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  • 特開-めっき材料及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085602
(43)【公開日】2022-06-08
(54)【発明の名称】めっき材料及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/10 20060101AFI20220601BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20220601BHJP
   C25D 5/48 20060101ALI20220601BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C25D5/10
C25D5/16
C25D5/48
H01L23/50 D
H01L23/50 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197367
(22)【出願日】2020-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康則
(72)【発明者】
【氏名】川村 高広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 良聡
【テーマコード(参考)】
4K024
5F067
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA11
4K024AA12
4K024AB03
4K024AB09
4K024BA09
4K024BB09
4K024CA01
4K024CA04
4K024CA06
4K024CA12
4K024CB26
4K024DA02
4K024DA03
4K024DA04
4K024DB03
4K024GA16
5F067AA04
5F067DC11
5F067DC18
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】半田濡れ性および樹脂密着性が良好な、めっき材料及び電子部品を提供する。
【解決手段】めっき材料は、表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止するめっき材料であって、導電性基材と、導電性基材上に設けられた粗化めっき層と、粗化めっき層上に設けられた貴金属めっき層を有する。貴金属めっき層側から観察倍率50000倍のEPMAによるマッピング分析を実施したときの、貴金属めっき層の最表層成分の最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を最表層成分による被覆箇所と定義した場合に、めっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率が、観察視野面積の70%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止するめっき材料であって、
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられた粗化めっき層と、
前記粗化めっき層上に設けられた貴金属めっき層と、
を有するめっき材料であり、
前記貴金属めっき層側から観察倍率50000倍のEPMAによるマッピング分析を実施したときの、前記貴金属めっき層の最表層成分の最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を前記最表層成分による被覆箇所と定義した場合に、前記めっき材料の表面に対する前記最表層成分の被覆率が、観察視野面積の70%以上である、めっき材料。
【請求項2】
前記貴金属めっき層側から測定した算術平均粗さSaが0.1~0.3μmである、請求項1に記載のめっき材料。
【請求項3】
前記貴金属めっき層の平均厚さが、0.006~0.1μmである、請求項1または2に記載のめっき材料。
【請求項4】
前記貴金属めっき層が、パラジウムめっき及び金めっきからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のめっき材料。
【請求項5】
前記貴金属めっき層が、
前記粗化めっき層上に設けられた、平均厚さ0.005~0.05μmのパラジウムめっき層、及び、
前記パラジウムめっき層上に設けられた、平均厚さ0.001~0.05μmの金めっき層
からなる、請求項4に記載のめっき材料。
【請求項6】
