラス板用合紙。
(3)前記主面の最大高さSzは45μm以上である、(1)または(2)に記載のガラス板用合紙。
(4)前記ガラス板用合紙の密度が0.4(g/cm)以上1.6(g/cm)以下であり、前記主面の平滑度が20秒以上400秒以下である(1)~(3)のいずれかに記載のガラス板用合紙。
(5)前記ガラス板用合紙のシート抵抗が5.0×1010(Ω/□)以上5.0×1013(Ω/□)以下である、(1)~(4)のいずれかに記載のガラス板用合紙。
(6)前記圧縮弾性率K(MPa)と、前記ガラス板用合紙に含まれる平均径が10μm以上50μm以下であり粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)との積である、硬質異物耐性値KNが35.0以下である(1)~(5)のいずれかに記載のガラス板用合紙。
(7)前記圧縮弾性率K(MPa)と、前記ガラス板用合紙に含まれる平均径が10μm以上50μm以下であり粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)との積である、硬質異物耐性値KNが15.0以下である(1)~(6)のいずれかに記載のガラス板用合紙。
(8)前記主面はガラス板の電子回路形成面と接する面である、(1)~(7)のいずれかに記載のガラス板用合紙。
(9)少なくとも2枚以上のガラス板が積層されたガラス板積層体であって、前記ガラス板積層体はガラス板とガラス板との間に、(1)~(8)のいずれかに記載のガラス板用合紙を有するガラス板積層体。
(10)(9)に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を載置するパレットとを有するガラス板梱包体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスプレイの高精細化に対応して、ガラス板へのパーティクルの付着や、ガラス板表面の傷の発生を抑制できるガラス板用合紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、モース硬度と粒子強度の関係を示す図である。
図2図2は、ガラス板用合紙の製造方法の一実施形態を示す概念図である。
図3図3は、ガラス板を載置するパレットの一実施形態を示す断面図である。
図4図4は、ガラス板梱包体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るガラス板用合紙の好ましい実施形態について説明する。以下に示す実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、ガラス板のことをガラス基板とも表現する。
【0014】
ガラス板は、輸送効率の観点から、少なくとも2枚以上のガラス板を積層させ、パレットに載置した状態で輸送される。少なくとも2枚以上のガラス板を積層したものをガラス板積層体といい、ガラス板積層体をパレットに載置したものをガラス板梱包体という。
【0015】
ガラス板積層体において、ガラス板同士が接触すると、ガラス板の表面に傷が生じるおそれがある。このような傷がガラス板の電子回路形成面に生じた場合、断線等の問題を引き起こすことが知られている。そこで、ガラス板とガラス板との間にガラス板用合紙を介在させることで、ガラス板の電子回路形成面に傷が生じることを防止している。
【0016】
しかし、ガラス板の保管中や輸送中に、合紙から発生したパーティクルが付着したり、主に合紙中の無機異物によってガラス板の表面に傷が付いたりするおそれがある。近年ディスプレイの高精細化に伴い、従来よりもガラス板の表面に形成される配線の幅やピッチが微細化しており、ガラス基板の表面に要求される品質が高くなっている。そのため、従来問題とならなかったガラス板用合紙を用いても、ガラス板上の配線が断線する等の問題が生じるようになってきた。
【0017】
本発明者らは、合紙の平滑度を一定以上とすることによって、高精細なディスプレイであっても、パーティクルの付着による不具合を抑制できることを見出した。しかし、合紙の平滑度を大きくしてパーティクルの付着量を低減した場合であっても、ガラス板表面に生じる傷が問題となることがあった。そのため、パーティクルの付着を抑制し、かつガラス板表面の傷の発生を抑制することが求められる。
【0018】
そこで本発明者らは、断線等の不良の発生原因となる傷について調査した。その結果、平均径10μm以上であって、粒子強度Cが、15(MPa)以上である異物が原因であることを見出した。その中でも特に平均径が10μm以上50μm以下であって、粒子強度Cが15(MPa)以上である異物によって生じる傷は、従来では問題とならないものが多かった。しかし、ディスプレイの高精細化に伴いガラス基板の表面に要求される品質が高くなった結果、これらの異物によって生じる傷も問題となってきたと考えられる。
【0019】
なお、平均径が10μm未満の異物であれば、ガラス板用合紙に埋没しやすいため、ガラス板を傷付ける原因となり難いと考えられる。また、粒子強度Cが15(MPa)未満の異物であれば、前記異物がガラス板に押し込まれたとしても傷付け難いと考えられる。また、仮に傷が付いた場合でも、そのサイズが小さいため、断線不良等を引き起こし難いと考えられる。そのため、合紙に含まれる、平均径が10μm以上50μm以下であって、かつ粒子強度Cが15(MPa)以上の異物を低減するよう制御した合紙とすることが重要である。
【0020】
合紙中の異物は、合紙の原料となるパルプや、合紙の製造装置から発生した塵や、合紙の生産工程で使用する水中に、不純物として含まれており、フィルター等によって取り除かれない場合に合紙に混入する。また、ガラス板用合紙以外の合紙を生産する工程で添加物として加えているものが配管中や通紙時に接触するロール表面などに残り、ガラス板用合紙生産時に合紙表面に付着する等の理由によっても異物が混入し、この混入する異物の中には粒子強度Cが15(MPa)以上の異物も存在しうる。そのため、平均径が10μm以上50μm以下であって、かつ粒子強度Cが15(MPa)以上の異物を完全になくすことは困難である。
【0021】
そこで発明者らは、合紙のクッション性に着目した。合紙のクッション性は、合紙の厚さ方向の圧縮弾性率K(MPa)で定義される。圧縮弾性率K(MPa)の値が小さいほどクッション性が高く、値が大きくなるほどクッション性が低いことを意味する。発明者らが鋭意研究したところ、クッション性が高い合紙であるほど、合紙に平均径が10μm以上50μm以下であって、かつ粒子強度Cが15(MPa)以上の異物が混入している場合であっても傷を抑制できることを見出した。
【0022】
これは、ガラス板を積層した際に、合紙のクッション性が高いほど、異物が合紙中に埋没しやすくなるため、平均径が10μm以上50μm以下であって、かつ粒子強度Cが15(MPa)以上の異物に起因する傷が低減するためであると考えられる。
