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特開2022-84183光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法
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  • 特開-光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084183
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20220531BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195874
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 和尚
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137AC04
2H137BA55
2H137BB03
2H137BB12
2H137BB33
2H137BC51
2H137EA02
2H137EA05
2H137GA02
2H137HA15
2H147BD10
2H147BG06
2H147BG17
2H147CB05
2H147CD02
2H147DA08
2H147EA17C
2H147FA20
2H147FB04
2H147FC01
2H147FC08
2H147FE02
2H147GA12
2H147GA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光路変換ミラーを得るための傾斜面を信頼性よく凸部に形成できる光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光導波路装置1は、配線基板10と、配線基板の上に形成された第1クラッド層32と、第1クラッド層の上に選択的に形成された第2クラッド層34と、第2クラッド層の上に形成され、第2クラッド層の表面に対して傾斜した傾斜面を備えた凸部40A,40Bと、傾斜面に形成された光路変換ミラー46A,46Bと、第2クラッド層の上に形成され、光路変換ミラーに直接接するコア層36と、第2クラッド層及びコア層の上に形成された第3クラッド層38と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の上に形成された第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上に選択的に形成された第2クラッド層と、
前記第2クラッド層の上に形成され、前記第2クラッド層の表面に対して傾斜した傾斜面を備えた凸部と、
前記傾斜面に形成された光路変換ミラーと、
前記第2クラッド層の上に形成され、前記光路変換ミラーに直接接するコア層と、
前記第2クラッド層及び前記コア層の上に形成された第3クラッド層と、
を有することを特徴とする光導波路装置。
【請求項2】
前記第2クラッド層は、前記第1クラッド層の上に複数形成され、
前記第2クラッド層毎に前記凸部、前記光路変換ミラー及び前記コア層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項3】
複数の前記第2クラッド層は第1方向に並んで配置され、
複数の前記凸部は前記第1方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光導波路装置。
【請求項4】
前記第2クラッド層及び前記コア層は前記第1方向に直交する第2方向に延びることを特徴とする請求項3に記載の光導波路装置。
【請求項5】
前記第2クラッド層の表面に、前記傾斜面に連なり前記第1方向に延びる切り込みが形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光導波路装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記第2クラッド層の上に2個形成され、
前記光路変換ミラーは、2個の前記凸部のそれぞれの前記傾斜面に形成され、
前記コア層は、2個の前記光路変換ミラーに直接接することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光導波路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光導波路装置と、
前記光路変換ミラーに光結合された光素子と、
を有することを特徴とする光通信装置。
【請求項8】
配線基板の上に第1クラッド層を形成する工程と、
前記第1クラッド層の上に選択的に第2クラッド層を形成する工程と、
前記第2クラッド層の上に凸部を形成する工程と、
回転ブレードを用いて前記凸部及び前記第2クラッド層をその積層方向に連続的に切削して、前記凸部に前記第2クラッド層の表面に対して傾斜した傾斜面を形成する工程と、
前記傾斜面に光路変換ミラーを形成する工程と、