前記貴金属めっき層の表面に、チオール化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のめっき材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のめっき材料を備えた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき材料及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属材料と樹脂との複合体において、これらの密着性の改善要望が増加している。特に、車載向けについては過酷なエンジンルーム周りでの電子化が進むことで、より一層の密着性向上が求められている。
【0003】
このような背景から、樹脂封止型半導体装置におけるリードフレームとモールド樹脂との密着性を高めるために、リードフレームのめっき表面を粗化する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0004】
これら従来技術を適用することにより、JEDEC-LEVEL1等の高温高湿試験において樹脂密着性が改善している。しかしながら、半導体チップを搭載する箇所においては、チップを半田接合やダイボンディングによる接合を行う必要があるところ、半田濡れ性を粗化めっきが阻害してしまう現象が知られている。そこで、例えば、特許文献4では、アウターリード部などの半田接合性が必要な箇所は、粗化しないような構成が提案されている。
【0005】
また、半田濡れ性を改善する手法として、特許文献5には、粗化めっきの表面に、パラジウムめっきや金めっきを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-29439号公報
【特許文献2】特開平10-27873号公報
【特許文献3】特開2006-93559号公報
【特許文献4】特開2008-103455号公報
【特許文献5】特開平4-115558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に電子部品のチップ搭載部においては、チップの汚染を防止する目的でフラックス残渣を低減するニーズが高まっており、低残渣フラックスもしくはフラックスフリーでの実装性について検討が進められている。その改善方法として、例えば、導電性基材の表面をパラジウムめっきや金めっきなどの貴金属めっきで被覆する方法がある。
【0008】
しかしながら、貴金属めっきは、厚さが薄くなる傾向にある。そのため、導電性基材に粗化めっき層を設けたとき、当該粗化めっき層上に薄い貴金属めっきを施すと、粗化めっきの凹凸の凸部に電流が集中し、凹部に貴金属めっきが形成されず、粗化めっき層の露出が生じる。そして、本発明者らは、このように粗化めっき層の露出部が酸化することで、半田濡れ性が悪くなることを突き止めた。また、低残渣フラックス含有の半田を使用しためっき材料の半田濡れ性が、上述の状況において特に悪化することが分かった。
【0009】
これらの課題を解決する手段として、上述の特許文献4に開示される技術のように、半田接合が必要な箇所に粗化処理をしない、換言すれば、金属材料の樹脂によって被覆される部分にのみ粗化処理を施すことも考えられる。しかしながら、局所的な粗化処理では粗度が低くなってしまい、樹脂密着性を確保することが難しくなり得る。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、半田濡れ性および樹脂密着性が良好な、めっき材料及び電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、導電性基材上に粗化めっき層と貴金属めっき層とを形成し、貴金属めっき層のめっき材料の表面に対する所定の被覆率を制御することで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施形態は一側面において、表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止するめっき材料であって、導電性基材と、前記導電性基材上に設けられた粗化めっき層と、前記粗化めっき層上に設けられた貴金属めっき層と、を有するめっき材料であり、前記貴金属めっき層側から観察倍率50000倍のEPMAによるマッピング分析を実施したときの、前記貴金属めっき層の最表層成分の最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を前記最表層成分による被覆箇所と定義した場合に、前記めっき材料の表面に対する前記最表層成分の被覆率が、観察視野面積の70%以上である、めっき材料である。
【0013】
本発明のめっき材料は一実施形態において、前記貴金属めっき層側から測定した算術平均粗さSaが0.1~0.3μmである。
【0014】
本発明のめっき材料は別の一実施形態において、前記貴金属めっき層の平均厚さが、0.006~0.1μmである。