【0023】
(原料パルプ)
原料パルプの種類は特に限定されないが、合紙として求められる特性を有するものが好適に使用される。例えばクラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ:砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ:その中間的な機械的・化学的パルプとしてのケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の半化学パルプ:ケナフ、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、麻等を原料とする非木材繊維パルプ:合成パルプ、合成繊維、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。パルプは晒でも未晒であってもよく、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)が利用できる。またカーボンナノファイバー(CNF)を含んでいてもよい。これらの原料パルプは、古紙パルプであっても、バージンパルプであっても、古紙パルプとバージンパルプとの混合物であってもよい。パーティクルや異物によるガラス板の汚染や傷を特に抑制するためには、漂白処理が施されたLBKPやNBKPが特に好ましく、またサイクロンクリーナーやフローテータなどにより異物の除去を行ったパルプがさらに好ましい。パルプ中の異物とは、パルプ中に含まれる繊維分以外をいう。パルプ中には例えばSiC、ZrO、Al、TiO、SiO、Fe、Fe、Cr、Ni、CaF、MgO、CaCO、Al、Cu等の化合物およびそれらの合金、芳香族ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、エポキシ等の樹脂といった異物が混入している場合がある。これらは樹木の伐採からパルプチップ製造パルプ化の工程を経る中で、鉱物や装置から混入すると考えられる。
【0024】
(ガラス板用合紙の製造方法)
図2に示したガラス板用合紙の製造方法の一実施形態を示す概念図を用いてガラス板用合紙の製造方法を説明する。
【0025】
ガラス板用合紙の製造装置100において、ガラス板用合紙の原料スラリー(パルプを水で希釈し、離解したスラリー状の液体)は叩解された後、ヘッドボックス112から、ワイヤパート114に設置された下ワイヤ116の上に、シート状に供給される。下ワイヤ116に供給された原料スラリーは、次いで、下ワイヤ116と上ワイヤ118とによって挟み込まれることにより、均一の厚さに広げられ、かつ脱水されて、湿紙(紙)となる。
【0026】
ワイヤパート114の下ワイヤ116および上ワイヤ118は、無端帯状に形成された透過膜である。具体的には、プラスチックまたは金属材料で作られた網、もしくは、天然繊維または合成繊維からなるフェルト製の無端帯である。
下ワイヤ116および上ワイヤ118は、複数のローラに掛け渡されて、モータ(図示を省略)の駆動力を、複数のローラの中の駆動ローラに伝達することにより、所定の速度で周回移動されている。
【0027】
ワイヤパート114で形成された湿紙は、プレスローラ、無端帯状のフェルト、およびプレスローラ対等を有するプレスパート120に輸送され、ここで、さらなる脱水とプレスとが行われる。
【0028】
プレスパート120を通過した湿紙は、複数本のローラで構成されるドライヤパート124に輸送され、ドライヤパート124を通過中に、例えば約120℃の雰囲気で乾燥される。
【0029】
ドライヤパート124を通過する際、湿紙をそのまま高速で輸送すると紙切れのおそれがあるため、カンバスと呼ばれる補助部材を湿紙に接触させた状態で輸送する。
【0030】
ドライヤパート124で乾燥された紙は、カレンダパート126に輸送され、カレンダロールによる挟持輸送等によって、紙に所定の線圧を加えることで表裏面が平滑化される。カレンダ処理においてはソフトカレンダ、ハードカレンダ、スーパーカレンダ、熱カレンダ等の各種カレンダリングを使用でき、オンラインに限らず、オフラインにて使用してもよい。また多段ニップとしてもよい。なお、必要に応じて、ドライヤパート124とカレンダパート126との間にコーターパートを設け、平滑化された紙の表面に塗料等を塗布してもよい。
【0031】
カレンダパート126においてカレンダ処理を施された紙は、ガラス板用合紙としてリール128に巻き取られ、ロール状(以下、ジャンボロール130とする)にされる。
【0032】
ジャンボロール130とされたガラス板用合紙は、通常、例えば、製品に応じた幅に切断されて、巻き取られ、8000m~10000m程度の所定長の長尺なガラス板用合紙を巻回した合紙ロール42とされる。
【0033】
ガラス板用合紙は、ジャンボロール130から送り出され、カッタ134によって所定幅に切断(長手方向に切断)され、ワインダ136によって巻き取られる。ジャンボロール130から送り出されたガラス板用合紙が、所定の長さになった時点で、カッタ134によって所定長さに切断(幅方向に切断)されて、所定の幅で、長尺なガラス板用合紙を巻回してなる合紙ロール42とされる。
【0034】
合紙ロール42に巻回された長尺なガラス板用合紙は、積層するガラス板に応じたサイズのカットシート状(矩形状)に切断され、積層されるガラス板の間に介在される。
【0035】
(合紙の厚さ)
合紙の厚さは、JIS P8118:2014で規定される紙厚さ測定に準拠して測定できる。測定には、例えば自動昇降式紙厚計(熊谷理機工業製、TM-600)を用いることができる。
【0036】
ここで、合紙が薄すぎると、合紙のクッション性が高い場合であっても合紙中に異物が埋没しないため、傷が生じやすくなる。また、合紙の強度が弱くなるため、合紙製造時に紙切れ等の不具合が生じやすくなり、生産効率が低下する。そのため、本発明のガラス板用合紙の厚さは30μm以上であり、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましい。また、合紙が厚すぎると、合紙の体積や重量が増加するため、パレットに積層できるガラス板の枚数が少なくなってしまう。そのため、本発明のガラス板用合紙の厚さは、150μm以下であり、140μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。
【0037】
(圧縮弾性率)
