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特開2022-85975β-ニコチンアミドモノヌクレオチド含有製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022085975
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】β-ニコチンアミドモノヌクレオチド含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20220602BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20220602BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220602BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220602BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
A61K31/706
A23L33/13
A61P43/00 111
A61K9/48
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197755
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】301049744
【氏名又は名称】日清ファルマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】大西 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】浅田 憲一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD44
4B018ME10
4C076AA54
4C076DD26
4C076DD41C
4C076EE30H
4C076EE31
4C076EE38
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF46
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA37
4C086NA03
4C086ZC02
4C086ZC52
(57)【要約】
【課題】 β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤に発生する内包物の変色を抑制する。
【解決手段】 プルランを基剤としたカプセルに、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する内包物を充填してなるカプセル製剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルランを基剤としたカプセルに、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する内包物を充填してなるカプセル製剤。
【請求項2】
前記カプセルが硬カプセルであることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
温度40℃、相対湿度75%で21日間の保存による内包物の色差(ΔE)が3未満である、請求項1又は2に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する製剤に関する。
詳細には、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤において、カプセルの基材としてプルランを使用することで、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル内包物の経時的な変色を抑制しうる製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(β-Nicotinamide mononucleotide、NMN)は、生体内に広く分布する補酵素β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の中間代謝産物である。NAD+については、近年、老化現象に関わるサーチュイン(NAD+依存性脱アセチル化酵素)との関連が注目されている。老化に伴い細胞内のNAD+量およびサーチュイン活性は低下するが、細胞内のNAD+を増加させることで老化現象の抑制が可能であると考えられている。
【0003】
また、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドなどのNAD+中間代謝産物を生体内に補充することでサーチュインが再活性化することが知られている。
【0004】
そこで、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドの持つ抗老化作用を、皮膚外用剤、化粧料、食品などの用途に利用することが検討されている。さらに、2020年の食薬区分改正においてβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドは「非医薬品リスト」に追加されたことから、今後、健康食品、サプリメント等への利用の拡大が期待される。
【0005】
医薬品、食品等で使用されるカプセルには、その基材として一般に、ゼラチン、寒天、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カラギーナン、プルラン等の様々なフィルム形成性の材料が用いられている。なかでも、ゼラチンとHPMCは最も広く用いられており、特にHPMCカプセルは一般にゼラチンカプセルよりも内包物が変色しにくいカプセルとして知られている。
【0006】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを用いた食品組成物、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドの経時安定性を向上させる技術及びカプセル製剤の経時的変色を抑制する技術としては、これまでに以下のような先行技術が知られている。
【0007】
特許文献1には、ニコチンアミドモノヌクレオチドとレスベラトロールを含む、ハードカプセル剤等の形態の食品組成物が示されている。
【0008】
特許文献2には、ニコチンアミドモノヌクレオチドは、水分、特に熱水に溶けやすく、水溶液中のような条件下でなくても、周囲の大気中に含まれる湿気によって加水分解を起こす可能性があるため、加水分解に対する安定性を向上させたニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体が示されている。
【0009】
特許文献3には、分子中にアルデヒド基を有するかまたは容易にアルデヒド基を生じる、ビタミンCなどの成分のカプセル剤において、カプセル基材にプルランを用いることで、経時的なカプセルの変色が防止または抑制できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6545256号公報
【特許文献2】特開2019-137625号公報
【特許文献3】特開2003-313125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドのカプセル製剤について検討を行い、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを充填したカプセルを製造したところ、比較的内包物が変色しにくいとされるHPMCカプセルを使用しても、カプセル内包物が経時的に淡黄色~褐色に変色し、外観が損なわれるという問題があることが判明した。
したがって、本発明の課題は、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤において、カプセル内包物の経時的な変色が抑制された製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、以下のカプセル製剤によって解決することができる。
(1)プルランを基剤としたカプセルに、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する内包物を充填してなるカプセル製剤。
(2)前記カプセルが硬カプセルであることを特徴とする、(1)に記載の製剤。