【0015】
本発明のめっき材料は更に別の一実施形態において、前記貴金属めっき層が、パラジウムめっき及び金めっきからなる。
【0016】
本発明のめっき材料は更に別の一実施形態において、前記貴金属めっき層が、前記粗化めっき層上に設けられた、平均厚さ0.005~0.05μmのパラジウムめっき層、及び、前記パラジウムめっき層上に設けられた、平均厚さ0.001~0.05μmの金めっき層からなる。
【0017】
本発明のめっき材料は更に別の一実施形態において、前記貴金属めっき層の表面に、チオール化合物を含む。
【0018】
本発明の実施形態は別の一側面において、本発明の実施形態に係るめっき材料を備えた電子部品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、半田濡れ性および樹脂密着性が良好な、めっき材料及び電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)は、本発明の実施形態に係るめっき材料の断面模式図である。(B)は、(A)で示す点線枠で囲まれた箇所の拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のめっき材料及び電子部品の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
<めっき材料の構成>
図1(A)に、本発明の実施形態に係るめっき材料の断面模式図を示す。また、図1(B)に、図1(A)で示す点線枠で囲まれた箇所の拡大模式図を示す。本発明の実施形態に係るめっき材料は、表面に樹脂を成型する、または、表面を樹脂で封止するめっき材料であって、導電性基材と、導電性基材上に設けられた粗化めっき層と、粗化めっき層上に設けられた貴金属めっき層とを有する。
【0023】
(導電性基材)
導電性基材としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、鉄、鉄合金、ステンレス、42アロイなどが好適に用いられ、中でも導電率や強度の観点から、銅、銅合金が好ましく、さらにリン青銅、黄銅、コルソン銅、無酸素銅、タフピッチ銅などがより好ましい。具体的な銅合金の一例として銅開発協会(CDA)に規定される、C11000、C10200、C19400、C70250、C26000、C52100を導電性基材として用いることができる。また、金属基材に樹脂層を複合させたものであっても良い。金属基材に樹脂層を複合させたものとは、例としてFPCまたはFFC基材上の電極部分などがある。
【0024】
(粗化めっき層)
粗化めっき層は、樹脂と密着する箇所に設けられるとその効果を発揮し、アンカー効果により導電性基材と樹脂との密着状態を長期間に亘って保つことができる。粗化めっき層は、樹脂と密着する箇所のみでなく、良好な半田付け性が求められる箇所にも設けられてもよい。従来技術では、半田付け性を確保する箇所においては、粗化めっきは濡れ性が悪く好適ではないとされているが、本発明においてはその点を改善し、半田濡れ性を阻害することのないめっき材料が得られる。
【0025】
粗化めっき層の種類としては、貴金属めっき層の下地層として効果を発揮するためニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金が好ましく、特にニッケルおよびニッケル合金が好ましい。粗化めっき層の平均厚さについては特に制限するものではないが、例えば0.2~2μmで形成されていることが好ましい。粗化めっき層の平均厚さが0.2μm未満であると、樹脂密着性が低く長期信頼性に乏しくなる一方、2μm超であると生産性や後述の貴金属めっき被覆の割合が低くなりやすい。また、生産性や効果の観点から、粗化めっき層の平均厚さは、0.3~1.5μmであるのがより好ましく、0.5~1μmであるのが更により好ましい。
【0026】
(貴金属めっき層)
貴金属めっき層は、主に半田濡れ性を改善するために形成される層であり、例えばパラジウム、パラジウム合金、金、金合金から形成され、特に耐熱性や半田濡れ性の観点から、粗化めっき層側から、パラジウムめっき、金めっきの順に構成されるのが好ましい。貴金属めっき層の平均厚さについては、特に制限するものではないが、コストや生産性、さらに半田濡れ性改善効果の観点から、薄く形成されることが好ましく、0.006~0.1μmで形成することができる。特に、耐熱性や省貴金属化の観点から、貴金属めっき層は、粗化めっき層上に設けられた、平均厚さ0.005~0.05μmのパラジウムめっき層、及び、パラジウムめっき層上に設けられた、平均厚さ0.001~0.05μmの金めっき層からなるのが好ましい。また、パラジウムめっき層の平均厚さは、0.01~0.03μmであるのがより好ましく、0.015~0.02μmであるのが更により好ましい。また、金めっき層の平均厚さは、0.003~0.03μmであるのがより好ましく、0.005~0.02μmであるのが更により好ましい。