本発明のガラス板用合紙は、圧縮弾性率K(MPa)が1.0MPa以上8.5MPa以下である。圧縮弾性率Kが小さいほど、合紙のクッション性が高くなるため、平均径が10μm以上50μm以下であって、粒子強度Cが15(MPa)以上である異物による傷を抑制できる。ここで、ガラス板において特にパーティクルの付着及び傷の抑制が求められるのは電子回路形成面である。したがって、合紙の電子回路形成面に触れる側の主面であって、ガラス板と接触する部分の圧縮弾性率K(MPa)が前記範囲内であれば、本発明の効果を奏することができる。圧縮弾性率K(MPa)は、8.0MPa以下がより好ましく、5.0MPa以下がさらに好ましく、3.0MPa以下が特に好ましく、2.0MPa以下が最も好ましい。合紙の圧縮弾性率の下限は1.0MPa以上である。合紙の圧縮弾性率が前記下限以上であれば、耐久性の向上が期待できる。なお、本明細書において、ガラス板用合紙の圧縮弾性率K(MPa)は以下の方法で測定される。
【0038】
(圧縮弾性率の測定方法)
合紙の圧縮弾性率は、例えば定圧厚さ測定器(TECLOCK製、PG-02J)を用いて測定できる。圧P1(kPa)に相当する荷重を合紙の略中央部に印加した際の紙厚さをT1(μm)とし、圧P2(kPa)に相当する荷重を合紙の略中央部に印加した際の紙厚さをT2とし、(ひずみ量)=(T1-T2)/T1(無次元)を算出する。次いで(圧縮弾性率)=(P2-P1)/(ひずみ量×10-3)(MPa)を求める。なお、本明細書ではP1=100(kPa)、P2=270(kPa)としている。
【0039】
合紙の圧縮弾性率Kは、主に合紙の見かけの密度と、最表層の密度によって制御できる。見かけの密度とはすなわち一塊の紙としての密度である。通常、坪量を大きくするほど紙厚さは厚くなるが、合紙の坪量を小さくする一方で厚さを厚くして低密度とするほど圧縮弾性率Kが小さく、すなわちクッション性が高くなる傾向にある。同一の坪量において合紙を厚くする方法としては、原料に長繊維の割合の多い針葉樹パルプの含有率を多くする、叩解量を調整し原料パルプのフリーネスを高くする、嵩高剤を添加するなどの方法が採られる。なお、嵩高剤などの薬剤はガラス板を汚染させないために、添加量は少ない方が望ましい。
【0040】
最表層の密度に関しては、カレンダパートにおいて、カレンダロールによって紙に印加する圧力(以下、「ニップ圧」という)によって制御できる。すなわち、カレンダパート126において挟持輸送する際に、ニップ圧を小さくすればするほど、圧縮弾性率が小さくなり、クッション性の高い合紙が得られる。ただし、この操作は繊維間の密着を少なくする方向であり、合紙から生じるパーティクルの増大を招くおそれがある。したがって、合紙の見かけの密度を低くする一方で表面を硬くし、全体としてはクッション性のある合紙とすることが好ましい。圧縮弾性率Kは必ずしも見かけの密度と一致しない場合があるが、これは最表層の密度の影響も受けるため、合紙の紙層方向の密度差を生じさせるほど、圧縮弾性率Kと見かけの密度には乖離が生じると推測できる。
【0041】
熱カレンダ処理においてサーモロール表面の温度やニップ圧を高めることや、接触時間を長くすること、ニップ回数を多くすることなどにより高平滑な紙が得られる。一方でニップ圧や接触時間、回数の増加は嵩高さを低減させる。ここで、サーモロールに紙匹温度よりも高い温度をかけることで、紙匹の厚さ方向の温度勾配が大きくなり、紙層表面の塑性変形が促進され、紙層内部は塑性変形しにくくなるため、サーモロールを高温とする方が嵩高なクッション性のある合紙を作りやすく、本発明に好適である。同様の理由により、カレンダ処理を行う前に紙匹の温度を下げることで、温度勾配をより大きくすることができ、さらに好適である。冷却する手法としてはエアーや水、クーリングロールを用いる方法が挙げられる。なお少量の水を紙匹に適用し、即座に低温ドライエアーブローを行って乾燥させ、蒸発熱を奪うことで紙匹を冷却した後カレンダ処理を行った場合、紙層内部への水の毛管浸透が起こり切る前に温度勾配の大きなカレンダ処理を施すことができるため、紙層内部の塑性変形を抑制して嵩高とすることができ、特に好適である。水を作用させる時間を極短時間とすることで、繊維間結合の破壊や繊維の変形に伴う粗化を起こすことなく、処理することができる。
【0042】
また、熱ソフトカレンダにおいて、金属製のサーモロール側の紙と樹脂製の弾性ロール側の紙は平滑度の上昇度合に差が生じることが知られている。このような処理は、一方の表面の平滑度を特に向上させることができるため、合紙表面は高平滑であり、合紙全体としては低密度である合紙を得るのに適している。本発明の一態様において、高平滑な紙を得るのに適した温度は25℃~250℃である。高温であるほど高い平滑化効果が得られるが、250℃を超えると紙ヤケや幅方向の平滑化が不均一になるなどの問題が発生しやすく、また弾性ロールの劣化が加速する。100℃未満でも平滑化は可能であるものの、前述の温度勾配を利用した平滑化が不十分となるため、特に平滑度が100秒を超える合紙を得る場合は100℃以上が望ましい。
【0043】
また、本発明の一態様において、高平滑な紙を得るのに適したニップ圧は例えば5kN/m~350kN/mである。ニップ圧が5kN/m未満では平滑化が不十分となり、350kN/m超では弾性ロールの劣化が起こりやすくなる。また、同様の効果を奏する手法として、複数の密度を持った紙を抄き合わせて構成してもよい。
このようにカレンダ処理の種類、カレンダ処理での温度、及びニップ圧等を工夫することにより、表面は高い平滑度を有し、かつ圧縮弾性率が小さい合紙を得ることができる。
【0044】
(平滑度)
本発明のガラス板用合紙は、少なくとも一方の主面の平滑度が20秒以上である。合紙の平滑度は、高さ数μm~数mmからなる合紙表面の凹凸やそれ以下の繊維の凹凸を表しており、繊維同士を密着させることで高平滑となる。
【0045】
すなわち繊維長の短いパルプを用いて繊維間の空隙をなくすことや、叩解を強めて繊維の絡み合いを強めること、乾燥工程におけるドライヤシリンダーの面粗さを小さくすることや清浄度を高めること、抄速と加湿・除湿環境を制御して調湿しながら抄紙すること、およびカレンダ処理のニップ圧を高めることなどによって実現できる。平滑性が高いほど繊維同士や繊維と異物が密着していることを意味するため、紙面からの紙粉や異物といったパーティクルの発生が抑制される。
高いニップ圧で合紙をカレンダ処理することによって平滑度を大きくした場合、合紙が潰れるため、圧縮弾性率Kは大きくなる傾向にある。しかし、合紙の平滑度が20秒未満の場合、パーティクルが発生しやすくなる。そこでニップ圧だけでなく、上記したようにカレンダ処理の種類、カレンダ処理での温度等を工夫することで、平滑度を20秒以上としつつ、かつ圧縮弾性率Kを1.0MPa以上8.5MPa以下とすることができ、パーティクルの抑制と傷の抑制を両立できる。
【0046】