(3)温度40℃、相対湿度75%で21日間の保存による内包物の色差(ΔE)が3未満である、(1)又は(2)に記載の製剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤としてプルランカプセルを使用することにより、カプセル内包物の経時的な変色が抑制され、カプセル製剤の外観を損ねることがない。また、内包物中の賦形剤と滑沢剤の種類にも制限がないため、これらを自由に選択することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による、プルランを基剤としたカプセルに、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する内包物を充填してなるカプセル製剤によって、温度40℃、相対湿度75%で21日間の保存による内包物の色差(ΔE)が3未満、さらには2未満をも達成することができる。
【0015】
以下に、本発明のカプセル製剤の各成分の配合量等について、説明する。
【0016】
(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)
本発明で使用するβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドとしては特に制限はないが、様々な製品が市販されているので、これらの市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、洛陽華栄生物技術有限公司製のNMNや、SyncoZymes製のNMN等を挙げることができる。
【0017】
(プルラン)
プルランは、グルコース3分子がα-1,4結合したマルトトリオースがα-1,6結合によって連結した構造を持つ多糖類である。水に溶けやすく、増粘性、接着性、付着性、粘着性、造膜性、被膜性などに優れた素材であり、食品をはじめ医薬品や化粧品の原料として様々な用途で用いられている。例えば、プルランフィルムやカプセルなどの各種成形物、錠剤などの賦形剤、コーティング剤、安定化剤、増粘剤等として利用されている。
【0018】
(カプセル)
本発明のカプセルは、基材としてプルランを主成分として含有するものであれば、特に制限されず、カプセル中のプルランの割合が60~100%、好ましくは、70~100%、特に好ましくは80~100%、さらに好ましくは85~100%のものが好適に使用できる。カプセルの形態は特に制限されず、例えば、硬カプセル、ソフトカプセル、シームレスカプセルであり得るが、硬カプセルが好ましく用いられる。硬カプセルは公知の方法によって製造することができる。また市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、カプスゲル製Plantcaps(R)等を挙げることができる。
【0019】
(その他成分)
本発明の組成物には、さらに効果を損なわない範囲において、通常飲食品に配合される任意の成分を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、光沢剤、滑沢剤、安定剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、添加剤、甘味料、酸味料、その他の有効成分(生理活性成分)などを挙げることができる。
【0020】
(賦形剤)
その他成分の中で、例えば賦形剤としては、乳糖、マルトース、精製白糖、マンニトール、マルチトール、ソルビトール等の糖や糖アルコール、粉末セルロース 結晶セルロース等のセルロース、コーンスターチ、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、澱粉加水分解物、酸化澱粉、α化澱粉、オクテニルコハク酸処理澱粉等の澱粉や変性澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム等の無機塩などを、特に制限なく挙げることができるが、澱粉、変性澱粉、セルロース、コーンスターチは特に好ましい。
【0021】
(結合剤)
その他成分の中で、例えば結合剤としては、アラビアゴム、アルギン酸、ポビドン、グァーガム、澱粉、変性澱粉などを特に制限なく挙げることができる。
【0022】
(変色について)
β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤において、カプセル内包物が経時的に変色する原因については明らかでない。また、カプセルとしてプルランカプセルを使用することにより、経時的な変色が抑制される理由についても、現時点では明らかでない。
【0023】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤における変色はカプセル製剤の外観を著しく損ねるため、本発明に基づいて、カプセルの基材としてプルランを含有するものを使用することによって、温度40℃、相対湿度75%で21日間の保存による色差(ΔE)が3未満としたものが好ましい。内包物の変色による色差(ΔE)が3以上であると、経時的な変色が目視で認識可能となり、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤の商品価値が低下するため、好ましくない。
【実施例0024】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
1.β-ニコチンアミドモノヌクレオチド含有カプセルの製造方法
以下に示す実施例及び比較例では、表1、表2及び表3に示した原料をそれぞれ所定量混合し攪拌して、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有する混合粉末を得た。カプセル充填機(ProFiller 1100、カプスゲル・ジャパン株式会社製)を用いて表に記載のカプセルをセットして、常法に従ってカプセル内に混合粉末を充填した。
【0026】
表1、表2及び表3に示した実施例及び比較例において使用した原料およびカプセルは以下の通りである。
(原料)
・β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN、洛陽華栄生物技術有限公司製)
・ばれいしょ澱粉(松谷乾燥ばれいしょでん粉、松谷化学工業製)
・タピオカ澱粉(松谷乾燥タピオカでん粉、松谷化学工業製)
・セルロース(セオラスFD101、旭化成製)
・澱粉加水分解物(パインデックス100、松谷化学工業製)
・酸化澱粉(スタビローズT-10、松谷化学工業製)
・α化澱粉(パインソフトS、松谷化学工業製)
・オクテニルコハク酸処理澱粉(エマルスターA1、松谷化学工業製)
・コーンスターチ(コーンスターチホワイト、日本コーンスターチ製)
・リン酸三カルシウム(太平化学産業製)
・ステアリン酸カルシウム(太平化学産業製)
【0027】
(カプセル)
・プルランカプセル(Plantcaps、2号、カプスゲル製)
・ゼラチンカプセル(クオリカプスカプセル-N、2号、クオリカプス製)
・HPMCカプセル(クオリ-V-Nカプセル、2号、クオリカプス製)
【0028】
2.評価方法
1で調製したカプセルを、温度40℃、相対湿度75%の保存条件で7、14、21日間保管した後、カプセルから取り出した内包物の色差を測定した。
色差は分光色彩計(日本電色工業製、SE-6000)を使用し、試料の色彩をL*a*b*表色系で測定した。この分光色彩計では、開始時と保存後の色差ΔEが、下記数式1により算出して表示される。
数式1:ΔE=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
【0029】
(結果)
【表1】
【0030】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤において、カプセルの基材としてプルランを使用することで、カプセル内包物の経時的な変色を抑制し得ることがわかる。
【0031】
また、内包物がビタミンC等の場合に起こるメイラード反応による変色反応であれば、ゼラチンカプセルでは特に大きく変色するはずであるが、ゼラチンカプセルを使用した比較例1では、HPMCカプセルを使用した比較例2の場合より変色が少なく、却って、本発明のプルランカプセルによる実施例1により近いことから、β-ニコチンアミドモノヌクレオチドによる変色は、メイラード反応によるものとは、その原因が異なるものと推定される。
【0032】
【表2】
【0033】
β-ニコチンアミドモノヌクレオチドを含有するカプセル製剤において、カプセルの基材としてプルランを使用した場合には、内包物中の賦形剤と滑沢剤の種類によらず、内包物の変色を抑制することができるため、これらを自由に選択することができる。
【0034】
【表3】
【0035】
HPMCカプセルを使用した場合、内包物中の賦形剤と滑沢剤の種類を変えても、プルランカプセルを使用した場合における程度にまで、内包物の変色を抑制することができない。