(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008505
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】送電回路及び受電回路
(51)【国際特許分類】
G08C 19/00 20060101AFI20220105BHJP
G08C 17/04 20060101ALI20220105BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220105BHJP
B60L 58/22 20190101ALI20220105BHJP
【FI】
G08C19/00 K
G08C17/04
H02J50/12
B60L58/22
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154446
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2017117998の分割
【原出願日】2017-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】太矢 隆士
【テーマコード(参考)】
2F073
5H125
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AB01
2F073AB06
2F073AB11
2F073BB02
2F073BB04
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC07
2F073CD11
2F073CD27
2F073DD01
2F073DD06
2F073DE02
2F073DE07
2F073EE12
2F073FF02
2F073FF04
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG03
2F073GG04
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC16
5H125CC01
5H125EE22
5H125FF16
(57)【要約】
【目的】電位差のあるブロック間での信号伝送を信頼性が高く且つ小規模な構成で行うことが可能な信号伝送装置及び電池監視装置を提供する。
【構成】第1電圧に基づいて動作を行う動作回路と、第1電圧に基づく電気信号を計測して計測データを得る計測回路と、第1電圧より電圧レベルの低い第2電圧に基づいて動作し、計測データに基づいて高電圧回路の動作を制御する処理制御回路と、を有する動作装置との間で信号を送受信する。送電コイル及び送電側共振キャパシタからなる送電側共振回路を有し、送電コイルからの交流磁界により非接触で処理制御回路からの電力を伝送する一方、送電コイルを介して計測データを受信して動作装置の処理制御回路に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの第1電圧に基づいて動作を行う動作回路と、前記第1電圧を基準とする電気信号を計測して計測データを得る計測回路と、前記第1電圧を前記第1電圧よりも電圧レベルの低い電圧に変換して得られた第2電圧に基づいて動作し、前記計測データに基づいて前記動作回路の動作を制御する処理制御回路と、を有する動作装置との間で信号の送受信を行う送電回路であって、
送電コイル及び送電側共振キャパシタからなる送電側共振回路を有し、前記送電コイルからの交流磁界により非接触で前記処理制御回路からの電力を伝送する一方、前記送電コイルを介して前記計測データを受信して前記動作装置の前記処理制御回路に供給することを特徴とする送電回路。
【請求項2】
前記送電コイルに駆動電流を供給して交流磁界を発生させる駆動回路と、
前記駆動回路を制御する駆動制御回路と、
をさらに有し、
前記駆動回路は、前記駆動電流を測定する電流測定回路を含み、
前記駆動制御回路は、前記電流測定回路の測定結果に基づいて前記駆動回路を制御することを特徴とする請求項1に記載の送電回路。
【請求項3】
前記送電コイルは、
複数の配線層を有する基板における第1配線層に配され、前記送電側共振キャパシタに一端が接続された連続した導線からなる配線部と、
第1及び第2の端部を有し、前記送電側共振キャパシタに前記第1の端部が接続され、前記第1配線層上に配された渦巻形状の連続する導線からなり、前記第2の端部と前記配線部の他端との間を横切る導線部分を有する渦状部と、
前記基板の第2配線層に配された連続する導線部分を含み、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられた一対のビアを介して、前記渦状部の前記第2の端部と前記配線部の他端とを接続する接続部と、
