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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022084245
(43)【公開日】2022-06-07
(54)【発明の名称】遮光システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20220531BHJP
【FI】
C02F1/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020195980
(22)【出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐尾 具視
(72)【発明者】
【氏名】青木 未知子
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 渉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 くるみ
(57)【要約】
【課題】水処理施設における貯留水での藻類の発生を抑制するため、大掛かりな設備を必要とせず、比較的安価に設置でき、メンテナンスが容易な遮光システムを提供する。
【解決手段】遮光システム100は、気泡発生装置200と、前記気泡発生装置200に連結されて、前記貯留水の所定深さ位置に配置され、前記貯留水の水面の下方に広がる気泡の層ARを生成する気泡噴出部205とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設における貯留水に対して適用される遮光システムであって、
気泡発生装置と、
前記気泡発生装置に連結されて、前記貯留水の所定深さ位置に配置され、前記貯留水の水面の下方に広がる気泡の層を生成する気泡噴出部とを備えていることを特徴とする遮光システム。
【請求項2】
前記気泡噴出部は、水平方向に向けた吐出口を有しており、該吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離に基づいて、別の気泡噴出部又は前記貯留水を囲む壁が配置されている、請求項1記載の遮光システム。
【請求項3】
前記貯留水が配置された環境下における光強度を測定する第1センサと、
前記第1センサによって測定された光強度に基づいて、前記気泡発生装置の出力を制御する気泡発生量制御装置とを備える、請求項1又は2記載の遮光システム。
【請求項4】
前記気泡発生装置が作動するとき、前記貯留水の前記気泡の層が生成される水面下に設置され、水中の光強度を測定する第2センサと、
前記第2センサによって測定された光強度に基づいて、前記気泡発生装置の出力を制御する気泡発生量制御装置とを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の遮光システム。
【請求項5】
前記気泡発生装置は、気泡径100μm未満の気泡を生成するものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の遮光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設の貯留水における藻類の発生や塩素の光分解を抑制するために、気泡の層を設けて遮光するようにした遮光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設におけるフロック形成池、沈殿池、急速濾過地などの貯留水では、日中太陽光の照射環境下にある場合、滞留時間あるいは流速にも影響されるが、藻類が発生しやすいという問題があった。藻類が発生すると、例えば、炭酸同化作用によるpHの上昇、かび臭の発生に伴う活性炭使用量の増加、沈殿不良の発生、清掃頻度の増加、ろ過水の濁度の上昇など、様々な問題が生じる。
【0003】
また、日中太陽光の照射環境下にある場合、貯留水中の塩素が紫外線によって分解されるため、塩素の注入量を増加しなければならず、トリハロメタンなどの副生成物が増加するという問題もあった。
【0004】
藻類の発生や塩素の光分解を抑制する1つの手段としては、水中に射し込む太陽光を遮光する方法がある。遮光する手段として、例えば下記特許文献1には、複数のアルミニウム製の中空状押出形材からなる覆蓋材を浄化槽、上水路等の開口部に被覆並設してなる浄水場用覆蓋が記載されている。また、下記特許文献2には、太陽に照射される浄水場の沈殿池の水面に遮光性浮体を浮かべることを特徴とする浄水場の沈殿池での藻類発生防止方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-36210号公報