前記第2クラッド層の上に、前記光路変換ミラーに直接接するコア層を形成する工程と、
前記第2クラッド層及び前記コア層の上に第3クラッド層を形成する工程と、
を有することを特徴とする光導波路装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2クラッド層は、前記第1クラッド層の上に第1方向に並んで複数形成され、
前記第2クラッド層毎に前記凸部が設けられ、
複数の前記凸部は前記第1方向に並んで配置され、
前記傾斜面を形成する工程において、前記回転ブレードを前記第1方向に移動させながら、前記第1方向に並ぶ複数の前記凸部及び前記第2クラッド層を切削することを特徴とする請求項8に記載の光導波路装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を扱う配線基板の上に光信号を扱う光導波路が形成された光導波路装置がある。光導波路装置は光電気複合基板であり、電気信号の伝達速度の限界を補うために、高速部分を光信号で伝達することができる。
【0003】
光導波路の端側には光路変換ミラーが配置されており、光素子が光導波路の光路変換ミラーに光結合されるように配線基板に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-69668号公報
【特許文献2】特開2017-187620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光導波路装置の製造に際して、光路変換ミラーを設ける傾斜面を形成するために、切削装置の回転ブレードにより複数の凸部を切削する。このとき、回転ブレードは切削不要な下側のクラッド層も切削することになるため、回転ブレードの消耗が早くなり、コスト高を招く問題がある。また、回転ブレードが凸部の下側のクラッド層を突き抜けて配線基板の配線層まで達することがあり、この場合は、配線層とクラッド層との界面で剥離が発生する。
【0006】
本開示は、光路変換ミラーを得るための傾斜面を信頼性よく凸部に形成できる光導波路装置、光通信装置及び光導波路装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、配線基板と、前記配線基板の上に形成された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に選択的に形成された第2クラッド層と、前記第2クラッド層の上に形成され、前記第2クラッド層の表面に対して傾斜した傾斜面を備えた凸部と、前記傾斜面に形成された光路変換ミラーと、前記第2クラッド層の上に形成され、前記光路変換ミラーに直接接するコア層と、前記第2クラッド層及び前記コア層の上に形成された第3クラッド層と、を有する光導波路装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光路変換ミラーを得るための傾斜面を信頼性よく凸部に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る光導波路装置を示す上面図である。
図2】第1実施形態に係る光導波路装置を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その1)である。
図4】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その2)である。
図5】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その3)である。
図6】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その4)である。
図7】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その5)である。
図8】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その6)である。
図9】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その7)である。
図10】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その8)である。
図11】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その9)である。
図12】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その10)である。
図13】第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図(その11)である。