を有することを特徴とする請求項1または2記載の送電回路。
【請求項4】
電源からの第1電圧に基づいて動作を行う動作回路と、前記第1電圧を基準とする電気信号を計測して計測データを得る計測回路と、前記第1電圧を前記第1電圧よりも電圧レベルの低い電圧に変換して得られた第2電圧に基づいて動作し、前記計測データに基づいて前記動作回路の動作を制御する処理制御回路と、を有する動作装置との間で信号の送受信を行う受電回路であって、
受電コイル及び受電側共振キャパシタからなる受電側共振回路を有し、交流磁界により前記受電コイルに非接触で伝送された電力を前記計測回路に供給する一方、前記計測回路から取得した前記計測データを送信することを特徴とする受電回路。
【請求項5】
前記受電側共振回路に接続される負荷の状態を負荷切替信号に応じて切り替え可能な負荷切替回路をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の受電回路。
【請求項6】
前記受電コイルは、
前記第2配線層に配され、前記受電側共振キャパシタに一端が接続された連続した導線からなる配線部と、
第1及び第2の端部を有し、前記受電側共振キャパシタに前記第1の端部が接続され、前記第2配線層上に配された渦巻形状の連続する導線からなり、前記第2の端部と前記配線部の他端との間を横切る導線部分を有する渦状部と、
前記第1配線層に配された連続する導線部分を含み、前記第1配線層と前記第2配線層との間に設けられた一対のビアを介して、前記渦状部の前記第2の端部と前記配線部の他端とを接続する接続部と、を有することを特徴とする請求項4または5記載の受電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送回路、電池監視装置及び電池監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の電池装置では、電池を構成する電池セルの個々の電圧や温度等の多くの情報を監視しつつ、装置全体の制御を行う。例えば、かかる電池装置には、装置全体を制御する制御回路と、個別の電池セルの電圧や温度測定を行うオペアンプ等で構成される計測回路とが設けられている。制御回路は、計測回路によって計測された電圧や温度などの情報に基づいて制御を行う。
【0003】
電池は多数の電池セルが直列接続されることにより構成されており、両端の電位差は数百ボルトに及ぶ。さらに、電気自動車等の加速や減速による電流量や極性の変化により、各電池セルに接続された端子の電位は大きく変動する。一方、装置全体を制御する制御回路は、5V以下で動作するデジタル回路である。このため、電圧や温度などの情報を、数百ボルトの電位差のあるブロック間で伝送する必要がある。電位差があるブロック間では、絶縁しつつ信号伝送を行う必要がある。
【0004】
電位差のあるブロック間で絶縁しつつ信号伝送を行う装置として、フォトカプラ及び絶縁トランスを用いた装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電位差のあるブロック間における信号伝送では、上記の従来技術のようにトランスやフォトカプラ、高耐圧の半導体部品等が用いられていたが、これらの部品は大きく且つ高価であった。高信頼性が求められる装置では伝送経路が二重化される必要があるが、その場合には高耐圧の半導体部品やトランス、フォトカプラが2倍必要となり、さらに大きく、高価になってしまう。
【0007】
また、個別の電池セルの電圧や温度測定のためにオペアンプ等で構成される計測回路が設けられ、この計測回路への電力供給が必要である。計測回路に個別の電池セルから電力供給することも考えられるが、それでは当該電池セルが完全放電すると動作できなくなってしまう。
【0008】
このほか、100V以上の商用交流電源で動作する産業用機器、事務機器、家庭電化機器、あるいは太陽光発電応用機器においても、高電圧の電力線の電圧や電流を計測し、低電圧動作のデジタル回路で処理・制御する必要があり、同様の課題がある。
【0009】
また、これらの機器ではチョッパ制御などトランジスタやサイリスタのオンオフのタイミングによる制御を行うため、情報授受のタイミングが重要で、情報伝達時間が大きいことや遅延時間が変動することは許容できないという問題があった。
【0010】