【特許文献2】特開平3-26306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような覆蓋材を被せる方法では、日常点検がしにくいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のような遮光性浮体を浮かべる方法では、天候により飛散の虞れがあり、定期的なメンテナンスが必要となるという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、水処理施設の貯留水における藻類の発生や塩素の光分解を抑制するため、メンテナンスが容易な遮光システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の遮光システムは、水処理施設における貯留水に対して適用される遮光システムであって、水中に気泡が含まれる気泡含有水を作成する気泡発生装置と、前記気泡発生装置に連結されて、前記貯留水の所定深さ位置に配置され、前記貯留水の水面の下方に広がる気泡の層を生成する気泡噴出部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の遮光システムにおいて、前記気泡噴出部は、水平方向に向けた複数の吐出口を有しており、該吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離に基づいて、別の気泡噴出部又は前記貯留水を囲む壁が配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記貯留水が配置された環境下における光強度を測定する第1センサと、前記第1センサによって測定された光強度に基づいて、前記気泡発生装置の出力を制御する気泡発生量制御装置とを備えることが好ましい。
【0012】
また、前記気泡発生装置が作動するとき、前記貯留水の前記気泡の層が生成される水面下に設置され、水中の光強度を測定する第2センサと、前記第2センサによって測定された光強度に基づいて、前記気泡発生装置の出力を制御する気泡発生量制御装置とを備えることが好ましい。
【0013】
更に、前記気泡発生装置は、気泡径100μm未満の気泡を生成するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遮光システムによれば、貯留水の水面の下方に広がる気泡の層によって太陽光を反射させ、その遮光効果によって藻類の発生や塩素の光分解を抑制することができる。
【0015】
また、水中に気泡が含まれる気泡含有水を作成する気泡発生装置と、気泡発生装置に連結されて、貯留水の所定深さ位置に配置され、貯留水の水面の下方に広がる気泡の層を生成する気泡噴出部とを設けるだけでよいので、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の遮光システムの一実施形態を示す説明図である。
図2】同実施形態の平面図である。
図3】気泡の到達距離を示す説明図である。
図4】気泡発生量制御装置の制御フローの第1の例を示すフローチャートである。
図5】気泡発生量制御装置の制御フローの第2の例を示すフローチャートである。
図6】気泡発生量制御装置の制御フローの第3の例を示すフローチャートである。
図7】気泡発生量制御装置の制御フローの第4の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の遮光システムの他の実施形態を示す説明図である。
図9】同実施形態の平面図である。
図10】本発明の遮光システムの更に他の実施形態を示す平面図である。
図11】気泡による遮光率を測定する試験方法を示す説明図である。
図12】水深50cmの深さから気泡を発生させて遮光率を測定した結果を示す図表である。
図13】水深50cmの深さから気泡を発生させた場合の単位表面積当たりの気泡の添加量と遮光率との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1図2には、本発明による遮光システムの一実施形態が示されている。
【0018】
この実施形態の遮光システム100は、浄水場のフロック沈殿池102に適用されたものである。すなわち、浄水場には、原水に図示しない凝集剤添加槽にて凝集剤を添加混合し、フロック形成池101に導入して、原水中に含まれる微細な固形物を凝集させてフロックを形成した後、フロック沈殿池102に導入して、フロックを沈殿させる操作が行われている。フロック沈殿池102では、水平方向の線速が、例えば0.3m/分程度の緩やかな速度で水が流れるため、太陽光がそのまま照射される環境下では、藻類が発生しやすくなる。また、塩素の光分解が生じやすくなる。
【0019】
この実施形態の遮光システム100は、フロック沈殿池102の貯留水中に微細な気泡を吹き込んで気泡の層ARを生成して、気泡の層ARによって太陽光を反射させることにより、遮光して、藻類の発生や増殖、並びに塩素の光分解を抑制するものである。
【0020】
そして、そのような光の強度にするには、気泡の層ARによる遮光率が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上にすることが望まれる。