【0027】
本発明の実施形態に係るめっき材料は、貴金属めっき層側から観察倍率50000倍のEPMA(電子プローブマイクロアナライザー:Electron Probe Micro Analyzer)によるマッピング分析を実施したときの、貴金属めっき層の最表層成分の最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を最表層成分による被覆箇所と定義した場合に、めっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率が、観察視野面積の70%以上である。このような構成によれば、粗化めっき層の露出が抑制されることで、樹脂密着性は確保しながらも、良好な半田濡れ性を得ることができる。また、フラックス残渣の少ない、もしくはフラックスフリーの半田で実装を行っても、半田濡れ性および樹脂密着性が良好な、めっき材料が得られる。本発明の実施形態に係るめっき材料は、上述の最表層成分の被覆率が、観察視野面積の75%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
【0028】
上述の「めっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率」については、貴金属めっき層が1種類の成分(例えば、パラジウムまたは金)で形成されている場合、当該1種類の成分の、めっき材料の表面に対する被覆率を示す。一方、貴金属めっき層が、下層にパラジウムめっき層、上層に金めっき層を有する場合、最表層成分は金となるため、当該金の、めっき材料の表面に対する被覆率を示す。
【0029】
上述のめっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率の測定方法の例としては、まず、めっき材料の貴金属めっき層側からEPMAによって観察倍率50000倍で観察する。なお、本発明者らが鋭意検討した結果、50000倍未満の倍率であると、粗化された凹部における検出強度を十分に検出できず、また50000倍を超える倍率となると、粗化凹凸の局所的な拡大部指標になってしまうことから、当該観察倍率を定めている。次に、最表層における貴金属成分をマッピングし、その色調において最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を「被覆箇所」として抽出し、その面積比を算出して、これを上述の「被覆率」と定義する。当該被覆率が低いと、その被覆されていない箇所が大気暴露の際に酸化し、その結果半田濡れ性を阻害する。また、上述の被覆率の測定は、めっき材料の貴金属めっき層側の表面において、任意の3箇所を選んで測定し、その平均値を算出する。
【0030】
本発明の実施形態に係るめっき材料は、貴金属めっき層側から測定した算術平均粗さSaが0.1~0.3μmであるのが好ましい。貴金属めっき層側から測定した算術平均粗さSaが0.1μm以上であると、アンカー効果が高まり、樹脂との密着性が向上し、0.3μm以下であると、粗化表面の凹部(谷部)への貴金属めっきの被覆率を向上させ、その結果、半田濡れ性を改善できる。加えて、算術平均粗さSaが0.2μm以下であると、先端部分の破損を抑制することができる。本発明の実施形態に係るめっき材料は、貴金属めっき層側から測定した算術平均粗さSaが0.15~0.18μmであるのがより好ましく、0.16~0.17μmであるのが更により好ましい。
【0031】
<めっき材料の製造方法>
本発明の実施形態に係るめっき材料の製造方法としては、まず、導電性基材上に、粗化めっき層を形成し、さらに、貴金属めっき層を形成する。当該めっきとしては、湿式(電気、無電解)めっきを用いて行う。
【0032】
粗化めっき層を形成するための、粗化めっき条件を以下に示す。
・液組成:ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などを含有する所望のめっき液組成
・めっき温度:40~60℃
・電流密度:5~15A/dm2
【0033】
貴金属めっき層を形成するための、貴金属めっき条件を以下に示す。
・液組成:パラジウム、金などを含有する所望のめっき液組成
・めっき温度:40~60℃
・電流密度:0.05~2A/dm2
・撹拌速度:800~1200rpm
・超音波撹拌:28kHz、200~600W
なお、超音波撹拌は、無くてもよいが、実施するほうが好ましい。
【0034】
上述のように、貴金属めっき条件において、撹拌速度を大きく、電流密度を低く、且つ、超音波を使用しながらめっき液を撹拌することで、粗化めっき層の凹部への電析が促進され、当該凹部における貴金属めっきを極薄で均一に形成することができる。これによって、貴金属めっき層の被覆率が向上する。