ここで、ガラス板において特に汚染の抑制が求められる、すなわちパーティクル付着の抑制が求められるのは電子回路形成面である。したがって、合紙の電子回路形成面に触れる側の主面の、ガラス板と接触する部分の平滑度が20秒以上であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0047】
しかしながら、平滑性が高すぎる場合、合紙の密着性が高くなり、静電気によってガラス板や搬送ロールへの貼り付きが起こってしまう。そのため、例えばガラス板積層体からガラス板や合紙を取り除く(以下、「アンパック」ともいう)際に、合紙がガラス板に貼り付くといった不具合が生じやすくなる。よって、合紙表面の平滑度は400秒以下が好ましく、100秒以下がより好ましく、70秒以下がさらに好ましく、50秒以下が特に好ましい。合紙表面の平滑度が前記上限以下であれば、アンパック時に合紙がガラス板に貼り付くといった不具合の発生を低減できる。
【0048】
本明細書において、平滑度は後述する実施例に記載の測定方法により測定される。
なお、平滑度の測定箇所は、合紙のガラス板と接触し得る箇所で測定されれば特に限定されないが、例えば合紙の略中央部で測定される。
【0049】
(シート抵抗(Ω/□))
本発明者らが鋭意検討した結果、合紙と基板の貼りつきと、合紙の帯電性とに関連があることがわかった。合紙の帯電性は合紙のシート抵抗(表面抵抗率)で表すことができる。シート抵抗とは、紙やフィルムなどの薄膜の単位面積(1cm)あたりの抵抗値を表す。シート抵抗が大きいほど導電性が低く、帯電しやすい。シート抵抗は主として合紙の水分量の影響を受けるが、同等の水分量であっても繊維の粗密や絡まり方、配向などの繊維の状態や、含まれる成分、合紙の厚さ等によっても導電特性が異なり、これらの組み合わせによってシート抵抗の値を制御することができる。水分量が多いほど、繊維が密であるほど、シート抵抗は小さくなる。また、シート抵抗を小さくするために、合紙の品質を低下させない範囲で帯電防止剤を加えてもよい。シート抵抗は、例えばハイレスタ―UX MCP-HT800(三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて測定できる。
【0050】
本発明のガラス板用合紙において、シート抵抗が5.0×1013Ω/□以下であることによって、前記合紙がガラス板に貼りつくといった不具合の発生を低減することができる。よって合紙のシート抵抗は5.0×1013Ω/□以下であることが好ましく、2.5×1013Ω/□以下がより好ましく、1.0×1013Ω/□以下がさらに好ましい。合紙のシート抵抗が前記上限以下であれば、アンパック時に合紙がガラス板に貼り付くといった不具合の発生をさらに低減できる。
【0051】
合紙のシート抵抗が低すぎる場合、合紙を縦型パレットにパッキングする際に、合紙とガラス板が十分に密着せず、合紙が剥がれ落ちるといった不具合が発生する場合がある。また、合紙のシート抵抗を低くしようと合紙の保水量を多くした結果、水分を介して合紙とガラスが極度に貼りつくといった不具合が発生する場合もある。そのため、本発明のガラス板用合紙のシート抵抗は、5.0×1010Ω/□以上であることが好ましく、7.5×1010Ω/□以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω/□以上であることがさらに好ましい。合紙のシート抵抗が前記下限以上であれば合紙が剥がれ落ちる問題や、極度に貼りつくといった不具合の発生を低減できる。
【0052】
(硬質異物耐性値)
硬質異物耐性値とは、圧縮弾性率K(MPa)と、前記合紙に含まれる平均径が10μm以上50μm以下であって、粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)の積KNで定義される。
【0053】
硬質異物耐性値KNが小さい合紙であるほど、傷の原因となる平均径が10μm以上50μm以下であって粒子強度Cが15(MPa)以上である異物が少ないか、圧縮弾性率Kが小さいことを意味し、ガラス板に生じる傷をさらに低減できる。前記硬質異物耐性値は、好ましくは35.0以下であり、より好ましくは30.0以下であり、さらに好ましくは15.0以下であり、特に好ましくは10.0以下であり、最も好ましくは5.0以下である。硬質異物耐性値KNを小さくしようとすると、製造工程における異物の混入を抑制する必要があり製造コストが増大する。そのため、硬質異物耐性値KNの下限値は0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
【0054】
(平均径が10μm以上50μm以下であって、粒子強度Cが15(MPa)以上である異物)
本明細書では、異物の評価として、粒子強度を用いる。粒子強度以外の合紙中の異物の評価としては、例えば日本国特開2016-006240号公報など、モース硬度を用いて評価する方法がある。モース硬度とは、「ある物体を別の物体でひっかいたときにどちらに傷がつくか」でその硬度を定義しており、一般にバルクの鉱物同士の硬さを比較する尺度である。またモース硬度は相対的な値であるため、同一のモース硬度値であっても同じ硬度(粒子強度)であるとは限らず、定量的にどちらがどれだけ傷付きやすいか、を表現することはできず、実際に対象物同士でひっかいてみないと分からない。
【0055】
ここで、粒子強度とモース硬度の関係に関して本発明者らが調査した結果を図1に示す。図1は、一般的にモース硬度が知られる鉱物や、合紙中の微小異物として考えられる各種成分について、複数の粒子の粒子強度を測定した結果を示す図である。図1は箱ひげ図であり、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数、最大値、最小値、算術平均値、及び外れ値を示している。
外れ値は、第三四分位数に四分位範囲(第三四分位数と第一四分位数の差)を1.5倍した数値を加えた数より大きい、または第一四分位数から四分位範囲を1.5倍した数値を引いた数より小さいデータをいう。
最大値は、外れ値を除いたデータのうち、最大のものをいう。最小値は、外れ値を除いたデータのうち、最小のものをいう。図1の箱ひげ図において、外れ値は白丸で、算術平均値は黒丸で示されている。
発明者らは、図1に示すように、微小異物の粒子強度の大小は大まかにはモース硬度の大小の序列に近かったが、必ずしも一致するわけではなく、モース硬度の値と粒子強度の値が逆転するものや、同じ種類の粒子でも粒子強度のばらつきが大きい場合があることを見出した。
【0056】
これらは各粒子によって生成の仕方が異なり、密度や結晶子の配向状態が異なることや、空隙が存在することなどにより引き起こされるものと推定される。よって、たとえ特定のモース硬度以下の異物のみが存在している場合であっても、それらの異物の粒子強度が大きいためにガラス板に傷が生じる場合があり得る。
【0057】