図14】第2実施形態に係る光通信装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は光導波路装置に関する。図1は、第1実施形態に係る光導波路装置を示す上面図である。図2は、第1実施形態に係る光導波路装置を示す断面図である。図2(a)は、図1中のIIa-IIa線に沿った断面図に相当し、図2(b)は、図1中のIIb-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0012】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る光導波路装置1は、配線基板10を有する。配線基板10は、基板12と、基板12の両面に形成された配線層20とを有する。基板12には厚さ方向に貫通するスルーホール14が設けられており、スルーホール14内に貫通導体22が充填されている。一方の面の配線層20は貫通導体22を介して他方の面の配線層20に接続されている。配線層20及び貫通導体22は銅等から形成される。
【0013】
スルーホール14の側壁に形成されたスルーホールめっき層を介して一方の面の配線層20が他方の面の配線層20に接続され、スルーホール14の残りの孔に樹脂が充填されていてもよい。
【0014】
基板12はリジット基板であってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。基板12がリジット基板である場合は、基板12は例えばガラスエポキシ樹脂等から形成される。基板12がフレキシブル基板である場合は、基板12は例えばポリイミドフィルム等から形成される。また、基板12の両面側において、配線層20の積層数は任意に設定することができる。
【0015】
配線基板10の一方の面上の光導波路形成領域に第1クラッド層32が形成されている。第1クラッド層32の厚さは、例えば、10μm~30μm程度である。以下、配線基板10からみて第1クラッド層32が形成された側を表側又は上側、反対側を裏側又は下側ということがある。第1クラッド層32が配線基板10の表面の全体に形成されていてもよい。
【0016】
第1クラッド層32の表面の上に複数の第2クラッド層34が選択的に形成されている。複数の第2クラッド層34は、例えば第1方向に並んで配置され、第1方向に交差する第2方向に延びる。例えば、第1方向と第2方向とは互いに直交する。第2クラッド層34の厚さは、例えば、5μm~15μm程度である。
【0017】
各第2クラッド層34の表面の上に凸部40A及び40Bが形成されている。つまり、各第2クラッド層34の表面の上に2個の凸部が形成されている。例えば、凸部40A及び40Bは、第2クラッド層34上の光路変換ミラー形成領域に形成されている。凸部40A及び40Bは、例えば互いから第2方向で離れるようにして配置されている。例えば、第2方向において、凸部40Aは第2クラッド層34の一方の端部に設けられ、凸部40Bは第2クラッド層34の他方の端部に設けられている。例えば、複数の凸部40Aが第1方向に並んで配置され、複数の凸部40Bが第1方向に並んで配置されている。凸部40A及び40Bの厚さは、例えば、30μm~40μm程度である。
【0018】
凸部40Aは凸部40B側に傾斜面42Aを有し、凸部40Bは凸部40A側に傾斜面42Bを有する。傾斜面42A及び42Bは、例えば光路を90°変換する。傾斜面42A及び42Bは、配線基板10の表面に対して好適には45°で傾斜している。第2クラッド層34に、傾斜面42Aに連なる切り込み44Aと、傾斜面42Bに連なる切り込み44Bとが形成されている。切り込み44A及び44Bは、例えば第1方向に延びる。切り込み44A及び44Bの底は第2クラッド層34の裏面よりも上方にあり、切り込み44A及び44Bは第1クラッド層32に達していない。
【0019】
傾斜面42Aに光路変換ミラー46Aが形成され、傾斜面42Bに光路変換ミラー46Bが形成されている。傾斜面42A及び42Bは、例えば、上方から光路変換ミラー46A又は46Bの一方に入射した光が光路変換ミラー46A又は46Bの他方に向けて反射され、この反射してきた光が光路変換ミラー46A又は46Bの当該他方により上方に反射されるように傾斜している。光路変換ミラー46A及び46Bの材料として、金及びアルミニウム等が挙げられる。
【0020】
各第2クラッド層34の上にコア層36が形成されている。例えば、コア層36は第2方向に延びる。コア層36は光路変換ミラー46A及び46Bに直接接する。コア層36の厚さは、凸部40A及び40Bの厚さと同程度であり、例えば、30μm~40μm程度である。
【0021】
第1クラッド層32、第2クラッド層34及びコア層36の上に第3クラッド層38が形成されている。第3クラッド層38はコア層36を覆う。第3クラッド層38の厚さは、例えばコア層36上で10μm~30μm程度である。
【0022】
第1クラッド層32、第2クラッド層34、コア層36及び第3クラッド層38から光導波路5が構成されている。光導波路5は、コア層36が第2クラッド層34及び第3クラッド層38により囲まれた構造を有する。コア層36の屈折率は、第1クラッド層32、第2クラッド層34及び第3クラッド層38の各屈折率よりも高い。
【0023】
第3クラッド層38及び第1クラッド層32に、配線基板10の配線層20に到達する接続ホール16が形成されている。また、接続ホール16内のビア導体を介して配線基板10の配線層20に接続される接続パッド24が第3クラッド層38の上に形成されている。