【0021】
図1に示すように、遮光システム100は、気泡発生装置200を有している。この実施形態では、この気泡発生装置200には、気泡含有水を生成するための水を供給する水供給管201と、この気泡発生装置200にて気泡を吹込むことによって生成された気泡含有水を送り出す気泡含有水送出管202とが連結されている。気泡含有水送出管202は、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oに沿って延出され、所定長さ毎に第1分岐管203が連結されている。各第1分岐管203は、貯留水W中に挿入されて、それらの先端部には、フロック沈殿池102の幅方向に伸びる第2分岐管204が連結されている。
【0022】
図2に示すように、第2分岐管204は、フロック沈殿池102の水の流れ方向に沿って、所定の間隔Fで配列されている。そして、第2分岐管204には、その長さ方向に沿って所定の間隔で、複数の気泡噴出部205が設けられている。この実施形態では、気泡噴出部205は、水平方向に向けた吐出口を有している。この実施形態では、吐出口は、水の流れ方向Oに向けて開口しており、気泡含有水を水の流れ方向に噴出するようになっている。
【0023】
気泡発生装置200は、例えばマイクロバブル発生器を有しており、例えば、水供給管201から供給された水中に空気を吹き込んで、気泡を含む気泡含有水を生成することにより、気泡を生成する。気泡径は、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm以下であることが好ましい。このような微細気泡であれば、水中で浮上しにくく、遮光効果を高めることができる。
【0024】
微細気泡の浮上速度は、ストークスの公式により求められ、直径100μmの気泡は、325mm/minの速度で浮上する。また直径200μmの気泡は、1301mm/minの速度で浮上する。本システムにおいて、藻類の発生や塩素の光分解の抑制を考えた場合、水面下数10cm内に高濃度の気泡層を生成し、遮光する事が最も効果的な方法となる。従って、水平方向への拡散の効率化および水中での滞留時間を考慮した場合、100μm以上の気泡では、浮上速度が速く水深の浅い部分に遮光層を形成する事は吐出口の数、気泡含有水の吐出量などの観点から現実的ではない。
【0025】
マイクロバブル発生器は、各社から市販されており、当業者であれば、容易に入手することができる。水供給管201から気泡発生装置200に供給する水は、特に限定されないが、フロック沈殿池102を経て、膜ろ過装置に通されて急速ろ過した後の水が好ましく採用される。
【0026】
なお、この実施形態では、気泡発生装置200で作られた気泡含有水を、第2分岐管204の気泡噴出部205から噴出するようにしているが、気泡含有水を生成することなく気泡を生成できる気泡発生装置200を用いる場合には、気泡噴出部205からフロック沈殿池102の貯留水中に気泡を直接吹き込んで、気泡の層を生成してもよい。
【0027】
気泡噴出部205の水平方向における配列間隔(この実施形態の場合、気泡噴出部205を有する第2分岐管204の配列間隔となる)Fは、気泡噴出部205の吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離に基づいて、設定されることが好ましい。すなわち、上記配列間隔Fは、気泡噴出部205の吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離内に、別の気泡噴出部205又は貯留水を囲む壁(この実施形態ではフロック沈殿池102の壁)が配置されるような距離に設定されることが好ましい。
【0028】
ただし、気泡の層は、必ずしも水面の全面を覆う必要はない。藻類の発生や塩素の光分解効果が得られる必要な範囲において水面の一部を覆うだけでもよく、気泡噴出部205の水平方向における配列間隔Fが、気泡噴出部205の吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離以上に設定される場合も許容される。
【0029】
図3には、気泡の吹込みの水深(E)と、気泡の浮上速度(Cmm/min)と、水槽の流速(この実施形態ではフロック沈殿池102の水の流速)(Dmm/min)と、気泡の到達距離(H)との関係が示されている。この関係は、下記の式(1)、(2)、(3)で表される。
【0030】
上部に到達する時間(T) = 水深(E)÷浮上速度(C) …(1)
設置間隔(F)<泡の到達距離(H) = 上部に到達する時間(T)×流束(D) …(2)
水深(E)>浮上速度(C)×上部に到達する時間(T) = 浮上速度(C)×設置間隔(F) ÷ 流速(D) …(3)
なお、気泡径(A)は、浮上速度(Cmm/min)と相間関係を有しており、気泡径(A)が求められれば、ストークスの法則より、浮上速度(Cmm/min)を算出することができる。
【0031】