このような場合、従来のディスプレイ用のガラス板では問題とならない場合であっても、高精細なディスプレイに用いるガラス板の場合には問題となるおそれがある。以上の検討より、ガラス板に傷をつける微小異物の硬度はモース硬度による代表値で表すよりも、粒子強度で表す方が適していると考えられる。
【0058】
異物の平均径とは、合紙表面に存在している異物を、合紙の厚さ方向から観察し、前記異物の外形における長径と短径を測定し、測定した長径と短径の相加平均をいう。粒子強度Cの値が15MPa以上を満たし得る異物としては、SiC、ZrO、Al、TiO、SiO、Fe、Fe、Cr、Ni、CaF、MgO、CaCO、Al、Cu等の化合物およびそれらの合金、PEEK、PPS、UPE、エポキシ等の樹脂があるが、組成が同じであっても粒子強度にばらつきがあるため、前記異物であっても粒子強度を測定する必要がある。
【0059】
合紙中の平均径が10μm以上50μm以下であって、粒子強度Cが15(MPa)以上である異物の数N(個/m)を少なくする方法としては、異物の含有量が少ないパルプを使用する方法や、マグネットフィルターで磁性体を除去する方法、遠心力をかけてパルプから微小な鉱石や土埃を除く方法、フローテータを用いて微細な気泡に異物を吸着させて除去する方法がある。また、原料の水に含まれる異物をろ過などで除去する方法や、合紙の製造工程において抄造工程をクリーンルームで実施し、土埃の混入を防ぐなどの方法で対策をすることで前記異物の数N(個/m)を少なくできる。異物の含有量が少ないパルプを使用する方法としては、灰分量が少ないパルプや、蛍光X線で測定される無機元素の量が少ないパルプを選定する方法がある。
【0060】
異物の数N(個/m)は10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましく、0.1以下が特に好ましく、0.01以下が最も好ましい。異物の数N(個/m)の下限は特に限定されないが、例えば1.0×10-6以上である。上記のような異物の混入防止の対策を取ったとしても、平均径が10μm以上50μm以下であって粒子強度Cが15(MPa)以上である異物を完全になくすことは困難である。
【0061】
異物の数N(個/m)は、微小圧縮試験機を用いた以下の方法で測定できる。例えばレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)と微小圧縮試験機(島津製作所製、MCT-510)にて測定される。合紙をステージにセットし、例えば1視野2mm×1.4mmのエリアを1600エリア測定する。このとき、測定は顕微鏡のティーチング機能を用いて測定毎に1視野分を移動させ、次の視野を測定する自動測定としてもよい。次に、測定エリア内の異物1つずつに対し、画素数からサイズを割り出し、平均径が10μm以上50μm以下の粒子を選択する。この異物を微小圧縮試験機のステージに置き、1つずつ粒子強度Cを測定し、粒子強度Cが15(MPa)以上である粒子をカウントし、その数から1mあたりに存在する異物の数N(個/m)に換算することで測定できる。
【0062】
なお、ここで用いた粒子強度Cは、微小圧縮試験機で測定されるものに限定されず、例えばナノインデンターを用いて押込み深さにより見積もられた粒子の硬度や、マイクロビッカース硬度計によって測定された粒子の硬度でもよい。
【0063】
(算術平均高さSa(μm))
算術平均高さSaは線の算術平均高さRaを面に拡張したパラメータであり、合紙表面の高さの平均と、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。一般に、算術平均高さSaは面粗さを評価する際に使用される。
【0064】
合紙の算術平均高さSaが大きい場合、合紙の平滑度は小さくなる傾向にある。しかし、合紙の平滑度が20秒未満であると、パーティクルが発生しやすくなる。合紙の算術平均高さSaを一定以上としつつ、かつ平滑度を20秒以上とすることで、パーティクルの抑制と傷の抑制を両立できる。
よって、合紙の平滑度が20秒以上であり、かつ合紙の少なくとも一方の主面の算術平均高さSaは2.5μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましい。合紙の算術平均高さSaが前記下限以上であれば、合紙に存在する異物が埋没しやすくなり、異物が押圧されることに起因する傷の抑制が期待できる。合紙の算術平均高さSaの上限は8.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましく、4.0μm以下がさらに好ましい。算術平均高さSaが前記上限以下であれば、パーティクルの発生を抑制できる。
【0065】
ここで、ガラス基板においてパーティクルの付着及び傷の抑制が特に求められるのは電子回路形成面である。従って、合紙の2つの主面のうち、ガラス板の電子回路形成面と接する側の主面の算術平均高さSaが特に重要である。
【0066】
算術平均高さSaは、合紙の任意の領域において、1視野2.0mm×1.4mmについて10mmピッチで20×20視野、計400視野の高さ情報を入手し、各視野における算術平均高さの平均値とする。算術平均高さSaの測定には、例えばレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)など、公知の計測機で測定することができる。
【0067】
(最大高さSz(μm))
最大高さは、合紙表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。最大高さSzは、合紙表面の1視野2.0mm×1.4mm領域について10mmピッチで20×20視野、計400視野の高さ情報を入手し、各視野における最大高さの平均値とする。最大高さSzは、例えばレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)など、公知の計測機で測定できる。
【0068】
合紙の最大高さSzが大きい場合、合紙の平滑度は小さくなる傾向にある。しかし、合紙の平滑度が20秒未満であると、パーティクルが発生しやすくなる。合紙の最大高さSzを一定以上としつつ、かつ平滑度を20秒以上とすることで、パーティクルの抑制と傷の抑制を両立できる。
よって、合紙の平滑度が20秒以上であり、かつ合紙の少なくとも一方の主面の最大高さSzは45μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。合紙の最大高さSzが前記下限以上であれば、合紙に存在する異物が埋没しやすくなり、異物が合紙表面に押圧されることに起因する傷の抑制が期待できる。また、合紙の最大高さSzの上限は80μm以下が好ましく、65μm以下がより好ましく、54μm以下がさらに好ましい。最大高さSzが前記上限以下であれば、パーティクルの発生を抑制できる。