また、高耐圧の半導体部品やトランス、フォトカプラは物理的に固定されており、送信側と受信側の位置を変動させたり、回転させたりすることができない。これらの着脱のためには接点を持つコネクタが必要で、接続信頼性が課題となる。また、水中に浸すこともできない。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電位差のあるブロック間での信号伝送を信頼性が高く且つ小規模な構成で行うことが可能な信号伝送装置及び電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る送電回路は、電源からの第1電圧に基づいて動作を行う動作回路と、前記第1電圧を基準とする電気信号を計測して計測データを得る計測回路と、前記第1電圧を前記第1電圧よりも電圧レベルの低い電圧に変換して得られた第2電圧に基づいて動作し、前記計測データに基づいて前記動作回路の動作を制御する処理制御回路と、を有する動作装置との間で信号の送受信を行う送電回路であって、送電コイル及び送電側共振キャパシタからなる送電側共振回路を有し、前記送電コイルからの交流磁界により非接触で前記処理制御回路からの電力を伝送する一方、前記送電コイルを介して前記計測データを受信して前記動作装置の前記処理制御回路に供給することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る受電回路は、電源からの第1電圧に基づいて動作を行う動作回路と、前記第1電圧を基準とする電気信号を計測して計測データを得る計測回路と、前記第1電圧を前記第1電圧よりも電圧レベルの低い電圧に変換して得られた第2電圧に基づいて動作し、前記計測データに基づいて前記動作回路の動作を制御する処理制御回路と、を有する動作装置との間で信号の送受信を行う受電回路であって、受電コイル及び受電側共振キャパシタからなる受電側共振回路を有し、交流磁界により前記受電コイルに非接触で伝送された電力を前記計測回路に供給する一方、前記計測回路から取得した前記計測データを送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る信号伝送装置によれば、電位差のあるブロック間での信号伝送を信頼性が高く且つ小規模な構成で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の信号伝送装置を含む動作装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】送電コイル及び受電コイルの導体パターンの平面図(a)及び断面の斜視図(b)である。
【
図5】送電コイル及び受電コイルの導体パターンと共振キャパシタとの位置関係を示す平面図である。
【
図6】送電コイル及び受電コイルの導体パターンの他の例を示す平面図である。
【
図7】送電コイル及び受電コイルの導体パターンの他の例を示す平面図である。
【
図8】実施例2の信号伝送装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】タイミング通知の動作を含む送電回路及び受電回路の動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施例3の電池監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】受電側回路を含む受電ブロックの詳細を示すブロック図である。
【
図12】電池監視装置の別の構成例を示すブロック図である。
【
図13】電池監視動作を示すフローチャートである。
【
図14】受電側回路が、共振切替回路を有する場合の回路例を示す図である。
【
図15】電池監視装置の別の構成例を示すブロック図である。
【
図16】電池監視装置のアンテナ構造を模式的に示す図である。
【
図17】電池監視装置のアンテナ構造を模式的に示す図である。
【
図19】送電コイルに直列にキャパシタが接続された電池監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図20】受電コイルに直列にキャパシタが接続された電池監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】実施例4の電池監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図22】電池監視装置のアンテナ構造を模式的に示す図である。
【
図23】電池監視装置のアンテナ構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0017】
図1は、本実施例の動作装置100、受電回路200及び送電回路300を含む装置の全体構成を示すブロック図である。受電回路200及び送電回路300は、信号伝送装置400を構成している。
【0018】
動作装置100は、高電圧回路10、トランス11、整流回路12、低電圧回路13及び計測回路14を含む。