また、気泡径は、写真撮影法、音響式気泡径分布計測法、画像干渉法によって測定する事ができる。
【0032】
なお、本発明における気泡径は、写真撮影法で測定した平均気泡径である。すなわち、メスシリンダーにマイクロバブル(MB)水を流し、マイクロバブルの流入を止めた時点から、MB層の界面の浮上速度を計測し、求められた界面の浮上速度から平均気泡径を算出することができる。
【0033】
上記のような配列間隔で気泡噴出部205を配置することにより、気泡噴出部205の吐出口から噴出される気泡が水流に乗って移動しつつ水面に到達する距離内に、別の気泡噴出部205又は貯留水を囲む壁が配置されているので、貯留水の水面下を途切れることなく気泡の層で覆うことができ、水面の全体に遮光効果をもたらして、藻類の発生や塩素の光分解を効果的に抑制することができる。
【0034】
気泡噴出部205を設置する水深(E)は、前述した式で設定することができるが、あまり深い位置に設置すると、貯留水に撹拌流を発生させることになる。そこで、フロック沈殿池102のような沈殿池に適用する場合には、フロックの沈殿に悪影響を与えないような深さに設定するのが好ましい。
【0035】
一方で、気泡噴出部205を設置する水深(E)が浅すぎると、必要とされる遮光効果を得るための気泡含有量が増大するので、気泡発生装置200の出力を高める必要があり、エネルギーコストが増大するという問題がある。
【0036】
上記のような事情から、フロック沈殿池102のような沈殿池に設置する場合、気泡噴出部205の水深(E)は、フロック沈殿池102の深さG(図1参照)の10~20%の深さとすることが好ましく、5~10%の深さとすることがより好ましい。一般的な沈殿池であれば、気泡噴出部205の水深(E)は、20~80cmが好ましく、20~40cmがより好ましい。
【0037】
この実施形態においては、気泡発生装置200の出力を制御する気泡発生量制御装置206が設けられている。この気泡発生量制御装置206に関連して、貯留水が配置された環境下における光強度を測定する第1センサ207(例えば照度計)が設けられている。この実施形態の場合、第1センサ207は、水槽208内にフロック沈殿池102と同じ水を充填し、気泡噴出部205を設置する水深(E)と同じ深さに沈めて配置されているため、フロック沈殿池102と同じ環境下における光強度を測定できる。外光は、水槽208の水面のみから照射されるようにして、水槽208の水が入った部分の側壁は遮光されている。
【0038】
なお、遮光システム100(この実施形態においては、特にフロック沈殿池102)の周囲の光強度が高くない状況(例えば、曇天や雨など)等であれば、藻類の発生や塩素の光分解を抑制するために、気泡発生装置200から気泡を発生させる必要性は高くない。そのため、貯留水が配置された環境下における光強度は、遮光システム100が設置されている外部環境(フロック沈殿池102)を把握できる情報であればよく、換言すると、気泡発生装置200による気泡発生などの制御の要否を判断するために必要な情報であればよい。また、水槽208内にはフロック沈殿池102と異なる水を充填してもよいし、水中の光強度を測ることに限定されず、環境下における光強度を直接測るようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明において「光強度」とは、光の強さの指標となる各種の単位、例えば光量子密度(単位:μmol m-2 s-1)や、放射照度(単位:W m-2)や、照度(単位:lux)、遮光率などを包含する意味で用いられている。
【0040】
また、更なる実施形態として、フロック沈殿池102の気泡の層ARの下方に、その部分の光の強度を測定する第2センサ209(例えば照度計)を配置してもよい。第2センサ209は、気泡の層ARを通して入射される光の強度を測定し、フロック沈殿池102の所定の深さにおける実際の明るさを測定することができる。
【0041】
第1センサ207、第2センサ209は、いずれも気泡発生量制御装置206に接続されており、光強度の測定値を気泡発生量制御装置206に送るようになっている。第1センサ207、第2センサ209としては、例えば光量子密度(単位:μmol m-2 s-1)や、放射照度(単位:W m-2)や、照度(単位:lux)などで出力される光強度を測ることができる一般的なセンサが用いられる。
【0042】
なお、第1センサ207、第2センサ209による光強度の測定には、光量子密度等を測定することだけでなく、測定した光量子密度等から遮光率等を算出することや、天候や気温等に基づいて光強度を算出したり推定したりすることを含む。
【0043】
気泡発生量制御装置206における制御は、第1センサ207だけで行うこともでき、第2センサ209だけで行うこともでき、第1センサ207及び第2センサ209を併用して行うこともできる。以下に、それぞれの制御方法の具体例について図4図7を参照して説明する。
【0044】