【0069】
ここで、ガラス基板において特にパーティクルの付着及び傷の抑制が求められるのは電子回路形成面である。従って、合紙の2つの主面のうち、ガラス板の電子回路形成面と接する側の主面の最大高さが特に重要である。
【0070】
(合紙の密度)
合紙の密度は、合紙の坪量(g/m)を紙厚さ(μm)で除した値である。合紙の密度は、0.4(g/cm)以上が好ましく、0.5(g/cm)以上がより好ましく、0.6(g/cm)以上がさらに好ましく、0.7(g/cm)以上が特に好ましい。合紙の密度が前記下限以上であれば、十分な強度の合紙が得られるため、製造過程で紙切れ等の異常が生じにくくなる。また、合紙の密度は、1.6(g/cm)以下が好ましく、1.4(g/cm)以下がより好ましく、1.2(g/cm)以下がさらに好ましく、1.1(g/cm)以下が特に好ましい。合紙の密度が前記上限以下であれば、原材料が少なく済むため生産性が高くなる。
【0071】
(ガラス板積層体)
本実施形態のガラス板積層体は、少なくとも2枚以上のガラス板が積層され、ガラス板とガラス板の間に本発明に係るガラス板用合紙を有している。
【0072】
(ガラス板梱包体)
本実施形態のガラス板梱包体は、少なくとも2枚以上のガラス板が積層され、前記ガラス板とガラス板との間に本発明にかかるガラス板用合紙を有するガラス板積層体と、ガラス板積層体を載置するパレットとを有している。
【0073】
図3に、ガラス板を載置するパレットの一実施形態を示す断面図を示す。図4に、ガラス板梱包体の一実施形態を示す断面図を示す。
図4に示す、ガラス板梱包体10は、ガラス板積層体12と、パレットとを有している。ガラス板積層体12は、ガラス板14と、これに隣り合う別のガラス板14との間にガラス板用合紙16を有している。図3に示す、パレット30は公知のガラス板梱包用のパレットであり、基台22と基台の上面に設置された傾斜台18と、載置台24とを有する。載置台24と傾斜台18との角度θはガラス板を安定して積載できれば特に限定されないが、90°が好ましい。
【0074】
傾斜台18の角度γとは、傾斜台18と水平面との角度である。すなわち、図3のように傾斜台18および載置台24が設置される基台22の上面が水平である場合には、傾斜台18の角度γとは傾斜台18と基台22との角度をいう。傾斜台18の角度γを90°に近付けるほど、省スペース化につながるが、ガラス板の端面に大きな圧力がかかるため、欠け等の不良が発生するおそれがある。また、傾斜台18の角度γを0°に近付けるほど、ガラス板にかかる圧力が分散し、端面の欠け等の不良を抑制できるが、大きなスペースを必要とするため、保管や輸送の効率が落ちる。本明細書において、傾斜台の角度が10°以下のパレットを平積みのパレットといい、10°超のパレットを縦積みのパレットという。
【0075】
使用するパレットは平積みのパレットでも縦積みのパレットでもよいが、大型のガラス板の場合、ガラス板の自重によってガラス板の端部に大きな圧力がかかる。そのため、大型のガラス板である場合、ガラス板を平積み状態で載置するパレットを用いることが好ましい。また、ガラス板が大型であるほど、ガラス板の端面にかかる圧力が大きくなるため、傾斜台の角度は0°以上5°以下が好ましく、0°以上3°以下がより好ましく、0°以上1°以下がさらに好ましい。しかし、ガラス板の輸送用のトラックやコンテナ等に収納する際に平積みのパレットでは収納できない場合がある。そのため、省スペース化のために縦積みのパレットを用いてもよい。
【0076】
大型のガラス板とは、例えば少なくとも一辺が2400mm以上のガラス板、具体的な例としては、長辺2400mm以上、短辺2000mm以上のガラス板をいう。前記大型のガラス板は、少なくとも一辺が2400mm以上のガラス板、例えば、長辺2400mm以上、短辺2100mm以上のガラス板が好ましく、少なくとも一辺が3000mm以上のガラス板、例えば、長辺3000mm以上、短辺2800mm以上のガラス板がより好ましく、少なくとも一辺が3200mm以上のガラス板、例えば、長辺3200mm以上、短辺2900mm以上のガラス板がさらに好ましく、少なくとも一辺が3300mm以上のガラス板、例えば、長辺3300mm以上、短辺2950mm以上のガラス板が特に好ましい。
【0077】
ガラス板の厚さは1.30mm以下が好ましい。ガラス板を薄くすることで、1枚当たりの重量が軽量となるため、積載枚数を増やすことができるとともに、液晶パネル作製時におけるエッチング時間を短縮できる。本発明のガラス板の厚さは0.75mm以下がより好ましく、0.65mm以下がさらに好ましく、0.55mm以下が最も好ましい。厚さを0.10mm以下、あるいは0.05mm以下とすることもできる。ただし、自重によるたわみを防ぐ観点からは、厚さは0.10mm以上が好ましく、0.20mm以上がより好ましい。
【0078】
前記ガラス板は、ディスプレイ製造時に用いることが好ましい。ガラス板の主表面に存在する紙粉や異物等のパーティクルが少なく、ガラス板の表面の傷も少ないため、断線等不良の発生を抑制できる。ディスプレイとしては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの基板に用いることが好ましい。また、本発明にかかるガラス板用合紙はガラス板の傷を抑制できるため、高精細なディスプレイに使用される場合その効果が顕著である。よって、本発明にかかるガラス板用合紙が用いられるディスプレイ用ガラス板は、画素数が2K(1920×1080)以上であることが好ましく、4K(3840×2160)以上であることがより好ましく、8K(7680×4320)以上であることがさらに好ましい。
【0079】
以上、ガラス板用合紙、ガラス板積層体、及びガラス板梱包体について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、勿論である。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下において、例1~10は実施例であり、例11~13は比較例である。また、特に記載の無い場合については、製造した合紙はJIS P8111:1998に準じて標準状態において調湿処理を行った後、測定した。合紙の各測定は、ガラス板積層体として使用される前のもので行った。
【0081】