【0019】
高電圧回路10は、例えば電動機、加熱装置、電気炉、化学反応層等の、高電圧の交流電圧に基づいて動作する高電圧動作回路である。高電圧回路10は、交流電源ACSから供給された交流電圧に基づいて動作を行う。交流電源ACSは、例えばAC100Vの商用電源交流を送出する電源である。
【0020】
トランス11は、交流電源ACSと高電圧回路10とを接続する電圧供給ラインに並列に設けられており、交流電源ACSから送出された交流電圧の電圧レベルを、例えば100Vから5Vに変換する。
【0021】
整流回路12は、例えば4つの整流用のダイオードが接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタを含む。整流回路12は、トランス11により電圧レベルが変換された交流電圧(例えば、AC5V)を全波整流及び平滑化して、直流電圧(例えば、DC5V)を生成する。整流回路12は、生成した直流電圧を低電圧回路13に供給する。
【0022】
低電圧回路13は、例えばデジタル回路やCPUから構成されており、制御信号CSを供給することにより、高電圧回路10や装置全体の制御を行う。また、低電圧回路13は、送電回路300に所定の電力V1を供給する。低電圧回路13は、整流回路12から供給された直流電圧に基づいてこれらの動作を行う。
【0023】
計測回路14は、交流電源ACSの電圧を抵抗R1(例えば、100kΩ)により分圧して測定する。また、計測回路14は、交流電源ACSに接続された抵抗R2(例えば1Ω)の両端電圧により交流電流を測定する。計測回路14は、測定した電圧値及び電流値をAD変換してデータとして抽出し、計測データMdとして受電側回路20に供給する。
【0024】
受電回路200は、受電コイルRC及び受電側回路20から構成されている。送電回路300は、送電コイルTC及び送電側回路30から構成されている。
【0025】
図2は、受電回路200の構成を示すブロック図である。
【0026】
受電コイルRCは、共振キャパシタC1とともに共振回路21を構成している。受電コイルRC及び共振キャパシタC1は、送電回路300の送電コイルTCが発生する高周波(例えば、13.56MHz)の交流磁界に磁気結合し、当該交流磁界に対応した交流電圧(高周波信号)を生成して、これをラインL1及びL2に印加する。なお、共振回路21は受電コイルRC及び共振キャパシタC1が並列に接続された並列共振回路として構成されているが、直列共振回路であっても良く、両者の組み合わせであっても良い。
【0027】
整流回路22は、4つの整流用のダイオードD1~D4が接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタSCを含む。整流回路22は、ラインL1及びL2の交流電圧(高周波電力)を全波整流及び平滑化して直流電圧に変換し、ラインL5及びL6に印加して電源及びバイアス回路23に供給する。
【0028】
電源及びバイアス回路23は、通信回路26及び制御回路27に電源電圧を供給する電源回路24と、通信回路26及び制御回路27にバイアス電圧及びバイアス電流を供給するバイアス回路25と、から構成されている。
【0029】
通信回路26は、電源回路24からの電源電圧、バイアス回路25からのバイアス電圧及びバイアス電流に基づいて動作し、受電コイルRCからの高周波信号をクロックとして、ASK(Amplitude Shift Keying)変調による双方向通信を行う。通信回路26は、受電コイルRCを介して送電側回路30との間で双方向通信を行う。
【0030】
制御回路27は、電源回路24からの電源電圧、バイアス回路25からのバイアス電圧及びバイアス電流に基づいて動作し、通信回路26とデータ及びクロックをやり取りすることにより受電側回路20全体の動作を制御する。
【0031】
図3は、送電回路300の構成を示すブロック図である。
【0032】
交流信号源31は、水晶発振回路等により構成されており、13.56MHzの交流信号を生成して、駆動回路32に供給する。
【0033】
駆動回路32は、交流信号源31から供給された交流信号の電力を増幅して駆動電流を生成し、ラインL3及びL4に送出する。これにより、送電コイルTCには高周波電流が流れる。
【0034】
制御回路33は、通信回路34との間でデータ及びクロックのやり取りを行い、送電側回路31全体の動作を制御する。
【0035】
通信回路34は、送電コイルTCを介して、ASK変調による双方向通信を行う。なお、通信回路34は、NFC(Near Field Communication)通信方式等を用いて通信を行っても良い。
【0036】