【0024】
次に、第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法について説明する。図3図13は、第1実施形態に係る光導波路装置の製造方法を示す図である。
【0025】
まず、図3(a)及び(b)に示すように、電気信号を扱う配線基板10を用意する。図3(a)は上面図であり、図3(b)は図3(a)中のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。上述のように、配線基板10は、基板12と、基板12の両面に形成された配線層20とを有する。基板12には厚さ方向に貫通するスルーホール14が設けられており、スルーホール14内に貫通導体22が充填されている。
【0026】
配線基板10のスルーホール14はドリルやレーザ等で形成され、配線層20及び貫通導体22はフォトリソグラフィ及びめっき技術等を使用して形成される。
【0027】
次いで、図4(a)及び(b)に示すように、配線基板10上の光導波路形成領域に第1クラッド層32を形成する。図4(a)は上面図であり、図4(b)は図4(a)中のIVb-IVb線に沿った断面図である。第1クラッド層32の形成では、配線基板10の上に第1クラッド層32を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光及び現像を行う。その後に、感光性樹脂層を100℃~140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0028】
感光性樹脂層としては、紫外線(UV)硬化型エポキシ樹脂等が好適に使用される。感光性樹脂層の形成方法としては、半硬化状態(B-ステージ)の感光性樹脂シートを貼付してもよいし、あるいは、液状の感光性樹脂を塗布してもよい。
【0029】
第1クラッド層32をパターン化せずに全面に形成する場合は、非感光性樹脂を使用してもよい。
【0030】
後述する第2クラッド層34、凸部40A及び40B、コア層36及び第3クラッド層38を形成する工程においても同様の樹脂が好適に使用される。
【0031】
続いて、図5(a)及び(b)に示すように、第1クラッド層32の上に複数の第2クラッド層34を選択的に形成する。図5(a)は上面図であり、図5(b)は図5(a)中のVb-Vb線に沿った断面図である。第2クラッド層34の形成では、第1クラッド層32の上に第2クラッド層34を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光及び現像を行う。その後に、感光性樹脂層を100℃~140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0032】
複数の第2クラッド層34は、例えば第1方向に並んで配置され、第2方向に延びるように形成される。図5(a)では、光導波路形成領域のうちの2本のコア層36が配置される領域が部分的に示されている。
【0033】
次いで、図6(a)及び(b)に示すように、第2クラッド層34上の光路変換ミラー形成領域に凸部40A及び40Bを形成する。凸部40A及び40Bは、複数の第2クラッド層34の各々の上に1組ずつ形成する。図6(a)は上面図であり、図6(b)は図6(a)中のVIb-VIb線に沿った断面図である。凸部40A及び40Bの形成では、第2クラッド層34の上に凸部40A及び40Bを得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光及び現像を行う。その後に、感光性樹脂層を100℃~140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0034】
続いて、図7に示すように、回転ブレード72を備えた切削装置(不図示)を用意する。図7は断面図である。回転ブレード72はモータ(不図示)に接続された回転軸74に連結されている。回転ブレード72は刃先に傾斜面76を有し、被切削物に傾斜面を形成することができる。
【0035】
また、回転ブレード72及び回転軸74は移動手段(不図示)に接続されており、上下方向及び水平方向に移動することができる。これにより、回転ブレード72は、所定の高さ位置に調整された状態で、水平方向に移動して被切削物を切削することができる。
【0036】
このような切削装置の回転ブレード72を用いて、凸部40Aの光路変換ミラーが配置される部分を厚さ方向に切削する。この結果、図8に示すように、光路を90°変換するための傾斜面42Aを凸部40Aに形成される。図8は断面図である。
【0037】
図9(a)及び(b)は、図8に示す工程で回転ブレード72によって凸部40Aに傾斜面42Aを形成する際の様子をA方向からみた模式図である。図9(a)及び(b)では、回転ブレード72が透視的に描かれている。
【0038】