図4には、第1センサ207を用いた気泡発生量制御装置206の制御フロー(第1の例)を示されている。
【0045】
まず、気泡発生量制御装置206は、第1センサ207の光強度を取得し(STEP01)、続いて、第1センサ207の光強度が所定値Iを超えているか否かを判定する(STEP02)。
【0046】
光強度が所定値Iを超えている場合、すなわち、水槽208に光が入射して所定の明るさとなっている場合には、STEP03に進む。一方、光強度が所定値Iを超えていない場合には、STEP05に進む。
【0047】
光強度が所定値Iを超えている場合(STEP02で「YES」)から説明する。この場合、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP03)。気泡発生装置200が作動中である場合には、フロック沈殿池102の表面は既に気泡で覆われているため、一連の処理を終了(エンド)する。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、STEP04に進む。
【0048】
気泡発生装置200が作動中でない場合(STEP03で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオンして作動させる(STEP04)。これにより、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させることができる。その後、一連の処理を終了(エンド)する。
【0049】
次に、光強度が所定値Iを超えていない場合(STEP02で「NO」)、すなわち、水槽208の環境がある程度、暗い場合を説明する。この場合も、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP05)。気泡発生装置200が作動中である場合には、STEP06に進む。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、一連の処理を終了(エンド)する。
【0050】
気泡発生装置200が作動中である場合(STEP05で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオフして作動を停止する(STEP06)。これは、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させる必要がないためである。その後、一連の処理を終了(エンド)する。
【0051】
なお、STEP02において、第1センサ207の光強度が所定値Iを超えているか否かを判定する場合の所定値Iは、貯留水が配置された環境下の明るさで何もしないときに藻類の発生が抑制されるか否かの境界値によって設定されることが好ましい。
【0052】
また、第1センサ207の代わりに第2センサ209を用いて、気泡の発生を制御することも可能である。図5には、第2センサ209を用いた気泡発生量制御装置206の制御フロー(第2の例)を示されている。
【0053】
気泡発生量制御装置206は、第2センサ209の光強度を取得し(STEP11)、続いて、第2センサ209の光強度が下限値Jを下回っているか否かを判定する(STEP12)。光強度が下限値Jを下回っている場合、すなわち、フロック沈殿池102に光が入射しているが、ある程度、暗い場合には、STEP13に進む。一方、光強度が下限値Jを超えている場合には、STEP14に進む。
【0054】
光強度が下限値Jを下回っている場合(STEP12で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200の出力を低下させる(STEP13)。これは、フロック沈殿池102の気泡発生を抑えても問題がないためである。その後、STEP11にリターンする。
【0055】
また、光強度が下限値Jを超えている場合(STEP12で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、第2センサ209の光強度が上限値Kを超えているか否かを判定する(STEP14)。光強度が上限値Kを超えている場合、すなわち、フロック沈殿池102に光が入射して所定の明るさとなっている場合には、STEP15に進む。一方、光強度が上限値Kを下回っている場合には、光強度は適正な範囲であるため、一連の処理を終了(エンド)する。
【0056】
光強度が上限値Kを超えている場合(STEP14で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200の出力を上昇させる(STEP15)。これは、フロック沈殿池102表面の気泡を増やす必要があるためである。その後、STEP11にリターンする。以上の一連の処理により、第2センサ209で取得される光強度は、適正な範囲に収まるようになる。
【0057】