【0035】
(封孔処理)
貴金属めっき層を形成後、すぐにそのまま半田接合などの実装を行うことが好ましいが、長期保管や周辺環境が劣悪な箇所に晒される可能性があるときは、封孔処理を施すことが好ましい。封孔処理によって、長期にわたって半田濡れ性や樹脂密着性を確保することができる。特に封孔処理の成分に、還元性作用のある物質を適用することがより好ましく、例えばメルカプト基を保有する封孔処理剤を使用・実施することで、僅かに被覆している粗化めっき箇所の酸化を防止し、また還元作用により半田濡れ性を大きく改善することができる。
【0036】
なお、封孔処理の種類や皮膜厚によっては、樹脂密着性を低下させる恐れがあるため、封孔処理時間を60秒以下、好ましくは30秒以下で処理し、被膜厚を適宜制御することが好ましい。
【0037】
また、封孔処理を実施することで、例えば高温高湿試験(85℃-85%-8時間)後の半田濡れ性の低下を大幅に抑制することができる。
【0038】
本発明の実施形態に係るめっき材料の封孔処理は公知の封孔処理剤及び処理方法を用いることができる。当該封孔処理としては、例えば、チオール化合物を有する被膜を形成してもよい。
【0039】
<めっき材料の用途>
本発明の実施形態に係るめっき材料の用途は特に限定しないが、樹脂との良好な密着性が必要な電子部品の材料として用いることができ、特に、衝撃、温度、湿度等の要因から守るために表面を樹脂で固める樹脂成型、樹脂封止、または、モールド成型等を施す電子部品の材料として用いることができる。当該電子部品としては例えば、リードフレーム、バズバーモジュール等のような金属製の電子部品が挙げられる。本発明の実施形態に係るめっき材料は、このような表面に樹脂成型、樹脂封止、または、モールド成型が施された成型品としても、導電性材料の表面と樹脂との密着性が非常に良好であるため、例えば車載向けのエンジンルーム周りという過酷な環境下で使用される電子部品の材料として用いた場合でも、良好な耐久性が期待できる。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例と比較例を共に示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0041】
<試験例1>
(導電性基材の作製)
実施例1~7及び比較例1として、導電性基材(C11000:99.9%Cu)に対し、水酸化ナトリウムが50g/Lのアルカリ脱脂浴にてカソード電解脱脂を5A/dm2で60秒実施後、10%硫酸およびフッ化アンモニウム50g/Lの酸洗溶液にて30秒酸洗浄した。
【0042】
(粗化めっき処理)
次に、電気めっきにて、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間を調整することで、粗化めっき処理を行い、導電性基材の表面に粗化めっき層を形成した。実施例1~7及び比較例1の粗化めっき浴成分は、いずれも同じであり、Niメタル分130g/L、ホウ酸25g/LでpH3.3であった。ここで、Niメタル分は、Ni塩としてスルファミン酸ニッケル四水和物及び塩化Niで構成されている。より具体的には、スルファミン酸ニッケル四水和物:Ni(NH2SO32・4H2O=294g/L(約300g/L)、Ni量で53.5g/L、塩化ニッケル六水和物:NiCl2・6H2O=約310g/L、Ni量で76.5g/Lである。実施例1~7及び比較例1のめっき液の温度は45℃、電流密度は10A/dm2とした。
【0043】
(パラジウムめっき処理)
次に、電気めっきにて、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度、撹拌速度、超音波撹拌の使用及びめっき時間を調整することで、パラジウムめっき処理を行い、粗化めっき層の表面にパラジウムめっき層を形成した。実施例1~7及び比較例1のめっき浴成分は、いずれも同じであり、パラブライトSST-L(製品名、日本高純度化学社製)であった。
表1に各パラジウムめっき処理条件を示す。また、超音波撹拌の条件は、28kHz、200Wとした。
【0044】
【表1】
【0045】
(金めっき処理)
次に、電気めっきにて、めっき浴の組成、めっき液の温度、電流密度、撹拌速度、超音波撹拌の使用及びめっき時間を調整することで、金めっき処理を行い、パラジウムめっき層の表面に金めっき層を形成した。実施例1~7及び比較例1のめっき浴成分は、いずれも同じであり、アフタープレート(製品名、日本高純度化学社製)であった。
表2に各金めっき処理条件を示す。また、超音波撹拌の条件は、28kHz、200Wとした。
【0046】
【表2】
【0047】
(評価)
・めっきの平均厚さ