送電コイルTCは、共振キャパシタC2とともに共振回路35を構成している。送電コイルTC及び共振キャパシタC2は、駆動回路32から供給された駆動電流に基づいて、交流磁界を発生させる。なお、共振回路35は送電コイルTC及び共振キャパシタC2が並列に接続された並列共振回路として構成されているが、直列共振回路であっても良く、両者の組み合わせであっても良い。
【0037】
送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による通信では、例えば変調指数10%程度のASK変調を用いる。これにより、電力供給を行いつつ通信を行うことが出来る。
【0038】
次に、再び
図1を参照しつつ、本実施例の信号伝送装置400の動作について説明する。
【0039】
まず、動作装置100が起動されると、交流電源ACSからの交流電圧AC100Vをトランス11及び整流回路12で変換することにより得られた直流電圧DC5Vに基づいて、低電圧回路13が動作を開始する。低電圧回路13は、制御信号CSを供給して、高電圧回路10を動作させる。これにより、動作装置100が動作を開始する。また、低電圧回路13は、送電回路300の送電側回路30に電力V1を供給する。
【0040】
送電側回路30は、低電圧回路13から電力V1の供給を受け、13.56MHzの高周波電力を送電コイルTCに印加して、高周波の交流磁界(以下、高周波磁界と称する)を発生させる。送電コイルTC及び受電コイルRCは、発生した高周波磁界により磁界結合し、電磁誘導により高周波電力を発生させる。受電側回路20には、受電コイルRCを介して、高周波電力及び13.56MHzのクロックが供給される。
【0041】
受電側回路20は、受電コイルRCを介して得た高周波電力の一部を、電力V2として計測回路14に供給する。計測回路14は、交流電源ACSの電圧及び電流を測定し、AD変換して計測データMdを生成する。計測回路14は、計測データMdを受電側回路20に供給する。
【0042】
受電側回路20は、計測データMdを受電コイルRCを介して送電回路300に送信する。送電回路300の送電側回路30は、送電コイルTCを介して計測データMdを受信する。
【0043】
送電側回路30は、計測データMdを低電圧回路13に供給する。低電圧回路13は、計測データMdに基づいて各種判断を行い、高電圧回路10を制御する。
【0044】
以上のように、本実施例の信号伝送装置400では、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による13.56MHzの高周波磁界を用いて、計測データMdのやり取り及び計測回路14への電力供給を行う。
【0045】
本実施例の信号伝送装置400によれば、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により信号伝送を行うことが出来るため、電気的絶縁を容易に実現することが出来る。従って、フォトカプラやトランスといった高価で大型の部品が不要である。
【0046】
また、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により計測回路14に電力供給を行うことが出来るため、センサ回路、信号処理のためのオペアンプ回路、ADコンバータ回路、さらには演算処理を行うデジタル回路を計測回路14として配置することが出来る。従って、高度な計測及びデータ処理や、通信データの圧縮等、高機能且つ高性能な装置を実現することができる。
【0047】
また、送電コイルTC、受電コイルRCはそれぞれ磁性シート等によって外界から遮断することが可能であり、外部からの干渉や情報漏洩を容易に防止することができる。
【0048】
また、送電コイルTCと受電コイルRCとは着脱可能であり、互いに回転したり位置変化したりしながら動作させることも可能であるため、電気的接点を無くして安価で信頼度の高い信号接続点を作成することができる。
【0049】
また、送電コイルTC及び受電コイルRCが水中に浸された状態でも動作可能であるため、海中や水中での計測データの授受にも用いることができる。
【0050】
なお、磁界による計測回路14等への電力供給は、磁界結合による通信動作と並行して同時に行っても良いし、通信を行わない無変調の高周波磁界で行っても良い。
【0051】
次に、送電コイルTC及び受電コイルRCの構成について、
図4(a)及び(b)を参照して説明する。
【0052】
送電コイルTC及び受電コイルRCは、絶縁材質の基板(例えば、基板材料FR-4、厚さ1.6mm)の両面に設けられた第1配線層及び第2配線層のうち、第1配線層に送電コイルの導体パターンを形成し、第2配線層に受電コイルの導体パターンを形成し、さらに第1配線層と第2配線層との間を接続するビアに配線を設けることにより形成されている。