なお、STEP12における下限値J、及びSTEP14における上限値Kは、藻類の発生が抑制される明るさで、かつ、気泡発生装置20による気泡発生量が過剰とならないような明るさの範囲に設定されることが好ましい。
【0058】
また、第1センサ207と第2センサ209の両方を用いて、気泡の発生を制御するようにしてもよい。図6には、第1センサ207と第2センサ209を用いた気泡発生量制御装置206の制御フロー(第3の例)を示されている。
【0059】
気泡発生量制御装置206は、第1センサ207と第2センサ209の光強度を取得し(STEP21)、続いて、第1センサ207の光強度が所定値Iを超えているか否かを判定する(STEP22)。光強度が所定値Iを超えている場合には、STEP23に進む。一方、光強度が所定値Iを超えていない場合には、STEP25に進む。
【0060】
光強度が所定値Iを超えている場合(STEP22で「YES」)から説明する。この場合、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP23)。気泡発生装置200が作動中である場合には、STEP27に進む。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、STEP24に進む。
【0061】
気泡発生装置200が作動中でない場合(STEP23で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオンして作動させる(STEP24)。これにより、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させることができる。その後、STEP27に進む。
【0062】
次に、光強度が所定値Iを超えていない場合(STEP22で「NO」)を説明する。この場合も、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP25)。気泡発生装置200が作動中である場合には、STEP26に進む。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、一連の処理を終了(エンド)する。
【0063】
気泡発生装置200が作動中である場合(STEP25で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオフして作動を停止する(STEP26)。これは、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させる必要がないためである。その後、一連の処理を終了(エンド)する。
【0064】
次に、気泡発生装置200が作動中である場合(STEP23で「YES」)、また、気泡発生装置200をオンした場合(STEP24)を説明する。この場合、気泡発生量制御装置206は、第2センサ209の光強度が下限値Jを下回っているか否かを判定する(STEP27)。光強度が下限値Jを下回っている場合には、STEP28に進む。一方、光強度が下限値Jを超えている場合には、STEP29に進む。
【0065】
光強度が下限値Jを下回っている場合(STEP27で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200の出力を低下させる(STEP28)。これは、フロック沈殿池102の気泡発生を抑えても問題がないためである。その後、STEP21にリターンする。
【0066】
また、光強度が下限値Jを超えている場合(STEP27で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、第2センサ209の光強度が上限値Kを超えているか否かを判定する(STEP29)。光強度が上限値Kを超えている場合には、STEP30に進む。一方、光強度が上限値Kを超えていない場合には、一連の処理を終了(エンド)する。
【0067】
光強度が上限値Kを超えている場合(STEP29で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200の出力を上昇させる(STEP30)。これは、フロック沈殿池102表面の気泡を増やす必要があるためである。その後、STEP21にリターンする。以上の一連の処理により、第1センサ207及び第2センサ209で取得される光強度は、適正な範囲に収まるようになる。
【0068】
さらに、第1センサ207と第2センサ209の両方を用いて、遮光率で気泡の発生を制御するようにしてもよい。図7には、第1センサ207と第2センサ209を用いた、遮光率による気泡発生量制御装置206の制御フロー(第4の例)を示されている。
【0069】
気泡発生量制御装置206は、第1センサ207と第2センサ209の光強度を取得し(STEP31)、続いて、第1センサ207の光強度が所定値Iを超えているか否かを判定する(STEP32)。光強度が所定値Iを超えている場合には、STEP33に進む。一方、光強度が所定値Iを超えていない場合には、STEP35に進む。