図9(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、凸部40Aの下に第2クラッド層34が配置されている。そして、回転ブレード72の刃先が第2クラッド層34の厚さの途中に配置されるように高さ位置が調整された状態で、水平方向に移動しながら、複数の並んだ凸部40Aに傾斜面42Aを順次形成していく。このとき、傾斜面42Aに連なる切り込み44Aが第2クラッド層34に形成される。切り込み44Aは、回転ブレード72の移動に付随して、第1方向に延びるように形成される。
【0039】
このようにして、並列に並んだ凸部40Aに一括で傾斜面42Aを形成する。これにより、図9(a)及び(b)に示すように、回転ブレード72が複数の凸部40Aの間の領域を通過する際に、回転ブレード72の刃先と第1クラッド層32の上面との間に隙間18が生じるようになっている。
【0040】
同様にして、回転ブレード72を用い、傾斜面76の向きを変更した上で凸部40Bの光路変換ミラーが配置される部分を厚さ方向に切削することで、図10(a)及び(b)に示すように、凸部40Bに傾斜面42Bを形成する。このとき、傾斜面42Bに連なる切り込み44Bが第2クラッド層34に形成される。切り込み44Bは、回転ブレード72の移動に付随して、第1方向に延びるように形成される。図10(a)は上面図であり、図10(b)は図10(a)中のXb-Xb線に沿った断面図である。
【0041】
このようにして、第1クラッド層32の上に第2クラッド層34を配置して局所的にかさ上げすることにより、第1クラッド層32が回転ブレード72によって切削されないようにしている。このため、回転ブレード72の磨耗が少なくなり、寿命を長くすることができる。よって、回転ブレード72の交換頻度を低減することができるため、低コスト化を図ることができる。
【0042】
さらに、回転ブレード72の寿命を長くできるため、凸部40A及び40Bに良好な傾斜面42A及び42Bを歩留りよく形成することができる。
【0043】
さらには、凸部40A及び40Bの切削部分の下に第2クラッド層34が配置されているため、回転ブレード72が第1クラッド層32に達することが防止される。しかも、配線基板10に反りが発生するとしても、第2クラッド層34の厚さを調整することにより、回転ブレード72が第1クラッド層32に達することが防止される。
【0044】
これにより、回転ブレード72が第1クラッド層32を突き抜けて配線基板10の配線層20に達することを回避することができる。よって、切り込み44A及び44Bの下の領域において、配線層20と第1クラッド層32との界面で剥離が発生することが防止される。
【0045】
傾斜面42A及び42Bの形成後、図11(a)及び(b)に示すように、マスク蒸着等により、傾斜面42A及び42Bに光反射性の金属の層を部分的に形成して、それぞれ光路変換ミラー46A及び46Bを得る。図11(a)は上面図であり、図11(b)は図11(a)中のXIb-XIb線に沿った断面図である。
【0046】
次いで、図12(a)及び(b)に示すように、第2クラッド層34の上にコア層36を形成する。図12(a)は上面図であり、図12(b)は図12(a)中のXIIb-XIIb線に沿った断面図である。コア層36の形成では、第1クラッド層32及び第2クラッド層34の上にコア層36を得るための半硬化状態(B-ステージ)の感光性樹脂シートを設け、フォトリソグラフィに基づいて露光及び現像を行う。その後に、感光性樹脂シートを凸部40A及び40Bの表面が露出するまで平坦化する。続いて、感光性樹脂シートを100℃~140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0047】
次いで、図13(a)に示すように、コア層36を被覆する第3クラッド層38を第1クラッド層32及び第2クラッド層34の上に形成し、図13(b)に示すように、第3クラッド層38及び第1クラッド層32に接続ホール16を形成する。図13(a)及び(b)は断面図である。
【0048】
第3クラッド層38の形成では、第1クラッド層32、第2クラッド層34及びコア層36の上に第3クラッド層38を得るための感光性樹脂層(不図示)を形成し、フォトリソグラフィに基づいて露光及び現像を行う。その後に、感光性樹脂層を100℃~140℃程度の加熱処理によって硬化させる。
【0049】
接続ホール16の形成では、例えば、第3クラッド層38及び第1クラッド層32のレーザ加工を行う。接続ホール16は、配線基板10の配線層20に到達するように形成される。
【0050】
接続ホール16をフォトリソグラフィによって形成してもよい。この場合は、第1クラッド層32を形成する工程(図4(a)及び(b)参照)で配線基板10の配線層20の上に第1ホールを形成し、第3クラッド層38を形成する工程(図13(a)参照)で、第1クラッド層32の第1ホールに連通する第2ホールを形成する。このようにして、第1ホール及び第2ホールから接続ホール16が形成される。
【0051】
続いて、接続ホール16内のビア導体を介して配線基板10の配線層20に接続される接続パッド24を第3クラッド層38の上に形成する(図1及び図2参照)。
【0052】