【0053】
図4(a)は、送電コイルTCの導体パターンを基板の第1配線層側から上面視した場合の平面図、及び受電コイルRCの導体パターンを基板の第2配線層側から上面視した場合の平面図である。
図4(b)は、
図4(a)の破線部分における送電コイルTC及び受電コイルRCの断面の斜視図である。
【0054】
送電コイルTC及び受電コイルRCは、例えば35μm厚の銅箔からなる導線が、2ターン以上(1巻きを超える巻き数)の渦巻形状に形成された導体パターンを有する。送電コイルTCの導体パターンの端部は、送電側回路30に接続されている。受電コイルRCの導体パターンの端部は、受電側回路20に接続されている。
【0055】
送電コイルTCは、
図4(a)に示すように、共振回路を構成する共振キャパシタC2(図示せず)に一端が接続された連続した導線からなる配線部WP1と、共振キャパシタC2に第1の端部が接続された渦巻形状の連続する導線からなる渦状部SP1と、を有する。渦状部SP1は、渦状部SP1の第2の端部及び配線部WP1の他端(図中、×印で示す)の間を横切る導線部分を有する。
【0056】
また、送電コイルTCは、渦状部SP1の第2の端部と配線部WP1の他端とを接続する接続部を有する。当該接続部は、第2配線層に設けられた連続する導線部分CP1と、第1配線層と第2配線層との間に設けられた一対のビアを通るビア配線部VPと、から構成されている。すなわち、導線部分CP1及びビア配線部VPにより、送電コイルTCの布線の交差が実現されている。
【0057】
受電コイルRCは、共振回路を構成する共振キャパシタC1(図示せず)に一端が接続された連続した導線からなる配線部WP2と、共振キャパシタC1に第1の端部が接続された渦巻形状の連続する導線からなる渦状部SP2と、を有する。渦状部SP2は、渦状部SP2の第2の端部及び配線部WP2の他端(図中、×印で示す)の間を横切る導線部分を有する。
【0058】
また、受電コイルRCは、渦状部SP2の第2の端部と配線部WP2の他端とを接続する接続部を有する。当該接続部は、
図4(a)に示すように第1配線層に設けられた連続する導線部分CP2と、
図4(b)に示すように第1配線層と第2配線層との間に設けられた一対のビアを通るビア配線部VPと、から構成されている。すなわち、導線部分CP2及びビア配線部VPにより、受電コイルRCの布線の交差が実現されている。
【0059】
送電コイルTCの接続部の導線部分CP1は、第2配線層において受電コイルRCの渦状部SP2とは離間した位置(すなわち、絶縁された位置)に設けられている。同様に、受電コイルRCの接続部の導線部分CP2は、第1配線層において送電コイルTCの渦状部SP1とは離間した位置(すなわち、絶縁された位置)に設けられている。
【0060】
また、送電コイルTCの接続部の導線部分CP1は、第2配線層において受電コイルRCの渦状部SP2の内径より内側に配置されている。受電コイルRCの接続部の導線部分CP2は、第1配線層において送電コイルTCの渦状部SP1の内径より内側に配置されている。
【0061】
送電コイルTCの渦状部SP1及び受電コイルRCの渦状部SP2は、導線部分CP1及び導線部分CP2が位置する部分を除いて、第1配線層、基板及び第2配線層を介して重なり合うように配置されている。
【0062】
送電コイルTC及び受電コイルRCは、13.56MHzの高周波磁界を扱うコイルであり、0.5~1マイクロヘンリー程度のインダクタンスを有することが好ましい。その理由は、コイルのリアクタンスが42.6~85.2Ω程度で、電子機器でよく用いられる5V程度の電源電圧で扱うのに適しているからである。一方、コイルの外径サイズとしては、装置サイズの都合から20mm程度であることが好ましい。これらの条件を満たすためには、コイルは2ターン以上(1巻きを超える巻き数)の渦巻形状に形成されていることが好ましく、絶縁しながら交差することが必要となる。
【0063】
本実施例の送電コイルTC及び受電コイルRCでは、渦状部(SP1、SP2)とは反対側の配線層に設けられた導線部分(CP1、CP2)と一対のビアに設けられたビア配線部(VP)により、絶縁しながらの交差が実現されている。この構成によれば、4層等の多層の基板を用いず、安価な2層のプリント基板で絶縁しながらの交差を実現することができる。
【0064】
また、各々のコイルの交差する領域(以下、交差領域と称する)において若干の乱れが発生するが、それぞれの自己インダクタンスと2つのコイルの結合係数の若干の変動のみで、動作や特性への影響は十分に小さい。