【0070】
光強度が所定値Iを超えている場合(STEP32で「YES」)から説明する。この場合、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP33)。気泡発生装置200が作動中である場合には、STEP37に進む。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、STEP34に進む。
【0071】
気泡発生装置200が作動中でない場合(STEP33で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオンして作動させる(STEP34)。これにより、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させることができる。その後、STEP37に進む。
【0072】
次に、光強度が所定値Iを超えていない場合(STEP32で「NO」)を説明する。この場合も、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200が作動中であるか否かを判定する(STEP35)。気泡発生装置200が作動中である場合には、STEP36に進む。一方、気泡発生装置200が作動中でない場合には、一連の処理を終了(エンド)する。
【0073】
気泡発生装置200が作動中である場合(STEP35で「YES」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200をオフして作動を停止する(STEP36)。これは、フロック沈殿池102の表面に気泡を発生させる必要がないためである。その後、一連の処理を終了(エンド)する。
【0074】
次に、気泡発生装置200が作動中である場合(STEP33で「YES」)、また、気泡発生装置200をオンした場合(STEP34)を説明する。この場合、気泡発生量制御装置206は、遮光率が所定値Lを超えているか否かを判定する(STEP37)。遮光率は、第2センサ209として遮光率用照度計を採用することで取得される(STEP31)。遮光率が所定値Lを超えている場合には、一連の処理を終了(エンド)する。一方、遮光率が所定値Lを超えていない場合には、STEP38に進む。
【0075】
遮光率が所定値Lを超えていない場合(STEP37で「NO」)、気泡発生量制御装置206は、気泡発生装置200の出力を上昇させる(STEP38)。これは、フロック沈殿池102表面の気泡を増やす必要があるためである。その後、STEP31にリターンする。以上の一連の処理によっても、第1センサ207及び第2センサ209で取得される光強度は、適正な範囲に収まるようになる。
【0076】
図8図9には、本発明による遮光システムの他の実施形態が示されている。なお、図1図7に示した実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0077】
この実施形態の遮光システム100aは、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oに対して交差する方向に気泡噴出部205の吐出口が向けられている点が、前記実施形態と相違している。
【0078】
すなわち、気泡発生装置200から、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oに向けて複数本の気泡含有水送出管202が延出されており、各気泡含有水送出管202には、その長さ方向に所定間隔で第1分岐管203が連結されている。第1分岐管203は、下方に延出されて、貯留水W中に挿入されており、その先端部に第2分岐管204が連結されている。
【0079】
この実施形態の場合、第2分岐管204は、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oに沿って所定長さで伸びており、水平方向に向けた複数の気泡噴出部205を有している。そして、フロック沈殿池102の幅方向に隣接して平行に並ぶ第2分岐管204の対向する部分には、互いに向き合う方向に配置された気泡噴出部205が配置されており、対向する気泡噴出部205からそれぞれ水平方向に気泡が噴出するようになっている。
【0080】
上記のように、この実施形態では、水の流れ方向Oに対して交差する方向に気泡が噴出されるので、気泡は、噴出方向の流れと、フロック沈殿池102の水の流れとが合わさった方向に流れる。また、フロック沈殿池102の幅方向に隣接して平行に並ぶ第2分岐管204の対向する部分に設けられた気泡噴出部205から、互いに向き合う方向(衝突する方向)に気泡が噴出されるので、フロック沈殿池102の水面の下方に、より均一に広がる気泡の層ARを生成することができる。
【0081】
図10には、本発明による遮光システムの他の実施形態が示されている。なお、図1図7に示した実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0082】