平滑度はJIS P8119:1998 平滑度試験方法(ベック法)およびJIS P8155:2010 平滑度試験方法(王研式)に準じて測定した。一般にベック法と比べ王研式の方が、平滑度が高くなることが知られているが、ベック法は平滑度の高さが高いほど測定時間が長くなるため、100秒を超える場合、王研式を用いて平滑度を求め、ベック法の値に換算した。例2、例4、例6、例8、例9、例12、例13の平滑度は、王研式を用いて平滑度を求め、ベック法の値に換算した値である。例1~例13で製造した合紙の平滑度を、前記方法に則り、合紙の第1主面および第2主面の略中央部で測定し、より高い方の値をその合紙の平滑度とした。次に、より平滑度が高い方の主面の算術平均高さSaと、最大高さSzをレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)を用いて測定した。算術平均高さSaと最大高さSzはそれぞれ、前記主面の略中央部で測定した。
【0082】
シート抵抗はハイレスタ-UXとURSプローブ(MCP-HTP14)を用いて測定した。なお、プローブが直立状態を保った状態で測定するために、プローブ外周に同心円柱状の荷重600gを保持させ、荷重部は測定に影響なきよう、試料から十分距離をとった。MCC-A法(テフロン(登録商標)面側の測定)に倣う形で、試料の非測定面側に絶縁体として0.5mm厚さのガラス板を1枚敷いた上に試料を置き、測定面の略中央部にプローブを静置し、1000Vの電圧を印加して10秒後の値を測定値とした。なお、本測定には、23℃、50%の条件で15分静置した合紙を使用した。これは実際に合紙をガラス基板に積載する場合に、ロール表面から巻き出されて積載するまでの条件を模擬することを意図している。なお、測定面は合紙の第1主面および第2主面のうち、平滑度が高い方の主面である。
【0083】
次に、定圧厚さ試験機を用いて、前記合紙の圧縮弾性率を測定した。次に、レーザー顕微鏡と微小圧縮試験機にて、2.0mm×1.4mmのエリアを1600エリア測定し、1600エリアに存在する平均径が10μm以上50μm以下であって粒子強度Cが15(MPa)以上の異物の数(個)をカウントし、その数から1mあたりに存在する異物の数N(個/m)に換算した。
【0084】
例1~13で製造したガラス板用合紙を、500mm×400mmサイズに成形し、それぞれ板厚が0.5mmで、470mm×370mmサイズのガラス板の間に介在させて、180枚のガラス板を積層したガラス板積層体とした。なお、合紙は各辺の出代が15mmとなるようにした。前記ガラス板はフロート法で作製され、ボトム面が酸化セリウムで研磨されており、研磨後のガラス板の両面をアルカリ洗浄し、クリーンドライエアーで乾燥した後のものを用いた。ボトム面とは、フロート法で製造されたガラス板において、溶融スズと接していた主面をいう。ガラス板を積層する際には、合紙の第1主面および第2主面のうち、平滑度が高い方の主面と研磨されたガラス板のボトム面が接するようして積層した。なお、本発明に用いるガラス板の成型方法はフロート法に限定されず、ダウンドロー法、ロールアウト法などでもよく、また研磨されていないガラス板でもよい。
【0085】
各ガラス板積層体を、平積みのパレットに載置し(ガラス板180枚)、ガラス板梱包体を作製した。なお、パレットはアルミ製であり、振動吸収性のゴムやばねなどの防振材、および積層体の鉛直方向の動きを抑制する機構を有していない。作製したガラス板梱包体を、振動試験機(IMV社製、m120/MA1)を用いてJIS Z0232:2004に準拠したランダム振動試験にて、鉛直方向に1時間加振した。なお振動条件は同規定の附属書 表A.1に記載の、一般的な輸送環境(主して道路)を模擬する加速度パワースペクトル密度の条件にて、加速度5.92(m/srms)で実施した。環境中の温度は25±2℃、湿度は50±5%の範囲で行った。
【0086】
振動試験後、ガラス板梱包体の最底部から3枚目のガラス板より上部に位置するガラス板を取り出し、ガラス板を洗浄した後、ガラス板のボトム面のパーティクル付着量及び傷を異物検査機で測定し、評価した。
【0087】
<ガラス板表面のパーティクル付着量及び傷の測定と評価>
梱包体から取り出したガラス板のボトム面を、配管圧1MPa、流量20L/minの純水(イオン交換水)が流れるシャワーパイプ2列からなり、吐出口が均等扇形形状のノズルを有したスプレーシャワーである洗浄機に3m/minの速度で通過させ、クリーンドライエアーを噴射するエアーナイフで乾燥させ、洗浄済み基板を得た。洗浄済み基板をFPD用異物検査機(東レエンジニアリング社製、HS-830e)を用いてNormal(1.0μm)モードで測定し、パーティクル個数を得た。ここで各試験条件につき少なくとも3枚を測定し、その平均値を各試験条件のパーティクル個数とした。なお、異物検査機のパーティクルとは一般に凸状の付着物の他、凹み状の傷も含むが、本明細書内では、凸状の付着物をパーティクル、凹み状の欠陥を傷としている。
【0088】
パーティクルの付着性については、積層体作製前と加振後でFPD用異物検査機を用いて測定を行い、それぞれのパーティクル個数の差分を用いて評価した。評価基準は以下の通りである。
A:パーティクル個数の差分が20000個/m未満である。
B:パーティクル個数の差分が20000個/m以上50000個/m未満である。
C:パーティクル個数の差分が50000個/m以上である。
【0089】
ガラス板への傷付け性については、FPD用異物検査機で観察し、以下の評価基準で評価した。
A:ガラス板のボトム面に存在する傷が0.5個/m未満である。
B:ガラス板のボトム面に存在する傷が0.5個/m以上3.0個/m未満である。
C:ガラス板のボトム面に存在する傷が3.0個/m以上10.0個/m未満である。
D:ガラス板のボトム面に存在する傷が10.0個/m以上である。
【0090】
(圧縮弾性率K(MPa)の測定)
定圧厚さ測定器(TECLOCK社製、PG-02J)において、荷重を任意に設定できるよう荷重取付部分を設けた装置を使用し、その他は改変せず用いた。なお、厚さの読みの最小値は1μmである。はじめに圧子直径5mmにて、圧P1(kPa)に相当する荷重を合紙の略中央部に印加した際の紙厚さをT1(μm)とし、圧P2(kPa)に相当する荷重を合紙の略中央部に印加した際の紙厚さをT2とし、(ひずみ量)=(T1-T2)/T1(無次元)を算出した。次いで(圧縮弾性率K)=(P2-P1)/(ひずみ量×10-3)(MPa)を求めた。なお、ここではP1=100(kPa)、P2=270(kPa)とした。
なお、圧縮弾性率は合紙の第1主面および第2主面のうち、平滑度の大きい方の主面に圧子を押圧することで測定した。
【0091】
(平均径10μm以上50μm以下であって、かつ粒子強度Cが15(MPa)以上の異物の数N(個/m)の測定)