【0065】
また、送電コイルTCと受電コイルRCとの絶縁耐量は、表裏の導体間に挟まる絶縁基板の厚さと、第1配線層における送電コイルTCの導体パターン(渦状部SP1、配線部WP1)と受電コイルRCの導体パターン(導線部分CP2)との面方向の距離と、第2配線層における受電コイルRCの導体パターン(渦状部SP2、配線部WP2)と送電コイルTCの導体パターン(導線部分CP1)との面方向の距離と、をそれぞれ安全なサイズに設定することにより、確保することができる。この際、所望の絶縁距離に応じて、それぞれの層の送電コイルTCの導体パターンと受電コイルRCの導体パターンとの間隔を広くとることが可能である。
【0066】
また、交差する領域(導線部分CP2、CP1)をそれぞれ渦状部(SP1、SP2)の内径よりも内側に設けているため、専有面積を増加させることなく、小型の装置を実現することができる。
【0067】
図5は、送電コイルTC及び受電コイルRCの導体パターンと共振キャパシタC1及びC2との位置関係を示す平面図である。
【0068】
配線部WP1及び渦状部SP1の共振キャパシタC2との接続ライン(図では、配線部WP1と渦状部SP1とが並走する直線部分)には、共振キャパシタC2をはんだ付け接続するためのランドパタンC2a及びC2bが設けられている。ランドパタンC2a及びC2bは、送電コイルTCのコイル部分の配線間隔の3倍以内の間隔に設けられている。
【0069】
同様に、配線部WP2及び渦状部SP2の共振キャパシタC1との接続ライン(図では、配線部WP2と渦状部SP2とが並走する直線部分)には、共振キャパシタC1をはんだ付け接続するためのランドパタンC1a及びC1bが設けられている。ランドパタンC1a及びC1bは、受電コイルRCのコイル部分の配線間隔の3倍以内の間隔に設けられている。
【0070】
送電コイルTC及び受電コイルRCの導体パターンが層間で添う長さが長いほど、相互に鎖交する磁力線が増えて結合係数を大きくすることができる。また、各コイルと各共振キャパシタとの経路には、共振時に大きな電流が流れる。キャパシタを直近に配置することにより、自己鎖交磁力線を減らして結合係数の低下を防ぐことができる。
【0071】
なお、上記とは異なり、
図6に示すように、交差領域の一方をコイルの内径の内側(すなわち、渦状部の内側)に配置し、他方をコイルの外径の外側(すなわち、渦状部の外側)に配置しても良い。例えば、プリント基板のいずれかの面において絶縁確保のための面方向の距離を大きくとる必要がある場合に、交差領域をコイルの外径の外側に配置することにより、内側に配置する場合よりも絶縁距離を大きくとりつつ、専有面積の増加を最低限に留めることが出来る。
【0072】
また、
図7(a)及び(b)に示すように、交差領域の双方をコイルの外径路の外側に配置しても良い。プリント基板の双方の面において絶縁確保のための面方向の距離を大きくとる必要がある場合には、交差領域をコイルの外径の外側に配置することにより、内側に配置する場合よりも絶縁距離を大きくとりつつ、専有面積の増加を最低限に留めることが出来る。
【0073】
なお、第1配線層に受電コイルRCを形成し、第2配線層に送電コイルTCを形成しても良い。
【0074】
また、
図4(a)及び(b)、
図5、
図6、
図7(a)及び(b)では送電コイルTC及び受電コイルRCが長方形の形状を有する例を示しているが、屈曲部を曲線としても良く、正方形、円形、楕円形、多角形等としても良い。
【0075】
また、導体層を第1配線層及び第2配線層の2層としているが、2層以上の多層基板の複数の導体層を用いても良い。例えば、4層の導体層のうち中間の2つを配線層として用いることにより、各コイルの表面を絶縁することができる。
クランプ回路28は、ラインL5とL6との間の整流回路22の出力側に設けられている。クランプ回路28は、ツェナーダイオード及び接続スイッチを含む。クランプ回路28は、制御回路27からの負荷切替信号の供給に応じて接続スイッチの状態をオン又はオフに切り替える。これにより、整流回路22の負荷状態が変化し、高周波磁界の状態が変化する。すなわち、クランプ回路28は、負荷切替信号に応じて負荷状態を切り替える負荷切替回路である。
電流測定回路36は、駆動回路32に設けられている。電流測定回路36は、ラインL3及びL4を流れる電流に基づいて、高周波磁界の変化を検出し、検出結果を制御回路33に通知する。
まず、送電回路310が起動し、送電コイルTCから高周波磁界を発生させる(ステップS101)。送電回路310は、受電回路210に電力供給及びクロック供給を行う。受電回路210は、電力供給及びクロック供給に応じて起動する(ステップS201)。