この遮光システム100bは、第2分岐管204が、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oの始端部と終端部とに、フロック沈殿池102の幅方向に伸びるように、それぞれ配置されている。そして、各第2分岐管204の対向する部分に、第2分岐管204の長さ方向に所定間隔で、複数の気泡噴出部205が形成されている。
【0083】
フロック沈殿池102の水の流れ方向Oの始端部に設けられた第2分岐管204の気泡噴出部205は、水の流れ方向Oに沿って気泡を噴出し、フロック沈殿池102の水の流れ方向Oの終端部に設けられた第2分岐管204の気泡噴出部205は、水の流れ方向Oとは逆流する方向に気泡を噴出する。
【0084】
その結果、フロック沈殿池102の始端部に設けられた気泡噴出部205から噴出された気泡の方が、フロック沈殿池102の終端部に設けられた気泡噴出部205から噴出された気泡よりも流速が早くなる。そして、フロック沈殿池102の水の流れ方向の途中でそれぞれの気泡噴出部205から噴出された気泡が衝突する領域が設けられ、フロック沈殿池102の水面の下方に、均一に広がる気泡の層ARを生成することができる。
【0085】
上記のように、第2分岐管204の気泡噴出部205の配置や、気泡噴出方向については、各種の態様が採用可能であり、適用する貯留水の環境条件に応じて、適宜設定することができる。
【0086】
なお、上記各実施形態は、フロック沈殿池102に適用されたものであるが、本発明の遮光システムは、例えば、覆蓋のない混和池、沈殿池やろ過池、着水井や配水池、貯水池などにも採用することができる。
【0087】
上記各実施形態によれば、水処理施設の貯留水における藻類の発生や塩素の光分解を抑制するために、メンテナンスが容易な遮光システムを提供することができる。さらに、覆蓋材のような大がかりな設備を必要とせず、比較的安価に設置できる点でも利点を有する。
【実施例0088】
<試験例1>
図11に示す実験装置を用いて、遮光に必要な泡の層の検討を行った。すなわち、50Lの水槽301にイオン交換水302を50L貯留させ、マイクロバブル発生器を有する気泡発生装置と連結して、両者の間に水を循環させながら、水中に50分間気泡の混入を行い、気泡含有水を生成した。この気泡含有水には、平均粒径50μm未満(浮上速度)の気泡が104個/mL以上含まれていた。
【0089】
一方、10Lメスシリンダー303の底部に、照度計304に接続されたセンサ305を配置した。また、メスシリンダー303の開口部上方には、LED懐中電灯306を配置して、メスシリンダー303の開口部に向けて光を照射できるようにした。
【0090】
そして、LED懐中電灯306でメスシリンダー303の開口部に向けて光を照射した状態で、メスシリンダー303に、上記気泡含有水を所定の割合で含有する水を、センサ305の水深が、50cmとなる量で注入し、照度計304によって20秒後及び2分後の照度を測定した。なお、メスシリンダー303の外周には、アルミ箔を巻いて、外周面から光が入射されないようにした。
【0091】
なお、気泡含有水を所定の割合で含有する水は、気泡含有水とイオン交換水とを所定の割合で混ぜることによって生成した。具体的には、気泡含有水を0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%含有する11種類の水について試験を行った。
【0092】
そして、イオン交換水100%の時の照度(Blank)と、気泡含有水を任意の割合で添加したときの照度(測定値)を比較し、遮光率80%以上になる希釈割合から、必要とされる気泡含有量を求めた。なお、遮光率は、下記の式(4)にて求めることができる。
【0093】
遮光率=(1-測定照度÷Blank照度)×100 …(4)
こうして試験した水深50cmの結果を図12に示す。また、この実験結果を、単位表面積当たりの気泡の添加量(個/m2)として遮光率を計算した結果を図13に示す。
【0094】
図12の結果から、水深50cmの位置において、気泡含有水の添加率が40%以上であれば、20秒後、2分後のいずれも、遮光率を80%以上にできることがわかる。また、図13の結果から、単位表面積当たりの気泡量としてみた場合にも、気泡の添加量が2.E+09個/m2であれば、遮光率を80%以上にできることがわかる。すなわち、気泡の層によって遮光されていることがわかる。
【符号の説明】
【0095】
100 遮光システム
101 フロック形成池
102 フロック沈殿池
200 気泡発生装置
201 水供給管
202 気泡含有水送出管
203 第1分岐管
204 第2分岐管
205 気泡噴出部
206 気泡発生量制御装置
207 第1センサ
209 第2センサ
AR 気泡の層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13