接続パッド24は、例えばセミアディティブ法によって形成される。詳しく説明すると、まず、接続ホール16内及び第3クラッド層38の上にシード層(不図示)を形成する。次いで、接続ホール16を含む領域に開口部が設けられためっきレジスト層(不図示)をシード層の上に形成する。その後に、シード層をめっき給電経路に利用する電解めっきにより、接続ホール16内からめっきレジスト層に開口部に金属めっき層(不図示)を形成する。さらに、めっきレジスト層を剥離した後に、金属めっき層をマスクにしてシード層をエッチングする。これにより、シード層及び金属めっき層から接続パッド24が形成される。
【0053】
このようにして第1実施形態に係る光導波路装置1を製造することができる。
【0054】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る光導波路装置1では、コア層36と第1クラッド層32との間に第2クラッド層34が配置されている。第2クラッド層34は、回転ブレード72で凸部40A及び40Bに傾斜面42A及び42Bを形成する際に、下地の第1クラッド層32が切削されることを防止する保護層として機能する。このため、回転ブレード72が第1クラッド層32を突き抜けて配線基板10の配線層20に達することを回避することができる。よって、光路変換ミラー46A及び46Bの下の領域で、配線層20と第1クラッド層32との界面で剥離が発生することが防止される。これにより、光導波路装置の信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、コア層36は光路変換ミラー46A及び46Bに直接接する。このため、コア層36と光路変換ミラー46A及び46Bとの間にクラッド層等の他の材料が介在する場合と比較して、光の減衰を低減することができる。
【0056】
なお、凸部40A及び光路変換ミラー46Aの組み合わせと、凸部40B及び光路変換ミラー46Bの組み合わせとの両方が第2クラッド層34の上に設けられている必要はない。例えば、一方が設けられておらず、その代わりに光ファイバがコア層36に光結合されるように構成されてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、光導波路装置を備えた光通信装置に関する。図14は、第2実施形態に係る光通信装置を示す断面図である。
【0058】
図14に示すように、第2実施形態に係る光通信装置2では、光導波路装置1のコア層36の一端側の接続パッド24に、発光素子50がはんだ電極52によって接続されている。発光素子50はその下面に複数の発光部54を備えており、発光部54が光導波路装置1の各光路の光路変換ミラー46Aに光結合される。発光素子50として、面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)が好適に使用される。発光素子50は光素子の一例である。
【0059】
また、光導波路装置1のコア層36の他端側の接続パッド24に受光素子60がはんだ電極62によって接続されている。受光素子60はその下面に複数の受光部64を備えており、受光部64が光導波路装置1の各光路の光路変換ミラー46Bに光結合される。受光素子60として、フォトダイオードが好適に使用される。受光素子60は光素子の一例である。
【0060】
光通信装置2では、不図示のドライバ素子から出力される電気信号が発光素子50に供給され、図14の矢印経路で示すように、発光素子50の発光部54から下側に光が出射される。発光素子50から出射された光は、第3クラッド層38を透過して光導波路装置1の光路変換ミラー46Aに到達する。さらに、光路変換ミラー46Aで光が反射され、光路が90°変換されてコア層36に入射する。
【0061】
コア層36に入射した光は、コア層36内で全反射を繰り返して伝播し、他端側の光路変換ミラー46Bに到達する。そして、他端側の光路変換ミラー46Bで光が反射されて光路が90°変換され、第3クラッド層38を透過して受光素子60の受光部64に光が入射される。受光素子60は光信号を電気信号に変換し、不図示のアンプ素子に電気信号が供給される。
【0062】
光通信装置2では、光路変換ミラー46A及び46Bの下の領域での剥離が発生しないため、歩留りよく製造されると共、光素子との光結合の高い信頼性が得られる。
【0063】
なお、発光素子50及び受光素子60の下側にアンダーフィル樹脂がそれぞれ充填されていてもよい。
【0064】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0065】
1:光導波路装置
2:光通信装置
5:光導波路
10:配線基板
32:第1クラッド層
34:第2クラッド層
36:コア層
38:第3クラッド層
40A、40B:凸部
42A、42B:傾斜面
44A、44B:切り込み
46A、46B:光路変換ミラー
50:発光素子
60:受光素子
72:回転ブレード
図1
図2
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図5
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