送電回路310及び受電回路210は、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合を介して双方向通信により、通信メッセージの送受信を行う。送電回路310は、通信メッセージの送受信と並行して、電力供給及びクロック供給を継続する。そして、送電回路310及び受電回路210の各々は、通信メッセージの送受信により得た設定情報に基づいて、初期設定を行い、正常に動作を行える状態であるか否かを診断する正常性診断を行う(ステップS102、S202)。
受電回路210の制御回路27は、高周波磁界が定常状態であるか否かを判定する(ステップS203)。定常状態ではないと判定すると(ステップS203:No)、ステップS210に移行し、動作を停止する。
タイミング通知が必要であると判定すると(ステップS204:Yes)、制御回路27は、クランプ回路28を制御してオン又はオフの状態を切り替える(ステップS205)。これにより、高周波磁界が変動する。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界が定常状態か否かを判定する(ステップS103)。定常状態ではないと判定すると(ステップS103:No)、ステップS109に移行し、高周波磁界及び装置の動作を停止する。
一方、定常状態であると判定すると(ステップS103:Yes)、電流測定回路36は、高周波磁界の変動による電流変動を検出し、検出結果を制御回路33に通知する(ステップS104)。
送電回路310の制御回路33は、受電回路210との間での情報授受(通信)が必要か否かを判定する(ステップS105)。同様に、受電回路210の制御回路27は、送電回路310との間での情報授受(通信)が必要か否かを判定する(ステップS206)。
受電回路210との間での情報授受が必要であると判定すると(ステップS105、S206:Yes)、送電回路310及び受電回路210は、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により通信動作を行い、受電回路210との間での通信メッセージを含む情報の授受を行う(ステップS106、S207)。送電回路310は、通信動作と並行して受電回路210に電力供給及びクロック供給を行う。
受電回路210は、送電回路310との間での情報授受が必要でないと判定すると(ステップS206:No)、待機動作を行う(ステップS208)。送電回路310は、受電回路210との間での情報授受が必要でないと判定すると(ステップS105:No)、送電コイルTCによる高周波磁界の発生を継続する(ステップS107)。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続するか否かを判定する(ステップS108)。同様に、受電回路210の制御回路27は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続するか否かを判定する(ステップS209)。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続すると判定すると(ステップS108:Yes)、ステップS103に戻って再び高周波磁界が定常状態か否かの判定を行う。同様に、受電回路210の制御回路27は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続すると判定すると(ステップS209:Yes)、ステップS203に戻って再び高周波磁界が定常状態か否かの判定を行う。
送電回路310は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続しないと判定すると(ステップS108:No)、高周磁界を停止し、当該動作を停止する(ステップS109)。受電回路210は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続しないと判定すると(ステップS209:No)、当該動作を停止する(ステップS210)。
本実施例の信号伝送装置410によれば、クランプ回路28及び電流測定回路36の動作により、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による通信とは別に、任意のタイミングで受電回路210から送電回路310に通知を行うことができる。その際、クランプ回路28の電圧を電源及びバイアス回路23が動作可能な電圧(例えば、3V)に確保することにより、受電回路210から送電回路310への通知を行いつつ、送電コイルTC及び受電コイルRCを用いた通信動作を並行して行うことができる。