合紙をレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)のステージに置き、合紙が浮き上がらないように端部をテープで留めた。合紙の略中央部において、2.0mm×1.4mmのエリアを1600エリア測定し、画素数からサイズを割り出し、平均径が10μm以上50μm以下の粒子を選択した。測定は顕微鏡のティーチング機能を用いて測定毎に1視野分を移動させ、次の視野を測定する自動測定としてもよい。この粒子を微小圧縮試験機(島津製作所製、MCT-510)のステージに置いた。なお微小圧縮試験機は直径50μmのダイヤモンド平面圧子を有し、試験力分解能5μN、変位量分解能0.01μmであるものを用いた。測定試験機に付帯された顕微鏡にて、粒子の外形を確認し、長径と短径を測定して相加平均にて平均径を算出した。前記粒子に対し、設定到達試験力20mN、負荷速度0.44mN/secにて試験力を印加し、圧縮後の平均径が圧縮前の平均径より10%小さくなった点を10%圧縮点とした。このときの試験力を用いて、一般的な粒子破壊強度の算出式として知られる式、Cx=2.48×(10%圧縮点での試験力)/(平均粒径)を用いてCxを算出し、算出されたCxを粒子強度Cとした。その後、粒子強度Cが15(MPa)以上である粒子をカウントし、異物の数N(個/m)を算出した。
【0092】
なお、一般的には15(MPa)より大きい試験力を印加し、粒子が破壊した点(粒子が破壊されて急激に圧子が押し込まれることに起因し、試験力がほぼ一定で変位量だけが大きく変化する点)を破壊点とし、このときの試験力を用いて、Cs=2.48×(破壊点での試験力)/(平均粒径)を算出し、算出されたCsを粒子強度Cとする場合が多い。
【0093】
しかし、10%圧縮点での試験力を用いて算出されるCxが15(MPa)近辺の粒子の場合、粒子の破壊点が検出されないことから、本明細書内では10%圧縮点での試験力を用いてCxを算出し、その値を粒子強度Cとしている。また、10%圧縮点に達する前に粒子の破壊点が観察された場合、その時点で粒子形状が大幅に変化していることが明らかであるため、この場合は粒子強度にCsの値を用いる。
【0094】
(例1)
NBKP100%のパルプスラリーを、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解した後、表1に示す坪量となるように原料スラリーを長網式フォーマーに対して紙料濃度1%で噴射し、紙層を形成した後、多筒式ドライヤを通じて乾燥した。原料としての水は、40μmフィルターで処理した純水を使用した。その後、熱ソフトカレンダ処理にて温度100℃、ニップ圧10(kN/m)で処理した。得られた合紙は、坪量が45.1g/m、厚さが80μm、密度が0.53(g/cm)、第1主面の平滑度が25秒、第2主面の平滑度が23秒であった。
【0095】
(例2)
熱ソフトカレンダ処理にて温度150℃として温度勾配をかけ、ニップ圧120(kN/m)として熱勾配で処理した以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0096】
(例3)
原料の構成を、例1に示したNBKPを50%と、LBKP(A)を50%としたこと、水のフィルターに開口径20μmのものを使用したこと、および、カレンダ処理にてハードカレンダを用い、ニップ圧30(kN/m)で処理した以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0097】
(例4)
例3で示したパルプと水からなる原料系を用いて、カレンダ処理にて温度150℃、ニップ圧150(kN/m)で処理した以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0098】
(例5)
水のフィルターに開口径5μmのものを使用したこと、および、ニップ圧50(kN/m)で処理した以外は例3と同様にして合紙を得た。
【0099】
(例6)
例5で示したパルプと水からなる原料系を用いて、カレンダ処理する前に水と低温エアーブローを用いて冷却処理した後、カレンダ処理にて温度200℃、ニップ圧170(kN/m)で処理した以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0100】
(例7)
原料スラリーを抄紙後、ヤンキードライヤで乾燥し、カレンダ処理を実施しなかったこと以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0101】
(例8)
原料の構成を、例1に示したNBKPを50%と、LBKP(B)を50%として、水のフィルターに開口径40μmのものを使用したこと以外は例4と同様にして合紙を得た。なお、LBKP(A)、LBKP(B)は、それぞれ異なる産地の木材に由来する広葉樹晒クラフトパルプである。
【0102】
(例9)
抄速を20%遅くして、合紙を巻き取る前に150℃のドライヤロールを設け、乾燥処理を行い、水分量を少なくした以外は例6と同様にして合紙を得た。
【0103】
(例10)
合紙を巻き取る前に加湿処理を行い、水分量を多くした以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0104】
(例11)
原料スラリーを抄紙後、カレンダ処理を実施しなかったこと以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0105】
(例12)
例8で示したパルプと水からなる原料系を使用し、フリーネス200mL CSFとなるように叩解した原料スラリーで抄紙した後、水分付与装置を使用して湿紙とした後、温度150℃、ニップ圧200kN/mの条件で10段のスーパーカレンダ処理をしてグラシン紙である合紙を得た。
【0106】
(例13)
例3で示したパルプと水からなる原料系を用いて、抄速を20%遅くして、カレンダ処理にて温度100℃、ニップ圧350kN/mで処理した以外は例1と同様にして合紙を得た。
【0107】
【表1】
【0108】
<結果>
表1は測定結果と評価結果を示している。表1によれば、平滑度が20秒以上である場合はパーティクルの付着性は全てAまたはBであった。一方で、平滑度が20秒未満である場合は、パーティクルの付着量は全てCであった。また、圧縮弾性率Kが8.5MPa以下である場合は、傷付け性は全てAまたはBであった。一方で、圧縮弾性率Kが8.5MPa超である場合は、傷付け性はCまたはDであった。
【0109】
本出願は、2020年11月25日出願の日本特許出願2020-195392に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0110】
10…ガラス板梱包体
12…ガラス板積層体
14…ガラス板
16…ガラス板用合紙
18…傾斜台
22…基台
24…載置台
30…パレット
42…合紙ロール
100…ガラス板用合紙の製造装置
112…ヘッドボックス
114…ワイヤパート
116…下ワイヤ
118…上ワイヤ
120…プレスパート
124…ドライヤパート
126…カレンダパート
128…リール
130…ジャンボロール
134…カッタ
136…ワインダ
図1
図2
図3
図4