各めっきの平均厚さの確認については、任意の5点について蛍光X線膜厚計(日立ハイテク社製 SFT9500)を使用し、コリメータ径0.2mm、各膜厚測定時間30秒での平均値について算出した。
【0048】
・めっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率
めっき材料の表面に対する最表層成分の被覆率を測定した。具体的には、めっき材料について、貴金属めっき層側からEPMAによって観察倍率50000倍で観察した。次に、最表層における貴金属成分(実施例1~7及び比較例1についてはAu成分)をマッピングし、その色調において最大検出強度の30%以上の色調で示される箇所を「被覆箇所」として抽出し、その面積比を算出して、これを「被覆率」と定義した。また、当該被覆率の測定は、めっき材料の貴金属めっき層側の表面において、任意の3箇所を選んで測定し、その平均値とした。
以下に、当該EPMAの測定条件を示す。
・スキャンタイプ:ビームスキャン
・加速電圧:15.0kV
・照射電流:5.390e-8
・測定時間:25.00ミリ秒
・測定点数:256×256
【0049】
・算術平均粗さSa
めっき材料の、貴金属めっき層側から算術平均粗さSaを測定した。具体的には、キーエンス社製レーザー顕微鏡(VK-X150)を使用し、観察倍率1000倍、スポット径φ0.8mm、測定面積100μm×100μmで測定した。5回の測定(N5)の平均値を算出し、めっき材料の試験片の表面のSaの値とした。
【0050】
・シェア強度
めっき材料の試験片の表面に樹脂成型したものをサンプルとして、プリンカップモールド試験にてシェア強度を測定した。試験条件は、樹脂:日立化成社製GE-7470LA樹脂、プリンカップ底面の面積:10mm2、樹脂成型時間:120秒、モールドキュア:175℃で8時間とし、10回のせん断力測定(N10)の平均値を算出し、シェア強度とした。シェアはデイジ社製 ボンドテスター(Series4000)にて、シェア速度100μm/秒にて測定した。
【0051】
・半田濡れ面積
試験片サイズを10mm×50mmに切断後、浸漬深さ15mm、浸漬時間10秒、Sn-3.0Ag-0.5Cu半田、浴温245℃、浸漬速度10mm/秒の条件で浸漬し、150mm2を100%としてその濡れ面積の割合を算出した。
【0052】
上述の実施例1~7及び比較例1に係る試験条件及び試験結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
(評価結果)
表3に示すように、実施例1~7によれば、シェア強度を維持しつつも半田濡れ性に優れた粗化めっき材料を提供できることが分かる。特に粗化めっき厚が厚く、粗度が高い状態でも良好な半田濡れ性を示しており、比較例1と比べても優れた半田濡れ性を保持できていることが分かる。これは、上述で規格化された被覆率が70%以上を示していることにより、粗化めっき層の露出が抑制されることで、樹脂密着性は確保しながらも、良好な半田濡れ性を得るためである。
なお、実施例2、4~7の最表層成分の被覆率については、それぞれ「70以上」、「84以上」と記載しているが、これらは実際の測定値ではなく推測値である。実施例2の最表層成分の被覆率については、実施例1及び比較例1の最表層成分の被覆率と半田濡れ面積との関係を線形と仮定した場合の、実施例2の半田濡れ面積から逆算して推測した最表層成分の被覆率である。また、実施例4~7の最表層成分の被覆率については、実施例1を基準としてみたときに、Auめっき厚増、Pdめっき厚増(それによる粗化めっきの表面粗度減)、強攪拌、超音波を行なっているため、実施例1の最表層成分の被覆率以上になる蓋然性が高いと考えられる。また、実施例5のシェア強度は、測定していない。
【0055】
<試験例2>
実施例8~11として、実施例1で作製しためっき材料の表面に対し、それぞれ封孔処理剤を浸漬して塗布もしくは電解で塗布し、さらに温風により乾燥した。表4に、封孔処理条件を示す。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例8~11の各めっき材料に対し、実施例1と同様の手順にて、シェア強度を測定した。また、各めっき材量を85℃85RT%の高温高湿環境下に8時間放置した後に試験例1と同様の手順にて半田濡れ面積を評価した。評価結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
(評価結果)
表5に示すように、封孔処理の有無により高温高湿試験後の半田濡れ性に顕著に差異が表れている。実施例1においては、比較例1よりも半田濡れ性は確保されているものの低下している傾向がみられる。一方、封孔処理を施した実施例8~11においては、環境試験後でも半田濡れ性が十分に確保されており、このことにより、長期信頼性に優れためっき材料を提供できるものである。
図1